(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028890
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】紙製ハンドタオル
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A47K10/16 Z
A47K10/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134858
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA02
2D135AA04
2D135AA17
2D135AA21
2D135AB06
2D135AC06
2D135AC09
2D135AD02
2D135AD16
2D135CA01
2D135CA03
2D135DA02
2D135DA03
2D135DA05
2D135DA06
2D135DA11
2D135DA31
(57)【要約】
【課題】紙の破れにくさ、プライのずれにくさ、適切な総吸水量及び触感の滑らかさを満たすことができる紙製ハンドタオルを提供する。
【解決手段】クレープ高さが15μm以上38μm以下、クレープ本数が10本/6mm以上32本/6mm以下の原紙を2プライにプライアップした、2プライの紙製ハンドタオルであって、ハンドタオルの坪量が14.9g/m
2以上17.9g/m
2以下、JIS P 8113に基づく湿潤時のMD方向の引張強度が2.9N/25mm以上6.9N/25mm以下、湿潤時のCD方向の引張強度が0.8N/25mm以上2.1N/25mm以下、プライ同士が接するフード面における静止摩擦係数が0.55以上0.98以下であることを特徴とする、紙製ハンドタオルを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレープ高さが15μm以上38μm以下、クレープ本数が10本/6mm以上32本/6mm以下の原紙を2プライにプライアップした、2プライの紙製ハンドタオルであって、
ハンドタオルの坪量が14.9g/m2以上17.9g/m2以下、JIS P 8113に基づく湿潤時のMD方向の引張強度が2.9N/25mm以上6.9N/25mm以下、湿潤時のCD方向の引張強度が0.8N/25mm以上2.1N/25mm以下、プライ同士が接するフード面における静止摩擦係数が0.55以上0.98以下であることを特徴とする、紙製ハンドタオル。
【請求項2】
ハンドタオルの紙厚が0.08mm/2プライ以上0.21mm/2プライ以下であることを特徴とする、請求項1に記載の紙製ハンドタオル。
【請求項3】
ハンドタオルのJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度が12.2N/25mm以上18.1N/25mm以下であり、乾燥時のCD方向の引張強度が2.8N/25mm以上6.7N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の紙製ハンドタオル。
【請求項4】
ハンドタオルの前記フード面における、ティッシュソフトネス測定装置TSAで測定されるTS750値が21.5dBV2rms以上32.5dBV2rms以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙製ハンドタオル。
【請求項5】
ハンドタオルがナーリングを施されており、
前記ナーリングは、ハンドタオルの2箇所以上に施されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の紙製ハンドタオル。
【請求項6】
前記ナーリングにおける、ハンドタオル短手方向寸法に対するナーリング幅の割合が1.0%以上5.0%以下であることを特徴とする、請求項5に記載の紙製ハンドタオル。
【請求項7】
前記ナーリングは、押し付け部と非押し付け部とを有し、前記ナーリングの全面積に対する前記押し付け部の合計面積の割合である、前記押し付け部の面積率が3.0%以上20.0%以下であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の紙製ハンドタオル。
【請求項8】
前記押し付け部の深さが50μm以上120μm以下であることを特徴とする、請求項7に記載の紙製ハンドタオル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2プライの紙製ハンドタオルに関する。
【背景技術】
【0002】
紙製のハンドタオルは、企業のオフィス、ホテル、公衆トイレ、一般家庭等で幅広く利用されている。
【0003】
対象(使用者の手や顔)の水分をふき取った後に、ごみとして処分することができるため、布製のハンドタオルと比較して、清潔であり、かつ、布製タオルで必要な洗濯等の手間もかからない。
【0004】
紙製ハンドタオルの製造会社は、自社製品のコストダウンによる競争力強化等の目的で、製品の坪量を下げる取り組みを各社とも検討している。
【0005】
紙製ハンドタオルの先行技術文献として、例えば特許文献1には、一方の面が凸部となり、対応する反対面が凹部となる凹凸を複数有すると共に、幅方向に沿ってミシン目を有するキッチンタオルシートをロール状に巻き取ったキッチンタオルロールであって、巻長が15~60m、巻直径が85~155mm、ロール幅200mm当たりのコアを含むロール質量が130~530g、ロール幅76mm当たりのミシン目のJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTが3~25N/76mmであるキッチンタオルロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2プライのハンドタオルにおいて、製品の坪量を現行品よりも下げると、総吸水量が低下するという弊害がある。また、乾燥強度及び湿潤強度が低下し、手拭き用途使用時に紙が破れやすくなる(使用感に劣る)ため、叩解処理(DDR:ダブルディスクリファイナ等)や薬品の添加で、必要な強度を高く維持することが重要となる。
【0008】
しかし、紙の強度を高くすると、紙が固く表面がカサカサになる(紙同士の摩擦が低くなる)ことにより、2プライでの使用時にプライがずれやすくなるという問題が発生した。原紙のクレープ高さを調整し、紙同士の摩擦係数を高くすることでプライずれを抑制することは可能であるが、そのような紙は触感(滑らかさ)に劣る。
【0009】
そのため、特定の坪量の2プライのハンドタオルにおいて、使用時に紙が破れづらいこと、プライがずれにくいこと、適切な総吸水量及び触感の滑らかさの全てを満たすことは難しかった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、2プライにプライアップしても、紙の破れにくさ、プライのずれにくさ、適切な総吸水量及び触感の滑らかさを満たすことができる紙製ハンドタオルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、原紙のクレープ高さ及び本数を所定の数値範囲内とし、更に原紙を2プライにプライアップしたハンドタオルの坪量、JIS P 8113に基づく湿潤時のMD方向の引張強度及びCD方向の引張強度並びにフード面における静止摩擦係数をそれぞれ所定の数値範囲内とすることで、2プライにプライアップしても、紙の破れにくさ、プライのずれにくさ、適切な総吸水量及び触感の滑らかさを満たすことができることができる紙製ハンドタオルとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、クレープ高さが15μm以上38μm以下、クレープ本数が10本/6mm以上32本/6mm以下の原紙を2プライにプライアップした、2プライの紙製ハンドタオルであって、ハンドタオルの坪量が14.9g/m2以上17.9g/m2以下、JIS P 8113に基づく湿潤時のMD方向の引張強度が2.9N/25mm以上6.9N/25mm以下、湿潤時のCD方向の引張強度が0.8N/25mm以上2.1N/25mm以下、プライ同士が接するフード面における静止摩擦係数が0.55以上0.98以下であることを特徴とする、紙製ハンドタオルである。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の紙製ハンドタオルであって、ハンドタオルの紙厚が0.08mm/2プライ以上0.21mm/2プライ以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の紙製ハンドタオルであって、ハンドタオルのJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度が12.2N/25mm以上18.1N/25mm以下であり、乾燥時のCD方向の引張強度が2.8N/25mm以上6.7N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の紙製ハンドタオルであって、ハンドタオルの上記フード面における、ティッシュソフトネス測定装置TSAで測定されるTS750値が21.5dBV2rms以上32.5dBV2rms以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の紙製ハンドタオルであって、ハンドタオルがナーリングを施されており、上記ナーリングは、ハンドタオルの2箇所以上に施されていることを特徴とする、ものである。
【0017】
(6)本発明の第6の態様は、(5)に記載の紙製ハンドタオルであって、上記ナーリングにおける、ハンドタオル短手方向寸法に対するナーリング幅の割合が1.0%以上5.0%以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(7)本発明の第7の態様は、(5)又は(6)に記載の紙製ハンドタオルであって、上記ナーリングは、押し付け部と非押し付け部とを有し、上記ナーリングの全面積に対する上記押し付け部の合計面積の割合である、上記押し付け部の面積率が3.0%以上20.0%以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(8)本発明の第8の態様は、(7)に記載の紙製ハンドタオルであって、上記押し付け部の深さが50μm以上120μm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、紙の破れにくさ、プライのずれにくさ、適切な総吸水量及び触感の滑らかさを満たすことができる紙製ハンドタオルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る紙製ハンドタオルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0023】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、短手方向とは、紙製ハンドタオル1を抄紙した際の流れに対して垂直な方向、すなわちCD(Cross Direction)方向であり、長手方向とは、短手方向に垂直なMD(Machine Direction)方向である。
【0024】
<紙製ハンドタオル>
本実施形態に係る紙製ハンドタオル1は、原紙10を2プライにプライアップした、2プライの紙製ハンドタオル1である。
なお、紙製ハンドタオル1のMD方向(
図1における符号Xで示す方向)の寸法は190mm以上240mm以下であることが好ましく、CD方向(
図1における符号Yで示す方向)の寸法は180mm以上230mm以下であることが好ましい。また、紙製ハンドタオル1の加工形態は特に制限されず、マルチフォルダ式、インターフォルダ式のいずれを用いてもよい。さらに、紙製ハンドタオル1の製品の形態は、カートン、フィルム包装(ガゼット包装、ピロー包装等)、ポケットティシュー形態等、どのような形態でもかまわない。
【0025】
紙製ハンドタオル1の坪量は、14.9g/m2以上17.9g/m2以下であり、16.0g/m2以上17.5g/m2以下であることが好ましい。坪量を上記の数値範囲内とすることで、紙の破れにくさと、プライのずれにくさを両立することができ、かつ、総吸水量が適切な紙製ハンドタオル1とすることができる。なお、坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。
【0026】
また、紙製ハンドタオル1の紙厚は0.08mm/2プライ以上0.21mm/2プライ以下であることが好ましく、0.10mm/2プライ以上0.18mm/2プライ以下であることがより好ましい。紙厚を上記の数値範囲内とすることで、紙の破れにくさと、プライのずれにくさを両立することができ、かつ、総吸水量が適切な紙製ハンドタオル1とすることができる。
なお、紙厚は、JIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度)でシックネスゲージ(例えば、尾崎製作所製、ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用い、測定荷重3.7kPa、測定子直径3mmの測定条件下に、測定子と測定台との間に試料(2プライの紙製ハンドタオル1)を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取ることで測定できる。
【0027】
さらに、紙製ハンドタオル1のJIS P 8113に基づく湿潤時のMD方向の引張強度は2.9N/25mm以上6.9N/25mm以下であり、3.7N/25mm以上5.7N/25mm以下であることが好ましい。また、紙製ハンドタオル1のJIS P 8113に基づく湿潤時のCD方向の引張強度が0.8N/25mm以上2.1N/25mm以下であり、1.0N/25mm以上1.8N/25mm以下であることが好ましい。湿潤時の各々の方向の引張強度がいずれも上記の数値範囲内であることにより、手拭き用途での使用時に紙が破れにくい紙製ハンドタオル1とすることができる。なお、湿潤時の各々の方向の引張強度は、いずれもJIS P 8113に準拠して測定する。
【0028】
また、紙製ハンドタオル1のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度は12.2N/25mm以上18.1N/25mm以下であることが好ましく、13.5N/25mm以上16.0N/25mm以下であることがより好ましい。また、紙製ハンドタオル1のJIS P 8113に基づく乾燥時のCD方向の引張強度が2.8N/25mm以上6.7N/25mm以下であることが好ましく、3.7N/25mm以上5.8N/25mm以下であることがより好ましい。乾燥時の各々の方向の引張強度がいずれも上記の数値範囲内であることにより、より紙が破れにくい紙製ハンドタオル1とすることができる。なお、乾燥時の各々の方向の引張強度も、いずれもJIS P 8113に準拠して測定する。
【0029】
本実施形態における紙製ハンドタオル1は2プライであるが、このとき、プライ同士が接するフード面における静止摩擦係数が0.55以上0.98以下であり、0.66以上0.88以下であることが好ましい。静止摩擦係数を上記の数値範囲内とすることで、プライ同士がずれにくい紙製ハンドタオル1とすることができる。なお、原紙10を抄紙マシンで抄紙する際、ドライヤーに接する面がドライヤー面であり、その反対側がフード面である。
なお、静止摩擦係数は、ISO 15359に準拠して、自動摩擦試験機(商品名:NSF-100、野村商事(株)製)を用いて測定できる。測定においては、2プライの紙製ハンドタオル1を1プライに剥がし、重なっていた面(フード面)同士を測定する。また、測定においては、自動摩擦試験機は1サンプルの測定において、自動で3回連続測定し、3回分の値を表示するが、全て1回目の値を採用する。そして、MD方向を4回、CD方向を4回それぞれ別のサンプルで測定し、8回分の平均値を最終的な静止摩擦係数とする。
【0030】
また、紙製ハンドタオル1のフード面における、ティッシュソフトネス測定装置TSAで測定されるTS750値が21.5dBV2rms以上32.5dBV2rms以下であることが好ましく、24.2dBV2rms以上28.9dBV2rms以下であることがより好ましい。TS750値を上記の数値範囲内とすることで、プライ同士がよりずれにくく、かつ、触感が滑らかな紙製ハンドタオル1とすることができる。
【0031】
このときのTS750値とは、ティッシュソフトネス測定装置TSA(emtec社製;Tissue Softness Analyzer)により、2プライの紙製ハンドタオル1を1プライに剥がし、重なっていた面(フード面)を、ティッシュソフトネス測定装置TSAにより測定したときに、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)であり、フード面の表面の滑らかさを示す数値である。
なお、ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS750値の測定方法や、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されている。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した各種測定方法については、上記の特許文献を参照されたい。
【0032】
(ナーリング)
また、本実施形態における紙製ハンドタオル1は、ナーリング20を施されていることが好ましい。紙製ハンドタオル1においてナーリング20が施される箇所は、2箇所以上であることが好ましく、2箇所であることがより好ましい。ナーリング20は、例えば
図1(a)に示すように、紙製ハンドタオル1の短手方向(CD方向)上流側端部及び下流側端部の2箇所に形成され、紙製ハンドタオル1の長手方向(MD方向)の一端から他端まで長手方向に延びて、ほぼ矩形状の平面視形状を有している。ナーリング20全体の平面視形状は本実施形態のほぼ矩形状に限定されず、任意の平面視形状とすることができ、例えば、三日月状、曲線状、規則的で鋭角の折れ線が複数連結された折れ線状、階段状等が挙げられる。
ナーリング(エッジエンボス、コンタクトエンボスとも称する)加工は、例えば、原紙10を2プライ重ね合わせて、切断前の紙製ハンドタオル1が連続したシートを構成する工程において、原紙10を重ね合わせた後に実施される。ナーリング加工方法としては従来公知の方法を利用できるが、例えば、後述する押し付け部21に対応する立体形状(頂面が平面)を有し長手方向に延びる凸部集合体が周方向に所定の間隔で複数個所に形成された周面を有する第1金属製ロールと、前述の凸部の立体形状に対応する空間形状を有し長手方向に延びる凹部集合体が周方向に所定の間隔で複数個所に形成された周面を有する第2金属製ロールとを圧接し、ニップ部において前述の凸部集合体と前述の凹部集合体とが回転同期するように各ロールの回転数及びロール径を調整した一対のナーリング用ロールを用いる方法が挙げられる。このナーリング加工方法において、一対のナーリング用ロールのニップ部にシートを供給し、後に紙製ハンドタオル1になる領域の2か所にナーリング20が施されたシートが作製される。後述する押し付け部21の深さは、例えば、ニップ部における第1、第2金属製ロールの圧接圧の選択等により調整できる。前述の一対のロールは、一般的なエンボスロールと同様の構造を有するものである。
【0033】
図1(a)に示す紙製ハンドタオル1において、ハンドタオル短手方向寸法に対するナーリング幅の割合は、1.0%以上5.0%以下の範囲であることが好ましく、1.5%以上4.0%以下の範囲であることがより好ましい。ハンドタオル短手方向寸法に対するナーリング幅の割合が上記の数値範囲内であることにより、プライ同士がずれにくく、かつ剥がれにくい紙製ハンドタオル1とすることができる。ハンドタオル短手方向寸法に対するナーリング幅の割合とは、ハンドタオル短手方向寸法(紙製ハンドタオル1のCD方向の寸法)W(mm)に対する、ナーリング幅NW(mm)の百分率であり、下記式で表される。
ハンドタオル短手方向寸法に対するナーリング幅の割合(%)=〔ナーリング幅NW(mm)/ハンドタオル短手方向寸法W(mm)〕×100
【0034】
また、
図1(a)に示す紙製ハンドタオル1において、ナーリング20は、押し付け部21と非押し付け部22とを有することが好ましい。ナーリング20は、
図2に示すように、好ましくは押し付け部21と非押し付け部22とが縦横に交互にかつ規則的に配列された形態を有する。押し付け部21は紙製ハンドタオル1を構成する2プライの原紙10が接合された部分であり、非押し付け部22は紙製ハンドタオル1の表面と面方向に面一な部分である。なお、押し付け部21の平面視形状は、本実施形態の円形に限定されず、例えば、正方形、二等辺直角三角形、六角形、八角形、星形、半球形、トランプのマーク形(ハート、ダイヤ、クローバー、スペード)等が挙げられる。
さらに、ナーリング20の全面積に対する押し付け部21の合計面積の割合である、ナーリング20の押し付け部21の面積率が3.0%以上20.0%以下であることが好ましく、5.0%以上15.0%以下であることがより好ましい。面積率が上記の数値範囲内であることにより、プライ同士がずれにくく、かつ剥がれにくい紙製ハンドタオル1とすることができる。
【0035】
押し付け部21の面積率とは、ナーリング20の全面積に対する押し付け部21の頂面の合計面積の百分率(%)を示すものであり、下記式により表される。ここで、ナーリング20の全面積とは、
図1(b)に示す矩形状の形状であれば、ナーリング長さNLとナーリング幅NWとの積として表される。押し付け部21の頂面の合計面積の測定方法は、後述する。
押し付け部21の面積率(%)=(押し付け部21の頂面の合計面積/ナーリング20の全面積)×100
【0036】
押し付け部21の頂面の合計面積は、例えば、次のようにして求められる。まず、
図2に示すように、測定対象であるナーリング20の表面(上面)を、顕微鏡(商品名:デジタルマイクロスコープVHX-6000、(株)キーエンス製)を用いて倍率20倍で撮像し、撮像画像を得る。次に、得られる撮像画像において、押し付け部21の頂面の一つずつについて頂面の輪郭を特定し、特定された輪郭に基づいて、各頂面の面積を求め、1/20の値に変換して測定値とする。最後に、得られた測定値を合計して、押し付け部21の頂面の合計面積とする。
【0037】
また、押し付け部21の深さが50μm以上120μm以下であることが好ましく、65μm以上105μm以下であることがより好ましい。深さが上記の数値範囲内であることにより、プライ同士がずれにくく、かつ剥がれにくい紙製ハンドタオル1とすることができる。
押し付け部21の深さは、次のようにして測定される。まず、測定対象であるナーリング20の断面を、ワンショット3D形状測定機(商品名:デジタルマイクロスコープVR-3000、(株)キーエンス製)を用いて倍率12倍で撮像する。次に、得られるナーリング20の断面の撮像画像において、原紙10の一方の表面から、押し付け部21の最下部までの深さを測定し、こうして30点の押し付け部21の深さを測定する。最後に、30の測定値を算術平均して、押し付け部21の深さとする。
【0038】
(原紙)
紙製ハンドタオル1の製造に用いる(プライアップする前の)原紙10は、クレープ高さが15μm以上38μm以下であり、20μm以上35μm以下であることが好ましい。また、原紙10のクレープ数が10本/6mm以上32本/6mm以下であり、15本/6mm以上25本/6mm以下であることが好ましい。
クレープとは原紙10の製造工程において、抄紙機によって原紙10が長手方向に機械的に圧縮されることにより形成される波状の皺であり、原紙10の嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)、伸び等を一層向上させることができる。クレープ高さ及びクレープ本数の測定は、例えば、特開2019-051028号公報に記載されている測定方法を用いて測定することができる。
原紙10のクレープ高さ及びクレープ本数をいずれも上記の数値範囲内とすることで、プライアップした紙製ハンドタオル1の表面(フード面)の滑らかさ、原紙10のプライ間(フード面)の静止摩擦係数等が適切な値となり、プライ同士がよりずれにくく、かつ、触感が滑らかな紙製ハンドタオル1とすることができる。
【0039】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、紙の破れにくさ、プライのずれにくさ、適切な総吸水量及び触感の滑らかさを満たすことができる紙製ハンドタオル1を製造することができる。
【実施例0040】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0041】
表1及び表2に示す各条件において、実施例1~12及び比較例1~13のそれぞれの紙製ハンドタオルを作製し、以下の評価を行った。なお、評価方法における「組数」とは、原紙ではなくプライアップされた紙製ハンドタオル1枚を「1組」としてカウントした場合の数である。また、下記の評価以外の各パラメータは、上述した基準又は測定方法に従って行った。
【0042】
(紙破れの発生頻度)
ハンドタオルを手拭き用途で200組以上使用した際の、紙破れの発生頻度を評価した。発生頻度は「(紙破れ発生組数/使用したハンドタオル総組数)×100%」でパーセンテージ算出し、総合的な評価は下記の基準で行った。
0.5%未満:優→紙破れはほぼ発生しない、使用感は非常に良好
0.5%以上1.5%未満:良→紙破れの発生は少ない、使用感は良好
1.5%以上3%未満:可→紙破れの発生は許容範囲、使用感に問題なし
3%以上:不可→紙破れが多く発生し、使用感に劣る
【0043】
(プライずれの発生頻度)
ハンドタオルを収納物から取り出して、200組以上使用した際の、プライずれの発生頻度を評価した。発生頻度は「(プライずれ発生組数/使用したハンドタオル総組数)×100%」でパーセンテージ算出し、総合的な評価は下記の基準で行った。
0.5未満:優→プライずれはほぼ発生しない、使用感は非常に良好
0.5%以上1.5%未満:良→プライずれの発生は少ない、使用感は良好
1.5%以上3%未満:可→プライずれの発生は許容範囲、使用感に問題なし
3%以上:不可→プライ剥がれが多く発生し、使用感に劣る
【0044】
(T.W.A.:吸水性能の指標)
ハンドタオルの吸水性能に関しては、以下の測定方法で測定したT.W.A.の数値について、下記の基準で評価した。
100g/m2以上:優→手拭き用途で使用すると、特に多くの水分をふき取ることができる
90g/m2以上100g/m2未満:良→手拭き用途で使用すると、多くの水分をふき取ることができる
80g/m2以上90g/m2未満:可→手拭き用途で使用すると、問題なく水分をふき取ることができる
80g/m2未満:不可→水分吸収量がやや少なく、手拭き用途で使用する際の性能が悪い
【0045】
単位面積当たりの吸水量(T.W.A.;Total Water Absorbency)は、まず、得られたハンドタオルを76×76mmの正方形の試験片に切断し、乾燥質量(W1)を測定した。その後、この試験片を蒸留水中に2分間浸漬した後、試験片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(RH100%)で吊るし、30分放置後の質量(W2)を測定した。そして、(W2-W1)の値を算出し、この値をサンプル1m2あたりの保水量(g/m2)に換算した値を、単位面積当たりの吸水量(T.W.A.)とした。
【0046】
(触感の滑らかさ)
50名を対象とし、ハンドタオルを手に取り手拭き用途で使用した際の触感滑らかさについて官能評価を行い、各人が1点から5点で評価した。
「優◎」:触感が特に滑らかであり、特に快適に使用することができる。50名の評価の平均点が4.0点以上
「良○」:触感は滑らかで、使用感は快適である。50名の評価の平均点が3.0点以上、4.0点未満
「不可×」:滑らかさが感じられず、紙がゴワゴワする。使用感が悪いと感じる。50名の評価の平均点が3.0点未満
【0047】
表1に、各実施例の条件及び評価結果を示し、表2に、各比較例の条件及び評価結果を示す。なお、上記の評価が全て「可」以上で合格とした。
【0048】
【0049】
【0050】
以上より、本実施例によれば紙の破れにくさ、プライのずれにくさ、適切な総吸水量及び触感の滑らかさを満たすことができる紙製ハンドタオルが得られることが少なくとも確認された。