(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028833
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】回転電機のコア部製造方法及びコア部製造装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20220101AFI20230224BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
H02K1/27 501D
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134762
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 愼太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 巧
(72)【発明者】
【氏名】宮本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】園田 啓太
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS44
5H615TT31
5H615TT32
5H622AA00
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】 鉄心本体空間部への樹脂送入にあたり、固化速度が他より速い樹脂を型近くに配置し、他の樹脂より先に固化させて、型と鉄心本体を離しても充填された樹脂に悪影響が及ばない状態を早期に得て、型による鉄心本体の拘束時間短縮が図れる、コア部製造方法及びコア部製造装置を提供する。
【解決手段】 型間に位置させた鉄心本体11の空間部に樹脂を送入する送入工程で、固化速度の速い一の樹脂が、型と空間部に位置する他の樹脂との間に介在するように送入を実行し、固化速度の遅い他の樹脂を型に接触させない状態で先に一の樹脂を固化させることから、一の樹脂が固化した段階では、型と鉄心本体11とを離しても、既に固化した一の樹脂に型との分離に伴う問題は生じず、型間から鉄心本体11を解放して取り出せ、仮に他の樹脂が固化していない時点でも、他の樹脂の充填状態に影響を与えることなく鉄心本体11を型間から取り出すことができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性金属材料製の薄板が複数積層されて形成された鉄心本体を一対の型の間に位置させ、鉄心本体における複数の空間部に樹脂を充填し、回転電機の回転子又は固定子の一部をなすコア部を製造する、コア部製造方法において、
前記一対の型のうち一方の型側に位置する樹脂保持部に保持された樹脂を、前記鉄心本体の空間部に送入する送入工程と、
前記一対の型により前記鉄心本体を挟持しつつ、前記空間部で溶融状態にある樹脂の固化を進行させる固化工程とを少なくとも有し、
前記送入工程で、送入した樹脂を前記空間部で溶融させて、又は、溶融した樹脂を空間部に送入して、空間部に溶融した樹脂を位置させてから、前記固化工程での樹脂の固化を進行させ、
前記樹脂が、複数種類からなり、溶融状態から他の樹脂より速い所定の固化速度で固化する一の樹脂を少なくとも含み、
前記送入工程では、前記一の樹脂と他の樹脂を所定の順序で送入し、
前記固化工程で、前記空間部が通じた型に対しては、当該型と前記他の樹脂との間に前記一の樹脂を介在させて固化を進行させ、少なくとも一の樹脂を固化させることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載のコア部製造方法において、
前記鉄心本体が、上下一対の型間に位置し、
前記樹脂保持部が、上下一対の型のうち上型側に位置して、樹脂を前記空間部に上から送入可能とし、前記一の樹脂を上層、前記他の樹脂を下層とする積層状態で保持し、
前記送入工程では、前記樹脂保持部で保持される樹脂を、前記他の樹脂、前記一の樹脂の順で送入し、
前記固化工程の直前には、溶融した前記他の樹脂の層の上側に、溶融した前記一の樹脂の層が位置していることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項3】
前記請求項1に記載のコア部製造方法において、
前記鉄心本体が、上下一対の型間に位置し、
前記樹脂保持部が、上下一対の型のうち上型側に位置して、樹脂を前記空間部に上から送入可能とし、前記一の樹脂を上層と下層、前記他の樹脂を中間層とする積層状態で保持し、
前記送入工程では、前記樹脂保持部で保持される樹脂を、前記一の樹脂、前記他の樹脂、一の樹脂の順で送入し、
前記固化工程の直前には、溶融した前記他の樹脂の層の上側と下側に、溶融した前記一の樹脂の層がそれぞれ位置していることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載のコア部製造方法において、
前記鉄心本体における上端面と前記上型との間に補助プレートが配置され、
前記送入工程では、前記補助プレートの樹脂通路を通じて、樹脂を前記空間部に送入可能とされ、
前記固化工程の直前における、溶融した前記他の樹脂の層と、当該層の上側の溶融した前記一の樹脂の層との境界を、前記補助プレートの樹脂通路に位置させることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項5】
前記請求項1に記載のコア部製造方法において、
前記鉄心本体が、上下一対の型間に位置し、
前記樹脂保持部が、上下一対の型のうち下型側に位置して、樹脂を前記空間部に下から送入可能とし、前記一の樹脂を下層、前記他の樹脂を上層とする積層状態で保持し、
前記送入工程では、前記樹脂保持部で保持される樹脂を、前記他の樹脂、前記一の樹脂の順で送入し、
前記固化工程の直前には、溶融した前記他の樹脂の層の下側に、溶融した前記一の樹脂の層が位置していることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項6】
前記請求項1に記載のコア部製造方法において、
前記鉄心本体が、上下一対の型間に位置し、
前記樹脂保持部が、上下一対の型のうち下型側に位置して、樹脂を前記空間部に下から送入可能とし、前記一の樹脂を上層と下層、前記他の樹脂を中間層とする積層状態で保持し、
前記送入工程では、前記樹脂保持部で保持される樹脂を、前記一の樹脂、前記他の樹脂、一の樹脂の順で送入し、
前記固化工程の直前には、溶融した前記他の樹脂の層の上側と下側に、溶融した前記一の樹脂の層がそれぞれ位置していることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項7】
前記請求項1ないし3、5、及び6のいずれかに記載のコア部製造方法において、
前記固化工程の直前における、溶融した前記他の樹脂の層と、当該層に対し前記一方の型側に位置する、溶融した前記一の樹脂の層との境界を、一方の型側の前記鉄心本体の端部近傍における前記空間部に位置させることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項8】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載のコア部製造方法において、
前記送入工程で、前記樹脂保持部で溶融された樹脂を、永久磁石挿入済の前記空間部へ向けて注入することを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項9】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載のコア部製造方法において、
前記送入工程で、前記樹脂保持部で保持される未溶融状態の樹脂を送入してから、前記空間部に永久磁石を挿入すると共に、送入した樹脂を前記空間部で溶融させることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項10】
磁性金属材料製の薄板が複数積層されて形成された鉄心本体を一対の型の間に位置させ、鉄心本体における複数の空間部に樹脂を充填し、回転電機の回転子又は固定子の一部をなすコア部を製造する、コア部製造装置において、
前記一対の型のうち一方の型側に位置して、樹脂を保持すると共に前記鉄心本体の空間部に樹脂を送入可能とされる樹脂保持部と、
前記一対の型により前記鉄心本体を挟持しつつ、前記空間部で溶融状態にある樹脂を加圧すると共に樹脂の固化を進行させる充填機構部とを備え、
前記樹脂が、複数種類からなり、溶融状態から他の樹脂より速い所定の固化速度で固化する一の樹脂を少なくとも含み、
前記樹脂保持部が、前記一の樹脂と他の樹脂を所定の順序で送入し、
前記充填機構部が、前記空間部が通じた型に対し、当該型と前記他の樹脂との間に前記一の樹脂を介在させつつ、少なくとも一の樹脂を固化させることを
特徴とするコア部製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の回転子又は固定子におけるコア部の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や発電機といった回転電機の固定子又は回転子において、コイルや永久磁石を配設されるコアには、積層鉄心が一般に用いられる。
こうした積層鉄心のコアへの、コイルや永久磁石の配設にあたっては、従来から様々な工夫がなされてきた。
【0003】
例えば、回転子のコアの場合、特に、IPMモータの回転子コアの場合、積層鉄心の磁石挿入孔に磁石を挿入固定する構造が採用されていた。こうした構造では、永久磁石を固定する際、磁石挿入孔への永久磁石の挿入後、磁石挿入孔における永久磁石の存在部分を除いた隙間に、溶融し流動性のある状態とした熱硬化性樹脂等の樹脂を注入して、隙間を埋めた後、樹脂を固化させることで、永久磁石を固定するようにしていた。
こうした従来の回転電機におけるコア製造の一例として、特開2009-100634号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の回転電機のコアの製造は、前記特許文献に示される方法でなされており、上下の型で挟持押圧したロータコアの磁石収納孔に樹脂を注入する樹脂注入装置を用いることで、効率よく磁石収納孔に樹脂を注入して、コアと磁石を一体化することができた。
【0006】
こうした従来のコアへの磁石固定のための樹脂注入においては、コアを樹脂注入用の装置の上下の型間に直接又は治具を介して挟持押圧状態として、樹脂注入を行うのが一般的であった。ただし、このようなコアへの樹脂注入の工程の後、樹脂が完全に固化するまで待つ必要があり、仮に固化しないままで型とコアとを離隔させると、固化していない樹脂がこれと接する型の移動の影響を受けて、本来あるべき位置からずれる事態が生じ、磁石周囲に樹脂を正しく配置できなくなるという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、鉄心本体空間部への樹脂送入にあたり、固化速度が他より速い樹脂を型近くに適切に配置し、他の樹脂より先に固化させて、型と鉄心本体を離しても充填された樹脂に悪影響が及ばない状態を早期に得て、型による鉄心本体の拘束時間短縮が図れる、コア部製造方法及びコア部製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示に係るコア部製造方法は、磁性金属材料製の薄板が複数積層されて形成された鉄心本体を一対の型の間に位置させ、鉄心本体における複数の空間部に樹脂を充填し、回転電機の回転子又は固定子の一部をなすコア部を製造する、コア部製造方法において、前記一対の型のうち一方の型側に位置する樹脂保持部に保持された樹脂を、前記鉄心本体の空間部に送入する送入工程と、前記一対の型により前記鉄心本体を挟持しつつ、前記空間部で溶融状態にある樹脂の固化を進行させる固化工程とを少なくとも有し、前記送入工程で、送入した樹脂を前記空間部で溶融させて、又は、溶融した樹脂を空間部に送入して、空間部に溶融した樹脂を位置させてから、前記固化工程での樹脂の固化を進行させ、前記樹脂が、複数種類からなり、溶融状態から他の樹脂より速い所定の固化速度で固化する一の樹脂を少なくとも含み、前記送入工程では、前記一の樹脂と他の樹脂を所定の順序で送入し、前記固化工程で、前記空間部が通じた型に対しては、当該型と前記他の樹脂との間に前記一の樹脂を介在させて固化を進行させ、少なくとも一の樹脂を固化させるものである。
【0009】
このように本発明の開示によれば、型間に位置させた鉄心本体の樹脂充填対象となる空間部に樹脂を送入する送入工程で、樹脂を固化させた後は鉄心本体から離隔させる型に対し、固化速度の速い一の樹脂が型と空間部に位置する他の樹脂との間に介在するように送入を実行し、固化速度の遅い他の樹脂を型に接触させない状態で樹脂の固化を進行させ、一の樹脂を固化させることにより、一の樹脂が固化した段階では、型と鉄心本体とを離しても、既に固化した一の樹脂に型との分離に伴う問題は生じず、型間から鉄心本体を解放して取り出せ、仮に他の樹脂が固化していない時点でも、一の樹脂が固化していれば、他の樹脂の充填状態に影響を与えることなく鉄心本体を型間から取り出すことができ、空間部に他の樹脂のみ送入し固化させる場合に比べ、一の樹脂と他の樹脂の固化時間の差だけ、鉄心本体を型間に拘束する時間を短縮でき、コア部の製造効率を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法を適用するコア部製造装置の樹脂材料保持状態説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法に用いる鉄心本体の治具による支持状態における縦断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法における送入工程での溶融樹脂送入状態説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法における鉄心本体及び補助プレートのコア部製造装置上型からの離隔状態説明図である。
【
図5】
図5(a)は本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法による樹脂充填後の鉄心本体の平面図であり、
図5(b)は
図5(a)のB-B断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法を適用する他のコア部製造装置における補助プレートを介在させない溶融樹脂送入状態説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法を適用する他のコア部製造装置における樹脂材料保持状態説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法を適用する他のコア部製造装置における溶融樹脂送入状態説明図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造方法における治具からの早期取り外しに対応した樹脂充填後の鉄心本体の治具からの取り外し状態説明図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造方法を適用するコア部製造装置の樹脂材料保持状態説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造方法における送入工程での溶融樹脂注入状態説明図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造方法における鉄心本体、補助プレート及び治具のコア部製造装置上下型からの離隔状態説明図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造方法を適用する他のコア部製造装置における樹脂材料保持状態説明図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造方法を適用する他のコア部製造装置における溶融樹脂送入状態説明図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造方法を適用する他のコア部製造装置上下型からの鉄心本体、補助プレート及び治具の離隔状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る回転電機のコア部製造装置を
図1~
図5に基づいて説明する。
各図において本実施形態に係るコア部製造方法は、対をなす上型21及び下型22のうち上型21側に位置する樹脂保持部24に保持された樹脂を、鉄心本体11の空間部に送入する送入工程と、上型21及び下型22により鉄心本体11を挟持しつつ、空間部で溶融状態にある樹脂の固化を進行させる固化工程とを少なくとも有し、送入工程で溶融した樹脂を空間部に送入し、空間部に溶融した樹脂を位置させてから、固化工程での樹脂の固化を進行させるものである。
【0012】
このコア部製造方法において、樹脂は、第一の樹脂と第二の樹脂の二種類からなり、このうち第一の樹脂は溶融状態から第二の樹脂より速い所定の固化速度で固化するものであり、送入工程では、第一の樹脂と第二の樹脂を所定の順序で送入する。また、固化工程では、空間部が通じた型に対して、この型と第二の樹脂との間に第一の樹脂を介在させて固化を進行させ、少なくとも第一の樹脂を固化させることとなる。
【0013】
本実施形態に係るコア部製造方法を適用するコア部製造装置1は、積層構造の鉄心本体11における樹脂充填対象の複数の空間部に、溶融した樹脂を充填し固化させて、回転電機の回転子をなすコア部10を製造するものである。詳細には、コア部製造装置1は、鉄心本体11をその積層方向両側から挟み込む充填機構部としての上型21及び下型22と、上型21側に位置して樹脂を保持すると共に鉄心本体11の空間部に樹脂を送入可能とされる樹脂保持部24とを備える構成である。
【0014】
本実施形態に係るコア部製造方法により製造されるコア部10は、磁性金属材料製の薄板11aを複数積層して形成される鉄心本体11と、この鉄心本体11に複数設けられる空間部としての各磁石挿入孔11bに挿入配設される永久磁石12と、各磁石挿入孔11bに充填される樹脂製の充填材13とを備える構成である(
図5参照)。このコア部10は、回転電機(電動機や発電機)の回転子としての公知の構造を有するものであり、詳細な説明を省略する。
【0015】
鉄心本体11は、磁性金属材料製の薄板11aを複数積層して形成される積層鉄心である。この鉄心本体11をなす薄板11aは、電磁鋼やアモルファス合金等からなる薄板材から打抜き形成されるものである。
【0016】
鉄心本体11には、空間部として永久磁石12を挿入可能な磁石挿入孔11bが複数設けられる。磁石挿入孔11bは、薄板11aの積層方向に鉄心本体11を貫通する孔であり、鉄心本体11の円形の外周に沿う所定の配置で設けられる。この磁石挿入孔11bの位置、形状及び数は、回転電機の用途、要求される性能などに応じて適宜設定することができる。
【0017】
この他、鉄心本体11の中央には、薄板11aの積層方向に鉄心本体11を貫通する軸孔11cが設けられ、この軸孔11cに回転子の回転軸(シャフト)を挿通固定可能とされる。
【0018】
この鉄心本体11は、コア部製造装置1による樹脂の送入工程やその前後で治具30に支持され、治具30と一体に取り扱われることとなる。また、鉄心本体11の治具30に面する側とは反対側となる端面には、空間部としての磁石挿入孔11bへの樹脂挿入を補助する、板状の補助プレート40が取り付けられる。
【0019】
永久磁石12は、回転子の界磁用として、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに挿入されて配設されるものである。この永久磁石12は、鉄心本体11の磁石挿入孔11bより若干小さく形成されていることから、永久磁石12を各磁石挿入孔11bに挿入すると、永久磁石12と鉄心本体11との間には隙間が生じる。すなわち、永久磁石12を挿入された各磁石挿入孔11bは、その一部が空間のまま残る状態となる。このような磁石挿入孔11bにおける永久磁石12を除く残余部分に、実質的に充填材13が充填されることとなる。
【0020】
充填材13は、磁石挿入孔11bに、より詳細には、永久磁石12挿入後の磁石挿入孔11b残余部分に、送入充填された樹脂、詳細には、溶融状態で注入され充填された樹脂が、充填後に固化したものである。充填材13を構成する樹脂は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂などであり、樹脂タブレット又は粉末状の樹脂等として供給された樹脂材料を溶融させた後、固化させて得られたものである。なお、充填材13を構成する樹脂を、複数種類からなるものとすることもでき、その場合、基になる樹脂材料も複数種類用いられる。
この充填材13は、永久磁石12を磁石挿入孔11b内に固定すると共に、積層されて隣り合う薄板11a同士の連結強化に寄与することとなる。
【0021】
コア部製造装置1の充填機構部をなす上型21及び下型22は、鉄心本体11を挟持してこれら上下型間に位置させつつ、空間部としての磁石挿入孔11bで溶融状態にある樹脂を加圧すると共に、樹脂の固化を進行させるものである。
【0022】
上型21及び下型22は、治具30に載せた鉄心本体11を、その積層方向両側から挟持押圧する。これにより、鉄心本体11には高さ方向から所定の荷重が付与され、鉄心本体11における磁石挿入孔11bを治具30のプレート部31で閉塞できる。
【0023】
そして、コア部製造装置1は、送入工程として、一対の型のうち上型21側に位置する樹脂保持部24に保持された樹脂を、鉄心本体11における空間部としての磁石挿入孔11bに上から送入可能とされる。樹脂保持部24による送入は、具体的には、溶融した樹脂を磁石挿入孔11bに注入して、磁石挿入孔11bに溶融した樹脂を位置させることとなる。
【0024】
樹脂保持部24で送入される樹脂は、溶融状態から固化する固化速度の異なる複数種類からなる。詳細には、最も固化速度の速い第一の樹脂と、この第一の樹脂より遅い一般的な固化速度である第二の樹脂を含む。樹脂保持部24は、第一の樹脂を上層、第二の樹脂を下層とする積層状態で保持する。そして、樹脂保持部24は、これら第一の樹脂と第二の樹脂を、送入工程では、第二の樹脂、第一の樹脂の順で送入して、溶融した第一の樹脂の層が溶融した第二の樹脂の層の上側に位置する積層状態を生じさせ、この積層状態で各樹脂が固化できるようにする。
【0025】
上型21は、下型22上に載置された鉄心本体11の上方に位置して、下型22と共に鉄心本体11、補助プレート40及び治具30を挟持するものである。この上型21は、例えば矩形板状に形成される金型であり、樹脂を収容保持可能な複数の収容孔21aを設けられる構成である。また、上型21は、収容孔21aに対し上方から挿入可能に配設され、樹脂を鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ押出可能とする押出部23を備える構成である。
そして、こうした上型21における収容孔21aと押出部23が、樹脂保持部24をなすこととなる。すなわち、樹脂保持部24は、上型21に一体に組み込まれたものとなっている。
【0026】
樹脂保持部24の一部としての収容孔21aは、上型21と下型22とで鉄心本体11が挟持された状態において、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに対応する箇所に位置するように、所定間隔で並べて複数設けられる。
【0027】
上型21は、こうした各収容孔21aに、樹脂タブレットや粉末状等の形態で供給される樹脂材料を収容可能とされる。樹脂材料としては、第一の樹脂である樹脂材料81と、第二の樹脂である樹脂材料82との二種類が用いられる。各収容孔21aは、樹脂材料81を上層、樹脂材料82を下層とする積層状態で保持することとなる。
【0028】
また、上型21は、樹脂保持部24の機能として、樹脂材料81、82を加熱して溶融させ、溶融樹脂84、85を得る仕組みも有する。上型21には、各収容孔21aに収容されている樹脂材料81、82を加熱可能とされるヒータ(図示を省略)が設けられる。樹脂材料81、82が加熱されると、収容孔21aで溶融し、溶融樹脂84、85となる。
【0029】
押出部23は、溶融樹脂84、85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ押出可能とするものであり、例えば、所定の駆動源による駆動で上下動可能とされる複数のプランジャとされる構成である。
【0030】
各押出部23は、押出部ごとに対応する駆動源でそれぞれ駆動されて上下動可能とされるほか、複数の押出部を一つの駆動源でまとめて駆動して一体に上下動可能とするようにしてもよい。
【0031】
収容孔21aで保持される溶融樹脂84、85は、送入工程で、押出部23により上型21の収容孔21aから押し出され、上型21と鉄心本体11の上端面との間に配置される補助プレート40の樹脂通路41や、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに達する。この送入工程では、下にある溶融樹脂から先に、すなわち、第二の樹脂である下層の溶融樹脂85、第一の樹脂である上層の溶融樹脂84、の順で送入が実行される。
【0032】
下型22は、鉄心本体11及び治具30を載せられてこれらを支持しつつ、上型21と共に鉄心本体11及び治具30を挟持するものである。この下型22は、例えば矩形板状に形成される金型であり、必要に応じて治具30下面に設けられた凸部又は凹部と嵌合して治具の不要な動きを防止する凹部又は凸部を設けられる。
【0033】
治具30は、鉄心本体11を載置可能なプレート部31と、このプレート部31の略中央部から上方へ突出するポスト部32とを備える構成である(
図2参照)。
プレート部31は、例えば矩形板状の台状部材とされ、鉄心本体11を載置されてこの鉄心本体11の下端面に当接する状態で、鉄心本体11を下から支持するものである。
【0034】
ポスト部32は、円柱状に形成されてプレート部31の上面略中央部に上方へ向けて突出するように配設されるものである。このポスト部32は、鉄心本体11の軸孔11cに対応する大きさの円柱状とされて、鉄心本体11の軸孔11cに挿通可能とされる。
【0035】
補助プレート40は、樹脂を各磁石挿入孔11bに導く樹脂通路41(例えば、ランナー、ゲート孔)が形成される板状部材であり、いわゆるカルプレートとして鉄心本体11の治具30に接しない側の端面に取り付けられ、鉄心本体11が送入機構部20の上型21と下型22とで挟持された状態で、上型21と鉄心本体11との間に位置するものである。
【0036】
補助プレート40を鉄心本体11に取り付けることで、鉄心本体11に注入充填した溶融樹脂84が固化した後、この固化した樹脂のうち鉄心本体11の上部に残ったもの(カル)を、補助プレート40の取り外しにより除去でき、不要な樹脂の除去をより容易に行えることとなる。
【0037】
次に、本実施形態に係るコア部製造方法に基づくコア部の製造過程について説明する。
前提として、あらかじめ、公知の製法により、薄板材から打抜いた複数の薄板11aを積層した鉄心本体11が得られているものとする。そして、鉄心本体11は、その磁石挿入孔11bに永久磁石12を挿入され、適切な温度に予熱された状態で、この鉄心本体11を載せた治具30と共に、所定の移送機構によりコア部製造装置1に向けて移送されているものとする。
【0038】
また、鉄心本体11に対し補助プレート40が予熱前に取り付けられ、鉄心本体11と共に予熱されるか、予熱後の鉄心本体11に対し別途予熱された補助プレート40が取り付けられることで、鉄心本体11は取り付けられた補助プレート40と共にコア部製造装置1に向けて移送されるものとする。
【0039】
さらに、コア部製造装置1の上型21には、溶融樹脂84、85の材料としての二種類の樹脂材料81、82が、上型21の収容孔21aに自動供給され、注入前に上型21でこれら樹脂材料81、82を加熱して溶融させられるものとする。
【0040】
補助プレート40を取り付けられた鉄心本体11と、これらを載せた治具30は、移送機構の作動によりコア部製造装置1に向けて移送され、コア部製造装置1に達すると、鉄心本体11、補助プレート40及び治具30は、コア部製造装置1の鉄心本体搬入出用の開口部分を通じて、コア部製造装置1の上下型間に搬入される。
移送機構により、鉄心本体11の載った治具30が下型22上に載置されると、鉄心本体11、補助プレート40及び治具30のコア部製造装置1への搬入完了となる。
【0041】
一方、コア部製造装置1の上型21には、二種類の樹脂材料81、82が供給されており、各収容孔21aに樹脂材料81が上層、樹脂材料82が下層となる積層状態で収容保持される(
図1参照)。これら各収容孔21aに保持された樹脂材料81、82が適切なタイミングで加熱され、各収容孔21aで積層状態のまま溶融し、溶融樹脂84、85となる。
【0042】
鉄心本体11、補助プレート40及び治具30を上型21と下型22の間に搬入して、上型21と下型22で鉄心本体11を挟持可能な状態となった後、上型21を下降させるか、鉄心本体11が載った下型22を上昇させて、補助プレート40及び治具30を介して上型21と下型22で鉄心本体11を挟持押圧する状態に移行する。
【0043】
この状態では、鉄心本体11の積層方向両端面に、補助プレート40と治具30をそれぞれ当接させて押圧することで、鉄心本体11の積層方向の端部において、磁石挿入孔11bを閉塞できる。
【0044】
これら上型21及び下型22での挟持による閉塞で鉄心本体11の各磁石挿入孔11bを外部から隔離した状態とした後、樹脂の送入工程が実行される。
送入工程では、上型21の各収容孔21a内の溶融樹脂84、85に対し、各押出部23がそれぞれ上型21の収容孔21aに達し、この収容孔21aに挿入される。この押出部23の挿入により、溶融樹脂84、85は、収容孔21aから下層の溶融樹脂85、上層の溶融樹脂84の順で下方へ押出される(
図3参照)。押し出された樹脂は、下層の溶融樹脂85から、補助プレート40の樹脂通路41を通じて、鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ注入、充填される。
【0045】
樹脂注入後、補助プレート40の樹脂通路41と磁石挿入孔11bに存在している溶融樹脂84、85は、第二の樹脂である溶融樹脂85の層の上側に、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が位置する積層状態となっている。そして、溶融樹脂85の層とこれに対し上型21の側、すなわち上側に位置する溶融樹脂84の層との境界は、上型21側の鉄心本体11の端部近傍における空間部としての磁石挿入孔11bに位置しており、磁石挿入孔11bには溶融樹脂84と溶融樹脂85が共に充填されている。
【0046】
その後、固化工程として、上型21と下型22で鉄心本体11を挟持押圧する状態を維持しつつ、補助プレート40の樹脂通路41や各磁石挿入孔11bに位置する溶融樹脂84、85の固化を進行させる。
【0047】
溶融樹脂84、85のうち、固化速度の速い第一の樹脂である溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87になると、上型21に対し押出部23を引き上げて元の状態に戻すと共に、上型21を上昇させるか、下型22を下降させて、上型21と補助プレート40とを離隔させ、上型21と下型22による鉄心本体11の挟持押圧を終了させて、鉄心本体11、補助プレート40、及び治具30を上下型間から搬出可能な状態とする(
図4参照)。
【0048】
溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となった状態では、固化済み樹脂87が磁石挿入孔11bで溶融樹脂85より上側に位置して、上型21と溶融樹脂85との間に介在している。これにより、上型21と補助プレート40とを離隔させる状況において、溶融樹脂85が固化の進行に伴い膨張しようとして応力を発生させても、固化済み樹脂87の保持力でこうした応力の影響を抑え込むことができる。すなわち、仮に溶融樹脂85が固化していない場合でも、鉄心本体11に対する上型21の相対移動により溶融樹脂85が影響を受けることはなく、溶融樹脂85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに適切に位置させた状態で固化させて、問題なく充填材13とすることができる。
【0049】
この後、溶融樹脂85も固化したら、移送機構で鉄心本体11、補助プレート40、及び治具30を上型21と下型22との間からコア部製造装置1の外に搬出する。コア部製造装置1から搬出した鉄心本体11、補助プレート40、及び治具30は、移送機構の作動により次工程に移送されることとなる。
【0050】
なお、溶融樹脂84が固化済み樹脂87となった状況では、溶融樹脂85の固化を待たずに、移送機構で鉄心本体11、補助プレート40、及び治具30を上型21と下型22との間からコア部製造装置1の外に搬出することも可能である。この場合は、鉄心本体11、補助プレート40、及び治具30を、コア部製造装置1から次工程に移送する間に、鉄心本体11の余熱を利用して溶融樹脂85を固化させることができる。
【0051】
このように、本実施形態に係るコア部製造方法においては、上型21と下型22間に位置させた鉄心本体11の空間部としての磁石挿入孔11bに樹脂を送入する送入工程で、樹脂を固化させた後は鉄心本体11から離隔させる上型21に対し、固化速度の速い第一の樹脂である溶融樹脂84が、上型21と磁石挿入孔11bに位置する第二の樹脂である溶融樹脂85との間に介在するように送入を実行し、固化速度の遅い溶融樹脂85を上型21に接触させない状態で樹脂の固化を進行させ、固化速度の速い溶融樹脂84を固化させる。これにより、溶融樹脂84が固化した段階では、上型21と鉄心本体11とを離しても、溶融樹脂84の固化した後の固化済み樹脂87に上型21との分離に伴う問題は生じず、上下型間から鉄心本体11を解放して取り出せ、仮に溶融樹脂85が固化していない時点でも、溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となっていれば、溶融樹脂85の充填状態に影響を与えることなく鉄心本体11を上下型間から取り出すことができ、空間部としての磁石挿入孔11bに溶融樹脂85のみ送入し固化させる場合に比べ、溶融樹脂84、85の固化時間の差だけ、鉄心本体11を上下型間に拘束する時間を短縮でき、コア部10の製造効率を向上させられる。
【0052】
なお、本実施形態に係るコア部製造方法において、送入工程で鉄心本体11に送入する樹脂のうち、一の樹脂を第一の樹脂、他の樹脂を第二の樹脂として、樹脂を二種類とし、このうち一の樹脂である第一の樹脂を、溶融状態から第二の樹脂より速い所定の固化速度で固化するものとして用いるようにしているが、この他、複数種類の樹脂として、溶融状態から他の樹脂より速い最速の固化速度で固化する一の樹脂を少なくとも含むものであれば、樹脂は二以上の複数種類からなる、例えば、一の樹脂である第一の樹脂以外の他の樹脂として、第二の樹脂に加えて第三の樹脂が含まれるものであってもかまわない。この三種類の場合、第三の樹脂を、送入時や固化後の品質に問題がない範囲で、第二の樹脂に対し低コストとなるものとすれば、コア部のコストダウンが図れ、さらに、第三の樹脂を第二の樹脂に対し固化速度の速いものとすれば、コア部の製造効率を向上させられることとなる。ただし、第二の樹脂が低コストである第三の樹脂より流動性等の特性が優れると見なせることから、樹脂保持部において第二の樹脂を第三の樹脂より下層に配置し、第二の樹脂を先に送入して空間部の深奥部に位置させるようにするのが望ましい。
【0053】
また、本実施形態に係るコア部製造方法において、送入工程で上型21の収容孔21aから押し出された樹脂が、鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ注入、充填された状態で、溶融樹脂85の層と、この溶融樹脂85の層に対し上型21側、すなわち上側に位置する、溶融樹脂84の層との境界は、鉄心本体11の上側の端部近傍における空間部としての磁石挿入孔11bに位置し、磁石挿入孔11bの上部に第一の樹脂である溶融樹脂84を配置するようにしているが、これに限らず、第二の樹脂である溶融樹脂85の層と、その上側に位置する第一の樹脂である溶融樹脂84の層との境界を、樹脂通路41内に位置させ、磁石挿入孔11bに溶融樹脂85のみ充填されるようにすることもできる。
【0054】
この場合、溶融樹脂の層の境界を磁石挿入孔11b内に生じさせないことで、溶融樹脂の固化後、鉄心本体11内で充填材13をなす樹脂を一種類のみにでき、均質な単一の樹脂とされた充填材13に優れた強度を与えられる。
【0055】
また、本実施形態に係るコア部製造方法において、鉄心本体11の上側に、鉄心本体11の磁石挿入孔11bに連通する樹脂通路41を設けられた補助プレート40が取り付けられ、送入工程でこの補助プレート40を通じて、上型21の収容孔21aからの溶融樹脂84、85を送入する構成としているが、これに限らず、
図6に示すように、鉄心本体11に補助プレートを取り付けず、コア部製造装置1で、上型21と鉄心本体11上端面とを直接当接させた状態で、上型21の樹脂保持部から鉄心本体11の磁石挿入孔11bに樹脂を送入する構成とすることもできる。
【0056】
この場合、樹脂保持部をなす上型21の各収容孔21aで、樹脂材料81を上層、樹脂材料82を下層とする積層状態で保持し、これら樹脂材料を適切なタイミングで加熱して溶融樹脂84、85を得、送入工程で、第二の樹脂である下層の溶融樹脂85、第一の樹脂である上層の溶融樹脂84、の順で送入を実行して、第二の樹脂である溶融樹脂85の層の上側に、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が位置する積層状態を生じさせ、上型21と溶融樹脂85との間に溶融樹脂84を介在させる手順は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となった状態では、固化済み樹脂87が磁石挿入孔11b内で溶融樹脂85より上側の端部側に位置し、上型21と溶融樹脂85との間に蓋状に介在することとなる。これにより、仮に溶融樹脂85が固化していない段階で、上型21と鉄心本体11の上端面とを離隔させても、上型21と溶融樹脂85との間に介在する固化済み樹脂87が、鉄心本体11に対する上型21の相対移動による溶融樹脂85への影響を抑え、溶融樹脂85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに適切に位置させた状態で固化させて、固化済み樹脂87と共に問題なく充填材13とすることができる。
【0058】
また、本実施形態に係るコア部製造方法において、樹脂保持部をなす上型21の各収容孔21aに樹脂材料81、82を収容保持し、これら樹脂材料81、82を加熱して溶融樹脂84、85とし、送入工程で、溶融樹脂84、85を永久磁石12が既に挿入された磁石挿入孔11bに所定の順序で送入し、第二の樹脂である溶融樹脂85の層の上側に第一の樹脂である溶融樹脂84の層が位置して、磁石挿入孔11bが通じた上型21に対し、この上型21と溶融樹脂85との間に溶融樹脂84が介在する状態で、固化工程に進むようにしているが、これに限られるものではなく、空間部としての磁石挿入孔11bに対し、永久磁石12の挿入前に未溶融状態のタブレット状や粒状、粉状等の樹脂材料を送入し、その後、永久磁石12を挿入すると共に樹脂材料を溶融させ、溶融した樹脂が磁石挿入孔11b各部に適切に位置した後、樹脂を固化させる手順とすることもできる。
【0059】
この場合も、例えば固化速度の速い第一の樹脂とこれより固化速度の遅い第二の樹脂との二種類からなる樹脂材料を、送入工程で第一の樹脂である樹脂材料と第二の樹脂である樹脂材料を所定の順序として送入し、空間部としての磁石挿入孔11bで溶融させた状態では、第二の樹脂である溶融樹脂85の層の上側に、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が位置して、固化工程では、磁石挿入孔11bの通じた上型21と溶融樹脂85との間に溶融樹脂84が介在する状態で固化が進むようにされることとなる。
【0060】
また、本実施形態に係るコア部製造方法においては、樹脂保持部をなす上型21の各収容孔21aで、樹脂材料81を上層、樹脂材料82を下層とする積層状態で保持し、これら樹脂材料を適切なタイミングで加熱して溶融樹脂84、85を得、送入工程で、下層の溶融樹脂85、上層の溶融樹脂84、の順で送入を実行して、第二の樹脂である溶融樹脂85の層の上側に、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が位置する積層状態を生じさせ、上型21と溶融樹脂85との間に固化の速い溶融樹脂84を介在させて、溶融樹脂85の固化の完了、未完に関わりなく、溶融樹脂84が固化した段階で上型21と鉄心本体11とを離隔させられるようにしているが、この他、第二の樹脂である溶融樹脂85の固化完了より前に、鉄心本体11とその下側の治具30を早期に離隔させて鉄心本体11を移送する必要がある場合や、鉄心本体11の下側の治具や下型に溶融樹脂を加圧する機構が設けられて、溶融樹脂の一部が治具側に設けられた穴や溝状の加圧用の空間に流入する場合には、溶融樹脂の層の下側にも第一の樹脂の溶融樹脂が位置するように、樹脂送入を実行することもできる。
【0061】
この場合、樹脂保持部をなす上型21の収容孔21aには、第一の樹脂である樹脂材料81を上層と下層、第二の樹脂である樹脂材料82を中間層とする積層状態で保持する(
図7参照)。そして、送入工程では、樹脂材料から溶融状態となった溶融樹脂84、85の積層状態を保ったまま、下層の溶融樹脂84、中間層の溶融樹脂85、上層の溶融樹脂84の順で送入して、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が第二の樹脂である溶融樹脂85の層の上側と下側にそれぞれ位置する積層状態を生じさせる(
図8参照)。
【0062】
積層状態を維持しつつ上下の溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となった状態では、固化済み樹脂87が磁石挿入孔11b内で溶融樹脂85より上下の端部側に位置し(
図9参照)、上型21と溶融樹脂85との間、及び、治具30と溶融樹脂85との間に介在することとなる。これにより、仮に溶融樹脂85が固化していない段階で、上型21と鉄心本体11とを離隔させたり、さらに鉄心本体11と治具30とを離隔させても、上型21と溶融樹脂85との間、及び、治具30と溶融樹脂85との間に介在する固化済み樹脂87が、鉄心本体11に対する上型21や治具30の相対移動による溶融樹脂85への影響を抑え、溶融樹脂85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに適切に位置させた状態で固化させて、固化済み樹脂87と共に問題なく充填材13とすることができる。
【0063】
また、本実施形態に係るコア部製造装置においては、上型21における収容孔21aと押出部23が樹脂保持部24をなし、樹脂保持部24が上型21に一体に組み込まれる構成としているが、これに限られるものではなく、樹脂を保持し送入する樹脂保持部を上型又は下型とは独立したものとすることもでき、例えば、上下型間に位置させる前の鉄心本体11に対し、その上側に位置させた樹脂保持部が上から樹脂を送入するようにする構成としたり、上下型間に位置するが上下型で挟持される前の鉄心本体に対し、樹脂保持部が鉄心本体の上側で且つ上型の下側に位置して、鉄心本体に対し樹脂を送入した後、樹脂保持部を鉄心本体上側から退避させて型による鉄心本体の挟持を可能とする構成とすることができる。
【0064】
この他、溶融樹脂の送入が、タブレット等として供給される樹脂材料の大きさに制限されないよう、上型や下型と独立した樹脂保持部が、連続的に溶融樹脂を鉄心本体側に送り込める仕組みを有してもよい。この場合、樹脂として連続供給性に優れたもの、例えば、熱可塑性又は熱硬化性のホットメルト接着剤を用いるようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態に係るコア部製造方法において、空間部としての磁石挿入孔11bに送入する樹脂としては、主に熱硬化性樹脂を想定しているが、これに限らず、熱可塑性樹脂を用いるようにすることもでき、固化速度の速い一の樹脂として、他の樹脂として用いる熱可塑性樹脂と比較して融点又はガラス転移点のより高い所定の熱可塑性樹脂を用いれば、送入後の固化工程としての温度低下に合わせて一の樹脂が先に固化完了となり、固化の完了していない他の樹脂への型など外部からの影響を排除できる。
【0066】
(本発明の第2の実施形態)
第1の実施形態に係るコア部製造方法においては、コア部製造装置1の上型21側から鉄心本体11に対し樹脂注入を行うようにしているが、これに限らず、第2の実施形態として、
図10ないし
図12に示すように、送入工程で、コア部製造装置2の下型27側から樹脂注入を行うようにすることもできる。
【0067】
この場合、本実施形態に係るコア部製造方法は、第1の実施形態同様、送入工程と、固化工程とを有する一方、送入工程で、下型27側に位置する樹脂保持部29に保持された樹脂を、鉄心本体11の空間部に下から送入するものとなる。
【0068】
そして、本実施形態に係るコア部製造方法を適用するコア部製造装置2は、第1の実施形態同様、充填機構部としての上型26及び下型27を備える一方、異なる点として、下型27側に位置して樹脂を保持すると共に鉄心本体11の空間部に樹脂を送入可能とされる樹脂保持部29を備える構成を有するものである。
【0069】
コア部製造装置2の充填機構部をなす上型26及び下型27は、第1の実施形態と同様に、鉄心本体11を挟持しつつ、空間部としての磁石挿入孔11bで溶融状態にある樹脂を加圧すると共に、樹脂の固化を進行させるものである。
【0070】
なお、第1の実施形態と同様、鉄心本体11は、コア部製造装置2による樹脂の送入工程やその前後で治具35に支持され、治具35と一体に取り扱われると共に、治具35に面する側とは反対側となる端面に補助プレート45を取り付けられる。ただし、コア部製造装置2における樹脂保持部29に保持された樹脂を、鉄心本体11における空間部としての磁石挿入孔11bに下型27の側から送入可能とされる構成に合わせて、こうした治具35及び補助プレート45も、下型27側からの樹脂送入に対応した形状とされる。
そして、コア部製造装置2では、鉄心本体11の磁石挿入孔11bに対し、治具35を通じて、鉄心本体11における治具35と当接する下端面の側から、樹脂を注入可能とされる。
【0071】
上型26は、第1の実施形態同様、下型27の上方に位置して、下型27と共に鉄心本体11、補助プレート45及び治具35を挟持するものである。この上型26は、上型26を貫通する孔等(収容孔21a、押出部23)が設けられていない点を除いて、第1の実施形態と同様の構成を有するものであり、詳細な説明を省略する。
【0072】
下型27は、第1の実施形態同様、補助プレート45の載った鉄心本体11及び治具35を支持するものとされる一方、異なる点として、樹脂を収容保持可能な複数の収容孔27aを設けられる構成を有するものである。
【0073】
また、下型27は、収容孔27aに対し下方から挿入可能に配設され、樹脂を鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ押出可能とする押出部28を備える構成である。
そして、こうした下型27における収容孔27aと押出部28が、樹脂保持部29をなすこととなる。すなわち、樹脂保持部29は、下型27に一体に組み込まれたものとなっている。
【0074】
樹脂保持部29の一部としての収容孔27aは、上型26と下型27とで鉄心本体11が挟持された状態において、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに対応する箇所に位置するように、所定間隔で並べて複数設けられる。
【0075】
下型27は、こうした各収容孔27aに、樹脂タブレットや粉末状等の形態で供給される樹脂材料を収容可能とされる。前記第1の実施形態と同様に、樹脂材料としては、第一の樹脂である樹脂材料81と、第二の樹脂である樹脂材料82との二種類が用いられる。各収容孔27aは、樹脂材料81を下層、樹脂材料82を上層とする積層状態で保持することとなる。
【0076】
また、下型27は、樹脂保持部29の機能として、樹脂材料81、82を加熱して溶融させ、溶融樹脂84、85を得る仕組みも有する。下型27には、各収容孔27aに収容されている樹脂材料81、82を加熱可能とされるヒータ(図示を省略)が設けられる。樹脂材料81、82が加熱されると、収容孔27aで溶融し、溶融樹脂84、85となる。
【0077】
押出部28は、溶融樹脂84、85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ押出可能とするものであり、例えば、所定の駆動源による駆動で上下動可能とされる複数のプランジャとされる構成である。各押出部28は、押出部ごとに対応する駆動源でそれぞれ駆動されて上下動可能とされるほか、複数の押出部を一つの駆動源でまとめて駆動して一体に上下動可能とするようにしてもよい。
【0078】
収容孔27aで保持される溶融樹脂84、85は、送入工程で、押出部28により下型27の収容孔27aから押し出され、下型27と鉄心本体11の下端面との間に配置される治具35のプレート部36における樹脂通路36aや、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに達する。この送入工程では、上にある溶融樹脂から先に、すなわち、第二の樹脂である上層の溶融樹脂85、第一の樹脂である下層の溶融樹脂84、の順で送入が実行される。
【0079】
治具35は、第1の実施形態同様、プレート部36と、ポスト部37とを備える一方、異なる点として、プレート部36に、これを貫通する孔である複数の樹脂通路36aを設けられる構成である。このプレート部36の複数の樹脂通路36aは、プレート部36の高さ方向に連続する孔であり、鉄心本体11の複数の磁石挿入孔11b及び下型27の各収容孔27aに対応する配置とされるものである。
【0080】
補助プレート45は、第1の実施形態同様、板状部材であり、鉄心本体11の治具35に接しない側の端面に取り付けられる一方、異なる点として、樹脂を各磁石挿入孔11bに導くための樹脂通路を設けられない構造とされるものである。
【0081】
次に、本実施形態に係るコア部製造方法に基づくコア部の製造過程について説明する。
前提として、第1の実施形態同様、あらかじめ複数の薄板11aを積層した鉄心本体11が得られており、この鉄心本体11が、その磁石挿入孔11bに永久磁石12を挿入され、適切な温度に予熱された状態で、この鉄心本体11を載せた治具35及び鉄心本体に取り付けられた補助プレート45と共に、移送機構によりコア部製造装置2に向けて移送されているものとする。
【0082】
コア部製造装置2の下型27には、二種類の樹脂材料81、82が、コア部製造装置2への鉄心本体11の搬入出の合間に供給され、樹脂材料81を下層、樹脂材料82を上層とする積層状態で下型27の収容孔27aに収容保持される。各収容孔27aに保持された樹脂材料81、82は、適切なタイミングで加熱され、各収容孔27aで溶融し、溶融樹脂84、85となる。
【0083】
一方、鉄心本体11と、これらを載せた治具35は、移送機構の作動によりコア部製造装置2に向けて移送され、コア部製造装置2に達すると、鉄心本体11及び治具35は、コア部製造装置2の鉄心本体搬入出用の開口部分を通じて、コア部製造装置2の上下型間に搬入される。
移送機構により、鉄心本体11の載った治具35が下型27上に載置されると、コア部製造装置2への鉄心本体11及び治具35の搬入は完了となる。
【0084】
鉄心本体11及び治具35が下型27に載置された後、上型26を下降させるか、鉄心本体11が載った下型27を上昇させて、上型26と下型27で鉄心本体11を挟持押圧する状態に移行する(
図10参照)。
【0085】
この状態では、鉄心本体11の積層方向両端面に、補助プレート45と治具35をそれぞれ当接させて押圧することで、鉄心本体11の積層方向の端部において、磁石挿入孔11bを閉塞できる。
【0086】
これら上型26及び下型27での挟持による閉塞で、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bを外部から隔離した状態とした後、溶融樹脂84、85の送入工程が実行される。
送入工程では、下型27の各収容孔27a内の溶融樹脂84、85に対し、各押出部28がそれぞれ下方から下型27の各収容孔27aに達し、各収容孔27aに挿入される。この押出部28の挿入により、溶融樹脂84、85は、収容孔27aから上層の溶融樹脂85、下層の溶融樹脂84の順で上方へ押出される。押し出された樹脂は、上層の溶融樹脂85から、治具35におけるプレート部36の樹脂通路36aを通じて、上方の鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ注入、充填される(
図11参照)。
【0087】
樹脂注入後、プレート部36の樹脂通路36aと磁石挿入孔11bに存在している溶融樹脂84、85は、第二の樹脂である溶融樹脂85の層の下側に、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が位置する積層状態となっている。そして、溶融樹脂85の層と、これに対し下型27側、すなわち下側に位置する、溶融樹脂84の層との境界は、鉄心本体11の下側の端部近傍における空間部としての磁石挿入孔11bに位置して、磁石挿入孔11bには溶融樹脂85と溶融樹脂84が共に充填されている。
【0088】
その後、固化工程として、上型26と下型27で鉄心本体11を挟持押圧する状態を維持しつつ、プレート部36の樹脂通路36aや各磁石挿入孔11bに位置する溶融樹脂84、85の固化を進行させる。
【0089】
溶融樹脂84、85のうち、固化速度の速い第一の樹脂である溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となった状態では、固化済み樹脂87が磁石挿入孔11b内で溶融樹脂85より下側の端部側に位置し、溶融樹脂85と治具35との間に介在することとなる。
溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87になった後、下型27に対し押出部28を下げて元の状態に戻すと共に、上型26を上昇させるか、下型27を下降させて、上型26と鉄心本体11とを離隔させ、上型26と下型27による鉄心本体11の挟持押圧を終了させる。さらに、下型27上から鉄心本体11及び治具35を移動させて、鉄心本体11及び治具35をコア部製造装置2から搬出可能な状態とする(
図12参照)。
【0090】
溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87になった状態では、固化済み樹脂87が磁石挿入孔11bで溶融樹脂85より下側に位置して、下型27と溶融樹脂85との間に介在している。これにより、下型27と治具35のプレート部36とを離隔させる状況において、溶融樹脂85が固化の進行に伴い膨張しようとして応力を発生させても、固化済み樹脂87の保持力でこうした応力の影響を抑え込むことができる。すなわち、仮に溶融樹脂85が固化していない場合でも、鉄心本体11に対する下型27の相対移動により溶融樹脂85が影響を受けることはなく、溶融樹脂85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに適切に位置させた状態で固化させて、問題なく充填材13とすることができる。
【0091】
この後、溶融樹脂85も固化したら、鉄心本体11及び治具35は、第1の実施形態同様、移送機構でコア部製造装置2の外に搬出され、さらに次工程に移送されることとなる。なお、第1の実施形態同様、溶融樹脂84が固化済み樹脂87となった状況では、溶融樹脂85の固化を待たずに、移送機構で鉄心本体11等をコア部製造装置2の外に搬出することも可能である。この場合は、鉄心本体11、補助プレート45、及び治具35を、コア部製造装置2から次工程に移送する間に、鉄心本体11の余熱を利用して溶融樹脂85を固化させる。これにより、鉄心本体11を上下型間に拘束する時間をさらに短縮することができる。
【0092】
なお、第二の樹脂である溶融樹脂85の固化完了より前に、鉄心本体11とその下側の治具35を早期に離隔させて鉄心本体11を移送する必要が生じたとしても、溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となっていれば、固化済み樹脂87が溶融樹脂85と治具35との間に介在することから、鉄心本体11と治具35とを離隔させても、治具35と溶融樹脂85との間に介在する固化済み樹脂87が、鉄心本体11に対する治具35の相対移動による溶融樹脂85への影響を抑え、溶融樹脂85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに適切に位置させた状態で固化させて、固化済み樹脂87と共に問題なく充填材13とすることができる。
【0093】
このように、本実施形態に係るコア部製造方法においては、上下型間に位置させた鉄心本体11の空間部としての磁石挿入孔11bに樹脂を送入する送入工程で、樹脂を固化させた後は鉄心本体11から離隔させる下型27に対し、固化速度の速い第一の樹脂である溶融樹脂84が、下型27と磁石挿入孔11bに位置する第二の樹脂である溶融樹脂85との間に介在するように送入を実行し、固化速度の遅い溶融樹脂85を下型27に接触させない状態で樹脂の固化を進行させ、固化速度の速い溶融樹脂84を固化させる。これにより、溶融樹脂84が固化した段階では、下型27と鉄心本体11とを離しても、溶融樹脂84の固化した後の固化済み樹脂87に下型27との分離に伴う問題は生じず、上下型間から鉄心本体11を解放して取り出せ、仮に溶融樹脂85が固化していない時点でも、溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となっていれば、溶融樹脂85の充填状態に影響を与えることなく鉄心本体11を上下型間から取り出すことができ、空間部としての磁石挿入孔11bに溶融樹脂85のみ送入し固化させる場合に比べ、溶融樹脂84、85の固化時間の差だけ、鉄心本体11を上下型間に拘束する時間を短縮でき、コア部10の製造効率を向上させられる。
【0094】
なお、実施形態に係るコア部製造方法において、コア部製造装置2では、鉄心本体11の上側に補助プレート45を配置して、磁石挿入孔11bに充填された樹脂を上型26に接触させない構成としているが、これに限らず、鉄心本体11の上側に補助プレートを配置せず、コア部製造装置2で、上型21と鉄心本体11上端面とを直接当接させた状態で、下型27の樹脂保持部から鉄心本体11の磁石挿入孔11bに樹脂を送入する構成とすることもできる。
【0095】
この場合、樹脂保持部をなす下型27の収容孔27aには、第一の樹脂である樹脂材料81を上層と下層、第二の樹脂である樹脂材料82を中間層とする積層状態で保持する(
図13参照)。そして、送入工程では、樹脂材料から溶融状態となった溶融樹脂84、85の積層状態を保ったまま、上層の溶融樹脂84、中間層の溶融樹脂85、下層の溶融樹脂84の順で送入して、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が第二の樹脂である溶融樹脂85の層の上側と下側にそれぞれ位置する積層状態を生じさせる(
図14参照)。
【0096】
積層状態を維持しつつ上下の溶融樹脂84が固化して固化済み樹脂87となった状態では、固化済み樹脂87が磁石挿入孔11b内で溶融樹脂85より上下の端部側に位置し(
図15参照)、上型21と溶融樹脂85との間、及び、下型27と溶融樹脂85との間に介在することとなる。これにより、仮に溶融樹脂85が固化していない段階で、上型21と鉄心本体11とを離隔させたり、さらに鉄心本体11及び治具35と下型27とを離隔させても、上型21と溶融樹脂85との間、及び、溶融樹脂85と下型27の間に介在する固化済み樹脂87が、鉄心本体11に対する上型21や下型27の相対移動による溶融樹脂85への影響を抑え、溶融樹脂85を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに適切に位置させた状態で固化させて、固化済み樹脂87と共に問題なく充填材13とすることができる。
【0097】
また、本実施形態に係るコア部製造方法においては、送入工程で、上層の溶融樹脂85、下層の溶融樹脂84、の順で送入を実行して、第二の樹脂である溶融樹脂85の層の下側に、第一の樹脂である溶融樹脂84の層が位置する積層状態を生じさせ、溶融樹脂85の層と、この溶融樹脂85の層に対し下型27側、すなわち下側に位置する、溶融樹脂84の層との境界は、鉄心本体11の下側の端部近傍における空間部としての磁石挿入孔11bに位置して、磁石挿入孔11bの下部に第一の樹脂である溶融樹脂84を配置するようにしているが、これに限らず、溶融樹脂85の層と溶融樹脂84の層との境界を、プレート部36の樹脂通路36a内に位置させて、磁石挿入孔11bには溶融樹脂85のみ充填されるようにすることもできる。
【0098】
この場合、溶融樹脂85の層と溶融樹脂84の層との境界を磁石挿入孔11b内に生じさせないことで、溶融樹脂85の固化後、鉄心本体11内で充填材13をなす樹脂を一種類のみにでき、均質な単一の樹脂とされた充填材13に優れた強度を与えられる。
【符号の説明】
【0099】
1、2 コア部製造装置
10 コア部
11 鉄心本体
11a 薄板
11b 磁石挿入孔
11c 軸孔
12 永久磁石
13 充填材
21、26 上型
21a 収容孔
22、27 下型
23、28 押出部
24、29 樹脂保持部
27a 収容孔
30、35 治具
31、36 プレート部
32、37 ポスト部
36a 樹脂通路
40、45 補助プレート
41 樹脂通路
81、82 樹脂材料
84、85 溶融樹脂
87 固化済み樹脂