(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028740
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】液圧クランプ装置、クランプシステム、ロボットアーム、被クランプ部材の固定方法、および加工品の加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20230224BHJP
F15B 3/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B23Q3/06 303A
F15B3/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134617
(22)【出願日】2021-08-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】394007849
【氏名又は名称】株式会社堀内機械
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真下 和昌
(72)【発明者】
【氏名】荘司 直毅
(72)【発明者】
【氏名】笠井 一成
(72)【発明者】
【氏名】細井 耕平
(72)【発明者】
【氏名】戸波 照喜
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】前田 宗万
(72)【発明者】
【氏名】辻本 佳孝
【テーマコード(参考)】
3C016
3H086
【Fターム(参考)】
3C016CA03
3C016CB06
3C016CC01
3C016CC02
3H086BA03
3H086BA13
3H086BA19
3H086BB02
3H086BB08
3H086BC12
3H086BC20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型で、かつ、1台のクランプ装置で確実に被クランプ部材をクランプ/アンクランプすることのできる液圧クランプ装置、クランプシステム、および、クランプ方法を提供する。
【解決手段】チャッキング装置10と引込装置20とを含み、被クランプ部材をクランプおよび/またはアンクランプする液圧クランプ装置300において、チャッキング装置10は、2つのチャック30、40と、2つのチャック30、40を開閉するチャッキング用液圧シリンダ50と、を備え、2つのチャック30、40はそれぞれ、被クランプ部材を両側から把持する2つの爪60、70を有し、引込装置20は、チャッキング装置10を引き込み、および/または押し出す引込用液圧シリンダ80を備え、液圧クランプ装置300は、チャッキング装置10で被クランプ部材を把持した後、引込装置20でチャッキング装置10を引き込む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クランプ部材をクランプする液圧クランプ装置であって、
前記被クランプ部材を把持するチャッキング装置と、
前記チャッキング装置のチャックを収納するケースと、
前記被クランプ部材を前記ケースに引き込む引込装置と、を備え、
前記チャッキング装置は、2つの前記チャックと、2つの前記チャックを開閉するチャッキング用液圧シリンダを有し、
前記引込装置は、前記チャッキング装置を引き込み可能な引込用液圧シリンダを有し、
前記ケースは、前記被クランプ部材と当接し得る当接部を有し、
前記被クランプ部材は、前記当接部に当接し、かつ前記引込装置から引き込み力が与えられることで、前記ケースに固定される、液圧クランプ装置。
【請求項2】
2つの前記チャックは、前記被クランプ部材を両側から把持する2つの爪を有し、
前記ケースは、前記被クランプ部材の少なくとも一部を挿入して前記2つの爪で把持するための開口部を有し、
前記2つの爪で前記被クランプ部材を把持する方向と、前記引込装置で前記チャッキング装置を引き込み、および/または押し出す方向とは略直交する、請求項1に記載の液圧クランプ装置。
【請求項3】
2つの前記チャックは、固定チャックと可動チャックとからなり、前記固定チャックは固定爪を有し、前記可動チャックは可動爪を有し、
前記可動チャックは、前記固定チャックに回転軸を中心に回転可能に支持され、
前記チャックは、前記ケースの中で引き込み方向に移動可能であって、
前記チャッキング用液圧シリンダの第1ピストンロッドは、前記可動チャックを押し下げて、前記チャッキング装置の2つの前記爪を閉じる、請求項2に記載の液圧クランプ装置。
【請求項4】
前記チャッキング装置は、2つの前記爪を開くスプリングをさらに備える、請求項3に記載の液圧クランプ装置。
【請求項5】
前記引込装置は、前記引込用液圧シリンダの第2ピストンロッドが、前記固定チャックの駆動支点と接続され、前記駆動支点は前記回転軸の後部に配置される、請求項3または4に記載の液圧クランプ装置。
【請求項6】
前記引込用液圧シリンダは、ピストンの両側に液室と空気室とを有し、前記液室に液圧を印加することによって前記チャッキング装置を引き込み、前記空気室に空気圧を印加することによって前記チャッキング装置を押し出す、請求項2から5のいずれか1項に記載の液圧クランプ装置。
【請求項7】
前記当接部は、複数の凸部であり、
前記ケースの前記開口部の周辺に前記複数の凸部を有し、
前記引込装置で前記被クランプ部材を把持した前記チャッキング装置を引き込む場合に、前記複数の凸部が前記被クランプ部材に接触して前記被クランプ部材を固定する、請求項2から6のいずれか1項に記載の液圧クランプ装置。
【請求項8】
前記複数の凸部は3個である、請求項7に記載の液圧クランプ装置。
【請求項9】
前記複数の凸部は6個である、請求項7に記載の液圧クランプ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液圧クランプ装置と、
空気圧を液圧に増圧変換するエアーハイドロブースタと、を備えるクランプシステムであって、
前記エアーハイドロブースタの液圧回路が、第1制御弁を介して前記チャッキング装置に接続されるとともに、第2制御弁を介して前記引込装置に接続され、
前記第1制御弁が導通することにより、前記チャッキング用液圧シリンダに液が共有されて前記被クランプ部材を把持し、かつ、前記第2制御弁が導通することにより、前記引込用液圧シリンダに液が供給されて前記被クランプ部材を引き込み、前記被クランプ部材が前記液圧クランプ装置に固定可能である、クランプシステム。
【請求項11】
前記第1制御弁および前記第2制御弁は、空気圧を印加することによって逆止弁状態と開放状態とを切り換えることができるエアーパイロット逆止弁であって、
前記第1制御弁は、前記逆止弁状態では、前記エアーハイドロブースタ側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞し、
前記第2制御弁は、前記逆止弁状態では、前記引込装置側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞する、請求項10に記載のクランプシステム。
【請求項12】
前記第1制御弁および前記第2制御弁は、電磁弁と逆止弁とを並列接続した制御弁であって、
前記第1制御弁は、前記電磁弁を閉塞した場合は、前記エアーハイドロブースタ側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞し、
前記第2制御弁は、前記電磁弁を閉塞した場合は、前記引込装置側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞する、請求項10に記載のクランプシステム。
【請求項13】
前記被クランプ部材をクランプするクランプフェーズと、前記被クランプ部材を引き込んでより強く固定する引込フェーズと、前記被クランプ部材を押し出す押出フェーズと、前記被クランプ部材をアンクランプするアンクランプフェーズと、を有し、
前記エアーハイドロブースタの液圧は、前記クランプフェーズと前記引込フェーズで加圧状態であって、前記押出フェーズと前記アンクランプフェーズで減圧状態であり、
前記第1制御弁は、前記クランプフェーズ、前記引込フェーズ、および前記押出フェーズで逆止弁として機能し、前記アンクランプフェーズで開放状態であり、
前記第2制御弁は、前記クランプフェーズ、前記押出フェーズ、および前記アンクランプフェーズで逆止弁として機能し、前記引込フェーズで開放状態である、請求項11から12のいずれか1項に記載のクランプシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のクランプシステムが搭載された、ロボットアーム。
【請求項15】
請求項10に記載のクランプシステムで前記被クランプ部材を固定し、前記被クランプ部材を備える加工品を加工する、加工品の加工方法。
【請求項16】
請求項10に記載のクランプシステムを搭載したロボットアームで、前記被クランプ部材を備えた加工品の位置を移動させ、前記加工品の加工面を変えて加工する、加工品の加工方法。
【請求項17】
チャッキング装置と引込装置とを含む液圧クランプ装置によって、被クランプ部材をクランプおよび/またはアンクランプする方法であって、
前記被クランプ部材をクランプする場合、まず前記チャッキング装置の2つの爪で前記被クランプ部材を把持し、次に、前記引込装置で前記被クランプ部材を把持した前記チャッキング装置を引き込み、
前記被クランプ部材をアンクランプする場合には、まず、前記引込装置で前記被クランプ部材を把持した前記チャッキング装置を押し出し、次に、前記チャッキング装置の2つの前記爪を開いて前記被クランプ部材を開放し、
前記チャッキング装置の2つの爪で前記被クランプ部材を把持する方向と、前記引込装置で前記被クランプ部材を把持した前記チャッキング装置を引き込み、および/または押し出す方向とは、略直交している、被クランプ部材の固定方法。
【請求項18】
被クランプ部材を液圧クランプ装置に固定する固定方法であって、
前記液圧クランプ装置は、チャッキング装置と引込装置とケースとを備え、
前記チャッキング装置の爪で前記被クランプ部材を把持する把持工程と、
前記把持工程で把持した前記被クランプ部材を前記チャッキング装置に引き込む引込工程と、を有し、
前記被クランプ部材は、前記ケースの当接部に当接し、かつ前記引込装置から引込み力が与えられることで、前記ケースに固定される、被クランプ部材の固定方法。
【請求項19】
請求項18に記載の被クランプ部材の固定方法で前記被クランプ部材を備えた加工品を固定し、前記加工品を加工する、加工品の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被クランプ部材をクランプおよび/またはアンクランプする液圧クランプ装置、クランプシステム、ロボットアーム、被クランプ部材の固定方法、および被クランプ部材を備えた加工品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クランプ装置に関しては多くの発明が出願されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2003-251507号公報)には、空油圧変換器を用いた油圧クランプ装置の応答性と駆動速度を高めるクランプ装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の工具やワーク等の被クランプ部材をクランプ又は/及びアンクランプする油圧クランプ装置は、被クランプ部材に係合可能に設けられたクランプ部材と、クランプ部材を駆動するための駆動部材と、駆動部材を駆動するための油圧シリンダと、空圧源からの空圧を蓄圧するとともに、蓄圧した空圧により油圧を発生する空油圧変換器と、空油圧変換器と油圧シリンダとの間に配設された油圧切換弁と、空油圧変換器と空圧源との間に配設された空圧切換弁と、クランプ又は/及びアンクランプに応じて油圧切換弁および空圧切換弁の切換タイミングを独立に制御する弁制御手段と、を具備することを特徴としている。
【0005】
また、特許文献2(特開2010-131724号公報)には、主軸装置のクランプ機構のアンクランプ動作に要する油圧ユニットの低コスト化および主軸装置の移動とクランプ機構のアンクランプ動作との同期の簡略化を図った工作機械が開示されている。
【0006】
特許文献2に記載の工作機械は、油圧により工具ホルダをアンクランプするクランプ機構を備え、工具交換位置と加工位置との間を移動可能な主軸装置を有する工作機械であって、主軸装置に連結され主軸装置の工具交換位置への移動動作に連動して油圧を発生する油圧発生手段を備え、油圧発生手段からの油圧によりクランプ機構のアンクランプ動作を行う構成としたことを特徴としている。
【0007】
また、特許文献3(特開2004-114232号公報)には、主軸ユニットの小型・軽量化、主軸の短小化が可能で、高価な油圧発生装置を必要としない主軸の工具クランプ・アンクランプ装置が開示されている。
【0008】
特許文献3に記載の工具クランプ・アンクランプ装置は、機械本体に対して移動可能な主軸ユニットに設けられた中空状の主軸の先端での工具のクランプ・アンクランプを行なう装置であって、主軸内に軸方向移動可能に配置されて軸方向移動により工具のクランプ・アンクランプを行なうドローバーと、ドローバーをクランプ方向に付勢する付勢手段と、ドローバーをアンクランプ方向に移動させるドローバー駆動手段とを備えているものにおいて、
主軸ユニット側にドローバーおよび付勢手段が設けられ、機械本体側に連結された主軸の回転を利用してドローバーをアンクランプ方向に移動させるドローバー駆動手段が設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、特許文献4(特開平06-155119号公報)には、種々の大きさのワークに対してワーク搬出入、クランプ装置の位置調整、ツール交換後のツール測定を自動的に行い、平板の穿孔加工処理の全自動化により省力化と量産化を図ることのできる平板用全自動穿孔機が開示されている。
【0010】
特許文献4に記載の平板用全自動穿孔機は、ツールを装着した主軸ヘッドが移動する加工領域の両側に、ワーク搬入待機領域とワーク搬出待機領域が設けられた穿孔機本体と、この穿孔機本体の搬入側に設置され、移動可能なパレット上にワークを複数ステーションに分けて山積みする搬入側ワークストッカーと、この搬入側ワークストッカーのパレット上のワークを吸着して穿孔機本体のワーク搬入待機位置に搬入可能な搬入用フィーダと、
ワーク搬入待機領域に配置され、搬入用フィーダにより搬入されたワークを位置決めするワーク位置決め装置と、位置調整可能な複数のクランパーによりワークを把持してワーク搬入待機領域から加工領域へ、加工領域からワーク搬出待機領域へ移動可能な自動クランプ装置と、加工領域の側方に配置され、主軸ヘッドのツールを交換するツール自動交換装置および交換されたツールを自動測定するツール自動測定装置と、ワーク搬出待機領域のワークを吸着して搬出側ワークストッカーのパレット上にワークを移載可能な搬出用フィーダと、穿孔機本体の搬出側に設置され、移動可能なパレット上にワークを複数ステーションに分けて山積みする搬出側ワークストッカーと、ワーク情報に基づいて各装置を制御するNC制御装置を備えている。
【0011】
また、特許文献5(特開平10-076332号公報)には、タレットパンチプレス等の板金加工機械における加工済みワークWを搬出するためのアンローダ装置において、そのクランプ機構に、従来のように高価なエアシリンダ等のエア機器を用いず、コストが安く、作動時間が短く、かつワークWの不時の脱落の怖れのない機械式のワーククランプ装置が開示されている。
【0012】
特許文献5に記載のワーククランプ装置は、クランパー本体の基部に、スライドシリンダにより出没自在に摺動し得るネール部材と、このネール部材上との間にワークの一転縁部をくさび状に挟持し得る枢動式クランパーを設け、アンローダをワークに対して前進することによりワークを把持し、所定距離搬送の後、ネール部材を摺動撤退させることにより、ワークを所定の積載部に設置するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003-251507号公報
【特許文献2】特開2010-131724号公報
【特許文献3】特開2004-114232号公報
【特許文献4】特開平06-155119号公報
【特許文献5】特開平10-076332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のクランプ装置には以下のような課題があった。
従来の機械式のクランプ装置では、クランプ装置の構造が複雑で形状が大きいため、例えばロボットのアームにクランプ装置を設置すると、ロボットアームの可動範囲が限定されるという問題があった。
また、油圧式のクランプ装置ではクランプ部を小型化することはできるが、迅速かつ確実にクランプするためには、例えば工作機械の工具ホルダのような特定の形状の被クランプ部材に対して、カスタム設計したクランプ装置が必要であり、切削工程ごとに専用のクランプ装置を用意する必要があった。
また、油圧式のクランプ装置の場合、クランプ装置に油圧を供給する必要があり、油圧が提供できない現場では油圧式のクランプ装置は使用できないとの課題があった。
特に、クランプ装置に金属等の加工品を固定して切削加工等をする場合、加工品には様々な方向の力が強くかかるため、クランプ装置と加工品とは強固に固定されなければ高精度の加工をすることができない。特に、加工性を高めるために、加工品をロボットアームの先端に固定する場合には、ロボットアームの可動性と強固な固定力とを両立したクランプ装置が必要となる。
【0015】
特許文献1に記載の油圧クランプ装置は、クランプ装置の小型化が可能であり、また、空油圧変換器を用いることで、空気圧を用いてクランプ装置を駆動することができる。
しかし、この油圧クランプ装置は、被クランプ部材として、工具ホルダの後端に取り付けられたプルスタッドを対象としており、ドローバーの先端にプルスタッドに係合可能なようにコレットが取り付けられている。
したがって、この油圧クランプ装置は、プルスタッドを取り付けた工具ホルダ以外には用いることができない。
【0016】
特許文献2に記載の工作機械に設置されるクランプ装置も油圧クランプ装置である。この油圧クランプ装置は、さらに、油圧発生手段である第1油圧シリンダを備え、第1油圧シリンダをモータで駆動することにより油圧を発生し、発生した油圧を第2油圧シリンダに供給し、クランプ装置のアンクランプを行っている。
このクランプ装置の場合油圧駆動源を必要としない点では価格的に有利であるが、モータと第1油圧シリンダによる油圧発生手段は大型でかつ複雑である。
また、このクランプ装置も工具ホルダ専用のクランプ装置であり、一般的な被クランプ部材のクランプに用いることはできない。
【0017】
特許文献3に記載の工具クランプ・アンクランプ装置は、高価な油圧発生装置を必要としない装置であって、主軸の回転を利用してドローバーをアンクランプ方向に移動させるドローバー駆動装置と空気シリンダとを組み合わせることで、油圧を必要としないクランプ装置を実現している。
このクランプ装置も油圧発生装置を必要としない点では価格的に有利であるが、主軸の回転を用いる必要がある点、また、工具ホルダ専用のクランプ装置である点で、一般的な被クランプ部材のクランプに用いることはできない。
【0018】
特許文献4に記載の平板用全自動穿孔機の油圧クランパーは、油圧シリンダにより上下する可動部材に可動爪を、シリンダ側に固定爪を取り付け、可動爪と固定爪で一枚のワークあるいは積層した複数枚のワークを把持する。したがって、板状の被クランプ部材であればいろいろな形状の被クランプ部材をクランプすることができる。しかし、この油圧クランパーは、板状の被クランプ部材の対向する両端に油圧クランパーを配置する必要がある。したがって、最低でも2個(実施例の場合は4個)のクランパーが必要になる。また、板状でない被クランプ部材をクランプすることも困難である。
【0019】
特許文献5に記載のワーククランプ装置は機械式のワーククランプ装置であって、高価な油圧発生装置を必要としない点では有利であるが、構造が複雑で形状も大きいことから、ロボットのアームに設置するクランプ装置には用いることができない。
【0020】
本発明の主な目的は、小型で、かつ、工具ホルダのプルスタッドのような特殊な形状でなくても、1台のクランプ装置で確実に被クランプ部材をクランプ/アンクランプすることのできる液圧クランプ装置、および、クランプ方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、小型であり、かつ、被クランプ部材に様々な方向の力が加えられても確実に固定することができる、液圧クランプ装置およびクランプ方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、1台のエアーハイドロブースタを追加することで、空気圧を入力として作動することのできるクランプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)
一局面に従う液圧クランプ装置は、被クランプ部材をクランプする液圧クランプ装置であって、被クランプ部材を把持するチャッキング装置と、チャッキング装置のチャックを収納するケースと、被クランプ部材をケースに引き込む引込装置と、を備え、チャッキング装置は、2つのチャックと、2つのチャックを開閉するチャッキング用液圧シリンダを有し、引込装置は、チャッキング装置を引き込み可能な引込用液圧シリンダを有し、ケースは、被クランプ部材と当接し得る当接部を有し、被クランプ部材は、当接部に当接し、かつ引込装置から引き込み力が与えられることで、ケースに固定されるものである。
【0022】
これにより、被クランプ部材は、引込用液圧シリンダから強い引き込み力が与えられるので、ケースに強く当接される。したがって、被クランプ部材はケースと面または複数の点で強く当接して固定されるので、単にチャッキングの爪で把持される場合と比べて、様々な方向の力が加えられても確実に固定することができる。
また、液圧クランプ装置は、チャッキング用液圧シリンダと引込用液圧シリンダの2つの駆動系を備えるのみでよく、かつ、被クランプ部材はケースに当接して固定されるので特別な治具が不要であるため、液圧クランプ装置を小型にすることができる。よって、液圧クランプ装置をロボットアームなどに固定してもアームの可動域を確保することができる。
したがって、加工品を本発明の液圧クランプ装置で固定することによって、高精度かつ加工性の高い加工をすることができる。
【0023】
(2)
第2の発明にかかる液圧クランプ装置は、一局面に従う液圧クランプ装置において、
2つのチャックは、被クランプ部材を両側から把持する2つの爪を有し、ケースは、被クランプ部材の少なくとも一部を挿入して2つの爪で把持するための開口部を有し、2つの爪で被クランプ部材を把持する方向と、引込装置でチャッキング装置を引き込み、および/または押し出す方向とは略直交する。
【0024】
工具ホルダのプルスタッドのような特殊な形状をしていない、一般的な被クランプ部材をクランプする場合、2つの爪で被クランプ部材を両側から把持することが考えられるが、この場合、例えば、被クランプ部材が、2つの爪の支点同士を結んだ直線を軸として回転するなどの動きによって、クランプ装置による確実なクランプができない場合がある。
これに対して、一局面に従う液圧クランプ装置では、チャッキング装置で被クランプ部材を把持した後、被クランプ部材を把持したチャッキング装置を引き込み、被クランプ部材をクランプ装置のケースの前面に接触させることによって、上記、被クランプ部材の回転などによる不安定性を排除し、安定したクランプ動作を実現している。
【0025】
(3)
第3の発明にかかる液圧クランプ装置は、第2の発明に従う液圧クランプ装置において、チャッキング装置のチャックは、固定チャックと可動チャックとからなり、固定チャックは固定爪を有し、可動チャックは可動爪を有し、可動チャックは、固定チャックに回転軸を中心に回転可能に支持され、チャックは、ケースの中で引き込み方向に移動可能であって、チャッキング用液圧シリンダの第1ピストンロッドは、可動チャックを押し下げて、チャッキング装置の2つの爪を閉じるようにしてもよい。
【0026】
この場合、液圧クランプ装置は可動チャックを回転軸を中心に回転させることにより、被クランプ部材を固定爪と可動爪とで把持することができるため、1台のチャッキング用液圧シリンダで可動チャックを押し下げるだけで被クランプ部材をクランプすることができる。
【0027】
(4)
第4の発明にかかる液圧クランプ装置は、第3の発明にかかる液圧クランプ装置において、チャッキング装置は、2つの爪を開くスプリングをさらに備えてもよい。
【0028】
この場合、チャッキング用液圧シリンダの液圧が低下するとスプリングが可動チャックを押し上げるため、迅速かつ確実に被クランプ部材のアンクランプを行うことができる。
【0029】
(5)
第5の発明にかかる液圧クランプ装置は、第3の発明または第4の発明にかかる液圧クランプ装置において、引込装置は、引込用液圧シリンダの第2ピストンロッドが、固定チャックの駆動支点と接続され、駆動支点は回転軸の後部に配置されてもよい。
【0030】
この場合、大きさの異なる被クランプ部材を把持した場合でも、固定チャックはその上下方向の位置が変化しないため、駆動支点と引込用液圧シリンダの第2ピストンロッドとを安定して接続することができる。したがって、引込装置でチャッキング装置を引き込んだ場合にも、把持した被クランプ部材が外れることがない。
【0031】
(6)
第6の発明にかかる液圧クランプ装置は、第2から第5の発明にかかる液圧クランプ装置において、引込用液圧シリンダは、ピストンの両側に液室と空気室とを有し、液室に液圧を印加することによってチャッキング装置を引き込み、空気室に空気圧を印加することによってチャッキング装置を押し出すようにしてもよい。
【0032】
この場合、より強い圧力が必要なチャッキング装置の引き込み動作に、より高圧の液圧を用いることができ、被クランプ部材をクランプ装置のケースの前面に強く接触させることによって、より安定したクランプ動作を実現することができる。
【0033】
(7)
第7の発明にかかる液圧クランプ装置は、第2から第6の発明にかかる液圧クランプ装置において、当接部は、複数の凸部であり、ケースの開口部の周辺に複数の凸部を有し、引込装置で被クランプ部材を把持したチャッキング装置を引き込む場合に、複数の凸部が被クランプ部材に接触して被クランプ部材を固定してもよい。
【0034】
この場合、被クランプ部材の液圧クランプ装置側の面に凹凸がある場合でも、複数の凸部が被クランプ部材に接触し、被クランプ部材を確実に固定することができる。
【0035】
(8)
第8の発明にかかる液圧クランプ装置は、第7の発明にかかる液圧クランプ装置において、凸部は3個であってもよい。
【0036】
この場合、液圧クランプ装置のケースの前面で被クランプ部材を3点支持することができるため、被クランプ部材をより確実に固定することができる。
【0037】
(9)
第9の発明にかかる液圧クランプ装置は、第7の発明にかかる液圧クランプ装置において、複数の凸部は6個であってもよい。
【0038】
この場合、被クランプ部材を6個の凸部で固定することができる。特に、被クランプ部材が高温の場合など、被クランプ部材の剛性が十分でない場合も、安定して被クランプ部材を固定することができる。また、凸部の数が少ない場合に比べて、被クランプ部材に凸部の当接跡が残りにくい。
【0039】
(10)
他の局面に従うクランプシステムは、一局面から第9の発明のいずれかにかかる液圧クランプ装置と、空気圧を液圧に増圧変換するエアーハイドロブースタと、を備えるクランプシステムであって、エアーハイドロブースタの液圧回路が、第1制御弁を介してチャッキング装置に接続されるとともに、第2制御弁を介して引込装置に接続され、第1制御弁が導通することにより、チャッキング用液圧シリンダに液が共有されて被クランプ部材を把持し、かつ、第2制御弁が導通することにより、引込用液圧シリンダに液が供給されて被クランプ部材を引き込み、被クランプ部材が液圧クランプ装置に固定可能である。
【0040】
これにより、小型であり、かつ、被クランプ部材に様々な方向の力が加えられても確実に固定することができる、クランプシステムとすることができる。
【0041】
(11)
第11の発明にかかるクランプシステムは、第10の発明に係るクランプシステムにおいて、第1制御弁および第2制御弁は、空気圧を印加することによって逆止弁状態と開放状態とを切り換えることができるエアーパイロット逆止弁であって、第1制御弁は、逆止弁状態では、エアーハイドロブースタ側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞し、第2制御弁は、逆止弁状態では、引込装置側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞してもよい。
【0042】
これにより、液圧によりチャッキング装置が一度チャックすると、被クランプ部材は把持を維持する。そして、逆止弁はエアのみで切り替え可能なので、被クランプ部材の引込み制御をエアのみで行うことができる。したがって、一つの液圧源と、複数エア回路でクランプシステムを実現することができる。
【0043】
(12)
第12の発明にかかるクランプシステムは、第10の発明に係るクランプシステムにおいて、第1制御弁および第2制御弁は、電磁弁と逆止弁とを並列接続した制御弁であり、第1制御弁は、電磁弁を閉塞した状態では、エアーハイドロブースタ側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞し、第2制御弁は、電磁弁を閉塞した状態では、引込装置側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞するものである。
【0044】
これにより、第10の発明と同様の動作を、電気信号を用いた電磁弁の制御で行うことができる。
【0045】
(13)
第13の発明にかかるクランプシステムは、第11から12のいずれかの発明に係るクランプシステムにおいて、被クランプ部材をクランプするクランプフェーズと、被クランプ部材を引き込んでより強く固定する引込フェーズと、被クランプ部材を押し出す押出フェーズと、被クランプ部材をアンクランプするアンクランプフェーズと、を有し、エアーハイドロブースタの液圧は、クランプフェーズと引込フェーズで加圧状態であって、押出フェーズとアンクランプフェーズで減圧状態であり、第1制御弁は、クランプフェーズ、引込フェーズ、および押出フェーズで逆止弁として機能し、アンクランプフェーズで開放状態であり、第2制御弁は、クランプフェーズ、押出フェーズ、およびアンクランプフェーズで逆止弁として機能し、引込フェーズで開放状態であってもよい。
【0046】
一局面から第9の発明にかかる液圧クランプ装置は、チャッキング用液圧シリンダと引込用液圧シリンダとを備えており、一般には2つの液圧駆動源が必要である。しかし、液圧駆動源は高価であり、また工場などの現場では手配できない場合も多い。この場合には、特許文献1または2に記載のように、エアーハイドロブースタを用いて空気圧を液圧に変換することが考えられる。しかしこの場合でも、液圧シリンダが2台あるため、通常であればエアーハイドロブースタを2台備える必要がある。
第13の発明にかかるクランプシステムでは、1台のエアーハイドロブースタと、空気圧によって逆止弁状態と開放状態とを制御可能な2台の逆止弁を用いてチャッキング用液圧シリンダと引込用液圧シリンダとを駆動している。
具体的には、クランプフェーズではチャッキング用液圧シリンダは加圧、引込用液圧シリンダは閉塞、引込フェーズではチャッキング用液圧シリンダは閉塞、引込用液圧シリンダは加圧、押出フェーズではチャッキング用液圧シリンダは閉塞、引込用液圧シリンダは減圧、アンクランプフェーズではチャッキング用液圧シリンダは減圧、引込用液圧シリンダは閉塞となるよう、エアーハイドロブースタと2台の逆止弁とを制御している。
【0047】
(14)
他の局面に従うロボットアームは、第10の発明に係るクランプシステムが搭載された、ロボットアームである。
【0048】
(15)
他の局面に従う加工品の加工方法は、第10の発明に係るクランプシステムで被クランプ部材を固定し、被クランプ部材を備える加工品を加工する、加工方法である。
【0049】
(16)
他の局面に従う被クランプ部材の加工方法は、第10の発明に係るクランプシステムを搭載したロボットアームで、被クランプ部材を備えた加工品の位置を移動させ、加工品の加工面を変えて加工する、加工方法である。
【0050】
(17)
さらに他の局面に従う被クランプ部材の固定方法は、チャッキング装置と引込装置とを含む液圧クランプ装置によって、被クランプ部材をクランプおよび/またはアンクランプする方法であって、被クランプ部材をクランプする場合、まずチャッキング装置の2つの爪で被クランプ部材を把持し、次に、引込装置で被クランプ部材を把持したチャッキング装置を引き込み、被クランプ部材をアンクランプする場合には、まず、引込装置で被クランプ部材を把持したチャッキング装置を押し出し、次に、チャッキング装置の2つの爪を開いて被クランプ部材を開放し、チャッキング装置の2つの爪で被クランプ部材を把持する方向と、引込装置で被クランプ部材を把持したチャッキング装置を引き込み、および/または押し出す方向とは略直交している。
【0051】
工具ホルダのプルスタッドのような特殊な形状をしていない、一般的な被クランプ部材をクランプする場合、2つの爪で被クランプ部材を両側から把持することが考えられるが、この場合、例えば、被クランプ部材が、2つの爪の支点同士を結んだ直線を軸として回転するなどの動きによって、クランプ装置による確実なクランプができない場合がある。
これに対して、さらに他の局面に従う被クランプ部材をクランプおよび/またはアンクランプする方法では、チャッキング装置で被クランプ部材を把持した後、被クランプ部材を把持したチャッキング装置を引き込み、被クランプ部材をクランプ装置のケースの前面に接触させることによって、上記、被クランプ部材の回転などによる不安定性を排除し、安定したクランプ動作を実現している。
【0052】
(18)
他の局面に従う被クランプ部材の固定方法は、被クランプ部材を液圧クランプ装置に固定する固定方法であって、液圧クランプ装置は、チャッキング装置と引込装置とケースとを備え、チャッキング装置の爪で被クランプ部材を把持する把持工程と、把持工程で把持した被クランプ部材をチャッキング装置に引き込む引込工程と、を有し、被クランプ部材は、ケースの当接部に当接し、かつ引込装置から引込み力が与えられることで、ケースに固定される。
【0053】
(19)
他の局面に従う加工品の加工方法では、第18の発明に係る被クランプ部材の固定方法で被クランプ部材を備えた加工品を固定し、加工品を加工する。
【0054】
これにより、被クランプ部材は、引込用液圧シリンダから強い引き込み力が与えられるので、ケースに強く当接される。したがって、被クランプ部材はケースと面または複数の点で強く当接して固定されるので、単にチャッキングの爪で把持される場合と比べて、様々な方向の力が加えられても確実に固定することができる。
また、液圧クランプ装置は、チャッキング用液圧シリンダと引込用液圧シリンダの2つの駆動系を備えるのみでよく、かつ、被クランプ部材はケースに当接して固定されるので特別な治具が不要であるため、液圧クランプ装置を小型にすることができる。よって、液圧クランプ装置をロボットアームなどに固定してもアームの可動域を確保することができる。
したがって、加工品を本発明の液圧クランプ装置で固定することによって、高精度かつ加工性の高い加工をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】第1の実施形態の液圧クランプ装置の構造を示す模式的断面図である。
【
図2】
図2(a)は被クランプ部材をクランプした状態のチャッキング装置の模式的断面図であり、
図2(b)は、被クランプ部材をアンクランプした状態のチャッキング装置の模式的断面図である。
【
図3】第1の実施形態の液圧クランプ装置を前面側から見た模式的側面図である。
【
図4】第1の実施形態の液圧クランプ装置の固定方法を示す模式的断面図である。
【
図5】第2の実施形態のクランプシステムの構成と液圧回路を示す模式図である。
【
図6】第4の実施形態の液圧回路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0057】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の液圧クランプ装置300の構造を示す模式的断面図である。液圧クランプ装置300はチャッキング装置10と引込装置20が1つのケース100の中に収められている。また、
図2(a)は被クランプ部材25をクランプした状態のチャッキング装置10の模式的断面図であり、
図2(b)は、被クランプ部材25をアンクランプした状態のチャッキング装置10の模式的断面図である。さらに、
図3は第1の実施形態の液圧クランプ装置300を前面側から見た模式的側面図である。
【0058】
(チャッキング装置10)
チャッキング装置10は、可動チャック30、固定チャック40、およびチャッキング用液圧シリンダ50、第1ピストン111、第1ピストンロッド110を備えている。可動チャック30は固定チャック40に回転軸90を中心に回転可能に支持され、固定チャック40はケース100の中で引き込み方向に移動可能である。可動チャック30と固定チャック40とはそれぞれ、先端側に被クランプ部材25を把持するための可動爪60と固定爪70とを備えている。また、ケース100は、被クランプ部材25の少なくとも一部を挿入して2つの爪60,70で把持するための開口部101を備えている。可動爪60と固定爪70とで被クランプ部材25を把持する方向(
図1の上下方向)と固定チャック40を引き込む、引き込み方向(
図1の左右方向)とは略直交している。
チャッキング用液圧シリンダ50の第1ピストンロッド110は可動チャック30を押し下げて、チャッキング装置10の2つの爪(可動爪60と固定爪70)を閉じる。
また、チャッキング装置10は、チャッキング用液圧シリンダ50が減圧した場合に、可動チャック30を押し上げて、チャッキング装置10の2つの爪60,70を開くスプリング120をさらに備える。
【0059】
図2(a)は、被クランプ部材25をクランプしている状態のチャッキング装置10の模式的断面図を示す。クランプ状態では、液圧が第1液圧ポート51から印加されて、チャッキング用液圧シリンダ50の第1ピストンロッド110が可動チャック30を押し下げ、可動爪60と固定爪70とで被クランプ部材25を把持する。
可動爪60と固定爪70との形状は、被クランプ部材25に密着できるような形状であることが望ましい。
図2の場合、被クランプ部材25には本体の面上に隆起する凸形状のボス25aが形成されている。可動爪60と固定爪70はこのボス25aの形状に合わせて設計されている。
図2(b)は被クランプ部材25をアンクランプしている状態のチャッキング装置10の模式的断面図を示す。アンクランプ状態では第1液圧ポート51の液圧は減圧されている。そして、スプリング120が可動チャック30を押し上げることによって、可動爪60と固定爪70との間隔が開き、被クランプ部材25(ボス25a)はアンクランプされる。
なお、可動爪60に印加されるクランプ荷重は、第1液圧ポート51に印加される液圧と第1ピストン111の断面積との積で決定される第1ピストンロッド110の押し下げる力からスプリング120の押し上げる力を引き算した値(可動チャック30を押し下げる力に相当)に、第1ピストンロッド110と回転軸90との距離と可動爪60と回転軸90との距離の比を積算した値で計算される。本実施形態では、液圧9.2MPaの場合クランプ荷重は約3.1kNである。ただし、クランプ荷重の適正値は被クランプ部材25の重さ等によって異なる。
【0060】
(引込装置20)
再び
図1を参照すると、引込装置20は引込用液圧シリンダ80、第2ピストン131、第2ピストンロッド130、およびロッドカバー81を備えており、第2ピストンロッド130は固定チャック40の駆動支点140に接続されている。駆動支点140は固定チャック40の回転軸90より後方(
図1の右側)に配置されている。引込用液圧シリンダ80は第2ピストン131の前方に液室150を、後方に空気室160を有し、第2液圧ポート151から液圧を印加することによって、チャッキング装置10の固定チャック40を引き込み、空気圧ポート161から空気室160に空気圧を印加することによって固定チャック40を押し出す。
なお、引込装置20が固定チャック40を引き込む力は、第2ピストン131の断面積から第2ピストンロッド130の断面積を引き算した値と第2液圧ポート151の液圧との積で計算される。本実施形態では、液圧9.2MPaの場合、引き込む力は約5.2kNである。ただし、引き込む力の値の適正値は被クランプ部材25の重さ等によって異なる。
【0061】
(液圧クランプ装置300の動作)
液圧クランプ装置300は、被クランプ部材25をクランプする場合、まず、チャッキング装置10の可動爪60と固定爪70との間に被クランプ部材25のボス25aを挿入して把持する(クランプフェーズ)。
【0062】
ただし、可動爪60と固定爪70との間に被クランプ部材25を把持したのみの場合、例えば被クランプ部材25が、可動爪60と固定爪70とを結んだ直線(把持方向)を軸として回転するなどの動きによって、液圧クランプ装置300による被クランプ部材25の確実なクランプができない場合がある。例えば、加工品24に被クランプ部材25が設けられている場合、クランプした部分から離れた位置で、回転力を与える方向に力が加えられると、てこの原理で加工品24はクランプした部分を中心に回転しやすくなる。
また、可動爪60と固定爪70とでボス25aを把持していたとしても、ボス25aを把持した爪60,70から離れた位置でクランプ方向に力が加わると、てこの原理で可動爪60と固定爪70の把持が解除されて被クランプ部材25の固定力が低下する。
このように、被クランプ部材25が設けられ加工品24を、単に可動爪60と固定爪70とで把持した場合、(特に爪60,70から離れた位置で)加工時に様々な方向の力が加えられると、チャッキング装置10と加工品24との固定が解除されやすくなり、安定に固定できなくなる。また、この状態でさらに固定力を高めようとすると、液圧クランプ装置300の把持力を大きくする必要があるが、その場合はチャッキング用液圧シリンダ50の断面積を大きくする必要が生じるため、液圧クランプ装置300全体のサイズが大きくなり、加工品24の加工性が悪化する。
【0063】
そこで、第1の実施形態の液圧クランプ装置300では、
図4に示すように、被クランプ部材25をより確実かつ強固にクランプするために、可動爪60と固定爪70との間に被クランプ部材25を把持した状態で、被クランプ部材25に対して
図4の右方向に引込み力を与え、被クランプ部材25の被当接部25bとケース100の当接部170(凸部170)とを強く当接しあわせることで、クランプ時の安定性向上を図っている(引込フェーズ)。
すなわち、加工品24には被クランプ部材25が備えられており、被クランプ部材25はボス25aと被当接部25bとを有する。そして、ボス25aは、液圧クランプ装置300の2つの爪(可動爪60と固定爪70)で把持され、かつ、引込装置20に液圧が供給されることによって液圧クランプ装置300に引込み力が強く与えられることで、被当接部25bに当接力が伝わり、当接部170と被当接部25bとが強く当接しあって、液圧クランプ装置300と加工品24とが強く固定される。
ここで、液圧クランプ装置300側の当接部170と加工品24側の被当接部25bとは、それぞれ面状に形成されて面で接していてもよいし、
図4のように当接部170側のみが凸状に形成されていてもよいし、被当接部25b側のみが凸状に形成されていても良い。チャッキングの爪60,70に加えて、被クランプ部材25はケース100と面または複数の凸形状で強く当接して固定されるので、加工品24に対して様々な方向の力が加えられても安定かつ確実に固定することができる。
【0064】
そして、アンクランプ時には、まず、引込装置20で、可動爪60と固定爪70との間に被クランプ部材25を把持したチャッキング装置10を
図1の左方向に押し出し、被クランプ部材25の、可動爪60と固定爪70との間に把持したボス25a以外の部分を液圧クランプ装置300のケース100の前面(
図1の左の面)から離し、その後、チャッキング装置10の可動爪60と固定爪70との間隔を広げ、被クランプ部材25をアンクランプする。
【0065】
ロボットアームで加工品24の被クランプ部材25をクランプして加工などの作業を行う場合、被クランプ部材25の平面上に隆起する凸形状のボス25aを形成して、このボス25aを液圧クランプ装置300がクランプすることが多い。
第1の実施形態の液圧クランプ装置300はこのような、ボス25aを備えた被クランプ部材25をクランプする場合に特に好適である。
さらに、第1の実施形態の液圧クランプ装置300では、
図3に示すように、ケース100の前面で開口部101の周辺に複数の凸部170を設け、チャッキング装置10を引き込んだ場合に、被クランプ部材25の平面部分を凸部170に接触させた状態で支持できるようにしている。なお、この、凸部170の数は、一般的には3点支持となる3個が好ましいが、被クランプ部材25の形状によっては、2個、あるいは4個以上としてもよい。凸部170を3個とすることで、仮に被当接部25bが完全な平坦面でなかった場合も3点で支持することができるため、加工品24を安定して固定することができる。
また、被クランプ部材25がまだ高温の場合など、被クランプ部材25の剛性が十分でない場合には、凸部170の数を増やして例えば6個にした方が、安定して被クランプ部材25を固定することができる。また、被クランプ部材25に凸部170の当接跡が残りにくい。
【0066】
以上説明したとおり、本実施形態の液圧クランプ装置300では、チャッキング装置10で被クランプ部材25のボス25aを把持し、さらに引込装置20で被クランプ部材25を液圧クランプ装置300のケース100の前面に接触させることによって、より確実に被クランプ部材25をクランプすることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
図5は第2の実施形態のクランプシステム400の構成と液圧回路を示す模式図である。
第2の実施形態のクランプシステム400は、第1の実施形態の液圧クランプ装置300、エアーハイドロブースタ180と、エアーハイドロブースタ180とチャッキング装置10との間の液圧回路に挿入された第1制御弁190、およびエアーハイドロブースタ180と引込装置20との間の液圧回路に挿入された第2制御弁200で構成される。
第1制御弁190と第2制御弁200とはいわゆるエアーパイロット逆止弁であって、通常は逆止弁として動作するが、空気圧を印加することにより弁を開放することができる。
【0068】
エアーハイドロブースタ180は、空気圧シリンダ181、液圧シリンダ182、機械式逆止弁183、および液タンク184で構成される。
空気圧シリンダ181と液圧シリンダ182とはピストンロッドが連結しており、空気圧シリンダ181に空気圧を印加することによって液圧シリンダ182から増圧変換された液が出力される。
機械式逆止弁183は、通常は液タンク184側からの液の流れは許容しその逆は閉塞するが、ピストンロッドが(
図5の右方向に)後退しストロークエンドに位置したときには開放される。
液タンク184は密閉されるとともに内部の液圧に応じて容積可変となるように構成されている。
本実施形態のエアーハイドロブースタ180の増圧比は約23倍である。
本実施形態のクランプシステム400に用いられるエアーハイドロブースタ180としては、上記の構成を備えたものが好ましいが、増圧比23倍程度で空気圧を液圧に増圧変換できるエアーハイドロブースタ180であれば、上記の構成でなくてもよい。
【0069】
第1制御弁190は、逆止弁状態ではエアーハイドロブースタ180側からの液の流れは許容しその逆は閉塞するが、空気圧を印加することにより開放状態とすることができる。また、第2制御弁200は逆止弁状態では引込装置20側からの液の流れは許容しその逆は閉塞するが、空気圧を印加することにより開放状態とすることができる。
【0070】
(クランプシステム400の動作)
クランプシステム400のクランプ時の動作フローは以下のとおりである。
(1)初期設定
エアーハイドロブースタ180のピストンロッドをストロークエンドに設定、第1制御弁190および第2制御弁200を逆止弁状態に設定、チャッキング装置10をアンクランプ状態に設定、引込装置20を押し出し状態に設定する。
(2)位置合わせ
ロボットアームなどを移動して、被クランプ部材25のボス25aがチャッキング装置10の可動爪60と固定爪70との間に位置するよう位置合わせする。
(3)クランプ(クランプフェーズ、把持工程)
加圧状態のエアーハイドロブースタ180により増圧された液圧を第1制御弁190および第2制御弁200に送り込む。このとき、第1制御弁190はエアーハイドロブースタ180側からの液の流れは許容するため、液圧がチャッキング装置10のチャッキング用液圧シリンダ50に印加され、可動爪60が押し下げられてボス25aがクランプされる。
(4)引き込み(引込フェーズ、引込工程)
第2制御弁200に空気圧を印加して開放状態とし、加圧状態のエアーハイドロブースタ180により増圧された液圧を引込装置20の液室150に送り込む。これにより、引込装置20の第2ピストンロッド130が後退し、ボス25aがクランプされたチャッキング装置10を引き込み、被クランプ部材25が液圧クランプ装置300のケース100の前面に接触し、被クランプ部材25が液圧クランプ装置300により強く固定される。
【0071】
クランプシステム400のアンクランプ時の動作フローは以下のとおりである。
(5)押し出し(押出フェーズ)
エアーハイドロブースタ180を減圧状態とし、第2制御弁200を逆止弁状態に戻すとともに、引込装置20の空気圧ポート161に空気圧を印加して、第2ピストンロッド130を前進させ、ボス25aがクランプされたチャッキング装置10を押し出す。
(6)アンクランプ(アンクランプフェーズ)
第1制御弁190に空気圧を印加して開放状態とし、スプリング120の力で、減圧状態のエアーハイドロブースタ180側に液体を戻し、第1ピストンロッド110および可動爪60を持ち上げてボス25aをアンクランプする。
【0072】
以上の構成および動作フローにより、1台のエアーハイドロブースタ180と2台の液圧シリンダを備えた液圧クランプ装置300とを用いて、ボス25aを備えた被クランプ部材25を確実にクランプするクランプシステム400を構成することができる。
【0073】
この場合において、
図5では、エアーハイドロブースタ180と液圧クランプ装置300とを分離して逆止弁を含む液圧回路で接続する場合を説明したが、エアーハイドロブースタ180と液圧クランプ装置300とは直接接続することが好ましい。液圧ポンプ等で使用される作動油は、一般に非圧縮性流体として考えられるが、本実施形態のように液圧回路が高圧になる場合は、僅かながらも液が圧縮されることによるストローク位置の変化が無視できなくなる。したがって、エアーハイドロブースタ180と液圧クランプ装置300とを直接接続することで、液圧回路の長さ(液の容量)を最低限にすることにより、強力かつ精密な動作を実現することができる。なお、この場合において逆止弁はいずれかの装置に内蔵することができる。
【0074】
[第3の実施形態]
また、他の実施形態のクランプシステム400では、液圧クランプ装置300にエアーハイドロブースタ180を内蔵することにより空気圧のみで駆動可能なクランプシステム400とすることができる。さらに、2台の制御弁190、200を組み合わせることで、2台の液圧ポート51、151を1台のエアーハイドロブースタ180で駆動し、クランプシステム400の小型化を図ることができる。
【0075】
[第4の実施形態]
さらに他の実施形態のクランプシステム400では、2台の制御弁190、200に替えて、電磁弁と逆止弁とが並列接続された2台の制御弁190’、200’を用いることができる。第4の実施形態の液圧回路図を
図6に示す。
これにより、電気信号を用いた電磁弁を制御することによって、被クランプ部材25の把持と引込み制御を行うことができる。
【0076】
第2の実施形態乃至第4の実施形態のクランプシステム400をロボットアームに搭載し、加工品24に備えられた被クランプ部材25をクランプシステム400で固定することによって、加工品24の加工、特に、加工品24の位置を移動させ、加工面を変えての加工が容易となる。
【0077】
本発明において、チャッキング装置10が『チャッキング装置』に相当し、引込装置20が『引込装置』に相当し、被クランプ部材25が『被クランプ部材』に相当し、可動チャック30が『可動チャック』に相当し、固定チャック40が『固定チャック』に相当し、チャッキング用液圧シリンダ50が『チャッキング用液圧シリンダ』に相当し、可動爪60が『可動爪』に相当し、固定爪70が『固定爪』に相当し、引込用液圧シリンダ80が『引込用液圧シリンダ』に相当し、回転軸90が『回転軸』に相当し、ケース100が『ケース』に相当し、開口部101が『開口部』に相当し、第1ピストンロッド110が『第1ピストンロッド』に相当し、スプリング120が『スプリング』に相当し、第2ピストンロッド130が『第2ピストンロッド』に相当し、第2ピストン131が『ピストン』に相当し、駆動支点140が『駆動支点』に相当し、液室150が『液室』に相当し、空気室160が『空気室』に相当し、凸部170が『凸部』に相当し、エアーハイドロブースタ180が『エアーハイドロブースタ』に相当し、第1制御弁190,190‘が『第1制御弁』に相当し、第2制御弁200,200’が『第2制御弁』に相当し、液圧クランプ装置300が『液圧クランプ装置』に相当し、クランプシステム400が『クランプシステム』に相当する。
【0078】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0079】
10 チャッキング装置
20 引込装置
24 加工品
25 被クランプ部材
30 可動チャック
40 固定チャック
50 チャッキング用液圧シリンダ
60 可動爪
70 固定爪
80 引込用液圧シリンダ
81 ロッドカバー
90 回転軸
100 ケース
101 開口部
110 第1ピストンロッド
120 スプリング
130 第2ピストンロッド
131 第2ピストン
140 駆動支点
150 液室
160 空気室
170 凸部、当接部
180 エアーハイドロブースタ
190,190’ 第1制御弁
200,200’ 第2制御弁
300 液圧クランプ装置
400 クランプシステム
【手続補正書】
【提出日】2022-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クランプ部材をクランプする液圧クランプ装置であって、
前記被クランプ部材を把持するチャッキング装置と、
前記チャッキング装置のチャックを収納するケースと、
前記被クランプ部材を前記ケースに引き込む引込装置と、を備え、
前記チャッキング装置は、固定チャックと可動チャックとからなる2つの前記チャックと、2つの前記チャックを開閉するチャッキング用液圧シリンダとを有し、
前記引込装置は、2つの前記チャックを引き込み可能な引込用液圧シリンダを有し、
前記ケースは、前記被クランプ部材と当接し得る当接部を有し、
前記被クランプ部材は、前記当接部に当接し、かつ前記引込装置から引き込み力が与えられることで、前記ケースに固定される、液圧クランプ装置。
【請求項2】
2つの前記チャックは、前記被クランプ部材を両側から把持する2つの爪を有し、
前記ケースは、前記被クランプ部材の少なくとも一部を挿入して前記2つの爪で把持するための開口部を有し、
前記2つの爪で前記被クランプ部材を把持する方向と、前記引込装置で前記チャッキング装置を引き込み、および/または押し出す方向とは略直交する、請求項1に記載の液圧クランプ装置。
【請求項3】
前記固定チャックは固定爪を有し、前記可動チャックは可動爪を有し、
前記可動チャックは、前記固定チャックに回転軸を中心に回転可能に支持され、
前記チャックは、前記ケースの中で引き込み方向に移動可能であって、
前記チャッキング用液圧シリンダの第1ピストンロッドは、前記可動チャックを押し下げて、前記チャッキング装置の2つの前記爪を閉じる、請求項2に記載の液圧クランプ装置。
【請求項4】
前記チャッキング装置は、2つの前記爪を開くスプリングをさらに備える、請求項3に記載の液圧クランプ装置。
【請求項5】
前記引込装置は、前記引込用液圧シリンダの第2ピストンロッドが、前記固定チャックの駆動支点と接続され、前記駆動支点は前記回転軸の後部に配置される、請求項3または4に記載の液圧クランプ装置。
【請求項6】
前記引込用液圧シリンダは、ピストンの両側に液室と空気室とを有し、前記液室に液圧を印加することによって前記チャッキング装置を引き込み、前記空気室に空気圧を印加することによって前記チャッキング装置を押し出す、請求項2から5のいずれか1項に記載の液圧クランプ装置。
【請求項7】
前記当接部は、複数の凸部であり、
前記ケースの前記開口部の周辺に前記複数の凸部を有し、
前記引込装置で前記被クランプ部材を把持した前記チャッキング装置を引き込む場合に、前記複数の凸部が前記被クランプ部材に接触して前記被クランプ部材を固定する、請求項2から6のいずれか1項に記載の液圧クランプ装置。
【請求項8】
前記複数の凸部は3個である、請求項7に記載の液圧クランプ装置。
【請求項9】
前記複数の凸部は6個である、請求項7に記載の液圧クランプ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液圧クランプ装置と、
空気圧を液圧に増圧変換するエアーハイドロブースタと、を備えるクランプシステムであって、
前記エアーハイドロブースタの液圧回路が、第1制御弁を介して前記チャッキング装置に接続されるとともに、第2制御弁を介して前記引込装置に接続され、
前記第1制御弁が導通することにより、前記チャッキング用液圧シリンダに液が供給されて前記被クランプ部材を把持し、かつ、前記第2制御弁が導通することにより、前記引込用液圧シリンダに液が供給されて前記被クランプ部材を引き込み、前記被クランプ部材が前記液圧クランプ装置に固定可能である、クランプシステム。
【請求項11】
前記第1制御弁および前記第2制御弁は、空気圧を印加することによって逆止弁状態と開放状態とを切り換えることができるエアーパイロット逆止弁であって、
前記第1制御弁は、前記逆止弁状態では、前記エアーハイドロブースタ側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞し、
前記第2制御弁は、前記逆止弁状態では、前記引込装置側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞する、請求項10に記載のクランプシステム。
【請求項12】
前記第1制御弁および前記第2制御弁は、電磁弁と逆止弁とを並列接続した制御弁であって、
前記第1制御弁は、前記電磁弁を閉塞した場合は、前記エアーハイドロブースタ側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞し、
前記第2制御弁は、前記電磁弁を閉塞した場合は、前記引込装置側からの液の流れは許容するがその逆は閉塞する、請求項10に記載のクランプシステム。
【請求項13】
前記被クランプ部材をクランプするクランプフェーズと、前記被クランプ部材を引き込んでより強く固定する引込フェーズと、前記被クランプ部材を押し出す押出フェーズと、前記被クランプ部材をアンクランプするアンクランプフェーズと、を有し、
前記エアーハイドロブースタの液圧は、前記クランプフェーズと前記引込フェーズで加圧状態であって、前記押出フェーズと前記アンクランプフェーズで減圧状態であり、
前記第1制御弁は、前記クランプフェーズ、前記引込フェーズ、および前記押出フェーズで逆止弁として機能し、前記アンクランプフェーズで開放状態であり、
前記第2制御弁は、前記クランプフェーズ、前記押出フェーズ、および前記アンクランプフェーズで逆止弁として機能し、前記引込フェーズで開放状態である、請求項11から12のいずれか1項に記載のクランプシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のクランプシステムが搭載された、ロボットアーム。
【請求項15】
請求項10に記載のクランプシステムで前記被クランプ部材を固定し、前記被クランプ部材を備える加工品を加工する、加工品の加工方法。
【請求項16】
請求項10に記載のクランプシステムを搭載したロボットアームで、前記被クランプ部材を備えた加工品の位置を移動させ、前記加工品の加工面を変えて加工する、加工品の加工方法。
【請求項17】
液圧クランプ装置によって、被クランプ部材をクランプする方法であって、
前記液圧クランプ装置は、
前記被クランプ部材を把持するチャッキング装置と、
前記チャッキング装置のチャックを収納するケースと、
前記被クランプ部材を前記ケースに引き込む引込装置と、を備え、
前記チャッキング装置は、固定チャックと可動チャックとからなる2つの前記チャックと、2つの前記チャックを開閉するチャッキング用液圧シリンダを有し、
前記引込装置は、2つの前記チャックを引き込み可能な引込用液圧シリンダを有し、
前記ケースは、前記被クランプ部材と当接し得る当接部を有し、
前記被クランプ部材をクランプする場合、前記被クランプ部材を前記当接部に当接させ、かつ前記引込装置から引き込み力を与えることで、前記ケースに固定する、被クランプ部材の固定方法。
【請求項18】
請求項17に記載の被クランプ部材の固定方法で前記被クランプ部材を備えた加工品を固定し、前記加工品を加工する、加工品の加工方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
(10)
他の局面に従うクランプシステムは、一局面から第9の発明のいずれかにかかる液圧クランプ装置と、空気圧を液圧に増圧変換するエアーハイドロブースタと、を備えるクランプシステムであって、エアーハイドロブースタの液圧回路が、第1制御弁を介してチャッキング装置に接続されるとともに、第2制御弁を介して引込装置に接続され、第1制御弁が導通することにより、チャッキング用液圧シリンダに液が供給されて被クランプ部材を把持し、かつ、第2制御弁が導通することにより、引込用液圧シリンダに液が供給されて被クランプ部材を引き込み、被クランプ部材が液圧クランプ装置に固定可能である。