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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028932
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】描画用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/31 20180101AFI20230224BHJP
   F21V 11/08 20060101ALI20230224BHJP
   F21S 43/40 20180101ALI20230224BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20230224BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20230224BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230224BHJP
【FI】
F21S43/31
F21V11/08
F21S43/40
F21S43/14
F21W103:60
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134923
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 範彦
(57)【要約】
【課題】描画用配光パターンを形成するように構成された描画用灯具において、明瞭な描画用配光パターンを形成可能な構成を実現する。
【解決手段】発光素子20と投影レンズ30との間に、発光素子20から投影レンズ30へ向かう光の一部を遮光するための遮光板40を配置し、その所要領域に遮光板40を貫通する開口部42を形成する。これにより、描画用配光パターンを開口部42の開口形状に応じた配光パターンとして形成可能する。その際、開口部42における内周面42aの構成として、発光素子20の発光中心からの出射光が投影レンズ30に入射しないように形成された表面形状を有するものとする。これにより、開口部42の開口形状が容易に変形しない程度に遮光板40の板厚を厚くしても、開口部42の内周面42aでの光反射によって描画用配光パターンの輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを効果的に抑制する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子からの出射光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、描画用配光パターンを形成するように構成された描画用灯具において、
上記発光素子と上記投影レンズとの間に、上記発光素子から上記投影レンズへ向かう光の一部を遮光するための遮光板が配置されており、
上記遮光板の所要領域に、上記遮光板を貫通する開口部が形成されており、
上記開口部の内周面は、上記発光素子の発光中心からの出射光が上記投影レンズに入射しないように形成された表面形状を有している、ことを特徴とする描画用灯具。
【請求項2】
上記遮光板は、上記投影レンズの光軸と直交する平面に対して灯具前後方向に傾斜した方向に延びる傾斜面に沿って配置されており、
上記開口部は、上記光軸と上記傾斜面との挟角よりも小さい傾斜角度で、上記遮光板の傾斜方向と同じ方向へ向けて延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の描画用灯具。
【請求項3】
上記開口部の内周面は、上記遮光板の傾斜方向に関して灯具前方側に位置する前方側内周面と灯具後方側に位置する後方側内周面とを備えており、
上記前方側内周面の後端縁および上記後方側内周面の前端縁が上記投影レンズの後側焦点面上に位置している、ことを特徴とする請求項2記載の描画用灯具。
【請求項4】
上記前方側内周面は、灯具前方へ向けて上記遮光板の傾斜方向と直交する方向に拡がるように形成されており、
上記後方側内周面は、灯具後方へ向けて上記遮光板の傾斜方向と直交する方向に拡がるように形成されている、ことを特徴とする請求項3記載の描画用灯具。
【請求項5】
上記発光素子は、上記光軸に対して上記前方側内周面と同じ側に発光中心が位置するように配置されている、ことを特徴とする請求項3または4記載の描画用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、描画用配光パターンを形成するように構成された描画用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、描画用配光パターン(すなわち灯具前方路面等に文字や記号等の描画を行うための配光パターン)を形成するための描画用灯具として、発光素子からの出射光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、車載用の描画用灯具として、ロービーム用配光パターンと共に描画用配光パターンを灯具前方路面に形成するように構成されたものが記載されている。
【0004】
この「特許文献1」に記載された描画用灯具は、発光素子と投影レンズとの間に、発光素子から投影レンズへ向かう光の一部を遮光するための遮光板が配置された構成となっており、この遮光板に形成された開口部の開口形状に応じた描画用配光パターンを形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-189198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような車載用の描画用灯具からの照射光によって描画用配光パターンを形成することにより、夜間の車両走行時等に周囲に対して自車の意思表示を行うことでき、これにより他の車両や歩行者等に注意喚起を促すことが可能となる。
【0007】
その際、周囲に対する注意喚起機能を十分に確保するためには、明瞭な描画用配光パターンが形成されるようにすることが望まれる。そのためには描画用配光パターンの輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを抑制することが肝要である。
【0008】
また、明瞭な描画用配光パターンを形成するためには、遮光板の構成として、その開口部の開口形状が容易に変形してしまわないものとする必要があり、そのためには一定値以上の板厚を確保する必要がある。一方、遮光板の板厚を厚くした場合には、発光素子からの出射光のうち遮光板の内周面で反射する光の割合が大きくなるので、その反射光によって描画用配光パターンの輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生しやすくなってしまう。
【0009】
なお、車載用以外の描画用灯具においても、明瞭な描画用配光パターンを形成することが望まれる。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、描画用配光パターンを形成するように構成された描画用灯具において、明瞭な描画用配光パターンを形成することができる描画用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、遮光板の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る描画用灯具は、
発光素子からの出射光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、描画用配光パターンを形成するように構成された描画用灯具において、
上記発光素子と上記投影レンズとの間に、上記発光素子から上記投影レンズへ向かう光の一部を遮光するための遮光板が配置されており、
上記遮光板の所要領域に、上記遮光板を貫通する開口部が形成されており、
上記開口部の内周面は、上記発光素子の発光中心からの出射光が上記投影レンズに入射しないように形成された表面形状を有している、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「描画用灯具」は、車載用の灯具であってもよいし、車載用以外の用途に用いられる灯具であってもよい。
【0014】
上記「描画用配光パターン」が形成される対象は、典型的には灯具前方路面であるが、それ以外にも灯具前方に配置された壁面や灯具前方へ向けて延びる壁面等が採用可能である。
【0015】
上記「遮光板」は、発光素子と投影レンズとの間において、発光素子から投影レンズへ向かう光の一部を遮光するように構成されていれば、その具体的な配置は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「所要領域」の具体的な位置および範囲は特に限定されるものではなく、例えば投影レンズの光軸を含む領域等が採用可能である。
【0017】
上記「開口部」の具体的な開口形状は特に限定されるものではない。
【0018】
上記「開口部の内周面」は、発光素子の発光中心からの出射光が投影レンズに入射しないように形成された表面形状を有していれば、その具体的な形状は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
本願発明に係る描画用灯具は、発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより描画用配光パターンを形成する構成となっているが、発光素子と投影レンズとの間には発光素子から投影レンズへ向かう光の一部を遮光するための遮光板が配置されており、この遮光板の所要領域には遮光板を貫通する開口部が形成されているので、描画用配光パターンを開口部の開口形状に応じた配光パターンとして形成することができる。
【0020】
その際、遮光板における開口部の内周面は、発光素子の発光中心からの出射光が投影レンズに入射しないように形成された表面形状を有しているので、開口部の内周面での光反射によって描画用配光パターンの輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができ、これにより明瞭な描画用配光パターンが形成されるようにすることができる。
【0021】
またこれにより、遮光板の構成として、その開口部の開口形状が容易に変形しない程度に板厚を厚くしたような場合であっても、その開口部の内周面での光反射によって描画用配光パターンの輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。したがって、遮光板の剛性不足に起因して明瞭な描画用配光パターンが形成されなくなってしまうといった不具合の発生を未然に防止することができる。
【0022】
このように本願発明によれば、描画用配光パターンを形成するように構成された描画用灯具において、明瞭な描画用配光パターンを形成可能な構成を実現することができる。そしてこれにより周囲に対する注意喚起機能を高めることができる。
【0023】
上記構成において、さらに、遮光板の構成として、投影レンズの光軸と直交する平面に対して灯具前後方向に傾斜した方向に延びる傾斜面に沿って配置されたものとすれば、描画用灯具の意匠等に応じた姿勢で遮光板を配置することが容易に可能となり、その配置自由度を高めることができる。その際、遮光板の開口部として、上記光軸と上記傾斜面との挟角よりも小さい傾斜角度で、遮光板の傾斜方向と同じ方向へ向けて延びるように形成されたものとすれば、開口部の内周面として、発光素子の発光中心からの出射光が投影レンズに入射しない表面形状を有するものとすることが容易に可能となる。
【0024】
このような構成を採用した場合において、開口部の内周面として、遮光板の傾斜方向に関して灯具前方側に位置する前方側内周面と灯具後方側に位置する後方側内周面とを備えた構成とした上で、前方側内周面の後端縁および後方側内周面の前端縁が投影レンズの後側焦点面上に位置する構成とすれば、描画用配光パターンの輪郭をより明瞭なものとすることができる。
【0025】
さらにその際、開口部の構成として、前方側内周面が灯具前方へ向けて遮光板の傾斜方向と直交する方向に拡がるように形成されるとともに、後方側内周面が灯具後方へ向けて遮光板の傾斜方向と直交する方向に拡がるように形成されたものとすれば、開口部の前方側内周面および後方側内周面で反射した光が投影レンズに一層入射しにくくなる構成とすることができる。そしてこれにより描画用配光パターンの輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを一層効果的に抑制することができる。
【0026】
なお、上記構成に加えて、開口部の内周面に黒色塗装等が施された構成とすることも可能であり、このような構成を採用することにより描画用配光パターンの輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうのをより一層効果的に抑制することができる。
【0027】
上記構成において、さらに、発光素子の構成として、投影レンズの光軸に対して開口部の前方側内周面と同じ側に発光中心が位置するように配置されたものとすれば、発光素子からの出射光を遮光板の開口部に効率良く入射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本願発明の第1実施形態に係る描画用灯具を示す正面図
図2図1のII-II線断面図
図3】(a)は図2の要部詳細図、(b)は上記描画用灯具からの照射光により灯具前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される描画用配光パターンを示す図、(c)は上記第1実施形態の比較例を示す(b)と同様の図
図4】上記描画用灯具を車両に搭載された状態で示す側面図
図5】(a)は上記描画用灯具からの照射光により灯具前方の路面に形成される描画用配光パターンを透視的に示す図、(b)は上記比較例を示す(a)と同様の図
図6】上記第1実施形態の第1変形例を示す、図2と同様の図
図7】上記第1変形例の作用を示す、図5(a)と同様の図
図8】上記第1実施形態の第2変形例を示す、図2と同様の図
図9】上記第2変形例の作用を比較例と共に示す、図5と同様の図
図10】本願発明の第2実施形態に係る描画用灯具を示す、図2と同様の図
図11図10のXI方向矢視図
図12】(a)は図10の要部詳細図、(b)は(a)のb方向矢視図
図13】上記第2実施形態の作用を示す、図5と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本願発明の第1実施形態に係る描画用灯具10を示す正面図である。また、図2は、図1のII-II線断面図であり、図3(a)は、図2の要部詳細図である。さらに、図4は、描画用灯具10を車両100に搭載された状態で示す側面図である。
【0031】
これらの図において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0032】
図4に示すように、本実施形態に係る描画用灯具10は、車両100の前端部に搭載される描画用ランプであって、灯具前方が車両前方に対して斜め下向きになるようにした状態で配置されている。そして、この描画用灯具10は、その照射光によって、車両前方路面2に描画用配光パターンPA1(これについては後述する)を形成するようになっている。
【0033】
図1~3(a)に示すように、描画用灯具10はプロジェクタ型の灯具ユニットであって、発光素子20から出射した直射光を、投影レンズ30を介して灯具前方へ向けて照射するように構成されており、その発光素子20と投影レンズ30との間には、発光素子20から投影レンズ30へ向かう光の一部を遮光するための遮光板40が配置されている。なお、図1~3(a)においては、灯具前後方向が水平方向に延びている状態で描画用灯具10を示している。
【0034】
投影レンズ30は、灯具前後方向に延びる光軸Axを有しており、その前面が凸曲面状に形成された平凸非球面レンズとして構成されている。この投影レンズ30は、灯具正面視において光軸Axを中心とする円形の外形形状を有しており、その外周縁部においてベース部材50のレンズ支持部50Aに支持されている。
【0035】
発光素子20は基板22に支持されており、この基板22はベース部材50の光源支持部50Bに支持されている。
【0036】
発光素子20は白色発光ダイオードであって、矩形状(具体的には正方形)の発光面20aを有している。この発光素子20は、その発光面20aを灯具正面方向へ向けた状態で、かつ、その発光中心(すなわち発光面20aの中心)Оを投影レンズ30の光軸Ax上に位置させた状態で配置されている。
【0037】
発光素子20は、図示しない電子制御ユニットに接続されており、車両走行状況等に応じて電子制御ユニットによる点消灯制御が行われるようになっている。
【0038】
発光素子20と投影レンズ30との間には、発光素子20から投影レンズ30へ向かう光の一部を遮光するための遮光板40が配置されている。
【0039】
遮光板40は、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる平板状部材で構成されており、1mm以上(例えば2mm程度)の板厚を有している。この遮光板40は、その前面40aが投影レンズ30の後側焦点面(すなわち投影レンズ30の後側焦点Fにおいて光軸Axと直交する鉛直面)上に位置するように配置された状態で、ベース部材50の遮光板支持部50Cに支持されている。
【0040】
遮光板40における光軸Axを含む領域には、遮光板40を灯具前後方向に貫通する開口部42が形成されている。この開口部42は、灯具正面視において光軸Axを中心とする正方形の開口形状を有しており、かつ、発光素子20の発光面20aよりも大きい開口形状を有しており、その開口形状が灯具後方へ向けて徐々に大きくなるように形成されている。
【0041】
すなわち、図3(a)に示すように、開口部42は、その前端縁の開口形状の中心が後側焦点Fに位置しており、その内周面42aは上下左右の各面が傾斜平面で構成されている。その際、内周面42aの各面は、発光素子20の発光中心Оからの出射光が投影レンズ30に入射しないように光軸Axに対する傾斜角度が設定されている。具体的には、内周面42aの各面の光軸Axに対する傾斜角度θ1は、θ1=10~30°程度(例えば15°程度)の値に設定されている。
【0042】
発光素子20は、遮光板40に対して比較的近接した位置に配置されている。具体的には、発光素子20は、その発光面20aと遮光板40の後面40bとの間隔が、遮光板40の板厚に対して0.5~2倍程度(例えば遮光板40の板厚と同程度)の値となるように、遮光板40との位置関係が設定されている。
【0043】
ベース部材50は、レンズ支持部50Aと光源支持部50Bと遮光板支持部50Cとが一体的に形成された構成となっている。なお、ベース部材50は金属製部材で構成されており、発光素子20で発生する熱を放散させるヒートシンクとして機能するようになっている。
【0044】
図2に示すように、本実施形態に係る描画用灯具10においては、発光素子20から出射した直射光の多くが遮光板40の開口部42に入射し、この開口部42を通過した光が投影レンズ30を介して灯具前方へ照射されるようになっている。
【0045】
その際、遮光板40は、その前面40aが投影レンズ30の後側焦点面上に位置しているので、その開口部42の前端縁の開口形状に応じた外形形状を有する配光パターンが、投影レンズ30による反転投影像として灯具前方の照射対象面に形成されることとなる。
【0046】
図3(b)は、灯具前方の照射対象面が、光軸Axと直交する鉛直面に沿って配置された仮想鉛直スクリーンである場合において、描画用灯具10からの照射光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成される描画用配光パターンPA1оを示す図である。
【0047】
図3(b)に示すように、描画用配光パターンPA1оは、上記仮想鉛直スクリーンにおいて光軸Axと交差する点であるH-Vを中心とする略正方形の配光パターンとして形成されている。
【0048】
一方、図3(c)は、遮光板40の開口部42として、図3(a)において2点鎖線で示すように、その内周面42a´を構成する上下左右の各面が光軸Axと平行に延びる平面で構成されているとした場合に、上記仮想鉛直スクリーン上に形成される描画用配光パターンPA1о´を示す図である。
【0049】
図3(c)に示すように、描画用配光パターンPA1о´も、描画用配光パターンPA1оと同様、上記仮想鉛直スクリーンにおいてH-Vを中心とする略正方形の配光パターンとして形成されるが、その輪郭部分には色ムラB1о´が発生してしまう。
【0050】
これは、発光素子20から出射して遮光板40の開口部42に入射した光の一部が、図3(a)において2点鎖線で示すように開口部42の内周面42a´で反射して灯具前方側へ出射し、この出射光が図2において2点鎖線で示すように投影レンズ30に入射することにより、特定の波長成分(例えば青色や黄色の波長成分)の光が灯具前方へ照射されてしまうことによるものである。
【0051】
これに対し、本実施形態の遮光板40は、発光素子20の発光中心Оからの出射光が投影レンズ30に入射しないように、その開口部42の内周面42aの表面形状が設定されているので、図3(a)において実線で示すように、発光素子20から出射して遮光板40の開口部42に入射した光の一部は、その内周面42aで反射して灯具前方側へ出射するものの、その出射方向は光軸Axに対して大きく傾斜した方向となる。したがって、この出射光は図2において実線で示すように投影レンズ30に入射することはなく、このため特定の波長成分の光が灯具前方へ照射されてしまうこともない。
【0052】
ただし、発光素子20の発光面20aは一定の大きさを有しているので、開口部42の内周面42aで反射した光の一部が投影レンズ30に入射することはあり得るが、その量は僅かである。したがって、図3(b)に示す描画用配光パターンPA1оにおいては、その輪郭部分に目視可能な色ムラが発生してしまうことはない。
【0053】
また、描画用配光パターンPA1оは、遮光板40の前面40aが投影レンズ30の後側焦点面上に位置していることから、その開口部42の前端縁の開口形状に対応した輪郭形状を有するボケのない配光パターンとして形成されている。
【0054】
図5(a)は、図4に示すように車両100に搭載された描画用灯具10からの照射光により車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPA1を透視的に示す図である。
【0055】
この路面描画用配光パターンPA1は、図示しない他の車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPLと共に(あるいは独立して)形成されるようになっている。
【0056】
描画用配光パターンPA1について説明する前に、ロービーム用配光パターンPLについて説明する。
【0057】
ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁にカットオフラインCL1、CL2を有している。
【0058】
カットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V-V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0059】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0060】
描画用配光パターンPA1は、周囲への注意喚起を促すための図形等を描画する配光パターンであって、車両前方路面2においてロービーム用配光パターンPLの手前側寄りの領域に形成されるようになっている。
【0061】
夜間の車両走行時に、このような描画用配光パターンPA1を形成することにより、例えば車両前方の交差点に自車が近づいていることを周囲に報知して注意喚起を促すようになっている。
【0062】
この描画用配光パターンPA1は、図3(b)に示す描画用配光パターンPA1оを車両前方路面2に投影させたものであって、略正方形の外形形状を有している。この描画用配光パターンPA1は、発光素子20が白色発光ダイオードで構成されているので、白色の配光パターンとして形成されるが、図3(b)に示す描画用配光パターンPA1оの輪郭部分に色ムラが発生していないことから、この描画用配光パターンPA1の輪郭部分にも色ムラが発生していない。
【0063】
一方、図5(b)に示す描画用配光パターンPA1´は、図3(c)に示す描画用配光パターンPA1о´を車両前方路面2に投影させたものである。
【0064】
この描画用配光パターンPA1´も、白色の配光パターンとして形成されるが、図3(b)に示す描画用配光パターンPA1оの輪郭部分に色ムラB1о´が発生していることから、この描画用配光パターンPA1の輪郭部分にも色ムラB1´が発生して青色や黄色等に見えてしまう。
【0065】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0066】
本実施形態に係る描画用灯具10は、発光素子20からの出射光を投影レンズ30を介して灯具前方へ向けて照射することにより描画用配光パターンPA1を形成する構成となっているが、発光素子20と投影レンズ30との間には発光素子20から投影レンズ30へ向かう光の一部を遮光するための遮光板40が配置されており、この遮光板40の所要領域(具体的には投影レンズ30の光軸Axを含む領域)には遮光板40を貫通する開口部42が形成されているので、描画用配光パターンPA1を開口部42の開口形状に応じた配光パターンとして形成することができる。
【0067】
その際、遮光板40は、その前面40aが投影レンズ30の後側焦点面上に位置しているので、描画用配光パターンPA1の輪郭形状がボケてしまうことはない。その上で、遮光板40における開口部42の内周面42aは、発光素子20の発光中心Oからの出射光が投影レンズ30に入射しないように形成された表面形状を有しているので、この内周面42aでの光反射によって描画用配光パターンPA1の輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。そしてこれにより明瞭な描画用配光パターンPA1が形成されるようにすることができる。
【0068】
またこれにより、遮光板40の構成として、その開口部42の開口形状が容易に変形しない程度に板厚を厚くしたような場合(例えば本実施形態のように1mm以上の板厚にした場合)であっても、その開口部42の内周面42aでの光反射によって描画用配光パターンPA1の輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。したがって、遮光板40の剛性不足に起因して明瞭な描画用配光パターンPA1が形成されなくなってしまうといった不具合の発生を未然に防止することができる。
【0069】
このように本実施形態によれば、描画用配光パターンPA1を形成するように構成された描画用灯具10において、明瞭な描画用配光パターンPA1を形成可能な構成を実現することができる。そしてこれにより周囲に対する注意喚起機能を高めることができる。
【0070】
上記第1実施形態においては、開口部42の内周面42aの傾斜角度が上下左右の各面において同一の値に設定されているものとして説明したが、互いに異なる値に設定された構成とすることも可能である。
【0071】
上記第1実施形態においては、開口部42の内周面42aを構成する上下左右の各面が傾斜平面で構成されているものとして説明したが、傾斜曲面等で構成されたものとすることも可能である。
【0072】
上記第1実施形態においては、開口部42が、灯具正面視において光軸Axを中心とする正方形の開口形状を有しているものとして説明したが、これ以外の開口形状を有する構成とすることも可能である。
【0073】
上記第1実施形態においては、描画用灯具10からの照射光によって車両前方路面2に描画用配光パターンPA1を形成するものとして説明したが、灯具前方に配置された壁面や灯具前方へ向けて延びる壁面等に描画用配光パターンPA1о(図3(b)参照)を形成する構成とすることも可能である。
【0074】
上記第1実施形態においては、描画用灯具10が車両100の前端部に設けられているものとして説明したが、車両100の後端部や側面部等に設けられる構成とすることも可能である。
【0075】
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
【0076】
まず、上記第1実施形態の第1変形例について説明する。
【0077】
図6は、本変形例に係る描画用灯具110を示す、図2と同様の図である。
【0078】
本変形例の基本的な構成は、上記第1実施形態の場合と同様であるが、発光素子20の数および遮光板140の構成が上記第1実施形態の場合と異なっており、これに伴い、基板122およびベース部材150の構成も上記第1実施形態の場合と一部異なっている。
【0079】
すなわち、本変形例においては、3つの発光素子20が投影レンズ30の光軸Ax上およびその上下両側に互いに等間隔をおいて配置されている。その際、各発光素子20は、その発光面20aを灯具正面方向へ向けた状態で共通の基板122に支持されている。
【0080】
本変形例の遮光板140は、上記第1実施形態の遮光板40と同様、投影レンズ30の光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる平板状部材で構成されており、その前面140aが投影レンズ30の後側焦点面上に位置するように配置されている。この遮光板140は、上記第1実施形態の遮光板40と同じ板厚で形成されており、3つの発光素子20に対応する位置には3つの開口部142A、142B、142Cが形成されている。
【0081】
各開口部142A~142Cは、灯具正面視において上記第1実施形態の開口部42よりもひと回り小さい正方形の開口形状を有しており、その開口形状が灯具後方へ向けて徐々に大きくなるように形成されている。
【0082】
すなわち、中央に位置する開口部142Bは、その前端縁の開口形状の中心が後側焦点Fに位置しており、その内周面142aは上下左右の各面が傾斜平面で構成されている。また、上下両側に位置する開口部142A、142Cは、その前端縁の開口形状の中心が後側焦点Fの真上および真下に位置しており、その内周面142aは上下左右の各面が傾斜平面で構成されている。
【0083】
その際、上記第1実施形態の場合と同様、各開口部142A~142Cの内周面142aは、各発光素子20の発光中心Оからの出射光が反射しても投影レンズ30に入射しないように各面の光軸Axに対する傾斜角度が設定されている。
【0084】
なお、本変形例のベース部材150も、投影レンズ30を支持するレンズ支持部150Aと、基板122を支持する光源支持部150Bと、遮光板140を支持する遮光板支持部150Cとを備えた構成となっている。
【0085】
図7は、車載状態にある描画用灯具110からの照射光により車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPA2を、ロービーム用配光パターンPLと共に透視的に示す図である。
【0086】
描画用配光パターンPA2は、3つの開口部142A、142B、142Cを通過した3つの発光素子20からの出射光によって形成される3つの配光パターンPA2A、PA2B、PA2Cで構成されており、車両前方路面2において手前側からこの順番で等間隔をおいて直列配置で形成されている。
【0087】
その際、3つの配光パターンPA2A~PA2Cは、いずれも略正方形の外形形状を有する白色の配光パターンとして形成されるが、その輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうことはない。これは、遮光板140の前面140aが投影レンズ30の後側焦点面上に位置しており、かつ、各開口部142A~142Cの内周面142aが各発光素子20の発光中心Оからの出射光を反射光として投影レンズ30に入射させない傾斜角度で形成されていることによるものである。
【0088】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記第1実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0089】
しかも本変形例においては、描画用配光パターンPA2として3つの配光パターンPA2A~PA2Cが車両前方路面2において直列配置で形成されるようになっているので、周囲に対する注意喚起機能をさらに高めることができる。
【0090】
次に、上記第1実施形態の第2変形例について説明する。
【0091】
図8は、本変形例に係る描画用灯具210を示す、図2と同様の図である。
【0092】
本変形例の基本的な構成は、上記第1実施形態の場合と同様であるが、遮光板240の構成および配置が上記第1実施形態の場合と異なっており、これに伴い、ベース部材250の構成も上記第1実施形態の場合と一部異なっている。
【0093】
すなわち、本変形例の遮光板240も、投影レンズ30の光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる平板状部材で構成されているが、その後面240bが投影レンズ30の後側焦点面上に位置するように配置されている点で上記第1実施形態の場合と異なっている。
【0094】
遮光板240は、上記第1実施形態の遮光板40と同じ板厚で形成されており、その光軸Axを含む領域には遮光板240を灯具前後方向に貫通する開口部242が形成されている。この開口部242は、灯具正面視において光軸Axを中心とする正方形の開口形状を有しており、かつ、発光素子20の発光面20aよりも大きい開口形状を有しており、その開口形状が灯具前方へ向けて徐々に大きくなるように形成されている。
【0095】
すなわち、開口部242は、その後端縁の開口形状の中心が後側焦点Fに位置しており、その内周面242aを構成している上下左右の各面は傾斜平面で構成されている。その際、各面は、発光素子20の発光中心Оからの出射光が投影レンズ30に入射しないように光軸Axに対する傾斜角度が設定されている。具体的には、内周面42aの各面の光軸Axに対する傾斜角度θ2は、θ2=20~60°程度(例えば30°程度)の値に設定されている。
【0096】
発光素子20は、上記第1実施形態の場合と同様、その発光面20aを灯具正面方向へ向けた状態で、かつ、その発光中心Оを投影レンズ30の光軸Ax上に位置させた状態で配置されているが、遮光板240に対してはその板厚分だけ上記第1実施形態の場合よりも灯具後方側に離れた位置に配置されている。
【0097】
なお、本変形例のベース部材250も、投影レンズ30を支持するレンズ支持部250Aと、基板22を支持する光源支持部250Bと、遮光板240を支持する遮光板支持部250Cとを備えた構成となっている。
【0098】
図9(a)は、車載状態にある描画用灯具210からの照射光により車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPA3を、ロービーム用配光パターンPLと共に透視的に示す図である。
【0099】
描画用配光パターンPA3は、略正方形の外形形状を有する白色の配光パターンとして形成されるが、その輪郭形状がボケたり、その輪郭部分に色ムラが発生してしまうことはない。これは、開口部242の内周面242aが、各発光素子20の発光中心Оからの出射光を反射光として投影レンズ30に入射させない傾斜角度で形成されていることによるものである。
【0100】
一方、図9(b)は、遮光板240の開口部242として、図8において2点鎖線で示すように、その内周面242a´を構成する上下左右の各面が光軸Axと平行に延びる平面で構成されているとした場合に、車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPA3´を示す図である。
【0101】
この描画用配光パターンPA3´も、白色の配光パターンとして形成されるが、その輪郭形状はボケたものとなり、かつ、その輪郭部分には色ムラB3´が発生して青色や黄色等に見えてしまう。
【0102】
その際、描画用配光パターンPA3´の輪郭形状がボケてしまうのは、本変形例の遮光板240は、その後面240bが投影レンズ30の後側焦点面上に位置しているので、この後側焦点面よりも灯具前方側に位置する開口部242の内周面242a´で反射して投影レンズ30から灯具前方に出射した光は、描画用配光パターンPA3´からはみ出す方向に照射されてしまうことによるものである。
【0103】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記第1実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0104】
しかも本変形例においては、遮光板240として、その後面240bが投影レンズ30の後側焦点面上に位置する構成となっているにもかかわらず、描画用配光パターンPA3の輪郭形状がボケてしまうのを効果的に抑制することができ、かつ、その輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0105】
次に、本願発明の第2実施形態に係る描画用灯具510を示す正面図である。
【0106】
図10は、本実施形態に係る描画用灯具510を示す、図2と同様の図である。また、図11は、図10のXI方向矢視図である。さらに、図12(a)は、図10の要部詳細図であり、図12(b)は、図12(a)のb方向矢視図である。
【0107】
図10~12に示すように、本実施形態に係る描画用灯具510の基本的な構成は、上記第1実施形態の場合と同様であるが、遮光板540の構成および配置ならびに発光素子20および基板22の配置が上記第1実施形態の場合と異なっており、これに伴い、ベース部材550の構成も上記第1実施形態の場合と一部異なっている。
【0108】
すなわち、本実施形態の遮光板540は、投影レンズ30の光軸Axと直交する鉛直面に対して灯具前後方向に傾斜した方向に延びる平板状部材で構成されている。
【0109】
具体的には、遮光板540は、上記鉛直面に対して前傾した方向に延びる傾斜面に沿って、投影レンズ30の後側焦点Fを通るように配置されている。その際、光軸Axと上記傾斜面の挟角θ5は、θ5=40~70°程度の値に設定されている。
【0110】
本実施形態においても、遮光板540には、光軸Axを含む領域に遮光板540を灯具前後方向に貫通する開口部542が形成されている。この開口部542は、光軸Axと上記傾斜面との挟角θ5よりも小さい傾斜角度θ6で、遮光板540の傾斜方向と同じ方向へ向けて延びるように形成されている。具体的には、傾斜角度θ6は、θ6=20~40°程度の値に設定されている。
【0111】
開口部542は、投影レンズ30の後側焦点面上における開口形状が、灯具正面視において光軸Axを中心とする発光素子20の発光面20aよりも大きい正方形に設定されている。この開口部542は、その開口形状が灯具前方および灯具後方へ向けて徐々に大きくなるように形成されている(これについては後述する)。
【0112】
本実施形態においても、発光素子20は、遮光板540に対して比較的近接した位置に配置されている。具体的には、発光素子20は、光軸Axの上方近傍において、その発光面20aを灯具正面方向に対してやや下向きにした状態(すなわち開口部542の略中心へ向けた状態)で配置されており、その発光中心Oは光軸Axの真上に位置している。
【0113】
なお、本実施形態のベース部材550も、投影レンズ30を支持するレンズ支持部550Aと、基板22を支持する光源支持部550Bと、遮光板540を支持する遮光板支持部550Cとを備えた構成となっている。
【0114】
図11、12に示すように、開口部542の内周面542aにおいて、投影レンズ30の後側焦点面よりも灯具後方側に位置する後方側内周面542aRは、その下面領域542aR1が傾斜角度θ6で延びているが、その左右両側に位置する側面領域542aR2は左右両方向へ向けて傾斜角度θ6よりもやや大きい傾斜角度θ7(例えばθ6=30~50°程度の値)で延びている。また、この内周面542aにおいて、投影レンズ30の後側焦点面よりも灯具前方側に位置する前方側内周面542aFは、その上面領域542aF1が傾斜角度θ6で延びているが、その左右両側に位置する側面領域542aF2は左右両方向へ向けて傾斜角度θ7で延びている。
【0115】
これにより、本実施形態の遮光板540においても、発光素子20の発光中心Оからの出射光が投影レンズ30に入射しないように、その開口部542の内周面542aの表面形状が設定されている。
【0116】
そして、図12(a)において実線で示すように、発光素子20から出射して遮光板540の開口部542に入射した光の一部は、その内周面542aの後方側内周面542aRで反射するものの、その出射方向は光軸Axに対して大きく傾斜した方向となる。したがって、この出射光は図10、11において実線で示すように投影レンズ30に入射することはなく、このため特定の波長成分の光が灯具前方へ照射されてしまうこともない。
【0117】
一方、図12(a)において2点鎖線で示すように、遮光板540の開口部542として、その内周面542a´の前方側内周面542aF´および後方側内周面542aR´が光軸Axと平行に延びる平面で構成されているとした場合には、発光素子20から出射して遮光板540の開口部542に入射した光の一部が、前方側内周面542aF´および後方側内周面542aR´で反射して灯具前方側へ出射し、この出射光が図10において2点鎖線で示すように投影レンズ30に入射してしまうこととなる。
【0118】
図13(a)は、車載状態にある描画用灯具510からの照射光により車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPA5を、ロービーム用配光パターンPLと共に透視的に示す図である。
【0119】
描画用配光パターンPA5は、略正方形の外形形状を有する白色の配光パターンとして形成されるが、その輪郭形状がボケたり、その輪郭部分に色ムラが発生してしまうことはない。これは、開口部542の内周面542aが、各発光素子20の発光中心Оからの出射光を反射光として投影レンズ30に入射させない傾斜角度で形成されていることによるものである。
【0120】
一方、図13(b)は、遮光板540の開口部542として、図12(a)において2点鎖線で示すように、その内周面542a´の前方側内周面542aF´および後方側内周面542aR´が光軸Axと平行に延びる平面で構成されているとした場合に、車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPA5´を示す図である。
【0121】
この描画用配光パターンPA5´も、白色の配光パターンとして形成されるが、その輪郭形状はその手前側部分がボケたものとなり、かつ、その輪郭部分には色ムラB5´が発生して青色や黄色等に見えてしまう。
【0122】
その際、描画用配光パターンPA5´の輪郭形状の手前側部分がボケてしまうのは、遮光板540の前方側内周面542aF´が投影レンズ30の後側焦点面よりも灯具前方側に位置していることによるものである。
【0123】
本実施形態の構成を採用した場合においても、上記第1実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0124】
しかも本実施形態においては、遮光板540が、投影レンズ30の光軸Axと直交する鉛直面に対して灯具前後方向に傾斜した方向に延びる傾斜面に沿って配置されているので、描画用灯具510の意匠等に応じた姿勢で遮光板540を配置することが容易に可能となり、その配置自由度を高めることができる。
【0125】
その際、遮光板540の開口部542は、光軸Axと上記傾斜面との挟角θ5よりも小さい傾斜角度θ6で、遮光板540の傾斜方向と同じ方向へ向けて延びるように形成されているので、開口部542の内周面542aとして、発光素子20の発光中心Оからの出射光が投影レンズ30に入射しない表面形状を有するものとすることが容易に可能となる。
【0126】
また本実施形態においては、開口部542の内周面542aとして、遮光板540の傾斜方向に関して灯具前方側に位置する前方側内周面542aFと灯具後方側に位置する後方側内周面542aRとを備えており、前方側内周面542aFの後端縁および後方側内周面542aRの前端縁が投影レンズの後側焦点面上に位置しているので、描画用配光パターンPA5の輪郭をより明瞭なものとすることができる。
【0127】
さらに本実施形態においては、開口部542の構成として、前方側内周面542aFにおける左右1対の側面領域542aF2が灯具前方へ向けて遮光板540の傾斜方向と直交する方向(すなわち左右方向)に拡がるように形成されるとともに、後方側内周面前方側内周面542aRにおける左右1対の側面領域542aR2が灯具後方へ向けて遮光板540の傾斜方向と直交する方向に拡がるように形成されているので、開口部542の前方側内周面542aFおよび後方側内周面542aRで反射した光が投影レンズ30に一層入射しにくくなる構成とすることができる。そしてこれにより描画用配光パターンPA5の輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうのを一層効果的に抑制することができる。
【0128】
しかも本実施形態においては、発光素子20が、投影レンズ30の光軸Axに対して開口部542の前方側内周面542aFと同じ側(すなわち上方側)に発光中心Oが位置するように配置されているので、発光素子20からの出射光を遮光板540の開口部542に効率良く入射させることができる。
【0129】
本実施形態の遮光板540に対して、その開口部542の内周面542aに黒色塗装等が施された構成を採用することも可能である。このような構成を採用することにより、描画用配光パターンPA5の輪郭形状がボケたり輪郭部分に色ムラが発生してしまうのをより一層効果的に抑制することができる。
【0130】
なお、上記各実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0131】
また本願発明は、上記各実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0132】
2 車両前方路面
10、110、210、510 描画用灯具
20 発光素子
20a 発光面
22、122 基板
30 投影レンズ
40、140、240、540 遮光板
40a、140a 前面
40b、240b 後面
42、142A、142B、142C、242、542 開口部
42a、142a、242a、542a 内周面
50、150、250 ベース部材
50A、150A、250A、550A レンズ支持部
50B、150B、250B、550B 光源支持部
50C、150C、250C、550C 遮光板支持部
100 車両
542aF 前方側内周面
542aF1 上面領域
542aF2 側面領域
542aR 後方側内周面
542aR1 下面領域
542aR2 側面領域
Ax 光軸
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
E エルボ点
F 後側焦点
О 発光中心
PA1、PA1о、PA2、PA3、PA5 描画用配光パターン
PA2A、PA2B、PA2C 配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
θ1、θ2、θ6、θ7 傾斜角度
θ5 挟角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13