(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029085
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ガス濃度制御方法およびガス濃度制御システム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20230224BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230224BHJP
F24F 3/16 20210101ALI20230224BHJP
【FI】
A61L9/14
A61L9/01 E
F24F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135183
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 亘
【テーマコード(参考)】
3L053
4C180
【Fターム(参考)】
3L053BD05
4C180AA07
4C180CB01
4C180EA58X
4C180KK02
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】制御対象空間の全域のガス濃度制御を行う。
【解決手段】ガス濃度制御システム1は、制御対象空間10のレイアウト情報i1に基づいて流体シミュレーションを行うことで、制御対象空間10のシミュレーション上のガス濃度分布データD1を求めるシミュレーション演算部300と、制御対象空間10の一部を構成するサブ空間11の実際のガス濃度を検出する濃度センサ200と、ガス濃度分布データD1および実際のガス濃度に基づいて、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定する濃度分布推定部420と、濃度分布推定部420で推定されたガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させるガス放出制御部430と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス濃度制御が行われる空間である制御対象空間のレイアウト情報に基づいて流体シミュレーションを行うことで、前記制御対象空間のシミュレーション上のガス濃度分布データを生成するシミュレーション演算工程と、
前記制御対象空間の一部を構成するサブ空間の実際のガス濃度を検出するガス濃度検出工程と、
前記ガス濃度分布データおよび前記実際のガス濃度に基づいて、全ての前記サブ空間を含む前記制御対象空間のガス濃度分布を推定する濃度分布推定工程と、
前記濃度分布推定工程で推定された前記ガス濃度分布に基づいて、前記制御対象空間にガスまたはミストを放出するガス放出制御工程と、
を含むガス濃度制御方法。
【請求項2】
前記シミュレーション演算工程では、前記ガス濃度分布データに基づき、前記制御対象空間に含まれる1以上の前記サブ空間のガス濃度を用いて1以上の前記サブ空間を含む全ての前記サブ空間のガス濃度を推定するガス濃度推定式が導出され、
前記濃度分布推定工程では、前記ガス濃度推定式と前記実際のガス濃度とに基づいて、前記制御対象空間のガス濃度分布が推定される
請求項1に記載のガス濃度制御方法。
【請求項3】
前記ガス濃度推定式は、前記制御対象空間において変えることができない固有項と、前記制御対象空間のレイアウトに応じて変わる可変項とを含み、
前記シミュレーション演算工程では、前記制御対象空間のレイアウト情報が変更された場合に、前記ガス濃度推定式の前記可変項が変更され、前記ガス濃度推定式が再導出される
請求項2に記載のガス濃度制御方法。
【請求項4】
前記シミュレーション演算工程では、前記ガス濃度を検出する位置に応じて、前記サブ空間のガス濃度に掛け合わされる係数が変更され、前記ガス濃度推定式が導出される
請求項2または3に記載のガス濃度制御方法。
【請求項5】
さらに、前記ガス濃度を検出する検出位置、および、前記ガス濃度を検出する検出数を提案する検出提案工程を含み、
前記検出提案工程では、前記サブ空間と前記検出位置とが所定の距離以上に離れている場合に、前記検出位置を移動すること、または、前記検出数を増やすことが提案される
請求項4に記載のガス濃度制御方法。
【請求項6】
さらに、前記ガスまたは前記ミストを放出する放出位置、および、前記ガスまたは前記ミストを放出する放出数を提案する放出提案工程を含み、
前記放出提案工程では、前記サブ空間と前記放出位置とが所定の距離以上に離れている場合に、前記放出位置を移動すること、または、前記放出数を増やすことが提案される
請求項4または5に記載のガス濃度制御方法。
【請求項7】
前記ガス放出制御工程では、全ての前記サブ空間のうちの少なくとも1つの前記サブ空間のガス濃度が、所定の閾値よりも低い場合に、前記制御対象空間に前記ガスまたは前記ミストが放出される
請求項1~6のいずれか1項に記載のガス濃度制御方法。
【請求項8】
前記ガス放出制御工程では、前記制御対象空間の利用状況に応じて、前記制御対象空間に対する前記ガスまたは前記ミストの放出が作動または停止される
請求項1~6のいずれか1項に記載のガス濃度制御方法。
【請求項9】
ガス濃度制御が行われる空間である制御対象空間のレイアウト情報に基づいて流体シミュレーションを行うことで、前記制御対象空間のシミュレーション上のガス濃度分布データを生成するシミュレーション演算部と、
前記制御対象空間の一部を構成するサブ空間の実際のガス濃度を検出する濃度センサと、
前記ガス濃度分布データおよび前記実際のガス濃度に基づいて、全ての前記サブ空間を含む前記制御対象空間のガス濃度分布を推定する濃度分布推定部と、
前記濃度分布推定部で推定された前記ガス濃度分布に基づいて、前記制御対象空間にガスまたはミストを放出させるガス放出制御部と、
を備えるガス濃度制御システム。
【請求項10】
前記ガスまたは前記ミストは、次亜塩素酸水を含み、
前記ガス放出制御部は、前記制御対象空間の塩素ガス濃度を0.08ppm以上0.2ppm以下の範囲に制御する
請求項9に記載のガス濃度制御システム。
【請求項11】
前記ガス放出制御部は、気化された状態の前記次亜塩素酸水を前記制御対象空間に放出させる
請求項10に記載のガス濃度制御システム。
【請求項12】
前記シミュレーション演算部は、前記ガス濃度分布データに基づき、前記制御対象空間に含まれる1以上の前記サブ空間のガス濃度を用いて1以上の前記サブ空間を含む全ての前記サブ空間のガス濃度を推定するガス濃度推定式を導出し、
前記濃度分布推定部は、前記ガス濃度推定式と前記実際のガス濃度とに基づいて、前記制御対象空間のガス濃度分布を推定する
請求項9~11のいずれか1項に記載のガス濃度制御システム。
【請求項13】
前記ガス濃度推定式は、前記制御対象空間において変えることができない固有項と、前記制御対象空間のレイアウトに応じて変わる可変項とを含み、
前記シミュレーション演算部は、前記制御対象空間のレイアウト情報が変更された場合に、前記ガス濃度推定式の前記可変項を変更して、前記ガス濃度推定式を再導出する
請求項12に記載のガス濃度制御システム。
【請求項14】
前記シミュレーション演算部は、前記ガス濃度を検出する位置に応じて、前記サブ空間のガス濃度に掛け合わされる係数を変更し、前記ガス濃度推定式を導出する
請求項12または13に記載のガス濃度制御システム。
【請求項15】
前記ガス放出制御部は、全ての前記サブ空間のうちの少なくとも1つの前記サブ空間のガス濃度が、所定の閾値よりも低い場合に、前記制御対象空間に前記ガスまたは前記ミストを放出させる
請求項9~14のいずれか1項に記載のガス濃度制御システム。
【請求項16】
前記ガス放出制御部は、前記制御対象空間の利用状況に応じて、前記制御対象空間に対する前記ガスまたは前記ミストの放出を作動または停止させる
請求項9~14のいずれか1項に記載のガス濃度制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス濃度を制御するガス濃度制御方法、および、ガス濃度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間中に存在する物体を除菌するために、空間中に次亜塩素酸水を放出する技術が知られている。特許文献1には、ガスまたはミスト状の次亜塩素酸水の放出量を制御することで、空間中のガス濃度を所定の値に近づける方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガス濃度制御が行われる空間である制御対象空間のレイアウトによっては、空間内にガスの濃度勾配が生じ、制御対象空間の全域のガス濃度制御を適切に行うことができないことがある。
【0005】
本開示は、制御対象空間の全域のガス濃度制御を行うことができるガス濃度制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様におけるガス濃度制御方法は、ガス濃度制御が行われる空間である制御対象空間のレイアウト情報に基づいて流体シミュレーションを行うことで、前記制御対象空間のシミュレーション上のガス濃度分布データを生成するシミュレーション演算工程と、前記制御対象空間の一部を構成するサブ空間の実際のガス濃度を検出するガス濃度検出工程と、前記ガス濃度分布データおよび前記実際のガス濃度に基づいて、全ての前記サブ空間を含む前記制御対象空間のガス濃度分布を推定する濃度分布推定工程と、前記濃度分布推定工程で推定された前記ガス濃度分布に基づいて、前記制御対象空間にガスまたはミストを放出するガス放出制御工程と、を含む。
【0007】
本開示の一態様におけるガス濃度制御システムは、ガス濃度制御が行われる空間である制御対象空間のレイアウト情報に基づいて流体シミュレーションを行うことで、前記制御対象空間のシミュレーション上のガス濃度分布データを生成するシミュレーション演算部と、前記制御対象空間の一部を構成するサブ空間の実際のガス濃度を検出する濃度センサと、前記ガス濃度分布データおよび前記実際のガス濃度に基づいて、全ての前記サブ空間を含む前記制御対象空間のガス濃度分布を推定する濃度分布推定部と、前記濃度分布推定部で推定された前記ガス濃度分布に基づいて、前記制御対象空間にガスまたはミストを放出させるガス放出制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のガス濃度制御方法等によれば、制御対象空間の全域のガス濃度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1におけるガス濃度制御システムの一例を示す図である。
【
図2】シミュレーション演算部およびガス濃度制御部を有するコンピュータを示す図である。
【
図3】実施の形態1におけるガス濃度制御システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図5】制御対象空間のレイアウト情報の一例を示す図である。
【
図6】シミュレーション上のガス濃度分布データの一例を示す図である。
【
図7】ガス濃度推定式の導出過程を模式的に示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるガス濃度制御方法を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態2におけるガス濃度制御システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図11A】ガス濃度推定式の導出過程を模式的に示す図である。
【
図11B】ガス濃度推定式の導出過程を模式的に示す図である。
【
図12】実施の形態2におけるガス濃度推定式の可変係数の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態2におけるガス濃度推定式の可変係数の一例を示す図である。
【
図14】制御対象空間のサブ空間に設置されたデバイスから別のサブ空間までの距離を示す図である。
【
図15】実施の形態3におけるガス濃度制御システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図16】実施の形態3におけるガス濃度制御方法を示すフローチャートである。
【
図18】制御対象空間のレイアウト情報の他の一例を示す図である。
【
図20】制御対象空間のレイアウト情報の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態等について、図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施の形態等は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態等で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態等における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。また、各図において、同一の物体を図示している場合であっても、便宜上、縮尺を変更している場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
[ガス濃度制御システムのハードウェア構成]
図1は、本実施の形態におけるガス濃度制御システム1の一例を示す図である。
【0013】
ガス濃度制御システム1は、空間中にガスまたはミストを放出し、空間中のガス濃度を制御するシステムである。ガス濃度制御システム1は、シミュレーション演算部300と、濃度センサ200と、ガス濃度制御部400と、ガス放出装置500と、を備えている。シミュレーション演算部300およびガス濃度制御部400は、コンピュータ100内に設けられている。
【0014】
シミュレーション演算部300およびガス濃度制御部400と、濃度センサ200およびガス放出装置500とは、ネットワークを介して通信接続されている。なお、シミュレーション演算部300およびガス濃度制御部400は、クラウド上のコンピュータに設けられていてもよい。
【0015】
濃度センサ200は、制御対象空間10のガス濃度を検出するセンサである。濃度センサ200は、制御対象空間10内に設置され、制御対象空間10内で検出したガス濃度を、ネットワークを介してガス濃度制御部400に送信する。濃度センサ200の具体例については後述する。
【0016】
ガス放出装置500は、制御対象空間10内にガスを放出する装置である。ガス放出装置500は、ガス濃度制御部400から送信された制御指令に基づき、制御対象空間10内にガスまたはミストを放出する。ガス放出装置500の具体例については後述する。
【0017】
シミュレーション演算部300は、制御対象空間10内の流体シミュレーションを行い、ガス濃度制御を行うために必要なガス濃度推定式を導出する。ガス濃度制御部400は、シミュレーション演算部300で導出したガス濃度推定式、および、濃度センサ200から送信されたガス濃度に基づいて、ガス放出装置500を制御する。シミュレーション演算部300およびガス濃度制御部400は、例えば、1つのコンピュータによって構成される。なお、シミュレーション演算部300およびガス濃度制御部400は、別々の異なるコンピュータによって構成されてもよい。
【0018】
図2は、シミュレーション演算部300およびガス濃度制御部400を有するコンピュータ100を示す図である。
【0019】
コンピュータ100は、入力部101、演算回路102、メモリ103、出力部104、記憶部105、データベース106、および通信部107を備えている。
【0020】
通信部107は、ネットワークを介して濃度センサ200およびガス放出装置500と無線または有線で通信する。無線通信の通信方式は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、またはZigBee(登録商標)であってもよく、その他の方式であってもよい。
【0021】
入力部101は、ユーザによる入力操作を受け付けるHMI(Human Machine Interface)としての機能を有し、例えばキーボード、マウス、タッチセンサ、タッチパッドなどを備える。後述する制御対象空間10のレイアウト情報などは、入力部101を介してコンピュータ100に入力される。
【0022】
出力部104は、画像または文字などを表示するディスプレイを有し、そのディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどである。なお、出力部104は、画像または文字などを印刷するプリンタを有していてもよく、演算回路102から出力されるデータをファイル形式で記憶部105に格納する機能を有していてもよい。
【0023】
記憶部105は、演算回路102への各命令が記述されたプログラム(すなわちコンピュータプログラム)105aを格納している。プログラム105aは、例えば、リムーバブルメディアまたはネットワークを介して記憶部105に格納される。リムーバブルメディアは、例えばCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリなどである。このため、通信部107は、リムーバブルメディアのプログラム105aを読み込むインターフェースを備えていてもよい。
【0024】
また、記憶部105には、流体解析を行うためのシミュレーションソフトが格納されている。シミュレーションソフトとしては、例えば、CFD(Computational Fluid Dynamics)またはBIM(Building Information Modeling)などが挙げられる。
【0025】
また、記憶部105には、その演算回路102の処理によって一時的に生成される各テンポラリーデータ105bが格納される。なお、このような記憶部105は、不揮発性の記録媒体であって、例えば、ハードディスクなどの磁気記憶装置、光ディスク、半導体メモリなどである。本実施の形態では、記憶部105に、制御対象空間10のレイアウト情報i1、シミュレーション演算部300の演算結果であるガス濃度分布データD1およびガス濃度推定式E1が格納される。これらについては後述する。
【0026】
メモリ103には、演算回路102によって読み出されて展開されたプログラム105aが一時的に保存される。このようなメモリ103は、例えば揮発性のRAM(Random Access Memory)である。
【0027】
演算回路102は、メモリ103に展開されたプログラム105aを実行する回路であって、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などである。演算回路102は、プログラム105aを実行するときには、記憶部105に格納されている各テンポラリーデータ105bを用いてもよい。演算回路102は、シミュレーションソフトを用いて制御対象空間10の流体シミュレーションを行い、ガス濃度推定式E1を演算により導出する。また、演算回路102は、ガス濃度推定式E1および制御対象空間10の実際のガス濃度に基づいて、ガス放出装置500を制御するための制御指令を生成する。以下、ガス濃度制御システム1の具体的な構成について説明する。
【0028】
[ガス濃度制御システムの具体的な構成]
実施の形態1におけるガス濃度制御システム1について、
図3~
図8を参照しながら説明する。
【0029】
図3は、実施の形態1におけるガス濃度制御システム1の機能的な構成を示すブロック図である。
【0030】
図3に示すように、ガス濃度制御システム1は、シミュレーション演算部300と、濃度センサ200と、ガス濃度制御部400と、ガス放出装置500と、を備える。シミュレーション演算部300およびガス濃度制御部400の機能的な構成は、記憶部105に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0031】
前述したようにシミュレーション演算部300は、制御対象空間10の流体シミュレーションを行い、ガス濃度制御を行うために必要なガス濃度推定式E1を導出する。シミュレーション演算部300は、濃度分布データ生成部310と、ガス濃度推定式導出部320とによって構成されている。
【0032】
シミュレーション演算部300には、入力部101を介して、制御対象空間10のレイアウト情報i1が入力される。
【0033】
図4は、制御対象空間10の一例を示す図である。
図4には、制御対象空間10を上側から見た図が示されている。
【0034】
制御対象空間10は、ガス濃度制御が行われる空間であり、例えば、壁などによって囲まれている。制御対象空間10は、住宅、倉庫、ビルなどの建物内の空間であってもよいし、車両、航空機などの移動体内の空間であってもよい。
【0035】
制御対象空間10には、制御対象空間10内の所定の位置のガス濃度を検出する濃度センサ200が設けられている。また、制御対象空間10には、制御対象空間10内にガスまたはミストを放出するガス放出装置500が設けられている。本実施の形態では、制御対象空間10の一部を構成するサブ空間11のガス濃度に着目し、ガス濃度制御が実行される。
【0036】
図5は、制御対象空間10のレイアウト情報i1の一例を示す図である。
【0037】
レイアウト情報i1は、制御対象空間10の図面情報、および、制御対象空間10に設けられた物に関する情報である。レイアウト情報i1は、例えば、制御対象空間10の形状、サイズ、サブ空間11の数、および、制御対象空間10内に設けられている物の位置(座標)に関する情報を含む。
図5には、制御対象空間10内に配置された濃度センサ200およびガス放出装置500のそれぞれの位置が示されている。レイアウト情報i1には、パーティションなどの仕切り、および、窓、換気扇などの開口に関する情報が含まれていてもよい。
【0038】
シミュレーション演算部300へのレイアウト情報i1の入力は、手動で行われるが、それに限られず、自動で行われてもよい。例えば、濃度センサ200およびガス放出装置500が、GPS(Global Positioning System)などの位置検出機能を備えている場合、濃度センサ200およびガス放出装置500から送信された位置情報等に基づいて、レイアウト情報i1が入力されてもよい。
【0039】
濃度分布データ生成部310は、入力されたレイアウト情報i1に基づいて、制御対象空間10に対するガス濃度分布のシミュレーションを実行し、ガス濃度分布データD1を生成する。シミュレーションは、前述したCFDまたはBIMなどを活用した流体解析によって実行される。
【0040】
図6は、シミュレーション上のガス濃度分布データD1の一例を示す図である。
【0041】
同図には、制御対象空間10内のサブ空間11ごとに、シミュレーション上のガス濃度が示されている。同図では、数値(ppb)および色の濃淡によってガス濃度が示されている。サブ空間11は、制御対象空間10の一部を構成する空間であり、制御対象空間10を所定の数で分割することで形成される。
図6には、縦5×横5からなる25個のサブ空間11が示されているが、サブ空間11の数は、それに限られず、9個であってもよいし、100個であってもよい。複数のサブ空間11のそれぞれの面積は、演算処理の負担を軽減するため、同じであることが望ましい。
【0042】
例えば、制御対象空間10が密閉空間であり、かつ、ガスの失活などが無い場合、ガスの放出から十分な時間が経過した後のガス濃度分布は一定になると考えられるが、仕切りおよび開口などを有する制御対象空間10では、ガス濃度分布は一定になるとは限らない。そこで本実施の形態では、制御対象空間10を構成するサブ空間11ごとのガス濃度に着目して、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行う。
【0043】
濃度分布データ生成部310で生成されたガス濃度分布データD1は、記憶部105に保存され、また、ガス濃度推定式導出部320に出力される。
【0044】
ガス濃度推定式導出部320は、取得したガス濃度分布データD1に基づいて、制御対象空間10のガス濃度を推定するためのガス濃度推定式E1を導出する。
【0045】
図7は、ガス濃度推定式E1の導出過程を模式的に示す図である。
【0046】
例えば、ガス濃度推定式導出部320は、濃度センサ200が設置されているサブ空間11のシミュレーション上のガス濃度を使い、濃度センサ200が設置されていない他のサブ空間11のガス濃度を推定するガス濃度推定式E1を導出する。制御対象空間10に設置される濃度センサ200は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。ガス濃度推定式E1の導出のために使用されるガス濃度分布データD1は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0047】
ガス濃度推定式導出部320で導出されるガス濃度推定式E1は、以下の(式1)で表される。(式1)の左辺は、各サブ空間11に対応するガス濃度演算値d(x,y)である。
【0048】
【0049】
(式1)の(x,y)は、制御対象空間10におけるサブ空間11の位置(座標)を示す。Nは、制御対象空間10に設置される濃度センサ200の数である。sは、ガス濃度分布データD1に基づくシミュレーション上のガス濃度であり、snは、濃度センサ200が設置されたサブ空間11におけるシミュレーション上のガス濃度である。例えば、制御対象空間10に濃度センサ200が2つ設置される場合、第1の濃度センサが設置されるサブ空間11のガス濃度はs1で表され、第2の濃度センサが設置されるサブ空間11のガス濃度はs2で表される。wn(x,y)は、上記のガス濃度snに対して設定される各サブ空間11の係数であり、c(x,y)は、各サブ空間11の定数項である。
【0050】
ガス濃度推定式E1は、(式1)に基づく各サブ空間11のガス濃度演算値d(x,y)と、ガス濃度分布データD1から得られたシミュレーション上の各サブ空間11のガス濃度s(x,y)との差分の二乗平均値が最小となるように、wn(x,y)およびc(x,y)を求めることで導出される。
【0051】
図7には、2つの濃度センサ200をサブ空間(1,1)、サブ空間(5,5)に設置した場合において、ガス濃度推定式E1を導出する例が示されている。以降において、各位置(座標)に対応するサブ空間を、サブ空間(x,y)と表すことがある。
【0052】
図7において、ガス濃度推定式導出部320は、2つの濃度センサ200が設置されているサブ空間(1,1)、サブ空間(5,5)のシミュレーション上のガス濃度s
1,s
2を使い、濃度センサ200が設置されていない他のサブ空間11を含む全てのサブ空間11のガス濃度演算値d(x,y)を求める。ガス濃度推定式導出部320は、ガス濃度演算値d(x,y)がガス濃度分布データD1のガス濃度s(x,y)に近づくように、w
n(x,y)およびc(x,y)を近似計算で求め、ガス濃度推定式E1を導出する。
【0053】
このように、ガス濃度推定式導出部320は、ガス濃度分布データD1に基づき、制御対象空間10に含まれる1以上のサブ空間11のガス濃度を用いて1以上のサブ空間11を含む全てのサブ空間11のガス濃度を推定するガス濃度推定式E1を導出する。このガス濃度推定式E1により、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定することが可能となる。
【0054】
ガス濃度推定式導出部320で導出されたガス濃度推定式E1は、ガス濃度制御部400に出力され、ガス濃度制御部400の記憶部450に保存される。
【0055】
図3に示す濃度センサ200は、制御対象空間10内の実際のガス濃度をリアルタイムで検出する。濃度センサ200は、ガス濃度に応じて電流などの出力が変化するセンサ素子、および、センサ素子の出力を濃度値に変換する変換装置を有する。センサ素子は、例えば、半導体式、定電位電解式、接触燃焼式、赤外線吸光式などの方式でガス濃度を検出する素子である。センサ素子としては、目的とする塩素ガスの濃度制御範囲に感度を持つ電気化学式センサEC4-200-L2(Amphenol SGX Sensortech社製)を使用することができる。センサ素子のキャリブレーションは、ガス検知器XPS-7およびX7CL89(新コスモス電機社製)によって実行されてもよい。
【0056】
濃度センサ200によって検出されたガス濃度は、ネットワークを介してガス濃度制御部400へ送信される。
【0057】
ガス濃度制御部400は、ガス濃度推定式導出部320から出力されたガス濃度推定式E1、および、濃度センサ200から送信された実際のガス濃度に基づいて、制御対象空間10のガス濃度分布を推定し、ガス濃度制御を行う。
【0058】
ガス濃度制御部400は、ガス濃度取得部410と、濃度分布推定部420と、ガス放出制御部430と、記憶部450と、を備えている。
【0059】
記憶部450は、コンピュータ100の記憶部105の一部である。記憶部450には、ガス濃度推定式導出部320から出力されたガス濃度推定式E1が保存されている。
【0060】
ガス濃度取得部410は、濃度センサ200から送信されたガス濃度を取得する。
【0061】
濃度分布推定部420は、ガス濃度取得部410で取得したガス濃度、および、記憶部450に保存されたガス濃度推定式E1に基づいて、制御対象空間10の全域のガス濃度分布を推定する。
【0062】
濃度分布推定部420で使用されるガス濃度推定式E1は、以下の(式2)で表される。(式2)の左辺は、各サブ空間11に対応するガス濃度推定値d(x,y)である。(式2)の右辺は、(式1)の右辺のsnがvnに置き換わった式となっている。
【0063】
【0064】
(式2)に示す(x,y)、N、wn(x,y)、c(x,y)は、(式1)と同じである。vは、濃度センサ200で検出した実際のガス濃度であり、vnは、濃度センサ200が設置されたサブ空間11における実際のガス濃度である。例えば、制御対象空間10に濃度センサ200が2つ設置される場合、第1の濃度センサが設置されるサブ空間11のガス濃度はv1で表され、第2の濃度センサが設置されるサブ空間11のガス濃度はv2で表される。
【0065】
ガス放出制御部430は、濃度分布推定部420で求めた制御対象空間10の全域のガス濃度分布に基づいて、ガス放出装置500の作動を制御し、制御対象空間10のガス濃度を制御する。
【0066】
ガス濃度制御の対象は、例えば、殺菌効果を有することで知られる次亜塩素酸水の放出によって生じる塩素ガスである。ガス放出制御部430は、労働安全衛生法に基づく作業環境中の塩素ガス濃度の基準(0.5ppm)、および黄色ブドウ球菌を用いた事前の効果検証実験の結果から、例えば0.08ppm以上0.2ppm以下の範囲で、制御対象空間10中の塩素ガス濃度を制御する。
【0067】
図8は、ガス放出装置500を模式的に示す図である。
【0068】
ガス放出装置500は、次亜塩素酸水を貯えるタンク510、および、配管520を介してタンク510に接続された噴霧装置530を備えている。ガス放出装置500は、タンク510に貯えられた次亜塩素酸水を噴霧装置530でガス化またはミスト化して制御対象空間10へ放出する。液体の次亜塩素酸水が金属に付着することによって生じる腐食を防ぐため、次亜塩素酸水は、気化された状態で放出されることが望ましい。
【0069】
ガス放出制御部430は、ガス放出装置500を用いて、気化された状態の次亜塩素酸水を制御対象空間10に放出させる。
【0070】
例えば、ガス放出制御部430は、全てのサブ空間11のうちの少なくとも1つのサブ空間11のガス濃度推定値d(x,y)が、所定の閾値よりも低い場合に、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させる。なお、ガス放出制御部430は、目標とするガス濃度範囲に上限値と下限値を設け、全てのサブ空間11のガス濃度推定値d(x,y)が上限値を上回らない場合であって、かつ、少なくとも1つのサブ空間11のガス濃度推定値d(x,y)が下限値よりも低い場合に、ガスを放出することとしてもよい。
【0071】
また、ガス放出制御部430は、複数のガス放出装置500を用い、制御対象空間10中のガス濃度分布が均一に近づくよう、ガスの放出量を個別に制御してもよい。例えば、ガス放出制御部430は、ガス濃度推定値d(x,y)が全てのサブ空間11の平均値よりも高い値を示すサブ空間11に設置されているガス放出装置500からはガスを放出させず、平均値よりも低い値を示すサブ空間11に設置されているガス放出装置500からガスを放出させてもよい。
【0072】
本実施の形態のガス濃度制御システム1は、制御対象空間10のレイアウト情報i1に基づいて流体シミュレーションを行うことで、制御対象空間10のシミュレーション上のガス濃度分布データD1を求めるシミュレーション演算部300と、制御対象空間10の一部を構成するサブ空間11の実際のガス濃度を検出する濃度センサ200と、ガス濃度分布データD1および実際のガス濃度に基づいて、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定する濃度分布推定部420と、濃度分布推定部420で推定されたガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させるガス放出制御部430と、を備える。
【0073】
このように、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定し、推定したガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させることで、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行うことができる。
【0074】
また、このガス濃度制御システム1によれば、制御対象空間10のうちの一部のサブ空間11に濃度センサ200を設置すればよいので、濃度センサ200の設置数を抑えることができる。
【0075】
また、ガス濃度分布を推定するためのガス濃度推定式E1を用いることで、シミュレーションソフトを使ってガス濃度分布を推定する場合に比べて、ガス濃度分布を推定する際の計算量を削減することができる。そのため、ガス濃度分布を推定するためにかかる時間を短縮できる。これにより、ガス濃度制御の応答性を高め、制御対象空間10のガス濃度を所望の範囲内に制御することができる。
【0076】
[ガス濃度制御方法]
実施の形態1のガス濃度制御方法について、
図9を参照しながら説明する。
【0077】
図9は、実施の形態1におけるガスの濃度制御方法を示すフローチャートである。
【0078】
ガス濃度制御方法は、シミュレーション演算工程と、ガス濃度検出工程と、濃度分布推定工程と、ガス放出制御工程と、を含む。
【0079】
まず、ガス濃度制御方法では、制御対象空間10のレイアウト情報i1に対応するガス濃度分布データD1またはガス濃度推定式E1が記憶部105に保存されているか否かが判断される(ステップS10)。ガス濃度分布データD1またはガス濃度推定式E1が記憶部105に保存されている場合(S10にてYes)、改めてシミュレーション演算工程を行う必要がないので、ステップS30へ進む。ガス濃度分布データD1またはガス濃度推定式E1が記憶部105に保存されていない場合(S10にてNo)、次のステップであるシミュレーション演算工程へ進む。
【0080】
シミュレーション演算工程(ステップS20)では、まず、制御対象空間10のレイアウト情報i1が取得される(ステップS21)。次に、レイアウト情報i1に基づいて流体シミュレーションが行われる。これにより、制御対象空間10のシミュレーション上のガス濃度分布データD1が生成される(ステップS22)。
【0081】
また、シミュレーション演算工程では、このガス濃度分布データD1に基づき、ガス濃度推定式E1が導出される(ステップS23)。具体的には、制御対象空間10に含まれる1以上のサブ空間11のガス濃度を用いて1以上のサブ空間11および1以上のサブ空間11と異なる他のサブ空間11を含む全てのサブ空間11のガス濃度を推定するためのガス濃度推定式E1が導出される。
【0082】
ガス濃度推定式E1は、前述したように、各サブ空間11のガス濃度演算値d(x,y)と、ガス濃度分布データD1から得られたシミュレーション上の各サブ空間11のガス濃度s(x,y)との差分の二乗平均値が最小となるように、wn(x,y)およびc(x,y)を求めることで導出される。
【0083】
ガス濃度検出工程(ステップS30)では、制御対象空間10の一部のサブ空間11における実際のガス濃度が検出される。
【0084】
濃度分布推定工程(ステップS40)では、ガス濃度分布データD1および実際のガス濃度に基づいて、制御対象空間10のガス濃度分布が推定される。具体的には、ステップS22で導出したガス濃度推定式E1とステップS30で検出した実際のガス濃度とに基づいて、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布が推定される。
【0085】
ガス放出制御工程(ステップS50)では、ステップS40で推定されたガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストが放出される。
【0086】
例えば、ステップS50では、全てのサブ空間11のうちの少なくとも1つのサブ空間11のガス濃度が、所定の閾値よりも低いかを判断し(ステップS51)、ガス濃度が所定の閾値よりも低い場合に(S51にてYes)、制御対象空間10にガスまたはミストが放出される(ステップS52)。一方、ガス濃度が所定の閾値よりも低くない場合(S51にてNo)、制御対象空間10へのガスまたはミストの放出が停止される(ステップS53)。
【0087】
なお、ガス濃度制御方法では、ステップS50にて、制御対象空間10の利用状況に応じて、制御対象空間10に対するガスまたはミストの放出が作動または停止されてもよい。例えば、制御対象空間10に人が存在するか否かなどの条件によって、ガス濃度の上限値および下限値が自動的に変更されてもよい。人の検知は、天井に設置された人感センサによって実行されてもよいし、LPS(Local Positioning system)にて人が所有するビーコンデバイスを検出することで実行されてもよい。
【0088】
また、ガス濃度制御方法では、上記に続いて、レイアウト変更判定工程、および、ガス濃度制御の継続可否判定工程も実行される。
【0089】
レイアウト変更判定工程では、制御対象空間10のレイアウトが変更されたか否かが判定される(ステップS60)。制御対象空間10のレイアウトが大きく変更された場合(S60にてYes)、レイアウト情報i1に対応するガス濃度分布データD1およびガス濃度推定式E1を再計算する必要がある。そのため、ステップS20に戻り、シミュレーション演算工程を再び実行する。これにより、ガス濃度推定式E1を再導出する。
【0090】
ガス濃度制御の継続可否判定工程では、ガス濃度制御を継続して実行するか否かが判定される(ステップS70)。ガス濃度制御が継続される場合(S70にてYes)、ステップS30に戻って再びガス濃度制御が実行される。ガス濃度制御が継続されない場合(S70にてNo)、制御対象空間10でのガス濃度制御が中止される。ガス濃度制御を継続するか否かの判定基準は、例えば実行開始からの経過時間、曜日や時刻、制御対象空間10の使用状態などを考慮して設定される。上記の判定基準を設定した場合、必要なときにガスの放出を行うことができ、ガス源の使用量を抑えることができる。
【0091】
(実施の形態2)
実施の形態2におけるガス濃度制御システム1Aについて、
図10~
図14を参照しながら説明する。実施の形態2では、ガス濃度推定式E1が固有項および可変項によって構成されている例について説明する。
【0092】
図10は、実施の形態2におけるガス濃度制御システム1Aの機能的な構成を示すブロック図である。
【0093】
ガス濃度制御システム1Aは、シミュレーション演算部300と、濃度センサ200と、ガス濃度制御部400と、ガス放出装置500と、を備える。実施の形態1と同じ構成については、説明を省略する。
【0094】
【0095】
実施の形態2において、ガス濃度推定式導出部320で導出されるガス濃度推定式E1は、以下の(式3)で表される。(式3)の左辺は、各サブ空間11に対応するガス濃度演算値d(x,y)である。
【0096】
【0097】
(式3)のwsn(x,y)およびwln(x,y)は、ガス濃度snに対して設定される各サブ空間11の係数であり、c(x,y)は、各サブ空間11の定数項である。
【0098】
wsn(x,y)は、制御対象空間10において変えることができない固有係数である。この固有係数は、制御対象空間10に対して一意に定まる定数行列であり、例えば、制御対象空間10に存在する窓および換気扇などの固定因子に基づいて定まる。
【0099】
wln(x,y)は、制御対象空間10のレイアウトに応じて変わる可変係数である。この可変係数は、制御対象空間10のレイアウトに依存して変わる変数行列であり、例えば、濃度センサ200、ガス放出装置500またはパーティションなどのガスの流れを妨げる物体などの変動因子によって可変する。
【0100】
図12および
図13は、ガス濃度推定式E1の可変係数の一例を示す模式図である。
図12の(a)および
図13の(a)には、第1の濃度センサの位置が同じで、第2の濃度センサの位置が同じで、ガス放出装置の位置が異なる例が示されている。
【0101】
図12の(b)~(d)および
図13の(b)~(d)に示すように、ガス濃度s
1に掛け合わされる可変係数wl
n(x,y)は、各サブ空間11と第1の濃度センサとの距離、および、各サブ空間11とガス放出装置との距離に基づいて算出される。
【0102】
一般にガス濃度は、濃度センサ200に近いほど正確なガス濃度が得られるため(すなわち信頼性が高いため)、濃度センサ200との距離が近いサブ空間11ほど、可変係数wln(x,y)が高く設定される。また、ガス濃度は、ガス放出装置500に近いほど正確なガス濃度が得られるため、ガス放出装置500との距離が短いサブ空間11ほど、可変係数wln(x,y)が高く設定される。
【0103】
また、パーティションなどのガスの流れを妨げる物体がある場合は、パーティションを迂回して到達する最短距離が使用される。
【0104】
図14は、制御対象空間10のサブ空間(1,1)に設置されたデバイスから別のサブ空間(5,5)までの距離を示す図である。なお、デバイスは、本実施の形態における濃度センサ200またはガス放出装置500を指す。
【0105】
図14の(a)および(b)に示すように、制御対象空間10内に設置されるデバイスの位置や、パーティションなどのガスの流れを妨げる物体に応じて、デバイスからサブ空間11までの距離が変化する。上記の可変係数wl
n(x,y)は、これらの距離の変化に応じて定められる。このようにガス濃度推定式導出部320では、デバイスの位置に応じて、サブ空間11のガス濃度に掛け合わされる可変係数が変更され、ガス濃度推定式E1が導出される。
【0106】
ガス濃度推定式E1は、(式3)に基づく各サブ空間11のガス濃度演算値d(x,y)と、ガス濃度分布データD1から得られたシミュレーション上の各サブ空間11のガス濃度s(x,y)との差分の二乗平均値が最小となるように、wsn(x,y)およびwln(x,y)およびc(x,y)を求めることで導出される。
【0107】
図11Aおよび
図11Bには、2つの濃度センサ200をサブ空間(1,1)、サブ空間(5,5)に設置した場合において、ガス濃度推定式E1を導出する例が示されている。
【0108】
ガス濃度推定式導出部320は、
図11Aおよび
図11Bに示すように、2つの濃度センサ200が設置されているサブ空間(1,1)、サブ空間(5,5)のシミュレーション上のガス濃度s
1,s
2を使い、濃度センサ200が設置されていない他のサブ空間11を含む全てのサブ空間11のガス濃度演算値d(x,y)を求める。ガス濃度推定式導出部320は、ガス濃度演算値d(x,y)がガス濃度分布データD1のガス濃度s(x,y)に近づくように、ws
n(x,y)およびwl
n(x,y)およびc(x,y)を近似計算で求め、ガス濃度推定式E1を導出する。
【0109】
実施の形態2によれば、ガス濃度推定式E1を固有項および可変項で構成することで、例えば制御対象空間10にレイアウト変更が生じた場合であっても、可変項のみを変更することで、ガス濃度推定式E1の再導出を簡易に行うことができる。そのため、制御対象空間10に発生し得る軽微なレイアウト変更に対して、新たに流体シミュレーションを行うことなく、レイアウト変更に対応するガス濃度推定式E1を簡易に導出することができる。
【0110】
(実施の形態3)
実施の形態3におけるガス濃度制御システム1Bについて、
図15および
図16を参照しながら説明する。実施の形態3では、ガス濃度制御システム1Bが、ガス濃度の検出に関する提案を行う検出提案部460、および、ガスまたはミストの放出に関する提案を行う放出提案部470を備えている例について説明する。
【0111】
図15は、実施の形態3におけるガス濃度制御システム1Bの機能的な構成を示すブロック図である。
【0112】
ガス濃度制御システム1Bは、シミュレーション演算部300と、濃度センサ200と、ガス濃度制御部400と、ガス放出装置500と、を備える。
【0113】
ガス濃度制御部400は、ガス濃度取得部410と、濃度分布推定部420と、ガス放出制御部430と、記憶部450と、を備えている。さらに、実施の形態3のガス濃度制御部400は、検出提案部460および放出提案部470を備えている。
【0114】
検出提案部460は、ガス濃度を検出する検出位置、および、ガス濃度を検出する検出数を提案する。例えば、検出提案部460は、サブ空間11と上記の検出位置とが所定の距離以上に離れている場合に、検出位置を移動すること、または、検出数を増やすことを提案する。
【0115】
放出提案部470は、ガスまたはミストを放出する放出位置、および、ガスまたはミストを放出する放出数を提案する。例えば、放出提案部470は、サブ空間11と上記の放出位置とが所定の距離以上に離れている場合に、放出位置を移動すること、または、放出数を増やすことを提案する。
【0116】
ここで、濃度センサ200およびガス放出装置500の設置位置の自己診断について説明する。
【0117】
ガス濃度制御部400で使用されるガス濃度推定式E1は、以下の(式4)で表される。(式4)の左辺は、各サブ空間11に対応するガス濃度推定値d(x,y)である。(式4)の右辺は、(式2)の右辺のsnがvnに置き換わった式となっている。
【0118】
【0119】
(式4)のwsn(x,y)およびwln(x,y)は、ガス濃度snに対して設定される各サブ空間11の係数であり、c(x,y)は、各サブ空間11の定数項である。
【0120】
wln(x,y)は、制御対象空間10のレイアウトに応じて変わる可変係数である。この可変係数は、制御対象空間10のレイアウトに依存して変わる変数行列であり、例えば、濃度センサ200、ガス放出装置500またはパーティションなどのガスの流れを妨げる物体などの変動因子によって可変する。
【0121】
レイアウト変更後において、ガス濃度制御部400は、各濃度センサ200と各サブ空間11との距離lsn(x,y)、および、各ガス放出装置500と各サブ空間との距離ldm(x,y)を算出する。ガス濃度制御部400は、算出した距離lsn(x,y)および距離ldm(x,y)に基づき、濃度センサ200およびガス放出装置500の設置位置の自己診断を行う。
【0122】
前述したように、ガス濃度は、濃度センサ200に近いほど正確なガス濃度が得られるため、濃度センサ200との距離が近いサブ空間11ほど、可変係数wln(x,y)が高く設定される。また、ガス濃度は、ガス放出装置500に近いほど正確なガス濃度が得られるため、ガス放出装置500との距離が短いサブ空間11ほど、可変係数wln(x,y)が高く設定される。
【0123】
本実施の形態では、この性質を利用して、2つの距離条件(1)および(2)を設定し、濃度センサ200およびガス放出装置500の設置位置の自己診断を行う。
【0124】
距離条件(1)は、制御対象空間10の各サブ空間11とN個の濃度センサ200との距離ls1(x,y)・・・lsN(x,y)のうち、少なくとも1つの距離が閾値以内にあることである。
【0125】
距離条件(2)は、制御対象空間10の各サブ空間11と、M個のガス放出装置500との距離ld1(x,y)・・・ldM(x,y)の平均のばらつきが閾値以内であることである。
【0126】
すなわち、ガス濃度制御部400は、制御対象空間10の各サブ空間11について、一定の距離に少なくとも1つの濃度センサ200が存在しているか、また、ガス放出装置500が適切に分散されて配置されているかを診断する。
【0127】
検出提案部460は、サブ空間11と濃度センサ200とが所定の距離以上に離れている場合に、濃度センサ200の位置を移動すること、または、濃度センサ200の数を増やすことを提案する。放出提案部470は、サブ空間11とガス放出装置500とが所定の距離以上に離れている場合に、ガス放出装置500の位置を移動すること、または、ガス放出装置500の数を増やすことを提案する。
【0128】
図16は、実施の形態3におけるガス濃度制御方法を示すフローチャートである。
図16には、制御対象空間10のレイアウトを変更した後に、変更後のレイアウトが適正か否かを自己診断するフローが示されている。なお、以下において、濃度センサ200およびガス放出装置500をデバイスと呼ぶ。
【0129】
例えば、ガス濃度制御部400は、ステップS60にて制御対象空間10のレイアウトが変更されたと判断された場合に(S60にてYes)、ガス濃度分布データD1およびガス濃度推定式E1を再計算する前に、変更後のレイアウトに対する自己診断を行う(ステップS80)。
【0130】
まず、ガス濃度制御部400は、各サブ空間11と各デバイスとの距離を算出し(ステップS81)、各サブ空間11とデバイスとの距離が適切か否かを判断する(ステップS82)。
【0131】
各サブ空間11とデバイスとの距離が適切である場合(S82にてYes)、ステップS20に戻ってシミュレーション演算を実行する。各サブ空間11とデバイスとの距離が適切でない場合(S82にてNo)、ガス濃度制御部400は、以下に示す処理を実行する。
【0132】
ガス濃度制御部400は、デバイスの位置変更のみによって距離条件を満たすことができるか否かを判断する(ステップS83)。
【0133】
例えば、ガス濃度制御部400は、デバイスの位置変更のみによって距離条件を満たすことができる場合(S83にてYes)、推奨されるデバイスの設置位置を出力部104に提示させる(ステップS84)。
【0134】
例えば、ガス濃度制御部400は、デバイスの位置変更のみによって距離条件を満たすことができない場合(S83にてNo)、デバイスを追加すること、および、デバイスを追加する設置を出力部104に提示させる(ステップS85)。
【0135】
これによれば、制御対象空間10においてレイアウト変更が生じた場合に、レイアウト変更に起因するガス濃度制御の精度低下を診断し、制御対象空間10を使用するユーザへの提案を行うことができる。そのため、制御対象空間10に発生し得る軽微なレイアウト変更に対して、ガス濃度制御の精度を保証することができる。
【0136】
(まとめ)
本実施の形態におけるガス濃度制御方法は、ガス濃度制御が行われる空間である制御対象空間10のレイアウト情報i1に基づいて流体シミュレーションを行うことで、制御対象空間10のシミュレーション上のガス濃度分布データD1を生成するシミュレーション演算工程と、制御対象空間10の一部を構成するサブ空間11の実際のガス濃度を検出するガス濃度検出工程と、ガス濃度分布データD1および実際のガス濃度に基づいて、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定する濃度分布推定工程と、濃度分布推定工程で推定されたガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストを放出するガス放出制御工程と、を含む。
【0137】
このように、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定し、推定したガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストを放出することで、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行うことができる。
【0138】
また、シミュレーション演算工程では、ガス濃度分布データD1に基づき、制御対象空間10に含まれる1以上のサブ空間11のガス濃度を用いて1以上のサブ空間11を含む全てのサブ空間11のガス濃度を推定するガス濃度推定式E1が導出され、濃度分布推定工程では、ガス濃度推定式E1と実際のガス濃度とに基づいて、制御対象空間10のガス濃度分布が推定されてもよい。
【0139】
このように、ガス濃度推定式E1と実際のガス濃度とに基づいて、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定することで、推定したガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行うことができる。また、ガス濃度推定式E1を用いることで、ガス濃度分布を簡易に推定することができる。
【0140】
また、ガス濃度推定式E1は、制御対象空間10において変えることができない固有項と、制御対象空間10のレイアウトに応じて変わる可変項とを含み、シミュレーション演算工程では、制御対象空間10のレイアウト情報i1が変更された場合に、ガス濃度推定式E1の可変項が変更され、ガス濃度推定式E1が再導出されてもよい。
【0141】
これによれば、例えば制御対象空間10にレイアウト変更が生じた場合であっても、可変項のみを変更することで、ガス濃度推定式E1の再導出を簡易に行うことができる。これにより、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を簡易に行うことができる。
【0142】
また、シミュレーション演算工程では、ガス濃度を検出する位置に応じて、サブ空間11のガス濃度に掛け合わされる係数が変更され、ガス濃度推定式E1が導出されてもよい。
【0143】
これによれは、ガス濃度推定式E1の正確性を高めることができる。これにより、ガス濃度分布を正確に推定し、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行うことができる。
【0144】
また、ガス濃度制御方法は、さらに、ガス濃度を検出する検出位置、および、ガス濃度を検出する検出数を提案する検出提案工程を含む。検出提案工程では、サブ空間11と検出位置とが所定の距離以上に離れている場合に、検出位置を移動すること、または、検出数を増やすことが提案されてもよい。
【0145】
これによれば、例えば、制御対象空間10においてレイアウト変更が生じた場合に、レイアウト変更に起因するガス濃度制御の精度低下を抑制することができる。
【0146】
また、ガス濃度制御方法は、さらに、ガスまたはミストを放出する放出位置、および、ガスまたはミストを放出する放出数を提案する放出提案工程を含む。放出提案工程では、サブ空間11と放出位置とが所定の距離以上に離れている場合に、放出位置を移動すること、または、放出数を増やすことが提案されてもよい。
【0147】
これによれば、例えば、制御対象空間10においてレイアウト変更が生じた場合に、レイアウト変更に起因するガス濃度制御の精度低下を抑制することができる。
【0148】
また、ガス放出制御工程では、全てのサブ空間11のうちの少なくとも1つのサブ空間11のガス濃度が、所定の閾値よりも低い場合に、制御対象空間10にガスまたはミストが放出されてもよい。
【0149】
このように、少なくとも1つのサブ空間11のガス濃度が、所定の閾値よりも低い場合に、制御対象空間10にガスまたはミストを放出することで、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を適切に行うことができる。
【0150】
また、ガス放出制御工程では、制御対象空間10の利用状況に応じて、制御対象空間10に対するガスまたはミストの放出が作動または停止されてもよい。
【0151】
これによれば、必要なときにガスの放出を行うことができ、ガス源の使用量を抑えることができる。これにより、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を適切に行うことができる。
【0152】
本実施の形態におけるガス濃度制御システム1は、ガス濃度制御が行われる空間である制御対象空間10のレイアウト情報i1に基づいて流体シミュレーションを行うことで、制御対象空間10のシミュレーション上のガス濃度分布データD1を生成するシミュレーション演算部300と、制御対象空間10の一部を構成するサブ空間11の実際のガス濃度を検出する濃度センサ200と、ガス濃度分布データD1および実際のガス濃度に基づいて、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定する濃度分布推定部420と、濃度分布推定部420で推定されたガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させるガス放出制御部430と、を備える。
【0153】
このように、ガス濃度制御システム1が、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定し、推定したガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させることで、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行うことができる。
【0154】
また、ガスまたはミストは、次亜塩素酸水を含み、ガス放出制御部430は、制御対象空間10の塩素ガス濃度を0.08ppm以上0.2ppm以下の範囲に制御してもよい。
【0155】
これによれば、制御対象空間10の全域の塩素ガス濃度の制御を適切に行うことができる。
【0156】
また、ガス放出制御部430は、気化された状態の次亜塩素酸水を制御対象空間10に放出させてもよい。
【0157】
これによれば、液体の次亜塩素酸水によって生じる腐食を防ぐことができる。これにより、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を適切に行うことができる。
【0158】
また、シミュレーション演算部300は、ガス濃度分布データD1に基づき、制御対象空間10に含まれる1以上のサブ空間11のガス濃度を用いて1以上のサブ空間11を含む全てのサブ空間11のガス濃度を推定するガス濃度推定式E1を導出し、濃度分布推定部420は、ガス濃度推定式E1と実際のガス濃度とに基づいて、制御対象空間10のガス濃度分布を推定してもよい。
【0159】
このように、ガス濃度推定式E1と実際のガス濃度とに基づいて、全てのサブ空間11を含む制御対象空間10のガス濃度分布を推定することで、推定したガス濃度分布に基づいて、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行うことができる。また、ガス濃度推定式E1を用いることで、ガス濃度分布を簡易に推定することができる。
【0160】
また、ガス濃度推定式E1は、制御対象空間10において変えることができない固有項と、制御対象空間10のレイアウトに応じて変わる可変項とを含み、シミュレーション演算部300は、制御対象空間10のレイアウト情報i1が変更された場合に、ガス濃度推定式E1の可変項を変更して、ガス濃度推定式E1を再導出してもよい。
【0161】
これによれば、例えば制御対象空間10にレイアウト変更が生じた場合であっても、可変項のみを変更することで、ガス濃度推定式E1の再導出を簡易に行うことができる。これにより、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を簡易に行うことができる。
【0162】
また、シミュレーション演算部300は、ガス濃度を検出する位置に応じて、サブ空間11のガス濃度に掛け合わされる係数を変更し、ガス濃度推定式E1を導出してもよい。
【0163】
これによれは、ガス濃度推定式E1の正確性を高めることができる。これにより、ガス濃度分布を正確に推定し、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を行うことができる。
【0164】
また、ガス放出制御部430は、全てのサブ空間11のうちの少なくとも1つのサブ空間11のガス濃度が、所定の閾値よりも低い場合に、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させてもよい。
【0165】
このように、少なくとも1つのサブ空間11のガス濃度が、所定の閾値よりも低い場合に、制御対象空間10にガスまたはミストを放出させることで、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を適切に行うことができる。
【0166】
また、ガス放出制御部430は、制御対象空間10の利用状況に応じて、制御対象空間10に対するガスまたはミストの放出を作動または停止させてもよい。
【0167】
これによれば、必要なときにガスの放出を行うことができ、ガス源の使用量を抑えることができる。これにより、制御対象空間10の全域のガス濃度制御を適切に行うことができる。
【0168】
(その他の実施の形態)
以上、本開示におけるガス濃度制御システム等について、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各実施の形態に施したものや、各実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0169】
例えば、
図4には制御対象空間10の一例が示され、
図5には制御対象空間10のレイアウト情報i1の一例が示されているが、本開示のガス濃度制御システムにて使用される制御対象空間およびレイアウト情報は、これらに限られない。
【0170】
図17は、制御対象空間10の他の一例を示す図である。
図18は、制御対象空間10のレイアウト情報i1の他の一例を示す図である。
【0171】
図17の(a)には、制御対象空間10に、第1の濃度センサ、第2の濃度センサ、ガス放出装置、開口およびパーティションが設けられている。
図17の(b)には、第1の濃度センサからサブ空間までの距離が、サブ空間ごとに示されている。
図17の(c)には、第1の濃度センサから所定のサブ空間までの距離(経路長)の求め方が示されている。例えば、サブ空間(1,1)に位置する第1の濃度センサからサブ空間(1,5)までの経路は矢印A1で示され、第1の濃度センサからサブ空間(5,5)までの経路は矢印A2で示され、第1の濃度センサからサブ空間(5,1)までの経路は矢印A3で示され、第1の濃度センサからサブ空間(3,1)までの経路は矢印A4で示される。
【0172】
図18には、レイアウト情報i1として、制御対象空間10の形状、サイズ、サブ空間の数、濃度センサの位置、ガス放出装置の位置、開口部の位置、パーティション(障害物)の位置に関する情報が含まれている。
図18に示すレイアウト情報i1は、入力部101を用いた操作入力によって記憶部105に記憶される。
図17および
図18に示す制御対象空間10およびレイアウト情報i1も、本開示のガス濃度制御システムにて使用可能である。
【0173】
図19は、制御対象空間10の他の一例を示す図である。
図20は、制御対象空間10のレイアウト情報i1の他の一例を示す図である。
【0174】
図19の(a)には、制御対象空間10に、第1の濃度センサ、第2の濃度センサ、ガス放出装置、開口およびパーティションが設けられている。
図19の(b)には、ガス放出装置からサブ空間までの距離が、サブ空間ごとに示されている。
図19の(c)には、ガス放出装置から所定のサブ空間までの距離(経路長)の求め方が示されている。例えば、サブ空間(5,3)に位置するガス放出装置からサブ空間(3,1)までの経路は矢印B1で示され、ガス放出装置からサブ空間(1,1)までの経路は矢印B2で示され、ガス放出装置からサブ空間(1,5)までの経路は矢印B3で示される。
【0175】
図20には、レイアウト情報i1として、制御対象空間10の形状、サイズ、サブ空間の数、濃度センサの位置、ガス放出装置の位置、開口部の位置、パーティション(障害物)の位置に関する情報が含まれている。
図20に示すレイアウト情報i1は、入力部101を用いた操作入力によって記憶部105に記憶される。
図19および
図20に示す制御対象空間10およびレイアウト情報i1も、本開示のガス濃度制御システムにて使用可能である。
【0176】
例えば、上記のガス濃度制御システムは、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、ディスプレイユニット、キーボード、及びマウスなどから構成されるコンピュータシステムにより構成されても良い。RAMまたはハードディスクドライブには、ガス濃度制御プログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、ガス濃度制御プログラムに従って動作することにより、ガス濃度制御システムは、その機能を達成する。ここでガス濃度制御プログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0177】
さらに、上記のガス濃度制御システムを構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されても良い。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0178】
さらにまた、上記のガス濃度制御システムを構成する構成要素の一部または全部は、コンピュータに脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されても良い。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、及びRAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含んでも良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有しても良い。
【0179】
また、本開示は、上記のガス濃度制御システムにより実行されるガス濃度制御方法であるとしても良い。また、このガス濃度制御方法は、コンピュータがガス濃度制御プログラムを実行することで実現されてもよいし、ガス濃度制御プログラムからなるデジタル信号で実現されても良い。
【0180】
さらに、本開示は、ガス濃度制御プログラムまたは上記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体で構成されてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどである。また、ガス濃度制御プログラムは、非一時的な記録媒体に記録されている上記デジタル信号で構成されてもよい。
【0181】
また、本開示は、上記ガス濃度制御プログラムまたは上記デジタル信号を、電気通信回線、無線若しくは有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、又はデータ放送等を経由して伝送することで構成されてもよい。
【0182】
また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリとを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、ガス濃度制御プログラムを記憶しており、マイクロプロセッサは、ガス濃度制御プログラムに従って動作するとしても良い。
【0183】
また、ガス濃度制御プログラムまたは上記デジタル信号を上記非一時的な記録媒体に記録して移送することにより、またはガス濃度制御プログラムまたは上記デジタル信号を、上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施されてもよい。
【0184】
また、ガス濃度制御システムは、サーバと、サーバに対してネットワークを介して接続されたユーザが所持する端末とで構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本開示のガスの濃度制御方法等は、塩素ガス濃度を制御することによる空間中の物体の除菌などの、空間の環境制御の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0186】
1、1A、1B ガス濃度制御システム
10 制御対象空間
11 サブ空間
100 コンピュータ
101 入力部
102 演算回路
103 メモリ
104 出力部
105 記憶部
105a プログラム
105b テンポラリーデータ
106 データベース
107 通信部
200 濃度センサ
300 シミュレーション演算部
310 濃度分布データ生成部
320 ガス濃度推定式導出部
400 ガス濃度制御部
410 ガス濃度取得部
420 濃度分布推定部
430 ガス放出制御部
450 記憶部
460 検出提案部
470 放出提案部
500 ガス放出装置
510 タンク
520 配管
530 噴霧装置
D1 ガス濃度分布データ
E1 ガス濃度推定式
i1 レイアウト情報