(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029012
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/231 20110101AFI20230224BHJP
【FI】
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135061
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上山 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】晴山 真伍
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054AA18
3D054EE20
(57)【要約】
【課題】バッグ用基布の使用量の増加を抑制しつつ、エアバッグの膨張展開時のシュリンク量を低減することが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】袋体を備えたエアバッグであって、袋体は、所定の方向に沿って固定される被固定部と、袋体の内部にガスが供給された場合に膨張する膨張部と、袋体の内部にガスが供給された場合に膨張しない非膨張部と、を備え、非膨張部は、膨張部が膨張した場合に、所定の方向において被固定部よりも外側にある袋体の端部から内部に向かって被固定部から次第に離れるように延びる部分を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体を備えたエアバッグであって、
前記袋体は、
所定の方向に沿って固定される被固定部と、
前記袋体の内部にガスが供給された場合に膨張する膨張部と、
前記袋体の内部にガスが供給された場合に膨張しない非膨張部と、
を備え、
前記非膨張部は、前記膨張部が膨張した場合に、前記所定の方向において前記被固定部よりも外側にある前記袋体の端部から内部に向かって前記被固定部から次第に離れるように延びる部分を有するエアバッグ。
【請求項2】
前記袋体は、表側基布と裏側基布とを備え、前記非膨張部は、前記表側基布と前記裏側基布とを接合した接合部である、請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記非膨張部は、面状の領域を有する請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記非膨張部の形状は、線形状である請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記非膨張部は、面状の空間を囲む形状を有する請求項1または2に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、前席乗員の頭部と車体側部との間に膨張展開し、側面衝突の際に前席乗員の頭部を拘束(保護)する前席側突チャンバと、後席乗員の頭部と車体側部との間に膨張展開し、側面衝突の際に後席乗員の頭部を拘束(保護)する後席側突チャンバと、ガスが後席側突チャンバから供給されることにより膨張展開し、後席側突チャンバの後端部の下部側から車両後方側へ延出される延長チャンバと、を備えたカーテンエアバッグが開示されている。
【0003】
特許文献1によれば、膨張展開した後席側突チャンバが車両前方側へ揺動しようとした際には、後席側突チャンバの後端部が延長チャンバを介してシートバックの上面から車両上方向きの反力を受ける。さらに、後席側突チャンバが延長チャンバを介してシートバックの上面から車両後向きの摩擦力を受ける。これにより、後席側突チャンバの車両前方側への揺動を抑制することが可能となる。以下の説明で、後席側突チャンバが車両前方側へ揺動する量を「シュリンク量」という場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カーテンエアバッグは、例えば、所定の形状に裁断した一枚物のバッグ用基布により各部を構成し、各部を縫合することにより形成される。また、カーテンエアバッグではないが、同じように各部を縫合することにより形成される助手席用エアバッグが開示されている(特開平07-9930号公報)。
【0006】
特許文献1に記載のカーテンエアバッグは、後席側突チャンバよりも車両後方側へ延出する延長チャンバを備えているため、その分のバッグ用基布が必要となり、バッグ用基布の使用量が増加するという問題がある。
【0007】
一方で、延長チャンバを備えていない場合、カーテンエアバッグのシュリンク量が増大するようという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、バッグ用基布の使用量の増加を抑制しつつ、エアバッグの膨張展開時のシュリンク量を低減することが可能なエアバッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明におけるエアバッグは、
袋体を備えたエアバッグであって、
前記袋体は、
所定の方向に沿って固定される被固定部と、
前記袋体の内部にガスが供給された場合に膨張する膨張部と、
前記袋体の内部にガスが供給された場合に膨張しない非膨張部と、
を備え、
前記非膨張部は、前記膨張部が膨張した場合に、前記所定の方向において前記被固定部よりも外側にある前記袋体の端部から内部に向かって前記被固定部から次第に離れるように延びる部分を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バッグ用基布の使用量の増加を抑制しつつ、エアバッグの膨張展開時のシュリンク量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用カーテンエアバッグ装置を示す図である。
【
図2】
図2は、比較例に係る車両用カーテンエアバッグ装置を示す図である。
【
図3】
図3は、比較例に係る後端袋体を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る後端袋体を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る車両用カーテンエアバッグ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用カーテンエアバッグ装置を示す図である。
図1には、X軸およびY軸が描かれている。
図1において、左右方向を前後方向又はX方向といい、左方向を前方向、前側又は「+X方向」、右方向を後方向、後側又は「-X方向」という。また、上下方向を車高方向又はY方向といい、上方向を上側又は「+Y方向」、下方向を下側又は「-Y方向」という。また、奥行き方向を車幅方向、表裏方向又はZ方向といい、奥方向を車幅方向外側、裏側又は「+Z方向」、手前方向を車幅方向内側、表側又は「-Z方向」という。なお、前後方向が本発明の「所定の方向」に対応する。
【0013】
本発明の実施の形態では、自動車の車幅方向両側にそれぞれ設けられる車両用カーテンエアバッグ装置1について説明する。車両用カーテンエアバッグ装置1は、ガスを噴出する不図示のインフレータ(ガス発生装置)と、インフレータから噴出するガスが内部に供給されるカーテンエアバッグ10とを有する。なお、本実施の形態では、カーテンエアバッグ10について説明するが、本発明は、ガスの供給により展開膨張するエアバッグであればよく、カーテンエアバッグ10に限定しない。
【0014】
カーテンエアバッグ10とインフレータとはガス導入管(不図示)により連通している。車両に対するインフレータおよびガス導入管の設置位置等は任意に変更可能であり、また、例えば、ガス導入管を設けずに、インフレータをカーテンエアバッグ10の内部に設けることも可能である。
【0015】
図1に示すカーテンエアバッグ10は、上方向(+Y方向)に折り畳まれて長尺状にされた上で、インフレータと共に不図示のルーフサイド部(本開示の「所定の場所」に対応)に収納されている。カーテンエアバッグ10は、収納状態ではカバー体(不図示)により車幅方向内側(-Z方向)から覆われている。カーテンエアバッグ10は、自動車の衝突時や横転(ロールオーバー)時などに、インフレータで発生したガスがカーテンエアバッグ10の内部に供給されることにより、ルーフサイド部から下方向(-Y方向)に向けて飛び出し、1列目及び2列目の座席に着座した乗員の頭部などを保護するように、乗員の車幅方向外側へほぼ面状に展開可能に配置される。
【0016】
カーテンエアバッグ10は、前後方向(X方向)に長い袋状に形成されたエアバッグ本体部11と、このエアバッグ本体部11の上側縁の中央部に形成されるガス導入部12と、エアバッグ本体部11の上側縁に前後方向(X方向)に沿って配置され、ルーフサイド部にブラケット等で固定される複数の取付片部13と、エアバッグ本体部11の前側縁に取り付けられ、不図示のピラーに連結されるテザーベルト(テンションストラップ)14とを有する。
【0017】
ガス導入部12は、エアバッグ本体部11の上側縁から上方向(+Y方向)に突出するように延在する。ガス導入部12にガス導入管が挿入される。これにより、インフレータで発生したガスは、ガス導入管およびガス導入部12を介してエアバッグ本体部11の内部に供給される。なお、本発明のカーテンエアバッグ10には、上述した部品以外の構成部品を備えることが可能である。
【0018】
エアバッグ本体部11は、縫製などによってガス導入部12を除く位置の単数又は複数の基布の周縁部を接合することで袋状に形成されている。また、このエアバッグ本体部11には、膨張展開時に内部に供給されたガスの流れを制御するとともに、エアバッグ本体部11が車幅方向に膨張する大きさを規制する複数の規制部15が設けられている。規制部15は、エアバッグ本体部11の車幅方向内側(表側)の面を構成する表側基布と、車幅方向外側(裏側)を構成する裏側基布とを接合する接合部により形成されている。規制部15の端部には、円形状に表側基布および裏側基布が接合されたサークル部15aが形成されている。サークル部15aが設けられることにより、膨張展開時における基布の伸びの確保と皺の発生の防止を実現でき、また、エアバッグ本体部11の膨張展開時に規制部15の端部に生じる応力集中に対して十分な強度を得ることができる。
【0019】
表側基布と裏側基布との間の接合は全て縫着により行われるが、これに限らず、例えば溶着、背接着剤を用いた接着により接合することも可能である。また、その接合の方法は、カーテンエアバッグ10の材質により適宜選択することが可能である。例えば、縫着により接合された部位の接合方法を接着による接合方法に変更することが可能である。また、接着により接合された部位の接合方法を縫着による接合方法に変更することが可能である。
【0020】
エアバッグ本体部11は複数の袋体20により構成される。複数の袋体20は、前後方向(X方向)に配列される。以下、前後方向の前端に配置される袋体20を前端袋体20Aといい、前後方向の中央に配置される袋体20を中央袋体20Bといい、前後方向の後端に配置される袋体20を後端袋体20Cという。
【0021】
前端袋体20Aの後側上端部と中央袋体20Bの前側上端部とは、ガス通路21を介して連通している。中央袋体20Bの後側上端部と後端袋体20Cの前側上端部とは、ガス通路22を介して連通している。ガス導入部12は、中央袋体20Bの上端部に連通している。つまり、ガスは、インフレータからガス導入管およびガス導入部12を介して中央袋体20Bに流入し、さらに、ガス通路21を介して前端袋体20Aに流入するとともに、ガス通路22を介して後端袋体20Cに流入する。
【0022】
エアバッグ本体部11の表側基布と裏側基布とを所定の直線または曲線に沿って縫着することにより、前端袋体20A、中央袋体20B、後端袋体20C、ガス通路21およびガス通路22が形成されている。前端袋体20A、中央袋体20B、後端袋体20C、ガス通路21およびガス通路22のそれぞれは、前後方向(X方向)および上下方向(Y方向)のそれぞれに所定の長さを有している。
【0023】
前端袋体20A、中央袋体20Bおよび後端袋体20Cのそれぞれは、上述するように取付片部13と、ルーフサイド部に固定される上側縁23A,23B,23Cとを有している。また、前端袋体20A、中央袋体20Bおよび後端袋体20Cのそれぞれは、所定の位置に固定されない下側縁24A,24B,24Cを有している。上側縁23A,23B,23Cおよび下側縁24A,24B,24Cのそれぞれは、表側基布と裏側基布とが縫着された側縁である。
【0024】
前端袋体20Aは、上側縁23Aの前端と下側縁24Aの前端とを連結する前側縁25Aと、ガス通路21の下側縁の前端と下側縁24Aの後端とを連結する後側縁26Aとを有している。前側縁25A、後側縁26Aおよびガス通路21の下側縁のそれぞれは、表側基布と裏側基布とが縫着された側縁である。下側縁24Aと前側縁25Aとが交わる角部及び下側縁24Aと後側縁26Aとが交わる角部のそれぞれは所定の半径の丸みが付けられている。ガス通路21の下側縁と後側縁26Aとが交わる隅部は、所定の半径の丸みが付けられている。
【0025】
また、中央袋体20Bは、ガス通路21の下側縁の後端と下側縁24Bの前端とを連結する前側縁25Bと、ガス通路22の下側縁の前端と下側縁24Bの後端とを連結する後側縁26Bとを有している。前側縁25B、後側縁26Bおよびガス通路22の下側縁のそれぞれは、表側基布と裏側基布とが縫着された側縁である。下側縁24Bと前側縁25Bとが交わる角部及び下側縁24Bと後側縁26Bとが交わる角部のそれぞれは所定の半径の丸みが付けられている。ガス通路21の下側縁と前側縁25Bとが交わる隅部およびガス通路22の下側縁と後側縁26Bとが交わる隅部のそれぞれは、所定の半径の丸みが付けられている。また、後側縁26Aとガス通路21の下側縁と前側縁25Bとに囲まれた領域は、表側基布と裏側基布とが接合された領域である。
【0026】
また、後端袋体20Cは、ガス通路22の下側縁の後端と下側縁24Cの前端とを連結する前側縁25Cと、上側縁23Cの後端と下側縁24Cの後端とを連結する後側縁26Cを有している。前側縁25Cおよび後側縁26Cのそれぞれは、表側基布と裏側基布とが縫着された側縁である。下側縁24Cと前側縁25Cとが交わる角部及び下側縁24Cと後側縁26Cとが交わる角部のそれぞれは所定の半径の丸みが付けられている。また、ガス通路22の下側縁と前側縁25Cとが交わる隅部は、所定の半径の丸みが付けられている。また、後側縁26Bとガス通路22の下側縁と前側縁25Cとに囲まれた領域は、表側基布と裏側基布とが接合された領域である。
【0027】
後側縁26Cは、上側縁23Cの後端よりも後方向(-X方向)へ突出するように、所定の曲率半径の丸みが付けられている。換言すれば、後側縁26Cは、上側縁23Cの後端よりも後方向へ所定量だけ突出している。
【0028】
以下、前後方向(X方向)の後端に配置される後端袋体20Cについて説明する。前述するように、インフレータからガス導入管およびガス導入部12を介して中央袋体20Bに流入したガスは、ガス通路22を介して後端袋体20Cに流入する。したがって、ガスは、前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに流入する。
【0029】
図2は、比較例に係る車両用カーテンエアバッグ装置を示す図である。
図3は、比較例に係る後端袋体20Cを示す図である。
図3に示す比較例に係る後端袋体20Cは、非膨張部30(後述する)を有していない。比較例に係る非膨張部30を有しない後端袋体20Cにガスが供給された場合の後端袋体20Cを実線で示し、本実施の形態に係る後端袋体20Cにガスが供給された場合の後端袋体20Cを一点鎖線で示す。
【0030】
図2および
図3に示すように、後端袋体20Cは、膨張部27を有する。膨張部27は、ガスが前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに供給された場合、上方向(+Y方向)に折り畳まれた状態から下方向(-Y方向)に膨張展開する。このとき、ガスは、
図3に白抜きの矢印で示すように、前方向(+X方向)側から後側縁26Cに到達した後、後側縁26Cに沿って下方向(-Y方向)に流動する。これにより、後端袋体20Cには、
図3にハッチングの矢印で示す収縮方向の力が生じる。その収縮方向の力が生じることによって、後端袋体20Cは
図3に実線で示すように前方向(+X方向)に揺動する。その結果、後端袋体20Cが2列の座席に着座した乗員(後席乗員)の頭部の車幅方向外側(+Z方向)にあるように後方向(-X方向)に十分に膨張展開しないため、側面衝突の際に、後席乗員の頭部を十分に保護しようとするとシュリンク量を見越して後端袋体20Cを大きくする必要がある。
【0031】
そこで、本実施の形態では、
図1に示すように、後端袋体20Cは、非膨張部30を有している。非膨張部30は、後端袋体20Cの後側(-X方向)の上部に配置されている。非膨張部30は、ガスが前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに供給された場合、上方向(+Y方向)に折り畳まれた状態から下方向(-Y方向)に展開するが、膨張しない。
【0032】
非膨張部30は、膨張部27が膨張した場合に、前後方向(X方向)において被固定部よりも外側(ここでは、-X方向)にある後側縁26Cから後端袋体20Cの内部に向かって被固定部から次第に離れるように延びる部分を有している。例えば、「被固定部」は、上側縁23Cおよび上側縁23Cに配置される取付片部13をいう。また、「被固定部から次第に離れる方向」は、下方向(-Y方向)である。
【0033】
非膨張部30は、表側基布と裏側基布とを接合した接合部である。非膨張部30は、面状の領域を有する。非膨張部30は、面状の領域の外縁部を構成する縫着部31と、縫着部31で囲まれた領域を構成する接着部32を有している。
図4は、本発明の実施の形態に係る後端袋体を示す図である。縫着部31は、表側基布と裏側基布とが優弧形状(半円よりも大きい弧)に沿って縫着されたものである。換言すれば、例えば、縫着部31は、
図1および
図4の上側を12時の位置とするクロックポジションにおいて、略3時30分の位置から略11時の位置まで優弧形状に沿って縫着されたものである。略3時30分の位置が後側縁26Cの上下方向のほぼ中央に位置している。また、略11時の位置が後側縁26Cの上端に位置している。
【0034】
なお、本発明においては、非膨張部30は、ガスが前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに供給された場合、後端袋体20Cが前方向(+X方向)に揺動するのを防止する効果を奏するものであれば、どのような形状を有していてもよい。例えば、非膨張部30は、被固定部から次第に離れるように舌片形状に延びる部分でもよい。この非膨張部30の縫着部31は、表側基布と裏側基布とが舌片形状に沿って縫着される。また、舌片形状が延ばされる長さや、舌片形状の幅は、後端袋体20Cが前方向(+X方向)に揺動するのを防止する観点から、実験やシミュレーションにより求めることが可能である。
【0035】
接着部32は、縫着部31で囲まれた領域であって、表側基布および裏側基布が互いに接着剤等で接着されたものである。なお、本発明はこれに限らず、非膨張部30は、面状の空間を囲む縫着部31により構成されてもよい。換言すれば、非膨張部30は、縫着部31のみを有し、接着部32を有しなくても良い。
【0036】
次に、後端袋体20Cが非膨張部30を備えることによる作用効果について
図4を参照して説明する。前述したように、エアバッグ本体部11は、折り畳まれて長尺状にされた上で、インフレータと共にルーフサイドに収納されている。
【0037】
インフレータからガス導入管およびガス導入部12を介して中央袋体20Bに流入したガスは、ガス通路22を介して前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに流入する。ガスが前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに供給された場合、膨張部27は、上方向(+Y方向)に折り畳まれた状態から下方向(-Y方向)に膨張展開する。
【0038】
縫着部31(非膨張部30を含む)は、ガスが前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに供給された場合、上方向(+Y方向)に折り畳まれた状態から下方向(-Y方向)に展開するが、膨張しない。このとき、膨張しない非膨張部30の周辺である膨張部27の表側基布および裏側基布(周辺領域)が非膨張部30の方へ引っ張られる。これにより、非膨張部30よりも下方向(-Y方向)の周縁領域(膨張部27の一部)が上方向(+Y方向)に引っ張られる。その引っ張り力は、周辺領域を上側縁23C(被固定部)中心に反時計回りに回転させる力となる。その結果、後端袋体20Cが前方向(+X方向)に揺動することを防止することが可能となる。つまり、後端袋体20Cが前方向へ揺動する量であるシュリンク量を低減することができる。
【0039】
以上、非膨張部30を備える後端袋体20Cの膨張展開について、非膨張部30により発生する力の観点から説明した。次に、ガスの流動方向の観点から説明する。後端袋体20Cの後側(-X方向)の上部に縫着部31が配置され、その縫着部31が優弧形状であって、前方向(+X方向)かつ下方向(-Y方向)へ出っ張っているため、ガスが前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに供給された場合、ガスは、
図4に白抜きの矢印で示すように、前方向(+X方向)から前側縁25Cに沿って下方向(-Y方向)に流動してから、下側縁24Cに沿って後方向(-X方向)に流動した後、後側縁26Cに沿って上方向(+Y方向)に流動する。これにより、後端袋体20Cには、
図4にハッチングの矢印で示す収縮方向の力が生じる。その収縮方向の力が生じることによって、
図4に実線で示すように、後端袋体20Cが前方向(+X方向)に揺動することを防止できる。
【0040】
なお、本実施の形態に係るカーテンエアバッグ10は、前後方向(X方向)に配置された3つの袋体20を備えたカーテンエアバッグ10であって、前後方向の後端に配置される後端袋体20Cは、前後方向に沿って固定される被固定部と、後端袋体20Cの内部にガスが供給された場合に膨張する膨張部27と、後端袋体20Cの内部にガスが供給された場合に膨張しない非膨張部30と、を備え、非膨張部30は、膨張部27が膨張した場合に、前後方向において被固定部よりも後方向(-X方向)にある後側縁26Cから内部に向かって被固定部から次第に離れるように延びる部分を有する。
【0041】
これにより、後端袋体20Cの側縁側にガスが供給される場合、後側縁26Cから内部に向かって被固定部から次第に離れるように延びる部分によりガスの流動方向が規制されるため、後端袋体20Cが前方向へ揺動することを防止できる。その結果、シュリンク量を低減することができる。ひいては、シュリンク量を見込んで後端袋体20Cを後方向へ延在するようバッグ用基布を延ばす必要がないため、バッグ用基布の使用量の増加を抑制することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る非膨張部30は、縫着部31を含み、後端袋体20Cの後側(-X方向)の上部に配置され、優弧形状であって、前方向(+X方向)かつ下方向(-Y方向)へ出っ張っている。これにより、後端袋体20Cの側縁側にガスが供給される場合、縫着部31によりガスの流動方向が規制される。これにより、後端袋体20Cが前方向へ揺動することを防止できる。
【0043】
(変形例)
上記の実施の形態における後端袋体20Cは面状の領域を有する非膨張部30を備えているが、本発明はこれに限らず、非膨張部30の形状は線形状であってもよい。これにより、変形例に係る後端袋体20Cは、線形状の非膨張部30によって前側上部20Fと後側下部20Rとに二分される。
【0044】
図5は、変形例に係る車両用カーテンエアバッグ装置を示す図である。
図5に変形例に係る後端袋体20Cを示す。非膨張部30Cでは、上述するように、後端袋体20Cを前側上部20Fと後側下部20Rとに二分するように、後側縁26Cから内部に向かって非固定部から次第に離れるように線形状に延びる部分を有している。
【0045】
非膨張部の終端は、後端袋体20Cの前後方向(X方向)の中央部に位置している。非膨張部の終端と角部(下側縁24Cと前側縁25Cとが交わる角部)との間にはガス通路22Cが形成されている。ガス通路22Cは、後端袋体20Cの前側上部20Fと後側下部20Rとの間を連通する。
【0046】
変形例に係る後端袋体20Cの膨張展開について説明する。ガスが前方向(+X方向)側から後端袋体20Cに供給された場合、ガスは、
図5に白抜きの矢印で示すように、前方向(+X方向)側から前側縁25Cに沿って下方向(-Y方向)に流動してから、ガス通路22Cを通り、下側縁24Cに沿って後方向(-X方向)に流動した後、後側縁26Cに沿って上方向(+Y方向)に流動する。これにより、後端袋体20Cには、
図5にハッチングの矢印で示す収縮方向の力が生じる。その収縮方向の力が生じることによって、後端袋体20Cが前方向(+X方向)に揺動することを防止できる。
【0047】
また、本発明においては、変形例に係る直線形状の非膨張部30Cと本実施の形態に係る優弧形状の縫着部31とを組み合わせてもよい。非膨張部30Cの直線形状の位置や長さ、および、縫着部31の優弧形状の位置や大きさは、ガスが前方向から後端袋体20Cに供給された場合に、ガスの流動を規制することによって、後端袋体20Cが前方向に揺動することを防止できるように設定される。
【0048】
非膨張部30Cが設けられる袋体20は、エアバッグ本体部11を構成する複数の袋体20の一つであり、後方向(-X方向)の端に配置される後端袋体20Cであるが、本発明は、これに限らず、エアバッグ本体部11を構成する1つの袋体20であってもよい。また、前方向(+X方向)の端に配置される前端袋体20Aでもよい。後者の場合、前端袋体20Aに配置される非膨張部は、前端袋体20Aが後方向(-X方向)に揺動することを防止する効果を奏する。
【0049】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、バッグ用基布の使用量の増加を抑制しつつ、エアバッグの膨張展開時のシュリンク量を低減することが要求されるエアバッグを備えた車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0051】
1 車両用カーテンエアバッグ装置
10 カーテンエアバッグ
11 エアバッグ本体部
12 ガス導入部
13 取付片部
14 テザーベルト(テンションストラップ)
15 規制部
15a サークル部
20 袋体
20A 前端袋体
20B 中央袋体
20C 後端袋体
20F 前側上部
20R 後側下部
21 ガス通路
22 ガス通路
22C ガス通路
23A,23B,23C 上側縁
24A,24B,24C 下側縁
25A,25B,25C 前側縁
26A,26B,26C 後側縁
27 膨張部
30 非膨張部
30C 非膨張部
31 縫着部
32 接着部