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特開2023-28960カーボンナノチューブ分散液、これを用いた導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極、及び、二次電池
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  • 特開-カーボンナノチューブ分散液、これを用いた導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極、及び、二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028960
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散液、これを用いた導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極、及び、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230224BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230224BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230224BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134961
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】早川 敬之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛史
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 聡
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池などの二次電池等の製造に好適であるカーボンナノチューブ分散液、導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極、二次電池を提供する。
【解決手段】 本発明のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブと、水溶性高分子材料と、分散媒と、を少なくとも含み、動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径をX、分散限界メジアン径をaとした場合に1.0<X/a≦2.0であり、X<1.0μmであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、水溶性高分子材料と、分散媒と、を少なくとも含み、動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径をX、分散限界メジアン径をaとした場合に1.0<X/a≦2.0であり、X<1.0μmであることを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。
【請求項2】
前記水溶性高分子材料が、非イオン性水溶性高分子とアニオン性水溶性高分子から選ばれる1種類以上の高分子材料であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ分散液を少なくとも含むことを特徴とする導電ペースト。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ分散液と、二次電池用活物質と、を少なくとも含むことを特徴とする二次電池用電極ペースト。
【請求項5】
請求項4に記載の二次電池用電極ペーストを用いたことを特徴とする二次電池用電極。
【請求項6】
請求項5に記載の二次電池用電極を用いたことを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性と導電性能に優れたカーボンナノチューブ分散液、この分散液を用いた導電ペースト、リチウムイオン電池などの二次電池の製造に好適となる二次電池用電極ペースト、二次電池用電極、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの携帯機器の小型軽量化及び高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池、さらに、その二次電池の高容量化が求められている。このような背景の下で高エネルギー密度、高電圧という特徴から非水系電解液を用いるリチウムイオン二次電池が多くの機器に使われるようになっている。
これらリチウムイオン二次電池に用いられる負極材料や正極材料、特に正極材料にカーボンナノチューブ分散液などを用いることにより、良好な導電性能、電極抵抗を低減でき少量で効率的に導電ネットワークを形成することができることなどの検討が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カーボンナノチューブと、分散剤と分散媒とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、該カーボンナノチューブのチューブ外径の分布の幾何標準偏差(σD)を1.25~1.70とし、該分散液中でのカーボンナノチューブの動的光散乱法による平均粒子径(D50)を400nm以下とするカーボンナノチューブ分散液が開示されており、
特許文献2には、カーボンナノチューブ、水溶性樹脂と、水とを含有し、カーボンナノチューブ(A)は、単層であり、透過型電子顕微鏡における画像解析における平均外径が0.5~5nmであり、比表面積が400~800m/gであり、カーボンナノチューブ(A)の炭素成分100質量部に対して、水溶性樹脂(B)を400質量部以上、2000質量部以下含有し、カーボンナノチューブ分散液のレーザー回折式粒度分布測定によって算出される50%粒子径(D50径)が1.5~40μmであることを特徴とする、カーボンナノチューブ分散液が開示され、
特許文献3には、平均外径が3nm以下であるカーボンナノチューブと分散剤を含んだ分散体であって、動的光散乱法によって測定した平均粒径が200nm以上1500nm以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ水性分散液であり、分散剤がイオン性分散剤であることを特徴とする上記のカーボンナノチューブ水性分散液であることなどが開示され、
特許文献4には、カーボンナノチューブを分散媒に分散させる方法であって、界面活性剤の存在下で、平均径が0.4~5mmであり、比重が2~3g/cmであるビーズを用いて分散させることを特徴とするカーボンナノチューブの分散方法、及びその分散方法を用いて製造されたカーボンナノチューブ分散液が開示され、
特許文献5には、ポリアニリンの1-メチル-2-ピロリドン溶液中で、数平均繊維径100nm以上であるカーボンナノチューブと数平均繊維径30nm以下であるカーボンナノチューブとを湿式ジェットミルで混合し、ポリアニリンの1-メチル-2-ピロリドン溶液中に前記両カーボンナノチューブが分散しているカーボンナノチューブの分散液を得ることなどが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの特許文献1~5のカーボンナノチューブ分散液等では、経時的に分散性が低下したりし、安定性と導電性能を高度に両立することが難しく、高い安定性と導電性能を両立することができるカーボンナノチューブ分散液、これを用いた導電ペースト、二次電池用電極ペースト及び二次電池用電極、この電極を用いたリチウムイオン電池などの二次電池が切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-206412号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2020-019924号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2010-254546号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2007-169120号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2015-117150号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題等について解消しようとするものであり、高い安定性と導電性能を両立することができるカーボンナノチューブ分散液、これを用いた導電ペースト、二次電池用電極ペースト及び二次電池用電極、この電極を用いたリチウムイオン電池などの二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題について鋭意検討した結果、カーボンナノチューブと、水溶性高分子材料と、分散媒と、を少なくとも含むカーボンナノチューブ分散液であって、該分散液中のカーボンナノチューブの動的光散乱法によるメジアン径(D50)が所定範囲となるように調製された分散液により、上記目的のカーボンナノチューブ分散液、これを用いた導電ペースト、二次電池用電極ペースト及び二次電池用電極、この電極を用いたリチウムイオン電池などの二次電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブと、水溶性高分子材料と、分散媒と、を少なくとも含み、動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径をX、分散限界メジアン径をaとした場合に1.0<X/a≦2.0であり、X<1.0μmであることを特徴とする。
前記水溶性高分子材料は、非イオン性水溶性高分子とアニオン性水溶性高分子から選ばれる1種類以上の高分子材料であることが好ましい。
本発明において、導電ペーストは、上記構成のカーボンナノチューブ分散液を少なくとも含むことを特徴とし、また、二次電池用電極ペーストは、上記構成のカーボンナノチューブ分散液と、二次電池用活物質と、を少なくとも含むことを特徴とする。
本発明の二次電池用電極は、上記構成の二次電池用電極ペーストを用いたことを特徴とし、また、二次電池は、上記構成の二次電池用電極を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い安定性と導電性能を両立することができるカーボンナノチューブ分散液、これを用いた導電ペースト、二次電池用電極ペースト及び二次電池用電極、この電極を用いたリチウムイオン電池などに好適な二次電池を提供することができる。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明における分散限界メジアン径aを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0012】
〈カーボンナノチューブ分散液〉
本発明のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブと、水溶性高分子材料と、分散媒と、を少なくとも含み、動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径をX、分散限界メジアン径をaとした場合に1.0<X/a≦2.0であり、X<1.0μmであることを特徴とするものである。
【0013】
〈カーボンナノチューブ(CNT)〉
本発明に用いるカーボンナノチューブ(CNT)としては、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層CNT、二層又は三層以上の多層に巻いた多層CNTのいずれも用いることができる。
また、カーボンナノチューブの形態としては、例えば、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ及びカーボンナノファイバーを挙げることができるが、これらに限定されず、これらを各単独又は二種以上組み合わせ(以下、単に「少なくとも1種」という)て用いてもよい。
【0014】
更に、カーボンナノチューブの平均外径は、分散液の粘度、導電性、安定性の点から、1nm以上90nm以下であることが好ましく、3nm以上30nm以下であることがより好ましく、3nm以上15nm以下であることがさらに好ましい。
本発明において、カーボンナノチューブの平均外径とは、透過型電子顕微鏡の10万倍以上の倍率の画像を用いて測定した十分なn数の外形の算術平均値をいう。
また、本発明に用いるカーボンナノチューブの純度は、90~100質量%が好ましく、特に95~100質量%が好ましい。なお、カーボンナノチューブの純度は、JIS K1469やJIS K 6218に準拠して測定した灰分を不純物とし、その不純物量に基づき算出される。
【0015】
具体的に用いることができるカーボンナノチューブ(CNT)としては、例えば、Cnano社製のFloTube9000(平均外径11nm)、名城ナノカーボン社製のMEIJOeDIPS EC2.0(平均外径2.0nm)などの少なくとも1種を用いることができる。
【0016】
これらのカーボンナノチューブ(CNT)の含有量は、用途に応じて、好適な含有量を設定することができ、特に限定されるものではない。
例えば、導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極などに用いる場合は、高い安定性と導電性能を両立する点、分散液製造時の粘度の点から、その含有量は、分散液全量に対して、0.1~15.0質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.5~8.0質量%、1.0~6.0質量%、特に2.0~5.0質量%とすることが望ましい。
このカーボンナノチューブ(CNT)の含有量を0.1質量%以上とすることにより、充分な導電性を確保できるようになり、一方、15.0質量%以下とすることにより、分散液の安定性と良好な導電性を確保することができるものとなる。
【0017】
〈水溶性高分子材料〉
本発明に用いる水溶性高分子材料は、水に可溶なもの、または、用いる分散媒(水以外の溶媒)に溶解するものであれば特に限定されずに用いることができる。
水に可溶な高分子材料としては、例えば、タンパク質やデンプンなどの天然高分子材料の他、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキシエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミド、ポリアミンなどの合成高分子材料などを挙げることができる。これらの水溶性高分子材料は、カーボンナノチューブ(CNT)の分散剤や結着剤として機能するものである。
また、上記水以外の溶媒に溶解する水溶性高分子材料としては、完全に溶解する場合のみならず、一部が溶解する状態であっても良い。これらの水溶性の高分子を用いることにより、カーボンナノチューブ(CNT)の有する導電性を損なうことなく安定に分散することが可能となる。
水溶性高分子材料としては、特に、非イオン性水溶性高分子とアニオン性水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種類以上のものを用いることが好ましく、カーボンナノチューブ(CNT)の有する導電性を損なうことなく安定に分散することに特に適したものとなる。
【0018】
用いることができる非イオン性水溶性高分子としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びアルキルアリルエーテル、グリセロールボレイト脂肪酸エステル及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ポリビニルアルコール(PVAL又はPVOH)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0019】
用いることができるアニオン性水溶性高分子としては、例えば、脂肪酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、アルキル硫酸エステル及びその塩、アルキルアリールスルホン酸及びその塩、アルキルナフタレンスルホン酸及びその塩、ジアルキルスルホン酸及びその塩、ジアルキルスルホコハク酸及びその塩、アルキルリン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸及びその塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸スルホン酸及びその塩、スチレンアクリル樹脂などのアクリル系高分子、カルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム(Na)塩などのセルロース系高分子などの少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
好ましくは、導電性を阻害しない点から、用いる非イオン性水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドンの使用が望ましく、また、アニオン性水溶性高分子では、アクリル系高分子、セルロース系高分子の使用が望ましい。
【0021】
これらの水溶性高分子材料の(合計)含有量は、用途に応じて、好適な含有量を設定することができ、特に限定されるものでない。
例えば、導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極などに用いる場合は、高い安定性と導電性能を両立するために、その含有量は、分散液全量に対して、0.005~20質量%とすることが好ましく、特に好ましくは、0.025~16質量%とすることが望ましい。
これらの高分子材料の含有量を0.005質量%以上とすることにより、カーボンナノチューブ(CNT)の分散安定性が良好となり、一方、20質量%以下とすることにより、分散液の安定性と良好な導電性を確保することができるものとなる。
【0022】
〈分散媒〉
本発明に用いる分散媒は、非イオン性水溶性高分子とアニオン性水溶性高分子などの水溶性高分子材料を一部でも溶解させることができるものであれば、水(精製水、蒸留水、純水、超純水など)、有機溶媒など特に限定されることなく用いることが可能である。
分散媒としては、単独で用いるのみならず、2種類以上を混合して用いることも可能であり、水と有機溶媒の組合せであっても、混合可能な範囲で適宜調整して用いることが可能である。
【0023】
有機溶媒としては、例えば、芳香族類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル類等を用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
【0024】
芳香族類としては、例えば、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等を用いることができる。
【0025】
アルコール類としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール等を用いることができる。
【0026】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、3-メチル-1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等を用いることができる。
【0027】
グリコールエーテル類としては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
【0028】
エステル類としては、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシブチルアセテート等を用いることができる。
【0029】
更に、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなどのアミン系、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルカプロラクタムなどのアミド系,クロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトンなどの複素環系、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系、ヘキサメチルホスホロトリアミド、スルホランなどのスルホン系、尿素、アセトニトリルなどの少なくとも1種を使用することができる。
【0030】
本発明のカーボンナノチューブ分散液には、その用途に応じた添加剤を加えてもよい。例えば、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、沈降防止剤、湿潤剤、乳化剤、たれ防止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、防カビ・防藻剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0031】
本発明のカーボンナノチューブ分散液は、さらに、動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径をX、分散限界メジアン径をaとした場合に、1.0<X/a≦2.0であり、X<1.0μmであることを特徴とするものである。
【0032】
〈メジアン径X〉
本発明(後述する実施例、比較例を含む)において、動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径Xは、25℃の環境下で測定した散乱強度基準メジアン径(キュムラント解析法による中位径、頻度の累積が50%になる粒子径、D50)をいい、例えばFPAR-1000(大塚電子社製)を用いて測定することができる。
測定に際しては、カーボンナノチューブ分散液に使用されている分散媒によって適宜最適な濃度となるように希釈して行うことができる。
【0033】
〈分散限界メジアン径a〉
本発明において、分散限界メジアン径aとは、分散時間とカーボンナノチューブのメジアン径との関係において、メジアン径の変化の割合((変化の割合)=(メジアン径の変化量)/(分散時間の変化量))がマイナスからゼロに変化したとき、かつ最小のメジアン径となったときのカーボンナノチューブのメジアン径として定義することができる。(図1参照)
また、分散限界メジアン径aは、本発明におけるカーボンナノチューブ分散液の配合組成とカーボンナノチューブ分散液を得るための分散条件から特定されるものである。
【0034】
本発明においては、上記動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径Xと、分散限界最小メジアン径aとが、1.0<X/a≦2.0であり、X<1.0μmであるときに、安定性と導電性を高度に両立するカーボンナノチューブ分散液を得ることができるものである。
【0035】
カーボンナノチューブが凝集することなく1本ずつ独立してバラバラになっている状態は、導電性の面では好ましいが、カーボンナノチューブ分散液の安定性を両立させることが困難である。
本発明者らは、上記動的光散乱法にて測定したカーボンナノチューブのメジアン径Xと、分散限界メジアン径aとが、1.0<X/a≦2.0であり、X<1.0μmであるときに、初めて、安定性と導電性を高度に両立することができることを見出したものである。
【0036】
カーボンナノチューブ分散液のメジアン径Xが、X/a=1.0である場合は、カーボンナノチューブが凝集することなく1本ずつ独立してバラバラになっている状態に相当するが、上記したとおり、安定性と導電性の高度な両立が困難である。また、2.0<X/aである場合には、カーボンナノチューブの分散が不十分であるか過剰に分散している状態であり、導電性も安定性も低下してしまい好ましくない。
さらに、X<1.0μm(1000nm)を満たす場合に、安定性と導電性を最も効果的に両立することが可能であり、X≧1.0μm(1000nm)の場合には、安定性が落ちてしまい好ましくない。
【0037】
本発明において、上記特性のカーボンナノチューブ分散液は、上記配合特性の各成分を下記に示すような分散装置により好適な条件で分散して調製することができる。
例えば、分散装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができ、例えば、ディスパー、ホモミキサー、自転公転ミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、(高圧)ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、コロイドミル類、ビーズミル、コーンミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル、薄膜旋回型高速ミキサー等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
好ましい分散装置としては、安定性や分散効率の点から、薄膜旋回型高速ミキサーやビーズミルなどが好ましい。
【0038】
本発明において、カーボンナノチューブ分散液の分散限界メジアン径aは、上述の配合組成、用いる分散機種により若干変動するものであるが、好ましくは、ある分散機を選択して、その分散機で行う分散条件を変えずに分散した場合の分散限界メジアン径aを計測することが望ましい。例えば、ビーズミルを用いる場合は、メディアのビーズ径や充填率、分散周速、分散機に導入する分散液の流速、冷却水の流量や温度などの条件を固定して分散し、特定することが望ましい。
また、本発明では、カーボンナノチューブの分散限界メジアン径がaを示したときの分散経過時間をTaとした場合に、Ta未満となる分散時間で分散し、本発明のメジアン径の範囲となる1.0<X/a≦2.0であり、かつX<1.0μmであるカーボンナノチューブ分散液とすることがより好ましい。
【0039】
また、本発明のカーボンナノチューブ分散液の粘度は、安定性の点、ハンドリングの点から、コーンプレート粘度計(ローター回転速度10rpm(せん断速度38.3s-1)、温度25℃)にて測定した際の粘度値が、1~10000mPa・sであることが好ましく、1~5000mPa・sであることがより好ましい。
【0040】
このように構成される本発明のカーボンナノチューブ分散液は、高い安定性と導電性能を両立することができるものとなる。このカーボンナノチューブ分散液は、従来にない優れた性能を有するので、導電ペースト、二次電池用電極ペースト及び二次電池用電極、この電極を用いたリチウムイオン電池などに好適な二次電池などに利用することができるものとなる。
【0041】
〈導電ペースト〉
本発明の導電ペーストは、上記構成のカーボンナノチューブ分散液を少なくとも含むことを特徴とするものであり、導電性樹脂製品、導電性接着剤、プリント配線用途などに利用することができる。
この導電ペーストとしては、上述の高い安定性と導電性能を両立することができるカーボンナノチューブ分散液に、少なくとも樹脂成分を添加して構成することができる。樹脂成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などが使用できる。
【0042】
〈二次電池用電極ペースト、二次電池用電極〉
本発明の二次電池用電極ペーストは、上記構成のカーボンナノチューブ分散液と、二次電池用活物質と、を少なくとも含むことを特徴とするものであり、本発明の二次電池用電極は、上記構成の二次電池用電極ペーストを用いることを特徴とするものである。
【0043】
上記構成のカーボンナノチューブ分散液は、そのまま、または、希釈、または、濃縮して用いることができる。
二次電池用電極ペースト、二次電池用電極に含有されるカーボンナノチューブは、電極特性やセル化された後の電池容量、充放電特性などにより適宜調整され、最適な含有量とされるものであるが、1~15質量部となるように含有されることが望ましい。
【0044】
上記二次電池用電極ペーストに用いる活物質としては、正極活性物質、または負極活性物質のいずれも使用することができる。
二次電池用正極活物質としては、リチウムイオン電池の正極に使用可能な通常の正極活物質(リチウムイオンを可逆的に出入りさせる活物質)であれば、特に限定されずに用いることができる。
例えば、リチウム-ニッケル複合酸化物、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS、FeS、MoS等の遷移金属硫化物、MnO、V---、V13、TiO等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
好ましい二次電池用正極活物質としては、リチウム-ニッケル複合酸化物であり、更に好ましくは、該リチウム-ニッケル複合酸化物が、式:LiNiM1M2(M1およびM2は、Al、B、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の元素のうち少なくとも1種以上の金属元素、0.8≦X≦1.0、0≦Y≦0.2、0≦Z≦0.2)で表されるリチウム-ニッケル複合酸化物が望ましい。
これらの二次電池用正極の活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
二次電池用負極活物質としては、リチウムイオン電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば、特に限定されずに用いることができる。
用いることができる二次電池用負極活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素質材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素質材料は、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり支持塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時における不可逆容量を少なくできるため、好ましい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。二次電池用負極活物質としては、このうち、金属酸化物材料や炭素質材料が安全性の面からみて好ましい。
【0046】
また、二次電池用電極ペーストには、上記構成のカーボンナノチューブ分散液と、二次電池用の正極又は負極の活物質と、更に結着材(バインダー)を含むことが好ましい。
用いることができる結着材(バインダー)としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系樹脂などを挙げることができる。これらの結着材は2種以上を混合して用いてもよい。
これらの結着材の量は、集電箔に対する密着性、セル化された後の電池容量や充放電特性の点から、好ましくは、二次電池用電極ペースト全量に対して、0.2~3.0質量部、より好ましくは、0.5~2.5質量部添加することが望ましい。
【0047】
更に、二次電池用電極ペーストには、各種溶媒を添加してもよい。溶媒としては、例えば、水(精製水、イオン交換水、蒸留水、超純水など)、芳香族系溶媒、アルコール類、多価アルコール類、エーテル系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、アミド系溶媒、複素環系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、各単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
これらの溶媒の量は、電極ペーストを塗工する際に、適切な粘性に仕上げる必要性の点から、好ましくは、二次電池用電極ペースト全量に対して、0.5~80質量部、より好ましくは、1~70質量部添加することが望ましい。
更に、上記カーボンナノチューブ分散液、活物質、結着材の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、レベリング剤、固体電解質材などを適宜配合することができる。
【0048】
このように構成される二次電池用電極ペーストは、上記カーボンナノチューブ分散液と、二次電池用の正極又は負極の活物質と、結着材(バインダー)、溶媒などを、例えば、二軸型の混練機などを用いることにより調製することができる。
得られた二次電池用電極ペーストをリチウムイオン二次電池の導電性部材である集電体上に塗布して乾燥することにより所定のリチウムイオン二次電池用正極、負極が得られることとなり、本発明では、長期間の繰り返し充放電に耐えうる電池性能を実現する二次電池用電極ペースト、二次電池用電極が得られることとなる。
【0049】
上記電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
集電体上に電極ペーストを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0050】
〈二次電池、リチウムイオン二次電池〉
本発明の二次電池は、上記二次電池用電極を用いたことを特徴とするものであり、好ましくは、正極と、負極と、電解質とを具備してなるリチウムイオン二次電池の正極、負極に上記二次電池用電極を用いたものが好ましい。以下において、リチウムイオン二次電池に用いた場合について説明する。
正極としては、上記集電体上に正極活物質を含む上述の電極用ペーストを塗工乾燥して電極を作製したものを使用することができる。
負極としては、集電体上に負極活物質を含む電極用ペーストを塗工乾燥して電極を作製したものを使用することができる。
【0051】
電解質としては、イオンが移動可能な従来公知の様々なものを使用することができる。例えば、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4(ただし、Phはフェニル基である)等リチウム塩を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。電解質は非水系の溶媒に溶解して、電解液として使用することが好ましい。
【0052】
非水系の溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びγ-オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0053】
本発明において、リチウムイオン二次電池には、セパレーターを含むことが好ましい。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【0054】
このように構成される本発明の二次電池となるリチウムイオン二次電池等は、長期間の繰り返し充放電に耐えうる電池性能を実現する二次電池が得られることとなる。
【実施例0055】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1~11、比較例1~5:カーボンナノチューブ分散液の調製)
(分散限界メジアン径aの特定)
下記表1に示す配合組成〔カーボンナノチューブ、分散剤(高分子材料)、分散媒の各量〕を、横型ビーズミル(分散装置A)又は薄膜旋回型高速ミキサー(分散装置B)にて分散し、任意の時間毎にサンプリングしてカーボンナノチューブの動的光散乱法によるメジアン径を測定し、実施例、比較例における分散限界メジアン径aを求めた。
なお、分散装置A、及びBにおける分散条件は下記のとおりである。
分散装置A:ビーズ径φ0.5mmのジルコニアビーズ、分散時間0~360分
分散装置B:ミキサー回転数40rpm、分散時間0~360分
【0057】
(実施例1)
下記表1に示す配合組成〔カーボンナノチューブ、分散剤(高分子材料)、分散媒の各量〕、分散装置を用いて、分散時間Tx(分)の分散を行いカーボンナノチューブ分散液を得た。
得られたカーボンナノチューブ分散液の動的光散乱法によるメジアン径X(nm)、aとXの関係を示すX/aを下記表1に記載すると共に、下記方法で、安定性と導電性について、下記評価基準により評価した。これらの評価結果を下記表1に示す。
【0058】
(実施例2~9、11、比較例1~5)
実施例1と同様にして得られた結果を下記表1に示す。
【0059】
(実施例10)
分散装置Bを用いて分散したことを除いて、実施例1と同様にして得られた結果を下記表1に示す.
【0060】
(メジアン径Xの測定方法)
動的光散乱法(25℃)により、キュムラント解析法によるメジアン径を測定した。
【0061】
(分散液粘度の測定方法)
コーンプレート型粘度計(東機産業社製、1°34′R24コーン)を用いて25℃にて10rpm(せん断速度38.3s-1)の条件で、粘度を測定した。
【0062】
(安定性の評価方法)
(1)経時粘度の変化率、(2)経時での液の外観、(3)経時後の液を膜にした時の状態をそれぞれ評価し、それらの結果〔(1)~(3)〕から下記評価基準で安定性を綜合評価した
【0063】
(1)経時粘度の変化率の評価方法
完成した分散液を、25℃環境下に1週間置いた時の上記粘度測定方法により求めた粘度値の変化から、変化率(1週間後/初期)を求め、下記評価基準で経時粘度変化率を評価した。
評価基準:
A:変化率が200%未満
B:変化率が200%以上500%未満
C:変化率が500%以上
【0064】
(2)経時での液の外観
上記(1)の25℃環境下に1週間置いた時の分散液の外観を下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
A:分離も濃度差もなく均一
B:分離や濃度差が少し見られるが、簡単に再撹拌による均一化が可能
C:カーボンナノチューブが沈降し、再撹拌による均一化ができない
【0065】
(3)経時後の液を膜にした時の状態
完成した分散液を、PETフィルム(ルミラー#100-T60、東レ社)の片面に隙間が50μmのアプリケーターで塗布した後、温度80℃で乾燥し、得られた膜の状態を下記評価基準で官能評価した。
A:均一で平滑な塗膜が得られる
B:凝集粒が数個見られる、もしくはわずかに面内に濃度差がある
C:表面がざらついている、もしくは均一に塗れない
【0066】
安定性の評価基準:
◎:上記(1)~(3)の評価結果の3項目が共にA評価
〇:上記(1)~(3)の評価結果のうち2項目でA評価、かつC評価が無い。
△:上記(1)~(3)の評価結果のうちA評価が0~1項目、かつC評価が無い
×:上記(1)~(3)の評価結果のうちC評価が1項目以上
【0067】
(導電性の評価方法)
完成した分散液を、PETフィルム(ルミラー#100-T60、東レ社)の片面に隙間が50μmのアプリケーターで塗布した後、温度80℃で乾燥し、得られた膜の抵抗値を測定した。抵抗値はシート抵抗として、探針間隔10mmの4探針プローブとミリオームハイテスタ3227(日置電機)からなる装置を用いて測定し、下記評価基準で導電性を評価した。
評価基準:
◎:シート抵抗が250Ω/□未満
〇:シート抵抗が250Ω/□以上400Ω/□未満
△:シート抵抗が400Ω/□以上800Ω/□未満
×:シート抵抗が800Ω/□以上
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1の評価結果等から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1~11のカーボンナノチューブ分散液は、安定性と導電性とが高度に両立し、共に優れるものとなった。これに対し、比較例1~5のカーボンナノチューブ分散液は、上記特性を満足することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
カーボンナノチューブ分散液は、安定性と導電性能に優れ、燃料電池、各種電極、電磁波シールド材、導電性樹脂、電界放出ディスプレイ用部材などの材料として有用であり、特にリチウムイオン二次電池などの電極の製造に好適な電極ペースト、電極の製造に用いることができ、長期間の繰り返し充放電に耐えうる優れた電池性能を実現することができる。
図1