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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029027
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B65B 61/02 20060101AFI20230224BHJP
   B65B 57/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B65B61/02
B65B57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135091
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000222727
【氏名又は名称】PACRAFT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】山縣 暁裕
(72)【発明者】
【氏名】松村 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】吉門 賢
【テーマコード(参考)】
3E056
【Fターム(参考)】
3E056AA05
3E056CA01
3E056DA01
3E056EA08
3E056FA01
3E056FA02
3E056GA01
(57)【要約】
【課題】袋などの容器に対して適切な印刷処理を行うのに有利な印刷システムを提供する。
【解決手段】印刷システム15は、レーザを使って、容器Bに、製品に関する製品情報を印刷する印刷部32と、容器B上の製品情報の印刷状態を示す印刷状態情報を取得する印刷状態取得部33と、印刷状態情報を解析して印刷部32の印刷能力の状態を判定する印刷能力判定部と、を備える。印刷部32においてレーザの出力状態は、印刷能力判定部による印刷能力の判定結果に応じて調整される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザを使って、容器に、製品に関する製品情報を印刷する印刷部と、
前記容器上の前記製品情報の印刷状態を示す印刷状態情報を取得する印刷状態取得部と、
前記印刷状態情報を解析して前記印刷部の印刷能力の状態を判定する印刷能力判定部と、を備え、
前記印刷部において前記レーザの出力状態は、前記印刷能力判定部による印刷能力の判定結果に応じて調整される印刷システム。
【請求項2】
前記印刷状態情報は、前記容器上の前記製品情報の全体の状態を示す請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記印刷状態情報は、前記容器上の前記製品情報の一部の状態を示す請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
容器に、製品に関する製品情報と、前記製品情報とは別個のマークとを印刷する印刷部と、
前記容器上の前記マークの印刷状態を示す印刷状態情報を取得する印刷状態取得部と、
前記印刷状態情報を解析して前記印刷部の印刷能力の状態を判定する印刷能力判定部と、を備える印刷システム。
【請求項5】
前記印刷部は、レーザを使って、前記製品情報及び前記マークを容器に印刷し、
前記印刷部において前記レーザの出力状態は、前記印刷能力判定部による印刷能力の判定結果に応じて調整される請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記印刷能力判定部は、前記印刷状態情報を解析し、前記容器上の印刷濃度に基づいて前記印刷部の印刷能力を判定する請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記印刷能力判定部は、前記印刷状態情報を解析し、前記容器上の印刷濃度差が適正範囲から外れるか否かに基づいて前記印刷部の印刷能力を判定する請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記印刷能力判定部による前記印刷部の印刷能力の判定結果に応じてアラームを発するアラーム部を備える請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
袋内部に内容物を供給する包装機において、袋に対して印刷処理及び印刷検査処理が行われることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-95156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクやレーザを使って各種情報を袋に印刷する印刷処理では、様々な原因で印刷不良が生じうる。例えばレーザ印刷では、工場の稼働状況(例えば稼働装置数など)によって印刷装置に供給される電力が不安定になり、印刷処理時の実際のレーザ出力が変動することがある。このような印刷不良は、印刷装置の稼働当初から生じることもあれば、装置稼働中に突発的に生じることもある。
【0005】
袋上での印刷濃度が想定よりも薄い場合、袋に印刷された情報を適切に読み取れないことがある。一方、袋上での印刷濃度が想定よりも濃い場合、特にレーザ印刷のケースでは、過大なレーザ出力により袋が過度なダメージを受けている可能性がある。したがってこの場合、袋は製品としての所望品質を保証することできず、例えば殺菌処理、輸送、及び賞味期限などに関して要求品質を適切に提供できないことがある。
【0006】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、袋などの容器に対して適切な印刷処理を行うのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、レーザを使って、容器に、製品に関する製品情報を印刷する印刷部と、容器上の製品情報の印刷状態を示す印刷状態情報を取得する印刷状態取得部と、印刷状態情報を解析して印刷部の印刷能力の状態を判定する印刷能力判定部と、を備え、印刷部においてレーザの出力状態は、印刷能力判定部による印刷能力の判定結果に応じて調整される印刷システムに関する。
【0008】
印刷状態情報は、容器上の製品情報の全体の状態を示してもよい。
【0009】
印刷状態情報は、容器上の製品情報の一部の状態を示してもよい。
【0010】
本開示の他の態様は、容器に、製品に関する製品情報と、製品情報とは別個のマークとを印刷する印刷部と、容器上のマークの印刷状態を示す印刷状態情報を取得する印刷状態取得部と、印刷状態情報を解析して印刷部の印刷能力の状態を判定する印刷能力判定部と、を備える印刷システムに関する。
【0011】
印刷部は、レーザを使って、製品情報及びマークを容器に印刷し、印刷部においてレーザの出力状態は、印刷能力判定部による印刷能力の判定結果に応じて調整されてもよい。
【0012】
印刷能力判定部は、印刷状態情報を解析し、容器上の印刷濃度に基づいて印刷部の印刷能力を判定してもよい。
【0013】
印刷能力判定部は、印刷状態情報を解析し、容器上の印刷濃度差が適正範囲から外れるか否かに基づいて印刷部の印刷能力を判定してもよい。
【0014】
印刷能力判定部による印刷部の印刷能力の判定結果に応じてアラームを発するアラーム部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、袋などの容器に対して適切な印刷処理を行うのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、包装機の一例の概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、包装機が具備する印刷システムの一例を示すブロック図である。
図3図3は、印刷処理を受けた袋の一例を示す図である。
図4図4は、印刷能力判定部で行われる判定の基準として用いられる適正範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。
【0018】
以下では、主として袋を容器として使用した場合について説明するが、袋以外の容器(例えば食品トレーなどのプラスチックカップ)に対しても、以下で説明する技術は応用可能である。
【0019】
図1は、包装機10の一例の概略構成を示す斜視図である。
【0020】
包装機10は、円盤状の回転テーブルを含む搬送部21を備える。回転テーブルの外周部には、複数の支持部22が、回転テーブルの回転方向へ等間隔に取り付けられる。図1に示す各支持部22はグリッパーペアを含み、対応の袋Bの両側縁部のそれぞれがグリッパーにより把持されることで、当該袋Bは吊り下げ状態で支持される。
【0021】
回転テーブルの間欠回転に応じて各支持部22も間欠的に回転し、各支持部22により支持される袋Bは、円軌道上を間欠的に移動して、第1ステーションS1~第8ステーションS8において順次、間欠的に停止する。袋Bは、第1ステーションS1~第8ステーションS8の各々に間欠的に停止している間に、各種処理を受ける。
【0022】
第1ステーションS1では、袋供給部31によって支持部22に袋B(空袋)が供給され、支持部22は供給された袋Bを吊り下げ支持する(袋供給工程)。図1に示す例では、袋供給部31によって、多数の袋Bを貯留する袋貯留部11から袋Bが1枚ずつ取り出されて、支持部22に渡される。
【0023】
第2ステーションS2では、印刷部32によって袋Bに各種情報(製品情報)が印刷される(印刷工程)。図1に示す印刷部32は、レーザを使って袋Bに対する印刷処理を行う。ただし印刷部32は、他の任意の印刷方式を採用することが可能であり、インク(例えばインクジェット)を使って袋Bに各種情報を印刷してもよい。
【0024】
第3ステーションS3では、印刷状態取得部33によって袋Bの印刷状態(印刷状態情報)が取得される(印刷検査工程)。図1に示す印刷状態取得部33はカメラ(例えばCMOSイメージセンサ等など)を具備し、第3ステーションS3に停止している袋B(特に印刷領域を含む範囲)の撮影画像を取得する。ただし印刷状態取得部33は、他の任意の方式を採用することが可能であり、例えばスキャナー方式を採用してもよい。
【0025】
第4ステーションS4では、吸盤等の開口手段を具備する開口部34によって、袋Bの口部を開く開口処理が行われる(開口工程)。第5ステーションS5では、ノズル等の供給手段を具備する内容物供給部35によって、袋Bの内側に内容物を供給する内容物供給処理が行われる(内容物供給工程)。
【0026】
第6ステーションS6及び第7ステーションS7では、それぞれ第1加熱シール部36及び第2加熱シール部37によって袋Bの口部の加熱シール処理が行われる(第1加熱シール工程及び第2加熱シール工程)。図1に示す第1加熱シール部36及び第2加熱シール部37の各々は熱板ペアを含み、袋Bの口部を熱板で挟んで加圧して熱溶融させることで圧着する。なお第1加熱シール部36及び/又は第2加熱シール部37は、他の任意のシール方式を採用することが可能であり、例えば超音波によって袋Bの口部をシールしてもよい。このように袋Bの口部を基本的に加熱することなくシールする場合、後述の冷却シール部38は設けられなくてもよい。
【0027】
第8ステーションS8では、冷却シール部38によって袋Bの口部を冷却する冷却シール処理が行われる(冷却シール工程)。図1に示す冷却シール部38は冷却板ペアを含み、袋Bの口部(特に加熱シール部分)を冷却板で挟んで加圧して口部のシール状態を安定化させる。上述の加熱シール処理及び冷却シール処理を包括的にシール処理とも称する。なお冷却シール部38は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0028】
その後、第8ステーションS8において、袋B(製品袋)は支持部22の支持から解放されて落下し、放出部39によって後段に送られる。なお冷却シール部38の冷却板ペアが実質的に袋Bの支持部として機能する場合、袋Bが支持部22から冷却板ペアに受け渡された後に、冷却板ペアが袋Bの支持を解放することで、袋Bを放出部39に向けて落下させてもよい。図1に示す放出部39は、落下する袋Bを後段に向けて案内するシュートを含むが、放出部39は他の任意の構成を有することができる。
【0029】
図2は、包装機10が具備する印刷システム15の一例を示すブロック図である。
【0030】
図2に示す印刷システム15は、印刷状態取得部33、制御部50、印刷部32及びアラーム部43を有する。
【0031】
制御部50は、印刷能力判定部51、レーザ出力調整部52及びアラーム判定部53を有する。印刷能力判定部51、レーザ出力調整部52及びアラーム判定部53は、任意のハードウエア及びソフトウエアの組み合わせによって実現可能であり、具体的な構成は限定されない。したがって共通の装置によって、印刷能力判定部51、レーザ出力調整部52及びアラーム判定部53のうちの2以上が実現されてもよい。また複数の装置の組み合わせによって、印刷能力判定部51、レーザ出力調整部52及びアラーム判定部53の各々が実現されてもよい。
【0032】
印刷能力判定部51は、印刷状態取得部33が取得して出力した印刷状態情報D1を解析して印刷部32の印刷能力の状態を判定し、当該判定結果を示す印刷能力判定情報D2をレーザ出力調整部52及びアラーム判定部53に提供する。印刷状態情報D1は、袋Bにおける印刷状態を示す。
【0033】
レーザ出力調整部52は、印刷能力判定情報D2に基づいて、印刷部32からのレーザの出力調整量を求め、当該出力調整量を示すレーザ出力制御信号C1を印刷部32に送る。印刷部32は、レーザ出力調整部52からのレーザ出力制御信号C1に基づいて、レーザの出力調整を行う。
【0034】
アラーム判定部53は、印刷能力判定情報D2に基づいて、アラームの要否を判定し、当該判定結果を示すアラーム制御信号C2をアラーム部43に送る。アラーム部43は、アラーム判定部53からのアラーム制御信号C2に基づき、アラームを発するアラーム処理を必要に応じて行う。アラーム部43から発せられるアラームの形態は限定されない。アラーム部43は、典型的には音声及び/又は画面表示によってアラームを発する。
【0035】
図3は、印刷処理を受けた袋Bの一例を示す図である。
【0036】
図3に示す袋Bの袋表面Bsには印刷領域Rが設けられる。図3に示す例では、袋Bの底部側(すなわち口部とは反対側)の袋表面Bsに印刷領域Rが設けられる。ただし印刷領域Rの位置及び範囲は限定されない。袋表面Bsの全体が印刷領域Rを形成してもよいし、袋表面Bsにおいてお互いに離れた2以上の領域が印刷領域Rを形成してもよい。
【0037】
印刷領域R(特に情報印刷領域R1)には、製品に関する情報(すなわち製品情報L)が印刷部32(図1参照)によって印刷される。ここで言う「製品情報L」は、製品に直接的又は間接的に関係する任意の情報を含みうるものである。ここで言う「製品」は、包装機10(図1参照)から後段に送り出される袋B、又は、包装機10の後段で更なる処理を受けた袋Bを言う。典型的には、ロゴ、商品名、シリアル番号、及び賞味期限が製品情報Lに含まれうるが、袋B及び/又は内容物に関連する他の任意の情報も製品情報Lに含まれうる。
【0038】
本実施形態の印刷領域Rは、情報印刷領域R1に加え、袋B上の印刷状態の判定に用いられるマークMが印刷されるマーク印刷領域R2を含む。図3に示すマークMは円環形状を有するが、他の形状のマークMがマーク印刷領域R2に印刷されてもよい。なおマークMに基づくことなく印刷状態及び印刷能力の判定が行われる場合、マークMの印刷は行われず、印刷領域Rはマーク印刷領域R2を含まない。この場合、印刷領域Rは情報印刷領域R1のみを含んでもよい。
【0039】
次に、袋B上の印刷状態を判定する方法及び印刷部32の印刷能力の状態を判定する方法について説明する。
【0040】
一例として、袋B上の製品情報Lの印刷状態に基づいて、袋Bの印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定することができる。この場合、印刷状態取得部33(図1参照)は、図3に示す情報印刷領域R1における印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する。そして印刷能力判定部51(図2参照)は、情報印刷領域R1における印刷状態を示す印刷状態情報D1に基づいて、袋B上の製品情報Lの印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定する。
【0041】
この場合、印刷状態取得部33は、袋Bの袋表面Bsのうち情報印刷領域R1を含む一部範囲のみを対象にして印刷状態情報D1を取得してもよいし、袋表面Bsの全体を対象にして印刷状態情報D1を取得してもよい。また印刷状態取得部33は、情報印刷領域R1の一部範囲のみを対象にして印刷状態情報D1を取得してもよいし、情報印刷領域R1の全体を対象にして印刷状態情報D1を取得してもよい。情報印刷領域R1の一部範囲のみを対象にして印刷状態情報D1を取得する場合、印刷状態取得部33は、情報印刷領域R1のうち「少なくとも一部において、印刷部32による印刷が確実に行われるはずの範囲」における印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する。
【0042】
他の例として、袋B上のマークMの印刷状態に基づいて、袋Bの印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定することができる。この場合、印刷状態取得部33(図1参照)は、図3に示すマーク印刷領域R2における印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する。そして印刷能力判定部51(図2参照)は、マーク印刷領域R2における印刷状態を示す印刷状態情報D1に基づいて、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定する。
【0043】
この場合、印刷状態取得部33は、袋Bの袋表面Bsのうちマーク印刷領域R2を含む一部範囲のみを対象にして印刷状態情報D1を取得してもよいし、袋表面Bsの全体を対象にして印刷状態情報D1を取得してもよい。また印刷状態取得部33は、マーク印刷領域R2の一部範囲のみを対象にして印刷状態情報D1を取得してもよいし、マーク印刷領域R2の全体を対象にして印刷状態情報D1を取得してもよい。マーク印刷領域R2の一部範囲のみを対象にして印刷状態情報D1を取得する場合、印刷状態取得部33は、マーク印刷領域R2のうち「少なくとも一部において、印刷部32による印刷が確実に行われるはずの範囲」における印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する。
【0044】
印刷能力判定部51(図2参照)は、このようにして印刷状態取得部33により取得された印刷状態情報D1に基づいて、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定することができる。
【0045】
印刷能力判定部51は、典型的には、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最大値及び/又は最小値に基づいて、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定することができる。
【0046】
ここで言う「印刷濃度」は、濃度計によって測定可能な特性値によって表現可能であり、様々な指標に基づいて表現されうる。典型的には、入射光の強度(輝度)に対する反射光の強度(輝度)の割合によって印刷濃度を表すことができ、印刷部分に同じ強度の入射光を照射した場合の反射光の強度の差によって印刷濃度差を表すことができる。ただし印刷濃度は、他の光学的指標に基づいて表されてもよく、例えばグレースケール値(カラー画像をグレースケール変換することで得られる値も含む)により表されてもよい。
【0047】
例えば、印刷部分の濃度が袋Bの袋表面Bs(特に印刷領域R)の本来の濃度よりも濃くなる場合(例えば黒に近づく場合)、印刷能力判定部51は、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最大値を取得し、当該最大値が適正範囲から外れるか否かを判定してもよい。ここで、印刷濃度が濃くなるほど濃度値は大きくなり、薄くなるほど濃度値は小さくなる。この場合、袋B上の印刷の状態が適正か否か、及び、印刷部32におけるレーザ出力が適正か否かを判定することができる。
【0048】
図4は、印刷能力判定部51で行われる判定の基準として用いられる適正範囲の一例を示す図である。図4に示す例では、黒に近づくほど濃度値が大きくなり、白に近づくほど濃度値が小さくなる。
【0049】
図4に示す適正範囲は、下限閾値Tminよりも大きく且つ上限閾値Tmaxよりも小さい範囲である。この場合、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最大値が、下限閾値Tminよりも大きく且つ上限閾値Tmaxよりも小さければ、印刷能力判定部51は、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態が適正であると判定する。一方、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最大値が下限閾値Tmin以下の場合又は上限閾値Tmax以上の場合、印刷能力判定部51は、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態が適正ではないと判定する。
【0050】
他の例として、印刷部分の濃度が袋Bの袋表面Bs(特に印刷領域R)の本来の濃度よりも薄くなる場合(例えば白に近づく場合)、印刷能力判定部51は、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最小値を取得し、当該最小値が適正範囲から外れるか否かを判定してもよい。例えば、図4に示す適正範囲が用いられる場合、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最小値が、下限閾値Tminよりも大きく且つ上限閾値Tmaxよりも小さければ、印刷能力判定部51は、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態が適正であると判定する。一方、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最小値が下限閾値Tmin以下の場合又は上限閾値Tmax以上の場合、印刷能力判定部51は、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態が適正ではないと判定する。
【0051】
なお袋Bの印刷部分の濃度が印刷領域Rの本来の濃度よりも濃くなる場合、印刷能力判定部51は、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最大値及び最小値の両方を取得し、これらの最大値及び最小値の各々が適正範囲から外れるか否かを判定してもよい。同様に、袋Bの印刷部分の濃度が印刷領域Rの本来の濃度よりも薄くなる場合、印刷能力判定部51は、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最大値及び最小値の両方を取得し、これらの最大値及び最小値の各々が適正範囲から外れるか否かを判定してもよい。
【0052】
なお上述の「適正範囲」は、下限閾値Tmin及び上限閾値Tmaxの一方のみに基づいて決められてもよい。例えばレーザ印刷以外の印刷方式において、袋Bの印刷部分の濃度が印刷領域Rの本来の濃度よりも濃くなっても問題が無い場合、下限閾値Tminよりも大きい範囲が適正範囲に定められてもよい。同様に、袋Bの印刷部分の濃度が印刷領域Rの本来の濃度よりも薄くなっても問題が無い場合、上限閾値Tmaxよりも小さい範囲が適正範囲に定められてもよい。
【0053】
他の例として、印刷能力判定部51は、印刷状態情報D1が示す袋Bにおける印刷濃度の最大値と最小値との間の差(すなわち印刷濃度差)に基づいて、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定することができる。すなわち、袋Bの袋表面Bs(特に印刷領域R)のうち印刷が行われていない部分と印刷が行われた部分との間の濃度差に基づいて、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を判定することができる。
【0054】
印刷状態情報D1が示す印刷濃度差が上述の適正範囲(図4参照)に含まれる場合、印刷能力判定部51は、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態が適正であると判定することができる。一方、印刷状態情報D1が示す印刷濃度差が適正範囲外である場合、印刷能力判定部51は、袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態が適正ではないと判定することができる。なお本例においても、適正範囲は、下限閾値Tmin及び/又は上限閾値Tmaxによって定められうる。
【0055】
この場合、印刷状態情報D1によって印刷状態が示される袋Bにおける範囲には、実際に印刷が行われた部分だけではなく、実際には印刷が行われていない部分も含まれることが必要とされる。
【0056】
例えば図3に示すマーク印刷領域R2に印刷されるマークMの印刷状態が印刷状態情報D1により示されるケースにおいて、マークM(例えば黒ベタマーク)がマーク印刷領域R2の全体を隙間無く占める場合、上述の印刷濃度差に基づく判定を行うことが難しい。そのためマーク印刷領域R2に印刷されるマークMは、本来的に、印刷が行われる部分及び印刷が行われない部分の両方を含むことが好ましい。またマーク印刷領域R2に印刷されるマークMは、本来的に、マーク印刷領域R2よりも小さいサイズであることが好ましい。
【0057】
上述のようにして得られる袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を示す判定結果は、印刷能力判定情報D2として、印刷能力判定部51からレーザ出力調整部52及びアラーム判定部53に送られる。
【0058】
レーザ出力調整部52が印刷能力判定情報D2に応じて発するレーザ出力制御信号C1に基づいて、印刷部32がレーザの出力調整を行うことで、袋Bに対する印刷処理が適正化される。またアラーム判定部53が印刷能力判定情報D2に応じて発するアラーム制御信号C2に基づいて、アラーム部43がアラームを発することで、オペレータは袋B上の印刷状態及び印刷部32の印刷能力の状態を把握することができる。
【0059】
以上説明したように本実施形態の印刷システム15は、レーザを使って、袋B(容器)に、製品に関する製品情報Lを印刷する印刷部32と、袋B上の製品情報Lの印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する印刷状態取得部33と、印刷状態情報D1を解析して印刷部32の印刷能力の状態を判定する印刷能力判定部51と、を備えることができる。印刷部32においてレーザの出力状態は、印刷能力判定部51による印刷能力の判定結果に応じて調整可能である。
【0060】
また本実施形態の印刷方法は、レーザを使って、袋B(容器)に、製品に関する製品情報Lを印刷する工程と、袋B上の製品情報Lの印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する工程と、印刷状態情報D1を解析して印刷部32の印刷能力の状態を判定する工程と、を含むことができ、印刷部32においてレーザの出力状態は、印刷能力判定部51による印刷能力の判定結果に応じて調整可能である。
【0061】
これらの印刷システム15及び印刷方法によれば、印刷部32におけるレーザの出力状態が印刷能力の判定結果に応じて調整されるため、袋Bに対して適切な印刷処理を行うのに有利である。
【0062】
また印刷状態情報D1は、袋B上の製品情報Lの全体の状態を示してもよい。この場合、袋B上の製品情報Lの全体の状態に基づいて、印刷部32の印刷能力の状態を精度良く判定しうる。
【0063】
また印刷状態情報D1は、袋B上の製品情報Lの一部の状態を示してもよい。この場合、印刷状態情報D1の解析負荷を軽減することができ、印刷部32の印刷能力の状態の判定及びレーザ出力の調整を高速に実施しうる。
【0064】
また印刷システム15は、袋Bに、製品に関する製品情報Lと、製品情報Lとは別個のマークMとを印刷する印刷部32と、袋B上のマークMの印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する印刷状態取得部33と、印刷状態情報D1を解析して印刷部32の印刷能力の状態を判定する印刷能力判定部51と、を備えることができる。
【0065】
また印刷方法は、袋Bに、製品に関する製品情報Lと、製品情報Lとは別個のマークMとを印刷する工程と、袋B上のマークMの印刷状態を示す印刷状態情報D1を取得する工程と、印刷状態情報D1を解析して印刷部32の印刷能力の状態を判定する工程と、を含むことができる。
【0066】
これらの印刷システム15及び印刷方法によれば、製品情報Lとは別個に袋Bに印刷されるマークMを使って、印刷部32の印刷能力の状態を判定することができるので、袋Bに対して適切な印刷処理を行うのに有利である。
【0067】
そして印刷部32は、レーザを使って、製品情報L及びマークMを袋Bに印刷し、印刷部32においてレーザの出力状態を、印刷能力判定部51による印刷能力の判定結果に応じて調整することができる。この場合、印刷に適した強さのレーザを印刷部32から出力することができ印刷精度を向上させることができる。
【0068】
また印刷能力判定部51は、印刷状態情報D1を解析し、袋B上の印刷濃度に基づいて印刷部32の印刷能力を判定することができる。この場合、印刷部32の印刷能力を精度良く判定することができる。
【0069】
また印刷能力判定部51は、印刷状態情報D1を解析し、袋B上の印刷濃度差が適正範囲から外れるか否かに基づいて印刷部32の印刷能力を判定することができる。この場合、袋Bの印刷部分の濃度が袋Bの非印刷部分の濃度よりも濃くなるケース及び薄くなるケースの双方に対応することができ、印刷部32の印刷能力を精度良く判定することができる。
【0070】
また印刷システム15は、印刷能力判定部51による印刷部32の印刷能力の判定結果に応じてアラームを発するアラーム部43を備える。これにより、印刷能力の判定結果をオペレータに報知することができ、オペレータの状況認識を促すことができる。
【0071】
[変形例]
本開示は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。
【0072】
印刷部32の印刷能力の状態を正常に戻すことがレーザの出力調整を行っても難しいと制御部50(例えばレーザ出力調整部52)が判定する場合、レーザ出力調整部52は、印刷部32へのレーザ出力制御信号C1の出力をストップしたり、印刷部32においてレーザが出力されないようなレーザ出力制御信号C1を出力したりしてもよい。例えば、印刷内容の一部又は全部が全く袋Bに印刷されない印刷欠けの発生を印刷状態情報D1及び印刷能力判定情報D2が示す場合や、既に行ったレーザの出力調整処理によっても印刷状態が改善されないことを印刷状態情報D1及び印刷能力判定情報D2が示す場合に、「印刷部32の印刷能力の状態を正常に戻すことがレーザの出力調整を行っても難しい」と判定されうる。
【0073】
印刷部32の印刷能力の状態を正常に戻すことがレーザの出力調整を行っても難しいと判定される場合、制御部50は、アラーム処理によってオペレータにエラーが報知されるようにしたり、開口処理、内容物供給処理及び/又はシール処理が停止されるようにしたり、対応の袋の情報とエラーフラグ(エラー情報)とが関連付けられて記憶部(図示省略)に記憶されるようにしたりするように、制御を行ってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、内容物が入れられ且つ口部がシールされた袋Bが製品として作られるが、製品は他の形態を有してもよい。包装機10は、例えば、スパウト等の器具を袋Bに取り付ける処理(器具取付処理)が行われる処理ステーション(器具取付工程)を含んでもよい。この場合、器具取付処理が行われる処理ステーションに設置される器具取付装置(図示省略)が、袋Bに器具を取り付ける。なお、器具取付処理が行われる場合、内容物供給工程は行われなくてもよいし、行われてもよい。内容物供給工程及び器具取付工程の両方が行われる場合、内容物供給部35は、袋Bに取り付けられた器具を介して袋B内に内容物を供給してもよいし、そのような器具を介することなく袋B内に内容物を供給してもよい。
【0075】
上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよいし、上述の実施形態及び変形例間で部分的に又は全体的に構成が組み合わせられてもよい。また本開示によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果が発揮される。このように、本開示の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲、明細書及び図面に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 包装機、11 袋貯留部、15 印刷システム、21 搬送部、22 支持部、31 袋供給部、32 印刷部、33 印刷状態取得部、34 開口部、35 内容物供給部、36 第1加熱シール部、37 第2加熱シール部、38 冷却シール部、39 放出部、43 アラーム部、50 制御部、51 印刷能力判定部、52 レーザ出力調整部、53 アラーム判定部、B 袋、Bs 袋表面、C1 レーザ出力制御信号、C2 アラーム制御信号、D1 印刷状態情報、D2 印刷能力判定情報、L 製品情報、M マーク、R 印刷領域、R1 情報印刷領域、R2 マーク印刷領域、S1 第1ステーション、S2 第2ステーション、S3 第3ステーション、S4 第4ステーション、S5 第5ステーション、S6 第6ステーション、S7 第7ステーション、S8 第8ステーション、Tmin 下限閾値、Tmax 上限閾値
図1
図2
図3
図4