(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029037
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】手摺装置
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135104
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000113779
【氏名又は名称】マツ六株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】森 勇信
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301LL02
(57)【要約】
【課題】手摺装置の伸長状態を維持するクランプ機構において、使用を重ねるにつれて生ずるハンドルの塑性変形を抑制する。
【解決手段】主支柱材に副支柱材を摺動させて伸縮自在に形成される支柱部と、主支柱材に装着される取付ベース、及び、連結位置と連結解除位置との間で移動操作自在に前記取付ベースに連結される連結体を備え、連結体の連結位置への移動に伴って支柱部の両端を天井面と床面とに押付け、両端を連結位置において押付け状態に維持する操作部とを有する手摺装置であって、連結体には、連結体の連結位置への初期移動操作力を支柱部への締め付けによるクランプ力に変換して支柱部を保持するクランプ装置が連結され、連結体は、クランプ装置を挟み込みつつ連結体の貫通孔とクランプ装置の貫通孔とを貫通するボルトとナットとで連結され、ボルトの頭が位置する側、又は、ナットが位置する側の少なくとも一方には、板バネ部材が挟み込まれている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主支柱材に副支柱材を摺動させて伸縮自在に形成される支柱部と、
前記主支柱材に装着される取付ベース、及び、前記主支柱材と副支柱材とを連結する連結位置と当該連結状態を解除する連結解除位置との間で移動操作自在に前記取付ベースに連結される連結体を備え、連結体の連結位置への移動に伴って支柱部を所定長伸長駆動させて両端を設置天井面と設置床面とに押付け、該両端を連結位置において押付け状態に維持して支柱部を立設させる操作部と、
外部に露出した状態で前記取付ベースに脱離不能に保持され、連結体を連結位置に拘束する係止位置と当該拘束状態を解除する係止解除位置との間を移動操作自在で、かつ、連結体の連結解除位置から連結位置への移動により正面側から目視不能な位置に配置されるストッパとを有し、
前記ストッパは、係止位置と係止解除位置との間の移動による、連結体に形成された被係止部への係脱により連結体を連結位置に拘束及び拘束解除し、かつ、係止位置側に付勢されて被係止部に弾発係止し、
前記連結体は支柱部に回転移動自在に連結されるとともに、
前記支柱部と連結体とに回転移動自在に連結されて連結体とともにリンク機構を構成するリンクを有し、
前記リンク機構により連結体の連結解除位置から連結位置への回転に伴って支柱部が伸長駆動され、
前記連結体には、該連結体の連結位置への初期移動操作力を支柱部への締め付けによるクランプ力に変換して支柱部を保持するクランプ装置が連結され、
前記支柱部は、前記クランプ装置によるクランプ解除状態においてリンク機構による連結体との連動が解除され、
前記連結体は、前記クランプ装置を挟み込んだ状態で、前記連結体に設けられた2つの貫通孔と前記クランプ装置に設けられた2つの貫通孔とを貫通するボルトとナットとで連結されているとともに、前記ボルトの頭が位置する側、又は、前記ナットが位置する側の少なくとも一方には、板バネ部材が挟み込まれている、手摺装置。
【請求項2】
前記板バネ部材は皿ばねにより構成される、請求項1に記載の手摺装置。
【請求項3】
複数枚の前記皿ばねが、前記ボルトの頭が位置する側、又は、前記ナットが位置する側の少なくとも一方に挟み込まれる、請求項2に記載の手摺装置。
【請求項4】
前記複数枚の皿ばねが、前記ボルトの頭が位置する側、又は、前記ナットが位置する側の少なくとも一方において、互いに反対方向を向いて配置されている、請求項3に記載の手摺装置。
【請求項5】
前記皿ばねを複数枚、同方向に重ね合わせた組皿ばねが、前記ボルトの頭が位置する側、又は、前記ナットが位置する側の少なくとも一方において、互いに反対方向を向いて配置されている、請求項4に記載の手摺装置。
【請求項6】
前記組皿ばねが、前記ボルトの頭が位置する側、及び、前記ナットが位置する側の両方に配置されている、請求項5に記載の手摺装置。
【請求項7】
前記リンクは、前記取付ベースを挟み込んだ状態で、前記リンクに設けられた2つの貫通孔と前記取付ベースに設けられた2つの貫通孔とを貫通するボルトで連結されているとともに、前記ボルトの頭側の貫通孔は雌ネジが切られたネジ孔として形成され、前記ボルトの先端側の貫通孔はルーズホールとして形成されている、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、手摺装置には、たとえば在宅看護される被看護者のベッドからの立ち上がり動作やその後の歩行を補助するために、様々な場所に後付けしやすくすることが求められている。このような求めに応えるものとして、従来、下記特許文献1に記載されたものが知られている。これらの手摺装置は、主支柱材に副支柱材を摺動させて伸縮自在に形成される支柱を備え、支柱の両端を天井側と床側に押し当てることにより、たとえば寝室の中央近傍に立設させることができる。この支柱に手摺を取り付ければ、寝室の中央部分において被看護者等の歩行を補助することができ、また、支柱をベッド脇に配置すれば、支柱自体を縦方向の手摺として被看護者等のベッドからの立ち上がり動作を補助することもできる。上記支柱は、主支柱材に副支柱材を摺動させることにより天井側と床側との間隔に合わせて長さ調整可能である。また、このように長さ調整した後に、伸長駆動させて両端を天井側と床側に押付けるとともに、以後の縮退駆動を禁止して押付け状態に維持するために、支柱にはレバー状のハンドルを備えた操作部が装着される。この押付け状態の維持のために、支柱を保持するクランプ機構を設けた操作部として、下記特許文献1及び特許文献2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-206640号公報
【特許文献2】特許第6222870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献の操作部においては、使用を重ねるにつれてハンドルの塑性変形が生じ、クランプ機構による支柱保持力が低下するおそれがあった。本開示の実施態様は、手摺装置の伸長状態を維持するクランプ機構において、使用を重ねるにつれて生ずるハンドルの塑性変形を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施態様の手摺装置は、支柱部と、操作部と、ストッパとを有する。支柱部は、主支柱材に副支柱材を摺動させて伸縮自在に形成される。操作部は、主支柱材に装着される取付ベース、及び、主支柱材と副支柱材とを連結する連結位置と当該連結状態を解除する連結解除位置との間で移動操作自在に前記取付ベースに連結される連結体を備える。また操作部は、連結体の連結位置への移動に伴って支柱部を所定長伸長駆動させて両端を設置天井面と設置床面とに押付け、該両端を連結位置において押付け状態に維持して支柱部を立設させる。ストッパは、外部に露出した状態で前記取付ベースに脱離不能に保持され、連結体を連結位置に拘束する係止位置と当該拘束状態を解除する係止解除位置との間を移動操作自在である。ストッパはまた、連結体の連結解除位置から連結位置への移動により正面側から目視不能な位置に配置される。ストッパは、係止位置と係止解除位置との間の移動による、連結体に形成された被係止部への係脱により連結体を連結位置に拘束及び拘束解除する。ストッパはまた、係止位置側に付勢されて被係止部に弾発係止する。連結体は支柱部に回転移動自在に連結される。手摺装置はまた、支柱部と連結体とに回転移動自在に連結されて連結体とともにリンク機構を構成するリンクを有する。リンク機構により連結体の連結解除位置から連結位置への回転に伴って支柱部が伸長駆動される。連結体には、該連結体の連結位置への初期移動操作力を支柱部への締め付けによるクランプ力に変換して支柱部を保持するクランプ装置が連結される。支柱部は、前記クランプ装置によるクランプ解除状態においてリンク機構による連結体との連動が解除される。連結体は、前記クランプ装置を挟み込んだ状態で、連結体に設けられた2つの貫通孔と前記クランプ装置に設けられた2つの貫通孔とを貫通するボルトとナットとで連結されている。連結体にはまた、ボルトの頭が位置する側、又は、ナットが位置する側の少なくとも一方には、板バネ部材が挟み込まれている。
【0006】
連結体が連結解除位置から連結位置へ移動する際に、連結体の余分なストロークによって連結体がクランプ装置を挟み込む動作を繰り返して連結体の塑性変形をもたらすことがある。しかし上記の構成により、この余分なストロークが、連結体とクランプ装置とを連結するボルトに介装される板バネ部材のばね力によって吸収される。これによって、連結体の塑性変形が抑制される。
【0007】
また、上記手摺装置においては、板バネ部材は皿ばねにより構成されることが望ましい。皿ばねは小さな取り付けスペースで大きな荷重を受けることができるため、連結体とクランプ装置との間の限られた連結スペースに介装することが可能となる。
【0008】
また、上記手摺装置においては、複数枚の前記皿ばねが、ボルトの頭が位置する側、又は、ナットが位置する側の少なくとも一方に挟み込まれることが望ましい。皿ばねを複数枚設けることで、ばね力を強化させることができる。
【0009】
また、上記手摺装置においては、複数枚の皿ばねが、ボルトの頭が位置する側、又は、ナットが位置する側の少なくとも一方において、互いに反対方向を向いて配置されていることが望ましい。なお、皿ばねを互いに反対方向に並べるとは、略円錐台形状の皿ばねの小径部分同士、又は、大径部分同士を接触させるように並べることをいう。このように並べることで、皿ばねが吸収可能なストロークを増大させることができる。
【0010】
また、上記手摺装置においては、皿ばねを複数枚、同方向に重ね合わせた組皿ばねが、ボルトの頭が位置する側、又は、ナットが位置する側の少なくとも一方において、互いに反対方向を向いて配置されていることが望ましい。複数枚の皿ばねを同方向に組み合わせた組皿ばねを使用することで、皿ばねのばね力を増大させることができる。
【0011】
また、上記手摺装置においては、組皿ばねが、ボルトの頭が位置する側、及び、ナットが位置する側の両方に配置されていることが望ましい。このように配置されることで組皿ばねでばね力を増大させつつ、ボルトの一方側に皿ばねを集中させることによるボルトの出寸法の不均等を極力解消することができる。
【0012】
また、上記手摺装置においては、リンクは、前記取付ベースを挟み込んだ状態で、リンクに設けられた2つの貫通孔と取付ベースに設けられた2つの貫通孔とを貫通するボルトで連結されている。これとともに、ボルトの頭側の貫通孔は雌ネジが切られたネジ孔として形成され、ボルトの先端側の貫通孔はルーズホールとして形成されている。リンクと取付ベースとを連結するボルトが貫通する貫通孔の頭側のみに雌ネジが切られて、先端側には雌ネジが切られていないルーズホールとなっていることで、連結体が回転移動を繰り返すことによるボルトの締め込みが解消される。
【発明の効果】
【0013】
本開示の実施態様は上記のように構成されているので、手摺装置の伸長状態を維持するクランプ機構において、使用を重ねるにつれて生ずるハンドルの塑性変形を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る手摺装置を示す図で、全体側面図である。
【
図2】連結体周りを示す図で、は連結位置をとるときの斜視図である。
【
図3】連結体周りを示す図で、連結解除位置をとるときの斜視図である。
【
図5】連結体周りの構造及び動作を説明する中央要部縦断面図で、連結解除位置をとるときの図である。
【
図6】連結体周りの構造及び動作を説明する中央要部縦断面図で、連結解除位置から連結位置への移行初期段階の図である。
【
図7】リンクと取付ベースとの連結部分について、
図3のVII-VII断面図で示す。ただしボルトは外して示している。
【
図8】連結体とクランプ装置との連結部分について、
図2のVIII-VIII断面図で示す。
【
図9】連結体とクランプ装置との連結部分について変形例を示す。
【
図10】連結体とクランプ装置との連結部分について変形例を示す。
【
図11】連結体とクランプ装置との連結部分について変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図8に本開示の実施形態を示す。この実施形態において、手摺装置100は、
図1に示すように、伸縮自在に形成された支柱部3と、上記支柱部3の伸縮動作を操作、制御するための操作部としてのクランプ装置22とを有する。なお、以下の説明では、
図1に示す設置状態を基準にして上下を定義する。
【0016】
上記支柱部3は、
図1~
図6に示すように、大径パイプで構成される主支柱材1と、この主支柱材1内を摺動自在な小径パイプで構成される副支柱材2とを有する。支柱部3はまた、テレスコープ状に副支柱材2を主支柱材1から摺動させて引き出し、あるいは主支柱材1内に収容することにより伸縮自在に形成される。上記主支柱材1と副支柱材2は、直管状の管材からなる。主支柱材1が下側に配置されるこの実施の形態において、支柱部3の伸縮は、主支柱材1から上方に引き出される副支柱材2の長さを調整してなされる。
【0017】
また、室内の設置天井面4と設置床面5への有効な設置状態を確保するために、上記支柱部3は、
図1に示すように副支柱材2の上端側に天井側支持部23を、主支柱材1の下端側に床側支持部24を備える。
【0018】
上記クランプ装置22は、
図2に示すように、ハンドル部として形成される連結体6と、この連結体6を支柱部3に回転移動自在に取り付けるための取付ベース29とを有する。上記取付ベース29は、
図2~
図6に示すように、上述した主支柱材1よりもひとまわり大きい、上半分が略C字断面の円筒近似形状で下半分が円筒形状に形成された筒部29aを有し、この筒部29aの側壁面には貫通状に適数のネジ孔29bが形成される。取付ベース29の支柱部3への取り付けは、上記筒部29a内に主支柱材1の上端部を挿入した後、上記ネジ孔29bにねじ込まれる図示しないネジ部材によって主支柱材1外周面を押圧することによりなされる。また、筒部29aの長手方向中間部の側壁面には、外周側から内周側に向かって主支柱材1の外径よりも内方まで押し込むように凸状に変形させることにより、主支柱材1を上方に抜け止めするための抜け止め部29d(
図5及び
図6参照)が形成される。
【0019】
さらに、上記筒部29aの下部には、
図3~
図7に示すように、その長手方向に沿って、下面が開放した箱状の突片29eが上述したC字断面の開放端縁の側から突設される。この突片29eの両側面には、
図3及び
図4に示すように上下方向に長い長孔29fが水平方向に連通して穿孔される。また、筒部29aの上半分は上述したように略C字断面に形成され、この部分が後述するクランプ装置12の収容部29g(
図4参照)となる。
【0020】
上記連結体6は、
図2~
図6に示すように、レバー状のハンドル本体30として構成される。上記ハンドル本体30は中空状に形成され、その内部には、その長手方向中央寄りの位置に中間壁48が形成され、この中間壁48よりも基端側がストッパ収容部15とされる。また、上記中間壁48には、係止開口48aが形成される(
図5及び
図6参照)。ハンドル本体30の先端近傍、すなわち、取付ベース29に近い側の位置には1対の貫通孔30dが穿設され、それより取付ベース29からやや遠ざかった位置には1対の貫通孔30eが穿設される(
図4参照)。また、ハンドル本体30の先端の内側には1対のカム受け部材14が装着される。このカム受け部材14の内面には、ハンドル本体30の貫通孔30dに連通する連通孔14cが形成され、この連通孔14c周りに解除位置受け面対応面14d、連結位置受け面対応面14eが周方向に交互に形成される。連結体6の上述した取付ベース29との連結は、
図3に示すように、リンク10を介してなされる。
【0021】
リンク10は、
図4に示すように、両端部に貫通孔10aを有し、その一方にハンドル本体30の貫通孔30eに挿入されたボルト32Aを通してその先端をナット32Aaで締結することにより連結体6と回転自在に連結される。また、その他方に取付ベース29の長孔29fに挿入されたボルト32Bを通すことにより取付ベース29にクランクスライダ状に連結される。これにより、連結体6を取付ベース29、すなわち主支柱材1に自由度を持って回転自在に連結する。このリンク10は、ハンドル本体30のストッパ収容部15の幅寸法よりもやや狭く、かつ、突片29eの幅方向寸法よりもやや幅広に配置された一対のリンク片10b、10bの中央部を連結片10cで連結して形成される。そして、上述した貫通孔10aは各リンク片10bの両端部に開設される。4個ある貫通孔10aのうち、ボルト32Bの頭側が位置する1個のみ、内側に雌ネジが切られ、他の3個は雌ネジが切られないルーズホール10a1となっている。
【0022】
ここで、
図3のVII-VII断面図である
図7に示すように、リンク10の1対のリンク片10bは、取付ベース29の突片29eを挟み込んでいる。この状態で、リンク10に設けられた2つの貫通孔10aと取付ベース29に設けられた2つの貫通孔である長孔29fとを貫通するボルト32Bで連結されている。そして、ボルト32Bの頭側の貫通孔10aは雌ネジが切られたネジ孔として形成される一方、ボルト32Bの先端側の貫通孔10aはルーズホール10a1として形成されている。上記構成により、ボルト32Bの先端側はリンク10に対してネジ止めされていないため、連結体6の回転を繰り返しても、ボルト32Bが頭側と先端側との間でリンク片10bを過度に締め付けることがなくなっている。
【0023】
また、上述した副支柱材2の主支柱材1からの引き出し等を操作、制御するために、上記連結体6には、
図2~
図6に示すように、副支柱材2をクランプ可能なクランプ装置12が装着される。このクランプ装置12は、
図4に示すように、上述した副支柱材2の外径よりもやや大きい断面の中空部を備えたクランプ部33を有する。
【0024】
上記クランプ部33は、副支柱材2よりも内径がやや大きい断面C字の筒近似形状に形成されて径方向に拡縮変形自在なクランプ本体33aと、上記C字断面の開放端縁から外周側に向かって所定間隔を隔てて延設された一対の挟持片33b、33bとを有する。クランプ部33は、金属材により形成される。また、上記挟持片33bの一対には、連通状に貫通する貫通孔33dが穿孔され、さらに、この貫通孔33dの周りに、下から上に向かって連結位置受け面36、解除位置受け面35、及び再び連結位置受け面36がこの順に配置されるカム面11が形成される。このカム面11は、前記したカム受け部材14とともにカム機構を構成する。
【0025】
ここで、
図4に示すように、連結体6は、クランプ装置22、具体的にはクランプ部33を挟み込んでいる。この状態で、連結体6に設けられた2つの貫通孔30dと、クランプ部33に設けられた2つの貫通孔33dとを貫通するボルト32Cとナット32Caとで連結されている。また、ボルト32Cの頭が位置する側とナット32Caが位置する側との両方に、皿ばね51で構成された板バネ部材50が挟み込まれている。なお、板バネ部材50は、ボルトの頭が位置する側、又は、ナットが位置する側の少なくとも一方に挟み込まれていればよいが、本実施形態のように両方に挟み込まれている方が望ましい。この状態は、
図2のVIII-VIII断面図である
図8に示すとおりである。すなわち、複数枚の皿ばね51が、ボルト32Cの頭が位置する側、又は、ナット32Caが位置する側の少なくとも一方、具体的には両方に挟み込まれている。なお、この皿ばね51は、手摺装置100の仕様によっては1枚であってもよいが、本実施形態のように複数枚であることが望ましい。さらに、複数枚の皿ばね51が、ボルト32Cの頭が位置する側において、互いに反対方向を向いて配置されている。なお、この反対方向に配置されている複数枚の皿ばね51は、ナット32Caが位置する側に配置されていてもよい。また、皿ばね51を複数枚、同方向に重ね合わせた組皿ばね52が、ボルト32Cの頭が位置する側、又は、ナット32Caが位置する側の両方に配置されている。そして、2組の組皿ばね52が、ボルト32Cの頭が位置する側において、互いに反対方向を向いて配置されている。なお、この2組の組皿ばねはナット32Caが位置する側に配置されていてもよい。皿ばね51を複数枚同方向に組合せて組皿ばね52とすることで、皿ばね51のばね力を増大させることができる。本実施形態では、3枚の皿ばね51を同方向に重ね合わせた組皿ばね52が2組、ボルト32Cの頭が位置する側に互いに反対方向を向いて配置される一方、1組の組皿ばね52がナット32Caが位置する側に配置されている。この板バネ部材50の意義については後述する。
【0026】
以上のクランプ装置12のクランプ本体33a内に副支柱材2を挿入すれば、連結体6の回転操作によって副支柱材2をクランプしたり、クランプ解除したりすることができる。これにより、連結体6を副支柱材2の長手方向所定位置に固定したり、副支柱材2の長手方向に相対移動可能にしたりすることができる。上述したようにクランプ本体33aが筒近似形状に形成されて副支柱材2、すなわち支柱部3の長手方向に沿ってある程度の長さを備えることにより、副支柱材2のクランプ状態が安定する。
【0027】
また、連結体6は、クランプ装置12以外にも、上述したように取付ベース29、すなわち主支柱材1に対してもリンク10を介して回転自在に連結される。そのため、副支柱材2をクランプ部33でクランプさせたときには、副支柱材2と主支柱材1の相対移動が制限され、支柱部3が所定の長さに維持されやすくなる。また、クランプを解除すれば、支柱部3の長さを変更しやすくなる。一方、連結体6は、上述したように取付ベース29、すなわち主支柱材1にクランクスライダ状に連結されるリンク10を介して主支柱材1に連結されている。そのため、上述したようにクランプ部33で副支柱材2をクランプすれば、連結体6、リンク10、支柱部3がリンク機能を果たすことによってクランクスライダ機構が構成される。
【0028】
したがってクランプ本体33aに副支柱材2を挿入すると、連結体6は、
図5に示すように支柱部3に対して直交よりやや上側の位置(連結解除位置)から、上述したクランクスライダ機構におけるスライド移動を伴うリンク10の回転によって
図6に示すように下方に向かって少し回転する位置(初動位置)まで回転することができる。このとき、リンク10を取付ベース29に接続するボルト32Bの軸は、回転する連結体6によってリンク10が押し込まれることにより、
図5に示すように長孔29fの上端部近傍の位置から下方に移動する。上記連結解除位置においては、クランプ装置12はクランプ解除状態にあるために副支柱材2をクランプ装置12に対して相対移動させることが可能であり、したがって副支柱材2を手で把持して主支柱材1に対して進退動させることにより、支柱部3を自由に伸縮させることができる。
【0029】
一方、上記初動位置においては、カム受け部材14は解除位置受け面35を外れて連結位置受け面36に対してある程度乗り上げており、これに伴ってクランプ本体33aも縮径変形していることでクランプ装置12がクランプ状態に移行している。ここから連結体6をさらに下方に回転操作すると、今度は副支柱材2を主支柱材1から引き出す方向への動作、すなわち、上述した支柱部3の伸長駆動を伴ってリンク10が回転する。連結体6が最下方である支柱部3に沿う位置(連結位置)まで回転したときには、
図4に示すように、カム受け部材14は連結位置受け面36に到達し、リンク10は支柱部3にほぼ沿う姿勢になり、上述した長孔29f内では、その中央近傍にボルト32Bの軸が位置する。また、このときハンドル本体30と取付ベース29とは、上述したストッパ収容部15内に上述した突片29eを収容する位置をとる。
【0030】
このとき、副支柱材2の太さによっては、連結体6が、連結位置まで回転するまでに、挟持片33bに対するカム受け部材14の締め付け力が十分になることもある。そこからさらに連結体6を連結位置まで回転させると、その余分なストロークによってカム受け部材14に過度の締め付け力がかかり、それが繰り返されることでカム受け部材14が塑性変形を被ることもある。しかし、本実施形態では、板バネ部材50としての皿ばね51を3枚同方向に重ね合わせた組皿ばね52が合計3組、挟持片33bとカム受け部材14とを連結するボルト32Cに挟み込まれている。この3組の組皿ばね52は、2組がボルト32Cの頭が位置する側に反対方向を向いて配置されているとともに、1組がナット32Caが位置する側に配置されている。この配置によって、皿ばね51のばね力は組皿ばね52となることで3倍となり、また、3組の組皿ばね52がそれぞれ上記した余分なストロークを吸収することとなっている。
【0031】
また、再度、連結体6を上記連結位置から連結解除位置まで戻すと、以上とは逆に支柱部3が縮退駆動されるとともに、長孔29f内をボルトの軸が上昇し、また、クランプ装置12がクランプ解除状態になって支柱部3を手で把持して伸縮できるようになる。したがって、手摺装置は、連結体6を連結解除位置にしておいてあらかじめ手動により支柱部3の両端、すなわち天井側支持部23と床側支持部24を設置天井面4と設置床面5に接触するように合わせておく。次いで、連結体6を連結位置まで回転操作すれば、支柱部3の伸長によって天井側支持部23と床側支持部24を設置天井面4と設置床面5に押付ける。これにより、支柱部3を設置天井面4と設置床面5の間に突っ張り状にしっかりと立設させることができる。また、この後、連結体6を連結解除位置まで戻せば、天井側支持部23等の設置天井面4等への押付け状態を解除して支柱部3を設置天井面4と設置床面5の間から容易に取り外すことができる。また、連結体6を連結解除位置まで戻す際には、クランプ装置12もクランプ解除状態に移行するために、自重を利用して副支柱材2を主支柱材1内に収容することも可能であり、そのまま支柱部3を短縮させることもできる。
【0032】
換言すると、クランプ装置22は、主支柱材1に装着される取付ベース29、及び、主支柱材1と副支柱材2とを連結する連結位置と当該連結状態を解除する連結解除位置との間で移動操作自在に取付ベース29に連結される連結体6を備える。また、連結体6の連結位置への移動に伴って支柱部3を所定長伸長駆動させて両端を設置天井面4と設置床面5とに押付け、該両端を連結位置において押付け状態に維持して支柱部3を立設させる。
【0033】
また、クランプ装置22は、連結体6の連結位置への初期移動操作力を、カム面11及びカム受け部材14により構成されるカム機構により支柱部3へのクランプ力に変換して支柱部3を保持する。さらに、支柱部3は、クランプ装置22によるクランプ解除状態においてリンク機構による連結体6との連動が解除される。
【0034】
また、手摺装置100は、支柱部3の設置状態を解消させてしまう連結体6の連結位置からのみだりな移動操作を防止するために、ストッパ7を備える。このストッパ7は、
図4に示すように、その一端部に係止部43を、他端部に板材をS字状に折曲して形成された弾性変形脚44を、それぞれ備えて形成される。また、ストッパ7の中間部には、
図4に示すように、上述した取付ベース29の長孔29fと合致する長孔部45が形成される。
【0035】
以上のストッパ7は、幅寸法が上述した取付ベース29に形成される突片29eの幅よりもやや狭い程度にされ、
図5及び
図6に示すように突片29eの開放した下面から挿入される。このストッパ7の保持は、
図4~
図6に示すように、リンク10の貫通孔10aと取付ベース29の長孔29fとに挿入されるボルト32Bを上記長孔部45に貫通させることによりなされる。また、上記突片29eには、上記弾性変形脚44の先端側に係止部43の反対方向から当接する抑えネジ32Fがねじ込まれる。さらに、上述した取付ベース29による保持状態において、ストッパ7の係止部43は突片29eの開放した下面よりも下方に突出し、この係止部43の位置は、連結体6の係止開口48aの位置に一致する。
【0036】
したがってストッパ7は、抑えネジ32Fによって上述した係止部43が突片29eから突出する方向に付勢される。この付勢により、連結体6が連結位置を取るときには係止部43が係止開口48aに進入する位置(係止位置)をとり、これにより連結体6の連結位置からの移動が制限される。このときストッパ7は突片29eとともに連結体6のストッパ収容部15内に収容される。なお、上述した係止開口48aからの係止部43の脱離は、連結体6の下端部から係止開口48a内に向かって鍵等を挿入し、係止部43を係止開口48aから押し出す方向に押せばよく、これにより弾性変形脚44が撓んで係止部43が係止開口48aから外れる位置(係止解除位置)に移動し、連結体6の連結位置からの移動制限が解除される。
【0037】
換言すると、ストッパ7は、外部に露出した状態で取付ベース29に脱離不能に保持される。そして、連結体6を連結位置に拘束する係止位置と当該拘束状態を解除する係止解除位置との間を移動操作自在で、かつ、連結体6の連結解除位置から連結位置への移動により正面側から目視不能な位置に配置される。さらにストッパ7は、係止位置と係止解除位置との間の移動による、連結体6に形成された被係止部としての係止開口48aへの係脱により連結体を連結位置に拘束、拘束解除し、かつ、係止位置側に付勢されて被係止部としての係止開口48aに弾発係止する。
【0038】
なお、
図8に示す皿ばね51は、平たい円錐台形状を呈している。この皿ばね51の小径部分を「頭」、及び大径部分を「脚」と称すると、
図8の組皿ばね52は、ボルト32Cの頭側で、脚同士を接触させた状態で反対方向を向いて配置される。よって、ナット32Caの側では、組皿ばね52の頭をナット32Caに接した状態で配置されている。組皿ばね52の配置方法はこれに限らず、たとえば、
図9に示す変形例のように、ボルト32Cの頭側では
図8と同様に配置される一方、ナット32Caの側では、組皿ばね52の脚を、平座金53を介してナット32Caの側を向けて配置してもよい。また、
図10に示す変形例のように、ナット32Caの側では
図8と同様に配置される一方、ボルト32Cの頭側では、頭同士を接触させた状態で反対方向を向いて、さらにボルト32Cの頭との間に平座金53を介装させて配置してもよい。さらに、
図11に示す変形例のように、ボルト32Cの頭側では
図10と同様に、また、ナット32Caの側では
図9と同様に配置してもよい。なお、
図9~
図11の変形例で用いられている平座金53は、皿ばね51の脚がボルト32Cの頭又はナット32Caの方を向くことで当たり面が凸となり、当接する部分が変わるのを防止するために用いられる。いずれの場合も、
図8の配置と同様のばね力及びストロークの吸収効果を発揮することができる。
【0039】
上記した本実施形態では、カム面11及びカム受け部材14より構成されるカム機構によりクランプ機構が構成されている。しかし、本願でいうクランプ機構はこのようなカム機構に限られず、連結体6の連結位置への初期移動操作力を支柱部3への締め付けによるクランプ力に変換して支柱部3を保持する機構であれば、特に限定なくクランプ機構として採用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 主支柱材 2 副支柱材 3 支柱部 4 設置天井面 5 設置床面 6 連結体 7 ストッパ 10 リンク 10a 貫通孔 10a1 ルーズホール 10b リンク片 10c 連結片 11 カム面 12 クランプ装置 14 カム受け部材 14c 連通孔 14d 解除位置受け面対応面 14e 連結位置受け面対応面 15 ストッパ収容部 22 操作部 23 天井側支持部 24 床側支持部 29 取付ベース 29a 筒部 29b ネジ孔 29d 抜け止め部 29e 突片 29f 長孔 29g 収容部 30 ハンドル本体 30d 貫通孔 30e 貫通孔 32A ボルト 32Aa ナット 32B ボルト 32C ボルト 32Ca ナット 32F 抑えネジ 33 クランプ部 33a クランプ本体 33b 挟持片 33d 貫通孔 35 解除位置受け面 36 連結位置受け面 43 係止部 44 弾性変形脚 45 長孔部 48 中間壁 48a 係止開口 50 板バネ部材 51 皿ばね 52 組皿ばね 53 平座金 100 手摺装置