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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028962
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20230224BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20230224BHJP
   C09J 129/04 20060101ALI20230224BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230224BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20230224BHJP
   H05K 1/05 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B32B15/08 Q
C09J183/04
C09J129/04
C09J11/04
C09J5/06
H05K1/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134967
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】三好 莉央
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 良太
(72)【発明者】
【氏名】大島 和宏
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
5E315
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA14B
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB10A
4F100AB17C
4F100AB33C
4F100AK21B
4F100AK52B
4F100BA03
4F100CA30B
4F100DE01B
4F100EH46B
4F100EJ08B
4F100EJ15C
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ86B
4F100GB41
4F100JA07B
4F100JG04
4F100JG04B
4F100JJ01
4F100YY00B
4J040DD021
4J040EK031
4J040HA326
4J040JA03
4J040JB02
4J040LA01
4J040MA02
4J040MB05
4J040NA19
4J040PA30
5E315AA07
5E315BB02
5E315BB03
5E315BB04
5E315BB05
5E315BB14
5E315BB18
5E315CC01
5E315DD16
5E315GG01
5E315GG05
5E315GG09
(57)【要約】
【課題】シリコーン樹脂を用いて形成された絶縁層と当該絶縁層に隣接する金属層とを備えており、絶縁層と金属層とが十分な接着強度で接着されており、絶縁層及び金属層の界面剥離が十分に抑制された積層体を提供すること。
【解決手段】第一の金属層と、第二の金属層と、前記第一の金属層及び前記第二の金属層の間に配置された絶縁層と、を備え、前記絶縁層が、シリコーン樹脂硬化物と、ポリビニルアルコール系乳化剤と、無機フィラーとを含有する、積層体。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属層と、第二の金属層と、前記第一の金属層及び前記第二の金属層の間に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層が、シリコーン樹脂硬化物と、ポリビニルアルコール系乳化剤と、無機フィラーとを含有する、積層体。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系乳化剤が、ポリ(カルボン酸ビニルエステル)の部分加水分解物である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系乳化剤が、下記式(1-1)で表される第一の構成単位と下記式(1-2)で表される第二の構成単位とを有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【化1】

【化2】

[式中、Rは水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す。]
【請求項4】
前記ポリビニルアルコール系乳化剤の重合度が500以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記絶縁層中の前記ポリビニルアルコール系乳化剤の含有量が、前記シリコーン樹脂硬化物100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記絶縁層中の前記無機フィラーの含有量が、前記絶縁層の全体積基準で、10体積%以上90体積%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第一の金属層が金属板であり、前記第二の金属層が金属箔である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記第一の金属層が金属板であり、前記第二の金属層が金属回路部である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
シリコーン樹脂と、ポリビニルアルコール系乳化剤と、無機フィラーと、水と、を含有する塗布液を準備する準備工程と、
第一の金属層と前記塗布液の塗膜の半硬化物と第二の金属層とを積層し、積層方向に加圧しながら加熱して、前記第一の金属層と、前記塗膜の硬化物を含む絶縁層と、前記第二の金属層と、を備える積層体を得る加熱工程と、
を備える、積層体の製造方法。
【請求項10】
前記準備工程が、
前記シリコーン樹脂と前記ポリビニルアルコール系乳化剤と水とを混合して、前記シリコーン樹脂を乳化させて乳化液を得る乳化工程と、
前記乳化液と前記無機フィラーとを混合して、前記塗布液を得る無機フィラー混合工程と、
を含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記加熱工程が、
前記第一の金属層又は前記第二の金属層上に前記塗布液を塗布して、塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を半硬化させる半硬化工程と、
前記第一の金属層、前記塗膜の半硬化物及び前記第二の金属層をこの順に積層し、積層方向に加圧しながら加熱して、前記塗膜を硬化させる硬化工程と、
を含む、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第二の金属層の一部を除去して、金属回路部を形成する回路形成工程を更に含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ベース回路基板として好適な積層体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をはじめとする電子・電気部品を搭載して混成集積回路を形成するための回路基板として、これまで様々な回路基板が実用化されている。回路基板は、基板材質に基づいて、樹脂回路基板、セラミックス回路基板、金属ベース回路基板等に分類されている。
【0003】
樹脂回路基板は、安価ではあるが基板の熱伝導性が低いので比較的小さな電力で利用される用途に制限される。セラミックス回路基板は、電気絶縁特性及び耐熱性が高いというセラミックスの特徴から、比較的大きな電力で利用される用途に適するが、高価であるという欠点を有している。一方、金属ベース回路基板は、両者の中間的な性質を有し、比較的大きな電力で利用される汎用的な用途、例えば、冷蔵庫用インバーター、業務用空調用インバーター、産業用ロボット用電源、自動車用電源等の用途に好適である。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定のエポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を必須成分とする回路基板用組成物を用いて、応力緩和性、耐熱性、耐湿性及び放熱性に優れる回路基板を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-266535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、金属べース回路基板の用途の拡大に伴って、絶縁層の多様性が求められている。絶縁性樹脂として、例えばシリコーン樹脂が知られている。シリコーン樹脂は、幅広い温度帯域で良好な絶縁性を発現できることから、金属ベース回路基板の絶縁層への利用が期待される。しかし、本発明者らの知見によれば、シリコーン樹脂を用いて形成される絶縁層では、隣接する金属層との十分な接着性を確保することが難しい。
【0007】
そこで本発明の目的の一つは、シリコーン樹脂を用いて形成された絶縁層と当該絶縁層に隣接する金属層とを備えており、絶縁層と金属層とが十分な接着強度で接着されており、絶縁層及び金属層の界面剥離が十分に抑制された積層体を提供することにある。
【0008】
また、金属ベース回路基板等の積層体の製造では、絶縁層の形成に際して、絶縁性樹脂及び有機溶媒を含有する塗液を金属層上に塗布し、乾燥及び硬化させる方法が知られている。しかし、この方法では、有機溶媒の使用によって、設備及び作業環境に負荷がかかるという課題があった。
【0009】
そこで本発明の目的の一つは、上記積層体を製造する方法であって、設備及び作業環境への負荷が少ない製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す態様を含む。
(1)第一の金属層と、第二の金属層と、前記第一の金属層及び前記第二の金属層の間に配置された絶縁層と、を備え、前記絶縁層が、シリコーン樹脂硬化物と、ポリビニルアルコール系乳化剤と、無機フィラーとを含有する、積層体。
(2)前記ポリビニルアルコール系乳化剤が、ポリ(カルボン酸ビニルエステル)の部分加水分解物である、(1)に記載の積層体。
(3)前記ポリビニルアルコール系乳化剤が、下記式(1-1)で表される第一の構成単位と下記式(1-2)で表される第二の構成単位とを有する、(1)又は(2)に記載の積層体。
【化1】

【化2】

[式中、Rは水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す。]
(4)前記ポリビニルアルコール系乳化剤の重合度が500以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)前記絶縁層中の前記ポリビニルアルコール系乳化剤の含有量が、前記シリコーン樹脂硬化物100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の積層体。
(6)前記絶縁層中の前記無機フィラーの含有量が、前記絶縁層の全体積基準で、10体積%以上90体積%以下である、(1)~(5)のいずれかに記載の積層体。
(7)前記第一の金属層が金属板であり、前記第二の金属層が金属箔である、(1)~(6)のいずれかに記載の積層体。
(8)前記第一の金属層が金属板であり、前記第二の金属層が金属回路部である、(1)~(6)のいずれかに記載の積層体。
(9)シリコーン樹脂と、ポリビニルアルコール系乳化剤と、無機フィラーと、水と、を含有する塗布液を準備する準備工程と、第一の金属層と前記塗布液の塗膜の半硬化物と第二の金属層とを積層し、積層方向に加圧しながら加熱して、前記第一の金属層と、前記塗膜の硬化物を含む絶縁層と、前記第二の金属層と、を備える積層体を得る加熱工程と、を備える、積層体の製造方法。
(10)前記準備工程が、前記シリコーン樹脂と前記ポリビニルアルコール系乳化剤と水とを混合して、前記シリコーン樹脂を乳化させて乳化液を得る乳化工程と、前記乳化液と前記無機フィラーとを混合して、前記塗布液を得る無機フィラー混合工程と、を含む、(9)に記載の製造方法。
(11)前記加熱工程が、前記第一の金属層又は前記第二の金属層上に前記塗布液を塗布して、塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を半硬化させる半硬化工程と、前記第一の金属層、前記塗膜の半硬化物及び前記第二の金属層をこの順に積層し、積層方向に加圧しながら加熱して、前記塗膜を硬化させる硬化工程と、を含む、(9)又は(10)に記載の製造方法。
(12)前記第二の金属層の一部を除去して、金属回路部を形成する回路形成工程を更に含む、(9)~(11)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリコーン樹脂を用いて形成された絶縁層と当該絶縁層に隣接する金属層とを備えており、絶縁層と金属層とが十分な接着強度で接着されており、絶縁層及び金属層の界面剥離が十分に抑制された積層体が提供される。また、本発明によれば、設備及び作業環境への負荷を十分に抑制しつつ上記積層体を製造可能な、積層体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】積層体の一実施形態を示す断面図である。
図2】回路基板の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(積層体)
本実施形態の積層体は、第一の金属層と、第二の金属層と、第一の金属層及び第二の金属層の間に配置された絶縁層と、を備える。本実施形態において、絶縁層は、シリコーン樹脂硬化物と、ポリビニルアルコール系乳化剤(以下、PVA系乳化剤ともいう。)と、無機フィラーと、を含有する。
【0015】
本実施形態の積層体は、絶縁層がシリコーン樹脂硬化物を含有するため、幅広い温度帯域で良好な絶縁性を維持できる。また、本実施形態の積層体は、絶縁層がPVA系乳化剤を含有するため、シリコーン樹脂硬化物のみでは低かった接着性がPVA系乳化剤によって補われ、絶縁層と金属層とが十分な接着強度で接着される。このため、本実施形態の積層体は、絶縁層及び金属層の界面剥離が十分に抑制されており、信頼性に優れる。
【0016】
第一の金属層は、例えば、金属板であってよい。
【0017】
金属板を構成する金属材料は特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、ステンレス等の鉄合金等が挙げられる。金属板は、一種の金属材料から構成されていてよく、二種以上の金属材料から構成されていてもよい。また、金属板は、単層構造であってよく、多層構造であってもよい。
【0018】
金属板の厚みは特に制限されず、回路基板の作成に好適となる観点からは、例えば0.5~3.0mmであってよい。
【0019】
第二の金属層は、例えば、金属箔であってよい。
【0020】
金属箔を構成する金属材料は特に制限されず、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。金属箔は、一種の金属材料から構成されていてよく、二種以上の金属材料から構成されていてもよい。また、金属箔は、単層構造であってよく、多層構造であってもよい。
【0021】
金属箔の厚みは特に制限されず、回路基板の作成に好適となる観点からは、例えば0.009~1.0mmであってよい。
【0022】
絶縁層は、第一の金属層及び第二の金属層の間に配置されており、シリコーン樹脂硬化物とPVA系乳化剤と無機フィラーとを含有する。
【0023】
シリコーン樹脂硬化物は、シリコーン樹脂を硬化してなる硬化物である。シリコーン樹脂硬化物は、シリコーン樹脂の硬化物であってもよく、シリコーン樹脂及び硬化剤の混合物の硬化物であってもよい。
【0024】
シリコーン樹脂は特に限定されない。シリコーン樹脂としては、例えば、付加反応硬化型シリコーン、両末端エポキシ変性シリコーン、片末端エポキシ変性シリコーン、側鎖エポキシ変性シリコーン等が挙げられる。
【0025】
シリコーン樹脂は、市販品であってもよい。市販品のシリコーン樹脂としては、例えば、モメンティブ社製 商品名TSE3221S、信越化学工業社製 商品名KF-105、信越化学工業社製 商品名KF-1001等が挙げられる。
【0026】
硬化剤は特に限定されず、シリコーン樹脂を硬化するための硬化剤として公知の硬化剤を特に制限無く用いることができる。硬化剤としては、例えば、アミン樹脂、酸無水物樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
【0027】
硬化剤は、市販品であってもよい。市販品の硬化剤としては、例えば、ハンツマン社製 商品名D400、日本合成加工社製 商品名H84B、東都化成社製 商品名TD2131等が挙げられる。
【0028】
絶縁層中のシリコーン樹脂硬化物の含有量は、絶縁層の全量基準で、例えば10体積%以上であってよく、好ましくは15体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは25体積%以上である。また、絶縁層中のシリコーン樹脂硬化物の含有量は、絶縁層の全量基準で、例えば90体積%以下であってよく、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下、更に好ましくは60体積%以下である。
【0029】
PVA系乳化剤は、ビニルアルコール単位を有するポリマーからなる乳化剤ということができる。なお、ビニルアルコール単位は、下記式(1-1)で表される構成単位である。
【化3】
【0030】
PVA系乳化剤は、ビニルアルコール単位以外の他の構成単位を更に有していてよい。他の構成単位としては、例えば、下記式(1-2)で表される構成単位が挙げられる。
【化4】
【0031】
式(1-2)中、Rは水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す。
【0032】
Rは、好ましくはアルキル基又はフェニル基であり、より好ましくはアルキル基である。アルキル基は、例えば炭素数1~30のアルキル基であってよく、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~10のアルキル基である。
【0033】
好適な一態様において、PVA系乳化剤は、式(1-1)で表される第一の構成単位と式(1-2)で表される第二の構成単位とを有するポリマーであってよい。
【0034】
PVA系乳化剤中の第一の構成単位及び第二の構成単位の合計含有量は、例えば80質量%以上であってよく、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0035】
PVA系乳化剤中の第一の構成単位及び第二の構成単位の総数(M+M)に対する、第一の構成単位の総数(M)の比(M/(M+M))は、例えば0.5以上であってよく、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上である。これにより、PVA系乳化剤の水溶性がより向上する傾向がある。また、上記比(M/(M+M))は、例えば0.95以下であってよく、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下である。これにより、シリコーン樹脂の乳化性がより向上し、シリコーン樹脂を乳化した際の水溶液粘度がより低くなる傾向がある。なお、上記比(M/(M+M))は、ケン化度ということもできる。
【0036】
PVA系乳化剤の重合度は、例えば500以上であってよく、より好ましくは1500以上である。これにより、シリコーン樹脂の乳化性がより向上する傾向がある。また、PVA系乳化剤の重合度は、例えば8000以下であってよく、好ましくは5000以下、より好ましくは3500以下である。これにより、シリコーン樹脂を乳化した際の水溶液粘度がより低くなる傾向がある。重合度は、PVA系乳化剤中の繰り返し単位の合計数ということもできる。例えば、PVA系乳化剤中の繰り返し単位が第一の構成単位及び第二の構成単位である場合、PVA系乳化剤の重合度は、第一の構成単位及び第二の構成単位の総数(M+M)で表すことができる。
【0037】
PVA系乳化剤は、ポリ(カルボン酸ビニルエステル)の部分加水分解物であってもよい。ポリ(カルボン酸ビニルエステル)は、カルボン酸ビニルエステルの重合体であり、式(1-2)で表される構成単位を繰り返し単位とする重合体、ということもできる。
【0038】
ポリ(カルボン酸ビニルエステル)の部分加水分解物は、ポリ(カルボン酸ビニルエステル)中の式(1-2)で表される構成単位の一部を、加水分解により式(1-1)で表される構成単位に変換したものであってよい。すなわち、ポリ(カルボン酸ビニルエステル)の加水分解物は、式(1-1)で表される第一の構成単位と、式(1-2)で表される第二の構成単位とを有する。
【0039】
絶縁層中のPVA系乳化剤の含有量は、シリコーン樹脂硬化物100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。これにより、金属層に対する接着強度がより向上する傾向がある。また、絶縁層中のPVA系乳化剤の含有量は、シリコーン樹脂硬化物100質量部に対して、例えば40質量部以下であってよく、好ましくは35質量部以下、より好ましくは33質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。これにより、絶縁層がより低吸湿性となる傾向がある。
【0040】
無機フィラーは、例えば、絶縁性及び熱伝導性が求められる用途に用いられる公知の無機フィラーであってよい。無機フィラーは、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる一種以上を含んでよく、高湿度環境下での絶縁信頼性に更に優れる観点から、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる一種以上を含んでよく、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる一種以上を含んでよい。
【0041】
無機フィラーの形状は、例えば、粒子状、鱗片状、多角形状等であってよい。無機フィラーの平均粒子径は、熱伝導性の向上の観点から、0.05μm以上、0.1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよく、絶縁性の更なる向上の観点から、200μm以下、150μm以下、100μm以下、又は80μm以下であってよい。本明細書において、無機フィラーの平均粒子径は、無機フィラーの体積基準の粒度分布におけるd50径を意味する。無機フィラーの体積基準の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される。
【0042】
絶縁層中の無機フィラーの含有量は、絶縁層の全体積基準で、例えば10体積%以上であってよく、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、更に好ましくは50体積%以上である。これにより、絶縁層の熱伝導性がより向上する傾向がある。また、絶縁層中の無機フィラーの含有量は、絶縁層の全体積基準で、例えば90体積%以下であってよく、好ましくは80体積%以下、より好ましくは75体積%以下、更に好ましくは70体積%以下である。これにより、絶縁層の絶縁性がより向上する傾向がある。
【0043】
絶縁層は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。
【0044】
他の成分としては、例えば、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、湿潤分散材等が挙げられる。
【0045】
絶縁層中の他の成分の含有量は、シリコーン樹脂硬化物100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以下であり、0質量部であってもよい。
【0046】
絶縁層の厚みは特に制限されず、回路基板の作成に好適となる観点からは、例えば20μm以上であってよく、好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上である。これにより、絶縁性がより向上する傾向がある。また、絶縁層の厚みは、例えば200μm以下であってよく、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。これにより、熱伝導性がより向上する傾向がある。
【0047】
本実施形態の積層体は、第二の金属層が金属回路部を形成していてよい。このような積層体は金属ベース回路基板として好適に用いることができる。金属回路部は、例えば、金属箔の一部を除去(所定パターンに加工)して形成されたものであってよい。
【0048】
図1は、積層体の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す積層体10は、第一の金属層1と、第一の金属層1上に配置された絶縁層2と、絶縁層2上に配置された第二の金属層3と、を備える。積層体10において、第一の金属層1と第二の金属層3とは絶縁層2によって離隔されている。
【0049】
積層体10では、第二の金属層3が絶縁層2上の略全面に配置されているが、他の実施形態では、第二の金属層は絶縁層上の一部のみに配置されていてもよい。
【0050】
図2は、回路基板(積層体)の一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す回路基板20は、第一の金属層1と、第一の金属層上に配置された絶縁層2と、絶縁層2上に配置された金属回路部4と、を備える。回路基板20において、第一の金属層1と金属回路部4とは絶縁層2によって離隔されている。
【0051】
回路基板20は、例えば、積層体10の第二の金属層3の一部を除去して、所定パターンを有する金属回路部4を形成したものであってよい。
【0052】
(積層体の製造方法)
本実施形態の積層体は、例えば、シリコーン樹脂と、PVA系乳化剤と、無機フィラーと、水と、を含有する塗布液を準備する準備工程と、第一の金属層と塗布液の塗膜の半硬化物と第二の金属層とを積層し、積層方向に加圧しながら加熱して、第一の金属層と、塗膜の硬化物を含む絶縁層と、第二の金属層と、を備える積層体を得る加熱工程と、を備える、製造方法により製造することができる。
【0053】
本実施形態の製造方法では、水系の塗布液を用いて絶縁層が形成されるため、有機溶媒の除去等のための特殊な設備が不要であり、有機溶媒の揮発による作業環境の悪化も避けることができる。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、設備及び作業環境への負荷を十分に抑制しつつ積層体を製造できる。
【0054】
シリコーン樹脂、PVA系乳化剤及び無機フィラーの例示は上記のとおりである。
【0055】
塗布液中、シリコーン樹脂は、PVA系乳化剤により乳化分散していてよい。塗布液は、例えば、シリコーン樹脂が乳化した乳化液に無機フィラーを分散させてなる、分散液であってよい。
【0056】
塗布液中のシリコーン樹脂の含有量は、塗布液中の不揮発分の全量基準で、例えば2.5質量%以上であってよく、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、塗布液中のシリコーン樹脂の含有量は、塗布液中の不揮発分の全量基準で、例えば65質量%以下であってよく、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0057】
塗布液中のPVA系乳化剤の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。これにより、シリコーン樹脂の乳化性がより向上する傾向がある。また、塗布液中のPVA系乳化剤の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、例えば40質量部以下であってよく、好ましくは35質量部以下、より好ましくは33質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。これにより、絶縁層がより低吸湿性となる傾向がある。
【0058】
塗布液中の無機フィラーの含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、例えば30質量部以上であってよく、好ましくは100質量部以上、より好ましくは300質量部以上、更に好ましくは600質量部以上である。これにより、絶縁層の熱伝導性がより向上する傾向がある。また、塗布液中の無機フィラーの含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、例えば3500質量部以下であってよく、好ましくは3000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。これにより、絶縁層の絶縁性がより向上する傾向がある。
【0059】
塗布液中の水の含有量は特に限定されず、塗布液が後述の好適な粘度範囲を示す量であることが好ましい。塗布液中の水の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、例えば500質量部以上であってよく、好ましくは600質量部以上、より好ましくは700質量部以上、更に好ましくは800質量部以上である。これにより、塗工液を一様な厚みで塗布しやすくなる傾向がある。また、塗布液中の水の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、例えば1500質量部以下であってよく、好ましくは1400質量部以下、より好ましくは1300質量部以下、更に好ましくは1200質量部以下である。これにより、塗工時の塗工液流れがなく、膜厚制御がより容易となる傾向がある。
【0060】
塗布液は上記以外の成分を更に含有していてもよい。例えば、塗布液は、硬化剤を更に含有していてよい。硬化剤の例示は上記のとおりである。
【0061】
塗布液中の硬化剤の含有量は特に限定されず、シリコーン樹脂に含まれるエポキシのエポキシ当量1に対して、硬化剤の活性水素当量(又は酸無水物当量)が0.01~1.25になるように配合すること が好ましい。
【0062】
塗布液はまた、上記以外の他の成分として、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、湿潤分散材等を更に含有していてもよい。
【0063】
塗布液の25℃における粘度は、例えば10cps以上であってよく、好ましくは1000cps以上、より好ましくは3000cps以上である。これにより、塗工液を一様な厚みで塗布しやすくなる傾向がある。また、塗布液の25℃における粘度は、例えば100000cps以下であってよく、好ましくは50000cps以下、より好ましくは10000cps以下である。これにより、塗工液中に空隙を巻き込みにくくなる傾向がある。なお、塗布液の粘度は、回転法で測定される値を示す。
【0064】
準備工程は、例えば、シリコーン樹脂とPVA系乳化剤と水とを混合し、シリコーン樹脂を乳化させて乳化液を得る乳化工程を含んでいてよい。乳化工程における混合方法に特に制限はなく、ホモジナイザー、ディスパーザー、クレアミックス等公知の撹拌混合装置を用いて分散する方法から適宜選択してよい。
【0065】
準備工程はまた、乳化工程で得た乳化液と無機フィラーとを混合して、塗布液を得る無機フィラー混合工程を更に含んでいてもよい。無機フィラー混合工程における混合方法に特に制限はなく、公知の混合方法から適宜選択してよい。
【0066】
加熱工程では、第一の金属層と、塗布液の塗膜の半硬化物と、第二の金属層と、を積層した積層体を準備し、当該積層体を積層方向に加圧しながら加熱する。これにより、半硬化物が硬化して絶縁層が形成される。
【0067】
加熱工程における加圧条件は特に限定されず、例えば0.1MPa以上であってよく、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上である。これにより、絶縁層中の空隙率が小さくなる傾向がある。また、加熱工程における加圧条件は、例えば50MPa以下であってよく、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下である。これにより、得られる硬化物の樹脂流れが抑制される傾向がある。
【0068】
加熱工程における加熱温度は、塗膜を硬化可能な温度であればよい。加熱温度は、例えば60℃以上であってよく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上である。これにより、未反応モノマーが低減される傾向がある。加熱温度は、例えば220℃以下であってよく、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。これにより、得られる絶縁層の空隙率が小さくなる傾向がある。
【0069】
加熱工程は、例えば、第一の金属層又は第二の金属層上に塗布液を塗布して、塗膜を形成する塗膜形成工程を含んでいてよい。
【0070】
塗膜形成工程における塗布方法は特に限定されず、公知の塗布方法から適宜選択してよい。塗膜形成工程では、塗膜中の揮発分(例えば、水)の少なくとも一部を除去してもよい。
【0071】
加熱工程はまた、塗膜形成工程で得た塗膜を半硬化させる半硬化工程を更に含んでいてよい。半硬化工程は、例えば、塗膜を加熱して半硬化させる工程であってよい。半硬化工程では、加熱によって塗膜中の揮発分(例えば、水)の少なくとも一部が除去されてよく、塗膜中の揮発分の多く(例えば90質量%以上、好ましくは95質量%以上)が除去されることが好ましい。
【0072】
半硬化工程における加熱温度は、塗膜を半硬化させることが可能な温度であればよい。加熱温度は、例えば50℃以上であってよく、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上である。これにより、絶縁層中の残溶媒がより少なくなる傾向がある。加熱温度は、例えば150℃以下であってよく、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。これにより、反応をより制御しやすくなる傾向がある。
【0073】
加熱工程はまた、第一の金属層、塗膜の半硬化物及び第二の金属層をこの順に積層し、積層方向に加圧しながら加熱する硬化工程を更に含んでいてよい。硬化工程における加圧条件及び加熱温度は上記のとおりである。
【0074】
本実施形態の製造方法は、第二の金属層の一部を除去して、金属回路部を形成する回路形成工程を更に備えていてよい。この工程を備える製造方法によれば、金属回路部が形成された金属ベース回路基板として有用な積層体が製造される。
【0075】
回路形成工程で第二の金属層の一部を除去する方法は特に限定されず、例えば、エッチング加工等であってよい。
【0076】
回路形成工程では、所定パターンを有する金属回路部が形成されるように、第二の金属層を除去すればよい。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0078】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
(1)乳化液の調製
シリコーン樹脂として粘度3.5Pa・sの付加反応型シリコーン(モメンティブ社製 商品名TSE325-B)を使用し、乳化剤としてPVA樹脂(1)(デンカ社製 商品名B-17、ケン化度88.0mol%、重合度1700、疎水基:アセチル基)を使用した。
PVA樹脂1.36gを、撹拌している常温の蒸留水37.2gに投入し、90℃で60分加熱することでPVA水溶液を得た。PVA水溶液を高速乳化分散機(プライミクス社製 商品名ホモミクサーMARK II 2.5型)を用い、3000rpmで撹拌しつつ、シリコーン樹脂4.13gを5分間かけて添加し、さらに5000rpm5分間撹拌混合することで、乳化液を得た。
(2)塗布液の調製
無機フィラーとして窒化ホウ素(デンカ社製 商品名XGP)を使用した。
乳化液60質量部に、無機フィラー40質量部を加え、遊星式撹拌機(シンキー社製 商品名あわとり練太郎AR-310)にて2000rpm、3分間混練し、塗布液を得た。
(3)積層体の製造
厚さ70μmの銅箔(古河電工社製 商品名電解銅箔、厚さ70μm)上に、塗布液を塗布し、60℃で1時間乾燥してBステージ(半硬化)状態とした。なお、塗布液の塗布量は、硬化後の絶縁層の厚さが175μmとなるように調整した。
その後、厚さ1.5mmのアルミニウム板(天野アルミニウム社製 商品名A1050、厚さ1.5mm)を、Bステージ状態の塗布液の上に置き、熱プレス法にて、積層状態のまま200℃で6時間熱処理し半硬化物を硬化させ、積層体を得た。
【0080】
(4)評価
4-1 乳化液安定性:以下の基準にて乳化液の評価を行った。
A:5℃で24時間保管した後に、乳化液に変化が認められず使用可能であったもの。
B:5℃で24時間保管した後に、乳化液が分離して使用できなかったもの。
4-2 接着性:以下の基準にて積層体の評価を行った。
得られた積層体の銅箔の所定位置をエッチングレジストでマスキングした後、エッチングレジストを除去して10mm×100mmの銅箔パターンを持つ金属ベース回路基板を作製した。次いで、JIS C 6481に規定された方法に従い、23±2℃、相対湿度50%の条件で銅箔と絶縁層とのピール強度を測定した。なお、測定は5回繰り返し、その算術平均値をピール強度とした。ピール強度は1N/cm以上が望ましい。
4-3 電気特性(耐電圧)の評価:以下の基準にて評価を行った。
得られた積層体の銅箔の所定位置をエッチングレジストでマスキングした後、エッチングレジストを除去して金属ベース回路基板を作製し、JIS C 2110に規定された方法に従い、耐電圧を測定した。耐電圧は30kV/mm以上が望ましい。
4-4 熱伝導率(λ)の評価:以下の基準にて評価を行った。
得られた塗布液の硬化物を作製し、下記式のとおり、熱拡散率(α)、比重(Cp)、比熱(ρ)を全て乗じて、熱伝導率(λ)を算出した。熱拡散率は、試料を幅10mm×10mm×厚み10mmに加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製 商品名LFA447NanoFlash)を用いた。比重はアルキメデス法を用いて求めた。比熱は、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製 商品名Q2000)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温~400℃まで昇温させて求めた。熱伝導率は3W/(m・K)以上が望ましい。
熱伝導率(λ)=熱拡散率(α)×比熱(Cp)×比重(ρ)
【0081】
(実施例2)
PVA樹脂(1)をPVA樹脂(2)(デンカ社製 商品名B-17S、ケン化度88.0mol%、重合度1700、疎水基:アセチル基)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、乳化液、塗布液及び積層体を得た。
【0082】
(実施例3)
PVA樹脂(1)をPVA樹脂(3)(デンカ社製 商品名B-33、ケン化度88.0mol%、重合度3300、疎水基:アセチル基)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、乳化液、塗布液及び積層体を得た。
【0083】
(実施例4)
シリコーン樹脂を粘度58Pa・sの付加反応型シリコーン(モメンティブ社製、商品名TSE3221S)に変更した。また、PVA水溶液を、PVA樹脂(1)1.65gを、撹拌している常温の蒸留水38.9gに投入し、90℃で60分加熱することで得られるPVA水溶液に変更した。また、乳化剤の調製は、PVA水溶液を高速乳化分散機(プライミクス社製 商品名ホモミクサーMARK II 2.5型)を用い、3000rpmで撹拌しつつ、シリコーン樹脂4.13gを5分間かけて添加し、更に5000rpm5分間撹拌混合することで行った。
また、塗布液の調製は、乳化液61質量部に、無機フィラー39質量部を加え、遊星式撹拌機(シンキー社製 商品名あわとり練太郎AR-310)にて2000rpm、3分間混練することで行った。
上記塗布液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0084】
(実施例5)
シリコーン樹脂として粘度16.5Pa・sのエポキシ変性シリコーン(信越化学工業社製 商品名KF-1001)1.5gと、粘度0.015Pa・sのエポキシ変性シリコーン(信越化学工業社製 商品名KF-105)1.5gとの混合物を用い、硬化剤として脂肪族アミン(ハンツマン社製 商品名D-400アミン当量200)0.61gを使用した。PVA水溶液としては、PVA樹脂(三菱ケミカル社製 商品名ゴーセネックスLW-100 ケン化度43.1mol%、疎水基:ポリオキシエチレン基)0.0036gを、撹拌している常温の蒸留水193.5gに投入し、90℃で60分加熱することで得られる水溶液を用いた。
PVA水溶液を高速乳化分散機(プライミクス社製 商品名ホモミクサーMARK II 2.5型)を用い、3000rpmで撹拌しつつ、シリコーン樹脂と硬化剤との混合物3.61gを5分間かけて添加し、さらに5000rpm5分間撹拌混合することで、乳化液を得た。
また、無機フィラーとしてアルミナ(デンカ社製 商品名DAS45 最大粒子径70μm、平均粒子径45μm)13.3質量部、アルミナ(デンカ社製 商品名DAS10 最大粒子径21μm、平均粒子径10μm)13.3質量部、アルミナ(住友化学社製 商品名AA2 最大粒子径5μm、平均粒子径2μm)11.4質量部を使用した。
また、塗布液の調製は、乳化液61質量部に、上記無機フィラーを加え、遊星式撹拌機(シンキー社製 商品名あわとり練太郎AR-310)にて2000rpm、3分間混練することで行った。
上記塗布液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0085】
(比較例1)
PVA樹脂を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、塗布液及び積層体を得た。
【0086】
(比較例2)
シリコーン樹脂を粘度58Pa・sの付加反応型シリコーン(モメンティブ社製商品名TSE3221S)に変更し、PVA樹脂を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、塗布液及び積層体を得た。
【0087】
実施例及び比較例の結果を表1及び表2に示す。なお、表1の「PVA系乳化剤の量」は、シリコーン樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対するPVA系乳化剤の使用量(質量部)を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【符号の説明】
【0090】
1…第一の金属層、2…絶縁層、3…第二の金属層、4…金属回路部、10…積層体、20…回路基板(積層体)。
図1
図2