(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002880
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】化合物、発光材料および有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20221228BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20221228BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20221228BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20221228BHJP
C07D 491/048 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
C07F5/02 A
C09K11/06 660
H05B33/14 B
C07D487/04 137
C07D491/048 CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103699
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ヨン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】柏▲崎▼ 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 寛晃
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC07
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD69
3K107FF11
3K107FF19
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC04
4C050CC16
4C050EE01
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH04
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新たな環骨格を有する化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。式中、R
1およびR
2はアルキル基等を表し、R
3~R
16は水素原子、重水素原子または置換基を表す。R
1とR
3、R
3とR
4、R
4とR
5、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8、R
8とR
9、R
9とR
2、R
2とR
10、R
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
1、
4、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
1は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[一般式(1)において、R
1およびR
2は、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル
基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を
表し、R
3~R
16は、各々独立に水素原子、重水素原子または置換基を表す。
R
1とR
3、R
3とR
4、R
4とR
5、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8、R
8と
R
9、R
9とR
2、R
2とR
10、R
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、
R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
1は互いに結合して環状
構造を形成していてもよい。一般式(1)中のC-R
3、C-R
4、C-R
5、C-R
6
、C-R
7、C-R
8、C-R
9、C-R
10、C-R
11、C-R
12、C-R
13、
C-R
14、C-R
15、C-R
16は、Nで置換されていてもよい。]
【請求項2】
R1およびR2は、各々独立に他の環が縮合していてもよい置換もしくは無置換のフェ
ニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R3およびR10は、各々独立に置換アミノ基である、請求項1または2に記載の化合
物。
【請求項4】
R1とR3、および、R2とR10の少なくとも一方の組み合わせが互いに結合して環
状構造を形成している、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記環状構造がベンゾアザボリン環を含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物を含む膜。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物を含む有機半導体素子。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
【請求項10】
前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層がホスト材料も含む、請求項9に
記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記化合物を含む層が前記ホスト材料の他に遅延蛍光材料も含み、前記遅延蛍光材料の
最低励起一重項エネルギーが前記ホスト材料より低く、前記化合物よりも高い、請求項1
0に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層が前記化合物とは異なる構造を有
する発光材料も含む、請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記素子に含まれる材料のうち、前記化合物からの発光量が最大である、請求項9~1
1のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記発光材料からの発光量が前記化合物からの発光量よりも多い、請求項12に記載の
有機発光素子。
【請求項15】
遅延蛍光を放射する、請求項9~14のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な発光特性を有する化合物に関する。また本発明は、その化合物を用い
た発光材料および有機発光素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに
行われている。
例えば、非特許文献1には、5,9-Diphenyl-5H,9H-[1,4]benzazaborino[2,3,4-kl]phena
zaborine (DABNA-1)のように多重共鳴効果を発現する化合物を用いることによ
り、逆系間交差過程による熱活性型遅延蛍光を発現し、半値幅が狭くて色純度が高い発光
を実現したことが記載されている。このような発光は、高い発光効率を達成することがで
きることから、ディスプレイを志向した用途において有用である。
また、非特許文献1および2には、DABNA-1を修飾することによって、最高被遷
移分子軌道(HOMO)および最低空分子軌道(LUMO)などのエネルギー準位を調整
し、また発光へと寄与する蛍光放射過程や逆系間交差過程を促進して、エレクトロルミネ
ッセンス量子効率を改善したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Adv. Mater. 2016, 28, 2777-2781
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 11316-11320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように多重共鳴効果を発現する化合物に関する研究が種々行われているが、その構
造と発光特性の関係については未知な点も多い。実用性のある発光素子を製造するために
は、少しでも発光特性が優れた材料を提供することが必要とされている。
そこで、本発明者らは、新たな環骨格を有する化合物の開発を目的として鋭意検討を進
めた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、インドロインドール骨格の2つのインドール環
に、それぞれベンゾアザボリン環が縮合した構造を有する化合物が有機発光素子の材料と
して有用であることを見いだした。本発明は、このような知見に基づいて提案されたもの
であり、以下の構成を有する。
【0006】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[一般式(1)において、R
1およびR
2は、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル
基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を
表し、R
3~R
16は、各々独立に水素原子、重水素原子または置換基を表す。
R
1とR
3、R
3とR
4、R
4とR
5、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8、R
8と
R
9、R
9とR
2、R
2とR
10、R
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、
R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
1は互いに結合して環状
構造を形成していてもよい。一般式(1)中のC-R
3、C-R
4、C-R
5、C-R
6
、C-R
7、C-R
8、C-R
9、C-R
10、C-R
11、C-R
12、C-R
13、
C-R
14、C-R
15、C-R
16は、Nで置換されていてもよい。]
[2] R
1およびR
2は、各々独立に他の環が縮合していてもよい置換もしくは無置換
のフェニル基である、[1]に記載の化合物。
[3] R
3およびR
10は、各々独立に置換アミノ基である、[1]または[2]に記
載の化合物。
[4] R
1とR
3、および、R
2とR
10の少なくとも一方の組み合わせが互いに結合
して環状構造を形成している、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] 前記環状構造がベンゾアザボリン環を含む、[4]に記載の化合物。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
[7] [1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物を含む膜。
[8] [1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物を含む有機半導体素子。
[9] [1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
[10] 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層がホスト材料も含む、[
9]に記載の有機発光素子。
[11] 前記化合物を含む層が前記ホスト材料の他に遅延蛍光材料も含み、前記遅延蛍
光材料の最低励起一重項エネルギーが前記ホスト材料より低く、前記化合物よりも高い、
[10]に記載の有機発光素子。
[12] 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層が前記化合物とは異なる
構造を有する発光材料も含む、[9]に記載の有機発光素子。
[13] 前記素子に含まれる材料のうち、前記化合物からの発光量が最大である、[9
]~[11]のいずれか1つに記載の有機発光素子。
[14] 前記発光材料からの発光量が前記化合物からの発光量よりも多い、[12]に
記載の有機発光素子。
[15] 遅延蛍光を放射する、[9]~[14]のいずれか1つに記載の有機発光素子
。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化合物は、優れた発光特性を示す。本発明の化合物は有機発光素子の材料とし
て有用である。本発明の化合物を用いた有機発光素子は、発光効率、素子耐久性、色純度
向上の少なくとも1つ以上の特性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明
は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はその
ような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用
いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含
む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の一部
または全部は重水素原子(2H、デューテリウムD)に置換することができる。本明細書
の化学構造式では、水素原子はHと表示しているか、その表示を省略している。例えばベ
ンゼン環の環骨格構成炭素原子に結合する原子の表示が省略されているとき、表示が省略
されている箇所ではHが環骨格構成炭素原子に結合しているものとする。本明細書にて「
置換基」という用語は、水素原子および重水素原子以外の原子または原子団を意味する。
一方、「置換もしくは無置換の」という用語は、水素原子が重水素原子または置換基で置
換されていてもよいことを意味する。
【0010】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0011】
【0012】
一般式(1)において、R1およびR2は、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル
基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を
表す。R1とR2は同一であってもよいし、R1とR2は異なっていてもよい。
【0013】
R1およびR2における「置換もしくは無置換のアルキル基」の「アルキル基」は、直
鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。好ましい炭素数は1~20であり、より好
ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~6である。例えば、メチル基、エチル基
、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル、tert-ブチ
ル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘ
キシルなどを例示することができる。
【0014】
R1およびR2における「置換もしくは無置換のアリール基」のアリール基や「置換も
しくは無置換のヘテロアリール基」のヘテロアリール基は、単環であってもよいし、2つ
以上の環が縮合した縮合環であってもよい。縮合環である場合、縮合している環の数は2
~6であることが好ましく、例えば2~4の中から選択することができる。環の具体例と
して、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ナフタレン環、アントラ
セン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、
ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、カルバゾール環を挙げることがで
きる。例えば、置換もしくは無置換のアリール基として、置換もしくは無置換のフェニル
基を採用することができる。また、置換もしくは無置換のアリール基として、置換もしく
は無置換のナフチル基を採用することができる。例えば置換もしくは無置換のヘテロアリ
ール基として、置換もしくは無置換のフリル基(例えば置換もしくは無置換のフラン-2
-イル基や置換もしくは無置換のフラン-3-イル基)を採用することができる。例えば
、置換もしくは無置換のヘテロアリール基として、置換もしくは無置換のチエニル基(例
えば置換もしくは無置換のチオフェン-2-イル基や置換もしくは無置換のチオフェン-
3-イル基)を採用することができる。例えば、置換もしくは無置換のヘテロアリール基
として、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のピリミジル基、置換も
しくは無置換のトリアジニル基を採用することができる。例えば置換もしくは無置換のヘ
テロアリール基として、置換もしくは無置換のインドリル基(例えば置換もしくは無置換
のインドール-1-イル基や置換もしくは無置換のインドール-2-イル基、置換もしく
は無置換のインドール-3-イル基)を採用することができる。例えば置換もしくは無置
換のヘテロアリール基として、置換もしくは無置換のカルバゾリル基(例えば置換もしく
は無置換のカルバゾール-9-イル基)を採用することができる。これらの置換もしくは
無置換のアリール基および置換もしくは無置換のヘテロアリール基の具体例には、さらに
他の環が縮合していてもよい。例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基およびピリミジ
ル基にベンゼン環が縮合していてもよく、インドリル基およびカルバゾリル基に、ベンゾ
フラン環やベンゾチオフェン環が縮合していてもよい。
【0015】
R1およびR2におけるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の水素原子の一部
または全部は、重水素原子または置換基で置換されていてもよい。ここでいう置換基の例
として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ア
ルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロア
リールチオ基、シアノ基、アミノ基を挙げることができる。これらの置換基は、さらに別
の置換基で置換されていたり、別の環が縮合していたりしてもよい。ここで述べた置換基
の例を本明細書では「置換基群S」という。
置換基群Sにおいて、アルキル基、アルキルチオ基を構成するアルキル基の詳細につい
ては、上記のR1およびR2の説明におけるアルキル基の説明を参照することができる。
アリール基、アリールオキシ基を構成するアリール基、アリールチオ基を構成するアリー
ル基の詳細については、上記のR1およびR2の説明におけるアリール基の説明を参照す
ることができる。ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基を
構成するヘテロアリール基の詳細については、上記のR1およびR2の説明におけるヘテ
ロアリール基の説明を参照することができる。
アルケニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルケニル基の炭素
数は、2~20であり、好ましくは2~10であり、より好ましくは2~6である。アル
ケニル基の具体例として、エテニル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基、n-ブテ
ニル基、イソブテニル基、n-ペンテニル基、イソペンテニル基、n-ヘキセニル基、イ
ソヘキセニル基、2-エチルヘキセニル基を挙げることができる。
アルコキシ基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルコキシ基の炭素
数は1~20であり、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6である。例えば
、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イ
ソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ヘキソキシ基などを例示するこ
とができる。
アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよく、3
級アミノ基であることが好ましい。3級アミノ基として、例えばジアリールアミノ基、ジ
アルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基を挙げることができる。ここでいうジアリ
ールアミノ基の2つのアリール基は同一であっても異なっていてもよく、また、ジアルキ
ルアミノ基の2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。ジアルキルアミノ
基とアルキルアリールアミノ基を構成するアルキル基の詳細については、上記のR1およ
びR2の説明におけるアルキル基の説明を参照することができる。ジアリールアミノ基と
アルキルアリールアミノ基を構成するアリール基の詳細については、上記のR1およびR
2の説明におけるアリール基の説明を参照することができる。3級アミノ基の窒素原子に
結合している2つの原子団は互いに連結基を介して結合していてもよい。
【0016】
R3~R16は、各々独立に水素原子、重水素原子または置換基を表す。R3~R16
は同一であってもよいし、R3~R16は互いに異なっていてもよい。R3~R16にお
ける置換基として、例えば上記の置換基群Sを例示することができる。R3~R16のう
ち置換基であるものは、1つであっても2つ以上であってもよく、R3~R16の全てが
水素原子であってもよいが、少なくともR3およびR10が置換基であることも好ましい
。ここで、R3およびR10が表す置換基は、置換アミノ基であることが好ましく、置換
もしくは無置換のジアリールアミノ基であることが好ましい。「ジアリールアミノ基」の
アリール基の詳細については、上記のR1およびR2の説明におけるアリール基の説明を
参照することができる。例えば、R3およびR10として置換もしくは無置換のジフェニ
ルアミノ基を好ましく選択することができる。また、R3およびR10が置換アミノ基で
ある場合、そのアミノ基の置換基は、R1またはR2の位置のホウ素原子(B)に結合し
て環状構造を形成していることが好ましい。この態様の詳細については後述する。
【0017】
以下において、R1~R16がとりうる置換基の具体例を挙げる。ただし、R1および
R2がとりうる置換基は、下記の置換基の具体例のうち、シアノ基、ジフェニルアミノ基
およびジ(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基を除いたものである。ここで、置換基群A
は、その置換基が結合している環に対して電子を求引する性質を有する基(電子求引基)
であり、置換基群Dは、その置換基が結合している環に対して電子を供与する性質を有す
る基(電子供与基)であり、置換基群Nは、電子求引基および電子供与基以外の置換基で
ある。なお、ここでいう「電子求引基」とは置換基群Aの中で最も電子求引性が小さい基
以上の電子求引性を有する基を意味し、ここでいう「電子供与基」とは置換基群Dの中で
最も電子供与性が小さい基以上の電子供与性を有する基を意味する。下記式において、D
は重水素原子を表し、*は環骨格への結合位置を表す。また、R4~R6、R7~R9、
R11~R13、R14~R16の好ましい例として水素原子を挙げることができる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
一般式(1)において、R1とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR
7、R7とR8、R8とR9、R9とR2、R2とR10、R10とR11、R11とR
12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR
1は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ここで、R1とR3、および、R2
とR10の少なくとも一方の組み合わせは互いに結合して環状構造を形成していることが
好ましい。この場合の好ましい例として、R3がフェニル置換アミノ基であって、そのフ
ェニル基が、R1の結合位置のホウ素原子(B)に結合して環状構造を形成している場合
、R10がフェニル置換アミノ基であって、そのフェニル基が、R2の結合位置のホウ素
原子(B)に結合して環状構造を形成している場合を挙げることができ、形成される環状
構造は、下記式で表される環状構造a1(ベンゾアザボリン環)を含むことが好ましい。
環状構造a1において、「B」は一般式(1)に示されたホウ素原子(B)に対応し、「
b」は一般式(1)に示されたR3またはR10の結合位置(フェニル置換アミノ基の結
合位置)に対応する。「N」、「ベンゼン環」、「X」は、それぞれフェニル置換アミノ
基の窒素原子(N)、フェニル置換アミノ基のフェニル基を構成するベンゼン環、フェニ
ル置換アミノ基の他方の置換基に対応する。*は隣接する原子への結合位置を表す。
【0022】
【0023】
ここで、R3およびR10におけるフェニル置換アミノ基は、少なくとも一方の水素原
子がフェニル基で置換された置換アミノ基を意味する。フェニル置換アミノ基は、2つの
水素原子がフェニル基で置換されたジフェニルアミノ基であってもよいし、一方の水素原
子のみがフェニル基で置換されたフェニルアミノ基であってもよいし、フェニル基と、フ
ェニル基以外の置換基で置換されたジ置換アミノ基であってもよい。ジフェニルアミノ基
では、その一方のフェニル基が環状構造a1のベンゼン環を構成し、他方のフェニル基が
環状構造a1のXを構成する。フェニルアミノ基では、そのフェニル基が環状構造a1の
ベンゼン環を構成し、水素原子が環状構造a1のXを構成する。フェニル基とフェニル基
以外の置換基で置換されたジ置換アミノ基では、そのフェニル基が環状構造a1のベンゼ
ン環を構成し、フェニル基以外の置換基が環状構造a1のXを構成する。フェニル基以外
の置換基としてヘテロアリール基を挙げることができる。ヘテロアリール基の説明につい
ては、上記のR1およびR2の説明におけるヘテロアリール基の説明を参照することがで
きる。好ましいヘテロアリール基は、フリル基、チエニル基、ピリル基、ベンゾフリル基
(例えばベンゾフラン-2-イル基)、ベンゾチエニル基(例えばベンゾチオフェン-2
-イル基)、インドリル基(例えばインドール-2-イル基)である。また、R3および
R10におけるフェニル置換アミノ基のホウ素原子に結合していない置換基(フェニル基
またはヘテロアリール基等)は、ホウ素原子に結合しているフェニル基(環状構造a1の
ベンゼン環)に単結合で結合していてもよい。その結果として形成される環状構造は、例
えば環状構造a1と窒素原子を共有するピロール環が該環状構造a1のベンゼン環に縮合
しており、そのピロール環にさらにベンゼン環や複素芳香環が縮合した構造を有する縮合
環である。例えば、R3およびR10におけるフェニル置換アミノ基がジフェニルアミノ
基である場合、フェニル基同士が単結合で結合してカルバゾール環が構成される。
【0024】
また、R1とR3、および、R2とR10が互いに結合して環状構造を形成する場合の
他の好ましい例として、R3がヘテロアリール置換アミノ基であって、そのヘテロアリー
ル基が、R1の結合位置のホウ素原子(B)に結合して環状構造を形成している場合、R
10がヘテロアリール置換アミノ基であって、そのヘテロアリール基が、R2の結合位置
のホウ素原子(B)に結合して環状構造を形成している場合を挙げることができ、形成さ
れる環状構造は、下記式で表される環状構造a2を含むことが好ましい。環状構造a2に
おいて、「B」は一般式(1)に示されたホウ素原子(B)に対応し、「b」は一般式(
1)に示されたR3またはR10の結合位置(フェニル置換アミノ基の結合位置)に対応
する。「N」、「Z」、「X」は、それぞれヘテロアリール置換アミノ基の窒素原子(N
)、ヘテロアリール置換アミノ基のヘテロアリール基を構成する複素芳香環、ヘテロアリ
ール置換アミノ基の他方の置換基に対応する。*は隣接する原子への結合位置を表す。
【0025】
【0026】
ここで、R3およびR10におけるヘテロアリール置換アミノ基は、少なくとも一方の
水素原子がヘテロアリール基で置換された置換アミノ基を意味する。ヘテロアリール基の
説明については、上記のR1およびR2の説明におけるヘテロアリール基の説明を参照す
ることができる。好ましいヘテロアリール基は、フリル基、チエニル基、ピリル基、ベン
ゾフリル基(例えばベンゾフラン-3-イル基)、ベンゾチエニル基(例えばベンゾチオ
フェン-3-イル基)、インドリル基(例えばインドール-3-イル基)である。例えば
、ベンゾフラン-3-イル基は2位でホウ素原子に結合し、ベンゾチオフェン-3-イル
基は2位でホウ素原子に結合し、例えばインドール-3-イル基は2位でホウ素原子に結
合する。ヘテロアリール置換アミノ基は、2つの水素原子がヘテロアリール基で置換され
たジヘテロアリールアミノ基であってもよいし、一方の水素原子のみがヘテロアリール基
で置換されたヘテロアリールアミノ基であってもよいし、ヘテロアリール基と、ヘテロア
リール基以外の置換基で置換されたジ置換アミノ基であってもよい。ジヘテロアリールア
ミノ基では、その一方のヘテロアリール基が環状構造a2の複素芳香環Zを構成し、他方
のヘテロアリール基が環状構造a2のXを構成する。ヘテロアリールアミノ基では、その
ヘテロアリール基が環状構造a2の複素芳香環Zを構成し、水素原子が環状構造a2のX
を構成する。ヘテロアリール基とヘテロアリール基以外の置換基で置換されたジ置換アミ
ノ基では、そのヘテロアリール基が環状構造a2の複素芳香環Zを構成し、ヘテロアリー
ル基以外の置換基が環状構造a2のXを構成する。ヘテロアリール基以外の置換基として
フェニル基を挙げることができる。また、R3およびR10におけるヘテロアリール置換
アミノ基のホウ素原子に結合していない置換基(ヘテロアリール基またはフェニル基等)
は、ホウ素原子に結合しているヘテロアリール基に単結合で結合していてもよい。
R1とR3、および、R2とR10のうち、互いに結合して環状構造を形成しているの
は、その一方の組み合わせであっても、両方の組み合わせであってもよいが、両方の組み
合わせが互いに結合して環状構造を形成していることが好ましい。R1とR3、および、
R2とR10の両方が互いに結合して環状構造を形成しているとき、それらの環状構造は
同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
一般式(1)において、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R7とR8、R8とR
9、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R14とR15、R15とR1
6が互いに結合して形成する環状構造は、芳香環であっても複素芳香環であってもよい。
芳香環としてベンゼン環を挙げることができる。複素芳香環は、環骨格構成原子としてヘ
テロ原子を含む芳香性を示す環を意味し、5~7員環であることが好ましく、例えば5員
環であるものや、6員環であるものを採用したりすることができる。好ましい複素芳香環
は、フラン環、チオフェン環、ピロール環である。
【0028】
R1~R16が互いに結合して環状構造を形成する場合、その環状構造の水素原子は、
重水素原子または置換基で置換されていてもよく、これらの環状構造には、他の環が縮合
していてもよい。置換基の詳細については、上記のR3~R16の説明における置換基の
説明を参照することができる。環状構造に縮合する環の好ましい例としてベンゼン環、フ
ラン環、チオフェン環、ピロール環を挙げることができる。
【0029】
また、一般式(1)中のC-R3、C-R4、C-R5、C-R6、C-R7、C-R
8、C-R9、C-R10、C-R11、C-R12、C-R13、C-R14、C-R
15、C-R16は、Nで置換されていてもよい。以下の説明では、C-R3、C-R4
、C-R5、C-R6、C-R7、C-R8、C-R9、C-R10、C-R11、C-
R12、C-R13、C-R14、C-R15およびC-R16の少なくとも1つがNで
置換された化合物を「N置換体」ということがある。C-R3、C-R4、C-R5、C
-R6のうちNで置換されるものは0~2つであることが好ましく、C-R7、C-R8
、C-R9のうちNで置換されるものは0~2つであることが好ましく、C-R10、C
-R11、C-R12、C-R13のうちNで置換されるものは0~2つであることが好
ましく、C-R14、C-R15、C-R16のうちNで置換されるものは0~2つであ
ることが好ましい。N置換体の好ましい態様として、C-R7およびC-R14の一方ま
たは両方がNで置換されている場合、C-R8およびC-R15の一方または両方がNで
置換されている場合、C-R9およびC-R16の一方または両方がNで置換されている
場合が挙げられる。
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、例えば下記のいずれかの環骨格を有することが好ま
しい。下記の骨格の少なくとも1つの水素原子は重水素原子または置換基で置換されてい
てもよい。また、環が縮合していてもよい。置換基の詳細については、上記のR3~R1
6の説明における置換基の説明を参照することができる。
【0031】
【0032】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明に
おいて用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定
的に解釈されるべきものではない。具体例において、i-Prはイソプロピル基、t-B
uはターシャリーブチル基、Phはフェニル基、N(Ph)
2はジフェニルアミノ基、C
aはカルバゾリル基を表す。
【化9】
【0033】
上記化合物1~57において、分子中に存在する水素原子をすべて重水素原子に置換し
た化合物を、それぞれ化合物1d~57dとしてここに開示する。
【0034】
本発明の一態様では、一般式(1)で表される化合物として回転対称構造を有する化合
物を選択する。本発明の一態様では、一般式(1)で表される化合物として非対称構造を
有する化合物を選択する。
【0035】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含
む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下である
ことが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさ
らに好ましく、900以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式
(1)で表される化合物群の最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布
法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。一般
式(1)で表される化合物は有機溶媒に溶解しやすいという利点がある。このため、一般
式(1)で表される化合物は塗布法を適用しやすいうえ、精製して純度を高めやすい。
【0036】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光
材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、そ
の重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考
えられる。具体的には、一般式(1)で表される構造のいずれか(例えばR1~R16の
いずれか)に重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他の
モノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重
合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される化合
物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料と
して用いることも考えられる。
【0037】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般
式(2)または(3)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化10】
【0038】
一般式(2)または(3)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し
、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0~20であり、より
好ましくは1~15であり、さらに好ましくは2~10である。連結基は-X11-L1
1-で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子また
は硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしく
は無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好まし
く、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換の
フェニレン基であることがより好ましい。
一般式(2)または(3)において、R101、R102、R103およびR104は
、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル
基、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ま
しくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基、フッ
素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数
1~3の無置換のアルコキシ基である。
L1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)で表される構造のいず
れかの位置(例えばR1~R16のいずれか)に結合することができる。1つのQに対し
て連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0039】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(4)~(7)で表される構造を挙げる
ことができる。
【化11】
【0040】
これらの式(4)~(7)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)で表さ
れる構造のいずれか(例えばR
1~R
16のいずれか)にヒドロキシ基を導入しておき、
それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合さ
せることにより合成することができる。
【化12】
【0041】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を
有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り
返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表さ
れる構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。
一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられ
るモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなど
のエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることがで
きる。
【0042】
一般式(1)で表される化合物は、金属原子を含まないことが好ましい。ここでいう金
属原子にはホウ素原子は含まれない。例えば、一般式(1)で表される化合物として、炭
素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびホウ素原子からな
る群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例えば、一般式(1)
で表される化合物として、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および
ホウ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例え
ば、一般式(1)で表される化合物として、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子
、硫黄原子およびホウ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択するこ
とができる。例えば、一般式(1)で表される化合物として、炭素原子、水素原子、重水
素原子、窒素原子およびホウ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択
することができる。例えば、一般式(1)で表される化合物として、炭素原子、水素原子
、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびホウ素原子からなる群より選択される原子からな
る化合物を選択することができる。
【0043】
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は発光材料である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発することができる
化合物である。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、UV領域、可視スペクトルのうち青色、緑色、黄色、オレンジ色、赤
色領域(例えば約420nm~約500nm、約500nm~約600nmまたは約60
0nm~約700nm)または近赤外線領域で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうち赤色またはオレンジ色領域(例えば約620n
m~約780nm、約650nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうちオレンジ色または黄色領域(例えば約570n
m~約620nm、約590nm、約570nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうち緑色領域(例えば約490nm~約575nm
、約510nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうち青色領域(例えば約400nm~約490nm
、約475nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、紫外スペクトル領域(例えば280~400nm)で光を発すること
ができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、赤外スペクトル領域(例えば780nm~2μm)で光を発すること
ができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物を用いた有機半導体素子を
作製することができる。例えば、一般式(1)で表される化合物を用いたCMOS(相補
型金属酸化膜半導体)などを作製することができる。本開示のある実施形態では、一般式
(1)で表される化合物を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子や固体撮像素子(例
えばCMOSイメージセンサー)などの有機光素子を作製することができる。
【0044】
小分子の化学物質ライブラリの電子的特性は、公知のab initioによる量子化
学計算を用いて算出することができる。例えば、基底として、6-31G*、およびベッ
ケの3パラメータ、Lee-Yang-Parrハイブリッド汎関数として知られている
関数群を用いた時間依存的な密度汎関数理論を使用してHartree-Fock方程式
(TD-DFT/B3LYP/6-31G*)を解析し、特定の閾値以上のHOMOおよ
び特定の閾値以下のLUMOを有する分子断片(部分)をスクリーニングすることができ
る。
それにより、例えば-6.5eV以上のHOMOエネルギー(例えばイオン化ポテンシ
ャル)があるときは、供与体部分(「D」)が選抜できる。また例えば、-0.5eV以
下のLUMOエネルギー(例えば電子親和力)があるときは、受容体部分(「A」)が選
抜できる。ブリッジ部分(「B」)は、例えば受容体と供与体部分を特異的な立体構成に
厳しく制限できる強い共役系であることにより、供与体および受容体部分のπ共役系間の
重複が生じるのを防止する。
ある実施形態では、化合物ライブラリは、以下の特性のうちの1つ以上を用いて選別さ
れる。
1.特定の波長付近における発光
2.算出された、特定のエネルギー準位より上の三重項状態
3.特定値より下のΔEST値
4.特定値より上の量子収率
5.HOMO準位
6.LUMO準位
ある実施形態では、77Kにおける最低の一重項励起状態と最低の三重項励起状態との
差(ΔEST)は、約0.5eV未満、約0.4eV未満、約0.3eV未満、約0.2
eV未満または約0.1eV未満である。ある実施形態ではΔEST値は、約0.09e
V未満、約0.08eV未満、約0.07eV未満、約0.06eV未満、約0.05e
V未満、約0.04eV未満、約0.03eV未満、約0.02eV未満または約0.0
1eV未満である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、25%超の、例えば約30%、
約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、
約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上の量子収率を示す。
【0045】
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、新規化合物である。
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成するこ
とができる。例えば、閉環反応を利用したり、置換反応を利用したりすることにより合成
することができる。
【0046】
[一般式(1)で表される化合物を用いた構成物]
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物と組み合わせ、同化合物を分散させ
、同化合物と共有結合し、同化合物をコーティングし、同化合物を担持し、あるいは同化
合物と会合する1つ以上の材料(例えば小分子、ポリマー、金属、金属錯体等)と共に用
い、固体状のフィルムまたは層を形成させる。例えば、一般式(1)で表される化合物を
電気活性材料と組み合わせてフィルムを形成することができる。いくつかの場合、一般式
(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一
般式(1)で表される化合物を電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合
、一般式(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーおよび電子輸送ポリマーと組み合わ
せてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を、正孔輸送部と電子輸送
部との両方を有するコポリマーと組み合わせてもよい。以上のような実施形態により、固
体状のフィルムまたは層内に形成される電子および/または正孔を、一般式(1)で表さ
れる化合物と相互作用させることができる。
【0047】
[フィルムの形成]
ある実施形態では、本発明の一般式(1)で表される化合物を含むフィルムは、湿式工
程で形成することができる。湿式工程では、本発明の化合物を含む組成物を溶解した溶液
を面に塗布し、溶媒の除去後にフィルムを形成する。湿式工程として、スピンコート法、
スリットコート法、インクジェット法(スプレー法)、グラビア印刷法、オフセット印刷
法、フレキソ印刷法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。湿式工
程では、本発明の化合物を含む組成物を溶解することができる適切な有機溶媒を選択して
用いる。ある実施形態では、組成物に含まれる化合物に、有機溶媒に対する溶解性を上げ
る置換基(例えばアルキル基)を導入することができる。
ある実施形態では、本発明の化合物を含むフィルムは、乾式工程で形成することができ
る。ある実施形態では、乾式工程として真空蒸着法を採用することができる、これに限定
されるものではない。真空蒸着法を採用する場合は、フィルムを構成する化合物を個別の
蒸着源から共蒸着させてもよいし、化合物を混合した単一の蒸着源から共蒸着させてもよ
い。単一の蒸着源を用いる場合は、化合物の粉末を混合した混合粉を用いてもよいし、そ
の混合粉を圧縮した圧縮成形体を用いてもよいし、各化合物を加熱溶融して冷却した混合
物を用いてもよい。ある実施形態では、単一の蒸着源に含まれる複数の化合物の蒸着速度
(重量減少速度)が一致ないしほぼ一致する条件で共蒸着を行うことにより、蒸着源に含
まれる複数の化合物の組成比に対応する組成比のフィルムを形成することができる。形成
されるフィルムの組成比と同じ組成比で複数の化合物を混合して蒸着源とすれば、所望の
組成比を有するフィルムを簡便に形成することができる。ある実施形態では、共蒸着され
る各化合物が同じ重量減少率になる温度を特定して、その温度を共蒸着時の温度として採
用することができる。
【0048】
[一般式(1)で表される化合物の使用の例]
一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の材料として有用である。特に有機発
光ダイオード等に好ましく用いられる。
有機発光ダイオード:
本発明の一態様は、有機発光素子の発光材料としての、本発明の一般式(1)で表され
る化合物の使用に関する。ある実施形態では、本発明の一般式(1)で表される化合物は
、有機発光素子の発光層における発光材料として効果的に使用できる。ある実施形態では
、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発する遅延蛍光(遅延蛍光体)を含む。
ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体を提供する
。ある実施形態では、本発明は遅延蛍光体としての一般式(1)で表される化合物の使用
に関する。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される化合物は、ホスト材料と
して使用することができ、かつ、1つ以上の発光材料と共に使用することができ、発光材
料は蛍光材料、燐光材料またはTADFでよい。ある実施形態では、一般式(1)で表さ
れる化合物は、正孔輸送材料として使用することもできる。ある実施形態では、一般式(
1)で表される化合物は、電子輸送材料として使用することができる。ある実施形態では
、本発明は一般式(1)で表される化合物から遅延蛍光を生じさせる方法に関する。ある
実施形態では、化合物を発光材料として含む有機発光素子は、遅延蛍光を発し、高い光放
射効率を示す。
ある実施形態では、発光層は一般式(1)で表される化合物を含み、一般式(1)で表
される化合物は、基材と平行に配向される。ある実施形態では、基材はフィルム形成表面
である。ある実施形態では、フィルム形成表面に対する一般式(1)で表される化合物の
配向は、整列させる化合物によって発せられる光の伝播方向に影響を与えるか、あるいは
、当該方向を決定づける。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物によって発
される光の伝播方向を整列させることで、発光層からの光抽出効率が改善される。
本発明の一態様は、有機発光素子に関する。ある実施形態では、有機発光素子は発光層
を含む。ある実施形態では、発光層は発光材料として一般式(1)で表される化合物を含
む。ある実施形態では、有機発光素子は有機光ルミネッセンス素子(有機PL素子)であ
る。ある実施形態では、有機発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL
素子)である。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれる
他の発光材料の光放射を(いわゆるアシストドーパントとして)補助する。ある実施形態
では、発光層に含まれる一般式(1)で表される化合物は、その最低の励起一重項エネル
ギー準位にあり、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層
に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位との間に含まれる。
ある実施形態では、有機光ルミネッセンス素子は、少なくとも1つの発光層を含む。あ
る実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および
前記陽極と前記陰極との間の有機層を含む。ある実施形態では、有機層は、少なくとも発
光層を含む。ある実施形態では、有機層は、発光層のみを含む。ある実施形態では、有機
層は、発光層に加えて1つ以上の有機層を含む。有機層の例としては、正孔輸送層、正孔
注入層、電子障壁層、正孔障壁層、電子注入層、電子輸送層および励起子障壁層が挙げら
れる。ある実施形態では、正孔輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入輸送層であって
もよく、電子輸送層は、電子注入機能を有する電子注入輸送層であってもよい。有機エレ
クトロルミネッセンス素子の例を
図1に示す。
【0049】
発光層:
ある実施形態では、発光層は、陽極および陰極からそれぞれ注入された正孔および電子
が再結合して励起子を形成する層である。ある実施形態では、層は光を発する。
ある実施形態では、発光材料のみが発光層として用いられる。ある実施形態では、発光
層は発光材料とホスト材料とを含む。ある実施形態では、発光材料は、一般式(1)で表
される化合物である。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子および有機
光ルミネッセンス素子の光放射効率を向上させるため、発光材料において発生する一重項
励起子および三重項励起子を、発光材料内に閉じ込める。ある実施形態では、発光層中に
発光材料に加えてホスト材料を用いる。ある実施形態では、ホスト材料は有機化合物であ
る。ある実施形態では、有機化合物は励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギー
を有し、その少なくとも1つは、本発明の発光材料のそれらよりも高い。ある実施形態で
は、本発明の発光材料中で発生する一重項励起子および三重項励起子は、本発明の発光材
料の分子中に閉じ込められる。ある実施形態では、一重項および三重項の励起子は、光放
射効率を向上させるために十分に閉じ込められる。ある実施形態では、高い光放射効率が
未だ得られるにもかかわらず、一重項励起子および三重項励起子は十分に閉じ込められず
、すなわち、高い光放射効率を達成できるホスト材料は、特に限定されることなく本発明
で使用されうる。ある実施形態では、本発明の素子の発光層中の発光材料において、光放
射が生じる。ある実施形態では、放射光は蛍光および遅延蛍光の両方を含む。ある実施形
態では、放射光は、ホスト材料からの放射光を含む。ある実施形態では、放射光は、ホス
ト材料からの放射光からなる。ある実施形態では、放射光は、一般式(1)で表される化
合物からの放射光と、ホスト材料からの放射光とを含む。ある実施形態では、TADF分
子とホスト材料とが用いられる。ある実施形態では、TADFはアシストドーパントであ
り、発光層中のホスト材料よりも励起一重項エネルギーが低く、発光層中の発光材料より
も励起一重項エネルギーが高い。
【0050】
一般式(1)で表される化合物をアシストドーパントとして用いるとき、発光材料(好
ましくは蛍光材料)として様々な化合物を採用することが可能である。そのような発光材
料としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体
、ペリレン誘導体、クリセン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、
スチルベン誘導体、フルオレン誘導体、アントリル誘導体、ピロメテン誘導体、ターフェ
ニル誘導体、ターフェニレン誘導体、フルオランテン誘導体、アミン誘導体、キナクリド
ン誘導体、オキサジアゾール誘導体、マロノニトリル誘導体、ピラン誘導体、カルバゾー
ル誘導体、ジュロリジン誘導体、チアゾール誘導体、金属(Al,Zn)を有する誘導体
等を用いることが可能である。これらの例示骨格には置換基を有してもよいし、置換基を
有していなくてもよい。また、これらの例示骨格どうしを組み合わせてもよい。
以下において、一般式(1)で表される構造を有するアシストドーパントと組み合わせ
て用いることができる発光材料を例示する。
【0051】
【0052】
また、WO2015/022974号公報の段落0220~0239に記載の化合物も
、一般式(1)で表される構造を有するアシストドーパントとともに用いる発光材料とし
て、特に好ましく採用することができる。
【0053】
ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発
明の化合物の量は、0.1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いると
き、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、1重量%以上である。あ
る実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の
化合物の量は、50重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発
光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、20重量%以下である。ある実
施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合
物の量は、10重量%以下である。
ある実施形態では、発光層のホスト材料は、正孔輸送機能および電子輸送機能を有する
有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、放射光の波長が増加する
ことを防止する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、高いガラ
ス転移温度を有する有機化合物である。
【0054】
いくつかの実施形態では、ホスト材料は以下からなる群から選択される:
【化14】
ある実施形態では、発光層は2種類以上の構造が異なるTADF分子を含む。例えば、
励起一重項エネルギー準位がホスト材料、第1TADF分子、第2TADF分子の順に高
い、これら3種の材料を含む発光層とすることができる。このとき、第1TADF分子と
第2TADF分子は、ともに最低励起一重項エネルギー準位と77Kの最低励起三重項エ
ネルギー準位の差ΔE
STが0.3eV以下であることが好ましく、0.25eV以下で
あることがより好ましく、0.2eV以下であることがより好ましく、0.15eV以下
であることがより好ましく、0.1eV以下であることがさらに好ましく、0.07eV
以下であることがさらにより好ましく、0.05eV以下であることがさらにまた好まし
く、0.03eV以下であることがさらになお好ましく、0.01eV以下であることが
特に好ましい。発光層における第1TADF分子の濃度は、第2TADF分子の濃度より
も大きいことが好ましい。また、発光層におけるホスト材料の濃度は、第2TADF分子
の濃度よりも大きいことが好ましい。発光層における第1TADF分子の濃度は、ホスト
材料の濃度よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、同じであってもよい。ある実施
形態では、発光層内の組成を、ホスト材料を10~70重量%、第1TADF分子を10
~80重量%、第2TADF分子を0.1~30重量%としてもよい。ある実施形態では
、発光層内の組成を、ホスト材料を20~45重量%、第1TADF分子を50~75重
量%、第2TADF分子を5~20重量%としてもよい。ある実施形態では、第1TAD
F分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第1TADF分子の濃度=A重量
%)の光励起による発光量子収率φPL1(A)と、第2TADF分子とホスト材料の共
蒸着膜(この共蒸着膜における第2TADF分子の濃度=A重量%)の光励起による発光
量子収率φPL2(A)が、φPL1(A)>φPL2(A)の関係式を満たす。ある実
施形態では、第2TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第2TA
DF分子の濃度=B重量%)の光励起による発光量子収率φPL2(B)と、第2TAD
F分子の単独膜の光励起による発光量子収率φPL2(100)が、φPL2(B)>φ
PL2(100)の関係式を満たす。ある実施形態では、発光層は3種類の構造が異なる
TADF分子を含むことができる。本発明の化合物は、発光層に含まれる複数のTADF
化合物のいずれであってもよい。
ある実施形態では、発光層は、ホスト材料、アシストドーパント、および発光材料から
からなる群より選択される材料で構成することができる。ある実施形態では、発光層は金
属元素を含まない。ある実施形態では、発光層は炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素
原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で
構成することができる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原
子および酸素原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成すること
もできる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる
群より選択される原子のみから構成される材料で構成することもできる。
発光層が本発明の化合物以外のTADF材料を含むとき、そのTADF材料は公知の遅
延蛍光材料であってよい。好ましい遅延蛍光材料として、WO2013/154064号
公報の段落0008~0048および0095~0133、WO2013/011954
号公報の段落0007~0047および0073~0085、WO2013/01195
5号公報の段落0007~0033および0059~0066、WO2013/0810
88号公報の段落0008~0071および0118~0133、特開2013-256
490号公報の段落0009~0046および0093~0134、特開2013-11
6975号公報の段落0008~0020および0038~0040、WO2013/1
33359号公報の段落0007~0032および0079~0084、WO2013/
161437号公報の段落0008~0054および0101~0121、特開2014
-9352号公報の段落0007~0041および0060~0069、特開2014-
9224号公報の段落0008~0048および0067~0076、特開2017-1
19663号公報の段落0013~0025、特開2017-119664号公報の段落
0013~0026、特開2017-222623号公報の段落0012~0025、特
開2017-226838号公報の段落0010~0050、特開2018-10041
1号公報の段落0012~0043、WO2018/047853号公報の段落0016
~0044に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物であって、遅延蛍光
を放射しうるものが含まれる。また、ここでは、特開2013-253121号公報、W
O2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/
115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200
号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO
2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/1
89122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号
公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2
015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/07
2470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公
報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開20
15-129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129
715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報
、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO201
5/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/1595
41号公報に記載される発光材料であって、遅延蛍光を放射しうるものを好ましく採用す
ることができる。なお、この段落に記載される上記の公報は、本明細書の一部としてここ
に引用する。
【0055】
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および発光層以外の各層に
ついて説明する。
【0056】
基材:
いくつかの実施形態では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は基材により保
持され、当該基材は特に限定されず、有機エレクトロルミネッセンス素子で一般的に用い
られる、例えばガラス、透明プラスチック、クォーツおよびシリコンにより形成されたい
ずれかの材料を用いればよい。
【0057】
陽極:
いくつかの実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス装置の陽極は、金属、合金、
導電性化合物またはそれらの組み合わせから製造される。いくつかの実施形態では、前記
の金属、合金または導電性化合物は高い仕事関数(4eV以上)を有する。いくつかの実
施形態では、前記金属はAuである。いくつかの実施形態では、導電性の透明材料は、C
uI、酸化インジウムスズ(ITO)、SnO2およびZnOから選択される。いくつか
の実施形態では、IDIXO(In2O3-ZnO)などの、透明な導電性フィルムを形
成できるアモルファス材料を使用する。いくつかの実施形態では、前記陽極は薄膜である
。いくつかの実施形態では、前記薄膜は蒸着またはスパッタリングにより作製される。い
くつかの実施形態では、前記フィルムはフォトリソグラフィー方法によりパターン化され
る。いくつかの実施形態では、パターンが高精度である必要がない(例えば約100μm
以上)場合、当該パターンは、電極材料への蒸着またはスパッタリングに好適な形状のマ
スクを用いて形成してもよい。いくつかの実施形態では、有機導電性化合物などのコーテ
ィング材料を塗布しうるとき、プリント法やコーティング法などの湿式フィルム形成方法
が用いられる。いくつかの実施形態では、放射光が陽極を通過するとき、陽極は10%超
の透過度を有し、当該陽極は、単位面積あたり数百オーム以下のシート抵抗を有する。い
くつかの実施形態では、陽極の厚みは10~1,000nmである。いくつかの実施形態
では、陽極の厚みは10~200nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは用
いる材料に応じて変動する。
【0058】
陰極:
いくつかの実施形態では、前記陰極は、低い仕事関数を有する金属(4eV以下)(電
子注入金属と称される)、合金、導電性化合物またはその組み合わせなどの電極材料で作
製される。いくつかの実施形態では、前記電極材料は、ナトリウム、ナトリウム-カリウ
ム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム-銅混合物、マグネシウム-銀混合物、
マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-
酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム-アルミニウム混合物お
よび希土類元素から選択される。いくつかの実施形態では、電子注入金属と、電子注入金
属より高い仕事関数を有する安定な金属である第2の金属との混合物が用いられる。いく
つかの実施形態では、前記混合物は、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニ
ウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al
2O3)混合物、リチウム-アルミニウム混合物およびアルミニウムから選択される。い
くつかの実施形態では、前記混合物は電子注入特性および酸化に対する耐性を向上させる
。いくつかの実施形態では、陰極は、蒸着またはスパッタリングにより電極材料を薄膜と
して形成させることによって製造される。いくつかの実施形態では、前記陰極は単位面積
当たり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は
10nm~5μmである。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は50~200nmで
ある。いくつかの実施形態では、放射光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセン
ス素子の陽極および陰極のいずれか1つは透明または半透明である。いくつかの実施形態
では、透明または半透明のエレクトロルミネッセンス素子は光放射輝度を向上させる。
いくつかの実施形態では、前記陰極を、前記陽極に関して前述した導電性の透明な材料
で形成されることにより、透明または半透明の陰極が形成される。いくつかの実施形態で
は、素子は陽極と陰極とを含むが、いずれも透明または半透明である。
【0059】
注入層:
注入層は、電極と有機層との間の層である。いくつかの実施形態では、前記注入層は駆
動電圧を減少させ、光放射輝度を増強する。いくつかの実施形態では、前記注入層は、正
孔注入層と電子注入層とを含む。前記注入層は、陽極と発光層または正孔輸送層との間、
並びに陰極と発光層または電子輸送層との間に配置することがきる。いくつかの実施形態
では、注入層が存在する。いくつかの実施形態では、注入層が存在しない。
以下に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0060】
【0061】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【化16】
【0062】
障壁層:
障壁層は、発光層に存在する電荷(電子または正孔)および/または励起子が、発光層
の外側に拡散することを阻止できる層である。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、
発光層と正孔輸送層との間に存在し、電子が発光層を通過して正孔輸送層へ至ることを阻
止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に存在し、
正孔が発光層を通過して電子輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、障
壁層は、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、電
子障壁層および正孔障壁層は励起子障壁層を構成する。本明細書で用いる用語「電子障壁
層」または「励起子障壁層」には、電子障壁層の、および励起子障壁層の機能の両方を有
する層が含まれる。
【0063】
正孔障壁層:
正孔障壁層は、電子輸送層として機能する。いくつかの実施形態では、電子の輸送の間
、正孔障壁層は正孔が電子輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔
障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。正孔障壁層に用いる材
料は、電子輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に、正孔障壁層に用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0064】
【0065】
電子障壁層:
電子障壁層は、正孔を輸送する。いくつかの実施形態では、正孔の輸送の間、電子障壁
層は電子が正孔輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、
発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。電子障壁層に用いる材料は、正孔
輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に電子障壁材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【0066】
【0067】
励起子障壁層:
励起子障壁層は、発光層における正孔と電子との再結合を通じて生じた励起子が電荷輸
送層まで拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、発光層に
おける励起子の有効な閉じ込め(confinement)を可能にする。いくつかの実施形態では
、装置の光放射効率が向上する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、陽極の側と
陰極の側のいずれかで、およびその両側の発光層に隣接する。いくつかの実施形態では、
励起子障壁層が陽極側に存在するとき、当該層は、正孔輸送層と発光層との間に存在し、
当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陰極側に存在す
るとき、当該層は、発光層と陰極との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつ
かの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層または同様の層は、陽極と、陽極側の発光層
に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子
障壁層、正孔障壁層または同様の層は、陰極と、陰極側の発光層に隣接する励起子障壁層
との間に存在する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、励起一重項エネルギーと
励起三重項エネルギーを含み、その少なくとも1つが、それぞれ、発光材料の励起一重項
エネルギーと励起三重項エネルギーより高い。
【0068】
正孔輸送層:
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は単層であ
る。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は、正孔の注入または輸送特性および電子の障
壁特性のうちの1つの特性を有する。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は有機材料
である。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は無機材料である。本発明で使用できる
公知の正孔輸送材料の例としては、限定されないが、トリアゾール誘導体、オキサジアゾ
ール誘導剤、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、
ポリアリールアルカン誘導剤、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミ
ン誘導体、アリルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチ
リルアントラセン誘導剤、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、
シラザン誘導体、アニリンコポリマーおよび導電性ポリマーオリゴマー(特にチオフェン
オリゴマー)、またはその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料
はポルフィリン化合物、芳香族三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物から選択さ
れる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は芳香族三級アミン化合物である。以下に
正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【0069】
【0070】
電子輸送層:
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、電子輸送層は単層であ
る。いくつかの実施形態では、電子輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、電子輸送材料は、陰極から注入された電子を発光層に輸送す
る機能さえあればよい。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はまた、正孔障壁材料と
しても機能する。本発明で使用できる電子輸送層の例としては、限定されないが、ニトロ
置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボ
ジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、
オキサジアゾール誘導体、アゾール誘導体、アジン誘導体またはその組合せ、またはその
ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はチアジアゾール誘導剤
またはキノキサリン誘導体である。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はポリマー材
料である。以下に電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げ
る。
【0071】
【0072】
さらに、各有機層に添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化
材料として添加すること等が考えられる。
【0073】
【0074】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示
したが、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に
解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても
、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
【0075】
デバイス:
いくつかの実施形態では、発光層はデバイス中に組み込まれる。例えば、デバイスには
、OLEDバルブ、OLEDランプ、テレビ用ディスプレイ、コンピューター用モニター
、携帯電話およびタブレットが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極と
の間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を有するOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載の構成物は、OLEDまたは光電子デバイ
スなどの、様々な感光性または光活性化デバイスに組み込まれうる。いくつかの実施形態
では、前記構成物はデバイス内の電荷移動またはエネルギー移動の促進に、および/また
は正孔輸送材料として有用でありうる。前記デバイスとしては、例えば有機発光ダイオー
ド(OLED)、有機集積回線(OIC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、
有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽
電池(O-SC)、有機光学検出装置、有機光受容体、有機磁場クエンチ(field-
quench)装置(O-FQD)、発光燃料電池(LEC)または有機レーザダイオー
ド(O-レーザー)が挙げられる。
【0076】
バルブまたはランプ:
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、当該陽極と当該陰極との間の
発光層を含む少なくとも1つの有機層を含むOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、デバイスは色彩の異なるOLEDを含む。いくつかの実施形
態では、デバイスはOLEDの組合せを含むアレイを含む。いくつかの実施形態では、O
LEDの前記組合せは、3色の組合せ(例えばRGB)である。いくつかの実施形態では
、OLEDの前記組合せは、赤色でも緑色でも青色でもない色(例えばオレンジ色および
黄緑色)の組合せである。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、2色、4
色またはそれ以上の色の組合せである。
いくつかの実施形態では、デバイスは、
取り付け面を有する第1面とそれと反対の第2面とを有し、少なくとも1つの開口部を
画定する回路基板と、
前記取り付け面上の少なくとも1つのOLEDであって、当該少なくとも1つのOLE
Dが、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有
機層を含む、発光する構成を有する少なくとも1つのOLEDと、
回路基板用のハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置された少なくとも1つのコネクターであって、前記ハウジ
ングおよび前記コネクターが照明設備への取付けに適するパッケージを画定する、少なく
とも1つのコネクターと、を備えるOLEDライトである。
いくつかの実施形態では、前記OLEDライトは、複数の方向に光が放射されるように
回路基板に取り付けられた複数のOLEDを有する。いくつかの実施形態では、第1方向
に発せられた一部の光は偏光されて第2方向に放射される。いくつかの実施形態では、反
射器を用いて第1方向に発せられた光を偏光する。
【0077】
ディスプレイまたはスクリーン:
いくつかの実施形態では、本発明の発光層はスクリーンまたはディスプレイにおいて使
用できる。いくつかの実施形態では、本発明に係る化合物は、限定されないが真空蒸発、
堆積、蒸着または化学蒸着(CVD)などの工程を用いて基材上へ堆積させる。いくつか
の実施形態では、前記基材は、独特のアスペクト比のピクセルを提供する2面エッチング
において有用なフォトプレート構造である。前記スクリーン(またマスクとも呼ばれる)
は、OLEDディスプレイの製造工程で用いられる。対応するアートワークパターンの設
計により、垂直方向ではピクセルの間の非常に急な狭いタイバーの、並びに水平方向では
大きな広範囲の斜角開口部の配置を可能にする。これにより、TFTバックプレーン上へ
の化学蒸着を最適化しつつ、高解像度ディスプレイに必要とされるピクセルの微細なパタ
ーン構成が可能となる。
ピクセルの内部パターニングにより、水平および垂直方向での様々なアスペクト比の三
次元ピクセル開口部を構成することが可能となる。更に、ピクセル領域中の画像化された
「ストライプ」またはハーフトーン円の使用は、これらの特定のパターンをアンダーカッ
トし基材から除くまで、特定の領域におけるエッチングが保護される。その時、全てのピ
クセル領域は同様のエッチング速度で処理されるが、その深さはハーフトーンパターンに
より変化する。ハーフトーンパターンのサイズおよび間隔を変更することにより、ピクセ
ル内での保護率が様々異なるエッチングが可能となり、急な垂直斜角を形成するのに必要
な局在化された深いエッチングが可能となる。
蒸着マスク用の好ましい材料はインバーである。インバーは、製鉄所で長い薄型シート
状に冷延された金属合金である。インバーは、ニッケルマスクとしてスピンマンドレル上
へ電着することができない。蒸着用マスク内に開口領域を形成するための適切かつ低コス
トの方法は、湿式化学エッチングによる方法である。
いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、基材上のピクセ
ルマトリックスである。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパター
ンは、リソグラフィー(例えばフォトリソグラフィーおよびeビームリソグラフィー)を
使用して加工される。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターン
は、湿式化学エッチングを使用して加工される。更なる実施形態では、スクリーンまたは
ディスプレイパターンは、プラズマエッチングを使用して加工される。
【0078】
デバイスの製造方法:
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザー
パネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の
各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トラン
ジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光
層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断する
ことにより形成される。
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザー
パネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の
各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トラン
ジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光
層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断する
ことにより形成される。
【0079】
本発明の他の態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの製造方法を提
供し、当該方法は、
マザーパネルのベース基材上に障壁層を形成する工程と、
前記障壁層上に、セルパネル単位で複数のディスプレイユニットを形成する工程と、
前記セルパネルのディスプレイユニットのそれぞれの上にカプセル化層を形成する工
程と、
前記セルパネル間のインタフェース部に有機フィルムを塗布する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、障壁層は、例えばSiNxで形成された無機フィルムであり
、障壁層の端部はポリイミドまたはアクリルで形成された有機フィルムで被覆される。い
くつかの実施形態では、有機フィルムは、マザーパネルがセルパネル単位で軟らかく切断
されるように補助する。
いくつかの実施形態では、薄膜トランジスタ(TFT)層は、発光層と、ゲート電極と
、ソース/ドレイン電極と、を有する。複数のディスプレイユニットの各々は、薄膜トラ
ンジスタ(TFT)層と、TFT層上に形成された平坦化フィルムと、平坦化フィルム上
に形成された発光ユニットと、を有してもよく、前記インタフェース部に塗布された有機
フィルムは、前記平坦化フィルムの材料と同じ材料で形成され、前記平坦化フィルムの形
成と同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記発光ユニットは、不動態化層と、
その間の平坦化フィルムと、発光ユニットを被覆し保護するカプセル化層と、によりTF
T層と連結される。前記製造方法のいくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、ディ
スプレイユニットにもカプセル化層にも連結されない。
【0080】
前記有機フィルムと平坦化フィルムの各々は、ポリイミドおよびアクリルのいずれか1
つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記障壁層は無機フィルムであってもよい
。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はポリイミドで形成されてもよい。前記方法
は更に、ポリイミドで形成されたベース基材の1つの表面に障壁層を形成する前に、当該
ベース基材のもう1つの表面にガラス材料で形成されたキャリア基材を取り付ける工程と
、インタフェース部に沿った切断の前に、前記キャリア基材をベース基材から分離する工
程と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記OLEDディスプレイはフレキシ
ブルなディスプレイである。
いくつかの実施形態では、前記不動態化層は、TFT層の被覆のためにTFT層上に配
置された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、不動態
化層上に形成された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルム
は、障壁層の端部に形成された有機フィルムと同様、ポリイミドまたはアクリルで形成さ
れる。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイの製造の際、前記平坦化フィルム
および有機フィルムは同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは
、障壁層の端部に形成されてもよく、それにより、当該有機フィルムの一部が直接ベース
基材と接触し、当該有機フィルムの残りの部分が、障壁層の端部を囲みつつ、障壁層と接
触する。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記発光層は、ピクセル電極と、対電極と、当該ピクセル電
極と当該対電極との間に配置された有機発光層と、を有する。いくつかの実施形態では、
前記ピクセル電極は、TFT層のソース/ドレイン電極に連結している。
いくつかの実施形態では、TFT層を通じてピクセル電極に電圧が印加されるとき、ピ
クセル電極と対電極との間に適切な電圧が形成され、それにより有機発光層が光を放射し
、それにより画像が形成される。以下、TFT層と発光ユニットとを有する画像形成ユニ
ットを、ディスプレイユニットと称する。
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットを被覆し、外部の水分の浸透を防止す
るカプセル化層は、有機フィルムと無機フィルムとが交互に積層する薄膜状のカプセル化
構造に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、前記カプセル化層は、複数の薄膜が
積層した薄膜状カプセル化構造を有する。いくつかの実施形態では、インタフェース部に
塗布される有機フィルムは、複数のディスプレイユニットの各々と間隔を置いて配置され
る。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、一部の有機フィルムが直接ベース基
材と接触し、有機フィルムの残りの部分が障壁層の端部を囲む一方で障壁層と接触する態
様で形成される。
【0082】
一実施形態では、OLEDディスプレイはフレキシブルであり、ポリイミドで形成され
た柔軟なベース基材を使用する。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はガラス材料
で形成されたキャリア基材上に形成され、次に当該キャリア基材が分離される。
いくつかの実施形態では、障壁層は、キャリア基材の反対側のベース基材の表面に形成
される。一実施形態では、前記障壁層は、各セルパネルのサイズに従いパターン化される
。例えば、ベース基材がマザーパネルの全ての表面上に形成される一方で、障壁層が各セ
ルパネルのサイズに従い形成され、それにより、セルパネルの障壁層の間のインタフェー
ス部に溝が形成される。各セルパネルは、前記溝に沿って切断できる。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記の製造方法は、更にインタフェース部に沿って切断する
工程を含み、そこでは溝が障壁層に形成され、少なくとも一部の有機フィルムが溝で形成
され、当該溝がベース基材に浸透しない。いくつかの実施形態では、各セルパネルのTF
T層が形成され、無機フィルムである不動態化層と有機フィルムである平坦化フィルムが
、TFT層上に配置され、TFT層を被覆する。例えばポリイミドまたはアクリル製の平
坦化フィルムが形成されるのと同時に、インタフェース部の溝は、例えばポリイミドまた
はアクリル製の有機フィルムで被覆される。これは、各セルパネルがインタフェース部で
溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃を有機フィルムに吸収させることによってひびが
生じるのを防止する。すなわち、全ての障壁層が有機フィルムなしで完全に露出している
場合、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃が障壁
層に伝達され、それによりひびが生じるリスクが増加する。しかしながら、一実施形態で
は、障壁層間のインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されて、有機フィルムがなけ
れば障壁層に伝達されうる衝撃を吸収するため、各セルパネルをソフトに切断し、障壁層
でひびが生じるのを防止してもよい。一実施形態では、インタフェース部の溝を被覆する
有機フィルムおよび平坦化フィルムは、互いに間隔を置いて配置される。例えば、有機フ
ィルムおよび平坦化フィルムが1つの層として相互に接続している場合には、平坦化フィ
ルムと有機フィルムが残っている部分とを通じてディスプレイユニットに外部の水分が浸
入するおそれがあるため、有機フィルムおよび平坦化フィルムは、有機フィルムがディス
プレイユニットから間隔を置いて配置されるように、相互に間隔を置いて配置される。
【0084】
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットは、発光ユニットの形成により形成さ
れ、カプセル化層は、ディスプレイユニットを被覆するためディスプレイユニット上に配
置される。これにより、マザーパネルが完全に製造された後、ベース基材を担持するキャ
リア基材がベース基材から分離される。いくつかの実施形態では、レーザー光線がキャリ
ア基材へ放射されると、キャリア基材は、キャリア基材とベース基材との間の熱膨張率の
相違により、ベース基材から分離される。
いくつかの実施形態では、マザーパネルは、セルパネル単位で切断される。いくつかの
実施形態では、マザーパネルは、カッターを用いてセルパネル間のインタフェース部に沿
って切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルが沿って切断されるインタフェ
ース部の溝が有機フィルムで被覆されているため、切断の間、当該有機フィルムが衝撃を
吸収する。いくつかの実施形態では、切断の間、障壁層でひびが生じるのを防止できる。
いくつかの実施形態では、前記方法は製品の不良率を減少させ、その品質を安定させる
。
他の態様は、ベース基材上に形成された障壁層と、障壁層上に形成されたディスプレイ
ユニットと、ディスプレイユニット上に形成されたカプセル化層と、障壁層の端部に塗布
された有機フィルムと、を有するOLEDディスプレイである。
【実施例0085】
以下に合成例と実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材
料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる
。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものでは
ない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、
半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パ
ワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプテ
ィクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR-3)およびストリー
クカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
【0086】
【0087】
窒素雰囲気下、5,10-ジヒドロインドロ[3,2-b]インドール(2.06g,
10mmol)、1,2-ジブロモ-3-フルオロベンゼン(7.62g,30mmol
)、炭酸セシウム(16.3g,50mmol)を30mlのDMF(ジメチルホルムア
ミド)に加え、120℃で24時間撹拌する。反応溶液を室温まで冷却し、水を加える。
沈殿物を回収し、乾燥、カラムクロマトグラフィにて精製、白色固体である中間体Aを得
る。
【0088】
【0089】
窒素雰囲気化、中間体A(2.02g,3.00mmol)、カルバゾール(1.00
g,6.00mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(27
5mg,0.300mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボ
ラート(174mg,0.600mmol)およびナトリウムtert-ブトキシド(8
65mg,9.00mmol)を20mlのトルエンに加え、24時間還流する。反応溶
液を室温まで冷却し、クロロホルムを加える。得られた有機層を水で2回洗浄し、硫酸マ
グネシウムで乾燥、溶媒を除去する。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィ
ーにより精製し、白色固体である中間体Bを得る。
【0090】
【0091】
窒素雰囲気下、中間体B(100mg,118μmol)を20mlのトルエンに溶解
し、-30℃に冷却する。tert-ブチルリチウム(1.9M-ペンタン溶液,0.2
79ml,531μmol)を加え、反応溶液を室温で30分撹拌する。再度反応溶液を
-30℃まで冷却する。三臭化ホウ素(88.7mg,354μmol)を加えたのち、
室温で30分撹拌する。N-エチルジイソプロピルアミン(61.0mg,472μmo
l)を加えたのち12時間還流する。反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた固体を回
収する。回収した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メタノール、
酢酸エチルで洗浄して黄色固体である化合物11を得る。
【0092】
【0093】
窒素雰囲気化、化合物A(2.02g,3.00mmol)、6-ヒドロベンゾフロ[
2,3-b]インドール(1.24g,6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン
)ジパラジウム(0)(275mg,0.300mmol)、トリ-tert-ブチルホ
スホニウムテトラフルオロボラート(174mg,0.600mmol)およびナトリウ
ムtert-ブトキシド(865mg,9.00mmol)を20mlのトルエンに加え
、24時間還流する。反応溶液を室温まで冷却し、クロロホルムを加える。得られた有機
層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を除去する。得られた固体をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体である中間体Dを得る。
【0094】
【0095】
窒素雰囲気下、中間体D(100mg,108μmol)を20mlのトルエンに溶解
し、-30℃に冷却する。tert-ブチルリチウム(1.9M-ペンタン溶液,0.2
56mL,486μmol)を加え、反応溶液を室温で30分撹拌する。再度反応溶液を
-30℃まで冷却する。三臭化ホウ素(81.2mg,324μmol)を加えたのち、
室温で30分撹拌する。N-エチルジイソプロピルアミン(55.8mg,432μmo
l)を加えたのち12時間還流する。反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた固体を回
収する。回収した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メタノール、
酢酸エチルで洗浄して黄色固体である化合物31を得る。
【0096】
(合成例2)他の化合物の合成
合成例1と同様にして、化合物1~10、12~30、32~57も合成する。
なお、合成例で合成した化合物は昇華精製してから以下の用途に用いた。
【0097】
(実施例1)薄膜の作製と評価
石英基板上に真空蒸着法にて、真空度1×10-3Pa未満の条件にて化合物11を蒸
着し、化合物11のみからなる薄膜を100nmの厚さで形成し、実施例1のニート薄膜
とする。これとは別に、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度1×10-3Pa未満の条
件にて化合物11とホスト材料とを異なる蒸着源から蒸着し、化合物11の濃度が20重
量%である薄膜を100nmの厚さで形成し、実施例1のドープ薄膜とする。実施例1の
薄膜は優れた特性を有する。
化合物11の代わりに、化合物1~10、12~57をそれぞれ用いて、各ニート薄膜
と各ドープ薄膜を得て、特性を確認できる。
【0098】
(実施例2)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス
基材上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度1×10-6Paで積層する。まず、ITO
上に第1正孔注入材料からなる第1正孔注入層を形成し、その上に第2正孔注入材料から
なる第2正孔注入層を形成し、その上に正孔輸送材料からなる正孔輸送層を形成し、さら
にその上に電子阻止材料からなる電子阻止層を形成する。その上に、化合物11とホスト
材料を異なる蒸着源から共蒸着し、化合物11の濃度が30重量%の発光層を形成する。
次に、正孔阻止材料からなる正孔阻止層を形成し、その上に電子輸送層を形成し、さらに
その上に電極を形成した。以上の手順により、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス
素子を作製する。実施例1の有機エレクトロルミネッセンス素子は、優れた特性を有する
。
また、化合物11のかわりに化合物1~10、12~57をそれぞれ用いて、同じ手順
により各有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、効果を確認できる。
【0099】
(実施例3)別の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス
基材上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度1×10-6Paで積層する。まず、ITO
上に第1正孔注入材料からなる第1正孔注入層を形成し、その上に第2正孔注入材料から
なる第2正孔注入層を形成し、その上に正孔輸送材料からなる正孔輸送層を形成し、さら
にその上に電子阻止材料からなる電子阻止層を形成する。その上に、ホスト材料と遅延蛍
光材料と化合物11を異なる蒸着源から共蒸着し、ホスト材料の濃度が69重量%、遅延
蛍光材料の濃度が30重量%、化合物11の濃度が1重量%の発光層を形成する。次に、
正孔阻止材料からなる正孔阻止層を形成し、その上に電子輸送層を形成し、さらにその上
に電極を形成した。以上の手順により、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス素子を
作製する。実施例1の有機エレクトロルミネッセンス素子は、優れた特性を有する。
また、化合物11のかわりに化合物1~10、12~57をそれぞれ用いて、同じ手順
により各有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、効果を確認できる。