(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028922
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】作業機械、及び、作業機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230224BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
E02F9/20 H
B62D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134905
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】園田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中江 好秀
【テーマコード(参考)】
2D003
3D232
【Fターム(参考)】
2D003AA03
2D003AB01
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
3D232DA03
3D232EB04
3D232GG12
(57)【要約】
【課題】ステアリング自動制御中にアーティキュレート角が変化したとしても目標方向に移動させることができる作業機械が、提供される。
【解決手段】作業機械は、車体と、操向輪と、アクチュエータと、コントローラと、を備える。車体は、リアフレームと、リアフレームに対して回動するようにリアフレームに連結されるフロントフレームと、を含む。操向輪は、フロントフレームに支持される。アクチュエータは、操向輪の操舵角を変更する。コントローラは、アクチュエータを制御する。コントローラは、車体が進行する目標方向を決定する。コントローラは、リアフレームに対するフロントフレームのアーティキュレート角を取得する。コントローラは、アーティキュレート角に応じてアクチュエータを制御することによって、車体が目標方向に移動するように操舵角を設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアフレームと、前記リアフレームに対して回動するように前記リアフレームに連結されるフロントフレームと、を含む車体と、
前記フロントフレームに支持される操向輪と、
前記操向輪の操舵角を変更するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記車体が進行する目標方向を決定し、
前記リアフレームに対する前記フロントフレームのアーティキュレート角を取得し、
前記アーティキュレート角に応じて前記アクチュエータを制御することによって、前記車体が前記目標方向に移動するように前記操舵角を設定する、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記車体の現在の進行方向を取得し、
前記現在の進行方向が前記目標方向に一致するように、前記アーティキュレート角に応じて前記操舵角を設定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記車体は、前記リアフレームに設けられる方向センサ、をさらに含み、
前記コントローラは、前記現在の進行方向を前記方向センサから取得する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
リアフレームと前記リアフレームに対して回動するように前記リアフレームに連結されるフロントフレームとを含む車体と、前記フロントフレームに支持される操向輪と、前記操向輪の操舵角を変更するアクチュエータと、を含む作業機械を制御するための方法であって、
前記車体が進行する目標方向を決定することと、
前記リアフレームに対する前記フロントフレームのアーティキュレート角を取得することと、
前記アーティキュレート角に応じて前記アクチュエータを制御することによって、前記車体が前記目標方向に移動するように前記操舵角を設定することと、
を備える方法。
【請求項5】
前記車体の現在の進行方向を取得することと、
前記現在の進行方向が前記目標方向に一致するように、前記アーティキュレート角に応じて前記操舵角を設定することと、
をさらに備える請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、及び、作業機械を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機械は、リアフレームと、リアフレームに対して回動するフロントフレームと、フロントフレームに支持される操向輪と、を有するものがある(特許文献1を参照)。このタイプの作業機械では、リアフレームに対するフロントフレームの回動と、操向輪の操舵角の変更によって、作業機械の進行方向が決定される。
【0003】
作業機械は、走行中に土砂による負荷、或いは路面の不均一により、目標とする目標方向から逸れやすい。そのため、オペレータは、ブレードなどの作業機を操作しながら、進路を維持するためにステアリング部材の操作を同時に行う必要がある。このような操作は、難易度が高く、オペレータへの操作負担が大きい。
【0004】
そこで、特許文献1では、作業機械が進行方向を目標方向に維持するように、操舵角を自動的に制御するステアリング自動制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の作業機械では、ステアリング自動制御によって作業機械は目標方向に進む。例えば、従来の作業機械では、リアフレームに対するフロントフレームの回動角度であるアーティキュレート角がゼロである場合において、ステアリング自動制御が実行されている。この場合、ステアリング自動制御の実行中では、コントローラは、作業機械が目標方向に進んでいるか否かを判断する。ここで、作業機械の進行方向が目標方向から逸れた場合には、コントローラは、操舵角を制御することによって作業機械を目標方向に進ませる。
【0007】
本発明の目的は、アーティキュレート角が変化したとしても目標方向に移動させることができる作業機械を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る作業機械は、車体と、操向輪と、アクチュエータと、コントローラと、を備える。車体は、リアフレームと、リアフレームに対して回動するようにリアフレームに連結されるフロントフレームと、を含む。操向輪は、フロントフレームに支持される。アクチュエータは、操向輪の操舵角を変更する。コントローラは、アクチュエータを制御する。
【0009】
コントローラは、車体が進行する目標方向を決定する。コントローラは、リアフレームに対するフロントフレームのアーティキュレート角を取得する。コントローラは、アーティキュレート角に応じてアクチュエータを制御することによって、車体が目標方向に移動するように操舵角を設定する。
【0010】
本発明の他の態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。作業機械は、車体と、操向輪と、アクチュエータと、を含む。車体は、リアフレームと、リアフレームに対して回動するようにリアフレームに連結されるフロントフレームと、を含む。操向輪は、フロントフレームに支持される。
【0011】
本態様に係る方法は、車体が進行する目標方向を決定することと、リアフレームに対するフロントフレームのアーティキュレート角を取得することと、アーティキュレート角に応じてアクチュエータを制御することによって車体が目標方向に移動するように操舵角を設定することと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車体の目標方向を取得した状態において、アーティキュレート角に応じてアクチュエータが制御される。このアクチュエータの制御によって、車体が目標方向に移動するように操舵角が設定される。これにより、アーティキュレート角が変化したとしても、作業機械を目標方向に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】自動制御中にアーティキュレート角に応じて操舵角を設定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る作業機械1の斜視図である。
図2は、作業機械1の側面図である。
図1に示すように、作業機械1は、車体2と、前輪3A,3Bと、後輪4A-4Dと、作業機5とを備える。車体2は、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、キャブ13と、動力室14とを含む。
【0015】
リアフレーム12は、フロントフレーム11に接続されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して回動するようにリアフレーム12に連結されている。例えば、フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して、左右にアーティキュレート可能である。
【0016】
なお、以下の説明において、前後左右の各方向は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11のアーティキュレート角がゼロである状態、すなわち、フロントフレーム11とリアフレーム12とが真っすぐな状態で、車体2の前後左右の各方向が定義される。
【0017】
キャブ13と動力室14とは、リアフレーム12上に配置されている。キャブ13には、図示しない運転席が配置されている。動力室14は、キャブ13の後方に配置されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12から前方へ延びている。前輪3A,3Bは、フロントフレーム11に取り付けられている。前輪3A,3Bは、左右方向に離れて配置されている。前輪3A,3Bは、フロントフレーム11に回転可能に支持される。後輪4A-4Dは、リアフレーム12に取り付けられている。
【0018】
作業機5は、車体2に対して可動的に接続されている。作業機5は、支持部材15とブレード16とを含む。支持部材15は、車体2に可動的に接続されている。支持部材15は、ブレード16を支持している。支持部材15は、ドローバ17とサークル18とを含む。ドローバ17は、フロントフレーム11の下方に配置される。
【0019】
ドローバ17は、フロントフレーム11の前部19に接続されている。ドローバ17は、フロントフレーム11の前部19から後方へ延びている。ドローバ17は、フロントフレーム11に対して、少なくとも車体2の上下方向と左右方向とに揺動可能に支持されている。例えば、前部19は、ボールジョイントを含む。ドローバ17は、ボールジョイントを介して、フロントフレーム11に対して回転可能に接続されている。
【0020】
サークル18は、ドローバ17の後部に接続されている。サークル18は、ドローバ17に対して回転可能に支持される。ブレード16は、サークル18に接続される。ブレード16は、サークル18を介して、ドローバ17に支持されている。
図2に示すように、ブレード16は、チルト軸21回りに回転可能にサークル18に支持されている。チルト軸21は、左右方向に延びている。
【0021】
図2に示すように、作業機械1は、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bと、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28と、を備えている。
【0022】
複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、前輪3A,3Bを操舵するために用いられる。例えば、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、油圧シリンダである。複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、前輪3A,3Bに各別に接続されている。複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、油圧によって伸縮する。以下の説明では、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bの伸縮、例えば油圧シリンダの伸縮が、「ストローク動作」と記される。
【0023】
複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、左ステアリングアクチュエータ41Aと、右ステアリングアクチュエータ41Bと、を含む。左ステアリングアクチュエータ41Aと右ステアリングアクチュエータ41Bとは、左右方向に互いに離れて配置されている。
【0024】
左ステアリングアクチュエータ41Aは、フロントフレーム11と前輪3Aとに接続されている。右ステアリングアクチュエータ41Bは、フロントフレーム11と前輪3Bに接続されている。左ステアリングアクチュエータ41Aと右ステアリングアクチュエータ41Bとのストローク動作により、前輪3A,3Bが操舵される。
【0025】
図2では、左ステアリングアクチュエータ41Aが図示され、右ステアリングアクチュエータ41Bは図示されていない。左ステアリングアクチュエータ41Aと右ステアリングアクチュエータ41Bとは対をなす部材であるので、
図2では、図示されていない部材については括弧内に符号が記されている。
【0026】
複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、リアフレーム12に対してフロントフレーム11を回動させるために用いられる。例えば、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、油圧シリンダである。複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、フロントフレーム11とリアフレーム12とに接続されている。複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、油圧によって伸縮する。
【0027】
複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28と、を含む。左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28とは、左右方向に互いに離れて配置されている。
【0028】
左アーティキュレートシリンダ27は、車体2の左側において、フロントフレーム11とリアフレーム12とに接続されている。右アーティキュレートシリンダ28とは、車体2の右側において、フロントフレーム11とリアフレーム12とに接続されている。左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28とのストローク動作により、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して左右に回動する。
【0029】
図1では、右アーティキュレートシリンダ28が図示され、左アーティキュレートシリンダ27は図示されていない。
図2では、左アーティキュレートシリンダ27が図示され、右アーティキュレートシリンダ28は図示されていない。左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28とは対をなす部材であるので、
図1及び
図2では、図示されていない部材については括弧内に符号が記されている。
【0030】
図2に示すように、作業機械1は、作業機5の姿勢を変更するための複数のアクチュエータ22-26を備えている。例えば、複数のアクチュエータ22-25は、油圧シリンダである。アクチュエータ26は、回転アクチュエータである。本実施形態では、アクチュエータ26は油圧モータである。アクチュエータ26は、電動モータであってもよい。
【0031】
複数のアクチュエータ22-25は、作業機5に接続されている。複数のアクチュエータ22-25は、油圧によって伸縮する。複数のアクチュエータ22-25は、伸縮することで、車体2に対する作業機5の姿勢を変更する。
【0032】
詳細には、複数のアクチュエータ22-25は、左リフトシリンダ22と、右リフトシリンダ23と、ドローバシフトシリンダ24と、ブレードチルトシリンダ25と、を含む。
【0033】
左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、左右方向に互いに離れて配置されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、ドローバ17に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、リフタブラケット29を介して、フロントフレーム11に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とのストローク動作により、ドローバ17は、上下に揺動する。それにより、ブレード16が上下に移動する。
【0034】
ドローバシフトシリンダ24は、ドローバ17とフロントフレーム11とに接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、リフタブラケット29を介してフロントフレーム11に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11からドローバ17に向かって、斜め下方に延びている。ドローバシフトシリンダ24のストローク動作により、ドローバ17は、左右に揺動する。
【0035】
ブレードチルトシリンダ25は、サークル18とブレード16とに接続されている。ブレードチルトシリンダ25のストローク動作により、ブレード16がチルト軸21回りに回転する。
【0036】
アクチュエータ26は、ドローバ17とサークル18とに接続されている。アクチュエータ26は、ドローバ17に対してサークル18を回転させる。それにより、ブレード16が、上下方向に延びる回転軸回りに回転する。
【0037】
図3は、作業機械1の構成を示す模式図である。
図3に示すように、作業機械1は、駆動源31と、第1油圧ポンプ32と、第2油圧ポンプ48と、第1パイロットバルブ49と、第2パイロットバルブ50と、を含む。作業機械1は、ステアリングバルブ42Aと、アーティキュレートバルブ42Bと、作業機バルブ34と、を含む。作業機械1は、動力伝達装置33を含む。
【0038】
駆動源31は、例えば内燃機関である。或いは、駆動源31は、電動モータ、或いは内燃機関と電動モータとのハイブリッドであってもよい。
【0039】
第1油圧ポンプ32は、駆動源31によって駆動されることで、作動油を吐出する。第1油圧ポンプ32は、ステアリングバルブ42Aと、アーティキュレートバルブ42Bと、作業機バルブ34とに、作動油を供給する。これらのバルブを介して供給される作動油により、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bと、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28と、複数のアクチュエータ22-26とが、作動する。
【0040】
第2油圧ポンプ48は、駆動源31によって駆動されることで、作動油を吐出する。第1パイロットバルブ49は、油圧回路を介して、第2油圧ポンプ48とステアリングバルブ42Aとに、接続されている。第1パイロットバルブ49は、第2油圧ポンプ48からステアリングバルブ42Aのパイロットポートに供給される作動油の圧力を制御する。第1パイロットバルブ49は、電磁比例制御弁である。
【0041】
第2パイロットバルブ50は、油圧回路を介して、第2油圧ポンプ48と後述するステアリングバルブ42Aとに接続されている。第2パイロットバルブ50は、第2ステアリング部材46に接続されている。第2パイロットバルブ50は、第2ステアリング部材46の操作に応じて、第2油圧ポンプ48からステアリングバルブ42Aのパイロットポートに供給される作動油の圧力(以下、「パイロット油圧」と呼ぶ)を制御する。なお、第2パイロットバルブ50は、第1パイロットバルブ49と同様に、電磁比例制御弁であってもよい。
【0042】
ステアリングバルブ42Aは、油圧回路を介して、第1油圧ポンプ32と複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bとに接続されている。ステアリングバルブ42Aは、第1油圧ポンプ32から複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bに供給される作動油の流量を、制御する。例えば、ステアリングバルブ42Aは、油圧パイロット式の制御弁である。第1油圧ポンプ32の作動油がステアリングバルブ42Aに供給されることによって、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bはストローク動作を行う。
【0043】
アーティキュレートバルブ42Bは、油圧回路を介して、第1油圧ポンプ32と複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28とに接続されている。アーティキュレートバルブ42Bは、第1油圧ポンプ32から複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28に供給される作動油の流量を、制御する。例えば、アーティキュレートバルブ42Bは、油圧パイロット式の制御弁である。第1油圧ポンプ32の作動油がアーティキュレートバルブ42Bに供給されることによって、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28はストローク動作を行う。
【0044】
作業機バルブ34は、油圧回路を介して、第1油圧ポンプ32と複数のアクチュエータ22-26とに接続されている。作業機バルブ34は、複数のアクチュエータ22-26それぞれに接続される複数の弁を、含む。作業機バルブ34は、第1油圧ポンプ32から複数のアクチュエータ22-26に供給される作動油の流量を、制御する。作業機バルブ34は、例えば電磁比例制御弁である。或いは、作業機バルブ34は、油圧パイロット式の比例制御弁であってもよい。
【0045】
動力伝達装置33は、駆動源31からの駆動力を後輪4A-4Dに伝達する。動力伝達装置33は、トルクコンバータ、及び/又は、複数の変速ギアを含んでもよい。或いは、動力伝達装置33は、HST(Hydraulic Static Transmission)、或いは、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などのトランスミッションであってもよい。
【0046】
図3に示すように、作業機械1は、第1ステアリング部材45と、第2ステアリング部材46と、アーティキュレートレバー55と、作業機操作部材35と、シフト部材53と、アクセル操作部材36と、を含む。
【0047】
第1ステアリング部材45と第2ステアリング部材46とは、前輪3A,3Bを操舵するためにオペレータによって操作可能である。第1ステアリング部材45は、ジョイスティックなどのレバーである。或いは、第1ステアリング部材45は、レバー以外の部材であってもよい。
【0048】
第1ステアリング部材45は、中立位置N1から左右に傾倒可能である。第1ステアリング部材45は、第1操作センサ51に接続されている。第1操作センサ51は、作業機械1に含まれる。第1操作センサ51は、オペレータによる第1ステアリング部材45への操作を示す第1操作信号を出力する。例えば、第1操作センサ51は、第1ステアリング部材45の傾倒角度を検出し、第1ステアリング部材45の傾倒角度に対応する第1操作信号を出力する。
【0049】
第2ステアリング部材46は、ステアリングホイールである。或いは、第2ステアリング部材46は、ステアリングホイール以外の部材であってもよい。第2ステアリング部材46は、オペレータによって操作されていない場合、最後に操作された位置に保持される。第1ステアリング部材45と第2ステアリング部材46とが同時に操作される場合、第2ステアリング部材46の操作が優先される。
【0050】
第2ステアリング部材46は、回転軸Ax1回りに回転可能である。第2ステアリング部材46には、第2操作センサ47が取り付けられている。第2操作センサ47は、作業機械1に含まれる。第2操作センサ47は、オペレータによる第2ステアリング部材46への操作を示す第2操作信号を出力する。例えば、第2操作センサ47は、第2ステアリング部材46の回転軸Ax1回りの角度変位を検出し、第2ステアリング部材46の角度変位に対応する第2操作信号を出力する。
【0051】
アーティキュレートレバー55は、リアフレーム12に対してフロントフレーム11を回動させるためにオペレータによって操作可能である。アーティキュレートレバー55は、ジョイスティックなどのレバーである。或いは、アーティキュレートレバー55は、レバー以外の部材であってもよい。
【0052】
アーティキュレートレバー55は、中立位置N2から左右に傾倒可能である。アーティキュレートレバー55は、第3操作センサ60に接続されている。第3操作センサ60は、作業機械1に含まれる。第3操作センサ60は、オペレータによるアーティキュレートレバー55への操作を示す第3操作信号を出力する。例えば、第3操作センサ60は、アーティキュレートの操作量を検出し、アーティキュレートの操作量に対応する第3操作信号を出力する。
【0053】
作業機操作部材35は、作業機5の姿勢を変更するためにオペレータによって操作可能である。作業機操作部材35は、例えば複数の操作レバーを含む。或いは、作業機操作部材35は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。作業機操作部材35は、オペレータによる作業機操作部材35への操作を示す信号を出力する。
【0054】
シフト部材53は、作業機械1の前進と後進とを切り換えるためのオペレータによって操作可能である。シフト部材53は、例えばシフトレバーを含む。或いは、シフト部材53は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。シフト部材53は、オペレータによるシフト部材53への操作を示す信号を出力する。
【0055】
アクセル操作部材36は、作業機械1を走行させるためにオペレータによって操作可能である。アクセル操作部材36は、例えばアクセルペダルを含む。或いは、アクセル操作部材36は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。アクセル操作部材36は、オペレータによるアクセル操作部材36への操作を示す信号を出力する。
【0056】
作業機械1は、方向センサ52と、操舵角センサ40と、アーティキュレート角センサ30と、を備えている。方向センサ52は、車体2の進行方向を検出する。方向センサ52は、車体2の進行方向を示す方向信号を出力する。方向センサ52は、例えばIMU(慣性計測装置)である。或いは、方向センサ52は、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバであってもよい。
【0057】
操舵角センサ40は、前輪3A,3Bの操舵角θ1を検出するために用いられる。操舵角センサ40は、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bのストローク量を検出する。操舵角センサ40は、これらストローク量を示すストローク信号を出力する。なお、操舵角センサ40は、操舵角θ1を直接的に検出してもよい。この場合、操舵角センサ40は、操舵角θ1を示す角度信号を出力する。
【0058】
ここで、操舵角θ1は以下のように定義される。
図4Aに示すように、作業機械1は、第1ステアリング軸43Aと、第2ステアリング軸43Bと、を含む。第1ステアリング軸43Aと、第2ステアリング軸43Bとは、前輪3A,3Bの回動軸である。
【0059】
第1ステアリング軸43Aと第2ステアリング軸43Bとは、フロントフレーム11に設けられる。第1ステアリング軸43Aと第2ステアリング軸43Bとは、上下方向に延びている。第1ステアリング軸43Aと第2ステアリング軸43Bとは、前輪3A,3Bを各別に回動可能に支持する。
【0060】
操舵角θ1は、第1ステアリング軸43A及び第2ステアリング軸43Bを中心としてフロントフレーム11に対して前輪3A,3Bが回動する角度である。例えば、操舵角θ1は、フロントフレーム11の前後方向に対する前輪3A,3Bの回動角度である。
【0061】
詳細には、第1中心線L1がフロントフレーム11に定義される。第1中心線L1は、フロントフレーム11の前後方向に延びるフロントフレーム11の中心線である。第1中心線L1は、作業機械1の上面視で、後述するアーティキュレート軸44を通過する。操舵角θ1は、第1中心線L1を基準とした前輪3A,3Bの回動角度である。
【0062】
操舵角θ1は、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bのストローク動作によって中立位置から左右に変化する。中立位置の操舵角θ1は、ゼロ度である。前輪3A,3Bは、中立位置において、フロントフレーム11の第1中心線L1と平行に配置される。なお、
図4Aにおいて、3A'及び3B'は、中立位置から操舵角θ1だけ操舵された状態の前輪を示している。
【0063】
アーティキュレート角センサ30は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11のアーティキュレート角θ2を検出するために用いられる。アーティキュレート角センサ30は、左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28とのストローク量を検出する。アーティキュレート角センサ30は、これらのストローク量を示すストローク信号を出力する。なお、アーティキュレート角センサ30は、アーティキュレート角θ2を直接的に検出してもよい。この場合、アーティキュレート角センサ30は、アーティキュレート角θ2を示す角度信号を出力する。
【0064】
ここで、アーティキュレート角θ2は以下のように定義される。
図4Bに示すように、作業機械1は、アーティキュレート軸44を含む。アーティキュレート軸44は、フロントフレーム11とリアフレーム12とに設けられる。アーティキュレート軸44は、上下方向に延びている。アーティキュレート軸44は、フロントフレーム11を回動可能に支持する。
【0065】
アーティキュレート角θ2は、アーティキュレート軸44を中心としてリアフレーム12に対してフロントフレーム11が回動する角度である。例えば、第2中心線L2がリアフレーム12に定義される。第2中心線L2は、リアフレーム12の前後方向に延びるリアフレーム12の中心線である。第2中心線L2は、作業機械1の上面視でアーティキュレート軸44を通過する。
【0066】
アーティキュレート角θ2は、第1中心線L1及び第2中心線L2がなす角度である。アーティキュレート角θ2がゼロである場合、
図4Aに示すように、第2中心線L2の方向は、第1中心線L1の方向と一致する。なお、
図4Bでは、第1中心線L1がアーティキュレート軸44を基準として第2中心線L2に対してアーティキュレート角θ2だけ回動した状態が、示されている。
【0067】
図3に示すように、作業機械1は、コントローラ37を含む。コントローラ37は、記憶装置38とプロセッサ39とを含む。プロセッサ39は、例えばCPUであり、作業機械1を制御するためのプログラムを実行する。記憶装置38は、RAM及びROMなどのメモリと、SSD或いはHDDなどの補助記憶装置を含む。記憶装置38は、作業機械1を制御するためのプログラムとデータとを記憶している。
【0068】
コントローラ37は、第1操作センサ51からの第1操作信号により、第1ステアリング部材45の操作量を取得する。コントローラ37は、第2操作センサ47からの第2操作信号により、第2ステアリング部材46の操作量を取得する。コントローラ37は、第1操作信号及び第2操作信号を同時に取得した場合、第2操作信号を優先する。
【0069】
第1ステアリング部材45が操作される場合、コントローラ37は、第1操作信号に応じて第1パイロットバルブ49を制御することで、ステアリングバルブ42Aへのパイロット油圧を制御する。それにより、ステアリングバルブ42Aから複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bに供給される作動油が制御され、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bが伸縮する。その結果、前輪3A,3Bの操舵角θ1が変更される。
【0070】
また、第2ステアリング部材46が操作される場合、第2ステアリング部材46の操作に応じて、第2パイロットバルブ50がステアリングバルブ42Aへのパイロット油圧を制御する。それにより、ステアリングバルブ42Aから複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bに供給される作動油が制御され、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bが伸縮する。その結果、前輪3A,3Bの操舵角θ1が変更される。なお、コントローラ37は、第2操作信号に応じて第1パイロットバルブ49を制御することで、ステアリングバルブ42Aに出力するパイロット圧を調整してもよい。それにより、前輪3A,3Bの操舵角θ1が変更されてもよい。その場合、第2パイロットバルブ50は、省略されてもよい。
【0071】
コントローラ37は、アーティキュレートレバー55からの第3操作信号により、アーティキュレートレバー55の操作量を取得する。コントローラ37は、アーティキュレートバルブ42Bを制御する。例えば、コントローラ37は、第3操作信号に応じてアーティキュレートバルブ42Bを制御することによって、左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28を伸縮させる。これにより、コントローラ37は、アーティキュレート角θ2を変化させる。
【0072】
コントローラ37は、シフト部材53の操作に応じて、動力伝達装置33を制御する。これにより、作業機械1の進行方向を、前進と後進とに切り換える。或いは、シフト部材53は、機械的に動力伝達装置33に接続されてもよい。シフト部材53の動作を機械的に動力伝達装置33に伝達することで、動力伝達装置33の前進と後進のギアが切り替えられてもよい。
【0073】
コントローラ37は、アクセル操作部材36の操作に応じて、駆動源31及び動力伝達装置33を制御する。これにより、作業機械1が走行する。また、コントローラ37は、作業機操作部材35の操作に応じて、第1油圧ポンプ32と作業機バルブ34とを制御する。これにより、作業機5が動作する。
【0074】
次に、コントローラ37によって実行されるステアリング自動制御について説明する。ステアリング自動制御では、コントローラ37は、作業機械1の進行方向を目標方向に保持するように、アーティキュレート角θ2に応じて、操舵角θ1を制御する。
図5は、ステアリング自動制御の処理を示すフローチャートである。
【0075】
ステップS101では、コントローラ37は、目標方向を取得する。例えば、コントローラ37は、第1ステアリング部材45の操作によって作業機械1が旋回した後の、車体2の進行方向を、目標方向として決定する。或いは、コントローラ37は、予め設定された目標経路に沿って作業機械1が移動するように、目標方向を決定してもよい。例えば、目標経路は、オペレータによってコントローラ37に入力されてもよい。目標経路は、外部のコンピュータからコントローラ37に入力されてもよい。或いは、コントローラ37は、目標経路を自動的に生成してもよい。
【0076】
ステップS102では、コントローラ37は、車体2の現在の進行方向を取得する。コントローラ37は、方向センサ52からの方向信号により、車体2の現在の進行方向を取得する。
【0077】
ステップS103では、コントローラ37は、目標操舵角の初期値を取得する。目標操舵角の初期値は、アーティキュレート角θ2がゼロであるとしたときの目標操舵角である。コントローラ37は、作業機械1の現在の進行方向が目標方向と一致するように、目標操舵角の初期値を決定する。例えば、コントローラ37は、現在の進行方向と目標方向との差分に所定のゲインを乗じて得た値を、目標操舵角の初期値として決定する。コントローラ37は、車速が大きいほどゲインを小さくしてもよい。
【0078】
ステップS104では、コントローラ37は、アーティキュレート角θ2を取得する。コントローラ37は、アーティキュレート角センサ30からの角度信号により、アーティキュレート角θ2を取得する。
【0079】
ステップS105では、コントローラ37は、目標操舵角の修正値を算出する。コントローラ37は、目標操舵角の初期値を、アーティキュレート角θ2に応じて修正することで、目標操舵角の修正値を算出する。例えば、コントローラ37は、以下の式(1)により、目標操舵角の修正値を算出する。
A1=A0-θ2 ・・・(1)
A1は、目標操舵角の修正値である。A0は、目標操舵角の初期値である。なお、式(1)において、目標操舵角の修正値、初期値、及びアーティキュレート角の各値の正負は、回転方向が同じであれば、同じである。例えば、目標操舵角の修正値、初期値、及びアーティキュレート角は、中立位置から左方への角度を正の値、右方への角度を負の値としてもよい。或いは、目標操舵角の修正値、初期値、及びアーティキュレート角は、中立位置から左方への角度を負の値、右方への角度を正の値としてもよい。
【0080】
例えば、
図6Aに示すように、アーティキュレート角θ2がゼロ度である場合に、目標操舵角の初期値A0が+30度であるものとする。その場合、
図6Bに示すように、アーティキュレート角θ2が+15度である場合には、目標操舵角の修正値A1は、+15度となる。なお、これらの数値は、理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0081】
ステップS106では、コントローラ37は、実際の操舵角θ1が目標操舵角となるように、ステアリングアクチュエータ41A,41Bを制御する。アーティキュレート角θ2がゼロである場合には、目標操舵角は初期値A0である。アーティキュレート角θ2がゼロより小さい、或いはゼロより大きい場合には、目標操舵角は修正値A1である。
【0082】
ステアリング自動制御中、コントローラ37は、上述した処理を繰り返し実行する。それにより、作業機械1が目標方向に向かって走行するように、操舵角θ1が自動的に制御される。
【0083】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、コントローラ37は、車体2が進行する目標方向を決定する。コントローラ37は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11のアーティキュレート角θ2を取得する。コントローラ37は、アーティキュレート角θ2に応じて複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bを制御する。これにより、車体2が目標方向に移動するように操舵角θ1を設定する。
【0084】
このように作業機械1を構成することによって、車体2の目標方向を取得した状態において、アーティキュレート角θ2に応じて複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bが制御される。この複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bの制御によって、車体2が目標方向に移動するように操舵角θ1が設定される。これにより、アーティキュレート角θ2が変化したとしても、作業機械1を目標方向に移動させることができる。
【0085】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0086】
現在のアーティキュレート角θ2に応じて複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bを制御する処理は、上記の実施形態のように車体2が前進する場合だけでなく、車体2が後進する場合にも適用してもよい。この場合、コントローラ37は、上記の実施形態の操舵角θ1に対して”-1”を乗じてもよい。
【0087】
複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bの数は、前記実施形態に限定されず、1つであっても3つ以上であってもよい。複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、油圧シリンダに限らず、油圧モータ、或いは電動モータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、アーティキュレート角が変化したとしても、作業機械を目標方向に移動させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 作業機械
2 車体
3A,3B 前輪
11 フロントフレーム
12 リアフレーム
37 コントローラ
41A,41B ステアリングアクチュエータ
52 方向センサ
θ1 操舵角
θ2 アーティキュレート角