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  • 特開-医療用長尺体 図1
  • 特開-医療用長尺体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028738
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】医療用長尺体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20230224BHJP
   A61M 25/08 20060101ALI20230224BHJP
   A61M 25/00 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
A61M25/09 530
A61M25/09
A61M25/08
A61M25/00 624
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134615
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】内村 将
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑軌
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA28
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB40
4C267CC07
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG23
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】大口径のカテーテルを目的位置まで挿入する際にマイクロカテーテル等を併用する必要がなく、かつ先端から基端にかけて滑らかな剛性徐変構造を実現した医療用長尺体を提供する。
【解決手段】医療用長尺体1は、コアシャフト10と、コアシャフト10の外周に設けられた係合部60と、コアシャフト10の外側に設けられ、コアシャフト10の軸線方向に沿って移動可能な筒状体20と、筒状体20の基端に取り付けられ、コアシャフト10が挿通される内腔を有するコネクタ部30と、を備える。筒状体20がコアシャフト10の軸線方向に沿ってコアシャフト10の先端方向に向かって移動したときに、係合部60と係合することにより、コアシャフト10の先端方向への筒状体20のさらなる移動を規制する被係合部311が、コネクタ部30の内腔310に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトの外周に設けられた係合部と、
前記コアシャフトの外側に設けられ、前記コアシャフトの軸線方向に沿って移動可能な筒状体と、
前記筒状体の基端部に取り付けられ、前記コアシャフトが挿通される内腔を有するコネクタ部と、を備え、
前記筒状体が前記コアシャフトの軸線方向に沿って前記コアシャフトの先端方向に向かって移動したときに、前記係合部と係合することにより、前記コアシャフトの先端方向への前記筒状体のさらなる移動を規制する被係合部が、前記コネクタ部の前記内腔に設けられている、医療用長尺体。
【請求項2】
前記被係合部が、前記内腔を構成する前記コネクタ部の内周面の少なくとも一部を前記内腔の内側方向に張り出させて形成されており、前記係合部が前記被係合部に当接することにより、前記係合部が前記被係合部に係合する、請求項1に記載の医療用長尺体。
【請求項3】
前記被係合部が、前記内腔の少なくとも一部の内径を、前記係合部が通過できないように縮径することにより形成されている、請求項1又は2に記載の医療用長尺体。
【請求項4】
前記係合部が、前記コアシャフトの外周面に樹脂材料を固着することによって形成されている、請求項1-3のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【請求項5】
前記係合部が、前記コアシャフトの外周面に環状部材を周設することによって形成されている、請求項1-4のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【請求項6】
前記係合部が、前記コアシャフトの外径を部分的に拡径するように形成されている、請求項1-5のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【請求項7】
前記コアシャフトの基端部には、前記コアシャフトよりも外径の大きい把持部が設けられており、
前記筒状体が前記コアシャフトの軸線方向に沿って前記コアシャフトの基端方向に向かって移動したときに、前記把持部が前記コネクタ部と当接することにより、前記コアシャフトの基端方向への前記筒状体のさらなる移動を規制する、請求項1-6のいずれか1項に記載の医療用長尺体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルを目的位置まで挿入する際に用いられる医療用長尺体に関する。
【背景技術】
【0002】
血管や消化器官等にカテーテルを挿入する際、例えば特許文献1に示すような、一般にガイドワイヤと呼ばれる医療用長尺体が用いられる。特許文献1には、芯線の外周にコイルスプリングが巻き回され、先端部に膨出部が形成されたガイドワイヤが開示されている。
【0003】
ところで、ガイドワイヤを用いてカテーテルを血管等の目的位置まで挿入する際、大口径のカテーテルであればガイドワイヤとの間のギャップを解消するためにマイクロカテーテル等を併用する必要があるが、デバイス数が増加すると医療コストの増大につながり、その操作も煩雑になるという問題があった。また、これら併用デバイス間の剛性ギャップが悪影響を及ぼして、うまく大口径のカテーテルを目的位置へと到達させることができないという問題があった。このような問題を解決すべく、特許文献2では、コアシャフトの外側に軸線方向に沿って移動可能な筒状体を設けることにより、マイクロカテーテル等を併用する必要をなくしたガイドワイヤが提案されている。特許文献2のガイドワイヤは、筒状体をコアシャフトに対して相対移動させることによって、ガイドワイヤの先端側の剛性を変更させることができるとともに、コアシャフトの外周に設けられている係合部と筒状体の内側に設けられている被係合部とが係合することによって、コアシャフトが抜けることなく筒状体との相対位置を適正な範囲に保つことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2-028246号公報
【特許文献2】国際公開第2020/225935号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されているガイドワイヤのように、コアシャフトの外周において、筒状体と重なる位置に係合部を設けると、当該係合部が設けられた部分のみコアシャフトの剛性が変わってしまい、その結果、先端から基端にかけて滑らかな剛性徐変構造を実現したガイドワイヤとするために、何らか剛性を調整する工夫が必要になる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、大口径のカテーテルを目的位置まで挿入する際にマイクロカテーテル等を併用する必要がなく、かつ先端から基端にかけて滑らかな剛性徐変構造を実現した医療用長尺体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、コアシャフトと、前記コアシャフトの外周に設けられた係合部と、前記コアシャフトの外側に設けられ、前記コアシャフトの軸線方向に沿って移動可能な筒状体と、前記筒状体の基端部に取り付けられ、前記コアシャフトが挿通される内腔を有するコネクタ部と、を備え、前記筒状体が前記コアシャフトの軸線方向に沿って前記コアシャフトの先端方向に向かって移動したときに、前記係合部と係合することにより、前記コアシャフトの先端方向への前記筒状体のさらなる移動を規制する被係合部が、前記コネクタ部の前記内腔に設けられている、医療用長尺体を提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、コアシャフトの外側に移動可能な筒状体が備えられているため、大口径のカテーテルを目的位置まで挿入する際にマイクロカテーテル等を併用する必要がなくなる。また、コアシャフトが抜けることなく筒状体との相対位置を適正な範囲に保つためにコアシャフトの外周に設けられた係合部と、当該係合部と係合することによりコアシャフトの先端方向への前記筒状体のさらなる移動を規制する被係合部とが、血管や消化器官等の体腔内へと挿入されることのないコネクタ部に位置しているため、医療用長尺体の体腔内へと挿入される部分においては、先端から基端にかけて滑らかな剛性徐変構造を実現することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記被係合部が、前記内腔を構成する前記コネクタ部の内周面の少なくとも一部を前記内腔の内側方向に張り出させて形成されており、前記係合部が前記被係合部に当接することにより、前記係合部が前記被係合部に係合してもよい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明1,2)においては、前記被係合部が、前記内腔の少なくとも一部の内径を、前記係合部が通過できないように縮径することにより形成されていてもよい(発明3)。
【0011】
上記発明(発明1-3)においては、前記係合部が、前記コアシャフトの外周面に樹脂材料を固着することによって形成されていてもよい(発明4)。
【0012】
上記発明(発明1-4)においては、前記係合部が、前記コアシャフトの外周面に環状部材を周設することによって形成されていてもよい(発明5)。
【0013】
上記発明(発明1-5)においては、前記係合部が、前記コアシャフトの外径を部分的に拡径するように形成されていてもよい(発明6)。
【0014】
上記発明(発明1-6)において、前記コアシャフトの基端部には、前記コアシャフトよりも外径の大きい把持部が設けられており、前記筒状体が前記コアシャフトの軸線方向に沿って前記コアシャフトの基端方向に向かって移動したときに、前記把持部が前記コネクタ部と当接することにより、前記コアシャフトの基端方向への前記筒状体のさらなる移動を規制してもよい(発明7)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大口径のカテーテルを目的位置まで挿入する際にマイクロカテーテル等を併用する必要がなく、かつ先端から基端にかけて滑らかな剛性徐変構造を実現した医療用長尺体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用長尺体の全体構造を示す説明図である。
図2】医療用長尺体における一部分(図1におけるX部分)の断面構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る医療用長尺体1の構造を示す説明図であり、図2は医療用長尺体1における一部分(図1におけるX部分)の断面構造を示す説明図である。なお、本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するために記載された例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0018】
本明細書において、「先端側」とは、医療用長尺体を構成するコアシャフトの軸方向に沿う方向であって、コアシャフトが治療部位に向かって進行する方向を意味する。「基端側」とは、医療用長尺体を構成するコアシャフトの軸方向に沿う方向であって、上記先端側と反対の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。さらに、「先端部」とは、任意の部材または部位において、その先端を含み上記先端から基端側に向かって上記部材等の中途まで延びる部位を指し、「基端部」とは、任意の部材または部位において、その基端を含みこの基端から先端側に向かって上記部材等の中途まで延びる部位を指す。なお、図1及び図2においては、図示左側が体内に挿入される「先端側」であり、図示右側が医師等の手技者によって操作される「基端側」である。
【0019】
本実施形態に係る医療用長尺体1は、図1に示すように、コアシャフト10と、コアシャフト10の外側に設けられ、コアシャフト10の軸線方向に沿って移動可能な筒状体20と、筒状体20の基端に取り付けられるコネクタ部30とを備える。医療用長尺体1は、血管や消化器官等にカテーテルを挿入する際に用いられる医療器具であり、一般にガイドワイヤと呼ばれるものである。医療用長尺体1の先端側は体内に挿入される側であり、医療用長尺体1の基端側は医師等の手技者によって操作される側である。
【0020】
コアシャフト10は、基端側から先端側に向かって外径が徐々に小さくなるように構成された(先細りした)長尺形状の部材である。コアシャフト10は、例えばステンレス合金(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の材料で形成することができるが、これに限られるものではなく、コアシャフト10自身の切断を防止しかつ先端部を確実かつ正確に回転させることができるものであれば、それ以外の公知の材料によって形成されていてもよい。コアシャフト10の長さについては特に限定されるものではないが、例えば1000~3000mmの範囲を例示することができる。また、コアシャフト10の外径についても特に限定されるものではないが、例えば0.1~1.0mmの範囲を例示することができる。
【0021】
コアシャフト10の先端には先端接合部11が形成されている。先端接合部11は、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだによって形成され、この金属はんだにより、コアシャフト10の先端と、後述する先端コイル体12の先端とが固着されている。なお、先端接合部11をエポキシ系接着剤などの接着剤によって形成し、コアシャフト10の先端と先端コイル体12の先端とを接着剤により固着するものとしてもよい。
【0022】
先端コイル体12は、単コイルまたは中空撚線コイルによって構成されており、コアシャフト10の先端側の外周を覆うようにコアシャフト10に巻回されている。先端コイル体12の長さはコアシャフト10よりも短く、その長さについては特に限定されるものではないが、例えば10~100mmの範囲を例示することができる。先端コイル体12の内径は、コアシャフト10の外径よりも大きく、先端コイル体12の外径は後述する筒状体20の内径よりも小さくなっている。先端コイル体12の外径は先端から基端まで一定に構成されており、その外径については特に限定されるものではないが、例えば0.1~1.0mmの範囲を例示することができる。
【0023】
コアシャフト10の基端部には、コアシャフト10よりも外径の大きいトルカー50が設けられている。トルカー50は、手技者が医療用長尺体1を操作する際にコアシャフト10を把持するための樹脂部材(把持部)であり、コアシャフト10の基端部の外周に着脱自在に取り付けられる。コアシャフト10の基端部におけるトルカー50の取付位置は、手技者によって適宜調整可能になっている。
【0024】
コアシャフト10の基端側においてコネクタ部30の内部に位置する部分の外周には、係合部としてのストッパ60が設けられている。ストッパ60は、コアシャフト10の外周面に樹脂材料を固着することによって形成されている。ストッパ60を形成する樹脂材料については、特に限定されるものではないが、例えばポリイミド、金ロウ、銀ロウ、シアノアクリレート等の接着剤等を例示することができる。このような樹脂材料でストッパ60を形成することにより、コアシャフト10の平滑性及び柔軟性を損なわず、かつコアシャフト10と後述する筒状体20の内周面との抵抗を抑えることができるため、コアシャフト10の十分な操作性を確保することできる。コアシャフト10の外周面にストッパ60を固着させる方法は、公知の固着手段を利用することができ、例えば接着剤を用いてコアシャフト10にストッパ60を接着してもよいし、コアシャフト10におけるストッパ60の取付位置を他の部分よりも細く形成し、当該取付位置にストッパ60を嵌合させることによって取り付けてもよい。
【0025】
本実施形態におけるストッパ60は、外形が樽状で、中心部にコアシャフト10が挿通される貫通孔を備えた環状部材であり、コアシャフト10の外周面に当該環状のストッパ60を周設することによって形成されている。このようなストッパ60がコアシャフト60の外周面に周設されることにより、コアシャフト10の外径が部分的に拡径されていることになる。ストッパ60の外形は、コアシャフト10に取り付けることによりその外径を部分的に拡径することができる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば球状、楕円球状、円柱状、多角柱状等であってもよい。
【0026】
筒状体20は、1つまたは複数のコイルによって構成されたコイル体21の外側に外層22を配置してなり、コアシャフト10と先端コイル体12の一部を覆うように、コアシャフト10の外側に設けられている。筒状体20は、コアシャフト10に固定されておらず、コアシャフト10に対して相対移動(摺動)可能に構成されている。すなわち、筒状体20は、コアシャフト10の軸線方向に沿って往復移動可能に構成されている。また、筒状体20は、コアシャフト10に対して相対回転(同軸回転)可能に構成されている。すなわち、筒状体20は、コアシャフト10の軸線を回転軸にして回転可能に構成されている。
【0027】
筒状体20を構成するコイル体21は、円形断面の1本の素線を螺旋状に巻いて円筒形状に形成した単コイルであってもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚線を円筒形状に形成した中空撚線コイルであってもよい。また、コイル体21は、単コイルと中空撚線コイルを組み合わせて構成されていてもよい。コイル体21は、例えば、ステンレス合金(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成することができるが、これに限られるものではなく、上記以外の公知の材料によって形成されていてもよい。
【0028】
外層22は樹脂材料によって形成されており、コイル体21をほぼ全長に亘って被覆している。外層22を形成する樹脂材料については、特に限定されるものではないが、例えばポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等を例示することができる。コイル体21の外側に樹脂製の外層22が形成されることにより、医療用長尺体1を例えば血管内に挿入して進めるとき、医療用長尺体1の外周と血管内壁との接触により生じる摩擦力を低減させることができる。すなわち、コイル体21の外側に外層22が形成されることにより、医療用長尺体1の摺動性を向上させることができる。なお、本実施形態の外層22は先端側から基端側まで曲げ剛性が一定となっているが、例えば外層22を形成する樹脂の硬度を変化させることによって、先端側と基端側の曲げ剛性を変化させてもよい。
【0029】
筒状体20の長さはコアシャフト10の長さよりも短く、また、筒状体20の外径は一定に構成されている。筒状体20の外径は、特に限定されるものではないが、例えば1.0~2.0mmの範囲を例示することができる。
【0030】
本実施形態の筒状体20はコイル体21を外層22で被覆したものであるが、筒状体20の構成はこれに限定されるものではなく、例えばコイル体21のみからなるものであってもよいし、コイル体21の内側に樹脂によって形成された内層を備えるものであってもよいし、あるいはコイル体21の代わりに金属素線を網目状に編み込んだ補強層を備えるものであってもよい。また、筒状体20は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペン)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂製のチューブであってもよい。
【0031】
図2に示すように、筒状体20の基端部には、コアシャフト10が挿通される内腔を有するコネクタ部30が取り付けられている。コネクタ部30は、筒状部20が先端側に取り付けられるハネコネクタ31と、ハネコネクタ31の基端側に取り付けられるYコネクタ32とを備え、コアシャフト10はハネコネクタ31の内腔310からYコネクタ32の内腔320へと挿通される。
【0032】
ハネコネクタ31の内腔310には、筒状体20がコアシャフト10の軸線方向に沿ってコアシャフト10の先端方向に向かって移動したときに、ストッパ60(係合部)と係合することにより、コアシャフト10の先端方向への筒状体20のさらなる移動を規制する被係合部としての張出部311が設けられている。張出部311は、内腔310を構成するハネコネクタ31の内周面の少なくとも一部を内腔310の内側方向に張り出させて形成されており、ストッパ60(係合部)が張出部311に当接することにより、ストッパ60が張出部311に係合する。すなわち、被係合部としての張出部311は、内腔310の少なくとも一部の内径を、係合部としてのストッパ60が通過できないように縮径することにより形成されていることになる。
【0033】
本実施形態における被係合部は、内腔310の内径を部分的に縮径するように、ハネコネクタ31の内腔310の内周面を張り出させて張出部311として形成されているが、係合部としてのストッパ60が通過できない構造となるものであれば、これに限られるものではなく、例えば内腔310の内周面を部分的に突出させた突起部として形成されていてもよいし、ハネコネクタ31とは別体の構造物(例えばチューブ等)を内腔310の内周面に取り付けて形成されていてもよい。
【0034】
ハネコネクタ31の基端側には、Yコネクタ32が取り付けられている。ハネコネクタ31の内腔310とYコネクタ32の内腔320とは連通されており、筒状部20の内部からハネコネクタ31の内腔310、そしてYコネクタ32の内腔320へとコアシャフト10が挿通される。Yコネクタ32は、コアシャフト10が挿通されるメインブランチ321と、Yコネクタ32の内腔320からハネコネクタ31の内腔310を経て筒状部20の内部へと生理食塩水等の液状物を注入するためのサブブランチ322とを備える。メインブランチ321の基端部からはコアシャフト10が引き出され、サブブランチ322には例えばシリンジ等の液状物の供給機構が連結される。
【0035】
本実施形態においてはコネクタ部30をハネコネクタ31及びYコネクタ32の2つの部材からなるものとして構成しているが、これに限られるものではなく、例えば、ハネコネクタ31及びYコネクタ32を一体成型することにより1つの部材として構成してもよいし、コネクタ部30をハネコネクタ31のみから構成するものとしてもよい。また、コネクタ部30をYコネクタ32のみから構成するものとし、Yコネクタ32の内腔320が、ストッパ60(係合部)と係合する被係合部を備える構成としてもよい。この場合、例えばYコネクタ32のメインブランチ321の基端部に、コアシャフト10は挿通可能であるが、ストッパ60(係合部)は通過することができない程度の径を有する細孔を設けた壁部を被係合部として設けてもよい。
【0036】
プロテクタ40は、円錐台形状の中空部材であり、筒状体20とコネクタ部30(ハネコネクタ31)との連結部分を覆うように取り付けられている。医療用長尺体1を手技者が操作して体内に挿入していく際、剛性ギャップが大きい筒状体20とコネクタ部30との連結部分は折れが発生しやすい。そのため、当該連結部分で折れが発生することを防止するために、プロテクタ40が設けられている。本実施形態のプロテクタ40はポリカーボネイトによって形成されているが、特にこれに限定されるものではなく、例えばポリアミドエラストマー等のその他の樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0037】
本実施形態の医療用長尺体1は、筒状体20がコアシャフト10の軸線方向に沿ってコアシャフト10の先端方向に向かって移動したときには、被係合部としての張出部311が係合部としてのストッパ60と係合することにより、コアシャフト10の先端方向への筒状体20のさらなる移動を規制することで、コアシャフト10が筒状体20から抜けないようにする構成を実現している。言い換えれば、コアシャフト10の一部を係合部としてのストッパ60によって他の部分よりも太径化し、コネクタ部30の内腔に設けられた被係合部としての張出部311によってコネクタ部30の基端側出口をそれよりも狭くするとともに、ストッパ60を張出部311よりも先端側に配置することにより、コアシャフト10が筒状体20から抜けないことが実現されている。
【0038】
また、本実施形態の医療用長尺体1は、筒状体20がコアシャフト10の軸線方向に沿ってコアシャフト10の基端方向に向かって移動したときには、把持部としてのトルカー50がコネクタ部30(Yコネクタ32)と当接することにより、コアシャフト10の基端方向への筒状体20のさらなる移動を規制することで、筒状体20がコアシャフト10から抜けないようにする構成を実現している。このとき、トルカー50のコアシャフト10への取付位置を調整することにより、コアシャフト10の先端をどれくらい突出させるのかを制御することも可能である。
【0039】
以上説明してきた医療用長尺体1によれば、コアシャフト10の外側に移動可能な筒状体20が備えられているため、大口径のカテーテルを目的位置まで挿入する際にマイクロカテーテル等を併用する必要がなくなる。また、コアシャフト10が抜けることなく筒状体20との相対位置を適正な範囲に保つためにコアシャフト10の外周に設けられた係合部(ストッパ60)と、当該係合部と係合することによりコアシャフト10の先端方向への筒状体20のさらなる移動を規制する被係合部(張出部311)とが、血管や消化器官等の体腔内へと挿入されることのないコネクタ部30に位置しているため、医療用長尺体1の体腔内へと挿入される部分においては、先端から基端にかけて滑らかな剛性徐変構造を実現することができる。
【0040】
以上、本発明に係る医療用長尺体について図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。例えば、医療用長尺体を構成する各部材の形状、長さや径等は、使用目的や使用位置等に応じて適宜設計されてよい。
【符号の説明】
【0041】
1 医療用長尺体
10 コアシャフト
11 先端接合部
12 先端コイル体
20 筒状体
21 コイル体
22 外層
30 コネクタ部
31 ハネコネクタ
310 内腔
311 張出部(被係合部)
32 Yコネクタ
320 内腔
321 メインブランチ
322 サブブランチ
40 プロテクタ
50 トルカー(把持部)
60 ストッパ(係合部)
図1
図2