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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028790
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】光レセプタクルおよび光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20230224BHJP
   H01S 5/02253 20210101ALI20230224BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20230224BHJP
【FI】
G02B6/42
H01S5/02253
H01L31/02 C
H01L31/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134692
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 ほの香
(72)【発明者】
【氏名】今 亜耶乃
【テーマコード(参考)】
2H137
5F149
5F173
5F849
【Fターム(参考)】
2H137AB04
2H137AC12
2H137AC14
2H137BA03
2H137BA04
2H137BB03
2H137BB13
2H137BB23
2H137BC08
2H137CA02
2H137CA03
2H137CA05
2H137CA15A
2H137CA15F
2H137CA28C
2H137CA45
2H137CA63
2H137CA75
2H137CA78
2H137CC01
2H137CC11
2H137HA06
5F149BA21
5F149BA26
5F149BB01
5F149JA12
5F149JA14
5F149JA20
5F149XB05
5F173MA02
5F173MC03
5F173MC13
5F173ME23
5F173ME32
5F173ME34
5F173ME64
5F173ME85
5F849BA21
5F849BA26
5F849BB01
5F849JA12
5F849JA14
5F849JA20
5F849XB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】周囲の温度が変化しても、光電変換素子に対する光学面の位置精度の低下を抑制することができる光レセプタクルを提供する。
【解決手段】光電変換素子パッケージ110から出射された光を光レセプタクル140の内部に入射させるか、または光レセプタクル140の内部を進行した光を光電変換素子パッケージ110に向けて出射させるための第1光学面121と、光レセプタクル140の内部を進行した光を光伝送体150に向けて出射させるか、または光伝送体150から出射された光を光レセプタクル140の内部に入射させるための第2光学面122と、第1光学面121と光電変換素子112とが対向するように光電変換素子パッケージ110の少なくとも一部を収容するための筒状部126と、第1光学面121の周囲に配置された第1溝部127と、を有する、光レセプタクル140。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子を含む光電変換素子パッケージと光伝送体との間に配置されたときに、前記光電変換素子と前記光伝送体とを光学的に結合させるための光レセプタクルであって、
前記光電変換素子パッケージから出射された光を前記光レセプタクルの内部に入射させるか、または前記光レセプタクルの内部を進行した光を前記光電変換素子パッケージに向けて出射させるための第1光学面と、
前記光レセプタクルの内部を進行した光を前記光伝送体に向けて出射させるか、または前記光伝送体から出射された光を前記光レセプタクルの内部に入射させるための第2光学面と、
前記第1光学面を取り囲むように配置された、前記第1光学面と前記光電変換素子とが対向するように前記光電変換素子パッケージの少なくとも一部を収容するための筒状部と、
前記第1光学面の周囲に配置された第1溝部と、
を有し、
前記第1光学面と前記第2光学面との間の光路の少なくとも一部は、前記第1溝部に取り囲まれている、
光レセプタクル。
【請求項2】
前記第1溝部において、溝の深さが、溝の幅のうち最も小さい部分の幅より大きい、請求項1に記載の光レセプタクル。
【請求項3】
前記光路に沿う方向において、前記第1光学面の頂部から前記第2光学面までの長さL1に対する前記第1溝部の深さL2の比であるL2/L1は、0.3以上である、請求項1または2に記載の光レセプタクル。
【請求項4】
前記第2光学面は、前記光路に沿う方向において、前記第1溝部の底部よりも前記第1光学面の近くに位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光レセプタクル。
【請求項5】
前記光レセプタクルは、
前記第1光学面、前記第2光学面、前記筒状部および前記第1溝部を含む光レセプタクル本体と、
前記第1溝部内に配置された、前記光レセプタクル本体の材料より線膨張係数が低い変形抑制材料と、
を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光レセプタクル。
【請求項6】
前記光伝送体がその内部に配置されたフェルールを収容し、前記第2光学面と前記光伝送体の端部とが対向するようにするためのフェルール収容部と、
前記フェルール収容部の周囲に配置された第2溝部と、
を有し、
前記フェルール収容部に前記フェルールを収容したとき、前記フェルールの少なくとも一部は、前記第2溝部に取り囲まれる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の光レセプタクル。
【請求項7】
前記第2溝部において、溝の深さが溝の幅より大きい、請求項6に記載の光レセプタクル。
【請求項8】
前記光路に沿う方向において、前記フェルール収容部の深さL3に対する前記第2溝部の深さL4の比であるL4/L3は、0.4以上である、請求項6または7に記載の光レセプタクル。
【請求項9】
前記光レセプタクルは、
前記第1光学面、前記第2光学面、前記筒状部、前記第1溝部、前記フェルール収容部および第2溝部を含む光レセプタクル本体と、
前記第2溝部内に配置された、前記光レセプタクル本体の材料より線膨張係数が低い変形抑制材料と、
を有する、
請求項6~8のいずれか一項に記載の光レセプタクル。
【請求項10】
光電変換素子を含む光電変換素子パッケージと、
前記光電変換素子および光伝送体を光学的に結合させるための請求項1~9のいずれか一項に記載の光レセプタクルと、
を有する、光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光レセプタクルおよび光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、光ファイバーや光導波路などの光伝送体を用いた光通信には、面発光レーザ(例えば、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser))などの発光素子やフォトディテクタなどの受光素子を備えた光モジュールが使用されている。光モジュールは、1または2以上の光電変換素子(発光素子または受光素子)と、送信用、受信用または送受信用の光レセプタクルを有する。
【0003】
特許文献1には、対物表面(第1光学面)と、像表面(第2光学面)とを含む樹脂製のレンズ構造体(光レセプタクル)が記載されている。特許文献1に記載のレンズ構造体では、対物表面に対向するように光源または光検出装置がレンズ構造体に固定され、像表面に対向するように光ファイバーがレンズ構造体に固定される。特許文献1に記載のレンズ構造体は、光源から出射された光を光ファイバーの端面に導き、光ファイバーから出射された光を光検出装置に導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-163372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に記載のレンズ構造体は、光通信の分野で使用される。レンズ構造体は、高温環境下または低温環境下で使用されることが想定される。しかしながら、特許文献1に記載のレンズ構造体が高温環境下または低温環境下で使用されると、高温環境下では膨張し、低温環境下では収縮してしまう。このように、レンズ構造体が膨張または収縮すると、光源または光検出装置に対する対物表面の位置精度を維持できず、適切に光通信を行うことができないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、周囲の温度が変化しても、光電変換素子に対する光学面の位置精度の低下を抑制することができる光レセプタクルを提供することである。また、本発明の別の目的は、当該光レセプタクルを有する光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る光レセプタクルは、光電変換素子を含む光電変換素子パッケージと光伝送体との間に配置されたときに、前記光電変換素子と前記光伝送体とを光学的に結合させるための光レセプタクルであって、前記光電変換素子パッケージから出射された光を前記光レセプタクルの内部に入射させるか、または前記光レセプタクルの内部を進行した光を前記光電変換素子パッケージに向けて出射させるための第1光学面と、前記光レセプタクルの内部を進行した光を前記光伝送体に向けて出射させるか、または前記光伝送体から出射された光を前記光レセプタクルの内部に入射させるための第2光学面と、前記第1光学面を取り囲むように配置された、前記第1光学面と前記光電変換素子とが対向するように前記光電変換素子パッケージの少なくとも一部を収容するための筒状部と、前記第1光学面の周囲に配置された第1溝部と、を有し、前記第1光学面と前記第2光学面との間の光路の少なくとも一部は、前記第1溝部に取り囲まれている。
【0008】
本発明の一実施の形態に係る光モジュールは、光電変換素子を含む光電変換素子パッケージと、前記光電変換素子および光伝送体を光学的に結合させるための本発明の一実施の形態に係る光レセプタクルと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周囲の温度が変化しても、光電変換素子に対する光学面の位置精度の低下を抑制する光レセプタクルを提供することができる。また、本発明によれば、この光レセプタクルを有する光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A、Bは、実施の形態1に係る光モジュールの断面図である。
図2図2Aは、比較例に係る光レセプタクルの第1光学面の中心の位置ずれを説明するための図であり、図2Bは、実施の形態1に係る光レセプタクルの第1光学面の中心の位置ずれを説明するための図である。
図3図3は、実施の形態2に係る光モジュールの断面図である。
図4図4A、Bは、実施の形態2に係る光レセプタクルにおいて、変形抑制材料が光レセプタクルの変形を抑制する様子を説明するための図である。
図5図5A、Bは、実施の形態2に係る光モジュールの断面図である。
図6図6A、Bは、実施の形態3に係る光モジュールの断面図である。
図7図7は、実施の形態3に係る光モジュールの断面図である。
図8図8は、実施の形態4に係る光モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る光モジュールおよび光レセプタクルについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[実施の形態1]
(光モジュールの構成)
図1Aは、光電変換素子112を含む光電変換素子パッケージ110と、光電変換素子112および光伝送体150を光学的に結合させるための光レセプタクル140と、を有する光モジュール100を示す断面図である。この断面図は、後述する第1光学面121の第1中心軸CA1および第2光学面122の第2中心軸CA2を含む光モジュール100の断面を示している。
【0013】
図1Aに示されるように、光モジュール100は、光電変換素子パッケージ110と、光レセプタクル140とを有する。光モジュール100では、光電変換素子パッケージ110の光電変換素子112と、光伝送体150とが光レセプタクル140によって光学的に結合される。
【0014】
光モジュール100は、送信用の光モジュールでもよいし、受信用の光モジュールでもよい。光モジュール100が送信用の光モジュールである場合、光レセプタクル140は、光電変換素子パッケージ110から出射された光を光伝送体150の端面に導く。光モジュール100が受信用の光モジュールである場合、光レセプタクル140は、光伝送体150の端面から出射された光を光電変換素子パッケージ110に導く。
【0015】
光電変換素子パッケージ110は、筐体111と、光電変換素子112と、リード113とを含む。筐体111の内部には、光電変換素子112が配置されている。光電変換素子パッケージ110は、光レセプタクル140に固定される。本実施の形態では、光電変換素子パッケージ110は、その一部が、筒状部126に収容されるようにして光レセプタクル140に固定される。より具体的には、本実施の形態では、光電変換素子パッケージ110は、接着剤10を介して筒状部126に固定される。
【0016】
光電変換素子112は、発光素子114または受光素子115であり、筐体111の内部に配されている。光モジュール100が送信用の光モジュールである場合、光電変換素子112は、発光素子114である。また、光モジュール100が受信用の光モジュールである場合、光電変換素子112は、受光素子115である。発光素子114は、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である。受光素子115は、例えばフォトディテクタである。
【0017】
リード113は、その一方の端部が光電変換素子112に接続されている。リード113は、筐体111の底面から突出するように配置されている。リード113の数は、特に限定されない。本実施の形態では、リード113の数は、3本である。また、本実施の形態では、3本のリード113は、光電変換素子パッケージ110を底面視したときに周方向に等間隔となるように配置されている。
【0018】
光レセプタクル140は、光電変換素子パッケージ110と光伝送体150との間に配置されたときに、発光素子114または受光素子115を含む光電変換素子パッケージ110と、光伝送体150の端面とを光学的に結合させる。光モジュール100が送信用の光モジュール100である場合は、光レセプタクル140は、発光素子114である光電変換素子112から出射された光を入射させ、入射させた光を光伝送体150の端面に向けて出射する。光モジュール100が受信用の光モジュール100である場合は、光レセプタクル140は、光伝送体150の端面から出射された光を入射させ、受光素子115である光電変換素子112の受光面に向けて光を出射させる。
【0019】
光伝送体150の種類は、特に限定されない。光伝送体150の種類の例には、光ファイバー、光導波路が含まれる。本実施の形態では、光伝送体150は、光ファイバーである。光ファイバーは、シングルモード方式でもよいし、マルチモード方式でもよい。また、本実施の形態において、光伝送体150は、フェルール151の内部に収容されており、フェルール151を介して光レセプタクル140に接続される。フェルール151は、光伝送体150を取り囲むように構成された略円筒形状の部材である。フェルール151は、光伝送体150をその内部に収容した状態で、後述の光レセプタクル140のフェルール収容部129に収容される。
【0020】
(光レセプタクルの構成)
図1Aに示されるように、光レセプタクル140は、第1光学面121と、第2光学面122と、筒状部126と、第1溝部127と、フェルール収容部129とを有する。
【0021】
光レセプタクル140は、略円筒状の光学部材である。本実施の形態では、光レセプタクル140の一端には筒状部126を介して光電変換素子パッケージ110が固定され、他端にはフェルール収容部129を介して光伝送体150が固定される。
【0022】
光レセプタクル140は、光通信に用いられる波長の光に対して透光性を有する材料を用いて形成される。光レセプタクル140の材料の例には、ウルテム(登録商標)などのポリエーテルイミド(PEI)や環状オレフィン樹脂などの透明な樹脂が含まれる。また、光レセプタクル140は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。
【0023】
第1光学面121は、光電変換素子パッケージ110(発光素子114)から出射された光を光レセプタクル140の内部に入射させるか、または第2光学面122で入射し光レセプタクル140の内部を進行した光を光電変換素子パッケージ110(受光素子115)に向けて出射させるための光学面である。第1光学面121の形状は、特に限定されない。第1光学面121は、光電変換素子パッケージ110に向かって凸状の凸レンズ面でもよいし、光電変換素子パッケージ110に対して凹状の凹レンズ面でもよいし、平面であってもよい。本実施の形態では、第1光学面121は、光電変換素子パッケージ110に向かって凸状の凸レンズ面である。第1光学面121の平面視形状は、特に限定されない。第1光学面121の平面視形状は、円形状でもよいし、楕円形状でもよい。本実施の形態では、第1光学面121の平面視形状は、円形状である。
【0024】
第1光学面121の第1中心軸CA1は、光電変換素子112の表面(発光素子114の発光面または受光素子115の受光面)に対して垂直でもよいし、垂直でなくてもよい。本実施の形態では、第1中心軸CA1は、光電変換素子112の表面(発光素子114の発光面または受光素子115の受光面)に対して垂直である。また、第1光学面121の第1中心軸CA1は、光電変換素子パッケージ110の表面(発光素子114の発光面または受光素子115の受光面)の中心と一致することが好ましい。第1光学面121の周りには、第1光学面121(第1中心軸CA1)を取り囲むように配置された筒状部126がある。
【0025】
筒状部126は、第1光学面121を取り囲むように配置されている。筒状部126は、光電変換素子パッケージ110の少なくとも一部を収容し、第1光学面121と、光電変換素子112とを対向させる。
【0026】
本実施の形態では、筒状部126の第1光学面121の第1中心軸CA1に直交する断面形状は、リング状である。
【0027】
第2光学面122は、第1光学面121で入射し光レセプタクル140の内部を進行した光を光伝送体150の端面に向けて出射させるか、または光伝送体150の端面から出射された光を光レセプタクル140の内部に入射させるための光学面である。第2光学面122の形状は、特に限定されない。第2光学面122は、光伝送体150に向かって凸状の凸レンズ面でもよいし、光伝送体150に対して凹状の凹レンズ面でもよいし、平面であってもよい。本実施の形態では、第2光学面122は、平面である。第2光学面122の平面視形状は、特に限定されない。第2光学面122の平面視形状は、円形状でもよいし、楕円形状でもよい。本実施の形態では、第2光学面122の平面視形状は、円形状である。
【0028】
第2光学面122の第2中心軸CA2は、光伝送体150の端面に対して垂直でもよいし、垂直でなくてもよい。本実施の形態では、第2中心軸CA2は、光伝送体150の端面に対して垂直である。第2光学面122の第2中心軸CA2は、光伝送体150の端面の中心と一致することが好ましい。
【0029】
第1溝部127は、第1光学面121の周囲に配置される。本実施の形態では、第1溝部127は、第1光学面121の基部と筒状部126の基部との間に配置されている。第1溝部127の平面視形状は円環状である。また、第1溝部127は、第1光学面121と第2光学面122との間の光路の少なくとも一部を取り囲むように配置される。光レセプタクル140が上記の様な第1溝部127を有することで、温度の変化によって第1光学面121の位置がずれることを抑制できる。このことについて、図2A、Bを参照しつつ後述する。
【0030】
フェルール収容部129は、フェルール151を収容する。フェルール収容部129が、フェルール151を収容することで、光伝送体150の端部と、第2光学面122とが対向する位置に配置される。フェルール収容部129はフェルール151と相補的な形状であればよい。本実施の形態において、フェルール151は円筒状であるため、フェルール収容部129はフェルール151を収容可能な空間を含む円筒状である。
【0031】
図2Aは、第1溝部127を有さない比較例の光モジュールにおける、第1光学面121の中心の実際の位置と、第1光学面121の中心があるべき位置(設計位置)と、筒状部の内側面126aを示す。一方、図2Bは、第1光学面121の周囲に配置された第1溝部127を有する実施の形態1の光モジュール100において、第1光学面121の中心の実際の位置と、第1光学面121の中心があるべき位置(設計位置)と、筒状部の内側面126aを示す。図2A、Bにおいて、黒丸は、第1光学面121の中心を示し、一点鎖線の交点は、第1光学面121の中心があるべき位置(設計位置)を示す。
【0032】
図2A、Bのそれぞれの左図は、常温時の第1光学面121の中心の位置と、第1光学面121の中心があるべき位置との関係を示している。一方、図2A、Bのそれぞれの右図は、高温時の第1光学面121の中心の位置と、第1光学面121の中心があるべき位置との関係を示す。
【0033】
図2Aの左図および右図からわかるように、比較例の光モジュールにおいて、常温時において第1光学面121の中心があるべき位置とずれていた場合に、高温になると、そのずれ量が大きくなる。この結果、高温になると、光の結合効率が大きく低下する。これは、比較例の光モジュールでは、第1光学面121の周りの樹脂が膨張して、第1光学面121の中心がずれるからである。
【0034】
これに対して、図2Bの左図および右図からわかるように、第1溝部127を有する実施の形態の光モジュール100において、第1光学面121の中心と、第1光学面の中心があるべき位置とのずれは高温になっても小さい。これは実施の形態1の光モジュール100においては、第1光学面121の周囲に第1溝部127が配置されており、第1光学面121の周囲には温度変化によって膨張または収縮する部分が少ないためである。
【0035】
第1光学面121の中心の位置ずれを抑制する観点から、第1溝部127の溝の深さは溝の幅のうち最も小さい部分の幅より大きいことが好ましい。第1溝部127の深さがある程度深いことで、第1光学面121が周囲の材料の膨張および収縮から独立した状態となり、温度変化によって第1光学面121の位置がずれるのが抑制されやすくなる。
【0036】
また、第1溝部127は、光路に沿う方向において、第1光学面121の頂部から第2光学面までの長さL1に対する第1溝部127の深さL2の比であるL2/L1が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。第1溝部127が上記のような構成を有することで、第1光学面の中心の位置ずれが抑制されやすくなる。L2/L1の上限は特に制限されないが、光レセプタクル140の剛性を維持する観点から1.5以下であることが好ましい。なお、図1Aに示される例では、第1溝部127の底部は、光路に沿う方向において、第2光学面122よりも第1光学面121の近くに位置する(後述する図1Bと比較参照)。
【0037】
図1Bは、実施の形態1に係る光モジュール100の他の例の断面図を示す。図1Bに示されるように、この光モジュール100では、第2光学面122は、光路に沿う方向において、第1溝部127の底部よりも第1光学面121の近くに位置する。これにより、第2光学面122の周囲にも第1溝部127が配置される。この光モジュール100では、温度変化による第2光学面122の中心の位置ずれも、第1光学面121と同様に抑制することができる。
【0038】
(効果)
実施の形態1に係る光レセプタクル140によれば、光レセプタクル140の周囲の温度が変化しても、第1光学面121の位置ずれを抑制し、適切に光通信を行うことができる。
【0039】
[実施の形態2]
図3は、実施の形態2に係る光モジュール200を示す。光モジュール200は、第1溝部127内に配置された変形抑制材料128をさらに有する点で実施の形態1に係る光モジュール100と異なる。光モジュール200において光モジュール100と同様の部材には、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図3に示されるように、変形抑制材料128は、第1溝部127内に配置されている。実施の形態2に係る光レセプタクル240において、第1光学面121、第2光学面122、筒状部126および第1溝部127を含む部分を光レセプタクル本体220としたとき、変形抑制材料128は、光レセプタクル本体220の材料より線膨張係数が低い材料である。このような変形抑制材料128を用いることで、高温時および低温時のそれぞれにおいて第1光学面121の中心の位置がずれるのをさらに抑制することができる。なお、変形抑制材料128の例には、接着剤(の硬化物)が含まれる。
【0041】
図4A、Bは、変形抑制材料128によって、高温時および低温時のそれぞれにおいて、第1光学面121の中心の位置ずれが生じるのが抑制される様子を説明するための図である。図4Aに示されるように、高温時には、光レセプタクル本体220の膨張により、第1光学面121には、第1光学面121の第1中心軸CA1から離れる方向の力が働くが、変形抑制材料128があることで、光レセプタクル本体220は膨張することが抑制される。一方、図4Bに示されるように、低温時には、光レセプタクル本体220の収縮により、第1光学面121には、第1光学面121の第1中心軸CA1に向かう方向の力が働くが、変形抑制材料128があることで、光レセプタクル本体220は収縮することが抑制される。上記のことにより、変形抑制材料128によって、高温時および低温時において、第1光学面121の中心の位置ずれが生じるのがさらに抑制される。
【0042】
変形抑制材料128は、第1溝部127の態様に合わせて配置されればよい。たとえば、図3に示されるように、第1溝部127が、その幅が一定の円環状であれば、変形抑制材料128はこの円環状の第1溝部127に充填されればよい。また、例えば、図5Aに示されるように、第1溝部127が、第1光学面121側の幅の広い円環状の部分と、第2光学面側の幅の狭い円環状の部分とを有する場合、変形抑制材料128は、幅の広い円環状の部分と、幅の狭い円環状の部分とに充填されればよい。
【0043】
また、例えば、図5Bに示されるように、第1溝部127の底部が、光路に沿う方向において、第2光学面122よりも光伝送体150側にある場合、変形抑制材料128もこれに合わせて配置されればよい。このように変形抑制材料128が配置されることで、第2光学面122の中心の位置ずれもさらに抑制される。
【0044】
(効果)
実施の形態2に係る光レセプタクル240によれば、光レセプタクルの周囲の温度が変化しても、第1光学面の位置ずれを抑制し、適切に光通信を行うことができる。
【0045】
[実施の形態3]
図6A、B、図7は、実施の形態3に係る光モジュール300の断面図を示す。光モジュール300の光レセプタクル340は、フェルール収容部129の周囲に配置された第2溝部152を有する点で、実施の形態1、2の光レセプタクル140、240と異なる。光モジュール300において光モジュール100、200と同様の部材には、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
上記の様に、光レセプタクル340は、フェルール収容部129の周囲に配置された第2溝部152を有する。光レセプタクル340が第2溝部152を有することで、温度の変化によって第2光学面122に対するフェルール収容部129の位置がずれることが抑制できる。第2溝部152によって、第2光学面122に対するフェルール収容部129の位置ずれが抑制できる仕組みは、上記の第1溝部127によって第1光学面121の位置ずれが抑制できる仕組みと同様である。
【0047】
フェルール収容部129の位置ずれを抑制する観点から、第2溝部152において、溝の深さは溝の幅より大きいことが好ましい。また、第2溝部152は、光路に沿う方向において、フェルール収容部129の深さL3に対する第2溝部の深さL4の比であるL4/L3は0.4以上であることが好ましい。第2溝部152が上記のような構成を有することで、フェルール収容部129の位置ずれが抑制されやすくなる。L4/L3の上限は特に制限されないが、例えば光レセプタクル340の剛性を維持する観点から、1.0以下であることが好ましい。
【0048】
また、第2溝部152内には、図6Aに示されるように、変形抑制材料128が配置されていなくてもよいし、図6B図7に示されるように、変形抑制材料128が配置されていてもよい。変形抑制材料128は、光レセプタクル本体220の材料より線膨張係数が低い材料である。変形抑制材料128が第2溝部152に配置されることで、フェルール収容部129の位置ずれが抑制される仕組みは、実施の形態2において、変形抑制材料128が第1光学面121の位置ずれを抑制できる仕組みと同様である。
【0049】
なお、実施の形態3において、第1溝部127には、実施の形態1と同様に変形抑制材料128が配置されていなくてもよいし、実施の形態2と同様に、変形抑制材料128が配置されていてもよい。変形抑制材料128が第1溝部127に配置される場合は、図6B図7に示されるように第1溝部127の態様に合わせて変形抑制材料128が配置されればよい。これは実施の形態2と同様である。
【0050】
具体的には、図6Bに示されるように、第1溝部127が、その幅が一定の円環状であれば、変形抑制材料128はこの円環状の第1溝部127に充填されればよい。また、図7に示されるように、第1溝部127が、第1光学面121側の幅の広い円環状の部分と、第2光学面122側の幅の狭い円環状の部分とを有する場合、変形抑制材料128は、幅の広い円環状の部分と、幅の狭い円環状の部分とに充填されればよい。
【0051】
(効果)
実施の形態3に係る光レセプタクル340によれば、光レセプタクル340の周囲の温度が変化しても、第2光学面122に対するフェルール収容部129の位置ずれが抑制でき、適切に光通信を行うことができる。
【0052】
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4に係る光モジュール400の断面図を示す。光モジュール400は、光レセプタクル440が光レセプタクル本体420を取り囲むように構成された、光レセプタクル本体420より線膨張係数が小さい材料からなる変形抑制部材130をさらに有する点において、実施の形態1、2、3に係る光モジュールと異なる。光レセプタクル本体420より線膨張係数が小さい材料の例には、金属、樹脂などが含まれる。光モジュール400において、光モジュール100と同様の部材には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
変形抑制部材130は、第1光学面121と第2光学面122との間の光路の少なくとも一部を取り囲む様に配置される。変形抑制部材130と、光レセプタクル本体420とは接合されていることが好ましい。変形抑制部材が、光レセプタクル本体420を取り囲み、かつ接合されていることによって、光レセプタクル本体420が温度変化によって、膨張または収縮しても光レセプタクル本体420が変形することが抑制される。
【0054】
なお、光レセプタクル440は、フェルール収容部129の周囲に配置された第2溝部152を有していても有していなくてもよい。また、第1溝部127または第2溝部152に変形抑制材料128が配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい。
【0055】
(効果)
実施の形態4に係る光レセプタクル440によれば、光レセプタクル440の周囲の温度が変化しても、光レセプタクル本体420の変形が抑制され、第1光学面121の中心の位置ずれが抑制でき、適切に光通信を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る光レセプタクルおよび光モジュールは、光伝送体を用いた光通信に有用である。
【符号の説明】
【0057】
10 接着剤
100、200、300、400 光モジュール
110 光電変換素子パッケージ
111 筐体
112 光電変換素子
113 リード
114 発光素子
115 受光素子
220、320、420 光レセプタクル本体
121 第1光学面
122 第2光学面
123、223、323、423、523、623、723 溝
124、224、524 第1溝
125、225、525 第2溝
126 筒状部
126a 筒状部の内側面
127 第1溝部
128 変形抑制材料
129 フェルール収容部
130 変形抑制部材
140、240、340、440 光レセプタクル
150 光伝送体
151 フェルール
152 第2溝部
CA1 第1中心軸
CA2 第2中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8