(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029069
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】休暇管理装置、休暇管理方法及び休暇管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/1057 20230101AFI20230224BHJP
【FI】
G06Q10/10 324
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135151
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 清孝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA10
(57)【要約】
【課題】様々な取得形態に対応して柔軟な休暇管理を可能とする。
【解決手段】休暇時間換算処理部が、休暇取得者が取得可能な休暇日数に、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間を乗算処理することで、休暇取得者に対して付与されている休暇日数を時間に換算したトータル休暇時間を形成する。また、休暇取得時間換算処理部が、休暇取得者により休暇取得申請された休暇期間を、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間に基づいて、休暇取得時間に換算処理する。そして、残休暇時間算出部が、トータル休暇時間から休暇取得時間を減算処理することで、残休暇時間を算出する。これにより、休暇取得者の雇用形態に応じて様々な取得形態に柔軟に対応した休暇管理を行うことができる。
【選択図】
図37
【特許請求の範囲】
【請求項1】
休暇取得者が取得可能な休暇日数に、前記休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間を乗算処理することで、前記休暇取得者に対して付与されている休暇日数を時間に換算したトータル休暇時間を形成する休暇時間換算処理部と、
前記休暇取得者により休暇取得申請された休暇期間を、前記休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間に基づいて、休暇取得時間に換算処理する休暇取得時間換算処理部と、
前記トータル休暇時間から前記休暇取得時間を減算処理することで、残休暇時間を算出する残休暇時間算出部と、
を有する休暇管理装置。
【請求項2】
前記休暇取得時間換算処理部は、時間単位での取得が可能とされている休暇種別の休暇取得申請に対してのみ、休暇取得申請された休暇期間を休暇取得時間に換算する処理を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の休暇管理装置。
【請求項3】
前記休暇時間換算処理部は、前記休暇取得者の雇用形態が変更された場合、変更された雇用形態に応じた労働時間で前記トータル休暇時間を算出し、
前記休暇取得時間換算処理部は、前記休暇取得者の雇用形態が変更された場合、変更された雇用形態に応じた労働時間に基づいて、前記換算処理を行うこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の休暇管理装置。
【請求項4】
前記残休暇時間算出部は、前記トータル休暇時間よりも前記休暇取得時間の方が長時間であることで減算処理を行うことができない場合、前記トータル休暇時間から前記休暇取得時間を減算処理することで、余りとなる前記休暇取得時間を、他の休暇トータル休暇時間から減算処理すること
を特徴とする請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載の休暇管理装置。
【請求項5】
前記残休暇時間算出部は、前記トータル休暇時間よりも前記休暇取得時間の方が長時間であることで減算処理を行うことができない場合、所定のエラー表示を行うこと
を特徴とする請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の休暇管理装置。
【請求項6】
休暇時間換算処理部が、休暇取得者が取得可能な休暇日数に、前記休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間を乗算処理することで、前記休暇取得者に対して付与されている休暇日数を時間に換算したトータル休暇時間を形成する休暇時間換算処理ステップと、
休暇取得時間換算処理部が、前記休暇取得者により休暇取得申請された休暇期間を、前記休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間に基づいて、休暇取得時間に換算処理する休暇取得時間換算処理ステップと、
残休暇時間算出部が、前記トータル休暇時間から前記休暇取得時間を減算処理することで、残休暇時間を算出する残休暇時間算出ステップと、
を有する休暇管理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
休暇取得者が取得可能な休暇日数に、前記休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間を乗算処理することで、前記休暇取得者に対して付与されている休暇日数を時間に換算したトータル休暇時間を形成する休暇時間換算処理部と、
前記休暇取得者により休暇取得申請された休暇期間を、前記休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間に基づいて、休暇取得時間に換算処理する休暇取得時間換算処理部と、
前記トータル休暇時間から前記休暇取得時間を減算処理することで、残休暇時間を算出する残休暇時間算出部として機能させること
を特徴とする休暇管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、休暇管理装置、休暇管理方法及び休暇管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
休暇管理に関する背景技術として、特許文献1(特開2020-112979号公報)に、仕事の状況を随時管理する時間管理システムが開示されている。この時間管理システムの場合、端末装置から入力された作業項目毎の作業時間を記録して管理する時間管理システムのサーバ装置が、時間管理手段、作業項目管理手段、有記録手段及びレポート出力手段を備える。
【0003】
時間管理手段は、端末装置から送出された作業時間を予め定めた時間を単位とする単位数を作業者別に取得し、取得した単位数から作業項目毎における作業時間を作業者別に記録する。作業項目管理手段は、端末装置から送出された作業項目を作業者別に記録する。共有記録手段は、作業者別に取得した情報を他の作業者と共有可能に記録する。そして、レポート出力手段は、記録した情報に基づいて端末装置から指定された様式でレポートを出力する。
【0004】
このような時間管理システムは、秒分単位の精密な時間管理にせず、時間をブロック毎に分けた管理をすることで、人間の適当さを許容し、継続的に時間管理をすることで生産性の向上に貢献できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、今日においては、正社員、派遣労働者、契約社員(有期労働契約)、パートタイム労働者等の様々な雇用形態がある。また、労働形態も、通常勤務の他、日勤、夜勤、交代制勤務、非常勤及び時短勤務等の様々な労働形態がある。そして、休暇も、年次有給休暇、代替休暇、看護休暇、介護休暇、慶弔休暇及び病気休暇等の様々な種別の休暇がある。今日では、日単位又は半日単位での休暇取得が一般的であるが、将来的には、労働者毎に、様々な取得形態での休暇取得が可能となることが予測される。従って、休暇管理も、将来的に提供され得る様々な取得形態に対応して管理可能とすることが好ましい。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、様々な取得形態に対応して柔軟な休暇管理を可能とする休暇管理装置、休暇管理方法及び休暇管理プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る休暇管理装置は、休暇取得者が取得可能な休暇日数に、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間を乗算処理することで、休暇取得者に対して付与されている休暇日数を時間に換算したトータル休暇時間を形成する休暇時間換算処理部と、休暇取得者により休暇取得申請された休暇期間を、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間に基づいて、休暇取得時間に換算処理する休暇取得時間換算処理部と、トータル休暇時間から休暇取得時間を減算処理することで、残休暇時間を算出する残休暇時間算出部と、を有する。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る休暇管理方法は、休暇時間換算処理部が、休暇取得者が取得可能な休暇日数に、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間を乗算処理することで、休暇取得者に対して付与されている休暇日数を時間に換算したトータル休暇時間を形成する休暇時間換算処理ステップと、休暇取得時間換算処理部が、休暇取得者により休暇取得申請された休暇期間を、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間に基づいて、休暇取得時間に換算処理する休暇取得時間換算処理ステップと、残休暇時間算出部が、トータル休暇時間から休暇取得時間を減算処理することで、残休暇時間を算出する残休暇時間算出ステップと、を有する。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る休暇管理プログラムは、コンピュータを、休暇取得者が取得可能な休暇日数に、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間を乗算処理することで、休暇取得者に対して付与されている休暇日数を時間に換算したトータル休暇時間を形成する休暇時間換算処理部と、休暇取得者により休暇取得申請された休暇期間を、休暇取得者の雇用形態に応じて設定される1日分の労働時間に基づいて、休暇取得時間に換算処理する休暇取得時間換算処理部と、トータル休暇時間から休暇取得時間を減算処理することで、残休暇時間を算出する残休暇時間算出部として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、様々な取得形態に対応して柔軟に休暇管理できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態の休暇管理装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、年次有給休暇、子供の看護休暇、及び介護休暇の取得イメージを示す図である。
【
図3】
図3は、休暇残管理区分マスタの模式図である。
【
図5】
図5は、従業員区分設定マスタの模式図である。
【
図9】
図9は、年次有給休暇の付与処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、年次有給休暇以外の他の休暇の付与処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、従業員による休暇取得動作の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、従業員の雇用形態又は身分変更による所定時間(労働時間)の変更動作の流れを示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、従業員区分変更後の従業員による休暇申請処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、年次有給休暇の付与動作を説明するための図である。
【
図15】
図15は、他の休暇の付与動作を説明するための図である。
【
図16】
図16は、従業員のAさんの休暇種別、休暇残時間、休暇取得状況を示す図である。
【
図18】
図18は、休暇の取得に応じた休暇残割当データの形成態様を示す図である。
【
図20】
図20は、休暇残割当時に休暇残割当処理部が取得するパラメータを説明するための図である。
【
図22】
図22は、割当候補付与データの生成動作を説明するための図である。
【
図24】
図24は、割当候補付与データの一例を示す図である。
【
図25】
図25は、割当計算対象データの生成動作を説明するための図である。
【
図26】
図26は、割当エラーデータの初期化及び割当計算対象データの取得動作を説明するための図である。
【
図27】
図27は、割当候補付与データの取得動作を説明するための図である。
【
図28】
図28は、休暇残割当データの追加処理を説明するための図である。
【
図29】
図29は、割当計算対象データ及び割当候補付与データの更新処理を説明するための図である。
【
図30】
図30は、休暇の割り込み申請により、事後的に発生するエラーを説明するための図である。
【
図31】
図31は、割当エラーデータの生成動作を説明するための図である。
【
図33】
図33は、割当候補付与データ及び割当計算対象データの更新処理を説明するための図である。
【
図34】
図34は、自然消滅レコードの処理を説明するための図である。
【
図35】
図35は、休暇残不足時のエラー表示の一例を示す図である。
【
図37】
図37は、割当エラー判定部の休暇残時間の不足チェックを説明するための図である。
【
図38】
図38は、割当エラー判定部の休暇残時間の不足チェックの具体例を説明するための図である。
【
図39】
図39は、休暇取得データの生成動作を説明するための図である。
【
図40】
図40は、割当エラーのチェック動作を説明するための図である。
【
図42】
図42は、従業員の雇用形態又は身分の変更動作を説明するための図である。
【
図43】
図43は、従業員区分変更処理の完了後における看護休暇の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施の形態となる休暇管理装置を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
[ハードウェア構成]
まず、
図1は、実施の形態の休暇管理装置のブロック図である。この
図1に示すように実施の形態の休暇管理装置1は、記憶部2、制御部3、通信インターフェース部4、入出力インターフェース部5を備える。入出力インターフェース部5には、キーボード装置及びマウス装置等の入力装置6が接続されている。また、入出力インターフェース部5には、モニタ装置等の出力装置7が接続されている。通信インターフェース部4は、所定のネットワーク8を介して従業員等の端末装置9に接続されている。ネットワーク8としては、例えば社内LAN(Local Area Network)等のプライベート網又はインターネット等の広域網を用いることができる。
【0015】
記憶部2には、休暇残管理区分マスタ11、休暇種別マスタ12、従業員区分設定マスタ13、労働時間マスタ14、従業員マスタ15、従業員経歴データベース(従業員経歴DB)16が設けられている。また、記憶部2には、休暇管理プログラム、休暇付与データ、休暇取得データ、休暇残割当データ、割当候補付与データ、割当計算対象データ及び割当エラーデータが記憶されている。各マスタ及び各データの詳細は、後述する。
【0016】
制御部3は、記憶部2に記憶されている休暇管理プログラムを実行することで、表示制御部21、入力処理部22、更新処理部23、休暇残判定部24、休暇残割当処理部25、割当エラー判定部26、従業員区分変更処理部27及び経歴改定処理部28の各機能を実現する。これら各機能の説明は、後述する。休暇残割当処理部25は、休暇時間換算処理部、休暇取得時間換算処理部及び残休暇時間算出部の一例である。
【0017】
[休暇取得イメージ]
ここで、一例として年次有給休暇、子供の看護休暇及び介護休暇の取得イメージを
図2に示す。年次有給休暇は、勤続年数又は月数等に応じて付与日数が変動し、有効期間2年、1年あたり合計40日まで付与される。また、年次有給休暇は、前の年の残日数を翌年に繰り越して保持可能となっている。
【0018】
子供の看護休暇は、対象となる子供が1人の場合は、1年あたり5日、対象となる子供が2人以上の場合は、1年あたり10日が付与される。介護休暇は、対象となる要介護者が1人の場合は、1年あたり5日、対象となる要介護者が2人以上の場合は、1年あたり10日が付与される。子供の看護休暇及び介護休暇は、年度の最終日で消滅し、年度の開始日に新たに付与される。
【0019】
年次有給休暇、子供の看護休暇及び介護休暇は、それぞれ終日休暇、半日休暇、時間休暇の取得形態で取得可能とされる。
【0020】
[休暇残管理区分マスタ]
次に、
図3に、休暇残管理区分マスタ11の模式図を示す。休暇残管理区分マスタ11は、休暇残管理対象の休暇の種類及び時間単位取得の有無を制御するマスタである。休暇残管理区分マスタ11には、残管理区分、残管理区分名称及び時間単位取得の可否が記憶されている。年次有休は、有休付与処理で付与される年次有給休暇であり、残管理区分は「1」で、時間単位取得は可能(あり)となっている。代休は、休日出勤に対して時間外手当支給に替えて付与される休暇であり、残管理区分は「2」で、時間単位取得は否(なし)となっている。
【0021】
介護休暇は、介護休暇制度に基づく休暇であり、残管理区分は「5」で、時間単位取得は可能(あり)となっている。看護休暇は、子供の看護休暇制度に基づく休暇であり、残管理区分は「6」で、時間単位取得は可能(あり)となっている。振替休日(所定休日)は、所定休日に振替出勤した場合の振替休日であり、残管理区分は「7」で、時間単位取得は否(なし)となっている。
【0022】
振替休日(法定休日)は、法定休日に振替出勤した場合の振替休日であり、残管理区分は「8」で、時間単位取得は否(なし)となっている。保存有休1は、企業が任意で採用する休暇(年次有給休暇の上限又は期限を超えて失効した休暇を積み立てる場合の休暇)であり、残管理区分は「9」で、時間単位取得は可能(あり)となっている。保存有休2は、企業が任意で採用する休暇(保存有休1の上限又は期限を超えて失効した休暇をさらに積み立てる場合の休暇)であり、残管理区分は「10」で、時間単位取得は可能(あり)となっている。
【0023】
[休暇種別マスタ]
次に、
図4に、休暇種別マスタ12の模式図を示す。休暇種別マスタ12は、休暇種別と、取得単位(終日/前半/後半/時間)及び残管理区分の組み合わせを管理するマスタである。すなわち、この休暇種別マスタ12には、残管理区分が「1」の年次有休の場合、終日有休、前半有休、後半有休又は時間有休での取得が可能であることを示す情報が記憶されている。また、休暇種別マスタ12には、残管理区分が「5」の介護休暇の場合、終日、前半、後半又は時間での取得が可能であることを示す情報が記憶されている。
【0024】
[従業員区分設定マスタ]
次に、
図5に、従業員区分設定マスタ13の模式図を示す。従業員区分設定マスタ13は、従業員の雇用形態及び身分等の違いにより、扱いを制御するためのマスタであり、「換算1日所定時間」として、1日を時間休暇に換算した場合の分数が設定されている。一例ではあるが、通常シフトの労働形態の正社員の場合、1日8時間労働として「480分」の換算1日所定時間が従業員区分設定マスタ13に記憶されている。また、時短シフトの労働形態の時短社員の場合、1日5時間労働として「300分」の換算1日所定時間が従業員区分設定マスタ13に記憶されている。また、アルバイトシフトの労働形態のアルバイトの場合、1日4時間労働として「240分」の換算1日所定時間が従業員区分設定マスタ13に記憶されている。
【0025】
[所定時間マスタ]
次に、
図6に、労働時間マスタ14の模式図を示す。労働時間マスタ14には、労働形態毎の労働時間及び休憩時間を管理するマスタである。労働時間マスタ14には、残業時間の計算等で使用される所定労働時間等が設定される。例えば、通常シフトの労働形態の場合、9:00~17:45の労働開始時刻、労働終了時刻、この労働形態に対応する拘束時間である525分から60分の休憩時間を減算した465分の労働時間、及び、60分の休憩時間が、労働時間マスタ14に記憶される。また、アルバイトシフトの労働形態の場合、11:00~15:45の労働開始時刻、労働終了時刻、この労働形態に対応する拘束時間である285分から45分の休憩時間を減算した240分の労働時間、及び、45分の休憩時間が、労働時間マスタ14に記憶される。
【0026】
[従業員マスタ]
次に、
図7に、従業員マスタ15の模式図を示す。従業員マスタ15は、従業員毎の属性を管理するマスタである。従業員マスタ15には、各従業員の従業員コード、従業員名及び、例えば正社員、時短社員、パート又はアルバイト等の従業員区分が記憶される。
【0027】
[従業員経歴DB]
次に、
図8に、従業員経歴DB16の模式図を示す。従業員経歴DB16には、従業員毎に、属性の経歴を管理するためのデータが記憶される。具体的には、従業員経歴DB16には、従業員コード、従業員区分等の属性区分、経歴開始日、経歴終了日、及び、正社員又はパート等の経歴属性が記憶される。このような従業員経歴DB16のデータは、従業員マスタ15の属性変更時に書き換えられる。
【0028】
[年次有給休暇の付与処理]
次に、
図9のフローチャートを用いて、年次有給休暇の付与処理を説明する。年次有給休暇を付与する場合、例えば労務管理者が休暇管理装置1を操作して、記憶部2に記憶されている休暇付与データを出力装置7に表示する(ステップS1)。休暇管理装置1の制御部3は、休暇管理プログラムに基づいて動作することで、入力処理部22及び表示制御部21により、労働管理者の入力操作に対応して記憶部2から休暇付与データを読み出し、出力装置7に表示する。
【0029】
次に、労務管理者は、入力装置6を操作して年次有給休暇の休暇付与情報を入力する(ステップS2)。入力処理部22は、入力された休暇付与情報を取得する。更新処理部23は、記憶部2の休暇付与データを、入力された休暇付与情報に基づいて更新処理する(ステップS3)。
【0030】
次に、休暇残割当処理部25は、休暇付与データと休暇取得データの関連付け(割当)を行い、休暇残割当データを作成して記憶部2に記憶する(ステップS4)。この休暇残割当処理の詳細な動作は、後述する。
【0031】
[他の休暇の付与処理]
次に、
図10のフローチャートを用いて、年次有給休暇以外の他の休暇の付与処理を説明する。他の休暇を付与する場合、例えば労務管理者が休暇管理装置1を操作して、記憶部2に記憶されている休暇付与データを出力装置7に表示する(ステップS11)。休暇管理装置1の制御部3は、休暇管理プログラムに基づいて動作することで、入力処理部22及び表示制御部21により、労働管理者の入力操作に対応して記憶部2から休暇付与データを読み出し、出力装置7に表示する。
【0032】
次に、労務管理者は、入力装置6を操作して、付与する休暇の休暇付与情報を入力する(ステップS12)。入力処理部22は、入力された休暇付与情報を取得する。更新処理部23は、記憶部2の休暇付与データを、入力された休暇付与情報に基づいて更新処理する(ステップS13)。
【0033】
次に、休暇残割当処理部25は、休暇付与データと休暇取得データの関連付け(割当)を行い、休暇残割当データを作成して記憶部2に記憶する(ステップS14)。この休暇残割当処理の詳細な動作は、後述する。
【0034】
[従業員の休暇取得動作]
次に、
図11のフローチャートを用いて、従業員の休暇取得動作を説明する。この場合、従業員は、例えば自分の端末装置9を操作して、取得する休暇に対応する申請内容を入力し(ステップS21)、休暇申請の実行操作を行う(ステップS22)。これにより、取得する休暇の内容(休暇種別及び取得日数等)を示す情報が、ネットワーク8を介して従業員の端末装置9から休暇管理装置1に送信される。
【0035】
休暇管理装置1の制御部3は、休暇管理プログラムに基づいて動作することで、休暇残判定部24により、休暇取得データに基づいて休暇残不足のチェックを行う(ステップS23)。この休暇残不足のチェックは、休暇が申請された日時の時点で、取得可能な休暇残が不足しているか否かのチェックである。この休暇残不足のチェックは、休暇残割当処理(ステップS25)の実行前に、事前にチェック可能であるため、休暇取得データの更新処理(ステップS24)の前に行う。
【0036】
休暇残判定部24により休暇残不足の判定が行われた場合(不足あり)、制御部3は、休暇残不足により休暇申請が却下される旨のエラー通知を、通信インターフェース部4を介して従業員の端末装置9に送信する(ステップS27)。
【0037】
休暇残判定部24により休暇残不足の判定が行われなかった場合(不足なし)、更新処理部23は、記憶部2の休暇取得データに対して、申請された休暇に対応する更新処理を施す。
【0038】
次に、休暇残割当処理部25は、休暇付与データと休暇取得データの関連付け(割当)を行い、休暇残割当データを作成して記憶部2に記憶する(ステップS25)。この休暇残割当処理の詳細な動作は、後述する。
【0039】
次に、割当エラー判定部26が、ステップS25における休暇残割当処理による割当エラーチェックを行い(ステップS26)、割当エラーが無い場合は、そのまま
図11のフローチャートの処理を終了する。
【0040】
この割当エラーチェックは、休暇が申請された時点で取得可能な休暇残は足りているが、割り込み取得が行われた場合、先に申請済みで未来日付の同一種類の休暇申請が、休暇の有効期限の制約で休暇残不足となることがないかとのチェックである。
【0041】
このようなケースは、休暇残割当処理後に検知可能となる。このため、実施の形態の休暇管理装置1では、一旦、取得を認めて休暇申請可能とし、休暇取得データの更新処理及び休暇残割当処理の後に、割当エラー判定部26が割当エラーチェックを行い、割当エラーを検出した際に、表示制御部21が出力装置7に対して割当エラー表示を行う(ステップS27)。割当エラーが発生した場合、実施の形態の休暇管理装置1では、先に申請された休暇又は後から申請された休暇を、別の種類の休暇に変更可能となっている。詳しくは、後述する。
【0042】
[従業員の雇用形態又は身分等の変更による所定時間の変更処理]
次に、
図12のフローチャートを用いて、従業員の雇用形態又は身分等の変更による所定時間(労働時間)の変更処理を説明する。この場合、まず、従業員区分変更処理部27が、休暇付与データ及び休暇取得データに基づいて、残っている休暇日数又は休暇時間を確認する(ステップS31)。次に、従業員区分変更処理部27は、
図7に示した従業員マスタ15に記憶されている従業員区分のうち、変更を行う従業員の従業員区分を新たな従業員区分に変更処理する(ステップS32)。また、従業員区分変更処理部27は、
図8に示した従業員経歴DB16に記憶されている、従業員区分を変更した従業員の経歴を改定処理(変更処理)する(ステップS33)。
【0043】
次に、経歴改定処理部28は、従業員の雇用形態又は身分等の変更により所定時間(労働時間)に変動がある場合、その従業員が保持する休暇付与データ、休暇取得データ又は休暇残割当データの換算1日所定時間を更新する。この後、休暇残割当処理部25は、休暇付与データと休暇取得データの関連付け(割当)を行い、休暇残割当データを作成して記憶部2に記憶する(ステップS34)。この休暇残割当処理の詳細な動作は、後述する。
【0044】
[従業員区分変更後の休暇申請動作]
次に、従業員区分変更後の従業員による休暇申請動作を
図13のフローチャートを用いて説明する。一例として、正社員から時短社員に従業員区分が変更された従業員が、端末装置9を操作して休暇申請したとする(ステップS41、ステップS42)。この場合、休暇残割当処理部25は、休暇付与データと休暇取得データの関連付け(割当)を行い、休暇残割当データを作成して記憶部2に記憶する(ステップS43)。この休暇残割当処理の詳細な動作は、後述する。
【0045】
[休暇付与動作の詳細]
次に、
図9及び
図10を用いて説明した休暇付与動作を詳細に説明する。
【0046】
(年次有給休暇の付与動作)
まず、
図9を用いて説明した年次有給休暇の付与動作を詳細に説明する。
図14は、年次有給休暇の付与動作を説明するための図である。この場合、更新処理部23は、付与対象者の勤続年数及び月数に基づいて年次有給休暇の付与日数を算出すると共に、有休保存期間年数に基づいて休暇付与データを作成する。
【0047】
具体的には、
図14(a)は、労務管理者が操作する休暇管理装置1の出力装置7に表示される休暇登録画面の一例を示している。この休暇登録画面に基づいて、労務管理者は、残管理区分として年次有給休暇を選択し、年次有給休暇を付与する従業員(この例は、Aさん)を選択する。従業員のAさんは、
図14(b)に示すように従業員区分が正社員として、従業員マスタ15に記憶されている。また、
図14(c)に示すように、従業員区分設定マスタ13には、正社員の勤務形態は通常シフトで、1日の労働時間が8時間の「480分」であることを示す「換算1日所定時間」が記憶されている。さらに、
図14(d)に示すように、休暇残管理区分マスタ11には、年次有給休暇に対しては時間単位の取得の可否を示す情報が、時間単位の取得が可能であることを示す「あり」として登録されている。
【0048】
更新処理部23は、付与対象となる従業員のマスタ設定に従い換算1日所定時間を、
図14(a)に示す休暇登録画面に自動的に入力する。なお、例えば
図14(d)に示す「代休」のように、時間単位の取得が「なし」として登録されている場合、更新処理部23は、休暇登録画面に対する換算1日所定時間の自動入力は行わない。この場合、終日又は半日単位でのみ、休暇の取得が許可される。また、時間単位の取得が「なし」として登録されている場合、更新処理部23は、労働時間を全従業員共通で8時間に固定して、換算1日所定時間(480分)を算出して休暇登録画面に入力する。
【0049】
次に、更新処理部23は、付与された年次有給休暇の日数に、換算1日所定時間(480分)を乗算処理することで、付与された年次有給休暇の日数に対応する年次有給休暇の時間である「付与時間」を算出する。そして、更新処理部23は、
図14(e)に示すように、算出した付与時間を含む休暇付与データを、記憶部2に記憶する。
図14(e)の例は、新たに付与される年次有給休暇の日数が18日であるため、更新処理部23は、18日×480分=8640分の付与時間を計算し、休暇付与データに含めて記憶した例である。
【0050】
なお、この
図14(e)の例は、前年度の年次有給休暇の残り付与日数は、16日であるため、16日×480分=7680分の付与時間が休暇付与データに含められて記憶されている例を示している。また、更新処理部23は、年次有給休暇の場合、有効期間開始日を付与日とし、有効期間終了日を付与日の有休保存期間年数後に設定する。
【0051】
図14(f)は、このように付与された年次有給休暇のイメージである。2020年度からの繰り越し分は、2022年の3月末で消滅し、2021年の4月に付与された8640分の年次有給休暇は、2023年の3月末まで有効であることを示している。
【0052】
(他の休暇の付与動作)
次に、
図10を用いて説明した年次有給休暇以外の他の休暇の付与動作を詳細に説明する。
図15は、他の休暇の付与動作を説明するための図である。年次有給休暇のように、特定の条件に応じて自動的発生しない休暇は、労務管理者が、その都度必要に応じて、休暇登録画面を介して休暇の付与を行う。
【0053】
具体的には、
図15(a)は、労務管理者が操作する休暇管理装置1の出力装置7に表示される看護休暇の休暇登録画面の一例を示している。また、
図15(b)は、労務管理者が操作する休暇管理装置1の出力装置7に表示される介護休暇の休暇登録画面の一例を示している。このような休暇登録画面に基づいて、労務管理者は、残管理区分として例えば看護休暇(
図15(a))又は介護休暇(
図15(b))を選択し、看護休暇又は介護休暇を付与する従業員(この例は、Aさん)を選択する。
【0054】
従業員のAさんは、
図15(c)に示すように従業員区分が正社員として、従業員マスタ15に記憶されている。また、
図15(d)に示すように、従業員区分設定マスタ13には、正社員の勤務形態は通常シフトで、1日の労働時間が8時間の「480分」であることを示す「換算1日所定時間」が記憶されている。さらに、
図15(e)に示すように、休暇残管理区分マスタ11には、看護休暇及び介護休暇に対しては、時間単位の取得が可能であることを示す「あり」の情報が登録されている。
【0055】
更新処理部23は、付与対象となる従業員のマスタ設定に従い換算1日所定時間を、
図15(a)に示す休暇登録画面に自動的に入力する。なお、時間単位の取得が「なし」の場合、更新処理部23は、労働時間を全従業員共通で8時間に固定して、換算1日所定時間(480分)を算出して看護休暇の休暇登録画面(
図15(a))又は介護休暇の休暇登録画面(
図15(b))に入力する。
【0056】
次に、更新処理部23は、付与された看護休暇の日数及び介護休暇の日数に、換算1日所定時間(480分)を乗算処理することで、付与された看護休暇及び介護休暇の日数に対応する「付与時間」を算出する。そして、更新処理部23は、
図15(f)に示すように、算出した付与時間を含む休暇付与データを、記憶部2に記憶する。
図15(f)の例は、付与される看護休暇の日数が10日であるため、更新処理部23は、10日×480分=4800分の付与時間を計算し、休暇付与データに含めて記憶した例である。また、
図15(f)の例は、付与される介護休暇の日数が5日であるため、更新処理部23は、5日×480分=2400分の付与時間を計算し、休暇付与データに含めて記憶した例である。
【0057】
なお、更新処理部23は、看護休暇及び介護休暇の付与日となる当年度の開始日から1年後の日付を有効期間終了日として設定する。
図15(f)の例は、付与日と有効期間開始日が異なる例であり、2021年5月1日を付与日とする看護休暇、及び、2021年6月1日を付与日とする介護休暇に対して、それぞれ当年度の開始日となる2021年4月1日が有効期間開始日に設定され、この有効期間開始日から1年後の2022年3月31日が有効期間終了日に設定された例である。
【0058】
図15(g)は、このように付与された看護休暇及び介護休暇のイメージである。この
図15(g)の例は、2021年5月1日に付与された10日分である計4800分の看護休暇が、2021年4月1日を有効期間開始日とし、2022年3月末を有効期間終了日として設定された例である。また、
図15(g)の例は、2021年6月1日に付与された5日分である計2400分の介護休暇が、2021年4月1日を有効期間開始日とし、2022年3月末を有効期間終了日として設定された例である。
【0059】
[休暇残割当処理]
次に、
図9のステップS4、
図10のステップS14、
図11のステップS25及び
図12のステップS34の処理となる休暇残割当処理の説明をする。まず、
図16は、従業員のAさんの休暇種別、休暇残時間、休暇取得状況を示す図である。
図16(a)の例は、2020年4月1日に付与された16日分である7680分の年次有給休暇は、
図16(b)に示すように2021年3月10日に前半有休休暇が取得されることで、当年度分の有休休暇のうち、6900分が取得済となり、残り780分(1.5日+1時間)が次年度に繰り越された例を示している。また、
図16(a)の例は、2021年4月1日に、18日分である8640分の年次有給休暇が新たに付与されると共に、2021年5月1日に、10日分である4800分の看護休暇が付与された例を示している。
【0060】
このような休暇残時間及び休暇取得状況において、年次有給休暇又は他の休暇の有効期限開始日以降に、先に休暇取得予定がある場合、休暇の取得順番が変わる可能性がある。このため、休暇残割当処理部25は、以下に説明する休暇残割当処理を、休暇の「有効期間終了日」及び「有効期間開始日」に基づいて実行する。これにより、後述の経歴改定時等に、消滅期限が早い休暇から優先して取得できる。
【0061】
休暇残割当処理部25は、記憶部2に記憶されている休暇付与データと休暇取得データの関連付け(割当)を行い「休暇残割当データ」を作成する。休暇残割当データにより、休暇付与データから休暇取得分の残時間が減り、有効期限を考慮した残時間のチェックが可能となる。
図17は、休暇残割当データの一例を示す図である。
図17(a)及び
図17(b)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データを示している。また、
図17(c)は、
図17(a)の休暇残割当データに対して列方向に連続する一例の休暇残割当データを示している。また、
図17(d)は、
図17(b)の休暇残割当データに対して列方向に連続する一例の休暇残割当データを示している。
【0062】
休暇残割当データは、
図17(a)及び
図17(c)に示すように、割当識別番号(割当ID)、従業員コード及び残管理区分を含む割当キー情報、付与ID,付与日、有効期間開始日、有効期間終了日、付与時間、付与換算1日所定時間を含む休暇付与データを備える。また、休暇残割当データは、
図17(b)及び
図17(d)に示すように、取得ID、休暇取得日、取得時間、取得換算1日所定時間を含む休暇取得データ、及び、割当連番、割当区分、割当時間及び割当後残時間を含む割当情報を備える。
【0063】
割当連番は、同じ休暇付与データに割り当てた休暇取得データの割当順序を示す情報である。取得日が早い順に連番が付される。なお、同日に前半有休と後半有休のように複数の休暇が取得された場合は、時間的に早い方の時間に取得された休暇を優先して割当連番が付される。また、時間単位が含まれる場合、取得時間が早い方の休暇を優先して割当連番が付される。
【0064】
割当時間は、休暇付与データの付与時間から、休暇取得データに割り当てた分単位の時間である。割当後残時間は、同じ休暇付与データに割り当てられた休暇取得データのうち、割当連番が自分の番号以下の割当時間の合計を、付与時間から控除した分単位の残時間である。割当後残時間は、取得された休暇の時間に応じて減少し、「0」になるとその休暇付与データはそれ以上の割当が不可となる。例えば、
図17(b)の例は、2021年3月10日に半日休暇(240分)を取得することで、付与時間の割当後残時間が1020分-240分=780分に減少した例である。
【0065】
取得しきれず残った残時間は、有効期間終了日に自然消滅する。自然消滅データは、取得ID、取得日数がNULLの行は、未取得の休暇が有効期間終了日に消滅することを意味する特別な割当データである。例えば、
図17(b)の例は、2021年3月10日以降に休暇取得がない場合、有効期間終了日に780分の休暇が消滅予定となっており、消滅後の割当後残時間が0分となることを示している。
【0066】
図18は、休暇の取得に応じた休暇残割当データの形成態様を示す図である。
図16(a)に示した休暇の付与状況において、
図18に示すように2021年5月12日に終日有休(480分)が取得され、2021年6月19日に前半有休(240分)が取得され、2021年7月30日に105分の時間有休が取得されたとする。2020年度からの年次有給休暇の繰り越し時間は780分であるため、2021年7月30日に105分の時間有休が取得されることで、780分-480分-240分-105分で「-45分」の不足が生ずる。このため、2020年度分として付与された年次有給休暇が全て使用されたタイミングで、2021年度分として付与された年次有給休暇の使用に移行したかたちで休暇残割当データが形成される。
【0067】
すなわち、この例の場合の休暇残割当データは、
図19に示すようになる。
図19(a)及び
図19(b)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データである。また、
図19(c)及び
図19(d)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データである。また、
図19(e)及び
図19(f)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データである。また、
図19(a)、
図19(c)及び
図19(e)は、列方向に連続する一連の休暇残割当データである。また、
図19(b)、
図19(d)及び
図19(f)は、列方向に連続する一連の休暇残割当データである。
【0068】
図19(b)に示すように、2021年7月30日に105分の時間有休が取得された際に、この105分のうち、60分は、2020年度の年次有給休暇を消費するように割り当て、残り45分は、
図19(d)に示すように、2021年度の年次有給休暇を消費するように割り当てる(分割割当)。これにより、消滅期限が早い休暇から優先して消費することができる。
【0069】
[休暇残割当処理の流れ]
次に、このような休暇残割当処理の流れを説明する。休暇残割当処理部25は、記憶部2に記憶されている休暇管理プログラムを実行することで、以下の各処理を行う。
【0070】
(入力パラメータの取得)
図20は、休暇残割当時に休暇残割当処理部25が取得するパラメータを説明するための図である。休暇残割当処理は、休暇付与データが追加、修正又は削除された際、又は、休暇取得データが追加又は削除された際に、再割当が必要な期間で行われる。休暇残割当処理部25は、休暇付与データが登録、変更、削除された場合、
図20(a)に示すように、該当データの「有効期間開始日」「有効期間終了日」を基準日として取得する。この
図20(a)の例の場合、休暇残割当処理部25は、有効期間開始日の2021年4月1日、及び、有効期間終了日の2023年3月31日を基準日として取得する。
【0071】
また、休暇残割当処理部25は、休暇取得データが登録又は削除された場合、
図20(b)に示す例においては、今回の休暇取得日となる2021年5月12日を基準日として取得する。この
図20(b)の例の場合、休暇残割当処理部25は、
図20(c)に示すように、Aさんの従業員コード、年次有給休暇の残管理区分、及び、2021年5月12日の基準日を入力パラメータとして取得する。
【0072】
(旧休暇残割当データの削除)
次に、休暇残割当処理部25は、休暇残割当データから、従業員コード及び残管理区分が入力パラメータと同一で、かつ、休暇取得日≧基準日となる旧休暇残割当データを削除する。
図21(a)及び
図21(b)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データの一例である。この
図21(a)及び
図21(b)に示すように、休暇残割当処理部25は、休暇付与データ又は休暇取得データの変動により、再割当の計算が必要となる期間の休暇残割当データを一旦削除する。
【0073】
(割当候補付与データの生成)
次に、休暇残割当処理部25は、休暇付与データのうち、従業員コード及び残管理区分が入力パラメータと同一で、かつ、有効期間開始日≦基準日≦有効期間終了日となる休暇付与データを取得する。そして、再割当の計算が必要となる期間に該当する割当候補付与データの一覧を作成する。
【0074】
具体的には、
図22(a)の例の場合、残管理区分が年次有給休暇の休暇付与データが、有効期間開始日≦基準日≦有効期間終了日となる休暇付与データである。このため、休暇残割当処理部25は、残管理区分が年次有給休暇の休暇付与データを取得し、
図22(b)に示すように、取得した休暇付与データを、有期期間終了日が早い順に並べ変えることで、割当候補付与データを生成する。
【0075】
(割当後残時間の設定)
次に、休暇残割当処理部25は、休暇残割当データのうち、付与IDが割当候補付与データと同一で、割当連番が最大値となる休暇残割当データに対して、割当後残時間を設定する。基準日以降の割当データは削除されているため、「割当連番が最大のデータの割当後残時間」が、基準日以降に割り当て可能な残時間を意味する。
【0076】
図23は、休暇残割当データの一例を示している。
図23(a)及び
図23(b)は、行方向に連続する一例の休暇残割当データである。この
図23の例の場合、付与IDが割当候補付与データと同一で、割当連番が最大値となる休暇残割当データは、
図23(b)に示すように割当連番がN+1の休暇残割当データである。このため、休暇残割当処理部25は、割当連番がN+1の休暇残割当データに対して、前年度の残りの休暇時間である780分を、割当後残時間として設定する。このような割当後残時間を保持することで、休暇残割当データの再計算を効率的に行うことができる。また、後述の休暇残をチェックする照会画面等にも効果がある。
【0077】
次に、休暇残割当処理部25は、休暇残割当データに設定した割当連番及び割当後残時間を取得し、
図24に示すように、割当候補付与データに対して付加する。
図24の例は、付与IDが×××1の割当候補付与データに対して、割当連番がN+1で、780分の割当後残時間が付加された例である。また、
図23に示した休暇残割当データの中に、×××2の付与IDの休暇残割当データは存在しない。この場合、休暇残割当処理部25は、
図24に示す×××2の付与IDの割当候補付与データに対しては、「0」の割当連番及び次年度分として付与された8640分の付与時間を割当後残時間として付加する。
【0078】
(割当計算対象データの生成)
次に、休暇残割当処理部25は、休暇取得データのうち、従業員コードと残管理区分が入力パラメータと同一で、休暇取得日≧基準日となる休暇取得データを取得する。
図25は、割当計算対象データの生成動作を説明するための図である。このうち、
図25(a)は、休暇取得データの一例を示している。この
図25(a)に示すように、休暇残割当処理部25は、従業員コードが「A」で、残管理区分が「年次有給休暇」で、休暇取得日≧基準日となる休暇取得データを取得する。
【0079】
そして、休暇残割当処理部25は、取得した休暇取得データを、
図25(b)に示すように、休暇取得日が早い順に並び替えることで、割当計算対象データを生成する。なお、同日付けの複数の休暇取得データが存在した場合、休暇残割当処理部25は、終日<前半<後半<時間の優先順に従って、同日付けの複数の休暇取得データを並び替えて割当計算対象データを生成する。
【0080】
(割当エラーデータの初期化)
次に、休暇残割当処理部25は、割当エラーデータ(後述の、割当時の超過データ)に、処理対象の取得IDが存在する場合、
図26に「STEP0」として示すように削除する。
【0081】
(割当計算対象データの取得)
次に、休暇残割当処理部25は、
図26に「STEP1」として示すように、処理対象の取得IDの割当計算対象データを取得する。
【0082】
(割当候補付与データの取得)
次に、休暇残割当処理部25は、
図27に示すように、処理対象の付与IDの割当候補付与データを取得する。
【0083】
(休暇残割当データの追加処理)
次に、休暇残割当処理部25は、
図28(a)及び
図28(b)に示す、取得した割当計算対象データ及び割当候補付与データに基づいて、
図28(c)に示すように休暇残割当データを追加処理する。割当時間は、取得時間のうち、割当後残時間以下の時間である。取得時間>割当後残時間の場合、すべてを割り当てきれないため、休暇残割当処理部25は、残りは後続の付与データから割り当てる。割当連番は、
図28(d)に示すように、休暇残割当処理部25は、割当候補付与データの現在の割当連番を一つインクリメント(N+2)して付加する。割当後残時間は、割当候補付与データの現在の割当後残時間から今回追加した割当時間を減算処理した時間である。
図28(d)の例の場合、休暇残割当処理部25は、現在の割当後残時間である780分から今回追加した割当時間の480分を減算処理した300分を、割当後残時間とする。
【0084】
(割当計算対象データ及び割当候補付与データの更新処理)
次に、このように休暇残割当データを追加処理した場合、休暇残割当処理部25は、
図29(a)に示すように、割当計算対象データの取得時間から割当時間を減算処理して(480分-480分=0分)、割当計算対象データを更新する。また、休暇残割当処理部25は、
図29(b)に示すように、割当連番を一つインクリメントすると共に(N+1+1=N+2)、割当後時間から割当時間を減算処理して(780分-480分=300分)、割当候補付与データを更新する。
【0085】
休暇残割当処理部25は、現在の割当計算対象データの取得時間>0の場合、2行目以降の割当候補付与データについて、上述の休暇残割当データの追加処理を繰り返し行う。1つの休暇付与データで残時間が足りない場合、ここで割当の分割が発生し、別の休暇付与データへの割り当てに切り替わる。
【0086】
(割当エラーデータの生成)
次に、休暇残割当処理部25は、すべての割当候補付与データを処理した後も、
図31(a)に示すように、現在の割当計算対象データの取得時間>0の場合、
図31(b)に示すような割当エラーデータを生成する。通常、休暇取得時点で残時間が足りない場合は、取得前のチェックにてエラーとなるが、次のようなケースでは事後的にエラーが発生するため、検知が必要となる。例えば、
図30(a)に示すように、当初の休暇取得予定日より前に別の休暇取得を割り込みで申請した結果、
図30(b)に示すように、当初の休暇に割り当て可能な付与がなくなった場合である。この場合、割当再計算の結果としてエラーが検出される。
【0087】
このようなオペレーションを事前チェックして禁止してしまうと、休暇取得の操作が難しくなり迅速な取得を阻害するおそれがあり、望ましくない。このため、事前に入力エラーにはせず、計算過程でエラーデータを生成しておき、後述のアラート検知で担当者および上長・勤怠管理者が把握できるようにし、有休以外の休暇残(代休、代替休暇等)がある場合、別の休暇に振り替える等の事後的な対処を行う。
【0088】
(分割割当処理)
休暇残割当処理部25は、このような処理を
図26に示した2行目以降の割当計算対象データに対しても行う。これより、
図32に示すように、順次、休暇残割当データが追加処理される。
図32(a)及び
図32(b)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データである。付与ID=XXX1の残時間が0となるため、上述の分割した割当処理が行われ、残りが付与ID=XXX2に割り当てられる。
【0089】
また、休暇残割当処理部25は、休暇残割当データの追加処理と共に、
図33(a)及び
図33(b)に示すように、割当候補付与データ、及び、割当計算対象データを、上述のように更新処理する。
【0090】
(自然消滅レコードの処理)
次に、休暇残割当処理部25は、
図34(a)に示す割当候補付与データから自然消滅レコードを抽出し、
図34(b)に示すように、休暇残割当データに自然消滅分の割り当てを追加処理する。自然消滅データの取得ID及び取得時間はNULLとし、割当時間は割当候補データの割当後残時間、割当後残時間は0とする。自然消滅データにより、有効期間終了日時点で必ず残時間が0となる。
【0091】
このように、有効期間終了時点で休暇残割当データに明示的に自然消滅レコードを記録することで、休暇残割当データのチェックにより、すべての休暇の取得可能残時間を把握することができる。
【0092】
[休暇取得時の動作]
次に、
図11のフローチャートを用いて説明した休暇取得時における休暇管理装置1の動作を説明する。休暇取得申請を行う場合、従業員は、
図36(a)~
図36(c)に示すように、従業員コード、休暇取得日、休暇種別及び申請理由を含む休暇取得申請を、端末装置9を介して作成し、休暇管理装置1に送信する。
図36(a)の例は、従業員のAさんが、通院のために、2021年8月22日に終日有休を申請する休暇取得申請の例である。また、
図36(b)の例は、従業員のAさんが、通院のために、2021年9月10日に終日有休を申請する休暇取得申請の例である。
【0093】
休暇管理装置1の割当エラー判定部26は、更新前に休暇取得申請の取得日時点で、休暇残時間の不足チェックを行う。
図37(a)及び
図37(b)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データである。また、この休暇残割当データは、
図37(c)及び
図37(d)に示す従業員Aさんの休暇残割当データである。休暇残割当処理部25は、このようなAさんの休暇残割当データから、付与ID単位で「有効期間開始日≦休暇取得日≦有効期間終了日」かつ、「休暇取得日≧申請日」となる「割当連番が最小」の行を取得する。取得データが存在し、かつ、(割当時間+割当後残時間)の合計≧取得時間の場合は、休暇の取得を許可し、これ以外は休暇残不足のエラーとする。不足エラーの場合、休暇残割当処理部25は、
図35に例示する休暇残が不足している旨のエラー画面を、従業員Aさんの端末装置9に送信し、休暇申請を却下する。
【0094】
さらに具体的に説明すると、
図36(a)に示したように、従業員のAさんが、通院のために行った、2021年8月22日に終日有休を取得する休暇取得申請は、
図38に示すように、2021年8月22日の申請時点で、可能残時間が8595分で、換算日及び時間が17.5日と3時間15分(03:15)である。このため、休暇残割当処理部25は、休暇の取得を許可する判定を行う。
【0095】
なお、可能時間残は、割当前残時間であり、割当時間+割当後残時間で算出された時間である。また、換算日及び時間は、各休暇残割当データの「付与換算1日所定時間/2」を用いて換算した日数及び時間である(半日単位換算)。
【0096】
同様に、
図36(b)に示したように、従業員のAさんが、通院のために行った、2021年9月10日に終日有休を取得する休暇取得申請は、
図38に示すように、2021年9月10日の申請時点で、可能残時間が8115分で、換算日及び時間が16.5日と3時間15分(03:15)である。このため、休暇残割当処理部25は、休暇の取得を許可する判定を行う。
【0097】
休暇未取得により休暇残が存在する場合、必ず有効期間終了日に自然消滅の割当データが存在する。このため、今回の休暇取得以降の直近の休暇残割当データから取得日時点の残時間を必ず逆算できる。
【0098】
次に、休暇の取得を許可する判定を行うと、休暇残割当処理部25は、休暇種別、休暇取得日、取得単位及び申請時間に基づいて、休暇取得データを作成する。
図39(a)は休暇種別マスタの模式図で、
図39(b)がAさんによる終日有休の休暇取得申請、
図39(c)がAさんによる前半有休の休暇取得申請、
図39(d)がAさんによる時間有休(16:00~17:45)の休暇取得申請、
図39(e)がAさんによる看護休暇(終日)の休暇取得申請、
図39(f)がAさんによる看護休暇(後半)の休暇取得申請、
図39(g)がAさんによる看護休暇(時間、15:00~17:45)の休暇取得申請の一例である。
【0099】
休暇残割当処理部25は、このような休暇取得申請に基づいて、
図39(h)に示すように取得ID,従業員コード、休暇取得日、休暇種別、残管理区分、取得日数、取得時間、換算1日所定時間及び申請理由の各項目を備えた休暇取得データを生成する。なお、取得日数は、取得単位区分が終日の場合、1.0日、取得単位区分が前半又は後半の場合、0.5日、取得単位区分が時間の場合、設定なしとなる。また、取得時間は、取得単位区分が終日、前半又は後半の場合、取得日数×換算1日所定時間で算出される。また、取得単位区分が時間の場合、申請時間を元に計算された時間(分)となる。
【0100】
(割当エラー処理)
次に、割当エラー判定部26による、休暇の割り込み取得により、将来の休暇取得が残不足になるか否かをチェックする処理である割当エラー処理を説明する。例えば、
図40(a)に示すように従業員Aさんから2022年3月15日に、通院のため、
図40(b)に示す休暇種別マスタ12に登録されている後半有休を取得する旨の休暇取得申請がされたとする。
【0101】
割当エラー判定部26は、
図40(c)に示すような、休暇取得申請を行った従業員Aの休暇種別の割当エラーデータが、記憶部2に記憶されているか否かを判別する。
図40(c)の例は、2022年3月25日に後半有休の休暇取得申請を行ったが、60分の超過時間が生じていたことを示す割当エラーデータが、記憶部2に記憶されていたとする。この場合、別の休暇への振替等が必要となる。このため、割当エラー判定部26は、
図40(d)に示すように、例えば取得可能な休暇残を超過している休暇であるため、別の休暇に振替を促すエラーメッセージを、従業員Aの端末装置9に送信する。
【0102】
なお、割当エラー判定部26は、超過日数及び時間を「時間+分」に換算して表示する。また、割当エラー判定部26は、複数日にまたがる連続休暇で、超過時間が1日を超える場合(超過時間>換算1日所定時間)、超過時間÷(換算1日所定時間/2)の商を日数として表示してもよい(例:560分=480+60+20=1.0日と1時間20分)。
【0103】
[従業員の雇用形態又は身分等の変更による付与換算1日所定時間の変更動作]
次に、
図12のフローチャートを用いて説明した、従業員の雇用形態又は身分等の変更による付与換算1日所定時間の変更動作を詳細に説明する。従業員の雇用形態又は身分等が変更により付与換算1日所定時間が変更となると、休暇付与データ、休暇取得データ及び休暇残割当データの換算1日所定時間も変更し、保持している休暇残時間を再計算する必要がある。以下、2022年1月16日付けで正社員(労働時間:8時間)であるAさんが、時短社員(労働時間:5時間)に、従業員区分が変更になる例を、看護休暇のデータを用いて説明する。
【0104】
まず、
図41(a)及び
図41(b)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データである。従業員区分変更処理部27は、休暇照会等で
図41(a)及び
図41(b)に示すAさんの休暇残割当データを参照し、割当時間+割当後残時間から逆算して終了時点残(3915分+0分=3915分)を算出し、従業員区分の変更時点直前の終了時点残を算出する。なお、
図41(a)及び
図41(b)に示す例は、照会期間終了日直近が自然消滅のため、割当後残時間が0となり、割当時間と終了時点残が一致した例である。
【0105】
次に、従業員区分変更処理部27は、このように算出した終了時点残を、現時点の付与換算1日所定時間(480分)で換算し、
図42(a)に示すように、8日と1時間15分の終了時点残を算出する。
【0106】
次に、従業員区分変更処理部27は、労務管理者の操作に対応して、
図42(b)に示すように、従業員マスタ15のAさんの従業員区分を正社員から時短社員に変更する。また、従業員区分変更処理部27は、
図42(c)に示すように、従業員経歴DB16の従業員経歴データのうち、Aさんの正社員での経歴終了日を更新すると共に、Aさんの時短社員での経歴開始日を追加する。
【0107】
次に、経歴改定処理部28は、経歴開始日時点の休暇の残日数及び残時分及び換算1日所定時間等を、
図42(d)に示す休暇登録画面、及び、
図42(h)に示す休暇付与データに追加する。すなわち、
図42(e)に示すように従業員区分が時短社員となると、
図42(f)の従業員区分マスタに登録されているように、換算1日所定時間が480分から300分に変更となる。また、
図42(g)の休暇残管理区分マスタに登録されているように、介護休暇に対しては時間単位の休暇の取得が認められている(あり)。
【0108】
このため、従業員区分変更処理部27は、時短社員に従業員区分が変更された後の休暇の付与日数として8日を、休暇登録画面に表示する。また、正社員の際に取得していた残り1時間15分(75分)の残休暇であるが、従業員区分変更処理部27は、従業員区分変更前の正社員の従業員区分の8時間(480分)の換算1日所定時間と、従業員区分変更後の時短社員の従業員区分の5時間(300分)の換算1日所定時間との比率に基づいて調整する。
【0109】
すなわち、この場合、従業員区分変更処理部27は、時短社員の換算1日所定時間である5時間と、正社員の換算1日所定時間である8時間との比を、残時間である75分に乗算処理することで、従業員区分変更後の残時間を算出する(75分×(5時間÷8時間)≒47分)。なお、取得を認めている時間単位に応じて端数処理(切上)を行うことが好ましい(切り捨てでもよい)。
【0110】
次に、従業員区分変更処理部27は、
図42(d)に示す休暇登録画面上の登録ボタンの操作を検出すると、
図42(h)に示すように、Aさんの休暇付与データに対して、看護休暇の付与登録日数、付与登録時分、付与時間及び換算1日所定時間等を追加する。この
図42(h)の例の場合、看護休暇の付与日及び有効期間開始日が2022年1月16日で、有効期間終了日が2022年3月31日である。また、看護休暇の付与登録日数及び付与登録時分は、8日と47分(00:47)で、トータルの付与時間は2447分である。このようなデータが、Aさんの休暇付与データに対して記憶される。
【0111】
(申請された看護休暇の処理)
次に、このような従業員区分変更処理が完了すると、休暇残割当処理部25は、換算1日所定時間変更後における、Aさんが看護休暇の取得を希望する日付で休暇取得申請を起票する。すなわち、
図43(a)は、Aさんにより申請された看護休暇の休暇取得申請である。
図43(b)に示す従業員マスタ15のAさんの従業員区分は正社員から時短社員に変更されている。また、
図43(c)に示す従業員区分設定マスタ13により、時短社員の換算1日所定時間は300分であることがわかる。
【0112】
休暇残割当処理部25は、換算1日所定時間変更後において、Aさんから2022年1月24日に看護休暇(後半)の取得を希望する休暇取得申請がされた場合、
図43(d)に示すように、この休暇申請の2022年1月24日の日付で、時短社員に対応する看護休暇(後半)の休暇取得データを追加する。この場合、1日5時間労働の時短社員の半日休暇であるため、取得時間は2.5時間の150分となる。なお、時短社員の換算1日所定時間は300分である。
【0113】
次に、休暇残割当処理部25は、
図43(e)及び
図43(f)に示すように、時短社員の半日分の休暇である150分の看護休暇が取得されたことを示す休暇残割当データを追加する。
図43(e)及び
図43(f)は、行方向に連続する一連の休暇残割当データである。
図43(f)に示すように、従業員区分変更後の看護休暇(後半)の取得により、150分の休暇時間が消費され、2447分所有していた休暇時間が(割当後残時間が)、2297分(2447分-150分)となったことがわかる。
【0114】
このように、従業員区分が途中で変更になった場合でも、休暇付与データを分割し、従業員区分の変更前後の換算1日所定時間をそれぞれ保持する。これにより、従業員区分の変更前後における休暇残の日数⇔時間の換算を適切に行うことができ、従業員区分が変更された後でも、正しい休暇残を把握することができる。
【0115】
[実施の形態の効果]
今日における働き方改革等によって、計画的な休暇取得を推進していく流れがある中で、休暇の種別(年次有給休暇、代休等)から適切な休暇取得を促す仕組みが労務の制度面でもシステム面でも求められている。また、小さな子供を養育しながら夫婦で共働きしている場合、及び、高度高齢化社会化による介護の問題等、家族の怪我又は病気等により突発的な休暇を取得することが余儀なくされることも多い。
【0116】
時間単位の年次有給休暇制度は、2010年4月の改正労働基準法によって導入されたが、昨今のこれらの生活と仕事の調和を図る「ワークライフバランス」の考え方が浸透し、近年になって導入する企業が急速に増えている。
【0117】
また、2021年1月施行の育児・介護休業法改正により、子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得が法令で義務付けられ、時間単位で取得可能な休暇の種類も増えることになった(例:年次有給休暇、代替休暇、子の看護休暇、介護休暇)。
【0118】
また、こうした出勤・退勤時間の調整が常時必要となることが増えたことで、育児の短時間勤務制度又は介護の時短勤務措置を活用した時短勤務に切り替える働き方も増えている。
【0119】
また、最初は通常の所定労働時間で働いていた従業員が、育児又は介護のために、一旦時短勤務になり、何年か後に、再度、通常勤務に戻る等、ライフイベントに合わせて働き方を柔軟に変えながらも、働き続けられる環境が求められている。こうした従業員の所定労働時間の変更は、日数単位の休暇と時間単位の休暇の残管理状況に変更が必要となるため、休暇管理業務が複雑になる。
【0120】
また、年次有給休暇において、日単位での休暇のみだった状態から「5日分を時間単位で休暇取得してよい」という制度変更があった。この場合、年始に40日の休暇残があった場合、「5日分(40時間)を時間単位で管理」、残り「35日分を日単位で管理」等のように、時間単位と日数単位を分離して管理していた。その結果、日単位での休暇残を使い切った場合(35日休暇した場合)、時間単位の休暇残があっても、休暇を使い切ったと判定される不都合を生じていた。また「1日の所定労働時間」が変わった場合、「時間単位の休暇残」を「1日の新しい労働時間」に基づいて計算して、再設定する必要があり、大変面倒であった。
【0121】
また、労働基準法又は育児・介護休業法によって時間単位の休暇が定められているが、段階的な法改正や制度の複雑化に起因して、システムでの対応可能範囲は限られていることが多い。例えば、子供の看護休暇に関して、当初は、1日単位の取得しか認められていなかったが、平成29年法改正で半日単位の取得が認められるようになり、令和元年12月法改正(令和3年1月施行)で時間単位取得が可能となる等、最初から機能を想定して盛り込むことは困難である。例えば、日単位の休暇の一部を時間単位で取得した場合、1日の残り時間が時間単位取得専用に確保されてしまい、翌年に繰り越し困難となる。また、従業員の身分の変更に伴う労働時間の変更に対応できない、又は、手動によるメンテナンスが必要となり、対応が煩雑になる。
【0122】
また、制度対応はあくまで最低限の条件であり、労働者にとって有利になるような法令で定める以上の待遇を就業規則等で定めている場合(例えば15分単位又は30分単位での休暇取得等)に、対応できないことが多い。
【0123】
このようなことから、実施の形態の休暇管理装置1は、休暇の事由による制御の違いをすべてマスタ化することで、制度改正の対応に柔軟に対応可能としている。また、休暇の管理単位を内部的には最小の「分」単位で管理し、休暇の取得方法(日単位又は時間単位)に応じて換算又は表示方法を切り替えることで、正確な休暇残管理と利便性を両立している。
【0124】
また、実施の形態の休暇管理装置1は、所定外労働計算用の所定時間(例:7時間45分)と、休暇時間換算用の所定時間(例:8時間)を分けて管理することで、残業時間計算と休暇時間計算の異なる計算規則に対応可能している。また、休暇データ上に換算用の所定時間を非正規化して持つことで、途中で従業員の従業員区分の変更により労働時間(換算1日所定時間)が変わる場合でも、変更前と変更後で異なる所定時間のデータを画一的に換算可能としている。
【0125】
このようなことから、実施の形態の休暇管理装置1は、以下の効果を得ることができる。
【0126】
1.実施の形態の休暇管理装置1は、複数の休暇種類の、日単位、半日単位及び時間単位の休暇を、マスタ制御により一括管理することができ、汎用的な休暇付与、取得及び残管理の計算を可能とすることができる。
【0127】
2.休暇付与データ、休暇取得データ及び休暇残割当データ上、休暇を時間の「分」で管理すると共に、その時点での従業員の「換算1日所定時間」をデータ上に持つことにより、所定労働時間が変わる雇用形態等の変更に対応可能とすることができる。
【0128】
3.また、制度上求められる「時間単位」を上回る「分単位」の取得も認められることから、データ上はすべて、時間の「分」「を基準に計算できる。なお、1分単位での休暇を取得する運用は考えづらいが、労働時間が9:00~17:45(計7時間45分)の会社で、16:00に帰宅するため1時間45分の時間単位休暇を取得するなど、15分単位などキリが良い時間での取得を認める運用が行われる場合に、実施の形態の休暇管理装置1は、対応することができる。
【0129】
4.従業員区分設定マスタ13に「換算1日所定時間」を設けることで、雇用形態に応じて勤務実績計算の所定労働時間(例:7.5時間)とは別に、時間休暇換算用の1日の所定時間(例:8時間)を管理できる。また、その時点での休暇付与データ、休暇消費データ及び休暇残割当データの換算1日所定時間に自動で反映させることができる。また、1日の休暇を時間休に割り当てた場合、端数が生じないよう1時間単位の換算を行うことができる。
【0130】
5.また、従業員マスタ15の従業員区分の変更を経歴管理することにより、休暇付与データの経歴改定を自動で行うことができ、所定労働時間の変更に伴う既存休暇の消滅・時分単位の換算再付与によって、所定労働時間の変更後も正確な休暇残を引き継ぐことができる。
【0131】
6.休暇種別マスタ12に「残管理区分」及び「取得単位区分」(終日、前半、後半、時間)を設けることで、複数の休暇種類に対して統一的な制御を可能とすることができる。このため、日単位でしか取得できない休暇、時間単位で取得できる休暇等、企業が採用する就業規則又は制度改正に応じて、柔軟な設定が可能となる。
【0132】
7.休暇付与データの消滅日と休暇取得日の関係から、労働者に不利とならない優先順位の割当を、日数単位又は時間単位の休暇取得が混在しても正確に計算及び管理することができる。
【0133】
8.割り込みの申請等によって発生する、休暇残が不足する際に日数及び時間まで含めた警告を表示できる。
【0134】
そして、実施の形態の休暇管理装置1は、このような効果を得られることから、企業側は、労務管理の負荷及びコストを抑えて、実施の形態の休暇管理装置1を導入することができる。また、労働者側は、働き方が変わっても休暇の取得を簡単な操作で柔軟に申請することができる。このため、実施の形態の休暇管理装置1は、働き方改革及びワークライフバランスに貢献することができる。
【0135】
また、2021年1月施行の育児・介護休業法改正などにより、日単位はもちろん、時間単位でも取得可能な休暇が増えている。また、同じ社員であっても「育児中は時短勤務をおこなう」「育児が落ち着いたら通常勤務にもどる」といった柔軟な働き方も増えている。これにより、「あとどれだけの休暇が取得可能か」の管理(休暇残管理)が煩雑化しており、時間単位休暇を導入する際の障害となっている。実施の形態の休暇管理装置1は、複数種類の時間単位又は日単位の休暇残管理を可能とすると共に、時短勤務から通常勤務など「1日の所定労働時間」が変わっても、休暇残の変更をスムーズに行うことができる。この結果、時間単位休暇の導入を促すことができる。
【0136】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0137】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0138】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0139】
[他の実施の形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0140】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0141】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0142】
また、休暇管理装置1に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも図示の如く物理的に構成されていることを要しない。
【0143】
例えば、休暇管理装置1が備える処理機能、特に制御部3及び制御部3にて行われる各処理機能については、その全部又は任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて業務支援装置1に機械的に読み取られる。すなわち、ROM又はHDD等の記憶部等には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部3を構成する。
【0144】
また、このコンピュータプログラムである休暇管理プログラムは、休暇管理装置1に対して任意のネットワークを介して接続された他のサーバ装置に記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0145】
また、本実施形態で説明した処理を実行するための休暇管理プログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及び、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0146】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコード又はバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0147】
記憶部2は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0148】
また、休暇管理装置1は、既知のパーソナルコンピュータ装置又はワークステーション等の情報処理装置で構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置で構成してもよい。また、情報処理装置は、本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラム又はデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0149】
さらに、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部又は一部を、各種の付加等に応じて又は機能付加に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、従業員の休暇管理業務に有用である。
【符号の説明】
【0151】
1 休暇管理装置
2 記憶部
3 制御部
4 通信インターフェース部
5 入出力インターフェース部
6 入力装置
7 出力装置
8 ネットワーク
9 端末装置
11 休暇残管理区分マスタ
12 休暇種別マスタ
13 従業員区分設定マスタ
14 労働時間マスタ
15 従業員マスタ
16 従業員経歴データベース
21 表示制御部
22 入力処理部
23 更新処理部
24 休暇残判定部
25 休暇残割当処理部
26 割当エラー判定部
27 従業員区分変更処理部
28 経歴改定処理部