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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002904
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】生体機能チップ
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20221228BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103743
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 俊完
(72)【発明者】
【氏名】松原 竜也
(72)【発明者】
【氏名】大友 泰輝
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC08
4B029CC11
4B029GA08
4B029GB04
(57)【要約】
【課題】ECFを用いたマイクロポンプを内蔵した小型の生体機能チップを提供する。
【解決手段】生体機能チップ10は、細胞を培養可能な面を備えた弾性膜12と、弾性膜12を保持する上板11及び下板13と、圧力室PC1,PC2と、圧力室PC1,PC2に接続された駆動路DP1,DP2と、圧力室PC1,PC2及び駆動路DP1,DP2内に注入された作動流体と、駆動路DP1,DP2内に配置された電極ユニット16と、を有し、電極ユニット16に直流電圧が印加されたとき、駆動路DP1,DP2内を作動流体が移動して圧力室PC1,PC2の圧力が変化することにより、第1弾性膜12に引っ張り応力を付与する。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養可能な面を備えた第1弾性膜と、
前記第1弾性膜を保持する保持板と、
前記保持板内に形成された圧力室と、
前記圧力室に接続された駆動路と、
前記圧力室及び前記駆動路内に注入された作動流体と、
前記駆動路内に配置された電極ユニットと、を有し、
前記電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記駆動路内を作動流体が移動して前記圧力室の圧力が変化することにより、前記第1弾性膜に引っ張り応力を付与する、
ことを特徴とする生体機能チップ。
【請求項2】
前記圧力室は、前記第1弾性膜に培養された細胞に対して、前記第1弾性膜に接合された隔壁を挟んで対向している、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体機能チップ。
【請求項3】
前記保持板は、前記第1弾性膜に培養された細胞を内包するように形成され、流体が通過可能な流路を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の生体機能チップ。
【請求項4】
前記第1弾性膜の両面に対向して細胞を培養可能であり、前記流路は、それぞれの細胞を内包するように一対、配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の生体機能チップ。
【請求項5】
前記圧力室は、前記第1弾性膜に培養された細胞を挟んで両側に配置され、一対の前記駆動路が、それぞれの前記圧力室に接続されている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の生体機能チップ。
【請求項6】
前記圧力室は、前記第1弾性膜に培養された細胞を挟んで両側に配置され、単一の前記駆動路が、一対の前記圧力室に接続されている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の生体機能チップ。
【請求項7】
前記第1弾性膜の細胞を培養可能な面に並行し且つ離間した第2弾性膜を、さらに有し、
前記圧力室は、前記第2弾性膜を挟んで前記第1弾性膜とは反対側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体機能チップ。
【請求項8】
前記第1弾性膜と前記第2弾性膜との間に、流体が通過可能な流路が配設されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の生体機能チップ。
【請求項9】
前記流路への流体の流入と、前記流路からの流体の流出を遮断する弁機構を、さらに有し、
前記弁機構は、弁駆動路内に注入された作動流体と、前記弁駆動路内に配置された電極ユニットとを有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の生体機能チップ。
【請求項10】
前記第1弾性膜の細胞を培養可能な面を挟んで両側に、離間した第2弾性膜及び第3弾性膜を、さらに有し、
前記圧力室は、前記第2弾性膜を挟んで前記第1弾性膜とは反対側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体機能チップ。
【請求項11】
前記第1弾性膜と前記第2弾性膜との間、および前記第1弾性膜と前記第3弾性膜との間に流体が通過可能な流路が配設されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の生体機能チップ。
【請求項12】
前記第1弾性膜と前記第2弾性膜とを連結する第1隔壁と、前記第1弾性膜と前記第3弾性膜とを連結する第2隔壁とを、対向する位置に配設している、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の生体機能チップ。
【請求項13】
前記第1弾性膜と前記第2弾性膜との間に、前記第1隔壁を挟んで流体が通過可能な流路が一対配設され、前記第1弾性膜と前記第3弾性膜との間に、前記第2隔壁を挟んで流体が通過可能な流路が一対配設されている、
ことを特徴とする請求項12に記載の生体機能チップ。
【請求項14】
前記第1弾性膜と前記第2弾性膜と前記第1隔壁とで囲われた、流体が通過可能な単一の流路が配設され、前記第1弾性膜と前記第3弾性膜と前記第2隔壁とで囲われた、流体が通過可能な単一の流路が配設されている、
ことを特徴とする請求項12に記載の生体機能チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体機能チップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な新薬開発では、臨床試験前に細胞培養又は動物実験等を行って、薬の安全性を確認している。しかしながら、培養された細胞は実際の人体細胞とは異なるため、薬の作用について適切な評価を得られないおそれがあり、また安全性が確認されていない薬を投与して行う動物実験には、動物愛護の観点から批判がある。したがって、従来とは異なる実験プラットフォームが必要とされている。
【0003】
これに対し、特許文献1には、新規な実験プラットフォームとなりうるマイクロチップ型の生体機能チップが開示されている。特許文献1の生体機能チップによれば、中央の多孔質メンブレンの上側に肺胞上皮細胞、下側に血管内皮細胞を培養し、そのメンブレンに垂直な壁面を左右から真空ポンプで駆動することで、周期的な伸縮を生み出し、培養した細胞に伸展による力学的な刺激を与え,生体内の肺胞の細胞環境を再現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/010861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の生体機能チップ自体は比較的小さいが、真空ポンプやシリンジポンプ等の周辺機器及び配管が必要であり、これらを装着することにより大型化した生体機能チップを含むユニットが、インキュベータに収まらない等の課題がある。このため、ポンプまで含めて、より小型化された生体機能チップが必要とされている。
【0006】
近年、機能性流体を利用したマイクロポンプの研究が進められている。機能性流体とは、外的刺激により特有の機能性を発現する流体の総称である。機能性流体には、磁性流体、磁気粘性流体、電気粘性流体、電界共役流体などがあり、これらを用いたアクチュエータは工業製品などに既に使用されている。
【0007】
機能性流体の一つである電界共役流体(Electro-conjugate fluid:以下、ECFという)は、直流電圧の印加によって活発な流動を発生する機能性流体である。ECFを用いたポンプは、機械的構成を必要とせずに微小な電極への電圧印加だけで流動を発生できることから、小型の流体配給システムに適した液圧源として期待されている。
【0008】
そこで本発明は、ECFを用いたマイクロポンプを内蔵した小型の生体機能チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の生体機能チップの一つは、
細胞を培養可能な面を備えた第1弾性膜と、
前記第1弾性膜を保持する保持板と、
前記保持板内に形成された圧力室と、
前記圧力室に接続された駆動路と、
前記圧力室及び前記駆動路内に注入された作動流体と、
前記駆動路内に配置された電極ユニットと、を有し、
前記電極ユニットに直流電圧が印加されたとき、前記駆動路内を作動流体が移動して前記圧力室の圧力が変化することにより、前記第1弾性膜に引っ張り応力を付与する、ことにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ECFを用いたマイクロポンプを内蔵した小型の生体機能チップを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態にかかる生体機能チップの斜視図であり、内部構造を点線で示している。
図2図2は、第1実施形態にかかる生体機能チップを分解して示す斜視図である。
図3図3は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。
図4図4は、第1駆動路内に配置された電極ユニットを模式的に示す図である。
図5A図5Aは、第1実施形態の生体機能チップの動作を模式的に示す概略断面図である。
図5B図5Bは、変形例にかかる生体機能チップの下板を示す斜視図である。
図5C図5Cは、変形例の生体機能チップの下板の上面図である。
図5D図5Dは、変形例の生体機能チップの動作を模式的に示す概略断面図である。
図6図6は、第2実施形態にかかる生体機能チップの斜視図であり、内部構造を点線で示している。
図7図7は、第2実施形態にかかる生体機能チップを分解して示す斜視図である。
図8図8は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。
図9図9は、第2実施形態の生体機能チップの動作を模式的に示す、図5Aと同様な概略断面図である。
図10図10は、第3実施形態にかかる生体機能チップの斜視図であり、内部構造を点線で示している。
図11図11は、第3実施形態にかかる生体機能チップを分解して示す斜視図である。
図12図12は、第3実施形態の生体機能チップの動作を模式的に示す概略断面図である。
図13図13は、第3実施形態の生体機能チップの動作を模式的に示す概略断面図である。
図14図14は、第4実施形態にかかる生体機能チップの斜視図であり、内部構造を点線で示している。
図15図15は、第4実施形態にかかる生体機能チップを分解して示す斜視図である。
図16図16は、第4実施形態の生体機能チップの動作を模式的に示す概略断面図である。
図17図17は、第5実施形態にかかる生体機能チップの斜視図であり、内部構造を点線で示している。
図18図18は、第5実施形態にかかる生体機能チップを分解して示す斜視図である。
図19図19は、第5実施形態の生体機能チップの動作を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる生体機能チップ10の斜視図であり、内部構造を点線で示している。図2は、生体機能チップ10を分解して示す斜視図である。図3は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。第1実施形態の生体機能チップ10は、単軸引っ張り両側ポンプ駆動タイプである。
【0014】
生体機能チップ10は、例えば縦6cm×横4cm程度のサイズを持つ薄形の略矩形板形状であって、上板11と、弾性膜(ここでは第1弾性膜とする)12と、下板13と、ポンプ基板14とから構成される。上板11と下板13とで保持板を構成する。生体機能チップ10は、半導体製造工程を使用して形成されると、微細な構成を有するにも関わらず大量生産が可能である。またその製造方法は、特定の製造方法に限定されるものではない。
【0015】
図2において、シリコンゴムなどの可撓性の素材から製作される上板11には、長手方向の両端近傍に形成された第1入口孔11p、第2入口孔11q、第1出口孔11s、第2出口孔11tが、それぞれ上下方向に貫通するように形成されている。
【0016】
また上板11の下面には、図3に示すように、矩形断面の上左溝11aと、上中溝11bと、上右溝11cが長手方向に沿って平行して延在するように形成されている。上左溝11aと上中溝11bとの間には、第1上隔壁11dが形成され、また上中溝11bと上右溝11cとの間には、第2上隔壁11eが形成されている。
【0017】
上左溝11aと、上中溝11bと、上右溝11cは、第1入口孔11pの近傍から、第1出口孔11sの近傍まで延在している。上中溝11bと第1入口孔11pとは、上側流路溝11gを介して連結されており、また上中溝11bと第1出口孔11sとは、上側流路溝11hを介して連結されている。
【0018】
さらに上板11には、第1注入孔11i、第2注入孔11j、第3注入孔11k、第4注入孔11mが、それぞれ上下方向に貫通するように形成されている。第1注入孔11iは、上左溝11aの一端に注入用溝11nを介して連結され、第2注入孔11jは、上左溝11aの他端に注入用溝11oを介して連結されている。また、第3注入孔11kは、上右溝11cの一端に注入用溝11rを介して連結され、第4注入孔11mは、上右溝11cの他端に注入用溝11uを介して連結されている。
【0019】
上左溝11aと、上中溝11bと、上右溝11cを挟んだ両側において、上板11に、第1矩形開口11vと第2矩形開口11wが上下方向に貫通して形成されている。上板11の第1矩形開口11vと第2矩形開口11wの周囲上面に、可撓性の膜部材15a,15bがそれぞれ接着され、第1矩形開口11vと第2矩形開口11wの上端を閉鎖している。
【0020】
第1矩形開口11vと第2矩形開口11wに隣接して、上板11の下面に、第1凹部111と第2凹部113とが形成されている。第1矩形開口11vと第1凹部111とは、連通溝11xにより連結され、第2矩形開口11wと第2凹部113とは、連通溝11yにより連結されている。
【0021】
次に、下板13について説明する。下板13も、シリコンゴムなどの可撓性の素材から製作される。図2において、上板11と同一の外形を有する下板13の上面には、上板11の第2入口孔11qに対応して入口側凹部13qが形成され、また第2出口孔11tに対応して、出口側凹部13tが形成されている。
【0022】
また下板13の上面には、矩形断面の下左溝13aと、下中溝13bと、下右溝13cが、それぞれ上左溝11aと、上中溝11bと、上右溝11cに対応して形成されている。さらに下左溝13aと下中溝13bとの間には、第1下隔壁13dが形成され、また下中溝13bと下右溝13cとの間には、第2下隔壁13eが形成されている。
【0023】
下中溝13bと入口側凹部13qとは、下側流路溝13gを介して連結されており、また下中溝13bと出口側凹部13tとは、下側流路溝13hを介して連結されている。
【0024】
下左溝13aと、下中溝13bと、下右溝13cを挟んだ両側において、上下に貫通するようにして第1孔131及び第1凹部132と、第2孔133及び第2凹部134とが形成されている。第1凹部132は、第1溝135を介して下左溝13aに連通し、また第2凹部134は、第2溝136を介して下右溝13cに連通している。
【0025】
次に弾性膜12について説明する。上板11と下板13とに挟持される弾性膜12には、上板11の第2入口孔11qに対応して貫通孔12qが形成され、第2出口孔11tに対応して貫通孔12tが形成されている。また、弾性膜12には、下板13の第1孔131に対応して貫通孔121が形成され、第2孔133に対応して貫通孔123が形成されている。
【0026】
弾性膜12の上中溝11bと下中溝13bとに挟持される領域は、微細な孔が多数形成された多孔質部125となっている。多孔質部125の上面には、例えば肺胞上皮細胞が培養され、その下面には血管内皮細胞が培養される。
【0027】
多孔質部125の両側には、上左溝11aおよび下左溝13aに対応する第1開口部12aと、上右溝11cおよび下右溝13cに対応する第2開口部12cとが形成されている。
【0028】
図2において、上板11の下面に弾性膜12が接着されたとき、上中溝11bの開放する下端が弾性膜12により遮蔽される。このとき、第1上隔壁11dと第2上隔壁11eが、多孔質部125を挟むようにして弾性膜12に接合され、これにより上中溝11bが密封される。また上側流路溝11g、11hの下端が弾性膜12により遮蔽される。
【0029】
上中溝11bと弾性膜12とにより囲われる空間を上側試験流路UPとし、上側流路溝11g、11hと弾性膜12により囲われる空間を、それぞれ上側連通路UP1,UP2とする。多孔質部125の上面に培養された肺胞上皮細胞は、上側試験流路UPを通過する液体に接触可能である。ここで、第1入口孔11pが、上側連通路UP1を介して上側試験流路UPに接続され、また第1出口孔11sが、上側連通路UP2を介して上側試験流路UPに接続される。
【0030】
図2において、上板11の下面に弾性膜12が接着されたとき、第1矩形開口11vと連通溝11xの下端が弾性膜12により遮蔽される。上端及び下端が遮蔽された第1矩形開口11vが、第1リザーバRV1を構成する。
【0031】
さらに、上板11の下面に弾性膜12が接着されたとき、第2矩形開口11wと連通溝11yの下端が弾性膜12により遮蔽される。上端及び下端が遮蔽された第2矩形開口11wが、第2リザーバRV2を構成する。
【0032】
さらに、上板11の下面に弾性膜12が接着されたとき、下端が遮蔽された連通溝11xが、後述する第1駆動路DP1の一部を構成し、また下端が遮蔽された連通溝11yが、後述する第2駆動路DP2の一部を構成する。
【0033】
また、上板11の下面に弾性膜12が接着されたとき、第1注入孔11iと注入用溝11nの開放する下端、および第2注入孔11jと注入用溝11oの開放する下端が弾性膜12により遮蔽され、後述する第1圧力室PC1に連通する注入路PP1、PP2がそれぞれ形成される。また、第3注入孔11kと注入用溝11rの開放する下端、および第4注入孔11mと注入用溝11uの開放する下端が弾性膜12により遮蔽され、後述する第2圧力室PC2に連通する注入路PP3,PP4が形成される。
【0034】
図2において、さらに下板13の上面に弾性膜12が接着されたとき、下中溝13bの開放する上端が弾性膜12により遮蔽される。このとき、第1上隔壁11dと第2上隔壁11eに対向する第1下隔壁13dと第2下隔壁13eが、多孔質部125を挟むようにして弾性膜12に接合され、これにより下中溝13bが密封される。また下側流路溝13g、13hの上端が弾性膜12により遮蔽される。
【0035】
下中溝13bと弾性膜12とにより囲われる空間を下側試験流路LPとし、下側流路溝13g、13hと弾性膜12により囲われる空間を、それぞれ下側連通路LP1,LP2とする。多孔質部125の下面に培養された血管内皮細胞は、下側試験流路LPを通過する液体に接触可能である。
【0036】
弾性膜12の第1開口部12aを介して、上左溝11aと下左溝13aが連通し、また上右溝11cと下右溝13cが連通する。また、第1溝135及び第2溝136の上端が、弾性膜12により遮蔽される。上左溝11aと下左溝13aとにより、第1圧力室PC1が形成され、上右溝11cと下右溝13cとにより、第2圧力室PC2が形成される。
【0037】
また、弾性膜12により遮蔽された第1溝135が、第1圧力室PC1と第1凹部132を連通するようにして、第1駆動路DP1の一部を構成し、弾性膜12により遮蔽された第2溝136が、第2圧力室PC2と第2凹部134を連通するようにして、第2駆動路DP2の一部構成する。
【0038】
弾性膜12の両面が上板11と下板13とに接着された状態で、第2入口孔11qと入口側凹部13qとは貫通孔12qを介して連通して、また第2出口孔11tと出口側凹部13tとは貫通孔12tを介して連通する。第2入口孔11qは、下側連通路LP1を介して下側試験流路LPに連通し、第2出口孔11tは、下側連通路LP2を介して下側試験流路LPに連通する。
【0039】
次に、ポンプ基板14について説明する。ポンプ基板14は、例えば上下に貫通した溝や孔を形成した板と、平板とを組み合わせた例を示しているが、1枚の板材から形成されていてもよい。後述する実施形態においても同様である。
【0040】
ポンプ基板14の上面には、蛇行した第1蛇行溝147と第2蛇行溝148とが形成されている。第1蛇行溝147及び第2蛇行溝148には、直列に配置された複数の電極ユニット16と、給電用の配線(不図示)が形成されている。ポンプ基板14の上面に下板13を接合することで、駆動路DP1,DP2が形成され、電極ユニット16は、駆動路DP1,DP2内に配置されることとなる。ECFが充填された駆動路DP1,DP2と、電極ユニット16とによりマイクロポンプを構成する。
【0041】
第1蛇行溝147の一端には凹部141が形成され、その他端に凹部142が形成されており、また第2蛇行溝148の一端には凹部143が形成され、その他端に凹部144が形成されている。
【0042】
ポンプ基板14を下板13に接合したときに、凹部141が、下板13の第1孔131及び弾性膜12の貫通孔121を介して、第1凹部111と連通するため、第1駆動路DP1の一端は、第1リザーバRV1に接続される。また、凹部142が、第1凹部132に連通するため、第1駆動路DP1の他端は、第1圧力室PC1に接続される。
【0043】
また、ポンプ基板14を下板13に接合したときに、凹部143が、下板13の第2孔133及び弾性膜12の貫通孔123を介して、第2凹部113と連通するため、第2駆動路DP2の一端は、第2リザーバRV2に接続される。また、凹部144が、第2凹部134に連通するため、第2駆動路DP2の他端は、第2圧力室PC2に接続される。
【0044】
図4は、第1駆動路DP1及び第2駆動路DP2内に配置された電極ユニット16を模式的に示す図である。電極ユニット16は、スリット電極(正電極ともいう)16aと、三角柱電極(負電極ともいう)16bとを有する。他の電極ユニット16も同様の構成を有する。第1駆動路DP1の内壁を構成するポンプ基板14、及び下板13(図4にて不図示)は、それぞれ絶縁体から形成されている。
【0045】
スリット電極16aは、駆動路DP1(またはDP2)の軸線を挟んで両側に、隙間を開けて配置されている。一方、三角柱電極16bは、尖った先端をスリット電極16aの隙間に向けている。
【0046】
直流電源から、スリット電極16aと、三角柱電極16bに対し、数十V~数十kVの高電圧である直流電圧を印加可能である。スリット電極16aは正極側に接続され、三角柱電極16bは負極側に接続される。
【0047】
図2において、ポンプ基板14、下板13、弾性膜12、および上板11を積層して接合することにより、生体機能チップ10が形成される。まず、膜部材15a、15bを接着する前の状態で、以下のようにして圧力室PC1,PC2にECFを注入する。
【0048】
図1を参照して、注入孔11iからECFを注入すると、注入されたECFは、注入路PP1を介して第1圧力室PC1を満たし、さらに第1駆動路DP1を介して第1リザーバRV1に至る。余剰のECFは、第1圧力室PC1から注入路PP2を通過して注入孔11jより外部に溢れ出る。注入が完了した後に、注入孔11iと注入孔11jを、クランプなどを用いて閉じるとともに、第1リザーバRV1の上部を膜部材15aにより遮蔽する。ただし、注入ポートを閉じる手法は以上に限られない。
【0049】
同様に、注入孔11kからECFを注入すると、注入されたECFは、注入路PP3を介して第2圧力室PC2を満たし、さらに第2駆動路DP2を介して第2リザーバRV2に至る。余剰のECFは、第2圧力室PC2から注入路PP4を通過して注入孔11mより外部に溢れ出る。注入が完了した後に、注入孔11kと注入孔11mを、クランプなどを用いて閉じるとともに、第2リザーバRV2の上部を膜部材15bにより遮蔽する。ただし、注入ポートを閉じる手法は以上に限られない。ECFとしては、例えば米国特許第6495071号に記載された流体が用いられるが、これに限られない。
【0050】
(生体機能チップの動作)
図5Aは、第1実施形態の生体機能チップ10の動作を模式的に示す概略断面図である。図5A中、駆動路DP1,DP2に単一の電極ユニット16が示されているが、実際には複数の電極ユニット16が直列に配置されている。なお、第1駆動路DP1における電極ユニット16の三角柱電極16bは、第1圧力室PC1側に配置され、また第2駆動路DP2における電極ユニット16の三角柱電極16bは、第2圧力室PC2側に配置されているものとする。各電極ユニット16は、直流電源DCに接続されており、その給電は、不図示の制御装置により統合的に制御される。
【0051】
予め、多孔質部125の上面には肺胞上皮細胞が培養され、その側面に、第1圧力室PC1の内壁の一部を構成する第1上隔壁11dと第2上隔壁11eとが密着している。また、多孔質部125の下面には血管内皮細胞が培養され、その側面に、第2圧力室PC2の内壁の一部を構成する第1下隔壁13dと第2下隔壁13eとが密着している。
【0052】
さらに第1入口孔11pから空気が注入され、注入された空気は上側連通路UP1を通って、上側試験流路UP内に進入して肺胞上皮細胞に触れる。余剰の空気は、上側試験流路UPから下流側の上側連通路UP2を通過して、第1出口孔11sから排出される。なお、空気の代わりに液体を注入してもよい。
【0053】
一方、第2入口孔11qから血液が注入され、注入された血液は下側連通路LP1を通って、下側試験流路LP内に進入して血管内皮細胞に触れる。余剰の血液は、下側試験流路LPから下流側の下側連通路LP2を通過して、第2出口孔11tから排出される。なお、上側連通路UP1及び下側連通路LP1に注入される気体または液体は、培養される細胞に合わせて適宜選択できる。
【0054】
制御装置からの信号により、駆動路DP1、DP2内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加しない場合、圧力室PC1,圧力室PC2の内部圧力は大気と同等である。このため、図5A(a)に示すように、第1上隔壁11dと第2上隔壁11e、及び第1下隔壁13dと第2下隔壁13eは、変形前の状態に維持される。
【0055】
これに対し、制御装置からの信号により、駆動路DP1、DP2内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、駆動路DP1、DP2内のECFが、図5A(b)に示すように、圧力室PC1,圧力室PC2からリザーバRV1,RV2側に向かって流動する。リザーバRV1,RV2は、膜部材15a、15bが弾性変形することで、流動してきたECFを貯留する容積を増大させることができる。
【0056】
ECFの流動により、圧力室PC1,圧力室PC2の内部圧力が低下するため、第1上隔壁11dと第2上隔壁11eが離間するように付勢され、肺胞上皮細胞の両側面が図5A(b)に示すように左右方向に引っ張られるとともに、第1下隔壁13dと第2下隔壁13eが離間するように付勢され、血管内皮細胞の両側面も図5A(b)に示すように左右方向に引っ張られる。これにより,肺胞上皮細胞および血管内皮細胞に伸展刺激を与え、生体内の肺胞の環境を再現することができる。
【0057】
電極ユニット16への給電を停止すると、膜部材15a、15bが弾性変形から復帰するため、リザーバRV1,RV2からECFが圧力室PC1,圧力室PC2に戻り、その内部圧力が元に戻る。これにより、第1上隔壁11dと第2上隔壁11e、及び第1下隔壁13dと第2下隔壁13eは、図5A(a)に示す元の位置へと復帰するため、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞も元の状態に戻る。さらに、多孔質部125の膜自身の弾性力によって上隔壁11dと11e,及び下隔壁13dと13eが元の位置へと復帰する。
【0058】
このように、電極ユニット16への給電と停電とを繰り返すことで、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞が膨縮動作を繰り返して行うため、あたかも人体の肺のごとく、肺胞内の酸素と血液中の二酸化炭素とのガス交換を、多孔質部125を介して実現することができる。この実施形態の生体機能チップ10によれば、例えば呼吸によるウイルス感染(空気感染)により引き起こされる血液の変化を再現したり、あるいは血液中に薬液を注入したときに、ガス交換の効率がどのように変化するか等、動物実験を経なくても精度良く評価することができる。
【0059】
(変形例)
特に生体内では,血管が分岐する付近で血液の流れが不均一になり,血管内皮細胞にかかるせん断力による力学的刺激も不均一になる。このような構造を含む変形例にかかる生体機能チップ10’を、以下に示す。
【0060】
図5Bは、生体機能チップ10’の下板13’を示す斜視図であり、図5Cは、下板13’の上面図である。生体機能チップ10’において、下板13’以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0061】
下板13’は、第1実施形態の下板13に対して、下中溝13b’の形状が異なる。それ以外の構成は、第1実施形態の下板13と同様であるため、共通する構成については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
図5Cにおいて、下隔壁13d、13eに挟まれた下中溝13’の中央には、下隔壁13d、13eに平行して延在する中央下隔壁13xが形成され、また第1下隔壁13dと中央下隔壁13xとの間には、第3下隔壁13yが形成され、さらに中央下隔壁13xと第2下隔壁13eとの間には、第4下隔壁13zが形成されている。第3下隔壁13yと第4下隔壁13zの長さは等しい。中央下隔壁13xは、第3下隔壁13yと第4下隔壁13zの両端から突き出すように長く形成されているが、下中溝13’の全長より短く形成されている。
【0063】
下中溝13b’は、上流側から、下隔壁13d、13eのみが配置された第1部分BV1と、下隔壁13d、13eの間に中央下隔壁13xのみが配置された第2部分BV2と、下隔壁13d、13eの間に第3下隔壁13y、中央下隔壁13x、第4下隔壁13zが配置された第3部分BV3と、下隔壁13d、13eの間に中央下隔壁13xのみが配置された第4部分BV4と、下隔壁13d、13eのみが配置された第5部分BV5に分けられる。
【0064】
隔壁に挟まれた各流路断面は、第1部分BV1から第3部分BV3に向かうにつれて小さくなり、また第3部分BV3から第5部分BV5に向かうにつれて大きくなる。したがって、第1部分BV1が、流路断面が比較的大きな人体の小動脈に相当し、第2部分BV2が、小動脈よりも流路断面が小さい細動脈に相当し、第3部分BV3が、最も流路断面が小さい毛細血管に相当し、第4部分BV4が細静脈に相当し、第4部分BV4が小静脈に相当する。これによって、例えば肺胞の毛細血管の分岐構造を再現することができる。
【0065】
図5Dは、生体機能チップ10’の動作を模式的に示す、第3部分BV3における概略断面図である。図5Dに示すように、中央下隔壁13x、第3下隔壁13y、第4下隔壁13zの上端は多孔質部125の下面に当接して接合されている。このため、上側試験流路UPに対向して、第1下隔壁13dと第3下隔壁13yとの間に微小断面通路(第1毛細
流路)が形成され、第3下隔壁13yと中央下隔壁13xとの間に微小断面通路(第2毛細流路)が形成され、中央下隔壁13xと第4下隔壁13zとの間に微小断面通路(第3毛細流路)が形成され、第4下隔壁13zと第2下隔壁13eとの間に微小断面通路(第4毛細流路)が形成される。
【0066】
生体機能チップ10’の動作は、基本的には第1実施形態と同様である。制御装置からの信号により、駆動路DP1、DP2内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加しない場合、圧力室PC1,圧力室PC2の内部圧力は大気と同等である。このため、図5D(a)に示すように、第1上隔壁11dと第2上隔壁11e、第3下隔壁13y、中央下隔壁13x、第4下隔壁13z、及び第1下隔壁13dと第2下隔壁13eは、変形前の状態に維持される。
【0067】
これに対し、制御装置からの信号により、駆動路DP1、DP2内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、駆動路DP1、DP2内のECFが、図5D(b)に示すように、圧力室PC1,圧力室PC2からリザーバRV1,RV2側に向かって流動する。リザーバRV1,RV2は、膜部材15a、15bが弾性変形することで、流動してきたECFを貯留する容積を増大させることができる。
【0068】
ECFの流動により、圧力室PC1,圧力室PC2の内部圧力が低下するため、第1上隔壁11dと第2上隔壁11eが離間するように付勢され、肺胞上皮細胞の両側面が図5D(b)に示すように左右方向に引っ張られるとともに、第1下隔壁13dと第2下隔壁13eが離間するように付勢され、多孔質部125が伸展することに応じて第3下隔壁13y、第4下隔壁13zも変形し、血管内皮細胞の両側面も図5D(b)に示すように左右方向に引っ張られる。これにより,肺胞上皮細胞および血管内皮細胞に伸展刺激を与え、生体内の肺胞の環境を再現することができる。この変形例のような毛細血管の分岐を模倣した構造は,これ以降の他の実施形態の中に,同様に組み込むことができる。
【0069】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態にかかる生体機能チップ10’の斜視図であり、内部構造を点線で示している。図7は、生体機能チップ10’を分解して示す斜視図である。図8は、内部構造を透視した状態で示す上板の斜視図である。なお、図6~8は、図1~3に対して、長手方向軸線を180度回転させた状態で示している。
【0070】
この実施形態の生体機能チップ10’は、単軸引っ張り片側ポンプ駆動タイプであり、第1実施形態に対して、共通する構成については同じ符号を付して、重複説明を省略する。
【0071】
生体機能チップ10’は、第1実施形態の第2駆動路DP2及び第2リザーバRV2に関連する構造を有しない上板11’弾性膜12’、下板13’、およびポンプ基板14’により形成されている。
【0072】
その代わり、生体機能チップ10’においては、第1圧力室PC1と第2圧力室PC2の双方に、駆動路DP1を接続している。具体的には、ポンプ基板14’において、蛇行路147から、分岐路147aと分岐路147bとに分岐させている。さらに、分岐路147aの端部に形成された凹部142aを、下板13’の第1凹部132に連通させている。また、分岐路147aの端部に形成された凹部142bを、下板13’の第2凹部134に連通させている。これにより、駆動路DP1の端部は、第1圧力室PC1と第2圧力室PC2に接続される。
【0073】
(生体機能チップの動作)
図9は、第2実施形態の生体機能チップ10’の動作を模式的に示す、図5Aと同様な概略断面図である。第1実施形態と同様に、多孔質部125の上面に肺胞上皮細胞が培養され、その下面に血管内皮細胞が培養されている。
【0074】
制御装置からの信号により、駆動路DP1内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加しない場合、圧力室PC1,圧力室PC2の内部圧力は大気と同等である。このため、図9(a)に示すように、第1上隔壁11dと第2上隔壁11e、及び第1下隔壁13dと第2下隔壁13eは、変形前の状態に維持される。
【0075】
これに対し、制御装置からの信号により、駆動路DP1内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、駆動路DP1内のECFが、図9(b)に示すように、圧力室PC1,圧力室PC2からリザーバRV1側に向かって流動する。リザーバRV1は、膜部材15aが弾性変形することで、流動してきたECFを貯留する容積を増大させることができる。
【0076】
ECFの流動により、分岐路147a、147bを介して圧力室PC1,圧力室PC2の内部圧力が低下するため、第1上隔壁11dと第2上隔壁11eが離間するように付勢され、肺胞上皮細胞の両側面が図9(b)に示すように左右方向に引っ張られるとともに、第1下隔壁13dと第2下隔壁13eが離間するように付勢され、血管内皮細胞の両側面も図5Aに示すように左右方向に引っ張られる。
【0077】
電極ユニット16への給電を停止すると、膜部材15a、15bが弾性変形から復帰するため、リザーバRV1,RV2からECFが圧力室PC1,圧力室PC2に戻り、その内部圧力が元に戻る。これにより、第1上隔壁11dと第2上隔壁11e、及び第1下隔壁13dと第2下隔壁13eは、図9(a)に示す元の位置へと復帰するため、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞も元の状態に戻る。さらに、多孔質部125の膜自身の弾性力によって上隔壁11dと11e,及び下隔壁13dと13eが元の位置へと復帰する。
【0078】
第2実施形態によれば、生体機能チップ10’の構成をより簡素化できる。
【0079】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態にかかる生体機能チップ20の斜視図であり、内部構造を点線で示している。図11は、生体機能チップ20を分解して示す斜視図である。第3実施形態の生体機能チップ20は、ダイアフラム駆動タイプである。
【0080】
生体機能チップ20は、上板21と、第1弾性膜22と、中間板23と、第2弾性膜24と、下板25と、ポンプ基板26とから構成される。上板21と、中間板23と、下板25とで保持板を構成する。
【0081】
矩形板状の上板21には、短手方向一側に円形の中央開口21aが形成され、また中央開口21aを挟んだ両側に、中央開口21aより小径の入口孔21b及び出口孔21cが形成されている。
【0082】
上板21と同じ外形を有する第1弾性膜22には、中央開口21aに対応して、微細な孔を多数備えた多孔質部22aが形成され、また入口孔21b及び出口孔21cに対応して、中間孔22b、22cが形成されている。
【0083】
第1弾性膜22と同じ外形を有する中間板23には、長孔開口23fが形成されている。長孔開口23fは、中央開口21aに対応する長孔中央部23aと、入口孔21b及び出口孔21cに対応する長孔端部23b、23cとが形成され、さらに長孔中央部23aと長孔端部23b、23cとは、それぞれ流路23d、23eにより連結されている。
【0084】
第2弾性膜24は、中間板23より大面積の矩形形状である。
【0085】
第2弾性膜24と同じ外形を有する下板25には、長孔中央部23aに対応して、下側開口25aが形成され、また長孔端部23b、23cに対応して、駆動孔25b、25cが形成されている。
【0086】
さらに下板25には、中間板23からはみ出した箇所に、中央矩形開口25gが形成され、中央矩形開口25gを挟んだ両側に端部矩形開口25h、25iが形成されている。
【0087】
下板25と同じ外形を有するポンプ基板26の上面には、蛇行した中央蛇行溝261が形成され、中央蛇行溝261の両側に、蛇行した第1蛇行溝262と第2蛇行溝263とが形成されている。中央蛇行溝261の一端は、下側開口25aに対応した位置に配置される円形凹部26aであり、その他端は、中央矩形開口25gに対応した位置に配置される矩形凹部26gである。
【0088】
また、第1蛇行溝262の一端は、駆動孔25bに対応した位置に配置される円形凹部26bであり、その他端は、端部矩形開口25hに対応した位置に配置される矩形凹部26hである。
【0089】
さらに、第2蛇行溝263の一端は、駆動孔25cに対応した位置に配置される円形凹部26cであり、その他端は、端部矩形開口25iに対応した位置に配置される矩形凹部26iである。
【0090】
中央蛇行溝261、第1蛇行溝262及び第2蛇行溝263には、直列に配置された複数の電極ユニット16と、給電用の配線(不図示)が形成されている。電極ユニット16については、図5Aに示すものと同様である。
【0091】
上板21と、第1弾性膜22と、中間板23と、第2弾性膜24と、下板25と、ポンプ基板26とを積層して接合することにより、生体機能チップ20が形成される。
【0092】
上板21と、第1弾性膜22と、中間板23とを接合したときに、多孔質部22aの上面は中央開口21a内に配設され、その下面は長孔中央部23aに面する。また、入口孔21bは、中間孔22bを介して、長孔端部23bに連通し、出口孔21cは、中間孔22cを介して、長孔端部23cに連通する。
【0093】
ここで、入口孔21bと中間孔22bとで入口ポートIPを形成し、また出口孔21cと中間孔22cとで出口ポートOPを形成する。
【0094】
さらに中間板23に対して、第2弾性膜24を上面に接着した下板25を接合したときに、流路23d、23eの開放する下端が第2弾性膜24により遮蔽され、入口ポートIPと出口ポートOPに両端を接続した内部通路ITが形成される。内部通路IT内において、長孔端部23b内が入口ポートIPに繋がる第1弁室VC1を構成し、長孔端部23c内が出口ポートOPに繋がる第2弁室VC2を構成する。
【0095】
また、下側開口25aの上端、駆動孔25b、25cの上端、及び中央矩形開口25gの上端、端部矩形開口25h、25iの上端も、第2弾性膜24により遮蔽される。ここで、第2弾性膜24により遮蔽された下側開口25a内が中央圧力室PCCを構成し、第2弾性膜24により遮蔽された駆動孔25b内が第1圧力室PC1を構成し、第2弾性膜24により遮蔽された駆動孔25c内が第2圧力室PC2を構成する。また、第2弾性膜24により遮蔽された中央矩形開口25g内が中央リザーバRVCを構成し、第2弾性膜24により遮蔽された端部矩形開口25h内が第1リザーバRV1を構成し、第2弾性膜24により遮蔽された端部矩形開口25i内が第2リザーバRV2を構成する。
【0096】
さらに、下板25に、ポンプ基板26を接合することで、中央蛇行溝261の開放した上端が閉鎖されて、中央駆動路DPCが形成され、また第1蛇行溝262及び第2蛇行溝263の開放した上端が閉鎖されて、駆動路DP1,DP2が形成される。電極ユニット16は、中央駆動路DPC及び駆動路DP1,DP2内に配置されることとなる。第2弾性膜24と、作動流体を含む駆動路DP1,DP2と、ポンプ基板26とで弁機構を構成する。
【0097】
(生体機能チップの動作)
図12、13は、第3実施形態の生体機能チップ20の動作を模式的に示す概略断面図であるが、図12図10のA-A断面を示し、図13図10のB-B断面を示している。
【0098】
図12,13中、中央駆動路DPC及び駆動路DP1,DP2に単一の電極ユニット16が示されているが、実際には複数の電極ユニット16が直列に配置されている。なお、中央駆動路DPCにおける電極ユニット16の三角柱電極16bは、中央圧力室PCC側に配置され、第1駆動路DP1における電極ユニット16の三角柱電極16bは、第1リザーバRV1側に配置され、また第2駆動路DP2における電極ユニット16の三角柱電極16bは、第2リザーバRV2側に配置されているものとする。各電極ユニット16は、直流電源DCに接続されており、その給電は、不図示の制御装置により統合的に制御される。
【0099】
ここで、多孔質部22aの上面には、肺胞上皮細胞が培養され、その下面には、血管内皮細胞が培養されているものとする。肺胞上皮細胞は、上板21の中央開口21aを介して空気に接している。
【0100】
さらに入口ポートIPから血液が注入され、注入された血液は内部通路ITを通って出口ポートOPから排出されるものとする。
【0101】
生体機能チップ20の弁動作について説明する。制御装置からの信号により、駆動路DP1、DP2内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加しない場合、第1圧力室PC1,第2圧力室PC2の内部圧力は大気と同等である。このため、図12(a)に示すように、第1圧力室PC1及び第2圧力室PC2と、第1弁室VC1及び第2弁室VC2とに面する第2弾性膜24は、変形前の状態に維持される。
【0102】
これに対し、制御装置からの信号により、駆動路DP1内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、駆動路DP1内のECFが、図12(b)に示すように、第1リザーバRV1から第1圧力室PC1側に向かって流動する。これにより第1リザーバRV1に面する第2弾性膜24が弾性変形することで、第1リザーバRV1からのECFの移動が許容される。
【0103】
ECFの流動により、第1圧力室PC1の内部圧力が増大するため、それに面する第2弾性膜24が第1弁室VC1に向かって変形し、入口ポートIPを閉鎖する。これにより、入口ポートIPを介して血液の流入が遮断される。
【0104】
また、制御装置からの信号により、駆動路DP2内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、駆動路DP2内のECFが、図12(b)に示すように、第2リザーバRV2から第2圧力室PC2側に向かって流動する。これにより第2リザーバRV2に面する第2弾性膜24が弾性変形することで、第1リザーバRV1からのECFの移動が許容される。
【0105】
ECFの流動により、第2圧力室PC2の内部圧力が増大するため、それに面する第2弾性膜24が第2弁室VC2に向かって変形し、出口ポートOPを閉鎖する。これにより、出口ポートOPを介して血液の流出が遮断される。
【0106】
駆動路DP1,DP2の電極ユニット16への給電を停止すると、圧力室PC1,圧力室PC2の内部圧力が低下する。これにより、弁室VC1,VC2に面する第2弾性膜24が弾性変形から復帰するため、入口ポートIP及び出口ポートOPが開放される。入口ポートIP及び出口ポートOPの閉鎖と開放は、独立して行える。
【0107】
次に、生体機能チップ20の膨縮動作について説明する。制御装置からの信号により、中央駆動路DPC内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加しない場合、中央圧力室PCCの内部圧力は大気と同等である。このため、図13(a)に示すように、中央圧力室PCCに面する第2弾性膜24は、変形前の状態に維持される。
【0108】
これに対し、制御装置からの信号により、中央駆動路DPC内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、中央駆動路DPC内のECFが、図13(b)に示すように、中央圧力室PCCから中央リザーバRVC側に向かって流動する。中央リザーバRVCに面する第2弾性膜24が弾性変形することで、中央リザーバRVC内に流動してきたECFを貯留するため、その容積を増大させることができる。
【0109】
このとき、駆動路DP1,DP2の電極ユニットを駆動して、図12(b)に示すように入口ポートIPと出口ポートOPを閉鎖している場合、内部通路ITの血液は流入・流出しないため、体積が一定となる。そのタイミングで、中央駆動路DPC内のECFの流動により、中央圧力室PCCの内部圧力が低下して、それに面する第2弾性膜24が下方に向かって弾性変形すると、図13(b)に示すように、第1弾性膜22の一部である多孔質部22aも下方に向かって弾性変形するため、多孔質部22aに引っ張り応力が作用することとなる。これに応じて、多孔質部22aの上面の肺胞上皮細胞が撓むように変形して伸展し、また多孔質部22aの下面の血管内皮細胞も撓むように変形して伸展する。
【0110】
中央駆動路DPCの電極ユニット16への給電を停止すると、中央圧力室PCCの内部圧力が元に戻る。これにより、第2弾性膜24及び多孔質部22aは、膜自身に作用する弾性力により、図13(a)に示す元の位置へと復帰するため、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞も元の状態に戻る。
【0111】
第3実施形態によれば、コンパクトな構成でありながら、直流電圧の印加によって、細胞に液体(または気体)を供給するタイミングを任意に変更させつつ、細胞の伸縮動作を行わせることができる。
【0112】
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態にかかる生体機能チップ30の斜視図であり、内部構造を点線で示している。図15は、生体機能チップ30を分解して示す斜視図である。第4実施形態の生体機能チップ30は、陥没式両側駆動タイプである。
【0113】
生体機能チップ30は、第3膜部材31と、上板32と、第1弾性膜33と、中間板34と、第2弾性膜35と、下板36と、ポンプ基板37とから構成される。上板32と下板36とで保持板を構成する。
【0114】
可撓性の素材から製作される矩形状の第3膜部材31には、第1入口孔31eと、第1出口孔31fと、第2入口孔31gと、第2出口孔31hと、第3入口孔31aと、第3出口孔31bと、第4入口孔31cと、第4出口孔31dとが形成されている。
【0115】
第3膜部材31と同じ外形を有する上板32には、第3入口孔31aに対応して、中間孔32aが形成され、また第3出口孔31bに対応して、中間孔32bが形成され、第4入口孔31cに対応して、中間孔32cが形成され、また第4出口孔31dに対応して、中間孔32dが形成されている。
【0116】
さらに上板32には、中央の隔壁(第2の隔壁)32i挟んで両側に対称的に、コ字状の切込溝32j、32kが配置されている。切込溝32j、32kは、隔壁32iに隣接するストレート部32m、32nをそれぞれ有する。
【0117】
切込溝32jの一端は、第1入口孔31eに対応した円形端32eであり、切込溝32jの他端は、第1出口孔31fに対応した円形端32fである。また、切込溝32kの一端は、第2入口孔31gに対応した円形端32gであり、切込溝32kの他端は、第2出口孔31hに対応した円形端32hである。
【0118】
上板32と同じ外形を有する第1弾性膜33には、中間孔32aに対応して膜孔33aが形成され、中間孔32bに対応して膜孔33bが形成され、中間孔32cに対応して膜孔33cが形成され、中間孔32dに対応して膜孔33dが形成されている。
【0119】
さらに、第1弾性膜33には、切込溝32j、32kのストレート部32m、32nに対応して、多孔質部33m、33nが形成されている。
【0120】
第1弾性膜33と同じ外形を有する中間板34には、隔壁32iに対応する隔壁(第1の隔壁)34i挟んで両側に対称的に、切込溝34j、34kが配置されている。切込溝34j、34kは、ストレート部32m、32nに対応するストレート部34m、34nを有するが、全体の形状は切込溝32j、32kとは異なっている。
【0121】
切込溝34jの一端は、膜孔33aに対応した円形端34aであり、切込溝34jの他端は、膜孔33bに対応した円形端34bである。また、切込溝34kの一端は、膜孔33cに対応した円形端34cであり、切込溝34kの他端は、膜孔33dに対応した円形端34dである。
【0122】
第2弾性膜35は、中間板34より大面積の矩形形状である。
【0123】
第2弾性膜35と同じ外形を有する下板36には、ストレート部34m、34nに対応して、第1矩形開口36sが形成され、また中間板34からはみ出した位置に、第2矩形開口36tが形成されている。
【0124】
下板36と同じ外形を有するポンプ基板37の上面には、蛇行した蛇行溝37uが形成されている。蛇行溝37uの一端は、第1矩形開口36sに対応した位置に配置される矩形凹部37sであり、その他端は、第2矩形開口36tに対応した位置に配置される矩形凹部37tである。
【0125】
蛇行溝37uには、直列に配置された複数の電極ユニット16と、給電用の配線(不図示)が形成されている。電極ユニット16については、図5Aに示すものと同様である。
【0126】
第3膜部材31と、上板32と、第1弾性膜33と、中間板34と、第2弾性膜35と、下板36と、ポンプ基板37とを積層して接合することにより、生体機能チップ30が形成される。
【0127】
第3膜部材31と、上板32と、第1弾性膜33と、中間板34とを接合したときに、第1入口孔31eは円形端32eと接続され、第1出口孔31fは円形端32fと接続され、切込溝32jの上端及び下端が遮蔽されて、第1入口孔31e及び第1出口孔31fを端部とする第1試験流路UP11が形成される。
【0128】
また第2入口孔31gは円形端32gと接続され、第2出口孔31hは円形端32hと接続され、切込溝32kの上端及び下端が遮蔽されて、第2入口孔31g及び第2出口孔31hを端部とする第2試験流路UP12が形成される。このとき、ストレート部32mは多孔質部33m上に位置し、またストレート部32nは多孔質部33n上に位置する。
【0129】
さらに、第3入口孔31aは、中間孔32a及び膜孔33aを介して円形端34aと接続され、第3出口孔31bは、中間孔32b及び膜孔33bを介して円形端34bと接続され、切込溝34jの上端及び下端が遮蔽されて、第3入口孔31a及び第3出口孔31bを端部とする第3試験流路UP21が形成される。
【0130】
また、第4入口孔31cは、中間孔32c及び膜孔33cを介して円形端34cと接続され、第4出口孔31dは、中間孔32d及び膜孔33dを介して円形端34dと接続され、切込溝34kの上端及び下端が遮蔽されて、第4入口孔31c及び第4出口孔31dを端部とする第4試験流路UP22が形成される。このとき、ストレート部34mは多孔質部33m直下に位置し、またストレート部34nは多孔質部33n直下に位置する。隔壁32iの下端及び隔壁34iの上端が、対向して第1弾性膜33に接合されているため、試験流路UP11~UP22は、流体漏れなく密閉されている。
【0131】
さらに中間板34に対して、第2弾性膜35を上面に接着した下板36を接合したときに、第1矩形開口36sの開放する上端及び第2矩形開口36tが、第2弾性膜35により遮蔽される。
【0132】
さらに、下板36にポンプ基板37を接合したときに、第1矩形開口36sは、矩形凹部37sに連通し、第2矩形開口36tは、矩形凹部37tに連通する。ここで、第2弾性膜35により遮蔽された第1矩形開口36s内が圧力室PCを構成し、第2弾性膜35により遮蔽された第2矩形開口36t内がリザーバRVを構成する。
【0133】
さらに、下板36に、ポンプ基板37を接合することで、蛇行溝37uの開放した上端が閉鎖されて、駆動路DPが形成される。電極ユニット16は、駆動路DP内に配置されることとなる。
【0134】
(生体機能チップの動作)
図16は、第4実施形態の生体機能チップ30の動作を模式的に示す概略断面図である。
【0135】
図16中、駆動路DPに単一の電極ユニット16が示されているが、実際には複数の電極ユニット16が直列に配置されている。なお、駆動路DPにおける電極ユニット16の三角柱電極16bは、圧力室PC側に配置されているものとする。各電極ユニット16は、直流電源DCに接続されており、その給電は、不図示の制御装置により統合的に制御される。
【0136】
ここで、多孔質部33m、33nの上面には、異なる肺胞上皮細胞が培養され、その下面には、異なる血管内皮細胞が培養されているものとする。
【0137】
さらに第1入口孔31e及び第2入口孔31gから空気が注入され、注入された空気は第1試験流路UP11及び第2試験流路UP12に進入して、それぞれ肺胞上皮細胞に触れる。余剰の空気は、第1試験流路UP11及び第2試験流路UP12を通過し、第1出口孔31f及び第2出口孔31hを介して排出される。
【0138】
一方、第3入口孔31a及び第4入口孔31cから血液が注入され、注入された血液は第3試験流路UP21及び第4試験流路UP22に進入して、それぞれ血管内皮細胞に触れる。余剰の血液は、第3試験流路UP21及び第4試験流路UP22を通過し、第3出口孔31b及び第4出口孔31dを介して排出される。
【0139】
次に、生体機能チップ30の伸縮動作について説明する。制御装置からの信号により、駆動路DP内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加しない場合、圧力室PCの内部圧力は大気と同等である。このため、図16(a)に示すように、第1弾性膜33及び第2弾性膜35は、変形前の状態に維持される。
【0140】
これに対し、制御装置からの信号により、駆動路DP内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、駆動路DP内のECFが、図16(b)に示すように、圧力室PCからリザーバRV側に向かって流動する。リザーバRVに面する第2弾性膜35が弾性変形することで、リザーバRV内に流動してきたECFを貯留するため、その容積を増大させることができる。
【0141】
ECFの流動により、圧力室PCの内部圧力が低下するため、それに面する第2弾性膜35が下方に向かって変形する。これにより、隔壁34i、32iが下方にシフトするため、第1弾性膜33及び第3膜部材31も陥没するように変形する。これにより、第1弾性膜33の一部である多孔質部33m、33nも下方に向かって弾性変形し、多孔質部33m、33nに引っ張り応力が作用することとなる。これに応じて、多孔質部33m、33nの上面の肺胞上皮細胞が左右に引っ張られて伸展し、また多孔質部33m、33nの下面の血管内皮細胞も左右に引っ張られて伸展する。
【0142】
中央駆動路DPCの電極ユニット16への給電を停止すると、圧力室PCの内部圧力が低下する。これにより、第2弾性膜35及び多孔質部33m、33nは、膜自身に作用する弾性力により、図16(a)に示す元の位置へと復帰するため、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞も元の状態に戻る。
【0143】
第4実施形態においては、試験流路UP11~UP22を独立して設けており、例えば2種類の肺胞上皮細胞と血管内皮細胞を同条件にて同時に評価できるため、例えば前臨床試験の効率を向上させることができる。
【0144】
(第5実施形態)
図17は、第5実施形態にかかる生体機能チップ30’の斜視図であり、内部構造を点線で示している。図18は、生体機能チップ30’を分解して示す斜視図である。第5実施形態の生体機能チップ30’は、陥没式片側ポンプ駆動タイプであり、第4実施形態に対して、共通する構成については同じ符号を付して、重複説明を省略する。
【0145】
生体機能チップ30’は、第1実施形態の第2試験流路UP12及び第4試験流路UP22に関連する構造を有しない第3膜部材31’、上板32’、第1弾性膜33’、中間板34’、第2弾性膜35、下板36、およびポンプ基板37により形成されている。
【0146】
具体的には、第3膜部材31’、上板32’、第1弾性膜33’、及び中間板34’は、第1実施形態に対して短手方向の中間位置で切断された構成を有する。第2弾性膜35、下板36、およびポンプ基板37は、第1実施形態と共通の構成を有する。
【0147】
(生体機能チップの動作)
図19は、第5実施形態の生体機能チップ30’の動作を模式的に示す概略断面図である。
【0148】
ここで、多孔質部33mの上面には、肺胞上皮細胞が培養され、その下面には、血管内皮細胞が培養されているものとする。
【0149】
さらに第1入口孔31eから空気が注入され、注入された空気は第1試験流路UP11に進入して肺胞上皮細胞に触れる。余剰の空気は、第1試験流路UP11を通過し、第1出口孔31fから排出される。
【0150】
一方、第3入口孔31aから血液が注入され、注入された血液は第3試験流路UP21に進入して血管内皮細胞に触れる。余剰の血液は、第3試験流路UP21を通過し、第3出口孔31bを介して排出される。
【0151】
次に、生体機能チップ30’の膨縮動作について説明する。制御装置からの信号により、駆動路DP内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加しない場合、図19(a)に示すように、圧力室PCの内部圧力は大気と同等である。このため、第1弾性膜33’及び第2弾性膜35は、変形前の状態に維持される。
【0152】
これに対し、制御装置からの信号により、駆動路DP内の電極ユニット16のスリット電極16aと、三角柱電極16bとに対して直流電圧を印加すると、駆動路DP2内のECFが、図19(b)に示すように、圧力室PCからリザーバRV側に向かって流動する。リザーバRVに面する第2弾性膜35が弾性変形することで、リザーバRV内に流動してきたECFを貯留するため、その容積を増大させることができる。
【0153】
ECFの流動により、圧力室PCの内部圧力が低下するため、それに面する第2弾性膜35が下方に向かって変形する。これにより、隔壁34i、32iが下方にシフトするため、第1弾性膜33’及び第3膜部材31も陥没するように変形する。これにより、第1弾性膜33’の一部である多孔質部33mも下方に向かって弾性変形し、多孔質部33mに引っ張り応力が作用することとなる。これに応じて、多孔質部33mの上面の肺胞上皮細胞が左右に引っ張られて伸展し、また多孔質部33mの下面の血管内皮細胞も左右に引っ張られて伸展する。
【0154】
中央駆動路DPCの電極ユニット16への給電を停止すると、圧力室PCの内部圧力が低下する。これにより、第2弾性膜35及び多孔質部33mは、膜自身に作用する弾性力により、図19(a)に示す元の位置へと復帰するため、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞も元の状態に戻る。
【0155】
第5実施形態によれば、生体機能チップ30’の構成をより簡素化できる。
【符号の説明】
【0156】
10、10’、20,30,30’ 生体機能チップ
11,11’ 上板
12,12’ 弾性膜
13,13’ 下板
14,14’ ポンプ基板
16 電極ユニット
21 上板
22 第1弾性膜
23 中間板
24 第2弾性膜
25 下板25
26 ポンプ基板
31,31’ 第3膜部材
32,32’ 上板
33,33’ 第1弾性膜
34,34’ 中間板
35 第2弾性膜
36 下板
37 ポンプ基板
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19