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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028866
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20230224BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
H02K1/27 501M
H02K1/27 501A
H02K21/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134815
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳明
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小林 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】桂 健志郎
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621BB07
5H621BB10
5H621GA01
5H621GA04
5H621HH01
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA13
5H622CB02
5H622DD05
5H622PP03
5H622QB02
(57)【要約】
【課題】
リラクタンストルクを用いて出力の向上が図れる回転機械を提供すること。
【解決手段】
回転機械1は、ステータ2の内側に表面磁石型のロータ3を回転可能に配置した回転機械であって、ロータ3に設けられロータ3の表面に異なる磁極を周方向へ交互に形成してなる第一磁石部321と、ロータ3に設けられ第一磁石部321と透磁率の異なる磁石により構成されロータ3の径方向に磁界が通りやすい経路Pを形成するための第二磁石部322を備えて構成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの内側に表面磁石型のロータを回転可能に配置した回転機械において、
前記ロータに設けられ、前記ロータの表面部に異なる磁極を周方向へ交互に形成してなる第一磁石部と、
前記ロータに設けられ、前記第一磁石部と透磁率の異なる磁石により構成され、前記ロータの径方向に磁界が通りやすい経路を形成するための第二磁石部と、
を備える回転機械。
【請求項2】
前記第二磁石部は、前記第一磁石部より透磁率の低い磁石により構成され、前記第一磁石部に対し周方向に隣接して設けられて前記第一磁石部の形成領域に磁界が通りやすい経路を形成する、
請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記第一磁石部は、ボンド磁石により形成され、
前記第二磁石部は、焼結磁石により形成され、前記第一磁石部より透磁率が低い、
請求項1又は2に記載の回転機械。
【請求項4】
ステータの内側に表面磁石型のロータを回転可能に配置した回転機械において、
前記ロータは、前記ロータの表面部に異なる磁極を周方向へ交互に形成してなる第一磁石部と、前記第一磁石部より透磁率の低い磁石により構成される第二磁石部と、を備え、
前記第一磁石部は、外周面において前記ロータの回転軸線を挟んで対称に位置する第一円弧部と第二円弧部を有し、
前記第一円弧部と前記第二円弧部の間に形成される帯状領域に前記第二磁石部が形成されていない、
回転機械。
【請求項5】
前記第二磁石部は、前記帯状領域を挟んだ両側の領域に形成されている、
請求項4に記載の回転機械。
【請求項6】
前記第二磁石部は、前記帯状領域を挟んだ両側の領域において複数形成されている、
請求項4又は5に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機械として、例えば、特開2019-161933号公報に記載されるように、表面磁石型のロータを備えるブラシレスモータが知られている。このロータは回転軸の周囲に複数のマグネットを有し、マグネットは異なる磁極のものを周方向に交互に配置して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-161933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような表面磁石型のロータを備える回転機械にあっては、リラクタンストルクを用いて出力を向上させることが難しい。すなわち、表面磁石型のロータは、永久磁石が周面に沿って配置されているため、リラクタンストルクが生じにくく、主に磁石トルクによって回転が行われる。
【0005】
そこで、リラクタンストルクを用いて出力の向上が図れる回転機械の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る回転機械は、ステータの内側に表面磁石型のロータを回転可能に配置した回転機械において、ロータに設けられロータの表面に異なる磁極を周方向へ交互に形成してなる第一磁石部と、ロータに設けられ第一磁石部と透磁率の異なる磁石により構成され、ロータの径方向に磁界が通りやすい経路を形成するための第二磁石部を備えて構成されている。この回転機械によれば、第二磁石部によってロータの径方向において磁界の通りやすい経路が形成される。このため、回転機械の作動時において、第一磁石部によってマグネットトルクを得られると共に、磁界の通りやすい経路の形成によってリラクタンストルクを得ることができる。従って、リラクタンストルクを用いて出力の向上を図ることができる。
【0007】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、第二磁石部は、第一磁石部より透磁率の低い磁石により構成され、第一磁石部に対し周方向に隣接して設けられて第一磁石部の形成領域に磁界が通りやすい経路を形成してもよい。この場合、第二磁石部が、第一磁石部より透磁率の低い磁石により構成され第一磁石部に対し周方向に隣接して設けられることにより、第一磁石部の形成領域に磁界が通りやすい経路を形成することができる。
【0008】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、第一磁石部は、ボンド磁石により形成され、第二磁石部は、焼結磁石により形成され第一磁石部より透磁率が低くてもよい。
【0009】
本開示の一態様に係る回転機械は、ステータの内側に表面磁石型のロータを回転可能に配置した回転機械において、ロータは、ロータの外周部に異なる磁極を周方向へ交互に形成してなる第一磁石部と、第一磁石部より透磁率の低い磁石により構成される第二磁石部とを備え、第一磁石部は外周面においてロータの回転軸線を挟んで対称に位置する第一円弧部と第二円弧部を有し、第一円弧部と第二円弧部の間に形成される帯状領域に第二磁石部が形成されていないように構成されている。この回転機械によれば、ロータが第一磁石部と透磁率の低い第二磁石部を備え、第一磁石部が外周面においてロータの回転軸線を挟んで対称な位置に第一円弧部と第二円弧部を有し、第一円弧部と第二円弧部の間に形成される帯状領域に第二磁石部が形成されていないように構成されている。このため、帯状領域は、ロータにおいて磁界が通りやすい経路となる。従って、回転機械の作動時において、第一磁石部によってマグネットトルクを得られると共に、磁界の通りやすい経路の形成によってリラクタンストルクを得ることができる。これにより、リラクタンストルクを用いて出力の向上を図ることができる。
【0010】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、第二磁石部は、帯状領域を挟んだ両側の領域に形成されていてもよい。この場合、第二磁石部が帯状領域を挟んだ両側の領域に形成されているため、帯状領域がロータにおいて磁界が通りやすい経路となる。従って、回転機械の作動時において、第一磁石部によってマグネットトルクを得られると共に、磁界の通りやすい経路の形成によってリラクタンストルクを得ることができる。これにより、リラクタンストルクを用いて出力の向上を図ることができる。
【0011】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、第二磁石部は、帯状領域を挟んだ両側の領域において複数形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る発明によれば、リラクタンストルクを用いて出力の向上が図れる回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態に係る回転機械の概要を示す断面図である。
図2図1の回転機械のロータの断面図である。
図3図2のロータの斜視図である。
図4図1の回転機械の電気的構成の概要を示すブロック図である。
図5図1の回転機械の動作を示すフローチャートである。
図6図1の回転機械の変形例を示す図である。
図7図1の回転機械の変形例を示す図である。
図8図1の回転機械の変形例を示す図である。
図9図1の回転機械の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に係る回転機械の構成概要を示す断面図である。図2は、図1の回転機械のロータの断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る回転機械1は、ステータ2の内側に表面磁石型のロータ3を回転可能に配置して構成される。回転機械1は、例えば電動機であり、電気エネルギの供給によりロータ3を回転させて機械的エネルギを発生させる。ステータ2は、回転軸線Aを中心に回転する磁界を発生させ、ロータ3を回転させる。ステータ2は、ハウジング4に収容されており、ハウジング4に対して回転及び移動しないように固定されている。ロータ3は、ハウジング4に設けられるベアリングなどにより軸受けされ、回転軸線Aを中心に回転可能に取り付けられている。
【0017】
ステータ2は、例えば、コア21及びコイル22により構成される。コア21は、磁束の通路となる鉄心であり、ロータ3の外周に沿って等間隔で形成される複数のティース21aを形成している。例えば、コア21は、内側にロータ3を配置可能な円筒部21bを有し、円筒部21bの内面から回転軸線Aに向けて突出するティース21aを複数形成している。ティース21aは、コイル22を巻き付けるための部位である。ティース21aの先端は、幅広に形成されている。例えば、ティース21aは、周方向に沿って三つ形成される。
【0018】
コア21は、例えば、回転軸線Aの方向に複数の鋼板を積層させて形成される。鋼板を積層させてコア21を構成することにより、渦電流の発生を抑制でき、鉄損の低減を図ることができる。コイル22は、電流を流すための巻線であって、ティース21aに巻き付けられ、電流の流れによりロータ3に対し磁界を発生させる。例えば、磁界は、ロータ3の径方向の成分を有するように形成される。また、複数のコイル22に対し位相をずらして電流を流すことにより、回転軸線Aを中心に回転する磁界を形成することができる。
【0019】
ロータ3は、回転軸線Aに沿って配置される軸部材31と、軸部材31の外周側に設けられる磁石部32を備えている。軸部材31は、棒状の部材であって、回転機械1の出力軸として機能する。軸部材31は、例えば金属などの磁性体により形成される。また、軸部材31は、磁石部32と比べて透磁率の高い材料(例えば、強磁性体材料)を用いて形成されている。
【0020】
図2に示すように、磁石部32は、第一磁石部321及び第二磁石部322を有している。第一磁石部321は、ロータ3の表面部において周方向に向けて異なる磁極を交互に配置して構成される。つまり、第一磁石部321は、ロータ3の外周に沿ってN極とS極を交互に配置している。例えば、図2では、第一磁石部321は、d軸の向きの外周位置にN極、d軸と反対の向きの外周位置にS極を形成している。ロータ3は、表面に二つの磁極を有しており、回転軸線A(回転中心)からN極へ向けた方向がd軸となり、回転軸線AからN極とS極の間の方向がq軸となる。つまり、d軸とq軸のなす角が90度となっている。第一磁石部321は、ロータ3の周方向に異なる磁極を交互に配置することにより、回転機械1の作動時にマグネットトルクを発生させる。なお、図2では、ロータ3の回転方向Rが反時計回りである場合を示している。また、図2では、説明の便宜上、軸部材31の断面を示すハッチングの図示を省略している。
【0021】
第二磁石部322は、第一磁石部321と透磁率の異なる磁石により構成され、ロータ3の径方向に磁界が通りやすい経路Pを形成する。例えば、第二磁石部322は、第一磁石部321により透磁率の低い磁石により構成される。そして、第二磁石部322は、周方向へ第一磁石部321に隣接するように設けられる。これにより、第二磁石部322は、第一磁石部321の形成領域に磁界が通りやすい経路Pを形成させる。図2では、ロータ3の周方向へ第一磁石部321と第二磁石部322が交互に形成されている。つまり、第一磁石部321が軸部材31を挟んで軸部材31の両側に形成され、第二磁石部322が軸部材31を挟んで軸部材31の両側に形成されている。このため、第一磁石部321が形成される領域に沿って磁界が通りやすい経路Pが形成される。詳述すると、透磁率の異なる第一磁石部321及び第二磁石部322を設けることにより、ロータ3の径方向において、磁気抵抗の差が生じて、磁界が通りやすい経路Pが形成される。図2では、d軸に沿って磁界が通りやすい経路Pが形成されている。このようなロータ3に対し、d軸とq軸の間に磁界Bを形成することにより、マグネットトルクとリラクタンストルクを得ることができ、回転機械1の出力を高めることができる。
【0022】
第一磁石部321は、外周面においてロータ3の回転軸線Aを挟んで対称の位置に第一円弧部321aと第二円弧部321bを有している。第一円弧部321a及び第二円弧部321bは、第一磁石部321の外周面において、回転軸線Aを挟んで対称の位置に形成される円弧状の部位である。そして、第一円弧部321aと第二円弧部321bの間に帯状領域321cが形成される。つまり、帯状領域321cは、第一円弧部321aと第二円弧部321bの間の第一磁石部321及び軸部材31に形成されている。この帯状領域321cには、第二磁石部322が形成されていない。第二磁石部322は、帯状領域321cを挟んだ両側の領域に形成されている。このため、帯状領域321cは、ロータ3の他の領域と比べて径方向に磁界が通りやすい領域となり、この帯状領域321c内に磁界が通りやすい経路Pが形成される。帯状領域321cは、例えばd軸とq軸の間の方向に向けて形成される。このとき、帯状領域321cは、d軸又はq軸と同じ方向に形成されてもよい。図2では、帯状領域321cは、d軸と同じ方向に向けて形成されている。このように、ロータ3において、帯状領域321c及び磁界が通りやすい経路Pが形成されることにより、回転機械の作動時において、リラクタンストルクを得ることができる。これにより、リラクタンストルクを用いて回転機械1の出力の向上を図ることができる。
【0023】
例えば、第一磁石部321がボンド磁石により形成され、第二磁石部322が焼結磁石により形成される。これにより、第一磁石部321と第二磁石部322を異なる透磁率とすることができ、第一磁石部321を第二磁石部322により高い透磁率とすることができる。ボンド磁石は、ゴム磁石またはプラスチック磁石とも称される。第一磁石部321及び第二磁石部322は、着磁されたものをロータ3に組み込んでもよいし、未着磁のものを組み込んだ後に着磁して構成してもよい。なお、第一磁石部321と第二磁石部322を異なる透磁率とすることができれば、ボンド磁石及び焼結磁石以外の磁石を用いてもよい。
【0024】
ロータ3の外周には、スリーブ33が取り付けられている。スリーブ33は、非磁性材料からなる円筒形の部材である。スリーブ33は、磁石部32の外周に取り付けられることにより、磁石部32を拘束する。つまり、スリーブ33は、ロータ3の回転時に磁石部32が軸部材31から外れることを防止している。
【0025】
図3は、ロータ3の斜視図である。図3に示すように、ロータ3の軸部材31は、回転軸線Aに沿って延びており、磁石部32から突出して設けられている。軸部材31の突出した部分は、ハウジング4に対し軸受けされる。また、軸部材31でハウジング4から外部へ延出する部分は、回転機械1の出力軸として用いられる。
【0026】
図4は、回転機械1の電気的構成の概要を示すブロック図である。図4に示すように、ステータ2の三つのコイル22は、例えばY結線(星形結線)により接続されている。つまり、各コイル22の一端は互いに接続され、他端はインバータ91に接続されている。このコイル22は、順次電流を流されることにより、ロータ3に対し回転する磁界を与える。インバータ91は、直流電圧を交流電圧に変換する機器であり、例えば三相交流電圧をコイル22に印加する。インバータ91としては、例えば六つのパワートランジスタを用いたブリッジ回路が用いられる。インバータ91は、制御器92の制御信号を受けて作動し、コイル22に電流を供給する。制御器92は、外部からの作動指令に応じてインバータ91に対し制御信号を出力する。制御器92は、回転機械1の制御を行う電子制御機器であり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータにより構成される。インバータ91及び制御器92は、ステータ2及びロータ3を収容するハウジング4と一体に構成してもよいし、ハウジング4の外部に設置されていてもよい。また、インバータ91は、制御器92の内部に設けられていてもよい。
【0027】
回転機械1には、ロータ3の回転状態を検出するセンサ5を備えている。センサ5としては、例えばホール素子などの磁気センサやロータリエンコーダなどが用いられる。センサ5は制御器92に接続され、センサ5の出力信号は制御器92に入力される。制御器92は、センサ5の出力信号に基づいて、ロータ3及び軸部材31の回転位置及び回転速度の一部又は全部を含む回転状態を認識する。なお、本実施形態では、センサ5を用いているが、センサレス制御などによってロータ3の回転位置を検出してもよく、センサ5の設置を省略する場合もある。
【0028】
次に、本実施形態に係る回転機械1の動作について説明する。
【0029】
図5は、回転機械1の動作を示すフローチャートであり、回転機械1の作動制御処理を示している。図5の制御処理は、例えば制御器92により実行され、この制御処理により回転機械1が作動する。まず、ステップS10(以下、単に「S10」という。S10以降のステップについても同様とする。)に示すように、指令信号の読み込み処理が行われる。この指令信号の読み込み処理は、制御器92に対し入力される指令信号を読み込む処理である。指令信号は、回転機械1の作動についての指令信号であり、例えば回転機械1の回転速度の信号が該当する。この指令信号は、例えば外部の機器やインターフェースなどから制御器92に入力される。
【0030】
S12に処理が移行し、回転位置の検出処理が行われる。この検出処理は、ロータ3の回転位置を検出する処理である。例えば、制御器92は、センサ5の出力信号に基づいてロータ3の磁極の位置を検出する。なお、この回転位置の検出処理において、センサ5を用いずにロータ3の回転位置を検出してもよい。例えば、制御器92は、各コイル22の誘起電圧検出を行ってロータ3の回転位置を検出してもよい。次に、S14に処理が移行し、制御信号の生成処理が行われる。制御信号の生成処理は、インバータ91へ出力する制御信号を生成する処理である。制御信号の生成は、例えば、S10の指令信号及びS12の検出結果を基づいて行われる。具体的には、ロータ3の回転位置に対し磁界Bが先行するように制御信号が生成される。つまり、制御信号は、図2に示すように、磁界Bがロータ3のd軸方向とq軸方向の間に向けて形成されるように、生成される。このように制御信号が生成されることにより、リラクタンストルクを生じさせてロータ3を回転させることができる。
【0031】
そして、図5のS16に処理が移行し、信号出力処理が行われる。信号出力処理は、S14にて生成された制御信号を出力する処理である。例えば、制御器92は、S14にて生成された制御信号をインバータ91に対して出力する。これにより、インバータ91は、制御信号に応じた駆動電流を生成し、回転機械1へ駆動電流を出力する。回転機械1のステータ2には駆動電流が入力され、ステータ2のコイル22に電流が流れる。このため、d軸方向に対しロータ3の回転方向Rへ先行する磁界Bが形成され、ロータ3及び軸部材31が回転する。このとき、図2に示すように、磁界Bがロータ3のd軸方向とq軸方向の間の向きに形成される。このように磁界Bが形成されることにより、マグネットトルク及びリラクタンストルクを用いてロータ3を回転させることができる。すなわち、第一磁石部321の磁力によってマグネットトルクを得られると共に、磁界の通りやすい経路Pの形成によってリラクタンストルクを得ることができる。従って、リラクタンストルクを用いて出力の向上を図ることができる。
【0032】
そして、図5のS18に処理が移行し、回転機械1の作動を終了するか否かが判定される。例えば、制御器92に対し作動終了すべき信号が入力されていない場合、回転機械1の作動を終了しないと判定され、S10に処理が戻る。そして、S10~S16の処理が継続して実行される。これに対し、例えば、制御器92に対し作動終了すべき信号が入力された場合、回転機械1の作動を終了すると判定され、図5の一連の制御処理を終了する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る回転機械1によれば、第二磁石部322によってロータ3の径方向において磁界の通りやすい経路Pが形成される。このため、回転機械1の作動時において、第一磁石部321によってマグネットトルクを得られると共に、磁界の通りやすい経路Pの形成によってリラクタンストルクを得ることができる。従って、リラクタンストルクを用いて回転機械1の出力の向上を図ることができる。
【0034】
一般に、表面磁石型のPMモータでは、マグネットトルクによって出力を得ており、リラクタンストルクを用いることが難しい。それに対し、本実施形態に係る回転機械1では、ロータ3に透磁率の異なる第一磁石部321と第二磁石部322を設けることにより、マグネットトルクによる出力を確保しつつ、リラクタンストルクを生じさせることができる。これにより、回転機械1の出力向上を図ることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る回転機械1によれば、第二磁石部322が、第一磁石部321より透磁率の低い磁石により構成され、第一磁石部321に対し周方向に隣接して設けられている。このため、ロータ3の周方向において、第一磁石部321の形成領域に磁界が通りやすい経路Pを形成することができる。従って、回転機械1の作動時にリラクタンストルクを発生させることができ、回転機械1の出力向上を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る回転機械1によれば、ロータ3が第一磁石部321と透磁率の低い第二磁石部322を備え、第一磁石部321が外周面においてロータ3の回転軸線Aを挟んで対称な位置に第一円弧部321aと第二円弧部321bを有し、第一円弧部321aと第二円弧部321bの間に形成される帯状領域321cに第二磁石部322が形成されていないように構成される。このため、帯状領域321cは、ロータ3において磁界が通りやすい経路Pとなる。従って、回転機械1の作動時において、第一磁石部321によってマグネットトルクを得られると共に、磁界の通りやすい経路Pの形成によってリラクタンストルクを得ることができる。これにより、表面磁石型のロータ3を備えていても、リラクタンストルクを用いて出力の向上を図ることができる。
【0037】
なお、以上のように、本開示の実施形態に係る回転機械1ついて説明したが、本開示の回転機械は、上述した実施形態に回転機械1に限定されるものではない。本開示の回転機械は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形態様で実施することができる。
【0038】
例えば、上述した実施形態に係る回転機械1では、ロータ3の磁石部32を周方向に分割して第一磁石部321と第二磁石部322を交互に配列しているが、第二磁石部322によってロータ3の径方向において磁界の通りやすい経路Pを形成できれば、第一磁石部321と第二磁石部322の形成態様は、そのような態様でなくてもよい。
【0039】
具体的には、図6に示すように、ロータ3aにおいて、磁石部32をd軸の方向に沿って分割して第一磁石部321及び第二磁石部322を配列してもよい。すなわち、q軸と平行し軸部材31と接する二つの線分を境界として、その境界の間に第一磁石部321を形成し、この第一磁石部321のN極側とS極側にそれぞれ第二磁石部322を形成してもよい。この場合、q軸と平行する第一磁石部321及び軸部材31の形成領域が帯状領域321cとなり、この帯状領域321c内に磁界の通りやすい経路Pが形成される。q軸より位相の進んだ角度で磁界Bを形成することにより、マグネットトルク及びリラクタンストルクを得ることができ、回転機械1の出力向上を図ることができる。なお、図6では、説明の便宜上、軸部材31の断面を示すハッチングの図示を省略している。図7図9についても同様にハッチングを省略している。
【0040】
また、図7に示すように、ロータ3bにおいて、磁石部32の全体に第一磁石部321を形成し、その第一磁石部321の形成領域の中に複数の第二磁石部322を形成してもよい。例えば、断面円形の第二磁石部322が周方向に四つ配列される。第二磁石部322は、第一磁石部321の径方向の長さより短い直径で形成される。図7において、第二磁石部322の上部がN極、下部がS極とされる。この場合、第二磁石部322と第二磁石部322の間を通る径方向に帯状領域321cが形成され、この帯状領域321c内に磁界の通りやすい経路Pが形成される。帯状領域321cを挟んだ両側の領域には、複数の第二磁石部322が形成されている。この経路Pに対し位相の進んだ角度で磁界Bを形成することにより、マグネットトルク及びリラクタンストルクを得ることができ、回転機械1の出力向上を図ることができる。なお、図7では、第二磁石部322を四つ形成する場合を示したが、それ以外の数の第二磁石部322を形成してもよい。
【0041】
また、図8に示すように、ロータ3cにおいて、磁石部32の全体に第一磁石部321を形成し、その第一磁石部321の形成領域の中に複数の第二磁石部322を形成してもよい。例えば、断面矩形の第二磁石部322が周方向に四つ配列される。第二磁石部322は、d軸又はq軸と平行な四辺を有する断面形状とされ、周方向の辺より径方向の辺を短くした長方形の断面で形成される。図8において、第二磁石部322の上部がN極、下部がS極とされる。この場合、第二磁石部322と第二磁石部322の間を通る径方向に帯状領域321cが形成され、この帯状領域321c内に磁界の通りやすい経路Pが形成される。帯状領域321cを挟んだ両側の領域には、複数の第二磁石部322が形成されている。この経路Pに対し位相の進んだ角度で磁界Bを形成することにより、マグネットトルク及びリラクタンストルクを得ることができ、回転機械1の出力向上を図ることができる。なお、図8では、第二磁石部322を四つ形成する場合を示したが、それ以外の数の第二磁石部322を形成してもよい。
【0042】
また、図9に示すように、ロータ3dにおいて、磁石部32の全体に第一磁石部321を形成し、その第一磁石部321の形成領域の中に複数の第二磁石部322を形成してもよい。例えば、断面矩形の第二磁石部322が周方向に八つ配列される。第二磁石部322は、周方向の辺より径方向の辺を短くした長方形の断面で形成され、二つ一組として四組設けられている。つまり、一組の第二磁石部322は、向き合う短辺を回転軸線Aに近づけるように互いの長辺をロータ3dの中心側へ傾けて形成されている。図9において、第二磁石部322の上部がN極、下部がS極とされる。この場合、一組の第二磁石部322と隣接する他組の第二磁石部322の間を通る径方向に帯状領域321cが形成され、この帯状領域321c内に磁界の通りやすい経路Pが形成される。帯状領域321cを挟んだ両側の領域には、複数の第二磁石部322が形成されている。この経路Pに対し位相の進んだ角度で磁界Bを形成することにより、マグネットトルク及びリラクタンストルクを得ることができ、回転機械1の出力向上を図ることができる。
【0043】
また、上述した各実施形態においては、ステータ2が三つのティース21aを形成したステータ2を用いる回転機械について説明したが、三つ以外の数のティースを形成したステータを用いた回転機械であってもよい。
【0044】
また、ロータ3として、二極タイプ以外のタイプのものを用いてもよい。例えば、四極以上のタイプのロータを備えた回転機械であってもよい。
【0045】
また、上述した各実施形態においては、ロータ3としてスリーブ33を備えたものを用いているが、スリーブ33を備えていないロータを用いてもよい。
【0046】
また、上述した各実施形態においては、回転機械を電動機に適用した場合について説明したが、回転機械を他の機器に適用してもよい。例えば、回転機械を発電機又はモータジェネレータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 回転機械
2 ステータ
3 ロータ
4 ハウジング
21 コア
21a ティース
21b 円筒部
22 コイル
31 軸部材
32 磁石部
33 スリーブ
321 第一磁石部
321a 第一円弧部
321b 第二円弧部
321c 帯状領域
322 第二磁石部
A 回転軸線
B 磁界
P 経路
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9