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▶ 石元 憲男の特許一覧

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  • 特開-高度体圧分散曲面マットレス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028971
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】高度体圧分散曲面マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A47C27/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134986
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】302047983
【氏名又は名称】石元 憲男
(72)【発明者】
【氏名】石元 憲男
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB05
(57)【要約】
【課題】仰向け寝の時にマットレスと強く接する人体背面は、かかと(凸部),足首(凹部),ふくらはぎ(凸部),膝裏(凹部),臀部(凸部),腰椎付近(凹部),肩甲骨付近(凸部)と凹凸が激しい。にもかかわらず、現状のマットレスは、すべて平面である。凹凸の激しい人体背面を、平面のマットレスで対応しているため、いくら研究しても、高度な体圧分散を実現することは、物理的に不可能である。
【解決手段】マットレスを曲面にして、その支持力を、人体の全部位に渡って、過不足なく均等化する(高度な体圧分散を実現する)。具体的には、使用者固有の背面曲線を測定し、そのデータを基に、その曲線とほぼ同一の曲線を断面にもつマットレスを、一品一様で製作する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の自然な立ち姿勢の背面を、側面方向から視て、上下方向に形成される使用者固有の背面輪郭曲線と、ほぼ同一の曲線を、長手方向垂直断面上側に、有することを特徴とする高度体圧分散曲面マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横臥時、人体の下面に位置して接するマットレスの体圧分散,反発力,人体支持力に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマットレスには、コイルスプリングタイプ,高反発ウレタン発泡タイプ,低反発ウレタン発泡タイプ,ファイバータイプ等があるが、いずれのタイプも物理法則により、反発力(人体支持力)を高度に平均化することはできない。言い換えれば、マットレスの反発力による支持力が偏っていて、必要以上に強すぎる部位や全く支持力がない部位も存在する。
【0003】
図5のように、沈み込みが浅めの従来のマットレスに、仰向け横臥の場合は、背中の凹部12は全く支持出来ていない。反発力は臀部11と肩甲骨付近13に集中している。
【0004】
図6のように、沈み込みが深めの従来のマットレスに、仰向け横臥の場合、一見反発力が平均化しているように見えるが、図1の場合と同様に、反発力はポジション11が最も強く、ポジション12は最も弱い。
【0005】
その理由を以下に説明する。マットレスの沈み込み量をS(mm)、反発力をF(N)反発力係数をK(N/mm)とすると、圧縮ばねの荷重とたわみの式で代用できる。
(数1)F=K・S
(代用式、実際は、接する面積が各ポジション異なるので、Kは一様ではないが、ここでは便宜的に使用する)
【0006】
図6において、ポジション11,12の反発力をそれぞれF11,F12、沈み込み量をそれぞれS11,S12で表す、このマットレスの反発力係数をKaとする、
仮にKa=3N/mm,S11=50mm,S12=10mmとすると、
F11=Ka・S11=3N/mm×50mm=150N、
F12=Ka・S12=3N/mm×10mm=30N、
ポジション11では反発力が150Nあるが、ポジション12では30Nしかなく、反発力の均等化は全く成しえていない。上記計算結果から、反発力係数(硬さ)をいくら調整してみても、沈み込み量を均等にしない限り、反発力を均等化することはできない。
【0007】
図7に示すように、足首部15と膝下面16も背中の凹部12と同様に反発力はほとんどゼロである、この3箇所の凹部の存在が、問題を複雑にしており、沈み込み量均等化の障壁となっている。以上の理由により、高度に体圧分散(反発力(人体支持力)を全位置でもれなく均等化)させることは従来のマットレスでは不可能である。
【0008】
但し、数1において、ポジション11とポジション12の反発力係数Kを、異ならせることで、高度な体圧分散は可能となる。つまり、ポジション12の反発力係数をポジション11の数倍にすれば、理論上、高度な体圧分散は可能である。しかし、ポジション11とポジション12の反発力係数を、数倍異ならせるのは、製造上難しい、仮に製作できたとしても、ポジション12の反発力係数が、かなり大きく(硬く)なるので、寝心地はかなり悪くなる、又、真っ平なので、どこに位置を合わして、寝ていいのか分からない、たとえ、就寝時に背中の凹部12を、その最適な反発力係数の位置に、合致させていたとしても、睡眠中には必ずずれてしまう、このような致命的な欠陥があり、その実用は困難であろう。
【0009】
コイルスプリングタイプで、反発力係数(硬さ)を、場所によって異ならせる方法も考案されているが、反発力係数を異ならせる最少寸法がコイルスプリングの直径(数cm)になるため、その最少寸法が大き過ぎて、人体の背面曲面には対応することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のマットレスは、硬さ等を研究して、体圧分散を目指してはいるが、上記背景技術に記載の根拠により、高度な体圧分散(反発力(人体支持力)のもれなく全位置での均等化)は、いずれも実現していない。
【0011】
図8に示すように、仰向け横臥の場合、人体の腰椎には、内臓等が、睡眠中長時間に渡って、大きな荷重をかけ続ける。従来のマットレスでは、背中凹部12への反発力が、全く無いか有っても弱いため、その荷重の全てを、腰椎で受けることになる、腰椎を構成している各椎骨にかけられた荷重は、アーチ構造のため、各椎間板の方向にも作用して、椎間板をも損傷する。
【0012】
図5図6に示すように、仰向け横臥の場合、従来のマットレスでは、人体臀部11でマットレスの反発力は最大となる、その結果として、臀部において、圧迫感やしびれ感を生じさせる、又、圧迫により(通気もよくないので)非常に暑くなる、人によってはあせもを発症する、痔痛の人は仰向けには寝られない。
【0013】
図7に示すように、従来のマットレスでは、仰向け横臥の場合、人体のかかと14は、マットレスと点接触で接する。重量は胴体部より軽いが、点接触のため圧力が強くなり、しびれ感等を生じさせる。掛布団等を使用する時は、さらに、かかと14への圧力は大きくなる(つま先が独立峰になっているのと、掛布団の荷重の端部という悪条件が、重なって、かかとにかかる圧力を、さらに大きくしている)。
【0014】
図9に示すように、仰向け横臥の場合、従来のマットレス(硬め)では、臀部と背中はしっかりとマットレスに接しているが、臀部ががシーソーの支点のようになって足部は軽く浮いてしまう。そのため、足部の重さにより、股関節をさらに開く方向に回転モーメントが作用する。あたかも、蝶番を最大に開いた時に、その軸に負荷がかかるように、股関節にも同様の負荷がかかってくる、しかもこの負荷も、睡眠中ずっと長時間に渡って、かかり続けているため、股関節痛を発症することもある。
【0015】
股関節に負荷がかかると、股関節周辺は神経や血管が多いので、神経痛や血行不良を、引き起こしてしまうこともある。
【0016】
図7に示すように、仰向け横臥の場合、従来のマットレスでは、膝下面16はほとんど支持されていない。そのため、睡眠中、長時間に渡って、膝関節は、回転可動域の最大に開いた状態が続いている、その上、重力によって、さらに、開こうとする力が加えらている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、マットレス使用者固有の背面曲面に、ほぼ合致した曲面を、上面に有するマットレスを、一品一様で製作することによって、沈み込み量の均等化が、成し遂げられ、今日まで成しえなかった、高度な体圧分散(反発力(人体支持力)のもれなく全位置での均等化)を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
作用反作用の法則により、胴体部と足部では、重さが異なるので、その反発力(人体支持力)の大きさは異なるが、本発明のマットレスを使用すれば、胴体部と足部それぞれの全位置で、もれなく、沈み込み量が均等になるので、その反発力(人体支持力)は均等化される(高度な体圧分散が実現する)、それにより、高圧力を感じる部位がなくなり、寝心地が格段に良くなる。(図2参照)
【0019】
背面凹部12へ、反発力(人体支持力)が十分に行き渡るようになり、腰椎関連の疾病の予防となる(腰痛の予防)。又、人体臀部11とマットレスの凹部1が、ぴったり嵌合するので、睡眠中に、人体の背面曲面とマットレスの曲面がずれることはない、従って、背面凹部12と嵌合するマットレス凸部2も、ずれないので、その役割を、睡眠中ずっと果たすことができる。(図1図2図8参照)
【0020】
人体臀部11への圧力集中がなくなり、臀部の圧迫感やしびれ及び圧迫による暑さも、軽減できる、さらに、あせも発症や痔痛も軽減できる。(図2図6参照)
【0021】
足首部15も、しっかりと、支持されるので、かかと14への圧迫力が軽減されて、かかとのしびれ感を軽減できる。(図2図7参照)
【0022】
臀部11が、比較的、深い位置になり、膝下面16が、十分支持されるので、股関節への回転モーメント負荷が、軽減され、股関節痛や、股関節周辺の神経痛や血行不良も、軽減できる。(図2図9参照)
【0023】
膝関節下部16を、しっかりと、支持することにより、膝関節への負荷も軽減できる。(図2図7参照)
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のマットレスである。
図2図2は、本発明のマットレスに、その製作に使用した、背面輪郭曲線データ の本人が、横臥している状態を示したものである。
図3図3は、使用者の立ち姿勢の背面輪郭曲線を、測定する方法例を示したもの である。
図4図4は、使用者の背面輪郭曲線データ例を示したものである。
図5図5は、従来のマットレスの使用例である(沈み込みが浅めのマットレス)
図6図6は、従来のマットレスの使用例である(沈み込みが深めのマットレス)
図7図7は、従来のマットレスの使用例である(かかと部,膝部拡大図)。
図8図8は、従来のマットレス使用による、椎間板損傷のメカニズムである。
図9図9は、従来のマットレス(硬め)使用による、股関節への負荷を示したも のである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
マットレス使用者固有の背面曲面に、ほぼ合致した曲面を、上面に有する、一品一様のマットレスを、オーダー都度製作する。頭部付近に関しても、本発明は適用可能だが、頭部付近に関しては、使用者の嗜好が様々なので、本例では頭部付近は平面にしている。
【実施例0026】
本発明マットレスの製作手順としては、店頭で、3Dスキャナー等を利用して、各使用者の、立ち姿勢の背面輪郭曲線を測定する(図3参照)。次に、そのデータ(図4参照)を、マットレス製造現場に送り、大型フライス盤や大型3Dプリンターで、店頭で測定した背面輪郭曲線を、長手方向垂直断面上側に形成したマットレスを、発泡ウレタン等で製作する(図1参照)。完成したマットレスは、輸送しやすい大きさに切断したり、真空圧縮したりして店舗に届ける。
【産業上の利用可能性】
【0027】
人体の背面曲線は寸法的に千差万別であり、既成品では全く対応できない、オーダースーツと同じ感覚でビジネスと成りうるだろう。
【0028】
本発明によれば、背面曲線だけでなく、オーダーデータに体重を加えれば、各使用者に最適の硬さのマットレスをも提供出来る。
【0029】
人体の側面の曲線(立ち姿勢の人体を正面から視た時に左右に形成される曲線)も臀部から背中にかけては背面曲線と似ているため、合致はしないが、仰向け横臥だけでなく、横向き横臥にもある程度は対応できる。
【符号の説明】
【0030】
1 本発明マットレスの、人体臀部11と嵌合する凹部
2 本発明マットレスの、人体背面凹部12と嵌合する凸部
3 本発明マットレスの、人体背面上部13と接する位置
4 本発明マットレスの、人体かかと14と嵌合する凹部
5 本発明マットレスの、人体足首部15と嵌合する凸部
6 本発明マットレスの、人体膝の内側16と嵌合する凸部
11 人体臀部中央(凸部の頂上)(人体長手方向)
12 人体背面凹部(腰椎付近)中央(人体長手方向)
13 人体背面上部(肩甲骨付近)(人体長手方向)
14 人体かかと(凸部の頂上)(人体長手方向)
15 人体足首部(最小部)(人体長手方向)
16 人体膝の内側中央(横臥時下面)(人体長手方向)
F マットレス上に横臥した時のマットレスの反発力
F11 ポジション11への反発力
F12 ポジション12への反発力
K 反発力係数(マットレスの硬さを表す)
N ニュートン(1N≒0.1Kg)
S マットレス上に横臥した時のマットレスの沈み込み量
S11 ポジション11の沈み込み量
S12 ポジション12の沈み込み量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9