(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029020
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ワイヤソー
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20230224BHJP
B23D 57/00 20060101ALI20230224BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230224BHJP
B24B 47/04 20060101ALI20230224BHJP
B23Q 1/72 20060101ALI20230224BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20230224BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B24B27/06 F
B23D57/00
B24B41/06 L
B24B47/04
B23Q1/72 A
B28D5/04 C
B28D7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135079
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】漆山 正史
(72)【発明者】
【氏名】河津 知之
(72)【発明者】
【氏名】村井 史朗
【テーマコード(参考)】
3C034
3C040
3C048
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA17
3C034BB72
3C034BB83
3C034BB87
3C034CB11
3C034DD10
3C040AA19
3C048BC02
3C048CC20
3C048DD01
3C048DD26
3C048EE06
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB04
3C069BC02
3C069CA04
3C069CB01
3C069DA01
3C158AA05
3C158AA16
3C158AA18
3C158AB03
3C158AB04
3C158AC01
3C158BA07
3C158CA01
3C158CB04
3C158DA03
3C158DA17
(57)【要約】
【課題】ワークの切断加工時の切削抵抗が変化しても、ワーク送り機構にかかる力を一定にさせることができるワイヤソーを提供することを課題とする。
【解決手段】ワイヤソー1は、ワークWを切断するワイヤ54と、ワイヤ54が巻き掛けられた複数の加工用ローラ52と、ワイヤ54に対してワークWを切断する切断方向に送るワーク送り機構7と、ワーク送り機構7を保持するバランサ8と、を備え、バランサ8は、ワイヤ54でワークWを切断加工するときに生じる反力と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、ワークWの自重と、を相殺する方向の力をワーク送り機構7に付与する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを切断するワイヤと、
前記ワイヤが巻き掛けられた複数の加工用ローラと、
前記ワイヤに対して前記ワークを切断する切断方向に送るワーク送り機構と、
前記ワーク送り機構を保持するバランサと、を備え、
前記バランサは、前記ワイヤで前記ワークを切断加工するときに生じる反力と、前記ワーク送り機構の可動部の自重と、ワークの自重と、を相殺する方向の力を前記ワーク送り機構に付与する
ことを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
前記バランサを構成するシリンダ装置と、
前記シリンダ装置に供給する流体の圧力を可変させるためのコントロールバルブと、
前記シリンダ装置に供給する流体の圧力の前記コントロールバルブへの指令値を前記ワークの切り込み位置に応じて任意に設定可能なコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記ワイヤで前記ワークを切断加工するときに、前記シリンダ装置に供給する流体の圧力の前記コントロールバルブへの指令値を可変することにより、前記ワークの切断加工するときに生じる反力と、前記ワーク送り機構の可動部の自重と、ワークの自重と、を相殺する方向の前記力を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
【請求項3】
前記ワーク送り機構は、前記ワークを上下方向に移動させるリニアモータ、
あるいは、前記ワークを上下方向に移動させるボールねじ機構と、当該ボールねじ機構を駆動させるモータと、を備えている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク送り機構を備えたワイヤソーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体材料や磁性材料等のワークをワイヤで切断するワイヤソーは、ワイヤに対して、加工液を供給しながら、ワーク送り装置によってワークを切り込み送りすることで、ワークを切断している。
【0003】
一般に、ワイヤソーのワーク送り機構は、ガイドレールと、ワーク送りテーブルに設けられたナット部材と、ナット部材に螺合する棒ねじと、棒ねじを回転駆動させてワーク送りテーブルを昇降させる駆動モータと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
切断されて形成されるワークは、薄い半導体ウエハとなるので、高精度に切断加工されることが要求される。半導体ウエハは、ワークとワイヤとの相対変位によってウエハの形状が決定される。このため、ワーク送り機構は、真直度がウエハに転写されるので、高精度かつ高剛性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-70823号公報(
図2及び
図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のワイヤソーや、一般のワイヤソーでは、加工時の切削抵抗により、ワーク送り機構に反力が生じて、機械が変形する。その反力は、ワークの大きさまたは、断面積の大きさおよび、加工切削性の変化によって、常に変化する。このため、ワイヤソーでは、切削抵抗が変化しても、切削抵抗によって変形しないワーク送り機構を有することが望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、ワークの切断加工時の切削抵抗が変化しても、ワーク送り機構にかかる力を一定にさせることができるワイヤソーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るワイヤソーは、ワークを切断するワイヤと、前記ワイヤが巻き掛けられた複数の加工用ローラと、前記ワイヤに対して前記ワークを切断する切断方向に送るワーク送り機構と、前記ワーク送り機構を保持するバランサと、を備え、前記バランサは、前記ワイヤで前記ワークを切断加工するときに生じる反力と、前記ワーク送り機構の可動部の自重と、ワークの自重と、を相殺する方向の力を前記ワーク送り機構に付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワークの切断加工時の切削抵抗が変化しても、ワーク送り機構にかかる力を一定にさせることができるワイヤソーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイヤソーの一例を示す要部概略縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るワイヤソーの変形例を示す要部概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るワイヤソーを
図1~
図3を参照して説明する。
本実施形態において、
図1に示すクランプ装置6のワーク送りテーブル61がある方向を前、ワーク送りテーブル61の後方向を後、鉛直上方側を上、鉛直下方側を下、
図2の左方向を左、
図2の右方向を右として適宜説明する。
【0012】
まず、ワイヤソー1を説明する前に、ワイヤソー1に使用されるワークWについて説明する。また、
図3に示すように、ワイヤソー1の主要部は、略左右対称に形成されているため、適宜その一方を説明して他方の説明を省略する。
【0013】
<ワーク>
図1に示すように、ワークWは、半導体材料、磁性材料、セラミック等の硬脆材料から成る。ワークWは、クランプ装置6のワーク保持部63に取り付けられて、ワイヤソー1に配置された加工装置5のワイヤ54に押し当てることで切削して切断される。
【0014】
<ワイヤソー>
ワイヤソー1は、加工装置5のワイヤ54によってワークWを切断する切断装置である。
図1に示すように、ワイヤソー1は、基台(図示省略)と、コラム3と、サドル4と、加工装置5と、クランプ装置6と、ワーク送り機構7と、コントロールバルブ90と、コントローラ10と、を主に備えて構成されている。
【0015】
<基台>
不図示の基台は、コラム3と、加工装置5と、を下から保持するベースである。基台(図示省略)は、ワイヤソー1の下端部全体に亘って配置されている。
【0016】
<コラム>
コラム3は、基台(図示省略)上に立設されて、ワイヤソー1の機械本体を構成する柱状の部材である。コラム3内には、サドル4と、ワーク送り機構7と、バランサ8と、が設けられている。
【0017】
<サドル>
図1に示すように、サドル4は、コラム3に対して上下方向に移動可能に配置された縦送り台である。サドル4の前面には、ワークWをクランプするクランプ装置6を支持している。サドル4には、ワイヤ54に対してワークWを切断する切断方向に送るワーク送り機構7と、ワーク送り機構7を保持しているバランサ8と、が設けられている。
【0018】
<加工装置>
加工装置5は、クランプ装置6のワーク保持部63にクランプされた未加工のワークWを加工する切削機構である。加工装置5は、適宜な間隔で水平方向に対向配置された一対の加工用ローラ51,52と、加工用ローラ51と加工用ローラ52とに巻き掛けられたワークWを切断するワイヤ54、加工用ローラ51,52を回転駆動させる駆動モータ(図示省略)と、ブラケット55と、を備えて成る。加工装置5は、コラム3の近傍において、基台(図示省略)上にブラケット55を介在して設置されている。
【0019】
ワークWは、加工用ローラ51,52の軸線方向に沿って並設された複数のものから成る(添付図面では、省略して1つのみ記載している)。そして、ワイヤソー1の運転時には、ワイヤ54が加工用ローラ51,52間で走行されて、クランプ装置6で保持されたワークWが、ワーク送り機構7により加工装置5に向かって下降されてワイヤ54に押し付けられることで切断される。
【0020】
加工用ローラ51,52は、駆動モータ(図示省略)によって回転されることで、プーリ及びベルト等を含む伝達機構(図示省略)を介して駆動される加工用ローラ51,52間だけワイヤ54を走行させるように構成されている。加工用ローラ51,52は、少なくとも一対であればよく、相互間隔をおいて平行に配置される構成であれば、3本以上でもよい。
【0021】
ワイヤ54は、例えば、1本の線材によって構成された加工用ワイヤである。ワイヤ54は、加工用ローラ51,52によって、一定量前進及び一定量後退を繰り返して、全体として歩進的に前進し、または、一方向に連続して前進するように駆動される。
【0022】
<クランプ装置>
図1に示すように、クランプ装置6は、加工装置5でワークWを加工する際に、ワークWをクランプするための保持機構である。クランプ装置6は、未加工のワークWをクランプしてから、そのワークWを加工装置5のワイヤ54に押し当てて加工し、加工完了後のワークWをアンクランプさせるまで、ワークWを保持する。クランプ装置6は、ワークWを保持するワーク保持部63と、ワーク保持部63をクランプするクランプ部62と、ワーク保持部63およびクランプ部62をワーク送り機構7によって昇降させるワーク送りテーブル61と、を備えて成る。
【0023】
<ワーク送り機構>
ワーク送り機構7は、ワークWを、ワイヤ54によってワークWを切断する加工位置と、加工済のワークWと未加工のワークWとの交換が行われるワーク交換位置と、の間を移動させるための移送装置である。また、ワーク送り機構7は、ワークWを加工する際に、ワークWを昇降させる昇降装置の機能も果たす。ワーク送り機構7は、リニアモータ70から成る。
【0024】
<リニアモータ>
図1に示すように、リニアモータ70は、サドル4を上下方向に移動させるための駆動源である。リニアモータ70は、ベース75と、ベース75に固定され、永久磁石73を有する固定子74と、固定子74に相対的に移動可能に設けられて電機子巻線71を有する可動子72と、を主に備えて成る。リニアモータ70は、電機子巻線71に電力供給装置(図示省略)から交流電流が供給されると、可動子72が駆動するように構成されている。このとき、電機子巻線71は、熱を発するため、その熱を冷却するための冷却装置(図示省略)が電機子巻線71に当接して配置されている。固定子74はベース75に固定され、可動子72は、サドル4に配置されている。ベース75は、コラム3に連結されている。リニアモータ70は、コントローラ10を介して不図示の電源に電気的に接続されている。
【0025】
<バランサ>
図1に示すように、バランサ8は、サドル4の自重と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、ワイヤ54でワークWを切断加工するときに生じる反力(加工抵抗)と、を相殺する方向の力をサドル4に付与し、サドル4を適宜な位置にコントロールして支持させるための装置である。バランサ8は、主にシリンダ装置80から成る。さらに、具体例を挙げると、バランサ8は、シリンダ装置80と、コントロールバルブ90と、コントローラ10と、不図示のシリンダ用油圧ユニットのシリンダ用ポンプP1と、を備えて構成されている。バランサ8は、リニアモータ70に同期して動くようにコントローラ10によって制御されている。
【0026】
<シリンダ装置>
図1及び
図3に示すように、シリンダ装置80は、上下方向に移動するもワーク送り機構7等の自重をキャンセルさせるために支持する装置である。シリンダ装置80は、シリンダ81と、ピストンロッド83と、サドル連結部材84と、を備えて構成されている。シリンダ装置80は、シリンダ用油圧ユニット(図示省略)からコントロールバルブ90を介して送られて来る油によってピストン(図示省略)を作動させることで、サドル4を支持する。
【0027】
シリンダ81内には、ピストン(図示省略)及びピストンロッド83と、シリンダ用油圧ユニット(図示省略)からコントロールバルブ90を介して供給される油と、が収容されている。シリンダ81は、ワークWを保持するクランプ装置6を支持するサドル4に取り付けられている。シリンダ81は、コントロールバルブ90を介して不図示のシリンダ用油圧ユニットのシリンダ用ポンプP1に接続されている。シリンダ81に供給される油の圧力は、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークW(
図1参照)を加工するときの加工抵抗と、に応じてコントローラ10によって任意に設定可能になっている。
【0028】
ピストンロッド83は、下端部がピストン(図示省略)に一体に固定され、上端部にサドル連結部材84が連結されている。
【0029】
サドル連結部材84は、ピストンロッド83の上端部と、サドル4の上端部と、を連結して、シリンダ装置80によってサドル4を昇降可能にするための部材である。
シリンダ装置80は、その油の油圧でシリンダ81を上昇、下降してサドル4を支持する。
【0030】
コントロールバルブ90は、バランサ8のシリンダ81に供給する油の圧力を可変させるピストン82を駆動させるための制御弁である。コントロールバルブ90は、シリンダ用油圧ユニットのシリンダ用ポンプP1と、シリンダ81との間に接続されている。
シリンダ用油圧ユニットのシリンダ用ポンプP1は、シリンダ81を進退駆動させるための油圧を生成して、シリンダ81内に油の吐出を行うポンプである。
コントロールバルブ90及びシリンダ用ポンプP1は、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークW(
図1参照)を加工するときの加工抵抗と、に応じてシリンダ81に供給する油の圧力を可変させる機能を有している。コントロールバルブ90は、比例電磁減圧弁から成り、コントローラ10によって駆動される。
【0031】
<コントローラ>
コントローラ10は、バランサ8のシリンダ81に供給する油の圧力のコントロールバルブ90への指令値をワークWの切り込み位置に応じて任意に設定可能な機能を有する制御装置である。また、コントローラ10は、前記したように、コントロールバルブ90及びシリンダ用ポンプP1を、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークW(
図1参照)を加工するときの加工抵抗と、に応じて駆動させる機能も有している。つまり、コントローラ10は、ワイヤ54でワークWを切断加工するときに、シリンダ装置80に供給する流体の圧力のコントロールバルブ90への指令値を可変することにより、ワークWの切断加工時に生じる反力と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、を相殺する方向の力を制御して、機械の変形量を一定に保つことができる。
【0032】
なお、切断加工するときに生じる反力は、ワークWの大きさ、材質、切断面積、及び、使用するワイヤ54の切れ味等によって、常に変化している。
【0033】
[作用]
次に、本発明の実施形態に係るワイヤソー1の作用を、
図1~
図3を参照して説明する。
【0034】
図1に示すように、まず、ワークWをワーク保持部63に取り付ける。そのワークWを、リニアモータ70を駆動させて下降させることによって、加工装置5のワイヤ54に押し当ててワークWを切削加工する。
【0035】
バランサ8は、サドル4の自重と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、ワークWを加工するときの加工抵抗と、をキャンセルして安定した状態に支持することができる。このため、バランサ8は、リニアモータ70によって引き上げる荷重を低減させることができるので、リニアモータ70を小型化させることができる。
【0036】
このように、本発明の実施形態に係るワイヤソー1は、
図1に示すように、ワークWを切断するワイヤ54と、ワイヤ54が巻き掛けられた複数の加工用ローラ52と、ワイヤ54に対してワークWを切断する切断方向に送るワーク送り機構7と、ワーク送り機構7を保持するバランサ8と、を備え、バランサ8は、ワイヤ54でワークWを切断加工するときに生じる反力と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、ワークWの自重と、を相殺する方向の力をワーク送り機構7に付与する。
【0037】
かかる構成によれば、バランサ8は、ワイヤ54でワークWを切断加工するときに生じる反力と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、ワークWの自重と、を相殺する方向の力をワーク送り機構7に付与するので、ワークWの切断加工時の切削抵抗が変化しても、ワーク送り機構7にかかる力を一定にさせることができる。このため、本発明は、加工時に、ワークWの大きさや、ワークWの断面積の大きさや、加工切削性の変化によって切削抵抗が変化しても、切削抵抗によって変形しないワーク送り機構7を有するワイヤソー1を提供することができる。よって、ワイヤソー1は、ワーク送り機構7にかかる力を一定にすることが可能となり、さらにワークWを高精度に切削加工することができる。
【0038】
また、
図1に示すように、ワイヤソー1は、バランサ8を構成するシリンダ装置80と、シリンダ装置80に供給する流体の圧力を可変させるためのコントロールバルブ90と、シリンダ装置80に供給する流体の圧力のコントロールバルブ90への指令値をワークWの切り込み位置に応じて任意に設定可能なコントローラ10と、を備え、コントローラ10は、ワイヤ54でワークWを切断加工するときに、シリンダ装置80に供給する流体の圧力のコントロールバルブ90への指令値を可変することにより、ワークWの切断加工するときに生じる反力と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、ワークWの自重と、を相殺する方向の力を制御する。
【0039】
かかる構成によれば、コントローラ10は、ワイヤ54でワークWを切断加工時に、シリンダ装置80に供給する流体の圧力のコントロールバルブ90への指令値を可変することで、ワークWの切断加工時に生じる反力と、ワーク送り機構7の可動部の自重と、ワークWの自重と、を相殺する方向の力を制御する。このため、バランサ8は、ワーク送り機構7によって引き上げる荷重を低減させることができるので、ワーク送り機構7を小型化させて、コラム3全体を小型化及びコストダウンを図ることができる。
【0040】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。以下、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
図4は、本発明の実施形態に係るワイヤソーの変形例を示す要部概略縦断面図である。
図5は、
図4の要部拡大図である。
【0041】
前記実施形態では、
図1に示すように、ワークWを上下方向に移動させるワーク送り機構7としてリニアモータ70を備えたワイヤソー1を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0042】
図1または
図4に示すように、ワーク送り機構7,7Aは、ワークWを上下方向に移動させるリニアモータ70、あるいは、ワークWを上下方向に移動させるボールねじ機構71Aと、当該ボールねじ機構71Aを駆動させるモータ70Aと、を備えているものであってもよい。
【0043】
この場合、
図4または
図5に示すように、ワーク送り機構7Aは、ナット部72Aとねじ軸部73Aとで成るボールねじ機構71Aと、モータ70Aと、センサS1と、ナット部72AをセンサS1を介在してワーク送りテーブル61に連結するためのサドル4Aと、モータ70Aを駆動させるためのコントローラ10と、を備えて構成されている。
【0044】
センサS1は、ナット部72Aとワーク送りテーブル61との間に介在されたサドル4Aが伸び縮みするときに変化する抵抗値を検出する歪センサ、あるいは、サドル4Aにかかる力(質量、トルク)を検出して電気信号に変換するロードセルから成る。このため、センサS1は、ワーク送りテーブル61にかかる負荷や、バランサ8、ワーク送り機構7A、サドル4A等の上下方向に移動可能なすべてのものの自重を検出することができる。センサS1は、コントローラ10に電気的に接続されている。
【0045】
コントローラ10は、センサS1で検出した加工中の反力に応じてバランサ8を制御して、機械の変形量を一定にして、機械の姿勢を一定に保つことができる。このため、ワイヤソー1Aは、ワークWの切断加工時の切削抵抗が変化しても、コントローラ10によって、センサS1の値を一定になるように制御することで、ワーク送り機構7Aにかかる力を一定にさせてことができる。よって、ワイヤソー1Aは、ワークWの切断精度をさらに向上させることができる。
【0046】
加工中の反力は、リニアモータ70、または、ボールねじを駆動するモータ70Aの負荷率(モータの電流値)でもわかる。モータ70Aは、クランプ装置6の位置を制御している。加工負荷が一定であれば、クランプ装置6の位置がどこであってもモータ70Aの負荷率は、一定になる。クランプ装置6の位置によってモータ70Aの負荷が変化するのであれば、加工負荷も変化している。よって、モータ70Aの負荷率が一定になるようにバランサ8を制御すると、ワーク送り機構7Aにかかる力が一定になる。
【0047】
かかる構成によれば、ワーク送り機構7は、
図1に示すように、リニアモータ70から成ることで、移動側の永久磁石73が、固定側の電機子巻線71に対して、非接触状態で移動する。このため、リニアモータ70は、摩耗して劣化することがないので、切削加工時の動きを滑らかにすることができる。また、ワイヤソー1は、リニアモータ70の部品をメンテナンスする作業を解消することができ、メンテナンス性に向上させることができる。
また、ワーク送り機構7Aは、ボールねじ機構71Aと、モータ70Aと、を備えて成るので、ボールねじ機構71Aの摩擦抵抗が低いので、切削加工時の動きを滑らかにすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A ワイヤソー
5 加工装置
7,7A ワーク送り機構
8 バランサ
10 コントローラ
52 加工用ローラ
54 ワイヤ
70 リニアモータ
70A モータ
71A ボールねじ機構
80 シリンダ装置
90 コントロールバルブ
W ワーク