(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028981
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】衣料用繊維処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/342 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
D06M13/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135005
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】390003001
【氏名又は名称】川研ファインケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 義昭
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA03
4L033AB01
4L033AB04
4L033AC01
4L033AC15
4L033BA53
(57)【要約】
【課題】
衣料用繊維に、適度な弾力性及び滑らかな質感を付与することで、風合いが改善する衣料用繊維処理剤組成物を提供する。
【解決手段】
特許6386849記載のアルギニン誘導体の性能を最大限に利用することにより、衣料用繊維製品における、弾力性及び滑らかな質感が優れ、風合いが改善することを見出し、本発明を完成した。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるサクシニルアルギニンまたはその塩を含有する衣料用繊維処理剤組成物。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用繊維に適度な弾力性及び滑らかな質感を付与し、風合いを改善する衣料用繊維処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、衣料用繊維は着用や経年による劣化、洗濯によるダメージに伴い、本来の弾力性や滑らかな質感が失われ外観や感触に大きな影響を与えてしまう。特に、獣毛繊維や毛皮、羽毛等の繊維では、風合いが顕著に悪化してしまい、使用者からの不満も多い。そこで、良好な弾力性や滑らかな感触を維持することができる剤の提供が、より強く要望されている。さらに、使用する処理剤の皮膚刺激性に関しても重要視されている(特許文献1)。
【0003】
これらの問題を解決するため多数の提案が行われているが、多くの場合、糊剤や高分子等を用いる手法(特許文献2および特許文献3)である。これは高分子により表面をコートすることで繊維の強度を向上させる効果であり、繊維自体の改善には至っていない。また、塗布量が不均一化して局部的に製膜した場合にごわつきが生じる場合があった。また、水不溶性シリコーンや陽イオンセルロース等の基剤を液体洗剤に配合すると分離し、安定性が損なわれる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-192970号公報
【特許文献2】特開2016-113606号公報
【特許文献3】特開2001-348781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衣料用繊維に、適度な弾力性及び滑らかな質感を付与し、風合いが改善する衣料用繊維処理剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、特許6386849記載のアルギニン誘導体の性能を最大限に利用することにより、衣料用繊維製品における、弾力性及び滑らかな質感が優れ、風合いが改善することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、成分(A)として、一般式(1)で示されるサクシニルアルギニンまたはその塩を含有する衣料用繊維処理剤組成物に関する。
【化1】
【発明の効果】
【0008】
本発明は、衣類用繊維製品に対して使用することで、適度な弾力性及び滑らかな質感を付与し、風合いが改善する衣料用繊維処理剤組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に具体例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの説明により何ら限定されるものでは無い。
【0010】
本発明における衣料用繊維処理剤組成物は、成分(A)として、一般式(1)で示されるサクシニルアルギニンまたはその塩を含有する組成物である。
【化2】
【0011】
成分(A)として、一般式(1)で示されるサクシニルアルギニンまたはその塩は、皮膚に対して低刺激で、誤って経口摂取した場合においても、代謝によりサプリメントや調味料として使用されているアルギニンとコハク酸に分解されるため、身体への影響は極めて少ない。また、環境に排出されても容易に分解されるため、環境への影響も極めて少ない。
【0012】
サクシニルアルギニンまたはその塩は、公知の手法(例えば特開2016-064994)により製造することができ、塩としては、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、リチウム等の金属塩を用いることができ、一般に容易に入手できるナトリウム、カリウム、マグネシウムを用いることができる。
サクシニルアルギニンのNa塩であるサクシノイルアルギニンNaの入手可能な市販品として、川研ファインケミカル社製のカワテクト(登録商標)SASが挙げられる。
【0013】
成分(A)である一般式(1)で示されるサクシニルアルギニンまたはその塩を衣料用繊維処理剤組成物に配合することにより、これを使用した衣料用繊維に適度な弾力性並びに滑らかな質感を与える効果が発現する。
【0014】
本発明の衣料用繊維処理剤組成物中の成分(A)の含有量は、使用形態により調整することが好ましい。
本発明の組成物を洗濯時(好ましくはすすぎ時)など希釈使用する形態の場合は、風合い改善効果の点から、衣料用繊維処理剤組成物中における希釈前の含有量は好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、特に好ましくは5~15質量%である。
本発明の組成物をスプレー容器等に充填して、処理対象である衣料用繊維に直接噴霧もしくは直接塗布する形態の場合は、風合い改善効果の点から、衣料用繊維処理剤組成物中の含有量は好ましくは0.001~2.0質量%、より好ましくは0.005~1.5質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である。
添加量が各下限を下回る含有量では、本発明の効果が得られにくい為好ましくなく、各上限を超えた含有量の場合、乾燥後にごわつきが生じる場合があり、良好な弾力性や滑らかさの付与による、風合いの改善効果が得にくくなる場合がある。
【0015】
本発明の効果である、良好な弾力性や滑らかさの付与による、風合いの改善効果は、成分(A)である一般式(1)で示されるサクシニルアルギニンまたはその塩を用いることで十分得られるが、衣料用繊維処理剤組成物に、成分(B)として、質量平均分子量が1000未満の多価アルコールも併用することで、より衣料用繊維製品に滑らかさが付与され、目的の風合い改善効果がより得られる。
【0016】
成分(B)である質量平均分子量が1000未満の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン誘導体、1,3-ブチレングリコール、メチレングリコール、グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、デシレングリコール、ラウリルグリコール、ラウリルグリコールヒドロキシプロピルエーテル等のグリコール類、プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、イソペンチルジオール、ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、エチルヘキサンジオール、オクタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、メチルプロパンジオール等のジオール類、ペンタエリスリトール、キシリトール、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、グルコース、ラクトース、マルチトール、スクロース等の糖類、糖アルコール類などが挙げられる。これらの成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
成分(B)である多価アルコールの質量平均分子量は1000未満であれば十分に目的の効果を発揮するが、質量平均分子量が小さい方が対象の衣料用繊維製品に浸透しやすくなるため、質量平均分子量が200未満であることがより好ましい。また、成分(B)である多価アルコールにおけるアルコールの価数が2以上であると、衣類に対してより滑らかな質感が得られる。このため好ましくは、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。これらの成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明の衣料用繊維処理剤組成物における成分(B)の含有量および種類は、使用形態により調整することが好ましい。
本発明の組成物を洗濯時(好ましくはすすぎ時)などで希釈使用する形態の場合は、風合い改善効果の点から、希釈前の含有量は好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~20質量%、特に好ましくは1~10質量%である。
本発明の組成物をスプレー容器等に充填して、処理対象である衣料用繊維に直接噴霧もしくは直接塗布する形態の場合は、風合い改善効果の点から、含有量は好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%、更に好ましくは0.01~2質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である。
添加量が各下限を下回る配合では、本発明の効果が得られにくい為好ましくなく、各上限を超えて配合した場合、乾燥後にごわつきが生じる場合があり、良好な弾力性が得にくく、風合いの改善効果が得にくくなる場合がある。
使用する成分(B)の種類は、特に限定されないが、使用感や粘度等で適宜選択することが好ましい。
【0019】
使用する形態によっては、成分(C)として界面活性剤を配合することもできる。成分(C)としては、従来の洗濯洗剤等に用いられる界面活性剤であれば、特に制限なく使用できる。例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。
本発明の衣料用繊維処理剤組成物を衣類用繊維洗浄剤とする場合、成分(C)としては、洗浄力を高める観点から、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましい。対象の衣類用繊維製品の汚れに対する洗浄力を発揮し、成分(A)及び成分(B)が衣類へ吸着および浸透しやすくなり、衣料用繊維の弾力性向上および滑らかな質感を与える効果をより高められる。本発明の衣料用繊維処理剤組成物を衣類用繊維柔軟剤とする場合、成分(C)としては、柔軟性や帯電防止性の観点から陽イオン性界面活性剤が好ましい。
衣料用繊維処理剤組成物中の含有量は、特に制限はなく、使用する形態により調整することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で含有できる。
【0020】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、α-オレフィンスルホン酸又はその塩、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、アルキル基を有するアルカンスルホン酸又はその塩、α-スルホ脂肪酸エステル又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸又はその塩、アルキルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アルケニルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アシルアミノカルボン酸又はその塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル又はその塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル又はその塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤等が挙げられる。アニオン界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0021】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、アルキルフェノール、高級アミン等のアルキレンオキシド付加体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、脂肪酸アルカノールアミン、脂肪酸アルカノールアミド、多価アルコール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加体、多価アルコール脂肪酸エーテル、アルキル(又はアルケニル)アミンオキシド、硬化ヒマシ油のアルキレンオキシド付加体、糖脂肪酸エステル、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルキルグリコシド等が挙げられる。本明細書において、高級アミンとは、炭素数8~22のアミンを意味する。
【0022】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、カプリル酸ジメチルアミノプロピルアミド、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド等の長鎖脂肪族アミドアルキル3級アミン又はその塩;パルミテートエステルプロピルジメチルアミン、ステアレートエステルプロピルジメチルアミン等の脂肪族エステルアルキル3級アミン又はその塩;パルミチン酸ジエタノールアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエタノールアミノプロピルアミド;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等の第4級化物等が挙げられる。
【0023】
本発明の衣料用処理剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に溶剤、消臭剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、染料・顔料、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
溶剤としては、エタノール、イソプロパーノール等の低級アルコール類(炭素数2~4)、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2~12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0024】
本発明の衣料用繊維処理剤組成物は、使用形態に応じて異なる剤型にすることができ、例えば固形状、液状、フォーム状、スプレー状、ジェル状、クリーム状等の多くの製品形態で幅広く利用できる。
【0025】
本発明の液状の衣料用繊維処理剤組成物の25℃におけるpH(原液)は、好ましくは4~9、より好ましくは5~8である。
本発明の固形状の衣料用処理剤組成物の25℃におけるpH(成分(A)と成分(B)の合計含有量が1質量%となるようにイオン交換水で希釈した水溶液又は水分散液)は、好ましくは2~9、より好ましくは3~8である。
組成物のpHは、塩酸や硫酸等の酸、及び/又は水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基化合物を添加することにより調整することができる。
【0026】
本発明の衣料用繊維処理剤組成物は、一般的に衣類に利用される繊維に用いることができる。なかでも、ウール、モヘア、カシミヤ、キャメル、アルパカ、ラマ、アンゴラなどの獣毛繊維、ミンク類、フォックス類、キャット類、ラビット類、ラム類などの毛皮や羽毛等を含む製品に対して効果が高い。具体的には、スーツ、スラックス、ジャケット、セーター等の衣類、カーペット、ブランケット、タオル、クツ、マフラー等が挙げられる。
【0027】
<衣料用繊維処理剤組成物の使用方法>
次に、本発明の衣料用繊維処理剤組成物の剤型と使用方法を説明する。
本発明の衣料用繊維処理剤組成物は、使用方法(処理方法)によって各種剤型を採用することができる。
【0028】
希釈使用法
一般的に洗濯時に想定される利用方法であり、本発明である衣料用繊維処理剤組成物を、水に希釈した状態で、対象となる処理対象となる衣料(衣料用繊維製品)と接触させる方法である。
具体的には、洗濯機を利用した洗濯時(好ましくはすすぎ工程時)に、本発明の衣料用繊維処理剤組成物を投入して、処理対象となる衣料(繊維製品)と接触させる方法、もしくは、適度な大きさの容器を、水により希釈された本発明の衣料用繊維処理剤組成物で満たし、前述容器内に処理対象となる衣料(繊維製品)を浸漬して接触させる方法などで適用できる。
【0029】
希釈して使用する際は、本発明の衣料用繊維処理剤組成物が希釈水中で0.001~5質量%になるようにすることが好ましく、より好ましくは0.005~3質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0030】
衣料と水の割合は、衣料1kg当り水の量が、好ましくは1~50L、より好ましくは3~30L、特に好ましくは5~25Lである。
水の温度は、好ましくは5~40℃、更に好ましくは10~30℃であり、処理時間は、好ましくは1~20分、より好ましくは2~15分、特に好ましくは3~10分である。
すすぎ後は脱水し、自然乾燥により乾燥させることが好ましい。
【0031】
直接噴霧法
スプレー容器等に充填して、処理対象である衣料用繊維に直接噴霧し付着させる方法である。均一に噴霧可能であれば使用する容器に特に制限はなく、一般的に流通しているものを使用できる。噴霧後、自然乾燥もしくはふき取りにより乾燥させることが好ましい。
噴霧量は衣料製品の質量に対して、本発明の衣類用繊維処理剤組成物が0.001~5質量%、より好ましくは0.005~2質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0032】
直接塗布法
本発明の衣料用繊維処理剤組成物をフォーム状、ジェル状、クリーム状などとして、適量を処理対象である衣料用繊維に直接塗布し付着させる方法である。塗布後、自然乾燥もしくはふき取りにより乾燥させることが好ましい。
塗布量は衣料製品の質量に対して、本発明の衣類用繊維処理剤組成物が0.001~5質量%、より好ましくは0.005~2質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0033】
直接噴霧・塗布の実施時期は、洗濯工程の脱水終了後の濡れた繊維製品をハンガー等に吊るし、濡れた状態で塗布し、自然乾燥する方法、洗濯後自然乾燥、あるいは回転式加熱乾燥機で乾燥した衣料に塗布し、再度乾燥させる方法を採用することができる。
【実施例0034】
本発明の効果に関して以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、特に断りのない限り、使用成分は富士フィルム和光純薬社より購入した特級もしくは1級の試薬を使用した。
【0035】
評価用布の準備
30cm角のウールトロピカル布(15g)を、表1に示す比較例1の簡易洗剤で2分間軽く押し洗いし、ためすすぎ1分間を2回、脱水を1分間行った後に25℃、湿度40%で一晩放置・乾燥させ評価用布とした。
【0036】
実施例および比較例の調整
試験方法にあわせて、洗濯洗剤系、柔軟剤系、直接噴霧系を想定した3つの剤型の衣料用繊維処理剤組成物を、公知の手法に準じて調製し、実施例1~21、比較例1~5を得た。各組成を表1~3に示す。
【0037】
試験方法
洗濯洗剤系
得られた各衣料用繊維処理剤組成物(実施例1~7および比較例1~2に記載)を水にて0.05質量%となるように調整し、各水溶液を得た。この水溶液中にて評価用布を2分間軽くなじませた後、ためすすぎを2回(各1分間)行った。取り上げ後、軽くしぼり水気をとり、25℃、湿度40%で一晩放置・乾燥させたのち、下記評価を行い、その結果を表1に示す。
【0038】
柔軟剤系
得られた各衣料用繊維処理剤組成物(実施例8~14および比較例3~4に記載)を、水にて0.05質量%となるように調整し、各水溶液を得た。この水溶液中にて評価用布を2分間軽くなじませた後、取り上げて軽くしぼり水気をとり、25℃、湿度40%で一晩放置・乾燥させたのち評価を行い、その結果を表2に示す。
【0039】
直接噴霧系
得られた各衣料用繊維処理剤組成物(実施例15~21および比較例5に記載)を、スプレーボトルに充填し、評価用布(15g)に対して均一に1.5gを噴射した。その後、25℃、湿度40%で一晩放置・乾燥させたのち評価を行い、その結果を表3に示す。
【0040】
評価法
各処理後の布に対して、下記の判定基準に従い、官能評価を行った。官能評価は、10名の研究員にて実施し、処理前と比較し、処理後の弾力性と滑らかな質感のスコアの平均点を算出した。スコアの基準は以下の通りである。平均点が4.6以上を☆、4.1~4.5を◎、3.1~4.0を○、2.1~3.0を△、2.0以下を×として評価した。
【0041】
<弾力性の評価方法>
処理後の布に対して、処理前と比較して、弾力性の変化について下記評価基準に基づき官能評価した。
5点 : 弾力性が増した
4点 : 弾力性がやや増した
3点 : 変化なし
2点 : 弾力性がやや落ちた
1点 : 弾力性が落ちた
【0042】
<滑らかな質感の評価方法>
処理後の布に対して、処理前と比較して、質感(滑らかさ)の変化について下記評価基準に基づき官能評価した。
5点 : 滑らかな質感になった
4点 : やや滑らかな質感になった
3点 : 変化なし
2点 : ややごわごわした質感になった
1点 : ごわごわした質感になった
【0043】
衣料用繊維処理剤組成物(洗濯洗剤系)
【表1】
※ カワテクト(登録商標)SAS(川研ファインケミカル社製 30重量%水溶液)
【0044】
【0045】
【0046】
評価の結果
本発明の衣料用繊維処理剤組成物の範囲内で調製された実施例1~23は、どの剤型であっても、弾力性と滑らかな質感の評価において少なくとも一つ以上が〇評価以上となり、弾力性または滑らかな質感の改善効果があることが確認できた。
一方、成分(A)が配合されていない、比較例1~5では、弾力性と滑らかな質感の評価が△以下となり、本発明の特徴的な効果が十分に得られなかった。
本発明の衣類用繊維処理剤組成物は、さまざまな使用法や剤型でも利用することができ、衣類用繊維製品に対して使用することで、適度な弾力性及び滑らかな質感を付与し、風合いが改善する。また、衣類用繊維の弾力性および滑らかな質感を改善することから、シワを改善剤としても期待される。このため、衣類用繊維製品全般のケア用品として使用することができる。