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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028875
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 5/06 20060101AFI20230224BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B23Q5/06
B23B19/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134832
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田澤 好樹
(72)【発明者】
【氏名】志和木 昌輝
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】工具部の径に対する工具部の突き出し長さの比が大きい場合であっても、加工を安定的に行う。
【解決手段】加工装置1は、移動可能な基部11及び前記基部11に液体を供給する液体供給部15を有する装置本体10と、前記基部11に接続され、外方に開口する取付孔14を有するチャック部13と、前記チャック部13に着脱可能に装着される加工工具20Aと、を備え、前記加工工具20Aは、前記取付孔14に嵌め込まれて保持されるシリンダ21Aと、前記シリンダ21A内に配置され、前記基部11を介して前記液体供給部15から導入される前記液体によって中心軸O回りに回転する回転体232を有する駆動部23と、前記シリンダ21A内から外方に向かって前記中心軸Oに沿って突出し、前記回転体232と一体に回転する回転軸25と、前記回転軸25の先端に接続された工具部30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な基部及び前記基部に液体を供給する液体供給部を有する装置本体と、
前記基部に接続され、外方に開口する取付孔を有するチャック部と、
前記チャック部に着脱可能に装着される加工工具と、を備え、
前記加工工具は、
前記取付孔に嵌め込まれて保持されるシリンダと、
前記シリンダ内に配置され、前記基部を介して前記液体供給部から導入される前記液体によって中心軸回りに回転する回転体を有する駆動部と、
前記シリンダ内から外方に向かって前記中心軸に沿って突出し、前記回転体と一体に回転する回転軸と、
前記回転軸の先端に接続された工具部と、を備える加工装置。
【請求項2】
前記シリンダは、前記液体供給部に接続され、前記駆動部に前記液体を供給する液体供給路を有し、
前記液体供給路は、前記回転体に対して、前記中心軸に沿う流れ方向に前記液体を供給する請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記シリンダは、前記駆動部を経た前記液体を前記シリンダの外部に排出する液体排出路を有する請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
一端が前記シリンダに接続されて前記中心軸に沿って延び、前記回転軸が挿入される外筒挿通孔を有する外筒をさらに備え、
前記外筒は、前記シリンダに対して回転不能な状態で接続されている請求項1から3の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記外筒の内周面と前記回転軸の外周面との間に配置され、前記回転軸を前記中心軸回りに前記シリンダに対して回転自在に支持する軸受をさらに備える請求項4に記載の加工装置。
【請求項6】
前記装置本体は、切削加工が加工な機械であり、
前記液体供給部は、前記液体として、前記切削加工の際に加工対象物に供給される圧縮された潤滑液を供給する請求項1から5の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の加工装置を用いた加工方法であって、
前記チャック部に前記加工工具を装着する工程と、
前記液体供給部から前記駆動部に前記液体を供給し、前記回転体と一体に前記回転軸を回転させる工程と、
前記工具部で加工対象物を加工する工程と、を含む加工方法。
【請求項8】
前記加工対象物を加工する工程では、前記加工対象物としてインペラを製造する請求項7に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸やロボットアームの先端部に装着した工具により、加工対象物(ワーク)に切削や研磨等の所定の加工を施すことが行われている。加工に用いられる工具は、加工の種類や、加工対象物の種類等に応じた適切なものが選択される。例えば、特許文献1には、工作機械の主軸に対し、任意の工具(組付け工具)が着脱可能に装着される構成が開示されている。このような構成では、加工の種類や、加工対象物の種類等に応じて選択された工具を、主軸に装着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-187677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、一般的な工作機械では、工具の基端部が、回転する主軸に保持されている。このため、加工対象物と接触して加工を行う工具先端部は、主軸から工具の中心軸方向に離間した位置に配置される。主軸から工具先端部までの工具の突き出し長さが大きくなると、主軸と共に工具を中心軸回りに回転させながら加工を行った場合に、工具先端部で、中心軸方向に対して交差する方向の振動(振れ)が大きくなる。この振動は、回転する主軸と工具先端部との距離が離れるほどに、大きくなる。このため、工具の径(D)に対する工具の突き出し長さ(L)の比(L/D)を、許容可能な振動の大きさに応じて一定以下に抑える必要がある。
【0005】
その結果、例えば、狭隘部等の狭い加工箇所が主軸から離れた位置にあると、加工が困難となる場合がある。このような場合、放電加工やレーザー加工等の他の加工方法が用いられることもあるが、これらの加工方法は、コストが高くなってしまったり、加工精度が低下してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、工具部の径に対する工具部の突き出し長さの比が大きい場合であっても、加工を安定的に行うことができることができる加工装置及び加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る加工装置は、移動可能な基部及び前記基部に液体を供給する液体供給部を有する装置本体と、前記基部に接続され、外方に開口する取付孔を有するチャック部と、前記チャック部に着脱可能に装着される加工工具と、を備え、前記加工工具は、前記取付孔に嵌め込まれて保持されるシリンダと、前記シリンダ内に配置され、前記基部を介して前記液体供給部から導入される前記液体によって中心軸回りに回転する回転体を有する駆動部と、前記シリンダ内から外方に向かって前記中心軸に沿って突出し、前記回転体と一体に回転する回転軸と、前記回転軸の先端に接続された工具部と、を備える。
【0008】
本開示に係る加工方法は、上記したような加工装置を用いた加工方法であって、前記チャック部に前記加工工具を装着する工程と、前記液体供給部から前記駆動部に前記液体を供給し、前記回転体と一体に前記回転軸を回転させる工程と、前記工具部で加工対象物を加工する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の加工装置及ぶ加工方法によれば、工具部の径に対する工具部の突き出し長さの比が大きい場合であっても、加工を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る加工装置の概略構成を示す断面図である。
図2】上記加工装置を構成する装置本体を示す断面図である。
図3】上記加工装置を構成する加工工具を示す断面図である。
図4】本実施形態に係る加工方法の手順を示すフローチャートである。
図5】本実施形態の変形例に係る加工装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示による加工装置、加工方法を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
(加工装置及び装置本体の構成)
加工装置1は、加工対象物Wを加工して製造する装置である。本実施形態のおける加工対象物Wは、例えば、インペラである。加工装置1は、インペラの内部に形成された流路(インペラ流路)を加工する。加工対象物Wに対する加工としては、例えば、切削、研削、仕上加工(研磨)、穴あけ、バリ取りなどが挙げられる。図1に示すように、加工装置1は、装置本体10と、チャック部13と、加工工具20Aと、を備えている。本実施形態において、装置本体10は、例えばフライス等での切削加工が加工な機械であるNC工作機械である。なお、装置本体10は、オートツールチェンジャーが付いたNC工作機械であるマシニングセンタであってもよい。図1及び図2に示すように、装置本体10は、筐体100と、基部11と、液体供給部15と、を有している。
【0013】
基部11は、NC工作機械である装置本体10の主軸である。基部11は、モータ等の電気を利用した駆動源(図示なし)によって、筐体100に対して中心軸O周りに回転駆動可能に構成されている。また、基部11は、地面等の設置面に固定されている筐体100に対して、任意の位置に移動可能されている。
【0014】
液体供給部15は、装置本体10の外部から導入した液体を、加工工具20Aに圧縮して供給する。本実施形態の液体供給部15は、液体として、切削加工の際に加工対象物Wに供給される圧縮された潤滑液を供給する。潤滑液は、水であってもよく油であってもよい。液体供給部15は、ポンプ(図示なし)等の圧縮機構である供給部本体150を有している。供給部本体150は、液体を圧送する機構である。供給部本体150は、装置本体10の筐体の内部に配置されている。液体供給部15は、基部11の内部を貫通するように形成された流路部151を有している。流路部151の一端(第一端)には、チャック部13に臨むように開口する液体供給口152が形成される。流路部151の他端(第二端)は、供給部本体150と接続されている。液体供給部15は、供給部本体150によって供給される液体を、流路部151を通して液体供給口152から、後述するチャック部13の取付孔14内に供給する。
【0015】
(チャック部の構成)
チャック部13は、基部11に接続されている。チャック部13は、基部11に対し、着脱可能に接続されていてもよい。チャック部13は、基部11と一体となるように着脱不能な状態で接続されていてもよい。チャック部13は、中心軸Oを中心として、中心軸Oに沿って延びる筒状に形成される。チャック部13は、軸方向Daの第二側Da2が外方に開口する取付孔14を有する。取付孔14は、後述する加工工具20Aのシリンダ21Aが挿入される。チャック部13は、取付孔14にシリンダ21Aが挿入された状態で、シリンダ21Aの取付孔14からの脱落を拘束するため、適宜のロック機構(図示なし)を備える。チャック部13では、ロック機構を解除することで、取付孔14へのシリンダ21Aの拘束が解除され、シリンダ21Aが取付孔14からの取り外しを可能な状態となる。なお、チャック部13は、一般的な切削工具を装置本体10に取り付けるために、装置本体10自体に予め備えられていてもよい。
【0016】
(加工工具の構成)
加工工具20Aは、チャック部13に対して着脱可能に装着される。加工工具20Aは、例えばエアグラインダやエアドリル等の電気ではなく、圧縮空気を動力源として駆動するエアツールである。本実施形態の加工工具20Aは、作業者が手に持って使用することが可能なエアツールである。図1及び図3に示すように、加工工具20Aは、シリンダ21Aと、駆動部23と、回転軸25と、外筒27と、工具部30と、を主に備える。
【0017】
シリンダ21Aは、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。シリンダ21Aの外径は、取付孔14の内径よりも僅かに小さく、取付孔14内に挿入可能な形状とされている。シリンダ21Aは、取付孔14内に挿入された状態で、取付孔14(チャック部13)によって、径方向Drの外側Dro(外周側)から締め付けられるように保持される。
【0018】
駆動部23は、シリンダ21A内に配置されている。駆動部23は、回転軸25をシリンダ21Aに対して、中心軸Oを中心として回転させる。本実施形態の駆動部23は、軸方向Daにおいて、チャック部13と重なる位置に配置されている。駆動部23は、液室231と、回転体232と、を有する。
【0019】
液室231は、シリンダ21A内で軸方向Daに延びる円柱状の空間である。液室231は、基部11内に形成された流路部151を介して、供給部本体150から液体が導入される。具体的には、シリンダ21Aの内部には、液体供給路24が形成されている。液体供給路24は、軸方向Daに延びている。液体供給路24は、シリンダ21Aに一つのみ形成されている。液体供給路24は、軸方向Daの第一側Da1のシリンダ21Aの端面に開口する液体導入口241を有する。液体導入口241は、シリンダ21Aがチャック部13に保持された状態で液体供給口152と連通する。液体供給路24は、液室231の軸方向Daの第一側Da1の内壁面に開口する液体吐出口242を有する。つまり、液体供給路24は、液体供給口152と液室231とを繋ぐ流路である。液室231には、液体供給部15から液体供給路24を介して液体が導入される。これにより、液体供給路24は、液室231内に対して、液体吐出口242から中心軸Oに沿う流れ方向に液体を噴出するように供給する。さらに、シリンダ21Aの内部には、駆動部23を経た液体を外部に排出する液体排出路261が形成されている。液体排出路261は、回転軸25が挿通される孔を囲むように、シリンダ21Aに複数形成されている。液体排出路261は、軸方向Daの第二側Da2のシリンダ21Aの端面に開口する排出口26を有する。排出口26は、加工工具20Aの外方に向かって開口している。
【0020】
回転体232は、液室231内に配置されている。回転体232は、液室231内に導入された液体によって、液室231内で中心軸O回りに回転する。本実施形態の回転体232は、例えば中心軸Oを中心として軸方向Daに延びる螺旋状の板部材である。回転体232は、液室231内で回転軸25と一体に接続されている。液室231内に導入された液体が回転体232に衝突すると、回転体232が回転軸25と一体に中心軸O回りの周方向Dcに回転駆動される。
【0021】
回転軸25は、軸方向Daに延びる円柱状に形成される。軸方向Daの第一側Da1の回転軸25の第一端部251は、シリンダ21A内の液室231内に配置される。軸方向Daの第二側Da2の回転軸25の第二端部252は、シリンダ21A内から軸方向Daに延びて外方に向かって突出する。つまり、先端に近い回転軸25の第二端部252は、シリンダ21Aの外部に配置されている。本実施形態の回転軸25は、シリンダ21A内に配置されている領域よりも、シリンダ21Aの外部に配置されている領域の方が軸方向Daにおいて長くなっている。
【0022】
外筒27は、軸方向Daに延びる円筒状に形成される。外筒27の軸方向Daの第一側Da1の一端271は、シリンダ21Aに一体に接続される。つまり、外筒27は、シリンダ21Aに対して回転不能な状態で接続されている。外筒27は、シリンダ21Aから軸方向Daの第二側Da2に突出するように延びる。本実施形態の外筒27は、軸方向Daの長さがシリンダ21Aよりも長い。外筒27は、径方向Drの内側Driに、回転軸25が回転可能な状態で挿通される外筒挿通孔270を有する。外筒27の内径は、回転軸25の外径よりも大きい。つまり、外筒27の内周面と回転軸25の外周面との間には、隙間が形成される。外筒27の内周面と回転軸25の外周面との間には、軸受28が配置される。軸受28は、軸方向Daに間隔をあけて複数(本実施形態では二つ)配置される。複数の軸受28は、外筒27に対して、回転軸25を中心軸O回りに回転自在に支持する。
【0023】
工具部30は、軸方向Daの第二側Da2の回転軸25の先端に接続されている。工具部30は、加工装置1において、加工対象物Wと接触して加工を施す部位である。工具部30は、工具アタッチメント31と、工具刃部32と、を備える。工具アタッチメント31は、工具アタッチメント31は、回転軸25の先端(軸方向Daの第二側Da2の回転軸25の端)に着脱可能とされている。工具刃部32は、工具アタッチメント31に、着脱可能に装着される。工具刃部32は、加工対象物Wに所定の加工を施す。本実施形態の工具刃部32は、様々な形状を有する市販のエアグラインダー用の超硬カッターである。
【0024】
本実施形態において、工具刃部32の外径Dと、工具突き出し長さLとの比L/Dは、例えば、1~30とされ、20以上でも対応可能とされている。工具突き出し長さLは、工具部30のチャック部13から工具刃部32の先端までの軸方向Daの長さである。
【0025】
(加工方法の手順)
図4に示すように、本実施形態に係る加工方法S10は、加工装置1を使用して加工対象物Wであるインペラを加工する方法である。本実施形態の加工方法S10は、加工工具20Aを装着する工程S11と、回転軸25を回転させる工程S12と、加工対象物Wを加工する工程S13と、を含む。
【0026】
加工工具20Aを装着する工程S11では、装置本体10に、チャック部13を介して加工工具20Aを装着する。具体的には、シリンダ21Aを、チャック部13の取付孔14内に挿入する。この状態で、シリンダ21Aは、チャック部13によって、径方向Drの外側Dro(外周側)から保持される。これにより、加工工具20Aは装置本体10に脱落不能な状態で固定される。シリンダ21Aが取付孔14に挿入された状態で、液体導入口241は、液体供給口152に連通する。
【0027】
回転軸25を回転させる工程S12では、液体供給部15から駆動部23に液体を供給し、液体を利用して回転軸25を回転させる。具体的には、供給部本体150から圧送された液体が流路部151を通って液体供給口152に供給される。液体は、液体供給口152から、液体導入口241を介して液体供給路24に供給される。液体供給路24を流れた液体は、液体吐出口242から中心軸Oに沿う流れ方向に噴出するように液室231内に導入される。液室231内に導入された液体によって、回転体232が押されて、中心軸O回りの周方向Dcに回転する。回転体232が液体によって回転することで、回転体232と一体に回転軸25が中心軸O回りの周方向Dcに高速回転される。これにより、回転軸25の先端に接続された工具部30が、回転軸25とともに回転する。なお、液室231内に導入される液体の流れによって回転軸25が回転された状態では、装置本体10の基部11(主軸)は、回転せずに静止状態とされている。
【0028】
加工対象物Wを加工する工程S13では、中心軸O周りの周方向Dcに回転する工具刃部32を、加工対象物Wに押し当てることで、加工対象物Wに対して所定の加工を施す。加工対象物Wは、工具刃部32に対して相対的に移動可能とされている。加工対象物Wと工具刃部32とを、相対的に移動させることによって、加工対象物Wを所定形状に加工する。本実施形態では、加工対象物Wを加工する工程S13では、加工対象物Wとして、例えばインペラの流路を研磨する。
【0029】
(作用効果)
上記構成の加工装置1及び加工方法S10では、装置本体10にチャック部13を介して加工工具20Aが装着される。液体供給部15から供給された液体によって、駆動部23の回転体232が回転することで、回転軸25が中心軸O回りに回転する。これによって、回転軸25の先端部に備えられた工具部30が回転し、加工対象物Wに加工を施すことができる。回転軸25の駆動に、液体を用いることで、エアを用いる場合に比較し、高い圧力(液圧)で回転軸25を回転駆動させることができる。したがって、工具部30により大きなトルクを加えて加工対象物Wの加工を行うことができる。
【0030】
また、加工装置1では、基部11を回転させることなく、シリンダ21A内に配置された駆動部23によって工具部30が回転軸25とともに回転する。工具部30は、基部11に対して、シリンダ21Aが装着されるチャック部13からさらに離れた位置に配置されている。つまり、加工装置1では、工具部30を回転させる部位である駆動部23と工具部30との軸方向Daの距離が、基部11と工具部30との軸方向Daの距離よりも短くなる。そのため、基部11を回転させて、工具部30を回転させた場合に比べて、回転させる部位から工具刃部32の先端までの軸方向Daの長さである突き出し長さLを小さく抑えることができる。そのため、基部11と工具刃部32の先端までの距離が同じであっても、基部11を回転させる場合と比べて、工具部30の振動が抑制される。その結果、基部11と工具刃部32の先端までの距離が長くとも、振動を抑えて加工を安定的に行うことができる。
【0031】
また、シリンダ21Aはチャック部13の取付孔14に嵌め込まれることで、チャック部13によって外周側から保持される。これによって、チャック部13がシリンダ21Aを覆うこととなり、シリンダ21Aを強固に保持することができる。したがって、シリンダ21Aの内部の液室231に高圧の液体を供給した場合に、シリンダ21A自体の強度を向上させなくとも、シリンダ21Aの損傷を抑えることができる。
【0032】
また、シリンダ21Aには、液室231に液体を供給する液体供給路24が形成されている。液体供給路24の液体吐出口242を介して、液室231に対して、軸方向Daに液体が噴出されるように供給されている。これにより、回転体232に対して、中心軸Oに沿う流れ方向に液体を供給できる。その結果、軸方向Daへの液体の流れによって、螺旋状の回転体232を効率良く押して回転させることができる。
【0033】
また、液体供給路24は、シリンダ21Aの端部に形成された液体導入口241で、基部11の端部に形成された液体供給口152と繋がっている。これにより、シリンダ21Aをチャック部13に接続すると、液体供給路24と流路部151とが連通される。これにより、シリンダ21Aをチャック部13に接続するだけで、駆動部23への液体の供給路を確保できる。したがって、加工工具20Aを回転可能な状態で、容易に装置本体10へ装着させることができる。
【0034】
また、シリンダ21Aには、駆動部23を経た液体を外部に排出する液体排出路261が形成されている。これにより、回転軸25を回転させるために液室231に送り込んだ液体を、排出口26からシリンダ21Aの外部に排出することができる。その結果、液室231内での液体の滞留を抑え、回転体232を効率良く液体で回転させることができる。
【0035】
また、外筒27内に回転軸25が挿入されることで、回転する回転軸25が回転していない外筒27によって覆われて補強される。したがって、回転軸25の長さが長くなっても、回転軸25の振れを抑制することができる。これにより、工具部30の振動が抑制される。その結果、工具部30の径Dに対する工具部30の突き出し長さLの比が大きい場合であっても、振動を抑えて加工をより安定的に行うことができる。
【0036】
さらに、外筒挿通孔270に挿入された回転軸25は、軸受28を介して外筒27に対して回転自在に支持されている。その結果、外筒27内での回転軸25の振れも抑制することができ、工具部30の振動をより抑制することができる。その結果、工具部30の径Dに対する工具部30の突き出し長さLの比が、L/Dが20を超えるような大きい場合であっても、振動をさらに抑えて加工をより一層安定的に行うことができる。
【0037】
また、液体供給部15は、切削加工の際に加工対象物Wに供給される潤滑液を液体として供給している。そのため、装置本体10に備え付けられている潤滑液を利用して加工工具20Aを駆動させることができる。これにより、加工工具20Aを駆動させるための液体を別途用意する必要が無くなり、装置本体10を介して加工工具20Aを容易に利用することができる。
【0038】
また、上述したような加工方法S10によれば、工具部30が、チャック部13から中心軸Oに沿った方向に突出する工具部30の突き出し長さLを抑えた状態で、加工対象物Wの加工を行うことができる。したがって、インペラの製造を、振動を抑えて安定的に行うことができる。
【0039】
(第一実施形態の変形例)
なお、上記第一実施形態において、駆動部23を、加工工具20Aの軸方向Daの第一側Da1の端部に備えるようにしたが、駆動部23の配置されている位置はこのような形態に限定されるものではない。
【0040】
例えば、図4に示す加工工具20Bのように、チャック部13に保持されるシリンダ21Bを、チャック部13から軸方向Daの第二側Da2に突出するように形成してもよい。その際、駆動部23は、シリンダ21Bの軸方向Daの第二側Da2の端部に配置されてもよい。つまり、駆動部23は、軸方向Daにおいて、チャック部13と重ならない位置に配置されている。
【0041】
このような構成とすれば、シリンダ21Bから軸方向Daの第二側Da2に突出する工具部30の工具突き出し長さL2をさらに短くすることができ、より安定した加工を行える。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0043】
なお、上記実施形態では、装置本体10を工作機械としたが、このような構成に限定されるものではない。例えば、装置本体10は、多軸ロボットであってもよい。この場合、基部11は、多軸のロボットアームであってもよい。
【0044】
さらに、上記実施形態では、排出口26から液体を排出するようにしたが、排出した液体を、工具刃部32による加工対象物Wの加工部位に供給し、冷却や潤滑に利用するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、回転体232として、螺旋状の回転体232を備えるようにしたが、これに代えて、羽根車等適宜他の構成に変更することが可能である。
【0046】
<付記>
実施形態に記載の加工装置1は、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る加工装置1は、移動可能な基部11及び前記基部11に液体を供給する液体供給部15を有する装置本体10と、前記基部11に接続され、外方に開口する取付孔14を有するチャック部13と、前記チャック部13に着脱可能に装着される加工工具20A、20Bと、を備え、前記加工工具20A、20Bは、前記取付孔14に嵌め込まれて保持されるシリンダ21A、21Bと、前記シリンダ21A、21B内に配置され、前記基部11を介して前記液体供給部15から導入される前記液体によって中心軸O回りに回転する回転体232を有する駆動部23と、前記シリンダ21A、21B内から外方に向かって前記中心軸Oに沿って突出し、前記回転体232と一体に回転する回転軸25と、前記回転軸25の先端に接続された工具部30と、を備える。
液体の例としては、潤滑液(水)や切削油(油)が挙げられる。
装置本体10の例としては、フライス、旋盤等の工作機械、ロボットが挙げられる。
基部11の例としては、工作機械の主軸、多軸ロボットのアームが挙げられる。
【0048】
この加工装置1では、回転軸25の先端部に備えられた工具部30が回転し、加工対象物Wに加工を施すことができる。回転軸25の駆動に、液体を用いることで、エアを用いる場合に比較し、高い圧力(液圧)で回転軸25を回転駆動させることができる。したがって、工具部30により大きなトルクを加えて加工対象物Wの加工を行うことができる。
【0049】
また、工具部30は、基部11に対して、シリンダ21Aが装着されるチャック部13からさらに離れた位置に配置されている。つまり、加工装置1では、工具部30を回転させる部位である駆動部23と工具部30との軸方向Daの距離が、基部11と工具部30との軸方向Daの距離よりも短くなる。そのため、基部11を回転させて、工具部30を回転させた場合に比べて、回転させる部位から工具部30までの軸方向Daの長さである突き出し長さLを小さく抑えることができる。そのため、基部11と工具部30までの距離が同じであっても、基部11を回転させる場合と比べて、工具部30の振動が抑制される。その結果、基部11と工具部30までの距離が長くとも、振動を抑えて加工を安定的に行うことができる。
【0050】
さらに、シリンダ21Aはチャック部13の取付孔14に嵌め込まれることで、チャック部13によって外周側から保持される。これによって、チャック部13がシリンダ21Aを覆うこととなり、シリンダ21Aを強固に保持することができる。したがって、シリンダ21Aの内部の駆動部23に高圧の液体を供給した場合に、シリンダ21A自体の強度を向上させなくとも、シリンダ21Aの損傷を抑えることができる。
【0051】
(2)第2の態様に係る加工装置1は、(1)の加工装置1であって、前記シリンダ21A、21Bは、前記液体供給部15に接続され、前記駆動部23に前記液体を供給する液体供給路24を有し、前記液体供給路24は、前記回転体232に対して、前記中心軸Oに沿う流れ方向に前記液体を供給する。
【0052】
これにより、回転体232に対して、中心軸Oに沿う流れ方向に液体を供給できる。その結果、軸方向Daへの液体の流れによって、回転体232を効率良く押して回転させることができる。
【0053】
(3)第3の態様に係る加工装置1は、(1)又は(2)の加工装置1であって、前記シリンダ21A、21Bは、前記駆動部23を経た前記液体を前記シリンダ21A、21Bの外部に排出する液体排出路261を有する。
【0054】
これにより、回転軸25を回転させるために送り込んだ液体を、液体排出路261からシリンダ21Aの外部に排出することができる。その結果、シリンダ21A内での液体の滞留を抑え、回転体232を効率良く液体で回転させることができる。
【0055】
(4)第4の態様に係る加工装置1は、(1)から(3)の何れか一つの加工装置1であって、一端が前記シリンダ21A、21Bに接続されて前記中心軸Oに沿って延び、前記回転軸25が挿入される外筒挿通孔270を有する外筒27をさらに備え、前記外筒27は、前記シリンダ21A、21Bに対して回転不能な状態で接続されている。
【0056】
これにより、外筒27内に回転軸25が挿入されることで、回転する回転軸25が回転していない外筒27によって覆われて補強される。したがって、回転軸25の長さが長くなっても、回転軸25の振れを抑制することができる。これにより、工具部30の振動を抑えて加工をより安定的に行うことができる。
【0057】
(5)第5の態様に係る加工装置1は、(4)の加工装置1であって、前記外筒27の内周面と前記回転軸25の外周面との間に配置され、前記回転軸25を前記中心軸O回りに前記シリンダ21A、21Bに対して回転自在に支持する軸受28をさらに備える。
【0058】
これにより、外筒27内での回転軸25の振れも抑制することができ、工具部30の振動をより抑制することができる。その結果、工具部30の振動をさらに抑えて加工をより一層安定的に行うことができる。
【0059】
(6)第6の態様に係る加工装置1は、(1)から(5)の何れか一つの加工装置1であって、前記装置本体10は、切削加工が加工な機械であり、前記液体供給部15は、前記液体として、前記切削加工の際に加工対象物に供給される圧縮された潤滑液を供給する。
【0060】
これにより、潤滑液を利用して加工工具20Aを駆動させることができる。これにより、加工工具20Aを駆動させるための液体を別途用意する必要が無くなり、装置本体10を介して加工工具20Aを容易に利用することができる。
【0061】
(7)第7の態様に係る加工方法S10は、(1)から(6)の何れか一つの加工装置1を用いた加工方法S10であって、前記チャック部13に前記加工工具20A、20Bを装着する工程S11と、前記液体供給部15から前記駆動部23に前記液体を供給し、前記回転体232と一体に前記回転軸25を回転させる工程S12と、前記工具部30で加工対象物Wを加工する工程S13と、を含む。
【0062】
これにより、加工装置1を利用することで、工具部30により大きなトルクを加えて加工対象物Wの加工を行うことができる。さらに、基部11と工具部30までの距離が長くとも、振動を抑えて加工を安定的に行うことができる。加えて、シリンダ21Aの内部の駆動部23に高圧の液体を供給した場合に、シリンダ21A自体の強度を向上させなくとも、シリンダ21Aの損傷を抑えることができる。
【0063】
(8)第8の態様に係る加工方法S10は、(7)の加工方法S10であって、前記加工対象物Wを加工する工程では、前記加工対象物Wとしてインペラを製造する。
【0064】
これにより、インペラを製造するに際し、工具部30の径Dに対する工具部30の突き出し長さLの比が大きい場合であっても、加工を安定的に行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1…加工装置
10…装置本体
100…筐体
11…基部
13…チャック部
14…取付孔
15…液体供給部
150…供給部本体
151…流路部
152…液体供給口
20A、20B…加工工具
21A、21B…シリンダ
22…接続部
23…駆動部
231…液室
232…回転体
24…液体供給路
241…液体導入口
242…液体吐出口
25…回転軸
251…第一端部
252…第二端部
26…排出口
261…液体排出路
27…外筒
270…外筒挿通孔
271…一端
28…軸受
30…工具部
31…工具アタッチメント
32…工具刃部
D…径
L…工具部の突き出し長さ
Da…軸方向
Da1…第一側
Da2…第二側
Dc…周方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
O…中心軸
S10…加工方法
S11…加工工具を装着する工程
S12…回転軸を回転させる工程
S13…加工対象物を加工する工程
W…加工対象物
図1
図2
図3
図4
図5