(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028830
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ファン用フィルタ及びファン付きウェア
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134758
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
(72)【発明者】
【氏名】沖 洋平
(72)【発明者】
【氏名】井上 直紀
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC26
(57)【要約】
【課題】ファン付きウェアにファンによってウェア本体内に導入される空気を濾過するためのフィルタを備える際に、フィルタのサイズの大型化を抑制しつつ、ウェア本体内に取り込まれる空気の量の減少を抑える。
【解決手段】ファン2の空気取込部211を覆うようにして使用される円筒形フィルタ3であって、プリーツ状に折り畳まれたフィルタによって環状に形成されたフィルタ本体31と、第一開口部321が形成された外側カバー32と、第二開口部331が形成された内側カバー33と、外側カバー32と内側カバー33とを繋ぐ定位針34と、第一開口部321を塞ぐようにして外側カバー32に着脱自在に取り付けられる蓋部35と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの空気取込部を覆うようにして使用されるファン用フィルタであって、
プリーツ状に折り畳まれたフィルタによって環状に形成されたフィルタ本体を備えることを特徴とするファン用フィルタ。
【請求項2】
前記フィルタ本体の一端部に備えられた板状の部材であり、中央部に第一開口部が形成された第一カバーと、
前記フィルタ本体の他端部に備えられた板状の部材であり、中央部に第二開口部が形成された第二カバーと、
前記第一開口部を塞ぐようにして前記第一カバーに着脱自在に取り付けられる蓋部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のファン用フィルタ。
【請求項3】
前記第一開口部及び前記第二開口部は円形の開口部であり、
前記第一開口部の直径は、前記第二開口部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のファン用フィルタ。
【請求項4】
前記蓋部は、一面側へと突出する爪部を備え、前記爪部を前記第一カバーの前記第一開口部の縁に掛けるようにして、前記第一カバーに取り付けられることを特徴とする請求項2又は3に記載のファン用フィルタ。
【請求項5】
前記蓋部は、前記第一カバーの一面の全体を覆うようにして前記第一カバーに取り付けられることを特徴とする請求項2又は3に記載のファン用フィルタ。
【請求項6】
前記第一カバーと前記第二カバーとを繋ぐ棒状の部材である定位針を複数備え、前記フィルタ本体は、前記ファン用フィルタの前記定位針よりも外側に位置するように配置されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のファン用フィルタ。
【請求項7】
前記フィルタ本体と、前記第一カバーと、前記第二カバーとが着脱不能に接続されていることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のファン用フィルタ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のファン用フィルタと、
着用者の身体の少なくとも一部を覆うウェア本体と、
前記ウェア本体内に空気を導入するファンと、
を備えることを特徴とするファン付きウェア。
【請求項9】
前記ファンは、外周から突出するフランジを備え、
前記ファン用フィルタは、前記フランジと前記ウェア本体との間に挟まれるようにして前記ウェア本体に取り付けられることを特徴とする請求項8に記載のファン付きウェア。
【請求項10】
前記ファン用フィルタは、
前記フィルタ本体の一端部に備えられた板状の部材であり、中央部に円形の開口部である第一開口部が形成された第一カバーと、
前記フィルタ本体の他端部に備えられた板状の部材であり、中央部に円形の開口部である第二開口部が形成された第二カバーと、
を備え、
前記ファンの前記フランジは円形に形成され、
前記フランジの直径は、前記第一開口部の直径よりも小さく前記第二開口部の直径よりも大きく、
前記ファン用フィルタは、前記第二カバーの前記第二開口部の周囲の縁部が、前記フランジと前記ウェア本体との間に挟まれるようにして前記ウェア本体に取り付けられることを特徴とする請求項9に記載のファン付きウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン用フィルタ及びファン付きウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、身体を冷却するファン付きウェアが実用化され、急速に普及しつつある。ファン付きウェアは、通気性の低い素材で形成されたウェア本体に、ウェア本体内に空気を取り込むためのファンが取り付けられており、ファンを作動させると、大量の空気がファンからウェア本体内に取り込まれ、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通した後に、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される。
そして、ファンによってウェア本体内に取り込まれた空気が、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通する間に、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される。
【0003】
このようなファン付きウェアは、粉塵等が浮遊する作業環境下で使用されることも想定されるところ、ファンによって空気中の粉塵等がウェア本体内に取り込まれてしまうと、着用者の身体や下着に付着してしまう可能性があり、衛生面で好ましくない。
そこで、ファンの外面側(ファンに空気を取り込む空気取込部が位置する側)にフィルタを備え、ファンを通してウェア本体内に取り込まれる空気を濾過することを可能としたファン付きウェアが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のファン付きウェアにおいては、ファンの吸気口(ファンに空気を取り込む空気取込部)の外側にスペーサを備え、このスペーサに被せるようにしてフィルタが取り付けられるが、このような構造の場合、例えば、微細な粉塵等まで取り除くことができるようにするため、濾過能力の高い目の細かいフィルタを用いると、フィルタによる圧力損失が増え、ウェア本体内に取り込まれる空気の量が著しく減少してしまう。
そこで、スペーサを大きくしてフィルタの面積を増大させることで、ウェア本体内に取り込まれる空気の減少を抑えることも考えられるが、この場合、取り付けられるフィルタのサイズが大きくなってしまい、これがウェア本体の外面側に大きく突出することから、着用者の邪魔になるおそれがあった。
【0006】
本発明の課題は、ファン付きウェアにファンによってウェア本体内に導入される空気を濾過するためのフィルタを備える際に、フィルタのサイズの大型化を抑制しつつ、ウェア本体内に取り込まれる空気の量の減少を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ファンの空気取込部を覆うようにして使用されるファン用フィルタであって、
プリーツ状に折り畳まれたフィルタによって環状に形成されたフィルタ本体を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のファン用フィルタにおいて、
前記フィルタ本体の一端部に備えられた板状の部材であり、中央部に第一開口部が形成された第一カバーと、
前記フィルタ本体の他端部に備えられた板状の部材であり、中央部に第二開口部が形成された第二カバーと、
前記第一開口部を塞ぐようにして前記第一カバーに着脱自在に取り付けられる蓋部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のファン用フィルタにおいて、
前記第一開口部及び前記第二開口部は円形の開口部であり、
前記第一開口部の直径は、前記第二開口部の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のファン用フィルタにおいて、
前記蓋部は、一面側へと突出する爪部を備え、前記爪部を前記第一カバーの前記第一開口部の縁に掛けるようにして、前記第一カバーに取り付けられることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載のファン用フィルタにおいて、
前記蓋部は、前記第一カバーの一面の全体を覆うようにして前記第一カバーに取り付けられることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載のファン用フィルタにおいて、
前記第一カバーと前記第二カバーとを繋ぐ棒状の部材である定位針を複数備え、前記フィルタ本体は、前記ファン用フィルタの前記定位針よりも外側に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2から6のいずれか一項に記載のファン用フィルタにおいて、
前記フィルタ本体と、前記第一カバーと、前記第二カバーとが着脱不能に接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、ファン付きウェアにおいて、
請求項1から7のいずれか一項に記載のファン用フィルタと、
着用者の身体の少なくとも一部を覆うウェア本体と、
前記ウェア本体内に空気を導入するファンと、
を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のファン付きウェアにおいて、
前記ファンは、外周から突出するフランジを備え、
前記ファン用フィルタは、前記フランジと前記ウェア本体との間に挟まれるようにして前記ウェア本体に取り付けられることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のファン付きウェアにおいて、
前記ファン用フィルタは、
前記フィルタ本体の一端部に備えられた板状の部材であり、中央部に円形の開口部である第一開口部が形成された第一カバーと、
前記フィルタ本体の他端部に備えられた板状の部材であり、中央部に円形の開口部である第二開口部が形成された第二カバーと、
を備え、
前記ファンの前記フランジは円形に形成され、
前記フランジの直径は、前記第一開口部の直径よりも小さく前記第二開口部の直径よりも大きく、
前記ファン用フィルタは、前記第二カバーの前記第二開口部の周囲の縁部が、前記フランジと前記ウェア本体との間に挟まれるようにして前記ウェア本体に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ファン付きウェアにファンによってウェア本体内に導入される空気を濾過するためのフィルタを備える際に、フィルタのサイズの大型化を抑制しつつ、ウェア本体内に取り込まれる空気の量の減少を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るファン付きウェアの開閉手段を閉じた状態における背面図である。
【
図2】実施形態に係るファン付きウェアの開閉手段を開いた状態における正面図である。
【
図3】実施形態に係るファン付きウェアの開閉手段を閉じた状態における側面図である。
【
図4】実施形態に係るファン付きウェアの円筒形フィルタの外側カバー側から見た斜視図である。
【
図5】実施形態に係るファン付きウェアの円筒形フィルタの側面図である。
【
図6】実施形態に係るファン付きウェアの円筒形フィルタの蓋部を外した状態における背面図である。
【
図7】実施形態に係るファン付きウェアの円筒形フィルタを分解した状態を、外側カバー側から見た斜視図である。
【
図8】実施形態に係るファン付きウェアのウェア本体にファン及び円筒形フィルタを取り付ける際の取り付け前の各部材の配置を示す図である。
【
図9】実施形態に係るファン付きウェアのウェア本体にファン及び円筒形フィルタを取り付けた状態を示す図である。
【
図10】実施形態に係るファン付きウェアの円筒形フィルタの蓋部の変形例を示す図である。
【
図11】変形例に係るファン付きウェアの側面図である。
【
図12】変形例に係る円筒形フィルタの外側カバー側から見た斜視図である。
【
図13】
図12のxiii-xiii部における断面図である。
【
図14】変形例に係る円筒形フィルタを分解した状態を、外側カバー側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図14に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではなく、以下説明する実施の形態には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加えることが可能である。
また、以下においては、着用者がファン付きウェア100を着用した状態を基準として、着用者の前方向を前、着用者の後方向を後、着用者の上方向を上、着用者の下方向を下、着用者の右手方向を右、着用者の左手方向を左、前後方向に沿う軸をX軸、左右方向に沿う軸をY軸、上下方向に沿う軸をZ軸と定めて説明する。
なお、ウェア本体1の開閉手段11を開いた状態においては、
図2に示すように、ウェア本体1の内面側(着用時に着用者の身体に向く側)が向く方向を前、その反対方向を後と定めて説明する。また、ファン2や円筒形フィルタ3を説明する場合にも、ウェア本体1に取り付けられた状態を基準として方向を定めて説明する。
【0020】
[第1 実施形態の構成]
実施形態に係るファン付きウェア100は、
図1から
図3に示すように、ウェア本体1と、ウェア本体1内に空気を導入するファン2と、ファン2によってウェア本体1内に導入される空気を濾過する円筒形フィルタ3と、ファン2に電力を供給する電源装置4と、電源装置4とファン2との間を接続する接続ケーブル5と、を備え、ファン2によってウェア本体1内に取り込まれた空気を、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通させた後に、ウェア本体1の襟部及び袖部に形成された空気排出部14から排出することで、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体を冷却するものである。
【0021】
[1 ウェア本体]
ウェア本体1は、
図1から
図3に示すように、通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地によって、着用者の胴部及び腕部を覆う形状に形成されている。
図1から
図3においては、ウェア本体1をブルゾン型の上衣の形状に形成しているが、ウェア本体1の形状は着用者の身体の少なくとも一部を覆うものであればよく、これに限られない。例えば、着用者の胴部のみを覆うベスト型に形成してもよい。
なお、ウェア本体1の着用時において着用者に向く面を内面側、その反対側のウェア本体1の着用時において外部空間に向く面を外面側とする。
【0022】
ウェア本体1は、
図1から
図3に示すように、前身頃に、線ファスナー等を備えて形成された着脱自在な分割部分である開閉手段11を備え、裾部に、ゴム紐等の伸縮性のある部材を着用者の身体を周回するように備えることによって形成された、ウェア本体1と着用者の身体との間の空間内の空気がウェア本体1の裾部から外部に漏れることを防止するための手段である空気漏れ防止手段12を備える。
また、着用者の首とウェア本体1の襟部の端部との間の開口部と、着用者の腕とウェア本体1の袖部の端部との間の開口部と、には、ファン2によってウェア本体1と着用者の身体との間の空間内に導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出するための開口部である空気排出部14が形成されている。
【0023】
また、ウェア本体1の内面側には、
図2に示すように、電源装置4を接続ケーブル5を通じてファン2へと電力を供給可能な位置において保持するため、電源装置4を収納可能なポケット状に形成された電源装置保持手段15と、接続ケーブル5をウェア本体1の内面側に保持するため、上下方向に長い布を上下2か所において縫い付けることにより、接続ケーブル5を挿通可能な開口部を有するリング状に形成されたケーブル保持手段16と、が備えられている。
【0024】
また、ウェア本体1の後見頃の着用者の腰の左右に対応する位置には、
図1及び
図2に示すように、ファン付きウェア100の着用時において、ウェア本体1と着用者の身体との間の空間と、ウェア本体1の外部の空間と、を繋ぐこととなる円形の孔部であるファン取付孔13が形成されている。
ファン取付孔13の直径は、後述のファン2のファン本体21の筒状部213の直径と略同一に形成され、筒状部213がファン取付孔13を挿通するようにして、ウェア本体1にファン2を取り付けることで、ファン取付孔13を介して、外部の空気をウェア本体1と着用者の身体との間の空間に取り込むことができる。
ファン取付孔13の周囲は、例えばプラスチック等によって形成された扁平な環状の部材を取り付ける、ウェア本体1を形成する服地のファン取付孔13周囲の部分を折り返して縫合する等の方法で、補強されていることが好ましい。
【0025】
[2 ファン]
ファン2は、ファン取付孔13を通して、ウェア本体1と着用者の身体との間の空間に空気を導入するための手段であり、
図2に示すように、電源装置4より、接続ケーブル5を介して必要な電力が供給される。
【0026】
ファン2は、
図8及び
図9に示すように、ファン本体21と、取付リング22と、を備える。
【0027】
[(1) ファン本体]
ファン本体21は、空気の流れを生じさせるプロペラ(不図示)が収納された、ファン2の本体をなす部分である。
【0028】
ファン本体21内に収納されたプロペラは、モータ(不図示)により、前後方向(X軸)を回転軸として回転させることによって、後述の空気取込部211側から空気送出部212側へと向かう(後方から前方へと向かう)空気の流れを生じさせる。プロペラの形状は、空気取込部211側から空気送出部212側へと向かう空気の流れを生じさせることができるものであれば特に限定されない。
【0029】
ファン本体21には、
図8及び
図9に示すように、ウェア本体1の外面側に位置する部分に、内部のプロペラを回転させた際に空気が取り込まれる部分である空気取込部211が形成され、ウェア本体1の内面側に位置する部分に、内部のプロペラを回転させた際に空気が送出される部分である空気送出部212が形成されている。
【0030】
また、ファン本体21は、空気取込部211と空気送出部212との間に、空気取込部211と空気送出部212とを繋ぐ筒状の連結部である筒状部213を備え、筒状部213の空気取込部211側の端部には、筒状部213の側面と略垂直な方向に突出するフランジ214を備える。
【0031】
筒状部213は、プロペラの回転軸(X軸)に垂直な平面(YZ面)で切った際の断面の外形が円形なる円筒状に形成され、その外径は、ファン取付孔13の直径と略同一となるように形成されている。また、筒状部213から突出するフランジ214をX軸方向から見た際の形状も円形となる。
また、筒状部213の外面の対向する2か所には、後述の取付リング22の内面側に形成された凹部と嵌合する凸部2131が形成され、後述のように取付リング22を筒状部213の外面側に固定できるように構成されている。
【0032】
[(2) 取付リング]
取付リング22は、プラスチック等の可撓性を有する材料によって一体的に形成されたリング状の部材であり、
図9に示すように、ファン本体21の筒状部213の外面を覆うように取り付けられ、取付リング22の一端部と、ファン本体21のフランジ214との間に、ウェア本体1のファン取付孔13の周囲の部分を挟み込むことによって、ファン2をウェア本体1に取り付けるために用いられる。
【0033】
取付リング22は、ファン本体21内のプロペラの回転軸方向(X軸方向)から見た際の形状が楕円形状となるリング状に形成されている。また、取付リング22は、内周の長さがファン本体21の筒状部213の外周の長さよりも長く、内周の短径が筒状部213の外周の直径よりも小さいか又は筒状部213の外周の直径と同一となるように形成されている。この場合、取付リング22の内周の長径は筒状部213の外周の直径よりも大きくなる。
【0034】
また、取付リング22の短径方向内面側の2か所の対向する位置には、ファン本体21の筒状部213の外面側に形成された凸部2131と嵌合する凹部(不図示)が形成されている。
【0035】
上記のように取付リング22は可撓性を有することから、長径方向の外面側からこれを押圧すると、短径方向が外側に膨らみ、取付リング22を真円形状に変形することができる。また、長径方向の外面側から押圧する力を解放すると、取付リング22は、元の楕円形状に戻ることになる。
これを利用して、楕円形状の取付リング22を長径方向の外面側から押圧し、これを撓ませて真円形状に変形させた上で、筒状部213の凸部2131の位置と、取付リング22の凹部の位置とが重なるようにして、取付リング22を、筒状部213に被せた上で、取付リング22に対する押圧を解除することで、取付リング22を、ファン本体21の筒状部213に取り付けることができる。
また、この際に、取付リング22の一端部と、ファン本体21のフランジ214との間に、ウェア本体1のファン取付孔13の周囲の部分を挟み込むことによって、ファン2をウェア本体1に取り付けることができる。
【0036】
[3 円筒形フィルタ]
円筒形フィルタ3は、ファン2によってウェア本体1内に取り込まれる空気を濾過するための手段であり、
図1、
図3及び
図9に示すように、ファン2のファン本体21の空気取込部211を覆うようにして、ウェア本体1に取り付けられる。
【0037】
円筒形フィルタ3は、
図7に示すように、フィルタ本体31と、外側カバー32と、内側カバー33と、定位針34と、蓋部35と、を備える。
【0038】
[(1) フィルタ本体]
フィルタ本体31は、
図3から
図5及び
図7から
図9に示すように、プリーツ状に折り畳まれると共に、X軸方向から見た際に環状となるように形成されたフィルタである。
なお、この場合の環状とは、円形に限らず、両端が一致する閉曲線状の形状を意味する。また、プリーツ状とは、山折りと谷折りとが交互に連続するように折り畳まれた形状を広く含むものとする。
【0039】
プリーツ状フィルタを構成するフィルタの種類は特に限定されず、ウェア本体1内に取り込まれる空気から除去したい対象物に合わせて適切なフィルタを選択して使用すればよい。
【0040】
[(2) 外側カバー]
外側カバー32は、
図1及び
図3から
図9に示すように、円筒形フィルタ3の後面側(ウェア本体1に向くのと反対側)に取り付けられた円形の板状の部材であり、中央部に円形の開口部である第一開口部321が形成されている。
第一開口部321の直径は、
図8に示すように、ファン本体21のフランジ214の直径より大きく、後述のようにファン2及び円筒形フィルタ3のウェア本体1への取り付け時に、ファン本体21を通すことができるように構成されている。
【0041】
[(3) 内側カバー]
内側カバー33は、
図3から
図9に示すように、円筒形フィルタ3の前面側(ウェア本体1に向く側)に取り付けられた円形の板状の部材であり、中央部に円形の開口部である第二開口部331が形成されている。
【0042】
第二開口部331は、
図6及び
図7に示すように、対向する2か所に直径が大きくなる2か所の切欠部3311が形成された円形の開口部である。
なお、このように一部直径が変動する部分が含まれる場合等においても、外縁の内、過半の部分が同一の円周上に位置するように形成された開口部であれば、円形の開口部に含まれるものとする。また、このように直径が変動する部分が含まれる場合、円形の開口部の直径は、直径が最も小さくなる部分の直径を意味するものとする
【0043】
第二開口部331の直径は、
図8に示すように、ファン本体21のフランジ214の直径より小さく、筒状部213のプロペラの回転軸(X軸)に垂直な平面(YZ面)で切った際の断面の直径よりも僅かに大きい。これによって、後述のようにファン2及び円筒形フィルタ3をウェア本体1に取り付ける際に、外側カバー32の第一開口部321を通過したファン本体21のうち、筒状部213は第二開口部331を通過することができ、フランジ214は、第二開口部331を通過することができないこととなる。
【0044】
[(4) 定位針]
定位針34は、
図7に示すように、外側カバー32と内側カバー33とを繋ぐと共に、フィルタ本体31を外側カバー32及び内側カバー33に固定するための棒状の部材であり、外側カバー32の第一開口部321に沿う縁部と、内側カバー33の第二開口部331に沿う縁部と、を繋ぐように取り付けられる。
図7においては、6本の定位針34が備えられる場合について図示しているが、定位針34の数はこれに限られず、さらに多数の定位針34を備えるようにしてもよいし、フィルタ本体31、外側カバー32及び内側カバー33が固定される範囲で、定位針34の数を減らしてもよい。
【0045】
図7に示すように、フィルタ本体31は、円筒形フィルタ3の定位針34よりも外側に位置し、定位針34を囲むように配置される。これによって、定位針34によってフィルタ本体31の位置が固定されることから、フィルタ本体31を、接着剤等を用いずに円筒形フィルタ3に着脱自在に取り付けることができ、フィルタ本体31のみを交換することが可能となる。
なお、フィルタ本体31のみを交換するのではなく、後述のようにフィルタ本体31、外側カバー32及び内側カバー33を着脱不能に接続してユニット化(一体化)して、これらを一体的に交換する場合には、定位針34は必ずしも必要ではない。
【0046】
[(5) 蓋部]
蓋部35は、
図1、
図3から
図5及び
図7から
図9に示すように、外側カバー32の第一開口部321を塞ぐための部材であり、着脱自在に外側カバー32に取り付けられる。
【0047】
蓋部35は、外側カバー32の第一開口部321よりも直径が僅かに大きく、第一開口部321の全体を覆うことができる円形の板状に形成されると共に、
図7及び
図8に示すように、外側カバー32側に向く前面側へと突出する複数の爪部351を備える。これによって、爪部351を外側カバー32の第一開口部321の周囲の縁部に引っ掛けるようにして蓋部35を外側カバー32に取り付けることで、外側カバー32の第一開口部321を塞ぐことができる。
図7及び
図8においては、蓋部35が4つの爪部351を備える場合について図示しているが、爪部351の数はこれに限られず、さらに多数の爪部351を備えるようにしてもよいし、蓋部35を外側カバー32に取り付けることができる範囲で、爪部351の数を減らしてもよい。
【0048】
[4 電源装置]
電源装置4は、ファン2(ファン2内に備えられたプロペラを回転させるためのモータ)に電力を供給するための部材であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池が内蔵され、
図2に示すように、接続ケーブル5を介してファン2と接続される。また、電源装置4は、ファン2に供給する電力のオン/オフを切り替えるスイッチを備える。
電源装置4は、ファン2に電力を供給することができるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0049】
[5 接続ケーブル]
接続ケーブル5は、
図2に示すように、電源装置4とファン2とを接続するケーブルであり、接続ケーブル5を通じて、電源装置4からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力が供給される。
接続ケーブル5は、接続ケーブル5を介して電源装置4からファン2に電力を供給できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0050】
[第2 取付方法の説明]
ファン2及び円筒形フィルタ3を、ウェア本体1に取り付ける際の取付方法について説明する。
【0051】
ファン2及び円筒形フィルタ3をウェア本体1に取り付ける場合、まず、
図8に示すように、ファン2のファン本体21と、蓋部35が外された状態の円筒形フィルタ3と、をウェア本体1のファン取付孔13が形成された部分の外面側(後方側)に配置し、ファン2の取付リング22を、ウェア本体1のファン取付孔13が形成された部分の内面側(前方側)に配置する。
【0052】
続いて、ファン本体21を、外側カバー32の第一開口部321から円筒形フィルタ3に通し、ファン本体21の空気送出部212及び筒状部213が円筒形フィルタ3の内側カバー33の第二開口部331から突出し、ファン本体21のフランジ214が、円筒形フィルタ3の内側カバー33の第二開口部331の周囲の縁部に引っ掛かった状態とする。
ファン本体21の筒状部213を円筒形フィルタ3の内側カバー33の第二開口部331に通す際には、凸部2131の位置を切欠部3311の位置に合わせることで、凸部2131が第二開口部331の縁に引っ掛かってしまうことを防止できる。
【0053】
続いて、ファン本体21のうち、円筒形フィルタ3の内側カバー33の第二開口部331から出ている部分(空気送出部212及び筒状部213)を、ウェア本体1のファン取付孔13に通した上で、ウェア本体1の内面側から、取付リング22を、ファン本体21の筒状部213に通して固定する。
【0054】
続いて、蓋部35を外側カバー32に取り付け、第一開口部321を塞ぐ。
【0055】
これによって、ファン本体21のフランジ214と取付リング22との間に、ウェア本体1のファン取付孔13の周囲の部分と、円筒形フィルタ3の内側カバー33の第二開口部331の周囲の部分と、を挟むことで、
図9に示すように、円筒形フィルタ3がファン2のファン本体21の空気取込部211を覆い、円筒形フィルタ3がウェア本体1の外面側に位置する状態で、円筒形フィルタ3をファン2に取り付けると共に、ファン2及び円筒形フィルタ3を、ウェア本体1に取り付けることができる。
【0056】
[第3 実施形態の効果]
本実施形態に係るファン付きウェア100によれば、プリーツ状に折り畳まれたフィルタによって環状に形成されたフィルタ本体31を備える円筒形フィルタ3によって、ファン2のファン本体21の空気取込部211が覆われることとなる。
プリーツ状に折り畳まれたフィルタを使用することで、従来のように平面状のフィルタを使用する場合と比較して、円筒形フィルタ3を大型化せずとも、フィルタと外気との接触面積を増やして圧力損失を低減させることができることから、フィルタのサイズの大型化を抑制しつつ、フィルタを備えることによるウェア本体内に取り込まれる空気の量の減少を抑えることができる。
【0057】
また、フィルタ本体31に使用するフィルタを、用途に応じたフィルタの種類や形状を選択して適宜交換することにより、選択したフィルタの特性に応じて様々な粒子径の物質をウェア本体1内に取り込まれる空気から除去することができ、様々な粒子径の粉塵に加えて、ウイルス等がウェア本体1内に取り込まれることを防止することも可能となる。なお、本実施形態においては、上記のように圧力損失の観点から、プリーツ状に折り畳まれたフィルタを用いている。
【0058】
また、円筒形フィルタ3が、後面側に、中央部に第一開口部321が形成された外側カバー32を備え、前面側に、中央部に第二開口部331が形成された内側カバー33を備え、第一開口部321の直径がファン2のファン本体21のフランジ214の直径よりも大きく、第二開口部331の直径がファン2のファン本体21のフランジ214の直径よりも小さいことで、上記取付方法の説明において述べたようにして、内側カバー33の第二開口部331の周囲の縁部が、フランジ214とウェア本体1のファン取付孔13の周囲の部分との間に挟まれるようにして、円筒形フィルタ3を、ウェア本体1に取り付けることが容易となる。
【0059】
また、円筒形フィルタ3が、外側カバー32の第一開口部321を塞ぐようにして着脱自在に取り付けられる蓋部35を備えることで、ファン2及び円筒形フィルタ3をウェア本体1に取り付けた状態においては、ファン2及び円筒形フィルタ3の取付時に使用する第一開口部321を蓋部35で塞ぐことができ、第一開口部321からフィルタを介さずにファン2の空気取込部211に外気が侵入することを防止できる。
【0060】
また、蓋部35が、複数の爪部351を備え、爪部351を外側カバー32の第一開口部321の縁に掛けるようにして蓋部35を外側カバー32に取り付けることで、蓋部35を外側カバー32に対して着脱することが容易となる。
【0061】
[第4 変形例]
続いて、上記実施形態の変形例について説明する。
【0062】
[1 蓋部の構成の変更]
上記構成の説明においては、円筒形フィルタ3の蓋部35について、外側カバー32の第一開口部321よりも直径が僅かに大きい円形の板状に形成し、爪部351を外側カバー32の第一開口部321の周囲の部分に引っ掛けるようにして取り付ける場合について説明したが、これに代えて、爪部に外側へと半球状に膨らむ膨出部を設けた上で、外側カバー32の第一開口部321の縁に、このような膨出部を嵌めることができる凹部を設け、このような凹部に膨出部を嵌めることによって、蓋部35を外側カバー32に取り付けるようにしてもよい。
【0063】
また、
図10に示す蓋部35Aのように、外側カバー32の一面(フィルタ本体31が位置するのと反対側に向く後面側の面)の全体を覆うことができる大きさに形成した上で、外側カバー32の一面の全体を覆うように取り付けるようにしてもよい。この場合、蓋部35Aと外側カバー32の第一開口部321との間に隙間が生じるおそれをさらに低減できる。
【0064】
なお、この蓋部35Aにフィルタ(不図示)を別途取り付けられるように構成してもよい。これによって、円筒形フィルタによる外気の濾過能力をさらに向上できる。
【0065】
[2 ウェア本体の構成の変更]
上記構成の説明においては、ウェア本体1がブルゾン型の上衣の形状に形成された場合について説明したが、ファン2及び円筒形フィルタ3が取り付けられるウェア本体の形状はこれに限られるものではない。
【0066】
例えば、
図11に示すファン付きウェア100Aのように、着用者の全身を覆うように形成されたウェア本体1Aを用いてもよい。
【0067】
ウェア本体1Aは、着用者の頭部や手足までを含む全身を覆うと共に、着用者の顔面の前方に、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)等の透明かつ硬質な材料で形成されたシールド17を備える。
【0068】
また、ウェア本体1Aには、フィルタによって覆われた複数の開口部(肩部開口部18a、背中部開口部18b、腕部開口部18c及び足部開口部18d)が形成されている。なお、ウェア本体1Aにはこれらのフィルタによって覆われた開口部以外の開口部は形成されていない。
これら開口部を覆うフィルタとしては、円筒形フィルタ3に備えられたフィルタ本体31に用いられるフィルタと同様、ウェア本体1A内への侵入を防ぎたい物質に合わせて、適切なフィルタを選択して使用すればよい。
【0069】
本変形例によれば、着用者の全身が覆われ、かつ、ファン2によってウェア本体1A内に導入された空気の排出部となる開口部も全てフィルタで覆われていることから、ファン2によってウェア本体1A内に導入される空気に加えて、空気の排出部から侵入する空気もフィルタによって濾過することができ、ファン付きウェア100Aを、粉塵等に対する防護服としても使用し易くなる。
【0070】
[3 フィルタ本体、外側カバー及び内側カバーのユニット化]
円筒形フィルタ3は、上記のようにフィルタ本体31のみを交換できるように構成してもよいが、フィルタ本体31、外側カバー32及び内側カバー33を、例えば、接着剤により接着する等の方法で着脱不能に接続してユニット化(一体化)することによって、フィルタ本体31、外側カバー32及び内側カバー33が接続されたユニットごと交換できるようにしてもよい。なお、フィルタ本体31、外側カバー32及び内側カバー33を着脱不能に接続してユニット化(一体化)する場合、定位針34は備えずともよい。
【0071】
フィルタ本体31、外側カバー32及び内側カバー33をユニット化(一体化)する方法は、特に限定されないが、
図12から
図14に示す円筒形フィルタ3Aのように、外側カバー32Aのフィルタ本体31に向く側に溝を設けると共に、内側カバー33Aのフィルタ本体31に向く側に溝を設け、これら溝の間で、フィルタ本体31が固定されるようにすることが好ましい。
【0072】
具体的には、
図13及び
図14に示すように、外側カバー32Aは、フィルタ本体31に向く前面側の外縁部付近を周回するように形成された外周突出部322と、内縁部付近を周回するように形成された内周突出部323とを備え、これら突出部の間に溝が形成されている。
また、内側カバー33Aは、フィルタ本体31に向く後面側の外縁部付近を周回するように形成された外周突出部332と、内縁部付近を周回するように形成された内周突出部333とを備え、これら突出部の間に溝が形成されている。
【0073】
図13及び
図14に示すように、外側カバー32Aの外周突出部322及び内周突出部323との間に形成された溝と、内側カバー33Aの外周突出部332と内周突出部333との間に形成された溝と、の間にフィルタ本体31を挟み込むようにして、フィルタ本体31、外側カバー32及び内側カバー33を、接着剤により接着する等の方法で接続することで、定位針34を用いずとも、フィルタ本体31を、外側カバー32A及び内側カバー33Aに安定した状態で固定することができる。
【0074】
また、外側カバー32Aの第一開口部321を塞ぐ蓋部35Bは、
図13及び
図14に示すように、外側カバー32A側に向く前面側に、爪部351に代えて、外周の大きさが第一開口部321と一致するように構成された円筒形の突出部である蓋部突出部352を備え、蓋部突出部352を第一開口部321に嵌めることで、第一開口部321を塞ぐようにして外側カバー32Aに取り付けることができるように構成されている。
【符号の説明】
【0075】
100、100A ファン付きウェア
1、1A ウェア本体
2 ファン
21 ファン本体
211 空気取込部
212 空気送出部
213 筒状部
214 フランジ
22 取付リング
3、3A 円筒形フィルタ(ファン用フィルタ)
31 フィルタ本体
32、32A 外側カバー(第一カバー)
321 第一開口部
33、33A 内側カバー(第二カバー)
331 第二開口部
34 定位針
35、35A、35B 蓋部
351 爪部
4 電源装置
5 接続ケーブル