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  • 特開-筒状構造物の解体方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002910
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】筒状構造物の解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
E04G23/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103755
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】594162515
【氏名又は名称】阪和興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(72)【発明者】
【氏名】八木 和芳
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA11
2E176DD21
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】 破片を地上に降ろすのが容易であるとともに、地上に降ろした後の破片の処理が容易となるような筒状構造物の解体方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 筒状構造物10を上から順に解体する方法であって、残存する筒状構造物10の頂部10aと頂部10aより下方に設定された横断面Tとの間の区間において、縦方向に延びる複数の縦切れ目11を筒状構造物10に形成する縦切工程と、横断面Tにおいて、筒状構造物10の全周にわたって延びる横切れ目12を形成する横切工程と、横切れ目12より上に形成された一体の破片15を地上に降ろす下架工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状構造物を上から順に解体する方法であって、
残存する前記筒状構造物の頂部と当該頂部より下方に設定された横断面との間の区間において、縦方向に延びる複数の縦切れ目を前記筒状構造物に形成する縦切工程と、
前記横断面において、前記筒状構造物の全周にわたって延びる横切れ目を形成する横切工程と、
前記横切れ目より上に形成された一体の破片を地上に降ろす下架工程とを備える
ことを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項2】
前記縦切れ目の上端が前記頂部より下方に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の筒状構造物の解体方法。
【請求項3】
前記縦切れ目の下端が前記横断面上に位置する
ことを特徴とする請求項2に記載の筒状構造物の解体方法。
【請求項4】
前記縦切工程が溶断により行われ、周方向に互いに離れつつ同じ高さに配置された複数の溶断機を上から下に動かしながら前記筒状構造物を溶断することで前記複数の前記縦切れ目が形成される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の筒状構造物の解体方法。
【請求項5】
前記縦切工程及び前記横切工程が溶断により行われ、周方向に互いに離れつつ同じ高さに配置された複数の溶断機を上から下に動かしながら前記筒状構造物を溶断することで前記複数の前記縦切れ目が形成され、前記横断面に到達した前記複数の前記溶断機を周方向に動かしながら前記筒状構造物を溶断することで前記横切れ目が形成される
ことを特徴とする請求項3記載の筒状構造物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状構造物の解体方法に関し、特に筒状構造物を上から順に解体する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーを利用した発電施設の一種として、風車を用いた風力発電設備が世界各地に設置されている。風力発電が普及し始めてから数十年が経過しているため、今後多くの風力発電設備が寿命を迎えることになる。寿命を迎えた風力発電設備は解体される。
【0003】
従来の風力発電設備の解体方法を図4に示す。風力発電設備Mは概ね、風により回転するブレード300と、発電機が収容されるナセル200と、ブレード300及びナセル200を支える筒状構造物の支柱100とから構成される(図4(a)参照)。支柱100は、筒状体110,120,130の三つの部品が互いにボルトで結合されて構成されている。
【0004】
風力発電設備Mの解体は次のように進められる。すなわち、ブレード300及びナセル200を取り外し(図4(b)参照)、次いで支柱100を解体する。支柱100の解体は、筒状体110,120,130それぞれを結合するボルトを取り外し、順次クレーンNで吊って地上に降ろす(すなわち下架する)ことによって行われる(図4(c)参照)。下架された筒状体110,120,130は、地上で細かく切断されて撤去される。
【0005】
この解体方法では、寸法が大きくかつ質量の大きい筒状体110,120,130をそのまま順次下架するため、希少な大型のクレーンを長時間占有しなければならず、解体の工期が限定されるという問題があった。また、寸法の大きい筒状体110,120,130は地上で細かく切断されるが、広い作業スペースを必要とし、また作業量は非常に多く、工期が長期化するとともに高コストとなるという問題があった。
【0006】
また、風力発電設備に限らず、煙突や排気塔等の高層の筒状構造物について、上から順次輪切りにして下架していくという解体方法も知られている(特許文献1,2参照)。この解体方法では、輪切りにした短円筒状の破片を地上に降ろすことになるが、短円筒状のままでは運搬が困難であるため、地上でさらに細かく切断する必要があり、やはり作業量が多く工期が長期化するとともに高コストとなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-169841号公報
【特許文献2】特開昭62-78364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点を鑑みて、本発明は、破片を地上に降ろすのが容易であるとともに、地上に降ろした後の破片の処理が容易となるような筒状構造物の解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、筒状構造物を上から順に解体する方法であって、残存する前記筒状構造物の頂部と当該頂部より下方に設定された横断面との間の区間において、縦方向に延びる複数の縦切れ目を前記筒状構造物に形成する縦切工程と、前記横断面において、前記筒状構造物の全周にわたって延びる横切れ目を形成する横切工程と、前記横切れ目より上に形成された一体の破片を地上に降ろす下架工程とを備えることを特徴とする筒状構造物の解体方法である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、破片を地上に降ろすのが容易であり、破片に縦切れ目が形成されているため、地上に降ろした後に破片を細かく切断することが容易な筒状構造物の解体方法を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記縦切れ目の上端が前記頂部より下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の筒状構造物の解体方法である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、破片が短筒状の形状を維持した状態で容易に地上に降ろすことができる筒状構造物の解体方法を提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記縦切れ目の下端が前記横断面上に位置することを特徴とする請求項2に記載の筒状構造物の解体方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、縦切れ目の上端より上側を切断するだけで破片を細かくできる筒状構造物の解体方法を提供することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記縦切工程が溶断により行われ、周方向に互いに離れつつ同じ高さに配置された複数の溶断機を上から下に動かしながら前記筒状構造物を溶断することで前記複数の前記縦切れ目が形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の筒状構造物の解体方法である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、溶断機を動かすだけで破片に縦切れ目を設けることが可能な筒状構造物の解体方法を提供することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記縦切工程及び前記横切工程が溶断により行われ、周方向に互いに離れつつ同じ高さに配置された複数の溶断機を上から下に動かしながら前記筒状構造物を溶断することで前記複数の前記縦切れ目が形成され、前記横断面に到達した前記複数の前記溶断機を周方向に動かしながら前記筒状構造物を溶断することで前記横切れ目が形成されることを特徴とする請求項3記載の筒状構造物の解体方法である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、溶断機を動かすだけで、破片に縦切れ目を設け、さらに破片を残存する筒状構造物から切断することが可能な筒状構造物の解体方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、破片を地上に降ろすのが容易であるとともに、地上に降ろした後の破片の処理が容易となるような筒状構造物の解体方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一実施形態に係る筒状構造物の解体方法を説明する図であって、(a)は残存する筒状構造物の正面図、(b)は縦切工程の後の筒状構造物を示す正面図、(c)は(b)におけるA-A断面のみを示す断面図、(d)は横切工程の後の筒状構造物を示す正面図、(e)は下架工程の途中における筒状構造物を示す正面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る筒状構造物の解体方法で使用される溶断装置が筒状構造物に装着された状態を概略的に示す概略平面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る筒状構造物の解体方法を説明する図であって、(a)は残存する筒状構造物の概略斜視図、(b)は縦切工程の後の筒状構造物を示す概略斜視図、(c)は横切工程の後の筒状構造物を示す概略斜視図、(d)は下架工程の途中における筒状構造物を示す概略斜視図である。
図4】従来の風力発電設備の解体方法を説明する図であって、(a)は解体する前の風力発電設備の正面図、(b)はブレードとナセルが取り外された風力発電設備の正面図、(c)は支柱を解体している途中の風力発電設備の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を適用した筒状構造物の解体方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0022】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態に係る筒状構造物の解体方法について、図1に基づき説明する。本発明の第一実施形態に係る筒状構造物の解体方法を説明する図であって、(a)は残存する筒状構造物の正面図、(b)は縦切工程の後の筒状構造物を示す正面図、(c)は(b)におけるA-A断面のみを示す断面図、(d)は横切工程の後の筒状構造物を示す正面図、(e)は下架工程の途中における筒状構造物を示す正面図である。
【0023】
本実施形態に係る解体方法の対象は、図1(a)に示すような筒状構造物10であり、これを上から解体して破片を順次地上に降ろしていく。なお、ここで説明する筒状構造物10は、図1(c)に示すように中空の円筒状であり、また図1(a)に示すように下から上にいくにしたがって細くなるようなテーパー形状であるが、任意の筒状構造物に適用することができる。
【0024】
本実施形態に係る解体方法は、筒状構造物10に縦方向に切れ目を形成する縦切工程、筒状構造物10に横方向に切れ目を形成する横切工程、及び破片を地上に降ろす下架工程の大きく三つを有する。ここで切れ目とは、筒状構造物10の壁の厚さ方向に貫通する筋である。なお筒状構造物10に切れ目を形成する方法としては、筒状構造物10の内又は外に足場を設置して、作業者が鋸等の工具や溶断で切れ目を形成することが可能であり、また筒状構造物10に装着して昇降する装置を用いて切れ目を形成することも可能であり、特に限定はされない。
【0025】
まず縦切工程について説明する。残存する筒状構造物10の頂部10aと、それより下方に設定した横断面Tとの間の区間を設定する。なお残存する筒状構造物10の頂部10aとは、解体途中であってもその状態における頂部を意味する。また横断面Tは、筒状構造物10の長手方向に略垂直な面である。横断面Tの位置は任意に設定することができ、頂部10aと横断面Tとの距離により後述の破片の大きさが決まる。図1(b)に示すように、この区間において、筒状構造物10の側面に、三本の縦方向に延びる縦切れ目11,・・・,11を形成する。図1(c)に示すように、三本の縦切れ目11は周方向に120°ずつ離れて位置している。
【0026】
図1(b)に示すように、縦切れ目11の上端11aは筒状構造物10の頂部10aまで達しておらず、頂部10aの下方に位置している。一方、縦切れ目11の下端11bは横断面T上に位置している。なお、本実施形態では縦切れ目11は筒状構造物10の円筒形状の母線に沿っているが、母線から逸脱して斜めに延びるよう形成することも可能である。
【0027】
縦切工程が終了した後、横切工程に移る。横切工程では、横断面Tにおける筒状構造物10の全周にわたって延びる横切れ目12を形成する(図1(d)参照)。横切れ目12を形成すると、これより上方は破片15となり、残存する筒状構造物10と分離することになる。分離前の筒状構造物10の頂部10aは、分離後には破片15の上底部15aとなり、横切れ目12の上側は破片15の下底部15bとなる。縦切れ目11の上端11aは破片15の上底部15aに達していないため、破片15は上底部15aと上端11aとの間の区間で周方向に繋がっており、破片15は一体となっている。
【0028】
横切工程が終了した後、下架工程に移る。図1(e)に示すように、破片15はワイヤWに結合され、クレーン(図示省略)により吊るされる等されて地上に降ろされる。なお、破片15とワイヤWとの結合は任意の公知の方法が適用可能であり、例えば破片15の上底部15a付近に複数の孔を設けて、シャックル等を介して結合することが可能である。また、本実施形態では下架工程の段階でワイヤWを結合して吊っているが、これより前の段階で予め筒状構造物10の頂部10a付近にワイヤWを結合して吊っておくことも可能である。そうすると、横切工程において破片15が筒状構造物10から分離される際に、破片15が転落するのを防止することができる。
【0029】
破片15を地上に降ろした後は、残存する筒状構造物10について先述の縦切工程、横切工程及び下架工程を行い、解体を続けていく。これにより、筒状構造物10は上から解体されていく。
【0030】
ここで、地上に降ろされた後の破片15の処理について説明する。破片15は先述の通り、上底部15aから縦切れ目11の上端11aの区間で周方向に繋がっていることで、一体を維持している。そのため、上底部15aから上端11aの区間だけを地上で切断するだけで、破片15をさらに細かく破壊することができる。細かく破壊された破片は車両等で搬送される。
【0031】
なお、本実施形態では、先に縦切工程を行いその後で横切工程を行っていたが、この順序は逆でもよい。また、本実施形態では図1(e)に示すように、縦切れ目11の上端11aは破片15の上底部15aの下方に位置し、下端11bは下底部15bに達していたが、縦切れ目11はこの態様に限られず、下端11bが下底部15bより上方に位置するようにして、上端11aが上底部15aに達するようにしてもよい。破片15が周方向に分離せず一体となるように縦切れ目11を形成すればよい。また本実施形態では縦切れ目11は三本形成されていたが、任意の本数に設定可能である。
【0032】
〔第二実施形態〕
次に本発明の第二実施形態に係る筒状構造物の解体方法について、図2,3に基づき説明する。図2は、本発明の第二実施形態に係る筒状構造物の解体方法で使用される溶断装置が筒状構造物に装着された状態を概略的に示す概略平面図である。図3は、本発明の第二実施形態に係る筒状構造物の解体方法を説明する図であって、(a)は残存する筒状構造物の概略斜視図、(b)は縦切工程の後の筒状構造物を示す概略斜視図、(c)は横切工程の後の筒状構造物を示す概略斜視図、(d)は下架工程の途中における筒状構造物を示す概略斜視図である。本実施形態は、作業者が筒状構造物を工具で切ることに代えて、筒状構造物を昇降する装置に溶断機を搭載した溶断装置を用いて、筒状構造物を解体する方法である。
【0033】
まず図2に基づき溶断装置20について説明する。溶断装置20は基本構造として環状のフレーム21を有している。フレーム21には、周方向に120°ずつ離れて配置された三つの溶断機23a,23b,23cが、周回動手段22を介して結合されている。これにより、溶断機23a,23b,23cはフレーム21に対して周方向に回転移動可能となっている。
【0034】
溶断装置20が筒状構造物10に装着された状態で、溶断機23a,23b,23cは同じ高さ、すなわち同じ横断面上に配置されつつ筒状構造物10に対向しており、筒状構造物10の壁を溶断可能となっている。周回動手段22は、周方向に回転移動できる任意の構成を採用することができるが、チェーンやベルトを使用することで溶断機23a,23b,23を周方向に駆動することができる。
【0035】
またフレーム21には、周方向に120°ずつ離れて配置された三つの昇降手段24,・・・,24が直接結合されている。昇降手段24は、筒状構造物10に当接して駆動力を与え、反作用により溶断装置20を昇降させるよう構成されており、本実施形態ではタイヤが採用されているが、クローラ等を用いることもできる。昇降手段24は、高さ方向の位置で筒状構造物10の径の大きさが変化しても、筒状構造物10への当接が維持されるよう、中心に向けて荷重が付与されている。
【0036】
次に溶断装置20を用いた筒状構造物10の解体方法について、図3に基づき説明する。まず図3(a)に示すように、筒状構造物10の頂部10a付近において、筒状構造物10の径方向外にフレーム21が位置するよう、溶断装置20が配置される。このとき昇降手段24は全て筒状構造物10に当接し、重力と釣り合う駆動力を作用して高さ方向の位置を維持している。そして溶断機23a,23b,23cは筒状構造物10の壁と対向している。このとき溶断機23a,23b,23cが溶断する位置は、筒状構造物10の頂部10aより下方となっている。
【0037】
そして溶断機23a,23b,23cが溶断を開始する。それと同時に昇降手段24は下降を開始する。これにより、溶断装置20は下降しながら溶断するため、筒状構造物10には縦方向に延びる三本の縦切れ目11,・・・,11が形成されていく。そして溶断機23a,23b,23cの溶断位置が横断面Tに来た時、昇降手段24の下降を停止する(図3(b)参照)。この工程は先述の第一実施形態における縦切工程にあたる。横断面Tの位置は任意に設定することができ、頂部10aと横断面Tとの距離により後述の破片の大きさが決まる。ここで縦切れ目11は、その上端11aが筒状構造物10の頂部10aより下方に位置し、下端11bが横断面T上に位置している。
【0038】
次に溶断装置20はこの高さ方向の位置を維持して周回動手段22を作動させ、溶断機23a,23b,23cの溶断を維持したまま、周方向に反時計回り(図3(c)の矢印方向)に120°回転移動させる。これにより、溶断機23a,23b,23cがそれぞれ周方向に120°分、筒状構造物10を溶断する。すなわち、全周にわたって延びる横切れ目12が筒状構造物10に形成される(図3(c)参照)。そして溶断機23a,23b,23cによる溶断を停止する。この工程は先述の第一実施形態における横切工程にあたる。溶断機23a,23b,23cはそれぞれL字に移動しながら溶断することによって、筒状構造物10に縦切れ目11及び横切れ目12が形成されることになる。なお、溶断機23a,23b,23cが周方向に回転移動する向きを反時計回りとしていたが、時計回りとすることも可能である。
【0039】
横切れ目12が形成されると、これより上方は破片15となり、残存する筒状構造物10と分離することになる。分離前の筒状構造物10の頂部10aは分離後には破片15の上底部15aとなり、横切れ目12の上側は破片15の下底部15bとなる。縦切れ目11の上端11aは破片15の上底部15aに達していないため、破片15は上底部15aと上端11aとの間の区間で周方向に繋がっており、破片15は一体となっている。
【0040】
そして図3(d)に示すように、破片15を地上に降ろす。この工程は先述の第一実施形態の下架工程と同様である。また破片15を地上に降ろした後、残存する筒状構造物10について、溶断装置20を用いて引き続き解体を続けていく。これにより、筒状構造物10は上から解体されていく。また地上に降ろされた後の破片15の処理については先述の第一実施形態と同様である。
【0041】
〔変形例〕
第二実施形態では、三つの溶断機23a,23b,23cを使用していたが、溶断機の数は任意とすることができる。また第二実施形態では溶断機の数と同じ本数の縦切れ目を形成するよう構成されていたが、溶断機を上下に往復動させることにより、溶断機の数より多い本数の縦切れ目を形成することも可能である。例えば、第二実施形態に係る溶断装置のように周方向に120°ずつ離れて配置された三つの溶断機を使用する場合、上から下に溶断して三本の縦切れ目を形成した後、溶断機を周方向に60°回転移動させてから下から上に溶断すれば、計六本の縦切れ目を形成することができる。
【0042】
また第二実施形態では、三つの溶断機23a,23b,23cがいずれも縦切れ目11と横切れ目12の両方を形成するよう構成されていたが、縦切れ目11を形成する溶断機と横切れ目12を形成する溶断機を分けて搭載することも可能である。このとき、縦切れ目11を形成する溶断機は周方向に回転移動させる必要は無く、横切れ目12を形成する溶断機は一つだけで、360°回転移動できるようにすればよい。また、横切れ目12を形成するのは溶断に限られず、丸のこ等の任意の工具で形成することも可能である。
【0043】
また第二実施形態では、筒状構造物に直接当接する昇降手段を用いて溶断機を上下に移動させていたが、これに限られず、ウインチや直動装置等、溶断機を上下に移動させる任意の手段を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 筒状構造物
10a 頂部
11 縦切れ目
11a 上端
11b 下端
12 横切れ目
15 破片
15a 上底部
15b 下底部
20 溶断装置
21 フレーム
22 周回動手段
23a,23b,23c 溶断機
24 昇降手段
T 横断面
W ワイヤ
図1
図2
図3
図4