(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028829
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】制御装置、制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/20 20060101AFI20230224BHJP
G06F 11/07 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G06F11/20 625
G06F11/07 196
G06F11/07 140Q
G06F11/07 157
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134757
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇気
(72)【発明者】
【氏名】酒田 輝昭
(72)【発明者】
【氏名】島村 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】トリパシ ギャネンドラ ナス
【テーマコード(参考)】
5B034
5B042
【Fターム(参考)】
5B034BB12
5B034CC01
5B042GB07
5B042JJ20
5B042JJ29
5B042KK04
5B042KK20
(57)【要約】
【課題】
制御内容を再構成可能な制御装置において、制御内容を再構成しつつ、代替制御が可能な高性能な制御装置を提供する。
【解決手段】
入力情報に応じて複数の制御対象への指令を生成する専用処理部と、前記専用処理部を制御する汎用処理部と、前記専用処理部と同様の処理を行う汎用処理部用プログラムを記憶する主記憶部と、前記専用処理部での指令生成の処理内容変更通知を受け取る要求取得部と、前記処理内容変更通知の内容に応じて前記専用処理部の構成を決定する構成判断部と、を備え、前記専用処理部の構成を変更する際、前記主記憶部に記憶された前記汎用処理部用プログラムにより、前記専用処理部の処理内容を前記汎用処理部が代替することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力情報に応じて複数の制御対象への指令を生成する専用処理部と、
前記専用処理部を制御する汎用処理部と、
前記専用処理部と同様の処理を行う汎用処理部用プログラムを記憶する主記憶部と、
前記専用処理部での指令生成の処理内容変更通知を受け取る要求取得部と、
前記処理内容変更通知の内容に応じて前記専用処理部の構成を決定する構成判断部と、を備え、
前記専用処理部の構成を変更する際、前記主記憶部に記憶された前記汎用処理部用プログラムにより、前記専用処理部の処理内容を前記汎用処理部が代替することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記専用処理部の構成変更の開始および完了の通知を他の制御装置へ出力する状況出力部を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記制御対象の状態を取得し、元の状態に復旧するまでの時間を予測し、かつ元の状態に復旧するまでの経過時間を計測する復旧時間予測/計測部を備え、
前記復旧時間予測/計測部の結果を基に、前記構成判断部で構成変更の有無を決定することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記要求取得部が前記処理内容変更通知を取得した際に、前記専用処理部の構成を変更する箇所と変更しない箇所を定義し、
前記専用処理部の構成を変更しない箇所に、前記専用処理部の構成を変更する回路構成データを格納することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記処理内容変更通知と同時に、外部から前記回路構成データの入力を受け付ける回路構成データ取得部を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置であって、
前記処理内容変更通知と同時に、外部から前記汎用処理部用プログラムの入力を受け付けるプログラムデータ取得部を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記汎用処理部は、前記専用処理部の構成変更を制御する低性能汎用処理部と、
前記専用処理部の構成変更中の全処理を請け負う高性能汎用処理部と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記汎用処理部は、構成変更後の専用処理部と同様の処理を行う汎用処理部用プログラムを有することを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記汎用処理部は、構成変更後の専用処理部の一部機能と同様の処理を行う汎用処理部用プログラムを有することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の制御装置であって、
複数のロボットハンドを同期制御することを特徴とする制御装置。
【請求項11】
以下のステップを有する制御装置の制御方法;
(a)制御装置に接続されている機器の故障の有無を判定するステップ、
(b)前記(a)ステップにおいて故障が有ると判定した場合、許容時間内に復旧するか否かを判定するステップ、
(c)前記(b)ステップにおいて許容時間内に復旧しないと判定した場合、保持データを用いて前記制御装置の専用処理部の構成を変更すると共に、前記専用処理部の処理内容を前記制御装置の汎用処理部で処理するステップ。
【請求項12】
請求項11に記載の制御装置の制御方法であって、
前記専用処理部の構成変更の開始および完了の通知を他の制御装置へ出力することを特徴とする制御装置の制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載の制御装置の制御方法であって、
前記(a)ステップにおいて前記機器の状態を取得し、元の状態に復旧するまでの時間を予測し、かつ元の状態に復旧するまでの経過時間を計測し、
当該予測かつ計測した結果を基に、前記専用処理部の構成変更の有無を決定することを特徴とする制御装置の制御方法。
【請求項14】
請求項11に記載の制御装置の制御方法であって、
処理内容変更通知を取得した際に、前記専用処理部の構成を変更する箇所と変更しない箇所を定義し、
前記専用処理部の構成を変更しない箇所に、前記専用処理部の構成を変更する回路構成データを格納することを特徴とする制御装置の制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載の制御装置の制御方法であって、
前記処理内容変更通知と同時に、外部から前記回路構成データの入力を受け付けることを特徴とする制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットや機器を制御する制御装置の構成とその制御方法に係り、特に、複数の産業用ロボットや機器を同期制御する制御システムに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各業界で顧客要求が多様化し、製造業においては開発サイクルの短期化や多品種少量生産への対応が急務となっている。そのため、産業用ロボットや機器の制御においては、生産性向上のため、同時に多数の対象を制御することが求められ、並列/高速処理が必要となる。
【0003】
一方で、生産する製品に対する需要変動が発生した際や制御対象に故障が発生した場合、制御内容の変更が必要となる。
【0004】
しかしながら、制御内容を変更している間に生産ラインが停止すると生産性が低下してしまうため、生産を継続しつつ代替制御への変更が必要である。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「ワークに対して所定の作業を行うためのロボットと、前記ワークを撮影するための撮影部と、前記ロボットの位置を取得するための取得部と、内部の回路構成を再構成できるように構成されているFPGA(Field Programmable Gate Array)と、前記FPGAの回路構成を規定する情報であって前記撮影部から得られた画像に対して所定の画像処理を実現するための回路情報を、前記ロボットの稼働エリア別に規定しているエリア情報を格納するための記憶部と、前記取得部によって順次取得される前記ロボットの位置が前記エリア情報に規定されている稼働エリアのいずれかに属したことに基づいて、当該稼働エリアに対応付けられている回路情報で前記FPGAの回路構成を再構成するための再構成部とを備える、画像処理システム」が開示されている。
【0006】
特許文献1によれば、回路サイズが小さいFPGAであってもロボットの作業過程に合わせて種々の画像処理を実行することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、産業用ロボットや機器の制御においては、需要変動や不測の事態による要求制御の変更が必要となる場合があり、生産を継続しながら制御内容を能動的に再構成する必要がある。
【0009】
特に、複数の産業用ロボットや機器を同期制御する大規模な生産ラインや産業システムでは、生産効率を担保しつつ、需要変動への柔軟な対応が望まれている。
【0010】
また、1台のECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)で複数の機器を同期制御する車載制御システムでは、1つの機器で故障が発生した場合に、ECUによる機器の制御を継続しつつ、制御内容を変更して安全サイドに移行するフェイルセーフ・システムが求められている。
【0011】
上記特許文献1では、上記のような生産や制御を継続しつつ代替制御へ変更することに関しては、何ら記載されていない。
【0012】
そこで、本発明の目的は、制御内容を再構成可能な制御装置において、制御内容を再構成しつつ、代替制御が可能な高性能な制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、入力情報に応じて複数の制御対象への指令を生成する専用処理部と、前記専用処理部を制御する汎用処理部と、前記専用処理部と同様の処理を行う汎用処理部用プログラムを記憶する主記憶部と、前記専用処理部での指令生成の処理内容変更通知を受け取る要求取得部と、前記処理内容変更通知の内容に応じて前記専用処理部の構成を決定する構成判断部と、を備え、前記専用処理部の構成を変更する際、前記主記憶部に記憶された前記汎用処理部用プログラムにより、前記専用処理部の処理内容を前記汎用処理部が代替することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、(a)制御装置に接続されている機器の故障の有無を判定するステップ、(b)前記(a)ステップにおいて故障が有ると判定した場合、許容時間内に復旧するか否かを判定するステップ、(c)前記(b)ステップにおいて許容時間内に復旧しないと判定した場合、保持データを用いて前記制御装置の専用処理部の構成を変更すると共に、前記専用処理部の処理内容を前記制御装置の汎用処理部で処理するステップ、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御内容を再構成可能な制御装置において、制御内容を再構成しつつ、代替制御が可能な高性能な制御装置及び制御方法を実現することができる。
【0016】
これにより、複数の産業用ロボットや機器を同期制御する大規模な生産ラインや産業システムにおいて、生産効率を担保しつつ、需要変動への柔軟な対応が可能となる。
【0017】
また、1台のECUで複数の機器を同期制御する車載制御システムにおいて、1つの機器で故障が発生した場合であっても、ECUによる他の機器の制御を継続しつつ、制御内容を変更して安全サイドに移行することが可能となる。
【0018】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図1の構成判断部6の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の汎用処理部3の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例2に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図6】本発明の実施例3に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】本発明の実施例4に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図8】
図7の構成判断部6の動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施例5に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図10】本発明の実施例6に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図11】本発明の実施例7に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図12】本発明の実施例8に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図13】本発明の実施例9に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図14】本発明の実施例10に係る産業システムへの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0021】
図1から
図4を参照して、本発明の実施例1の制御装置の構成とその制御方法について説明する。
【0022】
図1は、本実施例の制御装置1の機能ブロック図である。
図2は、
図1の専用処理部2の構成を変更する回路構成データの例を示す図である。
図3は、
図1の構成判断部6の動作を示すフローチャートである。
図4は、
図1の汎用処理部3の動作を示すフローチャートである。
【0023】
本実施例の制御装置1は、
図1に示すように、主要な構成として、入力情報に応じて複数の制御対象への指令を生成する専用処理部2と、専用処理部2を制御する汎用処理部3と、図示しない主記憶部に記憶され、専用処理部2と同様の処理を行う汎用処理部用プログラム4と、専用処理部2での指令生成の処理内容変更通知を外部から受け取る要求取得部5と、処理内容変更通知の内容に応じて専用処理部2の構成を決定する構成判断部6とを備えている。
【0024】
専用処理部2は、例えば、
図1に示すように、複数の制御対象を同期制御する複数の専用回路2a,2b,2c,2nを有して構成されている。
【0025】
汎用処理部用プログラム4は、専用回路2a,2b,2c,2nと同様の処理を行う専用処理プログラム4a,4b,4c,4nおよび通常の汎用処理を行う汎用処理プログラム4xを有して構成されている。
【0026】
また、制御装置1は、構成判断部6での判断結果に基づいて、汎用処理部用プログラム4から汎用処理部3で実行するプログラムを選択する処理選択部7と、制御対象へ指令を出力する制御指令出力部8とを備えている。
【0027】
本実施例の制御装置1は、以上のように構成されており、専用処理部2の構成を変更する際、主記憶部(図示せず)に記憶された汎用処理部用プログラム4により、専用処理部2の処理内容を汎用処理部3が代替する。
【0028】
なお、制御装置1の具体的な構成例としては、例えば、専用処理部2にFPGA(Field Programmable Gate Array)を用い、汎用処理部3にCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)を用い、汎用処理部用プログラム4にメモリを用いる。
【0029】
また、汎用処理部用プログラム4には、例えば
図2に示すように、データ番号と回路構成が紐付けされたテーブルを予め設定しておき、処理選択部7によりデータ番号を指定することで、汎用処理部3で実行するプログラムを選択する。
【0030】
次に、
図3を用いて、構成判断部6の動作を説明する。
【0031】
先ず、ステップS1において、制御装置1に接続されている制御対象である機器の故障の有無を判定する。
【0032】
機器が故障していると判定された場合(Yes)、ステップS2に進み、許容時間内に復旧するか否かを判定する。一方、機器が故障していないと判定した場合(No)、ステップS4に進む。
【0033】
次に、ステップS2において、許容時間内に復旧すると判定された場合(Yes)、ステップS3に進み、専用処理部2の構成を変更せずに、故障した機器が復旧するまで汎用処理部(CPU)3が全処理を代行する。一方、許容時間内に復旧しないと判定した場合(No)、ステップS4に進む。
【0034】
ステップS4においては、予め設定された保持データを用いて、専用処理部2の構成を変更すると共に、変更中は汎用処理部(CPU)3が全処理を代行する。
【0035】
次に、
図4を用いて、汎用処理部3の動作を説明する。
【0036】
先ず、ステップS10において、専用処理部2の構成の変更が必要か否かを判定する。
【0037】
専用処理部2の構成の変更が必要ないと判定された場合(No)、ステップS11に進み、制御装置1に接続されている制御対象である機器の故障の有無を判定する。一方、専用処理部2の構成の変更が必要であると判定された場合(Yes)、ステップS15に進む。
【0038】
次に、ステップS11において、機器が故障していないと判定された場合(No)、ステップS12に進み、専用処理部2の実行指示を出力した後、ステップS13において、汎用処理部3による処理を実行する。
【0039】
一方、機器が故障していると判定した場合(Yes)、ステップS18に進み、故障した機器が復旧するまで汎用処理部(CPU)3が全処理を代行し、ステップS19において、復旧が完了したか否かを判定する。復旧が完了したと判定された場合(Yes)、ステップS14に進む。復旧が完了していないと判定された場合(No)、ステップS18に戻り、処理を継続する。
【0040】
その後、ステップS14において、制御装置1による制御対象(機器)の制御が終了(システム終了)したか否かを判定し、制御が終了したと判定された場合(Yes)、処理を終了する。一方、制御が終了していなと判定された場合(No)、ステップS10に戻り、処理を継続する。
【0041】
ステップS15においては、専用処理部2の回路構成変更指示を出力した後、ステップS16において、汎用処理部(CPU)3が全処理を代行する。
【0042】
その後、ステップS17において、専用処理部2の構成変更が完了したか否かを判定し、構成変更が完了したと判定された場合(Yes)、ステップS14に進む。一方、構成変更が完了していないと判定された場合(No)、ステップS16に戻り、処理を継続する。
【0043】
以上説明した本実施例の制御装置1によれば、専用処理部2の制御内容を再構成しつつ、汎用処理部3による代替制御が可能となる。
【0044】
これにより、例えば、複数の産業用ロボットや機器を同期制御する大規模な生産ラインや産業システムにおいて、生産効率を担保しつつ、需要変動への柔軟な対応が可能となる。
【0045】
また、1台のECUで複数の機器を同期制御する車載制御システムにおいて、1つの機器で故障が発生した場合であっても、ECUによる他の機器の制御を継続しつつ、制御内容を変更して安全サイドに移行することが可能となる。
なお、汎用処理部3は、構成変更後の専用処理部2と同様の処理を行う汎用処理部用プログラムを有するように構成し、汎用処理部3が請け負う処理を書き換え先の処理にすることも可能である。
また、汎用処理部3は、構成変更後の専用処理部2の一部機能と同様の処理を行う汎用処理部用プログラムを有するように構成し、汎用処理部3が請け負う処理を書き換え先の一部処理に限定(縮退)することも可能である。