(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029040
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】筆記リフィール群及び筆記具群
(51)【国際特許分類】
B43K 7/02 20060101AFI20230224BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B43K7/02
B43K7/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135108
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 敬幸
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】同一色相のインクが収容された複数の筆記リフィール間において、単位筆記距離あたりのインク消費量の相異を、容易に識別可能にした筆記リフィール群及びこれを軸筒内に収容した筆記具群を提供する。
【解決手段】透明または半透明のインク収容管2の一端部に、筆記部3が取り付けられ、該インク収容管2の管内にインク6が収容された筆記リフィール1であって、該筆記リフィール1の構成部品が同一であり、かつ該筆記リフィール1の該インク収容管2の外径と該筆記リフィール1の全長が同一である筆記リフィール群において、該インク収容管2には、同一色相のインクが収容されると共に、該筆記リフィール1の単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、該インク収容管2の色差(明度)が異なるものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明のインク収容管の一端部に、筆記部もしくは筆記部を支持する継手部材が取り付けられ、前記インク収容管の管内にインクが収容された筆記リフィールであつて、前記筆記リフィールの構成部品が同一であり、かつ前記筆記リフィールの外径と筆記リフィールの全長が同一である筆記リフィール群において、
前記インク収容管には、同一色相のインクが収容されると共に、前記筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、各インク収容管の色差が異なることを特徴とする筆記リフィール群。
【請求項2】
前記インク収容管には、同一色相の黒色のインクが収容されると共に、前記筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、各インク収容管外面からの明度(L*)の差が[インク収容管の肉厚差(mm)×10]以上を満たす請求項1記載の筆記リフィール群。
【請求項3】
前記インク収容管の他端部側における前記インクの後端部に逆流防止体が収容され、前記逆流防止体の粘度が、インク収容管の内径で異なる請求項1又は2に記載の筆記リフィール群。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の筆記リフィールを軸筒に収容した筆記具であって、軸筒に収容された前記筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、前記軸筒の肉厚が異なることを特徴する筆記具群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同一色相のインクが収容された複数の筆記リフィール間において、それぞれのインク消費量の相異を容易に識別可能にした筆記リフィール群及び筆記具群に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばボールペン筆記具に用いられる筆記リフィール(ボールペンリフィール)は、一般にインク収容管の一端部(前端部)に、筆記部としてのボールペンチップもしくはボールペンチップを支持する継手部材が圧入されて取り付けられる。
そして、インク収容管には、成形の容易性とインク量の視認性を確保するために、透明もしくは半透明の樹脂素材、例えばポリプロピレンが用いられている。
【0003】
前記したポリプロピレンなどの樹脂素材により成形される一般的なインク収容管としては、例えば特許文献1の段落[0021]に記載されているように、外径が3mm程度、内径が1.8mm程度のものを用いる場合が多い。
この例に示すインク収容管によると、比較的肉厚のあるタイプであるために、インク収容管内に貯留されるインク量には制限がある。その結果、十分な筆記距離を得ることができないという実用上の問題点を有している。
【0004】
そこで、インク収容管の外径は前記した従来のものとほぼ同程度になされ、かつインク収容部の内径を拡径した薄肉の筆記リフィールについて、本出願人において提案をしており、これは特許文献2及び3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-198291号公報
【特許文献2】国際公開WO2017/061570号公報
【特許文献3】国際公開WO2018/180679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記したインク収容管を用いたこの種の筆記リフィールにおいては、筆記部に抱持されるボール径が異なるものが用意されており、このボール径の相異により、それぞれの筆記リフィールは一定の筆記距離に対するインク消費量は異なるものとなる。
しかし、これらの筆記リフィールにおいては、筆記部の先端部を除き、外観は略同一サイズに形成されている。
【0007】
したがって、単位筆記距離あたりのインク消費量が異なる複数の筆記リフィールを有する筆記リフィール群から、所望とする筆記リフィールを選択するには、微細な筆記先端部を視認により識別するか、インク収容管等の表面に小さく記載された文字情報を判読することで、識別するなどの手段を選択せざるを得ない。
しかしながら、一般のユーザが微細な筆記先端部(例えばボール径)を視認することで、所望とする筆記リフィールであるか否かを判別することはほぼ困難である。また、インク収容管に記載された文字情報を判読するにしても、小さな文字情報であるが故に読み違いなどが生じ易く、所望とする筆記リフィールを正確に選択することは、現実には不可能である。
【0008】
そこで、この発明は、同一色相のインクが収容された複数の筆記リフィール間において、単位筆記距離にあたりのインク消費量の相異を、容易に識別可能にした筆記リフィール群及びこれを軸筒内に収容した筆記具群を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る筆記リフィール群は、透明または半透明のインク収容管の一端部に、筆記部もしくは筆記部を支持する継手部材が取り付けられ、前記インク収容管の管内にインクが収容された筆記リフィールであつて、前記筆記リフィールの構成部品が同一であり、かつ前記筆記リフィールのインク収容管の外径と筆記リフィールの全長が同一である筆記リフィール群において、前記インク収容管には、同一色相のインクが収容されると共に、前記筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、各インク収容管の色差が異なることを特徴とする。
【0010】
この場合、一つの好ましい形態においては、前記インク収容管には、油性や水性等の同一品種かつ黒色のインクが収容されると共に、前記筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、各インク収容管外面からの明度(L*)の差が[インク収容管の肉厚差(mm)×10]以上であることを満たすように設定される。
【0011】
さらに好ましい形態においては、前記インク収容管の他端部側における前記インクの後端部に逆流防止体が収容され、前記逆流防止体の粘度が、インク収容管の内径で異なるように選択される。
【0012】
そして、この発明に係る筆記具群は、前記した筆記リフィールを軸筒に収容した複数の筆記具よりなり、軸筒に収容された前記筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、前記軸筒の肉厚が異なるように組み合わされる。
【発明の効果】
【0013】
前記したこの発明に係る筆記リフィール群によると、インク収容管には、同一品種かつ同一色相のインクが収容されると共に、筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、各インク収容管の色差が異なるので、所望とする筆記リフィールを容易に選択することができる。
【0014】
また、この発明に係る筆記具群は、前記した筆記リフィール群を構成する各筆記リフィールを軸筒に収容した複数の筆記具よりなり、筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、前記軸筒の肉厚が異なるように組み合わされる。
したがって、軸筒の例えば透過率などが変わると共に、軸筒に収容された各インク収容管の色差(明度)も異なるので、所望とする筆記具を容易に選択することができる。
そして、インク収容管は薄肉に成形されることにより、樹脂量の低減が図れ、環境負荷を少なくすることに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係る筆記リフィール群の外観構成を示し、(A)~(C)は、単位筆記距離あたりのインク消費量がそれぞれ異なるボールペンリフィールを示す。
【
図2】(A)~(C)は、
図1の(A)~(C)に示す各ボールペンリフィールの軸方向に沿った断面図である。
【
図3】
図1に示すボールペンリフィールにおけるインク収容管に装着する尾栓の単品構成を示し、(A)は前端部側から見た斜視図、(B)は尾端部側から見た斜視図、(C)は正面図、(D)は平面図である。
【
図4】
図1に示すボールペンリフィールの一つを軸筒に収容した状態の筆記具を示した斜視図である。
【
図5】
図4に示す筆記具において、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は軸方向に沿った断面図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る筆記リフィール群及び筆記具群について、図に示した実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
<ボールペンリフィール(筆記リフィール群)>
先ず、
図1(A)~(C)及び
図2(A)~(C)は、筆記リフィール群を構成するボールペンリフィールの例を示しており、
図1と
図2における同じアルファベット符号で示したものは、同一のボールペンリフィールを外観図及び断面図で示している。
このボールペンリフィール1は、それぞれインク収容管2と、このインク収容管2の一端部(前端部)に、筆記部としてのボールペンチップ3を支持した継手部材4が圧入されて取り付けられる。そして、インク収容管2の他端部(後端部)には、尾栓5が嵌め込まれて取り付けられる。
【0018】
また、インク収容管2内には、継手部材4の直後から後端部側に向かってインク6が収容されており、前記インク6の後部に接した状態で、グリース状のインク逆流防止体7が前記尾栓5側に向かって収容されている。
なお、この実施の形態におけるインク収容管2の一端部には、予めボールペンチップ3が装着された継手部材4が圧入されて取り付けられるが、前記した継手部材4を介することなく、インク収容管2の前端部に直接ボールペンチップ3を取り付けたボールペンリフィール1も、好適に採用することができる。
【0019】
以下においては説明の便宜上、
図1及び
図2に(A),(B),(C)でそれぞれ示した各ボールペンリフィール1を、それぞれ第1リフィール、第2リフィール、第3リフィールと呼ぶことにする。
第1~第3リフィールにおいて、それぞれのボールペンチップ3の先端部に備えられた筆記ボール3a,3b,3cは、そのボール径が1.0mm、0.7mm、0.5mmになされており、これによりそれぞれ異なるインク流出量に設定されたボールペンチップ3が用いられている。
なお、前記各筆記ボール3a,3b,3cは、各ボールペンチップ3内に収容されたコイルスプリング3dによって、先端部方向に押圧されている。これにより未筆記時においては、筆記ボール3a,3b,3cが、ボールペンチップ3の先端部を閉塞するように作用する。
【0020】
また、第1~第3リフィールにおけるインク収容管2の中央部の内径は、それぞれ異なり、
図2に示すように内径がd1>d2>d3の関係になされている。これにより、第1~第3リフィール1は、同一の筆記距離におけるインク収容管2の長さ方向でのインク6の減り量は、ほぼ同一となるように設定されている。
なお、インク収容管2内のインク6の後部には、インク逆流防止体が充填されているが、このインク逆流防止体の粘度は、インク収容管2の内径(d1,d2,d3)に応じて粘度が異なるものとなっている。その具体例は、後述する実施例1及び実施例2に示されている。インク逆流防止体の粘度は、インク収容管の中央部の内径に比例して低下させることが好ましい。
【0021】
第1~第3リフィールのインク収容管2は、透明もしくは半透明のポリプロピレン樹脂により直線状に成形されており、その外径は第1~第3リフィール1のいずれにおいても同一になされ、さらに第1~第3リフィール1の全長も、互いに同一寸法に形成されている。同一形状とすることで、第1~第3のリフィールは、共通した同一の筆記具の軸筒に収容することができる。
【0022】
図2に示すように、第1リフィールのインク収容管2においては、その内径d1が大きいために、その両端部には軸中心部に向かって肉厚状になされた接続部2a,2bが形成されている。
また、第2リフィールのインク収容管2においては、その内径は第1リフィールのインク収容管2の内径よりもわずかに小さいd2になされているので、その両端部には軸中心部に向かって厚みの少ない接続部2a,2bが形成されている。
さらに、第3リフィールのインク収容管2においては、その両端の接続部2a,2bの内径は、中央部の内径と同一のd3になされ、ストレート状に成形されている。
この構成により、第1~第3リフィールのインク収容管2の各端部に形成される接続部2a,2bの内径寸法は同一になされている。これにより、インク収容管2はいずれも前後の方向性を無しにして、共通の継手部材4と尾栓5を、それぞれ嵌合させることができる。
【0023】
そして、前記した継手部材4は、
図2に断面図で示されているように、前半部が外径をわずかに縮小するテーパ状になされた円筒体を構成し、前方に向かってボールペンチップ3の挿入孔4aが形成されている。また、後方に向かって環状溝4bが形成されており、その中央の軸部には、ボールペンチップ3へのインク導入孔4cが開口されている。
前記した環状溝4bに対して、インク収容管2の一端部(前端部)が挿入されることで、インク収容管2の接続部2aは、その内径側と外径側が、継手部材4の環状溝4bの内側と外側に対向する各面の間に圧入されて嵌合されることになる。これにより、その取り付け強度を増強させることができる。
【0024】
図3は、第1~第3リフィール1の他端部(後端部)に取り付けられる尾栓5の単品構成を示している。この尾栓5は前半部が円筒部5aを形成して、その軸孔が通気孔5bを構成しており、中央部には径を拡大する段部5cが形成されている。そして段部5cにより径が拡大された後半部には、周に沿って3本に分割された脚部5dが、軸方向に沿って等しい長さで形成されており、各脚部5dの尾端部には周の外側に向かって傾斜した円弧状の傾斜面5eがそれぞれ形成されている。なおこの尾栓5は、樹脂素材により形成されていることが望ましい。
【0025】
前記尾栓5は、円筒部5aをインク収容管2の後端部側の接続部2bに挿入することで、インク収容管2に取り付けられる。この場合、段部5cがインク収容管2の後端部に接することで、インク収容管2に対する尾栓5の位置決めが果たされる。この状態で尾栓5に施された通気孔5bは、インク収容管2内のインクの減少にしたがって空気交換を果たすように機能する。
なお、尾栓5の脚部5dとその尾端部に形成された傾斜面5eは、後述する軸筒にボールペンリフィール1を収容した場合において、強い筆記の荷重や落下衝撃を受けて脚部5dが内側に撓むように作用する可撓性を有している。
【0026】
前記した第1~第3リフィール1においては、後で説明するように黒色等の無彩色のインクを用いた場合、インク消費量の大きいもの程、インク収容管2からの色相が異なる(明度が低い)ものとなっている。
このように色相を階調変化させることにより、同一品種の軸筒に配設されるボールペンリフィール群において、微小なボールペンチップの先端や尾栓を外して後端からインク収容管の断面を確認せずとも容易にボール径の違いを感覚的に判断して瞬時に取り上げる(選択する)ことができる。
【0027】
なお、前記した第1~第3リフィール1は、目が不自由で色相の見分けが付きにくいユーザの利用を想定して、
図1に示すようにインク逆流防止体7と尾栓5との間のインク収容管2内に、刻印2cを施すことで、第1~第3リフィールの識別をより可能にしている。
すなわち、この実施の形態においては、第1リフィールには軸に直交するように2本の刻印2cが施され、第2リフィールには軸に直交するように1本の刻印2cが施される。そして、第3リフィールには刻印は施されていない。
【0028】
<リフィール群の明度(色相)>
次に、前記したボールペンリフィール群を構成する各リフィールを、単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて分けて、それぞれの明度(色相)を含む諸特性について測定をした。
【0029】
明度の測定は、JIS P3201に準拠した白上質紙に、それぞれ同一のボール径を有するリフィール5本を貼り付け、カラーメーター(SC-P、スガ試験機社製)等の装置を用い、インク収容管等の部材の表面から、明度値L*を測定した。
なお、上記実施形態でのカラーメーター(SC-P、スガ試験機社製)を用いた際の測定条件は以下の通りである。
〔光学条件〕反射測定;拡散光照明 8°受光(JIS Z 8722条件cに準拠)トラップ:de:8°(正反射成分含まない)、測定孔:φ15mm
〔光源視野〕D65/2
〔表色系〕L*a*b*c*
〔安定性〕ΔE*ab <0.01
〔光源〕VI-LED (高演色白色LED)
【0030】
〔実施例1〕
単位筆記距離あたりのインク消費量が異なる2種類の筆記リフィール(ボールペンリフィール)にて、各5本の測定を行った結果を表1に示す。インク消費量と逆流防止体の粘度、明度の測定値は平均値である。
【0031】
【0032】
〔実施例2〕
単位筆記距離あたりのインク消費量が異なる3種類の筆記リフィール(ボールペンリフィール)にて、各5本の測定を行った。結果を表2に示す。インク消費量と逆流防止体の粘度、明度の測定値は平均値である。
なお、この実施例に示す各ボールペンリフィールは、
図1及び
図2に基づいて説明した第1~第3リフィールに相当するものである。
【0033】
【0034】
実施例1及び実施例2共に、以下の組成による同一品種かつ同一色相(黒色)のインクを用いた。
カーボンブラック#25(三菱化成製):10重量%
ポリビニルブチラール(BL-S、積水化学製):5重量%
テルペンフェノール樹脂(YP90L、ヤスハラケミカル製):8重量%
ポリプロピレングリコール(平均分子量:4000):5重量%
リン酸エステル(プライサーフA208B):1.47重量%
アミン系化合物(ポリオキシエチレンアルキルアミン:AMIET105):1.03重量%
3-メトキシブタノール:5重量%
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール:64.5重量%
逆流防止体の粘度は、25℃環境下、せん断速度3.8/sでの測定値である。
【0035】
前記表1及び表2より、各筆記リフィールの単位筆記距離あたりのインク消費量、すなわちこの実施の形態においては、インク収容管2の肉厚に応じて、明度(L*)が変化することが認められる。
そして、各実施例共に、明度値の差がインク収容管2の肉厚差(mm)×10以上を満たす範囲に収まり、相対的な数値に差があり、目視においても階調変化が明確に識別可能であることが確認された。
【0036】
なお、前記した測定結果は、インク組成が同一品種で色相が黒色(無彩色)のインクを用いた結果を示しているが、色相が例えば赤、緑、青などのカラーインクを用いた場合においては、同一品種かつ同一色相のインクの範囲においては、インク収容管の肉厚に応じて、同様に色差が変化することが認められる。これにより、色差の違いから所望とする筆記リフィールを容易に選択可能であることが確認された。
【0037】
<インク組成>
この発明に係る筆記リフィール群の各ボールペンリフィールに用いられる好ましいインク組成として、次に示すものを挙げることができる。
【0038】
前記各ボールペンリフィールに用いるインクは、主溶剤(全溶剤の50重量%以上)としては、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上のアルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を用いた黒色のインクである。このように蒸気圧の高い特定の溶剤を使用することで、筆跡の滑らかな筆感に優れた油性ボールペンを提供することを可能にする。インク組成物はこのように蒸気圧の高い特定の溶剤を使用した場合に特有の問題を解決することを目的として開発されたものである。主溶剤とは全溶剤の50重量%以上含まれることをいう。
【0039】
具体的にアルコール類としては、炭素数が2以上の脂肪族アルコールであり、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコールやその他多種の高級アルコール等が挙げられる。
【0040】
また、多価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、3-メチル-1,3-ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の分子内に2個以上の炭素、2個以上の水酸基を有する多価アルコールが挙げられる。
【0041】
グリコールエーテルとしては、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0042】
以上挙げた溶剤の中で特に好ましいのは、炭素数2~7のグリコールエーテルが特に効果が解りやすい。また、安全性及び経口毒性等の点から好ましくはエチレングリコール誘導体等以外の有機溶剤を使用した方が好ましい。
また、以上に挙げた溶剤の他にリン酸エステルとアミン系化合物の混合物との溶解性や発揮性能を妨げない範囲で以下に挙げる溶剤を添加することも可能である。
それらの例として、多価アルコール類誘導体があり、ソルビタン脂肪酸系、ポリグリセリン高級脂肪酸系、ショ糖脂肪酸系、プロピレングリコール脂肪酸系等の誘導体も挙げられる。
【0043】
エステル類の溶剤としてはたとえば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシブチルアセテート等様々なエステルが挙げられる。
【0044】
また、分子内に水酸基を持たない溶剤ジエーテルやジエステルは具体的には、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0045】
着色剤(色材)としては、限定されないが、顔料あるいは顔料と染料併用の形で使用することが好ましい。顔料を用いることで堅牢性に優れる効果がある。顔料としてはカーボンブラックやフタロシアニン系やモノアゾ、ジスアゾ、縮合アゾ、キレートアゾ等の不溶性アゾ系と難溶性アゾ、可溶性アゾ等の溶性アゾを含むアゾ系やキナクリドン系やジケトピロロピロール系やスレン系やジオキサジン系及びイソインドリノン系等の有機顔料を使用することができる。
【0046】
特にカーボンブラックに関しては、なるべく比表面積の小さなものを使用すべきであり、BET法にて測定した値で100m2/g以下のものが好ましい。具体的には、三菱化成製カーボンブラックとして#33、#32、#30、#25、CF9等があり、キャボット社製カーボンブラックとしてREGAL(400R,500R,330R,300R),ELFTEX(8,12),STERLING R等があり、デグサ社製としてPrintex(45,40,300,30,3,35,25,200,A,G),SB(250,200)等があり、コロンビアン社製としてRAVEN(1040,1035,1020,1000,890,890H,850,500,450,420,410,H20,22,16,14)等がある。
【0047】
また、顔料としては、用いる有機溶剤に溶解しにくく分散後の平均粒径が30nm~700nmとなるものが好ましい。顔料の配合量は、インク組成物全量に対し、0.5~25重量%、好ましくは0.5~20重量%までの範囲で必要に応じて配合することができる。
【0048】
使用できる顔料は、単独又は2種以上の混合で使用することができる。また、必要に応じて無機顔料を用いた分散体や染料等も分散安定性に悪影響を与えない程度で添加することができる。染料を用いると発色性に優れる効果がある。さらに、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル、アクリルニトリル、オレフィン系モノマーを重合して得られる樹脂エマルションや、インク中では膨潤して不定形となる中空樹脂エマルション、又は、これらのエマルション自身を着色剤で染着して得られる染着樹脂粒子からなる有機多色顔料等が挙げられる。
【0049】
本実施形態に使用する色材が顔料である場合は、顔料分散インク組成物を製造するには、従来から公知の種々の方法が採用できる。たとえば、上記各成分を配合し、ディゾルバー等の撹拌機により混合撹拌することによって、また、ボールミルやロールミル、ビーズミル、サンドミル、ピンミル等によって混合粉砕した後、遠心分離や濾過によって顔料の粗大粒子、及び未溶解物、混入固形物を取り除くことによって容易に得ることができる。
【0050】
これらの顔料に対して併用する染料としては分散系を破壊しないものであれば特に制限なく使用することができる。それらの染料としては、通常の染料インク組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料等や通常の顔料インク組成物に用いられる無機及び有機顔料の中から任意のものを使用することができる。その配合量は、組成物全量当たり1~50重量%の範囲で選ばれる。
【0051】
油性インク組成物とした場合には樹脂を使用する。油性インク組成物に用いる樹脂は、粘度調整やペン先での摩耗改良などを目的として添加されるが、顔料を含む場合にはその分散剤としても使用される。このような樹脂としては、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂がある。
【0052】
これらの樹脂の配合量としては、1~30重量%がよく、より好ましくは1~20重量%である。その配合量が1%重量未満であると粘度調整やペン先での摩耗が困難となり、30重量%超だと樹脂以外の原材料が配合できなくなったり、書き味に悪影響を及ぼすことがある。
【0053】
好ましい実施態様としてインク組成物の色材に顔料を使用する場合、用いる分散剤としては上記に挙げたような樹脂の中から顔料を分散できるものを選択して使用することができ、活性剤やオリゴマーでも目的にあえばどのようなものでも種類を問わない。具体的な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン-マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン-アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。
【0054】
インクを油性インク組成物とした場合には、リン酸エステル中和物を含む。リン酸エステル中和物はボール表面のインク凝着物を取り除きやすくする効果を奏し、それによって書き出し時の筆記カスレを抑制する効果を与え、かつ本実施形態ではポリプロピレングリコールと協働して短時間あるいは長時間の書き出し時の筆記カスレを抑制し、さらに低速で筆記した時のインク転写性を潤滑にする効果を与えるものである。
【0055】
使用されるリン酸エステルは、通常、リン酸モノエステル、ジエステル及び微量のトリエステルからなるものであり、エステル構造も芳香族や脂肪族の2系統がある界面活性剤が主である。リン酸エステル構造を形成し得るアルキル基に関しては、天然及び合成の高級アルコール等から得られるアルキル基を導入している。炭素数10~20のアルキル基と0~50のポリオキシエチレン鎖を有するリン酸エステルが使用される。特に炭素数15~20のアルキル基と0~4個のポリオキシエチレン鎖を有するようなリン酸エステルが好適である。また、中和するためのアミン系物質としてはアルカノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、両性界面活性剤、脂肪アミン系物質などのアミン系化合物で中和することが望ましい。
【0056】
これらの添加量に関しては、中和による混合物で、インク組成物全量に対し、0.01重量%~15重量%を配合することが好ましいが、より好適には0.1~10重量%である。また、特に好適には0.1~8重量%である。これらは0.01重量%未満だとボール表面のインク凝着物を取り除きやすくする効果が劣り、また15重量%を超えて配合すると描線品位としてボールからはじかれ過ぎて描線割れが生じやすくなる等の不具合を起こしやすくなってしまう場合がある。
【0057】
インクを油性インク組成物とした場合には、ポリプロピレングリコールを添加することが望ましい。添加により、書き出し時のカスレを生じにくくする効果がある。この現象は金属ボールに対してインクのハジキにより得られるカスレ抑制にさらにインク被膜を形成しにくくすることにより、1~20分の短時間でのカスレも抑制することも可能とする。
【0058】
ポリプロピレングリコールの分子量は、できるだけ大きい方が添加量を少なくできて描線乾燥性が高くできるので好ましい。分子量(計算分子量)1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、4,000以上がさらに好ましい。
【0059】
ポリプロピレングリコールの添加量は0.01重量%~10重量%が好適であり、特に好ましくは0.1~10重量%である。この範囲において顔料を使用した乾固しやすいインクは金属ボール上でインクの皮膜形成ができにくくなるため、書き出し時のカスレを生じにくくする効果が大きい。
【0060】
この添加量の範囲外として0.1重量%未満だとその効果が乏しく、ボールが回転しなくなる場合があり、また10重量%を越えると使用する原材料にもよるが、インク中の不揮発成分が多くなることで描線の乾燥性を低下させたり、裏抜けしやすくなってしまう場合がある。
【0061】
さらに、本実施形態では必要に応じて、インクに悪影響を及ぼさず相溶することができる防錆剤、防黴剤、界面活性剤、潤滑剤及び湿潤剤等を配合することができる。特に脂肪酸などは、潤滑剤として好適に使用できる。また、乾燥抑制用添加剤として製品特性上、悪影響を及ぼさない範囲で主溶剤に相溶する不揮発性溶剤等も配合することができる。
【0062】
<筆記具群(ボールペン筆記具)>
次に、
図4及び
図5は、前記したボールペンリフィール群のうちの1つの筆記リフィール(ボールペンリフィール)1を軸筒内に収容して、筆記具(ボールペン筆記具)を構成した例を示しており、この例においては、
図1(A)に示した第1リフィール1が用いられている。
図4及び
図5に示す筆記具11を構成する軸筒12は、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂のシート材を成形することにより構成される。すなわちシート材の両面に複数の凹部及び凸部による繰り返されるパターンが施され、全体が筒状となるようにシート材の両端を溶着することで軸筒12が形成される。そして、軸筒12の両端部には、樹脂素材により円筒状に成形された前継手13と、後継手14が取り付けられる。
【0063】
前記軸筒12は、他の製造手段として筒状に形成されたシート材に対して、この筒と平行な軸線を有して筒の中と外に配置され、かつ所定の凹凸を有する2つのローラで強く挟み込みながら折り目を付けることによって形成される。さらに軸筒12は、ブロー成形により形成されてもよい。
形成された軸筒12の肉厚は、1mm未満が好ましく、例えば0.35mmの肉厚も実用化される。また軸筒12はシート材から製造されることから、軸筒2の肉厚は全体としてほぼ均一である。
なお、軸筒12と、前継手13及び後継手14との接続は、例えば接着または溶着により行われる。
【0064】
前記した軸筒12によると、これと同一の肉厚で凹凸なく円筒形に形成した軸筒と比較して、ユーザが把持する際に加わる中心軸線方向に向かう力に対して、変形し難く剛性が高い。また、軸筒12は把持する際に加わる中心軸線方向に向かう力に対して、これと同一の剛性を有するように凹凸なく円筒形に形成した軸筒と比較して、肉厚が薄く軽量である。さらに軸筒12は多角形の立体的な単位パターンの組み合わせからなる規則的な凹凸形状の外周面を有することから、装飾効果もある。
【0065】
前記軸筒12に取り付けられた前継手13を利用して、円錐状の口先部15がねじ結合により着脱可能に取り付けられている。なお、この口先部15にはその先端部に開口15aが施されており、前記先端開口15aより後述するノック操作によりボールペンリフィール1の筆記部(ボールペンチップ)3が出没される。
また、軸筒12に取り付けられた後継手14を利用して、筒状部材16が取り付けられており、この筒状部材16にはクリップ16aが一体に形成されている。そして、筒状部材16の後端部には、ノック操作部17が突出した状態で配置されている。
【0066】
図5(C)は、この筆記具11を軸方向に沿った断面図で示しており、前記した口先部15内には、コイル状の戻しばね18が装着されている。したがって、前継手13から口先部15を取り外し、ボールペンリフィール1を軸筒12内に収容して、口先部15を前継手13に螺合することで、戻しばね18がボールペンリフィール1の継手部材4に当接する。
これにより、ボールペンリフィール1には戻しばね18によって、軸筒12内を後端する方向に付勢力が与えられる。
【0067】
また、前記した筒状部材16内には、回転子19が装着されており、この回転子19の前端部には、底部に向かって内径を小さくする斜面を有する円錐台状の凹部19aが形成されており、この凹部19a内にボールペンリフィール1の尾栓5が挿入された状態で配置されている。
一方、前記回転子19の後部に延びる軸体を覆うようにして前記したノック操作部17が配置されており、回転子19及びノック操作部17は、ボールペンリフィール1を介した前記戻しばね18の付勢力により、後退した位置に配置されている。
したがって、前記ノック操作部17をノック操作することで、回転子19とボールペンリフィール1は、戻しばね18の付勢力に抗して、軸方向に前進移動することになる。
【0068】
前記した筒状部材16内には、軸方向に沿った複数のリブによるカム部材が形成されており、このカム部材に当接する前記回転子19と共に、周知のカーンノック機構と称する回転繰り出し機構が形成されている。
これにより、ノック操作部17のノック操作のたびに、回転子19と共にボールペンリフィール1は前進して、筆記部としてのボールペンチップ3が、先端開口15aから突出した筆記可能状態と、回転子19と共にボールペンリフィール1が後退して、ボールペンチップ3が先端開口15a内に収容される状態とが繰り返される。
【0069】
なお、ボールペンチップ3が、口先部15の先端開口15aから突出した筆記可能状態においては、尾栓5が回転子19の円錐台状の凹部19aに挿入されている。この状態で筆記荷重が加わることにより、尾栓5の脚部5dに形成された傾斜面5eが、回転子19に施された円錐台状の凹部19aの斜面に当接し、各脚部5dを軸芯方向に撓ませるように作用する。これにより、ボールペンリフィール1には、軸方向にクッション作用が与えられる。
したがって、筆記の際にかかる垂直荷重を吸収しやすくして、薄肉のインク収容管2への変形(座屈や曲がり)を防止する機能を備えるものとなる。
【0070】
前記した筆記具によると、軸筒12の厚さを従来より薄くすることができるので、軸筒12を透過して筆記リフィール1をある程度視認することができる。
したがって、軸筒12に収容された筆記リフィール1の単位筆記距離あたりのインク消費量に応じて、軸筒12の肉厚を異ならせる組み合わせを採用した筆記具群(セット)とすることで、より筆記リフィール群による外観視認性の差を強調させることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 筆記リフィール(ボールペンリフィール)
2 インク収容管
3 筆記部(ボールペンチップ)
3a~3c 筆記ボール
4 継手部材
5 尾栓
6 インク
7 インク逆流防止体
11 筆記具
12 軸筒
13 前継手
14 後継手
15 口先部
16 筒状部材
17 ノック部材
18 戻しばね
19 回転子