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特開2023-28739心疾患の評価支援システム及び評価支援用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028739
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】心疾患の評価支援システム及び評価支援用プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20230224BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61B5/0215 B
A61B10/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134616
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】521369127
【氏名又は名称】川瀬 世史明
(71)【出願人】
【識別番号】521369138
【氏名又は名称】水上 拓也
(71)【出願人】
【識別番号】521369149
【氏名又は名称】合同会社Medboost
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 世史明
(72)【発明者】
【氏名】水上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅文
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA20
4C017AB10
4C017BC11
4C017BD04
4C017EE01
4C017FF05
(57)【要約】
【課題】病変前後の各圧波形に基づいて、病態に対応する冠動脈の血流パターンを推定するための指標を求めること。
【解決手段】評価支援システム10は、患者の冠動脈A内の病変部Bを通過する血流の上流側及び下流側の間の圧較差に基づいて、心疾患の評価を支援するシステムであり、上流側の圧力である近位部圧Pa及び下流側の圧力である遠位部圧Pdをそれぞれ時間に対応させた圧データとして取得する圧データ取得装置11と、圧データから、心疾患の評価用の指標Idを求める演算処理装置12とを備える。演算処理装置12では、心臓の収縮期Sy側の所定時間帯R1における圧較差に対応する値と、心臓の拡張期Di側の所定時間帯R2における圧較差に対応する値との対比に基づき、指標Idが求められる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の冠動脈内の病変部を通過する血流の上流側及び下流側の間の圧較差に基づいて、心疾患の評価を支援するシステムにおいて、
前記上流側の圧力である近位部圧及び前記下流側の圧力である遠位部圧をそれぞれ時間に対応させた圧データとして取得する圧データ取得装置と、前記圧データから、心疾患の評価用の指標を求める演算処理装置とを備え、
前記演算処理装置では、心臓の収縮期側の所定時間帯における圧較差に対応する値と、心臓の拡張期側の所定時間帯における圧較差に対応する値との対比に基づき、前記指標が求められることを特徴とする心疾患の評価支援システム。
【請求項2】
患者の冠動脈内の病変部を通過する血流の上流側及び下流側の間の圧較差に基づいて、心疾患の評価を支援するシステムにおいて、
前記上流側の圧力である近位部圧及び前記下流側の圧力である遠位部圧をそれぞれ時間に対応させた圧データとして取得する圧データ取得装置と、前記圧データから、心疾患の評価用の指標を求める演算処理装置とを備え、
前記演算処理装置は、前記遠位部圧を前記近位部圧で除算した圧力比を算出する圧力比算出部と、前記圧力比から前記指標を求める指標算出部とを備え、
前記指標算出部では、前記圧データの中から収縮期及び拡張期に相当する領域を特定し、前記収縮期側の所定時間帯における前記圧データから特定された前記圧力比を、前記拡張期側の所定時間帯における前記圧データから特定された前記圧力比で除算することで、前記指標が求められることを特徴とする心疾患の評価支援システム。
【請求項3】
前記指標算出部では、前記指標に基づく前記評価を補助する補助指標が更に求められ、当該補助指標は、予め記憶された数式を用い、所定の血流における圧波形から特定された心拍数及び心臓の駆出時間から算出されることを特徴とする請求項2記載の心疾患の評価支援システム。
【請求項4】
前記指標算出部では、前記指標に基づく前記評価を補助する補助指標が更に求められ、当該補助指標として、前記収縮期側及び前記拡張期側の各所定時間帯の比が求められることを特徴とする請求項2記載の心疾患の評価支援システム。
【請求項5】
患者の冠動脈内の病変部を通過する血流の上流側及び下流側の間の圧較差に基づいて、心疾患の評価を支援する指標を求めるためのコンピュータプログラムにおいて、
前記下流側の圧力である遠位部圧を、前記上流側の圧力である近位部圧で除算した圧力比を算出する圧力比算出部と、前記圧力比から前記指標を求める指標算出部としてコンピュータを機能させ、
前記指標算出部では、心臓の収縮期側の所定時間帯における圧較差に対応する値と、心臓の拡張期側の所定時間帯における圧較差に対応する値との対比に基づき、前記指標が求められることを特徴とする心疾患の評価支援用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冠動脈の圧波形に基づき、心疾患の評価等に利用される心疾患の評価支援システム及び評価支援用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈内の血流は、他の臓器と比較して非常に特殊である。先ず、重要臓器であることから、ある血圧の範囲において血流量を一定に保つ自己調節能が備わっている。詳述すると、心臓の筋肉自体が血流を生み出す血圧を作り出しており、通常の臓器であれば血圧が一番高くなる心臓の収縮期に血流量が最大になる。ところが、心臓では、収縮期に心臓の筋肉が収縮している事により、冠動脈の末梢が筋肉によって圧迫され、逆に血流量が制限される。その代わりに、通常の臓器では血液が流れない拡張期に心筋による冠動脈の末梢血管の圧迫が解除され、圧迫された血管が逆に拡張することで生じる吸引力により、血液が多く流れる。
【0003】
このような冠動脈内における血流波形のパターン(以下、単に「血流パターン」と称する)は、大動脈弁狭窄症等の特殊な病態が進行すると変化することが知られており、この血流パターンの変化を測定できれば、このような弁膜症等の病態の重症度評価等に利用可能となる。また、本発明者らの知見によれば、弁膜症の無い心疾患の患者においても、血流パターンが異なる可能性を見出しており、冠動脈の血流パターンの違いや変化を測定することは、これら疾患の原因となる要因の検索や、病的意義の解明の研究に有用となる。
【0004】
そこで、冠動脈内の血流量は、特許文献1等に示されるドップラーフローワイヤと呼ばれるカテーテル型ワイヤを用いることで直接測定可能であり、当該血流量の経時的変化から、冠動脈の血流パターンの検出が可能となる。しかしながら、このようなドップラーフローワイヤによる血流量の測定方法は、満足なデータを得られる可能性が69%程度と報告されており、また、技術的なハードルが高いことからあまり普及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003-512913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現在、冠動脈の病変の重症度を評価する際には、プレッシャーワイヤと呼ばれる圧力センサ付きの冠動脈挿入用ガイドワイヤが用いられることがある。このプレッシャーワイヤでは、冠動脈内における病変部位の上流側及び下流側の血圧が取得される。つまり、冠動脈内に狭窄等の病変が存在した場合、病変を通過する血流が阻害されると、それが、病変前後の圧力差である圧較差として現れる。この圧較差は、病変を通過する血流量が増えると増加するといった関係であるが、圧較差に基づく所定の診断指標を用いることにより、心筋虚血等の心疾患の有無が判断される。この診断指標としては、心筋血流予備量比(FFR:Fractional Flow Reserve)と、瞬時血流予備量比(iFR:instantaneous wave-free ratio)とが知られている。
【0007】
前記FFRは、患者への薬剤投与により微小血管抵抗を低下させた状態で求められる指標であって、冠動脈内の狭窄病変の上流側となる狭窄近位部の圧力(近位部圧)Paと、同下流側となる狭窄遠位部の圧力(遠位部圧)Pdとの圧力比Pd/Paと定義される。当該FFRが、所定値を下回った場合に、心筋虚血があると判断され、冠動脈ステント留置術等の治療を行う目安とされる。
【0008】
一方、前記iFRは、患者に薬剤を投与せずに、安静時において血管内の抵抗値が一般的に低いとされる心臓の拡張中期から末期(WFP:Wave free period)における全ての圧力比Pd/Paの平均値とされ、当該iFRが、所定値を下回った場合に心筋虚血があると判断される。
【0009】
このように、冠動脈内の病変を挟む近位部圧及び遠位部圧の各圧波形をプレッシャーワイヤで取得できることから、本発明者らは、それらの圧較差について、心臓の収縮期中の所定領域と同拡張期中の所定領域の各時相に分けて対比した結果から、絶対量としての血流量は分からないが、冠動脈の血流パターンを推定できることを見出した。
【0010】
本発明は、このような発明者らの知見に基づいて案出されたものであり、その目的は、病変前後の各圧波形に基づいて、病態に対応する冠動脈の血流パターンを推定するための指標を求める心疾患の評価支援システム及び評価支援用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、患者の冠動脈内の病変部を通過する血流の上流側及び下流側の間の圧較差に基づいて、心疾患の評価を支援するシステムにおいて、前記上流側の圧力である近位部圧及び前記下流側の圧力である遠位部圧をそれぞれ時間に対応させた圧データとして取得する圧データ取得装置と、前記圧データから、心疾患の評価用の指標を求める演算処理装置とを備え、前記演算処理装置では、心臓の収縮期中の所定時間帯における圧較差に対応する値と、心臓の拡張期中の所定時間帯における圧較差に対応する値との対比に基づき、前記指標が求められる、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、技術的なハードルの高いドップラーフローワイヤを使った血流量の測定を行うことなく、容易にデータを取得可能な冠動脈内の病変前後の各圧較差から、病態に応じて所定の特徴を有する血流波形パターンを推定できることが期待される。また、圧較差の元になるデータは、心筋血流予備量比(FFR)、瞬時血流予備量比(iFR)を求める際に多くの患者から取得され登録されたものを用いることができ、予後に関する研究も可能となり、血流パターンの変化と病的意義の関連性の解明研究の促進にも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る心疾患の評価支援システムの構成を概略的に表したブロック図である。
図2】前記評価支援システムでの圧力測定部位を説明するための概念図である。
図3】時間に対する冠動脈の血管内圧の関係を表す1心拍の圧波形のグラフである。
図4】(A)、(B)は、指標算出部において抽出される第1及び第2の対象範囲の変形例を説明するための1心拍の圧波形のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1には、本実施形態に係る心疾患の評価支援システムの構成を概略的に表したブロック図が示されている。この図において、前記評価支援システム10は、患者の冠動脈内の病変部を通過する血流の上流側及び下流側の間の圧較差(圧力差)に基づいて、心疾患の評価を支援するシステムである。この評価支援システム10は、血管内圧を取得時刻に対応させた圧波形からなる圧データを取得する圧データ取得装置11と、圧データ取得装置11で取得された圧データから、心疾患の評価用の指標を演算で求める演算処理装置12と、演算処理装置で求めた指標等を含む各種情報を表示するディスプレイ等の表示装置13とを含んでいる。
【0016】
前記圧データ取得装置11では、冠動脈内の狭窄病変部を挟んだ上流側及び下流側のそれぞれの血管内圧(冠動脈内圧)の圧波形を取得可能な装置が用いられる。この圧データ取得装置11では、図2に示されるように、患者の冠動脈A内における狭窄病変部Bを挟んだ2箇所の血管内圧の差となる圧較差に関する圧データを経時的に取得可能となっている。具体的に、この圧データ取得装置11としては、大動脈圧に相当する狭窄病変部Bの上流側となる狭窄近位部A1の圧力である近位部圧Paと、同下流側となる狭窄遠位部A2の圧力である遠位部圧Pdとを測定可能な公知の心臓カテーテル検査装置が適用される。当該圧データ取得装置11は、狭窄近位部A1に先端側が位置するカテーテルCに設けられた検知部S1で近位部圧Paを検出できるとともに、カテーテルCの管腔内から狭窄遠位部A2まで延びる圧力センサS2付きの金属製のガイドワイヤW(プレッシャーワイヤ)により、その先端側の圧力を遠位部圧Pdとして検出可能な公知の構造のものが採用されている。
【0017】
前記演算処理装置12は、CPU等の演算装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、当該コンピュータを以下の各部として機能させるためのプログラムがインストールされている。
【0018】
この演算処理装置12では、心臓の収縮期側の所定時間帯における圧較差に対応する値と、同拡張期側の所定時間帯における圧較差に対応する値との対比に基づき、冠動脈の血流波形のパターンである血流パターンに対応する指標が求められる。
【0019】
すなわち、この演算処理装置12は、遠位部圧Pdを近位部圧Paで除算した圧力比Pd/Paを算出する圧力比算出部15と、所定の時間帯で抽出された圧力比Pd/Paから、冠動脈の血流波形のパターンである血流パターンに対応する指標を求める指標算出部16とを備えている。
【0020】
前記圧力比算出部15では、圧データ取得装置11での所定の測定時間内において、各時刻で取得した近位部圧Pa及び遠位部圧Pdから、各時刻での圧力比Pd/Paを算出し、各時刻に対応させて記録するようになっている。
【0021】
前記指標算出部16では、前記圧データの中から収縮期及び拡張期に相当する領域を特定し、収縮期側の所定範囲における圧力比Pd/Paを、拡張期側の所定範囲における圧力比で除算することで、血流パターンに対応する指標を求めるようになっている。
【0022】
ここでは、具体的に、図3に示されるように、先ず、経時的な圧データである近位部圧Pa及び遠位部圧Pdの圧波形(同図中実線)から、大動脈弁の閉鎖時に圧強度が大きく変動する重複切痕(DN)に相当する時間(同図中1点鎖線)が特定される。そして、当該DNの部分を境にその前後の時間帯における1心拍中の圧データが、収縮期Syに位置する圧データ、拡張期Diの圧データとして特定される。
【0023】
次に、1心拍中の収縮期Syにおける各時刻の圧データの中から、所定の時間帯における第1の対象範囲R1の圧データが抽出され、当該第1の対象範囲R1について、圧力比Pd/Paの平均値が採用値ASとして特定される。同様に、1心拍中の拡張期Diにおける各時刻の圧データの中から、所定の時間帯における第2の対象範囲R2の圧データが抽出され、当該第2の対象範囲R2について、圧力比Pd/Paの平均値が採用値ADとして特定される。
【0024】
本実施形態では、前記第1の対象範囲R1として、1心拍中の圧データにおける収縮期Syの領域全域が採用され、前記第2の対象範囲R2として、1心拍中の圧データにおける拡張期Diの領域全域が採用される。
【0025】
次に、第1及び第2の対象範囲R1、R2について、次式の通り、収縮期Sy側の採用値ASを拡張期側の採用値ADで除算することにより、前記指標(次式のId)としてのS/D比が求められる。
Id=AS/AD
【0026】
なお、本発明において、第1及び第2の対象範囲R1、R2は、前述の範囲に限定されず、収縮期Sy側の所定範囲と、拡張期Di側の所定範囲とに区分されている限り、次のような態様とすることもできる。例えば、図4(A)に示されるように、DN部分を挟む所定時間帯を除外した収縮期Sy側の領域と拡張期Di側の領域を、第1及び第2の対象範囲R1、R2としても良い。また、同図(B)に示されるように、拡張期Di側の第2の対象範囲R2として、iFR(瞬時血流予備量比)で用いられる心臓の拡張中期から末期(WFP:Wave free period)の時間帯など拡張期Diの一部を切り出す形としても良い。また同様に収縮期Syの一部を切り出す形としても良い。更に、前述の収縮期Sy側の所定範囲としては、当該収縮期Sy中の領域からDN部分を挟んだ拡張期Diの一部領域まで含まれるようにしても良い。同様に、前述の拡張期Di側の所定範囲としては、当該拡張期Di中の領域からDN部分を挟んだ収縮期Syの一部領域まで含まれるようにしても良い。
【0027】
また、前記各採用値AS、ADとしては、各対象範囲R1、R2での圧力比Pd/Paの平均値でなく、その範囲の中の圧力比Pd/Paの値から、所定の手法による選択或いは計算によって特定することもできる。
【0028】
更に、指標Idとしては、前述のS/D比に限らず、その逆算値等、心臓の収縮期中の第1の対象範囲における圧較差に対応する値と、心臓の拡張期中の第2の対象範囲における圧較差に対応する値との対比に基づく値であれば、適宜採用可能である。
【0029】
本発明者らの研究によれば、前述のS/D比は、所定の病態に表れる冠動脈の血流パターンに対応すると考えられ、血流量を計測しなくても、健常者に対する血流パターンの変化を病態毎に推定可能になり、事前研究等によって予め取得、設定された病態毎の閾値を用いることで、特定の心疾患の可能性の検知が可能となり得る。本発明者らの検証結果による知見では、例えば、S/D比が、閾値1.087以上の場合は、大動脈弁狭窄症の存在が示唆される。
【0030】
以上の本実施形態によれば、冠動脈中の血流量の測定を行わずに、血流パターンに対応する新たな指標Idの導出により、様々な心疾患を比較的簡単に推定可能となる。つまり、ベースとなる圧データは、前述のFFRやiFRとして、現在、一般的に冠動脈病変の治療適応を決定する目的にて測定されているデータから測定可能であり、従来のドップラーフローワイヤによる血流量の測定による方法と比較して簡便で高い再現性を得ることが期待できる。また、ドップラーフローワイヤを利用して従来の血流パターンを測定する方法は、技術的なハードルが高く、大規模な臨床治験を組む事が困難である。そのため、例え血流パターンの変化が病的な意義を持っていたとしてもそれを明らかにする事が極めて困難であった。ところが、本実施形態のように、圧較差から血流パターンを類推する方法であれば、元となるデータであるFFRやiFRは、数千人にのぼる患者数を登録している研究もあり、予後に関する研究も可能となると考えられる。更に、FFRやiFRにおける最大冠充血時と安静時での各時相における圧較差の比較も可能になり、これに基づき、FFRやiFRでの診断補充等を行うこともできる。
【0031】
前記実施形態の変形例として、前記指標算出部16では、圧データ取得装置11で得られた圧波形から、前記指標IdとしてのS/D比による評価を補助する補助指標Idsを付加的に求めることもできる。
【0032】
この変形例では、取得した圧波形から、心拍数と1心拍中の収縮期側の所定時間である駆出時間を特定し、以下の数式により、前記所定時間から心拍数の影響を除外した補助指標Idsが更に求められる。
Ids=K・(心拍数)+(所定時間)
ここで、係数Kは、男女差等その他の要因によって変化する定数であり、指標算出部16に予め記憶若しくは設定された値となる。なお、ここでの所定時間としては、収縮期時間を含む前記第1の対象範囲R1の時間が適用される。
【0033】
また、この補助指標Idsとして、収縮期時間と拡張期時間の比を含む、収縮期Sy側及び拡張期側Diの前述の所定範囲(対象範囲R1、R2)の各時間の比を採用することも可能である。
【0034】
以上の補助指標Idsは、以下の目的での臨床使用が期待できる。ここでの臨床使用としては、例えば、心筋虚血指標としての利用、心収縮機能の推測、冠血流予備能(CFR)や微小血管抵抗(IMR)の推定等が想定される。
【0035】
以上の変形例によれば、前記指標Idに補助指標Idsを加えることで、虚血性心疾患、弁膜症、心筋症等のより広範な心疾患の診断や研究等により有用になると考えられる。
【0036】
なお、補助指標Idsを求める際の圧データとしては、前記近位部圧Pa及び遠位部圧Pdのみならず、末梢血管圧等の他の血管内圧を利用することもできる。
【0037】
また、本発明における圧データ取得装置11としては、前記実施形態の構造のものに限定されず、前述の血管内圧を測定可能な他の装置やシステムであれば何でも適用可能である。
【0038】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 評価支援システム
11 圧データ取得装置
12 演算処理装置
15 圧力比算出部
16 指標算出部
A 冠動脈
B 狭窄病変部(病変部)
Di 拡張期
Id 指標
Ids 補助指標
Pa 近位部圧
Pd 遠位部圧
Sy 収縮期
図1
図2
図3
図4