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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002886
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20221228BHJP
   G08B 17/10 20060101ALI20221228BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G08B17/00 K
G08B17/10 L
G08B17/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103712
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085CA12
5C085EA41
5C085FA11
5C085FA25
5G405AA01
5G405AB01
5G405AB02
5G405CA13
5G405CA53
5G405EA41
5G405FA17
(57)【要約】
【課題】高い位置に取り付けられている火災感知器の作動試験を容易に実行できるようにする。
【解決手段】火災感知器を内部に覆うための開口部を有する筐体と、一端が筐体に取り付けられており、他端が試験装置のユーザの持ち手となる棒状の支持部と、擬似的な火災を発生させる疑似火災発生部と、火災感知器を撮像する撮像部と、筐体の姿勢を調節するための力を発生させる力発生部と、撮像部が撮像した画像に基づいて力発生部を制御して、筐体の開口部が火災感知器を向くように筐体の姿勢を調節する制御部とを備える、試験装置。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器の動作を試験する試験装置であって、
前記火災感知器を内部に覆うための開口部を有する筐体と、
一端が前記筐体に取り付けられており、他端が当該試験装置のユーザの持ち手となる棒状の支持部と、
前記筐体の内部に設けられており、擬似的な火災を発生させる疑似火災発生部と、
前記筐体の内部に設けられており、前記火災感知器を撮像する撮像部と、
前記筐体の姿勢を調節するための力を発生させる力発生部と、
前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記力発生部を制御して、前記筐体の前記開口部が前記火災感知器を向くように前記筐体の姿勢を調節する制御部と
を備える、試験装置。
【請求項2】
前記力発生部は、回転円盤と、前記回転円盤を回転させるモータとを有し、
前記制御部は、前記モータを制御して前記回転円盤の回転速度を増加又は減少させることにより、前記力発生部が発生させる力の向きと大きさとを変化させて前記筐体の姿勢を調節する、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記力発生部は、前記筐体の前記開口部の開口面に対して垂直で、かつ、互いに直交する2つの面を回転面とする2つの前記回転円盤を有する、請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記力発生部は、回転円盤と、前記回転円盤の回転面の傾きを変化させるアクチュエータとを有し、
前記制御部は、前記アクチュエータを制御して前記回転円盤の回転面の傾きを変化させることにより、前記力発生部が発生させる力の向きと大きさとを変化させて前記筐体の姿勢を調節する、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
前記力発生部の前記回転円盤は、前記筐体の前記開口部の開口面に対して平行な面を回転面とする、請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
前記火災感知器は天井面に設けられており、
前記制御部は、前記力発生部を制御して、前記筐体の前記開口部を前記天井面に向けた場合、前記天井面と平行で、かつ、少なくとも異なる2つの方向にそれぞれ力を発生させる、
請求項3から5のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記撮像部が撮像した画像において、前記火災感知器が前記画像の所定の範囲内に位置するように前記筐体の姿勢を調節する、請求項1から6のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項8】
前記火災感知器が正常に作動したか否かを判定する作動検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記作動検知部によって前記火災感知器が正常に作動したと判定したことに応じて、擬似的な火災の発生を停止するための制御信号を前記疑似火災発生部に送信する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の天井や壁等には、火災を感知するための火災感知器が設置されている。火災感知器には、消防法によって定期的な点検が義務づけられており、点検は、外部の損傷、汚れ等を確認する外観試験と実際に疑似火災の煙や熱などを与える試験装置を用いた作動試験とがある。一般的に、火災感知器は天井面や天井の梁等の高所に取り付けられているので、作業者は、先端に試験装置が取り付けられている操作棒を操作して、試験装置を火災感知器に適切に配置して作動試験を実施していた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63-183693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような火災感知器は、例えば、床面から20m程度の位置に取り付けられていることがある。したがって、作業者は、10m程度から20m程度の長さの操作棒の一端を持ち、操作棒の他端の試験装置を火災感知器に適切に配置しなければならない。この場合、操作棒の重さ、たわみ、腕の震え等により試験装置が揺れてしまうので、適切に試験装置の位置を調節することは困難であり、作業者の大きな負担となっていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、高い位置に取り付けられている火災感知器の作動試験を容易に実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、火災感知器の動作を試験する試験装置であって、前記火災感知器を内部に覆うための開口部を有する筐体と、一端が前記筐体に取り付けられており、他端が当該試験装置のユーザの持ち手となる棒状の支持部と、前記筐体の内部に設けられており、擬似的な火災を発生させる疑似火災発生部と、前記筐体の内部に設けられており、前記火災感知器を撮像する撮像部と、前記筐体の姿勢を調節するための力を発生させる力発生部と、前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記力発生部を制御して、前記筐体の前記開口部が前記火災感知器を向くように前記筐体の姿勢を調節する制御部とを備える、試験装置を提供する。
【0007】
前記力発生部は、回転円盤と、前記回転円盤を回転させるモータとを有し、前記制御部は、前記モータを制御して前記回転円盤の回転速度を増加又は減少させることにより、前記力発生部が発生させる力の向きと大きさとを変化させて前記筐体の姿勢を調節してもよい。
【0008】
前記力発生部は、前記筐体の前記開口部の開口面に対して垂直で、かつ、互いに直交する2つの面を回転面とする2つの前記回転円盤を有してもよい。
【0009】
前記力発生部は、回転円盤と、前記回転円盤の回転面の傾きを変化させるアクチュエータとを有し、前記制御部は、前記アクチュエータを制御して前記回転円盤の回転面の傾きを変化させることにより、前記力発生部が発生させる力の向きと大きさとを変化させて前記筐体の姿勢を調節してもよい。
【0010】
前記力発生部の前記回転円盤は、前記筐体の前記開口部の開口面に対して平行な面を回転面としてもよい。
【0011】
前記火災感知器は天井面に設けられており、前記制御部は、前記力発生部を制御して、前記筐体の前記開口部を前記天井面に向けた場合、前記天井面と平行で、かつ、少なくとも異なる2つの方向にそれぞれ力を発生させてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記撮像部が撮像した画像において、前記火災感知器が前記画像の所定の範囲内に位置するように前記筐体の姿勢を調節してもよい。
【0013】
前記火災感知器が正常に作動したか否かを判定する作動検知部をさらに備え、前記制御部は、前記作動検知部によって前記火災感知器が正常に作動したと判定したことに応じて、擬似的な火災の発生を停止するための制御信号を前記疑似火災発生部に送信してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い位置に取り付けられている火災感知器の作動試験を容易に実行できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る試験装置100の利用シーンを模式的に示す図である。
図2】本実施形態に係る試験装置100の構成例を火災感知器10と共に示す。
図3】本実施形態に係る筐体120の構成例を示す。
図4】本実施形態に係る力発生部200の第1構成例を示す。
図5】本実施形態に係る制御部160の第1構成例を示す。
図6】本実施形態に係る力発生部200の第2構成例を示す。
図7】ジャイロ効果を説明するための図である。
図8】本実施形態に係る制御部160の第2構成例を示す。
図9】本実施形態に係る力発生部200の第3構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態の概要>
図1は、本実施形態に係る試験装置100の利用シーンを模式的に示す図である。試験装置100は、天井等の高所に設けられた火災感知器10を検査することに適した装置である。ユーザUは、ユーザUの持ち手となる棒状の支持部110を持って検査を実施する。
【0017】
試験装置100は、筐体120が火災感知器10を覆い、火災感知器10の動作を試験する。試験装置100は、筐体120の姿勢を調節するための力を発生させ、筐体120の上面が火災感知器10を向くように調節する。このような試験装置100によれば、ユーザUが試験装置100の筐体120を火災感知器10の近辺に移動させることで、火災感知器10を筐体120が覆うことができるように筐体120の位置を自動的に調節できる。これにより、ユーザUは、火災感知器10の作動試験を容易に実行することができる。このような試験装置100について次に説明する。
【0018】
<試験装置100の構成例>
図2は、本実施形態に係る試験装置100の構成例を火災感知器10と共に示す。火災感知器10は天井面12に設けられている。天井面12は、オフィスビル、工場、学校、倉庫、住宅等に設けられている天井の例である。火災感知器10は、壁面に設けられていてもよく、また、屋外に設けられていてもよい。なお、本実施形態において、直交する3つの軸をX軸、Y軸、Z軸として示す。試験装置100は、支持部110と筐体120と、力発生部200とを備える。
【0019】
支持部110は、一端が筐体120に取り付けられており、他端が当該試験装置100のユーザUの持ち手となる棒状の部材である。支持部110は、火災感知器10が取り付けられている位置までの高さに応じた長さに調節されて用いられることが望ましい。支持部110は、例えば、10mから20mの長さで用いられることがある。支持部110は、複数の棒状の部材を継ぎ足して構成されてもよい。
【0020】
筐体120は、火災感知器10を内部に覆うための開口部122と作動試験を実行するための部材とを有する。図2は、XY面と略平行な筐体120の上面を開口面とする開口部122が設けられている例を示す。この場合、ユーザUは、支持部110の持ち手を手で持ち、筐体120のX方向及びY方向の位置が火災感知器10の位置にほぼ一致したら、筐体120を上方に(+Z方向に)移動させることで、火災感知器10を筐体120で覆うことができる。
【0021】
力発生部200は、筐体120の姿勢を調節するための力を発生させる。図2の例の場合、力発生部200は、X方向、Y方向といった、XY平面に略平行な2つの方向に力を発生させることが望ましい。これに代えて、力発生部200は、XY平面に略平行な1方向又は3以上の方向に力を発生させてもよい。
【0022】
<筐体120の斜視図の一例>
図3は、本実施形態に係る筐体120の斜視図の一例を示す。図3は、筐体120の開口部122から筐体120の内部の部材を示した例である。筐体120の内部には、疑似火災発生部130と、ファン140と、撮像部150とが設けられている。
【0023】
疑似火災発生部130は、擬似的な火災を発生させる。疑似火災発生部130は、例えば、流動パラフィンを少量ずつ連続して超音波震動子に流し込むことにより、擬似的な煙を発生させる。また、疑似火災発生部130は、流動パラフィンを窒素等で圧力をかけたボンベに封入し、ボンベのバルブボタンを作動させて噴霧させることにより、擬似的な煙を発生させてもよい。また、疑似火災発生部130は、ヒーターを有してもよい。
【0024】
ファン140は、回転して風を送ることにより、疑似火災発生部130が発生させた擬似的な煙を火災感知器10に送る。また、疑似火災発生部130がヒーターを有する場合、ファン140は、疑似火災発生部130が発生させた熱を熱風として火災感知器10に噴射してもよい。
【0025】
撮像部150は、火災感知器10を撮像するカメラである。撮像部150は、火災感知器10に対する筐体120の相対的な位置を特定するための画像を撮像する。例えば、筐体120の位置が火災感知器10を覆うことができる適切な位置となっている場合に、撮像部150が撮像した画像のほぼ中央に火災感知器10が位置するように、撮像部150の配置、画角等が予め定められている。これにより、撮像部150が撮像した画像において、火災感知器10の位置と中央との間の距離を検出することで、筐体120の適切な位置から現在の筐体120の位置までの位置のずれ量を特定できる。
【0026】
筐体120には、これらの他に、不図示の制御部160が設けられている。制御部160は、疑似火災発生部130、ファン140、及び撮像部150を制御して、火災感知器10の試験を実行する。また、制御部160は、撮像部150が撮像した画像に基づき、力発生部200を制御する。制御部160については後に述べる。
【0027】
<力発生部200の第1構成例>
図4は、本実施形態に係る力発生部200の第1構成例を示す。第1構成例の力発生部200は、リアクションホイールを利用して筐体120の姿勢を調節するための力を発生させる。力発生部200は、回転円盤210と、回転円盤210を回転させるモータ(不図示)と、モータを駆動するモータ駆動回路(不図示)とを有する。力発生部200は、1組又は複数組の回転円盤210、モータ、及びモータ駆動回路の組み合わせを有する。
【0028】
力発生部200は、筐体120の開口部122の開口面に対して垂直で、かつ、互いに直交する2つの面を回転面とする2つの回転円盤210を有することが望ましい。図4は、力発生部200がX軸方向の力を発生させる第1回転円盤210aと、Y軸方向の力を発生させる第2回転円盤210bとを有する例を示す。なお、第1回転円盤210a及び第2回転円盤210bの回転方向の例を矢印で示している。
【0029】
第1回転円盤210aは、Y軸と略平行な回転軸を中心に回転する。第1回転円盤210aの回転方向は時計回りであってもよく、これに代えて反時計回りであってもよい。例えば、第1回転円盤210aが角速度一定の等速回転している場合、第1回転円盤210aが発生させる力はほとんどゼロである。ここで、第1回転円盤210aは、時計回りに回転しているものとする。
【0030】
このような状態から、第1回転円盤210aの角速度が増加した場合、第1回転円盤210aは、反トルクにより-X方向の力を発生させる。言い換えると、力発生部200は、筐体120を-X方向に動かす力を発生させる。また、第1回転円盤210aの角速度が減少した場合、第1回転円盤210aは、反トルクにより+X方向の力を発生させる。言い換えると、力発生部200は、筐体120を+X方向に動かす力を発生させる。
【0031】
第2回転円盤210bは、X軸と略平行な回転軸を中心に回転する。第2回転円盤210bは、第1回転円盤210aと同様に、回転方向が時計回りであってもよく、これに代えて反時計回りであってもよい。そして、第2回転円盤210bが角速度一定の等速回転している場合、第2回転円盤210bが発生させる力はほとんどゼロである。ここで、第2回転円盤210bは、反時計回りに回転しているものとする。
【0032】
このような状態から、第2回転円盤210bの角速度が増加した場合、第2回転円盤210bは、反トルクにより-Y方向の力を発生させる。言い換えると、力発生部200は、筐体120を-Y方向に動かす力を発生させる。また、第2回転円盤210bの角速度が減少した場合、第2回転円盤210bは、反トルクにより+Y方向の力を発生させる。言い換えると、力発生部200は、筐体120を+Y方向に動かす力を発生させる。
【0033】
制御部160は、以上の力発生部200のモータを制御して回転円盤210の回転速度を増加又は減少させることにより、力発生部200が発生させる力の向きと大きさとを変化させて筐体120の姿勢を調節する。なお、制御部160は、定常時に回転円盤210を停止させてもよく、力発生部200の制御を実行する場合に、反トルクを発生させる方向に対応する方向の回転円盤210の回転を開始させてもよい。この場合、制御部160は、反トルクを発生させる方向に応じて、回転方向を反転させてもよい。このような制御部160について次に説明する。
【0034】
<制御部160の第1構成例>
図5は、本実施形態に係る制御部160の第1構成例を示す。制御部160は、画像取得部161と、記憶部162と、火災感知器検出部163と、駆動信号生成部164とを有する。図5には、制御部160と共に、第1回転円盤210aを回転させるモータを駆動する第1モータ駆動回路220aと、第2回転円盤210bを回転させるモータを駆動する第2モータ駆動回路220bと、作動検知部230とを更に示す。
【0035】
画像取得部161は、撮像部150が撮像した画像を取得する。画像取得部161は、例えば、一定の周期で撮像部150が撮像した画像を取得する。画像取得部161は、取得した画像を記憶部162に記憶させてもよい。
【0036】
記憶部162は、試験装置100が動作の過程で生成する(又は利用する)中間データ、算出結果、閾値、基準値、及びパラメータ等をそれぞれ記憶してもよい。また、記憶部162は、試験装置100内の各部の要求に応じて、記憶したデータを要求元に供給してもよい。
【0037】
火災感知器検出部163は、画像取得部161が取得した画像の中から火災感知器10を検出する。火災感知器検出部163は、予め定められた画像処理を実行することで、火災感知器10を検出する。また、火災感知器検出部163は、撮像部150が撮像した画像における火災感知器10の相対的な位置を検出する。例えば、火災感知器検出部163は、撮像部150が撮像した画像内の所定の領域又は所定の範囲から火災感知器10までの距離と方向を特定する。
【0038】
ここで、所定の位置は、例えば、画像の中心である。また、所定の範囲は、例えば、画像の中心を中心とし、予め定められた半径を有する円の内側の領域である。また、画像内の所定の領域又は所定の範囲から火災感知器10までの距離は、撮像画像における画像平面上の距離でよい。例えば、撮像画像の中央から火災感知器10の画像までの間のX方向及びY方向にそれぞれ存在するピクセル数を距離の指標として検出してよい。なお、撮像画像における1ピクセルに対応する天井面12における実際の距離を予め測定しておき、火災感知器検出部163は、検出したピクセル数に対応する実際の距離を換算してもよい。
【0039】
駆動信号生成部164は、モータを駆動するための制御信号を生成する。駆動信号生成部164は、撮像部150が撮像した画像において、火災感知器10が画像の所定の範囲内に位置するように制御信号を生成する。駆動信号生成部164は、例えば、火災感知器検出部163が特定した所定の領域又は所定の範囲から火災感知器10までの距離が、より小さくなるように筐体120を移動させる制御信号を生成する。
【0040】
例えば、火災感知器検出部163が、画像の中心から+X方向に200ピクセル、-Y方向に150ピクセルだけずれた位置に火災感知器10の中心が撮像されていることを特定した場合を考える。この場合、駆動信号生成部164は、200ピクセルに対応する距離だけ+X方向に筐体120を移動させる第1制御信号を生成する。また、駆動信号生成部164は、150ピクセルに対応する距離だけ-Y方向に筐体120を移動させる第2制御信号を生成する。
【0041】
駆動信号生成部164は、例えば、筐体120を所定の距離だけ移動させるために発生させる力の大きさ、力を発生させる期間等を、予め算出した関数等を用いて算出し、算出結果に対応する制御信号を生成する。また、駆動信号生成部164は、筐体120の移動距離と筐体120を移動させるために発生させる力の大きさ、力を発生させる期間等との対応関係を、予め特定したテーブルを用いてもよい。この場合、記憶部162が当該テーブルの情報を記憶していることが望ましい。これにより、駆動信号生成部164は、テーブルの情報を記憶部162から読み出して、筐体120を移動させる距離に対応する制御信号を生成できる。
【0042】
駆動信号生成部164は、生成した制御信号をモータ駆動回路220に供給する。駆動信号生成部164は、例えば、生成した第1制御信号を第1モータ駆動回路220aに供給し、生成した第2制御信号を第2モータ駆動回路220bに供給する。これにより、制御部160は、力発生部200を制御して、筐体120の開口部122を天井面に向けた場合、天井面と平行で、かつ、少なくとも異なる2つの方向にそれぞれ力を発生させる。
【0043】
そして、制御部160は、撮像部150が撮像した画像において、火災感知器10が画像の所定の範囲内に位置するように筐体120の姿勢を調節する。制御部160は、例えば、撮像部150が火災感知器10を撮像する毎に、筐体120の姿勢を調節する。なお、制御部160は、撮像部150が撮像した画像において火災感知器10が所定の範囲に位置している場合、回転円盤210を等速回転させる。このようにして、制御部160は、撮像部150が撮像した画像に基づいて力発生部200を制御して、筐体120の開口部122が火災感知器10を向くように筐体120の姿勢を調節できる。
【0044】
以上の制御部160は、CPU等によって構成されてもよい。例えば、コンピュータが制御部160として機能する場合、記憶部162は、コンピュータを機能させるOS(Operating System)、及びプログラム等の情報を格納してもよい。また、記憶部162は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。例えば、コンピュータは、記憶部162に記憶されたプログラムを実行することによって、画像取得部161、火災感知器検出部163、及び駆動信号生成部164として機能する。
【0045】
記憶部162は、例えば、コンピュータ等が実行する各種プログラム及び各種テーブル等を格納するROM(Read Only Memory)、及び作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部162は、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでもよい。
【0046】
以上のように、試験装置100は、撮像部150が撮像した画像に基づいて筐体120の姿勢を調節できる。このような試験装置100によれば、ユーザUが支持部110を持って撮像部150が火災感知器10を撮像できる程度の位置まで筐体120を火災感知器10の近辺に移動させることにより、筐体120の位置を適切な位置へと速やかに調節する。したがって、例えば、10mを超えるような高所に設けられた火災感知器10を検査する場合でも、ユーザUは、支持部110を持って筐体120の位置を微妙に操作することなく、火災感知器10の作動試験を容易に実行できる。
【0047】
なお、火災感知器10は、火災の発生を感知した場合、通信等を用いて火災の発生を外部に周知させる。そこで、試験装置100は、作動検知部230を更に設けることにより、火災感知器10が正常に作動したか否かを判定できる。作動検知部230は、例えば、火災感知器10が火災の発生を感知したことを通知するための送信信号を受信する受信機を有する。作動検知部230は、例えば、制御部160が筐体120の姿勢を調整した後に、煙又は熱を発生させたことに対応して火災感知器10が作動した場合、火災感知器10が正常に作動したと判定する。
【0048】
また、作動検知部230は、制御部160が筐体120の姿勢を調整した後に、煙又は熱を発生させても火災感知器10が作動しなかった場合、火災感知器10が正常に作動していないと判定してもよい。なお、制御部160は、作動検知部230によって火災感知器が正常に作動したと判定したことに応じて、擬似的な火災の発生を停止するための制御信号を疑似火災発生部130に送信してもよい。これにより、試験装置100は、速やかに次の火災感知器10の試験動作に移行することができる。
【0049】
なお、火災の発生を感知した場合に、作動確認灯を発光させて火災の発生を周知させる火災感知器10がある。このような火災感知器10を試験する場合、試験装置100は、撮像部150が撮像した画像に基づいて、火災感知器10が正常に作動したか否かを判定してよい。例えば、火災感知器検出部163は、画像解析することにより、検出した火災感知器10の作動確認灯が発光しているか否かを判定する。これにより、制御部160は、作動検知部230として動作することができる。
【0050】
以上の本実施形態に係る試験装置100は、力発生部200がリアクションホイールを用いて筐体120の姿勢を調整する力を発生させる例を説明したが、これに限定されることはない。力発生部200は、ジャイロ効果を用いて筐体120の姿勢を調整する力を発生させてもよい。このような力発生部200について次に説明する。
【0051】
<力発生部200の第2構成例>
図6は、本実施形態に係る力発生部200の第2構成例を示す。図6(A)は、第2構成例の力発生部200の外観を示し、図6(B)は、第2構成例の力発生部200の内部の構成例を示す。第2構成例の力発生部200は、回転円盤210と、アクチュエータ240と、回転円盤210を回転させるモータ212と、モータを駆動するモータ駆動回路220と、アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動回路250とを有する。
【0052】
力発生部200の回転円盤210は、筐体120の開口部122の開口面に対して略平行な面を回転面として回転する。アクチュエータ240は、回転円盤210の回転面の傾きを変化させる。図6は、力発生部200がX軸方向の力を発生させるための第1アクチュエータ240aと、Y軸方向の力を発生させるための第2アクチュエータ240bとを有する例を示す。なお、回転円盤210の回転方向の例を矢印で示している。
【0053】
また、第1アクチュエータ駆動回路250aは、第1アクチュエータ240aを駆動し、第2アクチュエータ駆動回路250bは、第2アクチュエータ240bを駆動する。第1アクチュエータ240a及び第2アクチュエータ240bは、回転円盤210の+Z方向又は-Z方向に力を加えて回転円盤210の回転面を傾斜させる。
【0054】
一般的に、回転体に対して外部から力が加わらない場合、回転体は回転軸を保って回転し、回転速度が大きいほど姿勢を変化させない傾向を有する。そして、回転体の回転軸に力が加わると、回転軸の方向と加わった力の方向とに直交する方向に回転体が傾く力が発生する(ジャイロ効果)。
【0055】
図7は、このようなジャイロ効果を説明するための図である。例えば、XY平面を回転面とし、原点を中心に回転している回転円盤210を考える。そして、図7の第1方向として示すように、回転軸をY方向に倒すように回転円盤210に力を加え、回転円盤210の回転面をXY平面からXY’平面へと傾斜させた場合を考える。この場合、図7の第2方向として示すように、回転軸をX方向に倒すようなX方向の力が発生する。
【0056】
このように回転円盤210の回転面の傾斜は、例えば、Y軸上の1点からZ方向に向けて回転円盤210に力を加えることで実行できる。そこで、第1アクチュエータ240aは、回転円盤210の回転軸を原点とした場合に、Y軸上に設けられる。そして、第1アクチュエータ240aは、Y軸上の1点から+Z方向又は-Z方向に向けて回転円盤210に力を加えて、回転円盤210の回転軸を+Y方向又は-Y方向に倒して回転面を傾斜させる。力発生部200は、このように第1アクチュエータ240aを駆動することにより、-X方向又は+X方向の力を発生できる。
【0057】
同様に、XY平面を回転面とし、原点を中心に回転している回転円盤210に対して、回転軸をX方向に倒すようにX軸上の1点からZ方向に向けて回転円盤210に力を加えると、回転軸をY方向に倒すようなY方向の力が発生する。そこで、第2アクチュエータ240bは、回転円盤210の回転軸を原点とした場合に、X軸上に設けられる。そして、第2アクチュエータ240bは、X軸上の1点から+Z方向又は-Z方向に向けて回転円盤210に力を加えて、回転円盤210の回転軸を+X方向又は-X方向に倒して回転面を傾斜させる。力発生部200は、このように第2アクチュエータ240bを駆動することにより、+Y方向又は-Y方向の力を発生できる。
【0058】
なお、回転円盤210の回転面の傾斜角度が大きければ大きいほど、また、回転円盤210の回転速度が速ければ速いほど、力発生部200が発生する力の大きさは大きくなる。制御部160は、以上の力発生部200のアクチュエータ240を制御して回転円盤210の回転面の傾きを変化させることにより、力発生部200が発生させる力の向きと大きさとを変化させて筐体120の姿勢を調節する。このような制御部160について次に説明する。
【0059】
<制御部160の第2構成例>
図8は、本実施形態に係る制御部160の第2構成例を示す。第2構成例の制御部160において、図5に示された第1構成例の制御部160の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の制御部160は、画像取得部161と、記憶部162と、火災感知器検出部163と、駆動信号生成部164とを有する。
【0060】
図8には、制御部160と共に、回転円盤210を回転させるモータを駆動するモータ駆動回路220と、第1アクチュエータ240aを駆動する第1アクチュエータ駆動回路250aと、第2アクチュエータ240bを駆動する第2アクチュエータ駆動回路250bと、作動検知部230とを更に示す。
【0061】
第2構成例の駆動信号生成部164は、モータを等速回転させるように駆動するための制御信号を生成する。駆動信号生成部164は、生成した制御信号をモータ駆動回路220に供給して、予め定められた一定の角速度で回転円盤210を等速回転させる。そして、駆動信号生成部164は、撮像部150が撮像した画像において、火災感知器10が画像の所定の範囲内に位置するように、アクチュエータ240を制御する制御信号を生成する。
【0062】
駆動信号生成部164は、例えば、筐体120を所定の距離だけ移動させるために回転円盤210の回転面を傾斜させる角度を、予め算出した関数等を用いて算出する。そして、駆動信号生成部164は、算出した角度だけアクチュエータ240に回転円盤210の回転面を傾斜させる制御信号を生成する。
【0063】
これに代えて、駆動信号生成部164は、筐体120の移動距離と回転円盤210の回転面を傾斜させる角度との対応関係を予め特定したテーブルを用いてもよい。この場合、記憶部162が当該テーブルの情報を記憶し、駆動信号生成部164は、テーブルの情報を読み出して、筐体120を移動させる距離に対応する制御信号を生成する。
【0064】
駆動信号生成部164は、例えば、第1アクチュエータ240aを駆動させて筐体120をX方向に移動させる第1制御信号を生成する。そして、駆動信号生成部164は、生成した第1制御信号を第1アクチュエータ駆動回路250aに供給する。また、駆動信号生成部164は、第2アクチュエータ240bを駆動させて筐体120をY方向に移動させる第2制御信号を生成する。そして、駆動信号生成部164は、生成した第2制御信号を第2アクチュエータ駆動回路250bに供給する。
【0065】
これにより、制御部160は、撮像部150が撮像した画像において、火災感知器10が画像の所定の範囲内に位置するように筐体120の姿勢を調節する。以上のように、第2構成例の制御部160は、第1構成例の制御部160と同様に、撮像部150が撮像した画像に基づいて力発生部200を制御して、筐体120の開口部122が火災感知器10を向くように筐体120の姿勢を調節できる。
【0066】
以上の第2構成例の力発生部200は、アクチュエータ240が回転円盤210に力を加えて回転面を傾斜させる例を説明したが、これに限定されることはない。第2構成例の力発生部200は、ジャイロ効果により力を発生させることができる構成であればよく、例えば、アクチュエータ240が回転円盤210の回転軸の向きを変更してもよい。
【0067】
図9は、本実施形態に係る力発生部200の第3構成例を示す。第3構成例の力発生部200は、2自由度のCMG(Control Moment Gyros)として既知である。第3構成例の力発生部200は、第2構成例の力発生部200と同様に、一定の角速度で回転する回転円盤210を有し、当該回転円盤210を2つのジンバル機構260で支えるように構成されている。
【0068】
例えば、内側のジンバル機構260は、Y軸を中心として回転円盤210の回転面を傾斜させることができる。この場合、第1アクチュエータ240aは、内側のジンバル機構260の内部に設けられており、回転円盤210の回転軸をX方向に移動させることにより、Y方向の力を発生させる。
【0069】
また、外側のジンバル機構260は、X軸を中心として回転円盤210の回転面を傾斜させることができる。この場合、第2アクチュエータ240bは、外側のジンバル機構260の内部に設けられており、回転円盤210の回転軸をY方向に移動させることにより、X方向の力を発生させる。
【0070】
以上のように、第3構成例の力発生部200は、第2構成例の力発生部200と同様に、筐体120の開口部122を天井面に向けた場合、天井面と平行で、かつ、少なくとも異なる2つの方向にそれぞれ力を発生させることができる。そして、制御部160は、第2構成例の力発生部200と同様に、第3構成例の力発生部200を制御して、筐体120の開口部122が火災感知器10を向くように筐体120の姿勢を調節できる。
【0071】
以上の本実施形態に係る試験装置100は、筐体120に制御部160が設けられている例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、ユーザUが所持する携帯端末が制御部160として機能してもよい。この場合、試験装置100は、例えば、携帯端末と通信する通信部を更に備え、撮像部150が撮像した画像のデータを携帯端末に送信する。
【0072】
携帯端末は、受信した画像データに基づいて力発生部200に供給する制御信号を生成し、生成した制御信号を試験装置100に送信する。これにより、試験装置100は、受信した制御信号に基づいて力発生部200から力を発生させて筐体120の姿勢を調節できる。
【0073】
また、携帯端末は、火災感知器10が火災の発生を感知したことを通知するための送信信号を受信してもよい。なお、作動確認灯を発光させて火災の発生を周知させる火災感知器10の場合、携帯端末は、取得した画像データを画像解析することにより、火災感知器10の作動確認灯が発光しているか否かを判定してもよい。これにより、ユーザUは、手元の携帯端末で火災感知器10の試験結果を確認することができる。また、ユーザUは、試験の開始、停止等を携帯端末から試験装置100に指示してもよい。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0075】
10 火災感知器
12 天井面
100 試験装置
110 支持部
120 筐体
122 開口部
130 疑似火災発生部
140 ファン
150 撮像部
160 制御部
161 画像取得部
162 記憶部
163 火災感知器検出部
164 駆動信号生成部
200 力発生部
210 回転円盤
212 モータ
220 モータ駆動回路
230 作動検知部
240 アクチュエータ
250 アクチュエータ駆動回路
260 ジンバル機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9