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特開2023-28945ロボット制御システム及びイベント履歴情報管理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028945
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ロボット制御システム及びイベント履歴情報管理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134941
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 和紀
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS09
3C707JS03
3C707LW03
3C707MS14
3C707MS28
(57)【要約】
【課題】異常発生の原因究明を容易に行うことが可能なロボット制御システムを提供する。
【解決手段】ロボット制御システム110は、ロボット10の動作を制御するコントローラ20と、ティーチングペンダント30と、を備えている。コントローラ20は、一時記憶部24と記憶部25とCPU21とを少なくとも有している。一時記憶部24は、コントローラ20の内部イベント情報及び内部履歴情報と、ティーチングペンダント30の外部履歴情報及び外部イベント情報とを一時的に保存する。ロボット制御システム110に異常が発生した場合、コントローラ20の内部で、外部イベント情報と内部イベント情報と内部履歴情報と外部履歴情報とが互いに関連付けられてイベント履歴情報が生成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台のロボットの動作を制御するコントローラと、前記コントローラと有線または無線通信可能に構成された少なくとも1台の機器と、を備えたロボット制御システムであって、
前記機器は、前記機器の稼働履歴である外部履歴情報と前記機器のイベント情報である外部イベント情報とを前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、一時記憶部と記憶部と情報処理部とを少なくとも有し、
前記情報処理部は、前記コントローラの複数の制御履歴情報を内部履歴情報として結合し、
前記一時記憶部は、前記外部イベント情報と、前記コントローラのイベント情報である内部イベント情報と、前記内部履歴情報と、前記外部履歴情報とを一時的に保存し、
前記コントローラまたは前記機器のいずれかに異常が発生した場合、
前記外部イベント情報と前記内部イベント情報と前記内部履歴情報と前記外部履歴情報とが互いに関連付けられてイベント履歴情報が生成され、
前記記憶部は、前記一時記憶部に保存された前記イベント履歴情報を受け取って保存することを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット制御システムにおいて、
前記一時記憶部は、前記外部イベント情報と、前記内部イベント情報と、前記内部履歴情報と、前記外部履歴情報とを一定期間だけ常に保存するか、または、一定量だけ常に保存することを特徴とするロボット制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボット制御システムにおいて、
前記内部イベント情報は、前記コントローラの内部の異常を知らせる情報であり、
前記外部イベント情報は、前記機器の異常を知らせる情報であり、
前記コントローラまたは前記機器のいずれかに異常が発生した場合、
前記コントローラは、異常が発生した時点を含む前記イベント履歴情報を前記コントローラの外部に出力可能に構成されていることを特徴とするロボット制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載のロボット制御システムにおいて、
表示部をさらに備え、
前記コントローラまたは前記機器のいずれかに異常が発生した場合、
前記表示部には、異常が発生した時点を含む前記イベント履歴情報が表示され、
前記イベント履歴情報には、異常が発生した前記機器に関する情報や発生した異常の種類が含まれることを特徴とするロボット制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載のロボット制御システムにおいて、
前記表示部には、異常が発生した時点を含む前記内部履歴情報及び前記外部履歴情報の少なくとも一方が表示されることを特徴とするロボット制御システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のロボット制御システムにおいて、
前記機器は、前記コントローラに前記ロボットの動作内容を教示するティーチングペンダントであることを特徴とするロボット制御システム。
【請求項7】
少なくとも1台のロボットの動作を制御するコントローラと、前記コントローラと有線または無線通信可能に構成された少なくとも1台の機器と、を備えたロボット制御システムのイベント履歴情報管理方法であって、
前記機器の稼働履歴である外部履歴情報と前記機器のイベント情報である外部イベント情報とを前記機器から受信するステップと、
前記コントローラの複数の制御履歴情報をまとめて内部履歴情報を生成するステップと、
前記外部イベント情報と前記コントローラのイベント情報である内部イベント情報と前記内部履歴情報と前記外部履歴情報とを一時的に保存するステップと、
前記コントローラまたは前記機器のいずれかに異常が発生した場合、前記外部イベント情報と前記内部イベント情報と前記内部履歴情報と前記外部履歴情報とを関連付けてイベント履歴情報を生成するステップと、
前記イベント履歴情報を保存するステップと、を少なくとも備えたことを特徴とするイベント履歴情報管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載のイベント履歴情報管理方法において、
前記外部イベント情報と前記内部イベント情報と前記内部履歴情報と前記外部履歴情報とは一定期間だけ常に保存されるか、または、一定量だけ常に保存されることを特徴とするイベント履歴情報管理方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のイベント履歴情報管理方法において、
前記内部イベント情報は、前記コントローラの内部の異常を知らせる情報であり、
前記外部イベント情報は、前記機器の異常を知らせる情報であり、
前記コントローラまたは前記機器のいずれかに異常が発生した場合、
異常が発生した時点を含む前記イベント履歴情報を前記コントローラの外部に出力するステップをさらに備えたことを特徴とするイベント履歴情報管理方法。
【請求項10】
請求項9に記載のイベント履歴情報管理方法において、
異常が発生した時点を含む前記イベント履歴情報を前記ロボット制御システムに設けられた表示部に表示させるステップをさらに備え、
前記イベント履歴情報には、異常が発生した前記機器に関する情報や発生した異常の種類が含まれることを特徴とするイベント履歴情報管理方法。
【請求項11】
請求項10に記載のイベント履歴情報管理方法において、
異常が発生した時点を含む前記内部履歴情報及び前記外部履歴情報の少なくとも一方を前記表示部に表示させることを特徴とするイベント履歴情報管理方法。
【請求項12】
前記コントローラが備える1以上のプロセッサを含むコンピュータシステムに、請求項7ないし11のいずれか1項に記載のイベント履歴情報管理方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット制御システム及びイベント履歴情報管理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ティーチングプレイバック方式と呼ばれる、予め設定された動作プログラムに基づいてその動作を再現することで、溶接作業や製品の搬送作業などを行う産業用ロボットが知られている。
【0003】
ところで、このようなロボットでは、一般に、予め設定された動作しか行うことができず、例えば、ロボットやその搭載物、把持物の衝突等、想定外の異常事態が発生した場合には、制御プログラムでは対処することができない。そのため、異常が発生した当時の状況を、作業者が後から把握できるようにしておく必要がある。
【0004】
特許文献1には、ロボットからの指令により対象物の位置、あるいは、位置及び姿勢を計測して計測結果をロボットに転送する視覚センサを備え、予め定義されたアラームが稼動中のロボットに発生すると、アラームの発生を視覚センサに通知するとともに、その時点のロボットの稼動状況をロボット履歴情報として記録するようにしたロボット装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、自ロボットの稼動時の周辺環境をカメラ等で取得した各種データを記録装置に記録しておき、自ロボットに接近する物体を検出しその検出結果から異常状態にあると判断したときに、記録装置に記録された各種データを外部データベースに送信するようにしたロボット用ドライブレコーダ装置が開示されている。
【0006】
一方、特許文献1,2に開示された構成は、ロボットに異常が発生したときに、ロボットの稼動状況を示すデータを記録しようとするものであり、異常が発生した瞬間の時刻や実行されていたプログラム、ロボットの位置等の限られた情報しか知ることができない。そのため、具体的な原因や異常の発生に至る過程を知ることが困難であった。
【0007】
そこで、特許文献3には、サーバーで受信したロボットの稼動情報を一時データ記録部で一定時間分だけ常に記録する構成が開示されている。保存制御部において所定のトリガ条件が発生したと判断されると、一時データ記録部に記録された稼動情報の一部がトリガ時データ記録
部に記録される。このようにすることで、ロボットの動作に異常が発生した場合に、トリガ時データ記録部に記録されている稼動情報から、異常発生に至る過程、異常発生時の状況や経過を確認することができ、異常発生からの復旧や原因究明を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3834307号公報
【特許文献2】特開2011-000699号公報
【特許文献3】特開2020-163474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に開示される従来の構成では、ロボット及びその制御システムに異常が発生した場合、その発生原因を解析するために、異常発生時の各種履歴情報が保存される。
【0010】
しかし、この構成では、ロボットか制御システムのいずれに異常の発生原因があるのか解析が難しいという課題があった。特に、制御システムにティーチングペンダント等の構成部品が複数ある場合、複数の構成部品のいずれに異常の発生原因があるのか解析が難しいという課題があった。
【0011】
また、異常発生より以前の制御システムの状態に異常の発生原因がある場合は、原因の解析が難しい場合があった。特に、ロボットを有するシステムの運転実行履歴や制御履歴情報、また制御システムの内部の履歴情報等が関連付けられず個別に保存されている場合、これらの履歴情報をそれぞれ調査する必要がある。このため、異常発生の原因解析や特定に多くの時間を要することとなる。
【0012】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、異常発生の原因究明を容易に行うことが可能なロボット制御システム及びイベント履歴情報管理方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本開示に係るロボット制御システムは、少なくとも1台のロボットの動作を制御するコントローラと、前記コントローラと有線または無線通信可能に構成された少なくとも1台の機器と、を備えたロボット制御システムであって、前記機器は、前記機器の稼働履歴である外部履歴情報と前記機器のイベント情報である外部イベント情報とを前記コントローラに送信し、前記コントローラは、一時記憶部と記憶部と情報処理部とを少なくとも有し、前記情報処理部は、前記コントローラの複数の制御履歴情報を内部履歴情報として結合し、前記一時記憶部は、前記外部イベント情報と、前記コントローラのイベント情報である内部イベント情報と、前記内部履歴情報と、前記外部履歴情報とを一時的に保存し、前記コントローラまたは前記機器のいずれかに異常が発生した場合、前記外部イベント情報と前記内部イベント情報と前記内部履歴情報と前記外部履歴情報とが互いに関連付けられてイベント履歴情報が生成され、前記記憶部は、前記一時記憶部に保存された前記イベント履歴情報を受け取って保存することを特徴とする。
【0014】
本開示に係るイベント履歴情報管理方法は、前記ロボット制御システムにおけるイベント履歴情報管理方法であって、前記機器の稼働履歴である外部履歴情報と前記機器のイベント情報である外部イベント情報とを前記機器から受信するステップと、前記コントローラの複数の制御履歴情報をまとめて内部履歴情報を生成するステップと、前記外部イベント情報と前記コントローラのイベント情報である内部イベント情報と前記内部履歴情報と前記外部履歴情報とを一時的に保存するステップと、前記コントローラまたは前記機器のいずれかに異常が発生した場合、前記外部イベント情報と前記内部イベント情報と前記内部履歴情報と前記外部履歴情報とを関連付けてイベント履歴情報を生成するステップと、前記イベント履歴情報を保存するステップと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0015】
本開示に係るプログラムは、前記コントローラが備える1以上のプロセッサを含むコンピュータシステムに、前記イベント履歴情報管理方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ロボット制御システムに異常が発生した時点を含み、それ以前の一定期間における各種情報を互いに関連付けられた状態で保存できる。このことにより、ロボットシステムに生じた異常の原因解析を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係るロボットシステムの概略構成図である。
図2】ロボットシステムの機能ブロック図である。
図3】ロボット制御システムの内部でのデータの流れを示す模式図である。
図4】ロボット制御システムのイベント履歴情報の管理手順を示すフローチャートである。
図5】コントローラでエラーまたはワーニングが発生した場合のイベント履歴情報の管理手順を示す図である。
図6】コントローラでアラームが発生した場合のイベント履歴情報の別の管理手順を示す図である。
図7】ティーチングペンダントでエラーまたはワーニングが発生した場合のイベント履歴情報の管理手順を示す図である。
図8】ティーチングペンダントでアラームが発生した場合のイベント履歴情報の別の管理手順を示す図である。
図9】比較のためのロボット制御システムの内部でのデータの流れを示す模式図である。
図10】実施形態2に係るイベント履歴情報の管理手順を示す図である。
図11】異常が発生した場合の表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
(実施形態1)
[ロボットシステムの構成]
図1は、本実施形態に係るロボットシステムの概略構成図を示し、図2は、ロボットシステムの機能ブロック図を示す。
【0020】
図1に示すように、ロボットシステム100は、ロボット10とロボット制御システム110と溶接制御部40とを備えている。
【0021】
ロボット10は、アーク溶接に用いられる溶接ロボットである、ロボット10は、複数のサーボモータ12を有する多軸の多関節型ロボット10で構成されている。ロボットアーム11の先端部には、溶接用のトーチ13や図示しないワイヤ送給装置が取り付けられている。なお、関節軸数や水平多関節型、垂直多関節型等のロボット10の構成は、用途に合わせて適宜選択すればよい。また、ロボット10は、溶接ロボットに限られず、例えば、物品の搬送ロボットであってもよい。
【0022】
なお、図1に示す例では、ロボット10は1台であるが、ロボットシステム100は複数台のロボット10を備えていてもよい。その場合、すべてのロボット10に対して、ロボット制御システム110と溶接制御部40とが共通していてもよい。また、それぞれのロボット10に対して、ロボット制御システム110と溶接制御部40とが個別に設けられていてもよい。
【0023】
ロボット制御システム110は、コントローラ20とティーチングペンダント(機器)30とを有している。なお、ロボット制御システム110の外部に設けられたサーバー70(図2参照)がロボット制御システム110に含まれていてもよい。また、ロボット10が溶接ロボット以外の場合、ロボットシステム100から溶接制御部40は省略されうる。なお、ティーチングペンダント30をTPと略して呼ぶ場合がある。
【0024】
コントローラ20は、ロボット10に接続され、ロボット10の動作、具体的には、関節軸を駆動するサーボモータ12の動作を制御する。
【0025】
図2に示すように、コントローラ20には、ティーチングペンダント30、溶接制御部40、外部機器60が接続されている。コントローラ20は、ティーチングペンダント30、溶接制御部40、外部機器60との間でデータの送受信をそれぞれ行う。ここで、外部機器60は、例えば、各種センサや警報ランプ等である。
【0026】
ティーチングペンダント30は、作業者がロボット10の動作や溶接条件などを定義したり、コントローラ20から送信されたロボット10の情報を表示したりするための装置である。ティーチングペンダント30とコントローラ20とは、有線通信または無線通信のいずれかで接続されている。
【0027】
ティーチングペンダント30は、ロボット10の動作内容を作業者が入力するための入力部31と、当該入力内容やコントローラ20から送信されたロボット10の情報等を表示するための表示部32と、を有している。図2に示すように、入力部31はキーボード等のハードキーでもよい。また、表示部32は液晶ディスプレイでもよい。なお、表示部32がタッチパネルである場合は、入力部31が表示部32に組み込まれてもよい。また、ティーチングペンダント30に情報処理部としてプロセッサ(図示せず)が搭載されていてもよい。
【0028】
溶接制御部40は、コントローラ20の処理に対応して制御信号を出力し、ロボット10に取り付けられた溶接用のトーチ13やワイヤ送給装置(図示せず)の動作を制御する。なお、溶接制御部40は、コントローラ20と一体に構成されていてもよい。
【0029】
コントローラ20は、有線通信または無線通信のいずれかでサーバー70に接続されている。サーバー70は、コントローラ20に送信されたデータ及びコントローラ20の内部で生成されたデータをバックアップして保存する。また、サーバー70は、データの一部を表示可能に構成されていてもよい。
【0030】
図2に示すように、コントローラ20は、CPU(情報処理部)21と入出力制御部22と電源制御部23と一時記憶部24と記憶部25と通信インターフェイス部26とを有している。つまり、コントローラ20は、一種のコンピュータシステムである。コントローラ20は、電源50から電源制御部23に供給された電力によって動作する。
【0031】
CPU(Central Processing Unit)21は、ティーチングペンダント30から入力された指令や、教示プログラムまたは所定の制御シーケンスに対応して、ロボット制御システム110全体の制御を行うプロセッサである。なお、教示プログラムは、記憶部25またはサーバー70に保存されている。
【0032】
また、CPU21は、ロボット10のサーボモータ12のドライバ(図示せず)より送信された検出角度に基づいて、記憶部25に記憶されているサーボモータ12の特性やロボット10のアーム長等の値と順運動学演算とを用いて、直交座標系におけるロボット10のトーチ13の先端位置を演算する。
【0033】
なお、複数個のCPU21がコントローラ20に搭載されていてもよい。複数のCPU21には、例えば、ロボット制御システム110の全体管理を行うメインCPUやサーボモータ12の駆動管理を行うサーボCPUが含まれる。また、溶接制御部40を制御する溶接CPUや入出力制御部22を制御する入出力CPUが含まれることがある。
【0034】
1個のCPU21に異常が生じた場合、残りのCPU21でバックアップ動作を行うことができる。また、ロボット制御システム110全体の制御を行うCPU21と、トーチ13の先端位置を演算するCPU21とが、別個に設けられていてもよい。
【0035】
入出力制御部22は、CPU21の処理に対応して、コントローラ20に接続された外部機器60の情報取得及び送信処理を行う。
【0036】
一時記憶部24は、後で述べる内部イベント情報や外部イベント情報を一時的に保存する。また、後で述べる内部履歴情報や外部履歴情報を一時的に保存する。一時記憶部24は、例えば、RAM(Random Access Memory)で構成される。
【0037】
一時記憶部24は、前述した各種情報を以下に示す2つの方式のいずれかで一時的に保存する。まず、一時記憶部24は、前述した各種情報を一定期間だけ常に保存する。一方、一時記憶部24に保存された情報量が所定の最大保存量を超えた場合、一時記憶部24は、古いデータを削除して最大保存量を超えない一定量だけ各種情報を常に保存する。
【0038】
記憶部25は、一時記憶部24に保存された内部イベント情報や外部イベント情報や内部履歴情報や外部履歴情報を受け取って、複数の履歴ファイルとして保存する。また、記憶部25は、サーボモータ12の特性値やロボット10のアーム長等のロボット10の動作に関する値、また、ロボット10の制御プログラム等を保存する。記憶部25は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成される。また、記憶部25が、SDカードであってもよい。
【0039】
通信インターフェイス部26は、電源50が投入されてサーバー70との接続が確立された後で、コントローラ20に送信されたデータ及びコントローラ20の内部で生成されたデータを一定のタイミングでサーバー70に対して送信する。なお、通信インターフェイス部26は、有線通信または無線通信のいずれかでティーチングペンダント30に接続されていてもよい。
【0040】
なお、後で述べるように、コントローラ20は、自身の内部のイベント情報やコントローラ20に接続された各種機器のイベント情報を受信する。なお、本願明細書において、「イベント」とは、コントローラ20を含む各種機器や機器の内部部品で発生した異常を言う。よって、「イベント情報」とは、当該異常を知らせる情報を言う。図2に示す例で言えば、二重枠で囲んだブロックにおいて、イベントが比較的多く発生しうる。つまり、ロボット10やティーチングペンダント30や溶接制御部40や外部機器60でイベントが発生する頻度が、他の機器で発生する頻度よりも高い。また、コントローラ20の内部のCPU21でもイベントが発生しうる。なお、ロボット制御システム110において、イベントが発生しうる箇所は、図2に示す例に特に限定されない。
【0041】
また、異常の種類、つまり、イベントの種類として、「エラー」と「ワーニング」と「アラーム」とがある。エラーとは、ロボット制御システム110を一旦停止させる必要がある程度の異常を言う。ワーニングは、ロボット制御システム110を停止させるまでには至らない警告である。したがって、ワーニングは、作業者にコントローラ20または機器が正常時と異なる状態であることを注意喚起するために報知されるにとどまる。
【0042】
一方、アラームは、ロボット制御システム110全体を停止させる必要がある異常を言う。よって、アラームが発生した場合、コントローラ20や各機器に電力を供給する電源がシャットダウンされる。また、シャットダウン後は、作業者が再起動するまでロボット制御システム110、ひいてはロボットシステム100は動作しない。
【0043】
[ロボット制御システムのイベント履歴情報の管理手順]
図3は、ロボット制御システムの内部でのデータの流れを模式的に示し、図4は、ロボット制御システムのイベント履歴情報の管理手順をフローチャートとして示す。
【0044】
なお、説明の便宜上、図3において、ロボット制御システム110が、コントローラ20とティーチングペンダント30とを有する構成を示している。ただし、図2に示すように、ロボット制御システム110に、他の機器、例えば、溶接制御部40や外部機器60を含んでいてもよい。
【0045】
図3に示すように、ロボット10の動作中に、ティーチングペンダント30からコントローラ20には複数種類の情報が送信される。ティーチングペンダント30の操作情報、例えば、ハードキーの操作情報がティーチングペンダント30の内部の作業領域33に一度保存された後、コントローラ20に送信される。また、同様に、操作時のシステムデータや各種ファイルが作業領域33を経由してコントローラ20に送信される。
【0046】
また、ティーチングペンダント30からコントローラ20には作業領域33を経由して外部イベント情報が送信される。ここで、外部イベント情報とは、ティーチングペンダント30で発生したイベントに関する情報である。なお、本願明細書において、「外部イベント情報」は、ティーチングペンダント30のイベント情報に限定されず、コントローラ20に接続された各種機器で発生したイベントに関する情報も外部イベント情報に該当する。
【0047】
ティーチングペンダント30から送信された各情報は、コントローラ20に設けられた一時記憶部24に保存される。
【0048】
また、一時記憶部24には、コントローラ20の内部で生成された複数の情報が保存される。例えば、コントローラ20から送信されたロボット10の制御シーケンス命令やロボット10の先端の移動軌跡に関する補間情報や加減速命令の情報が保存される。これらの情報は、ロボットシステム100の運転実行履歴情報であり、例えば、ロボット10や溶接制御部40の運転実行履歴情報が含まれる。また、コントローラ20の内部の機能ブロックの運転実行履歴情報、例えば、入出力制御部22の運転実行履歴情報も含まれる。これらの情報は、内部履歴情報として1つにまとめられた状態で一時記憶部24に保存される。
【0049】
また、一時記憶部24には、内部イベント情報が保存される。ここで、内部イベント情報とは、コントローラ20の内部で発生したイベントに関する情報である。なお、本願明細書において、「内部イベント情報」は、CPU21のイベント情報に限定されない。コントローラ20の別の内部部品や機能ブロック、例えば、通信インターフェイス部26で発生したイベントに関する情報も内部イベント情報に該当する。
【0050】
なお、一時記憶部24に保存される各種情報は、前述した一定期間だけ常に保存される。
【0051】
コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかにイベントが発生した場合、コントローラ20は、一時記憶部24に保存された内部イベント情報と外部イベント情報と内部履歴情報と外部履歴情報とを互いに関連付けてイベント履歴情報を生成する。生成されたイベント履歴情報は記憶部25またはサーバー70に転送、保存される。各種情報は、例えば、ロボット制御システム110に設けられたタイマー(図示せず)の時刻と関連付けられる。例えば、時刻に対して、イベント情報やロボット10の運転実行情報やTP操作情報が1つのテーブルにまとめられた状態になっている。
【0052】
なお、コントローラ20及びティーチングペンダント30の両方にイベントが発生していない場合、一時記憶部24に保存された各種情報は、一定期間の経過後に、記憶部25またはサーバー70に転送される。転送された後、各種情報は、それまでに記憶部25またはサーバー70に保存されていた履歴ファイルに付加された形で保存される。例えば、図3に示すように、運転実行履歴ファイルやTP操作履歴ファイルとして記憶部25あるいはサーバー70に保存される。
【0053】
また、イベント履歴情報は、イベントの種類毎に分類された情報で保存されてもよい。つまり、コントローラ20やティーチングペンダント30でアラームが発生した場合、イベント履歴情報は、アラーム履歴ファイルとして保存されてもよい。同様に、コントローラ20やティーチングペンダント30でエラーやワーニングが発生した場合、イベント履歴情報は、エラー履歴ファイルやワーニング履歴ファイルとして保存されてもよい。ただし、イベント履歴情報が、イベントの種類に関わらず、1つの統合ファイルとして保存されていてもよい。
【0054】
なお、イベントの発生時刻やイベントの種類を検索条件として、イベント履歴情報の詳細内容を容易に検索できる。また、検索結果をコントローラ20の外部に出力することができる。
【0055】
また、一定期間の経過後に、各種情報は一時記憶部24から削除される。あるいは、各種情報は、最大保存量を超えないように古いデータが削除され、一定量だけ一時記憶部24に常に保存される。以上の通りであるから、一時記憶部24に保存された情報の容量が、一時記憶部24自体の容量を超えることが無い。また、一時記憶部24から記憶部25またはサーバー70へのデータ転送のタイミングは、CPU21の内部クロックの発生タイミングに同期させてもよい。あるいは、1秒~数十秒程度の決められた時間毎に転送されてもよい。
【0056】
イベント履歴情報の管理手順に関し、図4を用いてさらに説明する。図4に示すように、コントローラ20は、ティーチングペンダント30から外部履歴情報と外部イベント情報とを受信する(ステップS1)。また、コントローラ20、具体的には、CPU21は、内部履歴情報を生成する(ステップS2)。内部履歴情報は、外部履歴情報と内部イベント情報と外部イベント情報とともに、一時記憶部24に所定期間保存される(ステップS3)。
【0057】
次に、コントローラ20かまたはティーチングペンダント30のいずれかにイベントが発生したか否かが判断される(ステップS4)。ステップS4の判断は、一時記憶部24に送信されたイベント情報に基づいて、コントローラ20の内部、例えば、CPU21で判断される。
【0058】
ステップS4の判断結果が肯定的、つまり、コントローラ20かまたはティーチングペンダント30のいずれかまたは両方にイベントが発生した場合、ステップS5に進む。ステップS5では、一時記憶部24に保存された内部履歴情報と外部履歴情報と内部イベント情報と外部イベント情報とが互いに関連付けられ、イベント履歴情報が生成される。さらに、イベント履歴情報は、記憶部25に転送され、保存される(ステップS6)。なお、イベント履歴情報がサーバー70に転送され、保存されてもよい。
【0059】
ステップS4の判断結果が否定的、つまり、コントローラ20及びティーチングペンダント30のいずれにもイベントが発生していない場合、一定期間の経過後に一時記憶部24に保存された各種情報は記憶部25に転送される(ステップS7)。記憶部25に転送された各種情報は、前述したように各種履歴ファイルに付加された形で記憶部25に保存される。また、サーバー70に各種情報が転送されてもよく、その場合も、転送された各種情報は、各種履歴ファイルに付加された形でサーバー70に保存される。
【0060】
なお、ステップS6またはS7の終了後は、ステップS1に戻って、一連の処理を繰り返す。また、ステップS6の終了後、コントローラ20は、機器からの要求にしたがって、あるいは、所定のシーケンスにしたがって、イベント履歴情報をコントローラ20の外部に出力する。イベント履歴情報は、例えば、ティーチングペンダント30やサーバー70に出力される。
【0061】
ここで、コントローラ20かまたはティーチングペンダント30のいずれかまたは両方にイベントが発生した場合のデータの流れをさらに説明する。
【0062】
図5は、コントローラで異常が発生した場合のイベント履歴情報の管理手順を示し、図6は、コントローラでアラームが発生した場合のイベント履歴情報の別の管理手順を示す。
【0063】
図5に示すように、コントローラ20の内部でエラーまたはワーニングが発生した場合、この情報は、ロボットシステム100の表示部である表示画面に表示される。例えば、ティーチングペンダント30にイベントの発生情報が通知され、表示部32に当該情報が表示される。さらに、コントローラ20の一時記憶部24では、それまでに収集された各種情報がまとめられ、履歴基本データが作成される。履歴基本データに基づいて、前述したように、イベント履歴情報が生成される。生成されたイベント履歴情報は、記憶部25に転送される。
【0064】
転送されたイベント履歴情報の記憶部25への保存が完了すると、イベント履歴情報がクリアされ、一時記憶部24から削除される。
【0065】
一方、図6に示すように、コントローラ20の内部でアラームが発生した場合も、この情報は、表示部32に表示される。また、コントローラ20の一時記憶部24では、それまでに収集された履歴情報がまとめられ、履歴基本データが作成される。ここまでは、エラーやワーニングが発生した場合と同様である。
【0066】
しかし、前述したように、アラームが発生すると、ロボット制御システム110を停止させる必要がある。よって、電源50からコントローラ20への電力供給がシャットダウンされる。また、ティーチングペンダント30への電力供給もシャットダウンされる。コントローラ20からアラーム発生の原因が取り除かれた後に、電源50が再投入され、ロボット制御システム110が再起動する。
【0067】
その後は、履歴基本データに基づいて、イベント履歴情報が生成される。生成されたイベント履歴情報は、記憶部25に転送される。転送されたイベント履歴情報の記憶部25への保存が完了すると、イベント履歴情報がクリアされ、一時記憶部24から削除される。
【0068】
また、ティーチングペンダント30にイベントが発生した場合も、前述したのと同様の手順でイベント履歴情報が管理される。
【0069】
図7は、ティーチングペンダントでエラーまたはワーニングが発生した場合のイベント履歴情報の管理手順を示し、図8は、ティーチングペンダントでアラームが発生した場合のイベント履歴情報の別の管理手順を示す。
【0070】
図7に示すように、ティーチングペンダント30の内部でエラーまたはワーニングが発生した場合、この情報は、ティーチングペンダント30からコントローラ20に通知される。また、エラー情報またはワーニング情報は、表示部32に表示される。さらに、コントローラ20の一時記憶部24では、ティーチングペンダント30やコントローラ20でそれまでに収集された履歴情報がまとめられ、履歴基本データが作成される。履歴基本データに基づいて、前述したように、イベント履歴情報が生成される。
【0071】
生成されたイベント履歴情報は、記憶部25に転送される。転送されたイベント履歴情報の記憶部25への保存が完了すると、イベント履歴情報がクリアされ、一時記憶部24から削除される。
【0072】
一方、ティーチングペンダント30の内部でアラームが発生した場合、図8に示すように、ティーチングペンダント30に履歴基本データが保存される。この履歴基本データは、アラームの発生時点を含み、それ以前の一定期間におけるティーチングペンダント30でのイベントの発生履歴がまとめられたデータである。
【0073】
ティーチングペンダント30が動作せず、ティーチングペンダント30からデータが送信されない場合でも、コントローラ20は、ティーチングペンダント30の動作状況を監視している。このため、コントローラ20は、ティーチングペンダント30でのアラーム発生を把握し、自身の内部で、履歴基本データを作成する。この履歴基本データは、アラームの発生時点を含み、それ以前の一定期間におけるコントローラ20でのイベントの発生履歴がまとめられまとめられたデータである。
【0074】
アラームが発生すると、前述したように、電源50からコントローラ20への電力供給がシャットダウンされる。また、ティーチングペンダント30への電力供給もシャットダウンされる。ティーチングペンダント30からアラーム発生の原因が取り除かれた後に、電源50が再投入され、ロボット制御システム110が再起動する。
【0075】
その後は、ティーチングペンダント30に保存された履歴基本データが、コントローラ20の一時記憶部24に送信される。また、アラーム発生時点で生成されたコントローラ20の履歴基本データと統合されて、イベント履歴情報が生成される。生成されたイベント履歴情報は、記憶部25に転送される。転送されたイベント履歴情報の記憶部25への保存が完了すると、イベント履歴情報がクリアされ、一時記憶部24から削除される。
【0076】
なお、コントローラ20のCPU21が所定のコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を実行することにより、図4図8に示すイベント履歴情報の管理が行われる。プログラムは、記憶部25に予め保存されているか、または、サーバー70に保存されている。後者の場合は、サーバー70からコントローラ20にプログラムが読み出されて実行される。なお、コントローラ20が複数個のCPU21を有している場合、CPU21にイベントが発生しても、バックアップ用の別のCPU21がプログラムを実行する。
【0077】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るロボット制御システム110は、少なくとも1台のロボット10の動作を制御するコントローラ20と、コントローラ20と有線または無線通信可能に構成された少なくとも1台の機器、例えば、ティーチングペンダント30と、を備えている。ティーチングペンダント30は、ロボット10の動作内容を教示する。
【0078】
ティーチングペンダント30は、ティーチングペンダント30の稼働履歴である外部履歴情報とティーチングペンダント30のイベント情報である外部イベント情報とをコントローラ20に送信する。
【0079】
コントローラ20は、一時記憶部24と記憶部25とCPU(情報処理部)21とを少なくとも有している。
【0080】
CPU21は、コントローラ20の複数の制御履歴情報を内部履歴情報として結合する。
【0081】
一時記憶部24は、外部イベント情報と、内部イベント情報と、内部履歴情報と、外部履歴情報とを一時的に保存する。具体的には、一時記憶部24は、外部イベント情報と、内部イベント情報と、内部履歴情報と、外部履歴情報とを一定期間分だけ常に保存する。あるいは、一時記憶部24は、所定の最大保存量を超えない一定量だけ、外部イベント情報と、内部イベント情報と、内部履歴情報と、外部履歴情報とを常に保存する。
【0082】
コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかに異常が発生した場合、コントローラ20の内部で、外部イベント情報と内部イベント情報と内部履歴情報と外部履歴情報とが互いに関連付けられてイベント履歴情報が生成される。
【0083】
記憶部25は、一時記憶部24に保存されたイベント履歴情報を受け取って保存する。
【0084】
本実施形態によれば、コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかに異常、つまり、イベントが発生した時点を含み、それ以前の一定期間における各種情報を互いに関連付けられた状態で保存できる。このことにより、ロボット制御システム110やロボットシステム100に生じた異常の原因解析を容易に行うことができる。
【0085】
図9は、比較のためのロボット制御システムの内部でのデータの流れを示す模式図である。図9に示すロボット制御システム110では、内部イベント情報や外部イベント情報は、コントローラ20で統合されて、エラー履歴ファイルやワーニング履歴ファイルやアラーム履歴ファイルがそれぞれ生成される。また、これらのファイルは、記憶部25に保存される。
【0086】
一方、ロボット10の運転実行情報やTP操作情報は、内部イベント情報や外部イベント情報、また、これらが統合された履歴ファイルとは関連付けられずに、記憶部25に保存される。
【0087】
つまり、図9に示すロボット制御システム110において、イベントの発生情報とロボット10の運転実行情報やTP操作情報とはリンクしていない。よって、内部イベント情報や外部イベント情報に、イベントの発生フラグが含まれていても、その発生時点、また、それ以前のロボット10の運転実行情報やTP操作情報を容易に把握できない。
【0088】
このため、ロボットシステム100の内部で発生した異常の原因解析に時間がかかり、ロボットシステム100の復旧が大幅に遅れるおそれがあった。
【0089】
本実施形態によれば、ロボット制御システム110やロボットシステム100に生じた異常の原因を容易に解析できる。このことにより、ロボットシステム100のメンテナンスコストを低減できる。また、ロボットシステム100にアラームが発生した場合にも、その原因の解析が容易となり、ロボットシステム100の復旧時間を大幅に短縮できる。
【0090】
また、イベント履歴情報は、イベントの発生時点を含む一定期間内のデータであるため、異常の原因を解析するためのデータ量が膨大になるのを抑制できる。また、データの取り扱いを簡便に行える。
【0091】
内部イベント情報は、コントローラ20の内部の異常を知らせる情報である。外部イベント情報は、ティーチングペンダント30の異常を知らせる情報である。
【0092】
ティーチングペンダント30またはティーチングペンダント30のいずれかに異常が発生した場合、コントローラ20は、異常が発生した時点を含むイベント履歴情報をコントローラ20の外部、例えば、ティーチングペンダント30に出力可能に構成されている。
【0093】
このようにすることで、コントローラ20に異常がある場合も、異常の原因解析を容易に行うことができる。また、出力先に表示画面が備わっっている場合、イベントの発生内容を作業者等が容易に確認できる。
【0094】
本実施形態に係るイベント履歴情報管理方法は、ロボット制御システム110におけるイベント履歴情報管理方法である。
【0095】
ティーチングペンダント30の稼働履歴である外部履歴情報とティーチングペンダント30のイベント情報である外部イベント情報とをティーチングペンダント30から受信するステップを少なくとも備えている。また、コントローラ20の複数の制御履歴情報をまとめて内部履歴情報を生成するステップを備えている。外部イベント情報とコントローラ20のイベント情報である内部イベント情報と内部履歴情報と外部履歴情報とを一定期間分だけ常に保存するステップを備えている。
【0096】
コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかに異常が発生した場合、外部イベント情報と内部イベント情報と内部履歴情報と外部履歴情報とを関連付けてイベント履歴情報を生成するステップと、イベント履歴情報を保存するステップと、を備えている。
【0097】
本実施形態によれば、コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかに異常、つまり、イベントが発生した時点を含み、それ以前の一定期間における各種情報を互いに関連付けられた状態で保存できる。このことにより、ロボット制御システム110やロボットシステム100に生じた異常の原因解析を容易に行うことができる。
【0098】
コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかに異常が発生した場合、異常が発生した時点を含むイベント履歴情報をコントローラ20の外部に出力するステップをさらに備えていてもよい。
【0099】
このようにすることで、コントローラ20に異常がある場合も、異常の原因解析を容易に行うことができる。また、出力先に表示画面が備わっっている場合、イベントの発生内容を作業者等が容易に確認できる。
【0100】
本実施形態に係るプログラムは、コントローラ20が備える1以上のCPU21を含むコンピュータシステムに、前述のイベント履歴情報管理方法を実行させる。
【0101】
このようにすることで、コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかに異常、つまり、イベントが発生した時点を含み、それ以前の一定期間における各種情報を互いに関連付けられた状態で保存できる。このことにより、ロボット制御システム110やロボットシステム100に生じた異常の原因解析を容易に行うことができる。
【0102】
(実施形態2)
図10は、本実施形態に係るイベント履歴情報の管理手順を示し、図11は、異常が発生した場合の表示画面の一例を示す。なお、図10,11において、実施形態1と同様の箇所については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
前述したように、ロボット制御システム110は表示画面を備えている。図1,2に示す例では、コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれかに異常が発生した場合、表示部32には、異常が発生した時点を含むイベント履歴情報が表示される。
【0104】
この場合、イベント履歴情報には、異常が発生した機器に関する情報、例えば、コントローラ20またはティーチングペンダント30のいずれにイベントが発生したかの情報が含まれる。また、発生したイベントの種類が含まれる。さらに、ティーチングペンダント30の表示部32に表示される内容を作業者等が適宜選択できる。
【0105】
例えば、図10に示すように、ティーチングペンダント30の表示部32に、履歴表示項目が表示されるようにし、作業者等が希望する項目を選択する。選択内容に応じて、コントローラ20が一時記憶部24に保存されたイベント履歴情報を確認する(バッファ確認)。また、イベント履歴情報を記憶部25に転送、保存した後に、一時記憶部24に必要な情報をコピーし、その内容がティーチングペンダント30に転送され、表示部32に表示される。なお、イベント履歴情報に組み込まれていないイベント情報等がある場合は、図10の破線内に示すように、コントローラ20は履歴データを生成し、さらに、その内容を記憶部25に転送する。記憶部25に履歴データが保存された後、一時記憶部24に保存された履歴データはクリアされる。
【0106】
図11に示すように、表示部32には、イベント情報とその他の履歴情報が同時に表示される。また、選択内容に応じて、履歴情報の内容を選択しうる。
【0107】
図11の上側では、イベント情報とロボット10の制御内容を示すシーケンス命令と運転実行履歴とが表示された例を示している。なお、運転実行履歴は時刻に対応したリストとして表示される。また、図11の上側では、イベント情報とシーケンス命令とTP操作履歴とが表示された例を示している。なお、TP操作履歴は時刻に対応したリストとして表示される。
【0108】
なお、運転実行履歴とTP操作履歴の両方が表示部32に表示されていてもよい。つまり、表示部32には、異常が発生した時点を含む内部履歴情報及び外部履歴情報の少なくとも一方が表示される。また、コントローラ20は、異常が発生した時点を含む内部履歴情報及び外部履歴情報の少なくとも一方を表示部32に表示させる。
【0109】
また、実施形態2に示すイベント履歴情報の管理は、コントローラ20が前述のプログラムを実行することで実現されるのは言うまでもない。
【0110】
(その他の実施形態)
前述したように、外部履歴情報として、溶接制御部40や外部機器60の運転情報が収集されてもよい。また、複数の機器の運転実行情報が外部履歴情報として1つにまとめられていてもよい。ただし、その場合は、機器毎に運転実行履歴が区別されて保存される。また、この場合の外部イベント情報も機器毎に区別される。
【0111】
また、ロボットシステム100がレーザ溶接に用いられる溶接ロボットの場合、レーザ発振器(図示せず)の運転実行情報が外部履歴情報に加えられてもよい。また、レーザ発振器で発生したイベント情報が外部イベント情報に加えられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本開示のロボット制御システムは、ロボットシステムやロボット制御システムに生じた異常の原因解析を容易に行うことができ、有用である。
【符号の説明】
【0113】
10 ロボット
11 ロボットアーム
12 サーボモータ
13 トーチ
20 コントローラ
21 CPU(情報処理部)
24 一時記憶部
25 記憶部
30 ティーチングペンダント(機器)
31 入力部
32 表示部
33 作業領域
40 溶接制御部
50 電源
60 外部機器
70 サーバー
100 ロボットシステム
110 ロボット制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11