(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028862
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 61/28 20060101AFI20230224BHJP
F16H 63/38 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
F16H61/28
F16H63/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134810
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】古性 賢也
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA21
3J067AB23
3J067DB18
3J067DB32
3J067FA24
3J067FA63
3J067FB45
3J067FB78
3J067GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ディテントプレートに設けられた複数の谷部のうち、パーキング位置に対応する第1谷部において被接触部が静止していることを精度良く判定可能な電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】電動アクチュエータは、モータ、出力軸、ディテントプレート、被接触部を有する弾性部材、第1回転センサ、第2回転センサ、制御部、を備え、制御部は、第2回転センサに異常が生じた場合、モータを回転させ、ディテントプレートの第1谷部の周方向一端側に位置する第1側壁部に被接触部を突き当て、被接触部が第1側壁部に突き当てられたときに第1回転センサにより検出の第1回転角度を側壁位置角度として取得し、第1回転角度が目標回転角度に相当する角度までモータを逆回転させ、第1回転角度が、第1所定時間内において目標回転角度を基準値とする第1公差内に収まり続けた場合に、被接触部がパーキング位置で静止していると判定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト位置を切り換える電動アクチュエータであって、
モータと、
前記モータによって駆動される出力軸と、
前記出力軸に固定され、周方向一端側に設けられたパーキング位置に対応する第1谷部と周方向他端側に設けられた非パーキング位置に対応する第2谷部とを含む複数の谷部を有するディテントプレートと、
前記ディテントプレートの回転に伴って生じる弾性力により前記谷部のいずれか一つに接触される被接触部を有する弾性部材と、
前記モータの回転角度である第1回転角度を検出する第1回転センサと、
前記出力軸の回転角度である第2回転角度を検出する第2回転センサと、
前記第1回転角度及び前記第2回転角度の検出結果に基づいて前記モータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2回転センサに異常が生じた場合、
前記モータを回転させることにより、前記ディテントプレートにおいて前記第1谷部の前記周方向一端側に位置する第1側壁部に前記被接触部を突き当てる処理と、
前記被接触部が前記第1側壁部に突き当てられたときに前記第1回転センサにより検出された前記第1回転角度を側壁位置角度として取得する処理と、
前記側壁位置角度を基準にして前記第1回転角度が目標回転角度に相当する角度まで前記モータを逆回転させる逆回転処理と、
前記第1回転センサにより検出される前記第1回転角度が、第1所定時間内において前記目標回転角度を基準値とする第1公差内に収まり続けた場合に、前記被接触部が前記パーキング位置で静止していると判定する静止判定処理と、
を実行する、
電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記逆回転処理を実行した後に、
前記第1回転センサにより検出される前記第1回転角度が、第2所定時間内において前記目標回転角度を基準値とする第2公差内に収まり続けた場合に、前記モータの制御を停止する処理を実行し、
前記モータの制御を停止した後に、前記静止判定処理を実行する、
請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1公差は、前記第2公差よりも大きい、請求項2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1所定時間は、前記第2所定時間よりも長い、請求項2または3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記目標回転角度は、前記第1側壁部から前記第1谷部までの回転角度の設計値を前記側壁位置角度から減算することで得られる値である、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、モータを駆動源としてシフトレンジを切り換えるレンジ切換装置が開示されている。特許文献1のレンジ切換装置は、モータの回転に同期してパルス信号を出力するエンコーダと、パルス信号のカウント値(エンコーダカウント値)に基づいてモータを駆動することによりレンジ切換機構の切換位置を制御する制御手段と、レンジ切換機構が各レンジの位置に切り換えられたときに係合部がレンジ保持凹部に嵌り込むことでレンジ切換機構を各レンジの位置に保持するディテント機構と、を備える。
【0003】
特許文献1のレンジ切換装置では、係合部がPレンジ壁(Pレンジ保持凹部の側壁)に突き当たるまでモータを回転させた後にモータの駆動力を解除し、エンコーダカウント値の変動量が所定値以下になったときに、係合部がPレンジ保持凹部の位置(Pレンジ谷位置)で静止していると判定する。特許文献1のレンジ切換装置では、係合部がPレンジ谷位置で静止していると判定したときに得られるエンコーダカウント値を、基準位置におけるエンコーダカウント値として取得(学習)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、係合部がPレンジ壁に突き当たるまでモータを回転させた後にモータの駆動力を解除するが、モータの駆動力が解除された状態で係合部がPレンジ谷位置から大きく外れた位置に移動する場合も考えられる。この場合でも、エンコーダカウント値の変動量が所定値以下になれば、係合部がPレンジ谷位置で静止していると判定するため、Pレンジ谷位置から大きく外れた位置で得られたエンコーダカウント値を、基準位置におけるエンコーダカウント値として誤って学習する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータにおける一つの態様は、シフト位置を切り換える電動アクチュエータであって、モータと、前記モータによって駆動される出力軸と、前記出力軸に固定され、周方向一端側に設けられたパーキング位置に対応する第1谷部と周方向他端側に設けられた非パーキング位置に対応する第2谷部とを含む複数の谷部を有するディテントプレートと、前記ディテントプレートの回転に伴って生じる弾性力により前記谷部のいずれか一つに接触される被接触部を有する弾性部材と、前記モータの回転角度である第1回転角度を検出する第1回転センサと、前記出力軸の回転角度である第2回転角度を検出する第2回転センサと、前記第1回転角度及び前記第2回転角度の検出結果に基づいて前記モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2回転センサに異常が生じた場合、前記モータを回転させることにより、前記ディテントプレートにおいて前記第1谷部の前記周方向一端側に位置する第1側壁部に前記被接触部を突き当てる処理と、前記被接触部が前記第1側壁部に突き当てられたときに前記第1回転センサにより検出された前記第1回転角度を側壁位置角度として取得する処理と、前記側壁位置角度を基準にして前記第1回転角度が目標回転角度に相当する角度まで前記モータを逆回転させる逆回転処理と、前記第1回転センサにより検出される前記第1回転角度が、第1所定時間内において前記目標回転角度を基準値とする第1公差内に収まり続けた場合に、前記被接触部が前記パーキング位置で静止していると判定する静止判定処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、出力軸の回転角度を検出する第2回転センサに異常が生じた場合でも、第1回転センサによって検出されるモータの回転角度に基づいて、ディテントプレートに設けられた複数の谷部のうち、パーキング位置に対応する第1谷部において被接触部が静止していることを精度良く判定可能な電動アクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の電動アクチュエータを備える駆動装置を車両の左右方向一方側から視た図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電動アクチュエータを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電動アクチュエータの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の電動アクチュエータの制御部によって実行されるシフト位置切替処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、シフト位置切替処理が実行される期間に、板バネ部材の被接触部がディテントプレートの上側端面に沿って移動する様子を模式的示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の電動アクチュエータの制御部によって実行されるパーキング位置学習処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、パーキング位置学習処理が実行される期間に、板バネ部材の被接触部がディテントプレートの上側端面に沿って移動する様子を模式的示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電動アクチュエータ100を備える駆動装置1を車両の左右方向一方側から視た図である。
図2は、本実施形態の電動アクチュエータ100を示す斜視図である。本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、或いは電気自動車(EV)等の電動車両に搭載され、その駆動源として使用される。
図1に示すように、駆動装置1は、ハウジング2と、駆動用モータ3と、減速装置4と、差動装置5と、パークロックギヤ6と、電動アクチュエータ100と、を備える。
図1及び
図2に示すように、電動アクチュエータ100は、モータユニット10と、パーキング切替機構70と、出力軸80と、を備える。電動アクチュエータ100は、車両のシフト操作に応じてシフト位置を切り換える。
【0010】
以下の説明では、駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、+Z側を上側とし、-Z側を下側とする鉛直方向である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両の前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両の前後方向一方側であり、-X側は、車両の前後方向他方側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左右方向一方側であり、-Y側は、車両の左右方向他方側である。
【0011】
本実施形態では、Z軸方向と平行な方向を「鉛直方向Z」と呼び、X軸方向と平行な方向を「前後方向X」と呼び、Y軸方向と平行な方向を「左右方向Y」と呼ぶ。また、Z軸方向の正の側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。X軸方向の正の側(+X側)を「前後方向一方側」と呼び、X軸方向の負の側(-X側)を「前後方向他方側」と呼ぶ。Y軸方向の正の側(+Y側)を「左右方向一方側」と呼び、Y軸方向の負の側(-Y側)を「左右方向他方側」と呼ぶ。
【0012】
出力軸80は、モータユニット10に接続され、モータユニット10によって回転させられる。本実施形態において出力軸80は、中心軸線J1を中心として前後方向Xに延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする周方向、すなわち、中心軸線J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。
図2に示すように、出力軸80の前後方向一方側(+X側)の端部は、モータユニット10に接続される被接続部81である。被接続部81には、前後方向Xに延びるスプライン溝が周方向に沿って複数設けられる。
【0013】
ハウジング2は、駆動用モータ3、減速装置4、差動装置5、およびパーキング切替機構70を内部に収容する。図示は省略するが、ハウジング2の内部には、オイルが収容される。減速装置4は、駆動用モータ3に接続される。差動装置5は、減速装置4に接続され、駆動用モータ3から出力されるトルクを車両の車軸に伝達する。パークロックギヤ6は、減速装置4に設けられたギヤに固定される。パークロックギヤ6は、減速装置4および差動装置5を介して、車両の車軸に連結される。パークロックギヤ6は、複数の歯部6aを有する。
【0014】
パーキング切替機構70は、モータユニット10によって、車両のシフト操作に基づいて駆動される。パーキング切替機構70は、パークロックギヤ6をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。パーキング切替機構70は、車両のシフト位置がパーキング位置(Pレンジ)である場合に、パークロックギヤ6をロック状態とし、車両のシフト位置がパーキング位置以外の非パーキング位置である場合に、パークロックギヤ6をアンロック状態とする。車両のシフト位置が非パーキング位置である場合とは、例えば、車両のシフト位置がドライブ位置(Dレンジ)、ニュートラル位置(Nレンジ)、或いはリバース位置(Rレンジ)等である場合を含む。
図2に示すように、パーキング切替機構70は、可動部70aと、パークロックアーム77と、支持部材75と、板バネ部材76と、を有する。
【0015】
可動部70aは、車両のシフト操作に基づいて、左右方向Yに沿って移動する。すなわち、本実施形態において左右方向Yは、可動部70aが移動する移動方向に相当する。また、鉛直方向Zは、可動部70aが移動する移動方向と交差する交差方向に相当し、下側は、交差方向の一方側に相当する。本実施形態において可動部70aは、出力軸80を介して、モータユニット10によって移動させられる。可動部70aにおける左右方向Yの位置は、少なくとも非パーキング位置とパーキング位置との間で切り替えられる。すなわち、可動部70aは、出力軸80によってパーキング位置と非パーキング位置との間で移動させられる。非パーキング位置は、車両のシフト位置がパーキング位置以外である場合における可動部70aの左右方向Yの位置である。パーキング位置は、車両のシフト位置がパーキング位置である場合における可動部70aの左右方向Yの位置である。パーキング位置は、非パーキング位置よりも、左右方向一方側(+Y側)の位置である。
図2においては、可動部70aが非パーキング位置に位置する場合について示す。
【0016】
可動部70aは、ディテントプレート71と、ロッド72と、円錐状部材73と、コイルバネ74と、を有する。ディテントプレート71は、出力軸80に固定される。ディテントプレート71は、出力軸80によって回転させられる。ディテントプレート71は、出力軸80から径方向外側に延びる。本実施形態においてディテントプレート71は、出力軸80から上側に延びる。本実施形態においてディテントプレート71は、板面が前後方向Xを向く板状である。ディテントプレート71の幅は、出力軸80から径方向外側に離れるに従って大きくなる。ディテントプレート71は、ディテントプレート71の周方向一端側に設けられたパーキング位置に対応する第1谷部71aと、ディテントプレート71の周方向他端側に設けられた非パーキング位置に対応する第2谷部71bとを含む複数の谷部を有する。なお、
図2では、ディテントプレート71が、非パーキング位置に対応する第2谷部として、1つの第2谷部71bのみを有する場合を示すが、複数の第2谷部がディテントプレート71に設けられてもよい。
【0017】
第1谷部71aおよび第2谷部71bは、ディテントプレート71の径方向外端部に設けられる。第1谷部71aおよび第2谷部71bは、ディテントプレート71の上側の端部から下側に窪む。第1谷部71aおよび第2谷部71bは、ディテントプレート71を前後方向Xに貫通する。第1谷部71aと第2谷部71bとは、周方向に沿って並んで配置される。本実施形態において第1谷部71aと第2谷部71bとは、左右方向Yに並んで配置される。第1谷部71aは、第2谷部71bの左右方向他方側(-Y側)に位置する。第1谷部71aと第2谷部71bとがディテントプレート71に設けられることにより、ディテントプレート71のうち第1谷部71aと第2谷部71bとの周方向の間の部分には、径方向外側に突出する山部71cが設けられる。
【0018】
ロッド72は、左右方向Yに沿って移動可能に配置される。ロッド72は、接続部72aと、ロッド本体72bと、を有する。接続部72aは、前後方向Xに延びる棒状である。接続部72aの前後方向一方側(+X側)の端部は、ディテントプレート71を前後方向Xに貫通し、ディテントプレート71に固定される。これにより、ロッド72は、ディテントプレート71を介して出力軸80に連結される。ロッド本体72bは、左右方向Yに延びる棒状である。本実施形態においてロッド本体72bは、接続部72aの前後方向他方側(-X側)の端部から左右方向一方側(+Y側)に延びる。ロッド本体72bは、接続部72a寄りの部分に突起部72cを有する。ロッド本体72bの左右方向一方側の端部には、左右方向Yに延びる筒部材72dが嵌め合わされて固定される。
【0019】
円錐状部材73は、ロッド本体72bが通される円錐状である。円錐状部材73は、左右方向Yに延びる。円錐状部材73の外周面のうち左右方向一方側(+Y側)の部分は、左右方向一方側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面73aである。円錐状部材73は、ロッド本体72bに対して左右方向Yに移動可能である。
【0020】
コイルバネ74は、左右方向Yに延びる。コイルバネ74は、円錐状部材73と突起部72cとの左右方向Yの間に配置される。コイルバネ74には、ロッド本体72bが通される。コイルバネ74の左右方向他方側(-Y側)の端部は、突起部72cに接触する。コイルバネ74の左右方向一方側(+Y側)の端部は、円錐状部材73の左右方向他方側の面に接触する。コイルバネ74は、円錐状部材73がロッド本体72bに対して左右方向Yに相対移動することで伸縮し、円錐状部材73に左右方向Yの弾性力を加える。
【0021】
パークロックアーム77は、可動部70aの前後方向他方側(-X側)に位置する。パークロックアーム77は、左右方向Yに延びる回転軸線J2を中心とする支持シャフト78によって、回転可能に支持される。パークロックアーム77は、パークロックアーム本体77aと、噛合部77bと、を有する。
【0022】
パークロックアーム本体77aは、支持シャフト78から前後方向一方側(+X側)に延びる。パークロックアーム本体77aの前後方向一方側の端部77cは、可動部70aに上側から接触する。噛合部77bは、パークロックアーム本体77aから上側に突出する。支持シャフト78には図示しない巻きバネが装着される。図示しない巻きバネは、パークロックアーム77に対して、回転軸線J2を中心として左右方向他方側(-Y側)から視て時計回り向きの弾性力を加える。
【0023】
パークロックアーム77は、可動部70aの移動に伴って移動する。より詳細には、パークロックアーム77は、ロッド72および円錐状部材73の左右方向Yへの移動に伴って、回転軸線J2回りに回転する。出力軸80の回転に伴って、ディテントプレート71が非パーキング位置からパーキング位置に回転すると、ロッド72および円錐状部材73が左右方向一方側(+Y側)に移動する。
【0024】
円錐状部材73のテーパ面73aの外径は、左右方向一方側(+Y側)から左右方向他方側(-Y側)に向かうに従って大きくなる。そのため、円錐状部材73が左右方向一方側に移動すると、テーパ面73aによってパークロックアーム77の端部77cが上側に持ち上げられ、パークロックアーム77が回転軸線J2を中心として左右方向他方側(-Y側)から視て反時計回りに回転する。これにより、図示は省略するが、噛合部77bがパークロックギヤ6に近づき、パークロックギヤ6の歯部6a同士の間に噛み合う。
【0025】
パークロックギヤ6とパークロックアーム77とが噛み合う場合、円錐状部材73もパーキング位置に位置する状態となり、可動部70aの全体がパーキング位置に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部70aがパーキング位置に位置する場合に、車軸に連結されたパークロックギヤ6に噛み合う。円錐状部材73は、パーキング位置において、支持部材75における後述する接触部75bとパークロックアーム77とに接触した状態で挟まれる。パークロックアーム77がパークロックギヤ6に噛み合うことで、パークロックギヤ6は、ロック状態となる。
【0026】
パークロックアーム77がパークロックギヤ6に近づく際、パークロックギヤ6の歯部6aの位置によっては、噛合部77bが歯部6aに接触する場合がある。この場合、パークロックアーム77は、噛合部77bが歯部6a同士の間に噛み合う位置まで移動できない場合がある。このような場合であっても、本実施形態では、円錐状部材73がロッド72に対して左右方向Yに移動可能であるため、ロッド72はパーキング位置に移動しつつ、円錐状部材73がパーキング位置よりも左右方向他方側(-Y側)に位置する状態を許容できる。これにより、出力軸80の回転が阻害されることを抑制でき、出力軸80を回転させるモータユニット10に負荷が掛かることを抑制できる。
【0027】
また、ロッド72がパーキング位置に位置し、円錐状部材73がパーキング位置よりも左右方向他方側(-Y側)に位置する状態では、コイルバネ74が圧縮変形した状態となる。そのため、コイルバネ74によって円錐状部材73に左右方向一方側向き(+Y側向き)の弾性力が加えられる。これにより、円錐状部材73を介して、コイルバネ74からパークロックアーム77に、回転軸線J2を中心として左右方向他方側(-Y側)から視て反時計回りに回転する向きの回転モーメントが加えられる。したがって、パークロックギヤ6が回転して歯部6aの位置がずれると、パークロックアーム77が回転して、噛合部77bが歯部6a同士の間に噛み合う。
【0028】
出力軸80の回転に伴って、ディテントプレート71がパーキング位置から非パーキング位置に回転すると、ロッド72および円錐状部材73が左右方向他方側(-Y側)に移動する。円錐状部材73が左右方向他方側に移動すると、円錐状部材73によって持ち上げられていたパークロックアーム77の端部77cが自重および図示しない巻きバネからの弾性力を受けて下側に移動し、パークロックアーム77が回転軸線J2を中心として左右方向一方側(+Y側)から視て反時計回りに回転する。これにより、パークロックアーム77の噛合部77bがパークロックギヤ6から離れ、歯部6a同士の間から外れる。
図2においては、パークロックギヤ6から外れた状態のパークロックアーム77を示す。
【0029】
パークロックアーム77がパークロックギヤ6から外れる場合、円錐状部材73も非パーキング位置に位置する状態となり、可動部70aの全体が非パーキング位置に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部70aが非パーキング位置に位置する場合にパークロックギヤ6から外れる。円錐状部材73は、非パーキング位置において、パークロックアーム77よりも左右方向他方側(-Y側)に位置する。パークロックアーム77がパークロックギヤ6から外れることで、パークロックギヤ6は、アンロック状態となる。
【0030】
支持部材75は、可動部70aを左右方向Yに移動可能に支持する。本実施形態において支持部材75は、可動部70aを下側から支持する。支持部材75は、ハウジング2の内側面に固定される。支持部材75は、基部75aと、接触部75bと、板バネ固定部75cと、を有する。
【0031】
本実施形態において基部75aは、板面が鉛直方向Zを向く板状である。接触部75bは、基部75aから上側に突出する。接触部75bは、可動部70aに接触して可動部70aを支持する部分である。本実施形態において接触部75bは、可動部70aのうち円錐状部材73に下側から接触して、可動部70aを下側から支持する。接触部75bにおける可動部70a側の面は、左右方向Yに沿って視て、可動部70a側と逆側に凹となる円弧状の曲面である。そのため、テーパ面73aを有する円錐状部材73を安定して支持できる。
【0032】
板バネ固定部75cは、基部75aから上側に突出する。板バネ固定部75cは、例えば、直方体状である。板バネ固定部75cは、接触部75bよりも前後方向一方側(+X側)に位置する。板バネ部材76は、支持部材75の板バネ固定部75cに固定される。本実施形態において板バネ部材76は、板バネ固定部75cの上側の面のうち左右方向他方側(-Y側)の端部に固定される。板バネ部材76は、板バネ本体部76aと、被接触部76bと、を有する。
【0033】
板バネ本体部76aは、板面が鉛直方向Zを向く板状である。板バネ本体部76aは、板バネ固定部75cから左右方向他方側(-Y側)に延びる。板バネ本体部76aは、ディテントプレート71の上側まで延びる。板バネ本体部76aは、左右方向他方側の端部にスリット76cを有する。スリット76cは、板バネ本体部76aを鉛直方向Zに貫通する。スリット76cは、左右方向Yに延びる。スリット76cは、板バネ本体部76aの左右方向他方側の端部まで延び、板バネ本体部76aの左右方向他方側の端部を二股に分断する。
【0034】
被接触部76bは、板バネ本体部76aの左右方向他方側(-Y側)の端部に設けられる。本実施形態において被接触部76bは、前後方向Xに延びる軸回りに回転可能に板バネ本体部76aに取り付けられるローラである。被接触部76bは、スリット76cによって二股に分断された板バネ本体部76aの先端部分同士の間に設けられる。被接触部76bは、ディテントプレート71の回転に伴って板バネ部材76に生じる弾性力により第1谷部71a及び第2谷部71bのいずれか一つに接触される。被接触部76bは、可動部70aがパーキング位置に位置する場合において、第1谷部71aに接触され、第1谷部71aの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられる。これにより、ディテントプレート71およびロッド72をパーキング位置に維持できる。
【0035】
特に、本実施形態のようにコイルバネ74が設けられる場合、噛合部77bが歯部6aに接触してコイルバネ74が圧縮変形することで生じる弾性力による反力が、ロッド72およびディテントプレート71に対して、左右方向他方側向き(-Y側向き)に加えられる。本実施形態によれば、このような場合であっても、被接触部76bが第1谷部71aに引っ掛かることで、ディテントプレート71が左右方向他方側(-Y側)に移動することを抑制できる。したがって、ディテントプレート71およびロッド72を安定してパーキング位置に維持できる。
【0036】
一方、モータユニット10によって出力軸80が回転されてディテントプレート71がパーキング位置から非パーキング位置に移動する際には、板バネ本体部76aは、ディテントプレート71の山部71cによって上側に押されて弾性変形する。これにより、被接触部76bが第1谷部71aから外れる。被接触部76bは、可動部70aが非パーキング位置に位置する場合において、第2谷部71bに接触され、第2谷部71bの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられる。これにより、ディテントプレート71およびロッド72を非パーキング位置に維持できる。
【0037】
本実施形態において第1谷部71aと第2谷部71bとの間で被接触部76bが移動する際には、被接触部76bは、一方の谷部の内側から山部71cを乗り越えて他方の谷部に相対移動する。被接触部76bが山部71cを乗り越える際、板バネ部材76は、被接触部76bを介して山部71cから上側向きの力を受け、弾性変形する。すなわち、本実施形態において板バネ部材76は、可動部70aが非パーキング位置とパーキング位置との間で移動する際に、ディテントプレート71の山部71cによって上側に押されて弾性変形する弾性部材である。このように、本実施形態における板バネ部材76は、ディテントプレート71の回転に伴って生じる弾性力により複数の谷部のいずれか一つに接触される被接触部76bを有する弾性部材である。なお、本実施形態において第1谷部71aと第2谷部71bとの間で被接触部76bが移動する際、ローラである被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面を転がりながら移動する。
【0038】
モータユニット10は、車両のシフト操作に基づいてパーキング切替機構70を駆動する。本実施形態においてモータユニット10は、出力軸80を介して可動部70aを左右方向Yに移動させることでパーキング切替機構70を駆動し、パークロックギヤ6をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。
【0039】
図1に示すように、モータユニット10は、モータ20と、減速機30と、を備える。減速機30は、モータ20に接続される。モータ20は、減速機30を介して出力軸80を回転させる。モータ20は、例えば三相ブラシレスDCモータである。減速機30は、モータ20の回転を減速する。減速機30には、出力軸80が接続される。出力軸80には、減速機30を介して減速されたモータ20の回転が伝達される。すなわち、出力軸80は、減速機30を介してモータ20によって駆動される。
【0040】
図3に示すように、電動アクチュエータ100は、モータユニット10、パーキング切替機構70及び出力軸80に加えて、第1回転センサ51と、第2回転センサ52と、制御部40と、を備える。制御部40は、不図示の通信ケーブルを介して上位制御装置200と通信可能に接続されている。上位制御装置200は、例えば、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)である。
【0041】
第1回転センサ51は、モータ20の回転角度である第1回転角度φを検出する。第1回転センサ51は、第1回転角度φの検出結果を示す信号を制御部40に出力する。第2回転センサ52は、出力軸80の回転角度である第2回転角度θを検出する。第2回転センサ52は、第2回転角度θの検出結果を示す信号を制御部40に出力する。第1回転センサ51及び第2回転センサ52は、例えば、ホールセンサ、インクリメンタル型エンコーダ、或いはアブソリュート型エンコーダなどである。以下の説明では、第1回転角度φをモータ回転角度と呼称し、第2回転角度θを出力軸回転角度と呼称する場合がある。
【0042】
制御部40は、モータ回転角度φ及び出力軸回転角度θの検出結果に基づいて、モータ20を制御する。制御部40は、所定の通信プロトコルに従って上位制御装置200と通信する。所定の通信プロトコルは、例えばCAN(Controller Area Network)通信プロトコルである。制御部40は、例えばMCU(Microcontroller Unit)などのマイクロプロセッサである。制御部40は、上位制御装置200からシフト位置切替指示を受信したときに、
図4に示すシフト位置切替処理を実行する。
【0043】
図4は、制御部40によって実行されるシフト位置切替処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、制御部40は、上位制御装置200からシフト位置切替指示を受信すると、まず、指示されたシフト位置に対応する出力軸目標角度θtを取得する(ステップS1)。例えば、制御部40の内部メモリには、シフト位置と出力軸目標角度θtとの対応関係を示すテーブルデータが予め格納されている。制御部40は、内部メモリに格納されたテーブルデータを参照することにより、指示されたシフト位置に対応する出力軸目標角度θtを取得する。
【0044】
続いて、制御部40は、出力軸目標角度θtと、第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θとに基づいて、モータ20の位置PID制御を開始する(ステップS2)。具体的には、制御部40は、出力軸目標角度θtと出力軸回転角度θとの偏差がゼロとなる操作量をPID演算により算出し、算出した操作量に対応する駆動電流をモータ20に供給することにより、モータ20を回転させる。その結果、出力軸80は、指示されたシフト位置に対応する出力軸目標角度θtに向かって右回り又は左回りに回転する。
【0045】
本実施形態において「出力軸80が右回りに回転する」とは、出力軸80が、前後方向一方側(+X側)から視て中心軸線J1を中心として時計回りに回転することである。つまり、右回りの向きは、
図2において出力軸80の回転角度θを示す矢印が向く向きと逆向きである。また、本実施形態において「出力軸80が左回りに回転する」とは、出力軸80が、前後方向一方側(+X側)から視て中心軸線J1を中心として反時計回りに回転することである。つまり、左回りの向きは、
図2において出力軸80の回転角度θを示す矢印が向く向きと同じ向きである。
【0046】
例えば、シフト位置切替処理が実行される前のシフト位置が非パーキング位置である場合、板バネ部材76の被接触部76bは、シフト位置切替処理が実行される前にディテントプレート71の第2谷部71bに位置する。この場合、仮に上位制御装置200からパーキング位置への切替えを指示されると、制御部40は、パーキング位置に対応する出力軸目標角度θtと出力軸回転角度θとの偏差がゼロとなる操作量をPID演算により算出し、算出した操作量に対応する駆動電流をモータ20に供給することにより、モータ20を回転させる。その結果、出力軸80は、パーキング位置に対応する出力軸目標角度θtに向かって右回りに回転する。
【0047】
このように、出力軸80がパーキング位置に対応する出力軸目標角度θtに向かって右回りに回転すると、中心軸線J1を出力軸80と共有するディテントプレート71も、パーキング位置に対応する出力軸目標角度θtに向かって右回りに回転する。ディテントプレート71がパーキング位置に対応する出力軸目標角度θtに向かって右回りに回転すると、板バネ本体部76aは、ディテントプレート71の山部71cによって上側に押されて弾性変形する。これにより、
図5の「状態A」で示されるように、被接触部76bは非パーキング位置に対応する第2谷部71bから外れ、ディテントプレート71の上側の端面に沿って第2谷部71bから第1谷部71aに向かって転がりながら移動する。また、ディテントプレート71がパーキング位置に対応する出力軸目標角度θtに向かって右回りに回転すると、ロッド72および円錐状部材73が、左右方向Yに沿って非パーキング位置からパーキング位置に向かって移動する。
【0048】
制御部40は、モータ20の位置PID制御を行いながら、第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θが下記条件式(1)を満足するか否かを判定する(ステップS3)。言い換えれば、ステップS3において、制御部40は、出力軸回転角度θが、出力軸目標角度θtを基準値とし且つ±1°を許容誤差とする公差内に収まるか否かを判定する。なお、下記条件式(1)では、一例として許容誤差が±1°に設定されるが、許容誤差の値は±1°に限定されない。
θt-1°≦ θ ≦ θt+1° …(1)
【0049】
上記ステップS3において「No」の場合、すなわち第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θが条件式(1)を満足しない場合、被接触部76bは、ディテントプレート71の複数の谷部のうち、指示されたシフト位置に対応する谷部を中心とする±1°の範囲内に位置しないと推定される。この場合、制御部40は、モータ20の位置PID制御を行いながら、一定の時間間隔でステップS3の処理を繰り返す。
【0050】
一方、上記ステップS3において「Yes」の場合、すなわち第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θが条件式(1)を満足する場合、被接触部76bは、ディテントプレート71の複数の谷部のうち、指示されたシフト位置に対応する谷部を中心とする±1°の範囲内に位置すると推定される。この場合、制御部40は、出力軸回転角度θが条件式(1)を満足した状態で所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。言い換えれば、ステップS4において、制御部40は、被接触部76bが指示されたシフト位置に対応する谷部を中心とする±1°の範囲内に位置した状態で所定時間が経過したか否かを判定する。一例として、ステップS4における所定時間は20ミリ秒であるが、所定時間は20ミリ秒に限定されない。
【0051】
例えば、上記のように、指示されたシフト位置がパーキング位置であり、ディテントプレート71が、パーキング位置に対応する出力軸目標角度θtに向かって右回りに回転し続けると、
図5の「状態B」で示されるように、被接触部76bは、ディテントプレート71の山部71cを乗り越え、パーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±1°の範囲内に侵入する。このように、被接触部76bが第1谷部71aを中心とする±1°の範囲内に侵入したとき、すなわち第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θが条件式(1)を満足したときに、制御部40は、タイムカウントを開始し、被接触部76bが第1谷部71aを中心とする±1°の範囲内に位置した状態で所定時間が経過したか否かを判定する。
【0052】
上記ステップS4において「No」の場合、すなわち出力軸回転角度θが条件式(1)を満足した状態で所定時間が経過しない場合、制御部40は、所定時間が経過するまで一定の時間間隔でステップS4の処理を繰り返す。一方、上記ステップS4において「Yes」の場合、すなわち出力軸回転角度θが条件式(1)を満足した状態で所定時間が経過した場合、制御部40は、モータ20の位置PID制御を停止することにより、モータ20への駆動電流の供給を停止する(ステップS5)。
【0053】
モータ20への駆動電流の供給が停止されると、モータ20のトルクがゼロとなるため、出力軸80及びディテントプレート71はフリー回転可能な状態となる。一方、板バネ本体部76aが、ディテントプレート71の山部71cによって上側に押されて弾性変形することにより、被接触部76bをディテントプレート71の上側の端面に押し付ける下向きの弾性力が発生する。従って、被接触部76bが指示されたシフト位置に対応する谷部を中心とする±1°の範囲内に位置しながら、ディテントプレート71がフリー回転可能な状態になると、板バネ本体部76aに生じる下向きの弾性力によりディテントプレート71が回転し、その結果、被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面に沿って谷部に向かって転がりながら移動する。
【0054】
例えば、上記のように、指示されたシフト位置がパーキング位置である場合、
図5の「状態B」で示されるように、被接触部76bがパーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±1°の範囲内に位置しながら、ディテントプレート71がフリー回転可能な状態になると、板バネ本体部76aに生じる下向きの弾性力によりディテントプレート71が右回りに回転する。その結果、
図5の「状態C」で示されるように、被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面に沿って第1谷部71aに向かって転がりながら移動する。
【0055】
制御部40は、モータ20への駆動電流の供給を停止した後、第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θが下記条件式(2)を満足するか否かを判定する(ステップS6)。言い換えれば、ステップS6において、制御部40は、出力軸回転角度θが、出力軸目標角度θtを基準値とし且つ±2°を許容誤差とする公差内に収まるか否かを判定する。なお、下記条件式(2)では、一例として許容誤差が±2°に設定されるが、許容誤差の値は±2°に限定されない。ただし、後述の理由により、条件式(2)における許容誤差は、条件式(1)における許容誤差よりも大きい値に設定されることが好ましい。
θt-2°≦ θ ≦ θt+2° …(2)
【0056】
上記ステップS6において「No」の場合、すなわち第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θが条件式(2)を満足しない場合、被接触部76bは、ディテントプレート71の複数の谷部のうち、指示されたシフト位置に対応する谷部を中心とする±2°の範囲内に位置しないと推定される。この場合、制御部40は、ステップS2の処理に戻って再びモータ20の位置PID制御を開始する。
【0057】
上記のように、モータ20への駆動電流の供給が停止されると、出力軸80及びディテントプレート71はフリー回転可能な状態となる。そのため、モータ20への駆動電流の供給が停止された後に、板バネ本体部76aに生じる下向きの弾性力によりディテントプレート71が大きく回転し、被接触部76bが指示されたシフト位置に対応する谷部から大きく外れた位置に移動する可能性がある。そこで、モータ20への駆動電流の供給を停止した後に出力軸回転角度θが条件式(2)を満足しない場合、すなわち、モータ20への駆動電流の供給が停止されたことに起因して、被接触部76bが指示されたシフト位置に対応する谷部から大きく外れた位置に移動したと推定される場合には、制御部40は、モータ20の位置PID制御を再開することにより、シフト位置の切替えをリトライする。条件式(2)における許容誤差が、条件式(1)における許容誤差よりも大きい値に設定される理由は、モータ20への駆動電流の供給が停止されたことに起因して、被接触部76bが指示されたシフト位置に対応する谷部から大きく外れた位置に移動したことを精度良く検知するためである。
【0058】
一方、上記ステップS6において「Yes」の場合、すなわち第2回転センサ52により検出される出力軸回転角度θが条件式(2)を満足する場合、被接触部76bは、ディテントプレート71の複数の谷部のうち、指示されたシフト位置に対応する谷部を中心とする±2°の範囲内に位置すると推定される。この場合、制御部40は、出力軸回転角度θが条件式(2)を満足した状態で所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS7)。言い換えれば、ステップS7において、制御部40は、被接触部76bが指示されたシフト位置に対応する谷部を中心とする±2°の範囲内に位置した状態で所定時間が経過したか否かを判定する。一例として、ステップS7における所定時間は20ミリ秒であるが、所定時間は20ミリ秒に限定されない。
【0059】
例えば、上記のように、指示されたシフト位置がパーキング位置である場合、
図5の「状態C」で示されるように、被接触部76bがパーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±1°の範囲内に位置しながら、モータ20への駆動電流の供給が停止されると、板バネ本体部76aに生じる下向きの弾性力によりディテントプレート71が右回りに回転する。その結果、被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面に沿って第1谷部71aに向かって転がりながら移動する。そして、
図5の「状態D」で示されるように、被接触部76bが第1谷部71aに到達すると、被接触部76bが第1谷部71aの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられることにより、ディテントプレート71は停止する。その結果、ディテントプレート71および可動部70a(ロッド72、円錐状部材73)がパーキング位置に位置する状態となり、パークロックアーム77によってパークロックギヤ6がロックされる。
すなわち、モータ20への駆動電流の供給を停止した後に、出力軸回転角度θが条件式(2)を満足した状態で所定時間が経過したか否かを判定することにより、ディテントプレート71および可動部70aが指示されたシフト位置に位置する状態になったか否かを判定することができる。
【0060】
上記ステップS7において「No」の場合、すなわち出力軸回転角度θが条件式(2)を満足した状態で所定時間が経過しない場合、被接触部76bは指示されたシフト位置に対応する谷部に到達しておらず、ディテントプレート71および可動部70aも指示されたシフト位置に位置する状態になっていないと推定される。この場合、制御部40は、所定時間が経過するまで一定の時間間隔でステップS7の処理を繰り返す。
【0061】
一方、上記ステップS7において「Yes」の場合、すなわち出力軸回転角度θが条件式(2)を満足した状態で所定時間が経過した場合、被接触部76bは指示されたシフト位置に対応する谷部に到達し、ディテントプレート71および可動部70aも指示されたシフト位置に位置する状態になったと推定される。この場合、制御部40は、シフト位置の切替えが終了したと判断し、シフト位置の切替えが終了したことを上位制御装置200へ通知する(ステップS8)。
【0062】
以上が、制御部40によって実行されるシフト位置切替処理についての説明であるが、上記の説明から理解できるように、第2回転センサ52に故障などの異常が生じた場合には出力軸回転角度θを検出できないため、制御部40はシフト位置切替処理を実行することができない。そこで、本実施形態における制御部40は、例えば起動時にイニシャル処理を行うことにより第2回転センサ52に異常が生じたことを検知した場合に、上位制御装置200に第2回転センサ52に異常が生じたことを通知する。そして、制御部40は、上位制御装置200からパーキング位置学習指示を受信したときに、
図6に示すパーキング位置学習処理を実行する。パーキング位置学習処理とは、基準位置であるパーキング位置に対応するモータ回転角度φをパーキング位置角度として学習する処理である。
【0063】
図6は、制御部40によって実行されるパーキング位置学習処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、制御部40は、上位制御装置200からパーキング位置学習指示を受信すると、まず、モータ20の位置PID制御を開始してモータ20を回転させることにより、ディテントプレート71において第1谷部71aの周方向一端側に位置する第1側壁部71dに被接触部76bを突き当てる処理を実行する(ステップS11)。なお、以下の説明において、第1側壁部71dを「P側壁」と呼称する場合がある。
【0064】
例えば、制御部40の内部メモリには、P側壁71dに被接触部76bを突き当てるのに必要なモータ回転角度φの目標値である側壁目標角度φtwが予め格納されている。ステップS11において、制御部40は、内部メモリに格納された側壁目標角度φtwと、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φとの偏差がゼロとなる操作量をPID演算により算出し、算出した操作量に対応する駆動電流をモータ20に供給することにより、モータ20を回転させる。その結果、出力軸80及びディテントプレート71は、被接触部76bがP側壁71dに向かって移動する向きである右回りに回転する。
【0065】
なお、本実施形態において、モータ20は減速機30を介して出力軸80と接続されているため、モータ20の回転角度であるモータ回転角度φは、出力軸80及びディテントプレート71の回転角度である出力軸回転角度θと一致しない。そのため、モータ回転角度φに基づくモータ20の位置PID制御によって出力軸回転角度θを制御するには、モータ回転角度φ及びその目標値である側壁目標角度φtwを出力軸回転角度θに換算する必要がある。以下では、説明の簡略化のために、モータ回転角度φが出力軸回転角度θと一致すると仮定する。すなわち、以下の説明では、制御部40は、モータ回転角度φなどを出力軸回転角度θに換算する必要がない。
【0066】
図7の「状態E」で示されるように、ディテントプレート71が右回りに回転すると、被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面に沿ってP側壁71dに向かって転がりながら移動する。そして、ディテントプレート71が右回りに回転し始めてから所定の時間が経過すると、
図7の「状態F」で示されるように、被接触部76bがP側壁71dに突き当たり、ディテントプレート71は停止する。つまり、被接触部76bがP側壁71dに突き当たると、モータ20は回転不能状態(ロック状態)になる。
【0067】
制御部40は、モータ回転角度φに基づいてモータ20の位置PID制御を行いながら、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φに基づいて、モータ20がロック状態になったか否かを判定する(ステップS12)。例えば、制御部40は、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが変化しなくなった場合、またはモータ回転角度φの変化が急激に小さくなった場合などに、モータ20がロック状態になったと判定する。
【0068】
上記ステップS12において「No」の場合、すなわちモータ20がロック状態になっていない場合、被接触部76bはP側壁71dに突き当たっていないと推定される。この場合、制御部40は、モータ20の位置PID制御を行いながら、一定の時間間隔でステップS12の処理を繰り返す。
【0069】
一方、上記ステップS12において「Yes」の場合、すなわちモータ20がロック状態になった場合、被接触部76bはP側壁71dに突き当たったと推定される。この場合、制御部40は、被接触部76bがP側壁71dに突き当てられたときに第1回転センサ51により検出されたモータ回転角度φを側壁位置角度φwとして取得する処理を実行する(ステップS13)。
【0070】
制御部40は、上記のように側壁位置角度φwを取得すると、側壁位置角度φwを基準にしてモータ回転角度φが目標回転角度φtに相当する角度までモータ20を逆回転させる逆回転処理を実行する(ステップS14)。本実施形態において、目標回転角度φtは、P側壁71dから第1谷部71aまでの回転角度(モータ回転角度φ)の設計値φpを側壁位置角度φwから減算することで得られる値である。ステップS14において、制御部40は、目標回転角度φt(=φw-φp)と、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φとの偏差がゼロとなる操作量をPID演算により算出し、算出した操作量に対応する駆動電流をモータ20に供給することにより、モータ20を逆回転させる。その結果、出力軸80及びディテントプレート71は、被接触部76bがP側壁71dから第1谷部71aに移動する向きである左回りに回転する。
図7の「状態G」で示されるように、被接触部76bがP側壁71dに突き当たった後に、ディテントプレート71が左回りに回転すると、被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面に沿ってP側壁71dから第1谷部71aに向かって転がりながら移動する。
【0071】
制御部40は、モータ回転角度φに基づいてモータ20の位置PID制御を行いながら、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが下記条件式(3)を満足するか否かを判定する(ステップS15)。言い換えれば、ステップS15において、制御部40は、モータ回転角度φが、目標回転角度φtを基準値とし且つ±αを許容誤差とする第2公差内に収まるか否かを判定する。一例として、αの値は1°であるが、αの値は1°に限定されない。
φt-α ≦ φ ≦ φt+α …(3)
【0072】
上記ステップS15において「No」の場合、すなわち第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが条件式(3)を満足しない場合、被接触部76bは、パーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に位置しないと推定される。この場合、制御部40は、モータ20の位置PID制御を行いながら、一定の時間間隔でステップS15の処理を繰り返す。
【0073】
一方、上記ステップS15において「Yes」の場合、すなわち第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが条件式(3)を満足する場合、被接触部76bは、パーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に位置すると推定される。この場合、制御部40は、モータ回転角度φが条件式(3)を満足した状態で第2所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。言い換えれば、ステップS16において、制御部40は、被接触部76bがパーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に位置した状態で第2所定時間が経過したか否かを判定する。一例として、ステップS16における第2所定時間は10ミリ秒であるが、第2所定時間は10ミリ秒に限定されない。
【0074】
図7の「状態G」で示されるように、被接触部76bがP側壁71dに突き当たった後に、ディテントプレート71が左回りに回転し続けると、被接触部76bは、パーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に侵入する。このように、被接触部76bが、パーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に侵入したとき、すなわち第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが条件式(3)を満足したときに、制御部40は、タイムカウントを開始し、被接触部76bが第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に位置した状態で第2所定時間が経過したか否かを判定する。
【0075】
上記ステップS16において「No」の場合、すなわちモータ回転角度φが条件式(3)を満足した状態で第2所定時間が経過しない場合、制御部40は、第2所定時間が経過するまで一定の時間間隔でステップS16の処理を繰り返す。一方、上記ステップS16において「Yes」の場合、すなわちモータ回転角度φが条件式(3)を満足した状態で第2所定時間が経過した場合、制御部40は、モータ20の位置PID制御を停止することにより、モータ20への駆動電流の供給を停止する(ステップS17)。
【0076】
このように、制御部40は、逆回転処理を実行した後に、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが、第2所定時間内において目標回転角度φtを基準値とする第2公差内に収まり続けた場合に、モータ20の制御を停止する処理を実行する。また、詳細は後述するが、制御部40は、モータ20の制御を停止した後に、後述の静止判定処理を実行する。
【0077】
モータ20への駆動電流の供給が停止されると、モータ20のトルクがゼロとなるため、出力軸80及びディテントプレート71はフリー回転可能な状態となる。一方、板バネ本体部76aが、ディテントプレート71の山部71cによって上側に押されて弾性変形することにより、被接触部76bをディテントプレート71の上側の端面に押し付ける下向きの弾性力が発生する。従って、
図7の「状態H」で示されるように、被接触部76bが第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に位置しながら、ディテントプレート71がフリー回転可能な状態になると、板バネ本体部76aに生じる下向きの弾性力によりディテントプレート71が右回りに回転する。その結果、
図7の「状態I」で示されるように、被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面に沿って第1谷部71aに向かって転がりながら移動する。
【0078】
制御部40は、モータ20への駆動電流の供給を停止した後、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが下記条件式(4)を満足するか否かを判定する(ステップS18)。言い換えれば、ステップS18において、制御部40は、モータ回転角度φが、目標回転角度φtを基準値とし且つ±βを許容誤差とする第1公差内に収まるか否かを判定する。一例として、βの値は2°であるが、βの値は2°に限定されない。ただし、後述の理由により、第1公差(φt±β)は、第2公差(φt±α)よりも大きいことが好ましい。言い換えれば、第1公差の許容誤差βは、第2公差の許容誤差αより大きいことが好ましい。
φt-β ≦ φ ≦ φt+β …(4)
【0079】
上記ステップS18において「No」の場合、すなわち第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが条件式(4)を満足しない場合、被接触部76bは、パーキング位置に対応する第1谷部71aを中心とする±βの範囲内に位置しないと推定される。この場合、制御部40は、ステップS11の処理に戻って、再び被接触部76bをP側壁71dに突き当てる処理を行う。
【0080】
上記のように、モータ20への駆動電流の供給が停止されると、出力軸80及びディテントプレート71はフリー回転可能な状態となる。そのため、モータ20への駆動電流の供給が停止された後に、板バネ本体部76aに生じる下向きの弾性力によりディテントプレート71が大きく回転し、被接触部76bがパーキング位置に対応する第1谷部71aから大きく外れた位置に移動する可能性がある。そこで、モータ20への駆動電流の供給を停止した後にモータ回転角度φが条件式(4)を満足しない場合、すなわち、モータ20への駆動電流の供給が停止されたことに起因して、被接触部76bが第1谷部71aから大きく外れた位置に移動したと推定される場合には、制御部40は、被接触部76bをP側壁71dに突き当てる処理を再度実行することにより、パーキング位置の学習処理をリトライする。第1公差が第2公差よりも大きいことが好ましい理由は、モータ20への駆動電流の供給が停止されたことに起因して、被接触部76bが第1谷部71aから大きく外れた位置に移動したことを精度良く検知するためである。
【0081】
一方、上記ステップS18において「Yes」の場合、すなわち第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが条件式(4)を満足する場合、被接触部76bは、第1谷部71aを中心とする±βの範囲内に位置すると推定される。この場合、制御部40は、モータ回転角度φが条件式(4)を満足した状態で第1所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS19)。言い換えれば、ステップS19において、制御部40は、被接触部76bが第1谷部71aを中心とする±βの範囲内に位置した状態で第1所定時間が経過したか否かを判定する。一例として、ステップS19における第1所定時間は20ミリ秒であるが、第1所定時間は20ミリ秒に限定されない。ただし、第1所定時間は、第2所定時間よりも長いことが好ましい。
【0082】
図7の「状態H」で示されるように、被接触部76bが第1谷部71aを中心とする±αの範囲内に位置しながら、ディテントプレート71がフリー回転可能な状態になると、板バネ本体部76aに生じる下向きの弾性力によりディテントプレート71が右回りに回転する。その結果、
図7の「状態I」で示されるように、被接触部76bは、ディテントプレート71の上側の端面に沿って第1谷部71aに向かって転がりながら移動する。そして、被接触部76bが第1谷部71aに到達すると、被接触部76bが第1谷部71aの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられることにより、ディテントプレート71は停止する。その結果、ディテントプレート71および可動部70a(ロッド72、円錐状部材73)がパーキング位置に位置する状態となり、パークロックアーム77によってパークロックギヤ6がロックされる。
すなわち、モータ20への駆動電流の供給を停止した後に、モータ回転角度φが条件式(4)を満足した状態で第1所定時間が経過したか否かを判定することにより、ディテントプレート71および可動部70aがパーキング位置に位置する状態になったか否かを判定することができる。また、第1所定時間が第2所定時間よりも長いことにより、被接触部76bが第1谷部71aに移動する時間が十分に確保されるため、被接触部76bが第1谷部71aに到達し、ディテントプレート71および可動部70aがパーキング位置に位置する状態になったことを、より精度良く判定できる。
【0083】
上記ステップS19において「No」の場合、すなわちモータ回転角度φが条件式(4)を満足した状態で第1所定時間が経過しない場合、被接触部76bはパーキング位置に対応する第1谷部71aに到達しておらず、ディテントプレート71および可動部70aもパーキング位置に位置する状態になっていないと推定される。この場合、制御部40は、第1所定時間が経過するまで一定の時間間隔でステップS19の処理を繰り返す。
【0084】
一方、上記ステップS19において「Yes」の場合、すなわちモータ回転角度φが条件式(4)を満足した状態で第1所定時間が経過した場合、被接触部76bはパーキング位置に対応する第1谷部71aに到達し、ディテントプレート71および可動部70aもパーキング位置に位置する状態になったと推定される。この場合、制御部40は、被接触部76bがパーキング位置で静止していると判定し、このときに第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φをパーキング位置角度として取得(学習)する(ステップS20)。このように、制御部40は、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが、第1所定時間内において目標回転角度φtを基準値とする第1公差内に収まり続けた場合に、被接触部76bがパーキング位置で静止していると判定する静止判定処理を実行する。
【0085】
上記のように、制御部40は、第2回転センサ52に異常が生じた場合にパーキング位置学習処理を実行することにより、基準位置であるパーキング位置に対応するモータ回転角度φをパーキング位置角度として学習する。制御部40は、上位制御装置200からシフト位置切替指示を受信した場合、パーキング位置学習処理によって得られたパーキング位置角度と、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φとに基づいてモータ20の位置PID制御を行うことにより、シフト位置の切替えを行う。モータ回転角度φが出力軸回転角度θと一致しない場合には、パーキング位置角度及びモータ回転角度φを出力軸回転角度θに換算する処理を行えばよい。
【0086】
以上説明したように、本実施形態において、制御部40は、第2回転センサ52に異常が生じた場合、モータ20を回転させることにより、ディテントプレート71のP側壁71dに被接触部76bを突き当てる処理と、被接触部76bがP側壁71dに突き当てられたときに第1回転センサ51により検出されたモータ回転角度φを側壁位置角度φwとして取得する処理と、側壁位置角度φwを基準にしてモータ回転角度φが目標回転角度φtに相当する角度までモータ20を逆回転させる逆回転処理と、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが、第1所定時間内において目標回転角度φtを基準値とする第1公差内に収まり続けた場合に、被接触部76bがパーキング位置で静止していると判定する静止判定処理と、を実行する。
本実施形態によれば、出力軸回転角度θを検出する第2回転センサ52に異常が生じた場合でも、第1回転センサ51によって検出されるモータ回転角度φに基づいて、ディテントプレート71に設けられた複数の谷部のうち、パーキング位置に対応する第1谷部において被接触部76bが静止していることを精度良く判定できる。被接触部76bがパーキング位置で静止していると判定したときに第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φをパーキング位置角度として学習することにより、基準位置であるパーキング位置に対応するパーキング位置角度の学習精度を向上できる。
【0087】
本実施形態において、制御部40は、逆回転処理を実行した後に、第1回転センサ51により検出されるモータ回転角度φが、第2所定時間内において目標回転角度φtを基準値とする第2公差内に収まり続けた場合にモータ20の制御を停止する処理を実行し、モータ20の制御を停止した後に上記の静止判定処理を実行する。
これにより、2段階の判定によって被接触部76bがパーキング位置で静止していると判定するので、パーキング位置に対応する第1谷部において被接触部76bが静止していることをより精度良く判定できる。
【0088】
本実施形態において、第1公差(φt±β)は、第2公差(φt±α)よりも大きい。
これにより、モータ20の制御が停止されてモータ20への駆動電流の供給が停止されたことに起因して、被接触部76bがパーキング位置に対応する第1谷部71aから大きく外れた位置に移動したことを精度良く検知することができる。
【0089】
本実施形態において、第1所定時間は、第2所定時間よりも長い。
これにより、第1回転センサ51によって検出されるモータ回転角度φに基づいて、ディテントプレート71に設けられた複数の谷部のうち、パーキング位置に対応する第1谷部71aにおいて被接触部76bが静止していることを、より精度良く判定できる。
【0090】
本実施形態において、目標回転角度φtは、P側壁71dから第1谷部71aまでの回転角度(モータ回転角度φ)の設計値φpを側壁位置角度φwから減算することで得られる値である。
これにより、第1回転センサ51によって検出されるモータ回転角度φに基づいて、ディテントプレート71に設けられた複数の谷部のうち、パーキング位置に対応する第1谷部71aにおいて被接触部76bが静止していることを、より精度良く判定できる。
【0091】
本発明は上記実施形態に限定されず、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0092】
1…駆動装置、2…ハウジング、3…駆動用モータ、4…減速装置、5…差動装置、6…パークロックギヤ、10…モータユニット、20…モータ、30…減速機、40…制御部、51…第1回転センサ、52…第2回転センサ、70…パーキング切替機構、71…ディテントプレート、71a…第1谷部、71b…第2谷部、71d…P側壁(第1側壁部)、76…板バネ部材(弾性部材)、76b…被接触部、80…出力軸、100…電動アクチュエータ