(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029053
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】太陽光パネルの冷却システム、及び太陽光パネルの冷却方法
(51)【国際特許分類】
H02S 40/42 20140101AFI20230224BHJP
【FI】
H02S40/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135127
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151BA03
5F151BA11
5F151JA15
5F151JA28
5F151JA30
5F251BA03
5F251BA11
5F251JA15
5F251JA28
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】太陽光パネルの冷却効率を高めることを目的とする。
【解決手段】太陽光パネルの冷却システム20は、構造物10の屋外に設置される太陽光パネル30と、構造物10に設置される空調装置40と、空調装置40で発生したドレン水を貯留するドレンタンク50と、ドレンタンク50から供給されたドレン水によって太陽光パネル30を冷却する冷却装置60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の屋外に設置される太陽光パネルと、
前記構造物に設置される空調装置と、
前記空調装置で発生したドレン水を貯留するドレンタンクと、
前記ドレンタンクから供給されたドレン水によって前記太陽光パネルを冷却する冷却装置と、
を備える太陽光パネルの冷却システム。
【請求項2】
前記冷却装置は、前記ドレンタンクから供給されたドレン水を、前記太陽光パネルの表面に散水する散水器を含む、
請求項1に記載の太陽光パネルの冷却システム。
【請求項3】
構造物を空調する空調装置で発生したドレン水を、前記構造物の屋外に設置された太陽光パネルに供給し、該太陽光パネルを冷却する、
太陽光パネルの冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルの冷却システム、及び太陽光パネルの冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根を流れた雨水等を貯留する受水タンクと、受水タンクに貯留された雨水等を太陽光パネルの表面に散水し、太陽光パネルの表面を冷却する散水管とを備える太陽光パネルの冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、空調装置で発生したドレン水を貯留するドレンタンクと、ドレンタンクに貯留されたドレン水を屋根に散水し、屋根を冷却する散水装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-13084号公報
【特許文献2】特開2005-114217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、雨水によって太陽光パネルの表面を冷却することにより、温度上昇に伴う太陽光パネルの発電効率の低下が低減される。
【0006】
しかしながら、太陽光パネルの冷却効率を高めるためには、さらなる改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、太陽光パネルの冷却効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の太陽光パネルの冷却システムは、構造物の屋外に設置される太陽光パネルと、前記構造物に設置される空調装置と、前記空調装置で発生したドレン水を貯留するドレンタンクと、前記ドレンタンクから供給されたドレン水によって前記太陽光パネルを冷却する冷却装置と、を備える。
【0009】
請求項1に係る太陽光パネルの冷却システムによれば、構造物の屋外には、太陽光パネルが設置される。また、構造物には、空調装置が設置される。この空調装置で発生したドレン水は、ドレンタンクに貯留される。ドレンタンクに貯留されたドレン水は、冷却装置に供給される。
【0010】
ここで、冷却装置は、ドレンタンクから供給されたドレン水によって、太陽光パネルを冷却する。これにより、温度上昇に伴う太陽光パネルの発電効率の低下が抑制される。
【0011】
また、ドレン水の水温は、雨水や水道水等と比較して低い。したがって、前述したように、ドレン水によって、太陽光パネルを冷却することにより、太陽光パネルの冷却効率を高めることができる。
【0012】
請求項2に記載の太陽光パネルの冷却システムは、請求項1に記載の太陽光パネルの冷却システムにおいて、前記冷却装置は、前記ドレンタンクから供給されたドレン水を、前記太陽光パネルの表面に散水する散水器を含む。
【0013】
請求項2に係る太陽光パネルの冷却システムによれば、冷却装置は、ドレンタンクから供給されたドレン水を、太陽光パネルの表面に散水する散水器を含む。
【0014】
ここで、比較例として、例えば、太陽光パネルの表面に水道水を散水し、太陽光パネルを冷却することが考えられる。
【0015】
しかしながら、この場合、水道水に含まれるカルキによって太陽光パネルの表面が汚れ、太陽光パネルの発電効率が低下する可能性がある。
【0016】
これに対して本発明では、カルキを含まないドレン水を太陽光パネルの表面に散水する。したがって、本発明では、太陽光パネルの表面の汚れを抑制しつつ、太陽光パネルを冷却することができる。
【0017】
請求項3に記載の太陽光パネルの冷却方法は、構造物を空調する空調装置で発生したドレン水を、前記構造物の屋外に設置された太陽光パネルに供給し、該太陽光パネルを冷却する。
【0018】
請求項3に係る太陽光パネルの冷却方法によれば、構造物を空調する空調装置で発生したドレン水を、構造物の屋外に設置された太陽光パネルに供給し、当該太陽光パネルを冷却する。これにより、温度上昇に伴う太陽光パネルの発電効率の低下が抑制される。
【0019】
また、ドレン水の水温は、雨水や水道水等と比較して低い。したがって、前述したように、ドレン水によって、太陽光パネルを冷却することにより、太陽光パネルの冷却効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、太陽光パネルの冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る太陽光パネルの冷却システムが適用された構造物を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0023】
(太陽光パネルの冷却システム)
図1には、本実施形態に係る太陽光パネルの冷却システム20が適用された構造物10が示されている。構造物10は、例えば、保冷倉庫とされており、その室内10Aの温度が、常時、所定温度以下になるように空調されている。
【0024】
太陽光パネルの冷却システム20は、太陽光パネル30と、空調装置40と、ドレンタンク50と、冷却装置60と、制御装置70とを備えている。
【0025】
(太陽光パネル)
太陽光パネル(ソーラーパネル)30は、構造物10の屋外に設置され、日射を受けることにより発電する発電機とされる。この太陽光パネル30は、例えば、パネル状に形成されており、構造物10の屋上や庭等に、斜めに設置される。また、太陽光パネル30には、例えば、太陽光パネル30で発電された電力を蓄電する図示しない蓄電池が電気的に接続されている。
【0026】
太陽光パネル30には、温度センサ32が設けられている。この温度センサ32は、太陽光パネル30の温度を検出し、検出した太陽光パネル30の温度情報を、後述する制御装置70に出力する。
【0027】
なお、温度センサ32で検出する太陽光パネル30の温度は、太陽光パネル30の受光面30Aの温度であっても良いし、太陽光パネル30の発電モジュールの温度であっても良い。また、温度センサ32は、温度検出部の一例である。また、太陽光パネル30の受光面30Aは、太陽光パネル30の表面の一例である。
【0028】
(空調装置)
空調装置40は、例えば、一般的なエアコンとされる。この空調装置40は、構造物10の室内(屋内)10Aに設置される室内機42と、構造物10の室外(屋外)に設置される室外機44とを備えている。なお、室外機44は、構造物10の庭やバルコニー、ベランダ、屋上等の屋外に設置される。
【0029】
室内機42は、例えば、図示しない蒸発器を有している。また、室外機は、図示しない圧縮器、放熱器、及び膨張器を有している。これらの蒸発器、圧縮器、放熱器、及び膨張器には、冷媒が循環される。
【0030】
蒸発器は、膨張器で膨張された冷媒を蒸発させる。これにより、蒸発潜熱によって構造物10の室内が冷却される。蒸発器で蒸発された冷媒は、圧縮器によって圧縮され、昇温された後、放熱器で放熱される。これにより、冷媒が凝縮される。凝縮された冷媒は、膨張器で膨張され後、蒸発器へ再び供給される。この冷凍サイクルを繰り返すことにより、構造物10の室内が冷却(冷房)される。
【0031】
(ドレンタンク)
ドレンタンク50は、空調装置40で発生するドレン水を貯留するタンクとされる。このドレンタンク50は、ドレン回収管52を介して室内機42及び室外機44とそれぞれ接続されている。これにより、構造物10の室内10Aの空調に伴って室内機42及び室外機44で発生したドレン水が、ドレン回収管52を介してドレンタンク50に供給される。
【0032】
なお、本実施形態では、ドレンタンク50が、構造物10の地下階10B等の屋内に設置されている。しかし、ドレンタンク50の設置場所は、適宜変更可能であり、例えば、構造物10の庭等の屋外に設定されても良い。
【0033】
(冷却装置)
冷却装置60は、ドレンタンク50から供給されたドレン水によって太陽光パネル30を冷却するとともに、太陽光パネル30の受光面30Aを清掃する装置とされる。この冷却装置60は、散水器62と、ポンプ64とを有している。
【0034】
散水器62は、例えば、ドレンタンク50から供給されたドレン水を、太陽光パネル30の受光面30Aに対して散水する散水ノズル等とされる。また、散水器62は、例えば、傾斜する太陽光パネル30の上端側に設置される。この散水器62には、ドレン供給管54を介してドレンタンク50が接続されている。
【0035】
ドレン供給管54には、ポンプ64が設けられている。このポンプ64が作動することにより、ドレンタンク50に貯留されたドレン水が、ドレン供給管54を介して散水器62に供給され、散水器62から太陽光パネル30の受光面30Aに対して散水される。このドレン水によって、太陽光パネル30が冷却されるとともに、太陽光パネル30の受光面30Aが清掃される。
【0036】
なお、ポンプ64には、後述する制御装置70が電気的に接続されている。
【0037】
(制御装置)
制御装置70は、太陽光パネル30の温度に基づいて、ポンプ64の動作を制御する。この制御装置70には、前述した温度センサ32が電気的に接続されている。
【0038】
制御装置70は、例えば、コンピュータで実現される。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)と、一時記憶領域としてのメモリと、不揮発性の記憶部とを備えている。また、コンピュータは、図示しない入出力装置を備えている。なお、制御装置70、及びCPUは、制御部の一例である。
【0039】
記憶部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記録媒体としての記憶部には、コンピュータを、制御装置70として機能させるための制御プログラムが予め記憶されている。また、記憶部には、太陽光パネル30の基準温度が予め記憶されている。
【0040】
CPUは、制御プログラムを記憶部から読み出してメモリに展開し、制御プログラムが有する各工程を順次実行する。なお、制御プログラムによって実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。
【0041】
(太陽光パネルの冷却方法)
次に、本実施形態に係る太陽光パネルの冷却システム20の動作を説明しつつ、太陽光パネルの冷却方法の一例について説明する。
【0042】
図1には、例えば日中において、太陽光パネル30が作動されるとともに、空調装置40が作動された状態が示している。一方、ポンプ64は、停止されている。
【0043】
この状態では、太陽光パネル30が発電された電力が、例えば、図示しない蓄電池に蓄電される。また、空調装置40によって、構造物10の室内10Aが冷房される。この際、空調装置40の室内機42及び室外機44で発生したドレン水が、ドレン回収管52を介してドレンタンク50に回収され、貯留される。
【0044】
ここで、太陽光パネル30の温度が所定値以上になると、太陽光パネル30の発電効率が低下する。この対策として制御装置70は、温度センサ32で検出された太陽光パネル30の温度が、予め定められた基準値以上の場合にポンプ64を作動する。
【0045】
これにより、ドレンタンク50に貯留されたドレン水がポンプ64によって汲み上げられ、ドレン供給管54を介して散水器62に供給される。これにより、散水器62から太陽光パネル30の受光面30Aに対してドレン水が散水され、太陽光パネル30が冷却される。
【0046】
一方、制御装置70は、温度センサ32で検出された太陽光パネル30の温度が、予め定められた基準値未満の場合には、ポンプ64を作動せず、又はポンプ64の作動を停止する。これにより、ドレンタンク50からドレン供給管54を介して散水器62に供給されるドレン水が停止される。この結果、太陽光パネル30の冷却が停止される。
【0047】
このように本実施形態に係る太陽光パネルの冷却方法では、構造物10を空調する空調装置40で発生したドレン水を、構造物10の屋外に設置された太陽光パネル30に供給し、太陽光パネル30を冷却する。
【0048】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0049】
本実施形態によれば、構造物10の屋外には、太陽光パネル30が設置されている。また、構造物10には、空調装置40が設置されている。この空調装置40で発生したドレン水は、ドレンタンク50に貯留されている。ドレンタンク50に貯留されたドレン水は、冷却装置60の散水器62に供給され、散水器62から太陽光パネル30の受光面30Aに散水される。
【0050】
これにより、ドレン水によって太陽光パネル30が冷却される。したがって、温度上昇に伴う太陽光パネル30の発電効率の低下が抑制される。
【0051】
また、ドレン水の水温は、雨水や水道水等と比較して低い。したがって、前述したように、ドレン水によって、太陽光パネル30を冷却することにより、太陽光パネル30の冷却効率を高めることができる。
【0052】
さらに、散水器62からドレン水を太陽光パネル30の受光面30Aに散水することにより、当該受光面30Aが清掃される。したがって、受光面30Aの汚れ等に伴う太陽光パネル30の発電効率の低下も抑制することができる。
【0053】
ここで、比較例として、例えば、太陽光パネル30の受光面30Aに水道水を散水し、太陽光パネル30を冷却することが考えられる。
【0054】
しかしながら、この場合、水道水に含まれるカルキによって太陽光パネル30の受光面30Aが汚れ、太陽光パネルの発電効率が低下する可能性がある。
【0055】
これに対して本実施形態では、カルキを含まないドレン水を太陽光パネル30の受光面30Aに散水する。したがって、本実施形態では、太陽光パネル30の受光面30Aの汚れを抑制しつつ、太陽光パネル30を冷却することができる。
【0056】
さらに、制御装置70は、温度センサ32で検出された太陽光パネル30の温度に基づいて、冷却装置60のポンプ64を作動する。より具体的には、制御装置70は、温度センサ32で検出された太陽光パネル30の温度が、基準値以上の場合に、ポンプ64を作動する。これにより、散水器62から太陽光パネル30の受光面30Aに対してドレン水が散水され、太陽光パネル30が冷却される。
【0057】
このように本実施形態では、太陽光パネル30の温度に基づいて、当該太陽光パネル30を冷却することにより、太陽光パネル30の発電効率の低下を効率的に抑制することができる。さらに、本実施形態では、太陽光パネル30の冷却のタイミングで、太陽光パネル30の受光面30Aを清掃することができる。
【0058】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0059】
上記実施形態の制御装置70は、温度センサ32で検出された太陽光パネル30の温度に基づいて、冷却装置60のポンプ64を作動する。しかし、制御装置70は、太陽光パネル30の温度に限らず、例えば、太陽光パネル30の周辺の気温に基づいて、ポンプ64を作動しても良いし、定期的にポンプ64を作動しても良い。また、例えば、太陽光パネル30の管理者が制御装置70を操作することにより、ポンプ64を作動しても良い。
【0060】
また、上記実施形態の散水器62は、太陽光パネル30の受光面30Aに対してドレン水を散水する。しかし、散水器62は、太陽光パネル30を冷却可能であれば良く、例えば、太陽光パネル30の裏面(受光面30Aと反対側の面)に対してドレン水を散水可能に構成しても良い。また、散水器62は、例えば、太陽光パネル30の受光面30A及び裏面に対してドレン水を散水可能に構成しても良い。
【0061】
また、冷却装置60は、散水器62に限らない。冷却装置60は、例えば、太陽光パネル30と熱交換可能な水冷ヒートシンクを含み、この水冷ヒートシンクにポンプ64等によってドレン水を供給することにより、太陽光パネル30を冷却することも可能である。
【0062】
また、上記実施形態の冷却装置60は、ポンプ64を有している。しかし、例えば、太陽光パネル30が構造物10の庭等に設置されるとともに、ドレンタンク50が構造物10の上階に設置され、ドレンタンク50内のドレン水を自然落下によって太陽光パネル30の供給可能な場合は、ポンプ64は省略可能である。
【0063】
また、上記実施形態では、構造物10が、保冷倉庫とされている。しかし、太陽光パネルの冷却システム20は、保冷倉庫に限らず、太陽光パネル及び空調装置が設置される種々の構造物に適用可能である。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10 構造物
20 太陽光パネルの冷却システム
30 太陽光パネル
40 空調装置
50 ドレンタンク
60 冷却装置
62 散水器