(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029111
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】成形用金型及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/36 20060101AFI20230224BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20230224BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B29C51/36
B29C33/38
B29C33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135221
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克也
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AR12
4F202CA17
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD18
4F202CD26
4F202CP01
4F202CP04
4F202CP06
(57)【要約】
【課題】シェル型をバックアップ型で十分にバックアップして、シェル型の変形を防止する。シェル型のすべての真空吸引孔を通気溝に連通させて、真空吸引効率を高める。
【解決手段】成形用金型は、複数の真空吸引孔5を有するシェル型と、バックアップ型とを含む。シェル本体部3の裏面とバックアップ本体部11の表面とが同一形状をなして嵌合する。バックアップ本体部11の表面又はシェル本体部3の裏面に、相手面を受ける受け面14を残して、通気溝13が形成されている。シェル本体部3の裏面又はバックアップ本体部11の表面に、送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmの複数の筋目6と該筋目間の突条7とが形成されている。真空吸引孔5と通気溝13とが筋目6を介して連通している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の真空吸引孔(5)を有するシェル型(2)と、シェル型(2)をバックアップするバックアップ型(10)とを含み、シェル型(2)の裏面とバックアップ型(10)の表面とが同一形状をなして嵌合する成形用金型において、
バックアップ型(10)の表面又はシェル型(2)の裏面に、相手面を受ける受け面(14)を残して、通気溝(13)が形成され、
シェル型(2)の裏面又はバックアップ型(10)の表面に、送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmの複数の筋目(6)と該筋目間の突条(7)とが形成され、
真空吸引孔(5)と通気溝(13)とが筋目(6)を介して連通していることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
通気溝(13)は、バックアップ型(10)の表面のみに形成された請求項1記載の成形用金型。
【請求項3】
通気溝(13)は、筋目(6)の方向に対して交差する方向に延びる通気溝(13)を含む請求項1又は2記載の成形用金型。
【請求項4】
筋目(6)と突条(7)は、シェル型(2)の裏面のみに形成された請求項1、2又は3記載の成形用金型。
【請求項5】
複数の真空吸引孔(5)を有するシェル型(2)と、シェル型(2)をバックアップするバックアップ型(10)とを含み、シェル型(2)の裏面とバックアップ型(10)の表面とが同一形状をなして嵌合する成形用金型の製造方法において、
バックアップ型(10)の表面又はシェル型(2)の裏面に、相手面を受ける受け面(14)を残して、通気溝(13)を加工し、
シェル型(2)の裏面又はバックアップ型(10)の表面を、先端が非平坦なエンドミル(20)で切削加工し、切削加工跡として送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmの複数の筋目(6)と該筋目間の突条(7)とを残すことを特徴とする成形用金型の製造方法。
【請求項6】
エンドミル(20)は、ボールエンドミル又はラジアスエンドミルである請求項5記載の成形用金型の製造方法。
【請求項7】
エンドミル(20)の刃径は、15~20mmである請求項5又は6記載の成形用金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空吸引機能を有する成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シートを型面に真空吸引する機能を有する成形用金型は、複数の真空吸引孔を有する比較的薄いシェル型と、シェル型をバックアップするバックアップ型とを含み構成されたものが多い。比較的薄いシェル型には、複数の真空吸引孔を形成しやすいからである。一方、バックアップ型には、シェル型を支えつつ真空吸引孔と連通する通気路を設ける工夫が必要である。
【0003】
特許文献1に記載のバックアップ型は、シェル型の裏面よりも一回り大きい収容凹部と、収容凹部から突出した複数個の支持突片とを有し、支持突片でシェル型の裏面を支える。シェル型の真空吸引孔には通気路としての収容凹部が連通し、型外部から収容凹部を減圧する。しかし、このバックアップ型では、成形時の圧力が高い場合に支持突片がシェル型を十分に支えられず、シェル型が変形するおそれがあった。
【0004】
特許文献2に記載のバックアップ型は、表面がシェル型の裏面と合致する形状をなし、表面に複数の受け面を残して通気溝が凹設され、該受け面でシェル型の裏面を支える。シェル型の真空吸引孔には通気路としての通気溝が連通し、型外部から通気穴を介して通気溝を減圧する。このバックアップ型は、成形時の圧力が高い場合でもシェル型を十分に支えて、シェル型の変形を防ぐことができる。しかし、このバックアップ型は、すべての真空吸引孔が通気溝に連通するとは限らず、一部の真空吸引孔を受け面が完全に塞ぐことがあるため、全体の真空吸引効率を低下させることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-14922号公報
【特許文献2】特開2021-53920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、シェル型をバックアップ型で十分にバックアップして、シェル型の変形を防止するとともに、シェル型のすべての真空吸引孔を通気溝に連通させて、真空吸引効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]成形用金型
複数の真空吸引孔を有するシェル型と、シェル型をバックアップするバックアップ型とを含み、シェル型の裏面とバックアップ型の表面とが同一形状をなして嵌合する成形用金型において、
バックアップ型の表面又はシェル型の裏面に、相手面を受ける受け面を残して、通気溝が形成され、
シェル型の裏面又はバックアップ型の表面(但し、通気溝を加工した面については「受け面」)に、送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmの複数の筋目と該筋目間の突条とが形成され、
真空吸引孔と通気溝とが筋目を介して連通していることを特徴とする成形用金型。
【0008】
<作用>
同一形状をなすシェル型の裏面とバックアップ型の表面とが突条で当接するため、シェル型をバックアップ型で十分にバックアップして、シェル型の変形を防止することができる。
真空吸引孔と通気溝とが筋目を介して連通しているため、シェル型のすべての真空吸引孔を通気溝に連通させて、真空吸引効率を高めることができる。
複数の筋目が送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmであることにより、真空吸引効率とシェル型の剛性とを両立できる。加工ピッチ0.5mm未満・加工深さが0.01mm未満であると、真空吸引効率が落ちる。加工ピッチ5.0mm超・加工深さ0.4mm超であると、これをシェル型に形成した場合、成形時の圧力によりシェル型がわずかに変形し、成形品の寸法精度や金型の耐久性に影響する。
【0009】
[2]成形用金型の製造方法
複数の真空吸引孔を有するシェル型と、シェル型をバックアップするバックアップ型とを含み、シェル型の裏面とバックアップ型の表面とが同一形状をなして嵌合する成形用金型の製造方法において、
バックアップ型の表面又はシェル型の裏面に、相手面を受ける受け面を残して、通気溝を加工し、
シェル型の裏面又はバックアップ型の表面(但し、通気溝を加工した面については「受け面」)を、先端が非平坦なエンドミルで切削加工し、切削加工跡として送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmの複数の筋目と該筋目間の突条とを残すことを特徴とする成形用金型の製造方法。
【0010】
<作用>
シェル型の裏面又はバックアップ型の表面を、先端が非平坦なエンドミルで一方向に切削することにより、切削加工跡として送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmの複数の筋目と該筋目間の突条とを効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形用金型によれば、シェル型をバックアップ型で十分にバックアップして、シェル型の変形を防止することができるとともに、シェル型のすべての真空吸引孔を通気溝に連通させて、真空吸引効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は実施例1の成形用金型におけるシェル型の表面側を示し、(a)は斜視図、(b)は部分拡大斜視図である。
【
図2】
図2は同シェル型の裏面側を示し、(a)は斜視図、(b)は部分拡大斜視図である。
【
図3】
図3は切削加工を示し、(a)は荒加工時の斜視図、(b)は中仕上げ加工時の斜視図、(c)は仕上げ加工時の斜視図である。
【
図4】
図4は実施例1の成形用金型におけるバックアップ型の表面側を示し、(a)は斜視図、(b)は部分拡大斜視図である。
【
図6】
図6は同シェル型をバックアップ型に取り付けてなる実施例1の成形用金型を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【
図7】
図7(a)は比較例の成形用金型の要部拡大断面図、(b)は実施例1の成形用金型の要部拡大断面図、(c)は実施例1の成形用金型を別方向で切断した要部拡大断面図である。
【
図8】
図8は実施例1の成形用金型を用いた樹脂シートの真空成形時の断面図である。
【
図9】
図9は実施例2の成形用金型におけるバックアップ型の表面側を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1>シェル型
シェル型としては、電鋳、鋳造、切削、放電加工等により形成されたものを例示できる。電鋳により形成されたものは、製造効率が高く、凹凸模様をモデルからの転写で容易に形成でき、真空吸引孔を電鋳時に形成できる等の利点があり、好ましい。
シェル型の厚さは、特に限定されないが、2~6mmが好ましく、2.5~5mmがより好ましい。電鋳等により製造しやすく、真空吸引孔も形成しやすいからである。
シェル型の材料としては、特に限定されないが、金属(ニッケル、鋼等)、セラミック等を例示できる。
【0014】
シェル型の表面(型面)に凹凸模様を形成しておくことにより、該表面に真空吸引された表皮の表面に該凹凸模様を転写した凹凸模様を賦形することができる。凹凸模様としては、特に限定されないが、革シボ模様、縫目模様、幾何学的単位模様の複数繰り返し配列等を例示できる。
【0015】
シェル型は、バックアップ型に対して取り替え可能に取り付けられていることが好ましい。その取り付け構造としては、ネジによる螺着、嵌合形状による嵌合等を例示できる。
【0016】
<2>真空吸引孔
真空吸引孔としては、特に限定されないが、特開昭60-152692号公報、特開平9-249987号公報等に記載の方法で電鋳時に形成されたもの、機械加工(ドリル加工等)で形成されたもの、高エネルギビーム加工(レーザー加工、電子ビーム加工、イオンビーム加工等)で形成されたもの等を例示できる。
真空吸引孔の直径は、特に限定されないが、シェル型の表面側で0.1~0.3mmであり、シェル型の裏面側で0.1~5mmであるものが好ましい。
【0017】
<3>バックアップ型
バックアップ型としては、特に限定されないが、鋳造、切削、放電加工等により形成されたものを例示できる。
バックアップ型の厚さは、特に限定されないが、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましい。高剛性となるからである。
バックアップ型の材料としては、特に限定されないが、金属(アルミニウム合金、鋼等)、セラミック等を例示できる。
【0018】
<4>通気溝
通気溝は、バックアップ型の表面又はシェル型の裏面のいずれか一方又は両方に形成することができるが、加工効率等の点でいずれか一方のみに形成することが好ましく、型強度低下のおそれが少ない点でバックアップ型の表面のみに形成することがより好ましい。
【0019】
通気溝としては、機械加工(切削加工等)、放電加工、エッチング加工等により形成されたものを例示できる。
通気溝のパターンとしては、特に限定されないが、1本又は複数本の線状、ネット状(特許文献2に記載の四角格子状、三角格子状、六角格子状、その他)等を例示できる。
筋目の方向に対して交差する方向に延びる通気溝を含むことが好ましい。該通気溝は複数の筋目と連通するからである。
【0020】
通気溝の深さは、特に限定されないが、0.2~3mmが好ましく、0.2~2mmがより好ましく、0.3~1mmが最も好ましい。通気溝の深さが0.2mm以上であると通気性がよく、3mm以下であるとバックアップ型の強度が低下しにくい。
通気溝の幅(開口幅)は、特に限定されないが、1~7mmが好ましく、1~5mmがより好ましい。通気溝の幅が1mm以上であると通気性がよく、7mm以下であるとバックアップ型の強度が低下しにくい。
【0021】
<5>筋目と突条
筋目と突条は、シェル型の裏面又はバックアップ型の表面のいずれか一方又は両方に形成することができるが、両方に形成すると両型の嵌合精度が低下するため、いずれか一方のみに形成することが好ましく、シェル型の加工量が少なく済む点でシェル型の裏面のみに形成することがより好ましい。
【0022】
筋目と突条の方向は、これを形成する面(シェル型の裏面又はバックアップ型の表面)の全体において一方向でもよいし、該面に設定した複数の領域の間で方向を変えてもよい。
先端が非平坦なエンドミルとしては、特に限定されないが、ボールエンドミル、ラジアスエンドミル等を例示できる。
該エンドミルの刃径としては、特に限定されないが、15~20mmを例示できる。
【0023】
複数の筋目は、前記のとおり送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmであるが、より好ましくは送りピッチ1.0~3.0mm・加工深さ0.02~0.15mmである。
送りピッチと加工深さとの関係は、特に限定されないが、送りピッチは加工深さに対して20~50倍であることが好ましい。
【0024】
<6>成形用金型
本発明の成形用金型は、真空吸引機能を利用しながら高分子材料を成形する各種成形(特に限定されず、真空成形、圧空成形、インサート射出成形、ブロー成形、スタンピング成形、プレス成形、スラッシュ成形等を例示できる。)用の金型として具体化することができる。
【実施例0025】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例で記す材料、構成、数値は例示であって、適宜変更できる。
【0026】
[実施例1]
図1~
図8に示す実施例1の成形用金型1は、真空成型用金型である。
成形用金型1は、複数の真空吸引孔5を有するシェル型2と、シェル型2をバックアップするバックアップ型10とを含み、シェル型の裏面とバックアップ型の表面とが同一形状をなして
図6及び
図7(b)(c)に示すように嵌合している。
【0027】
シェル型2は、
図1及び
図2に示すように、ニッケル電鋳により厚さ2~6mmの殻状に形成されたものであり、メス型(凹形状)のシェル本体部3と、シェル本体部3の周りのフランジ部4とからなる。
【0028】
真空吸引孔5は、シェル本体部3の全域に分散して多数形成されており、フランジ部4には形成されていない。真空吸引孔5は、ニッケル電鋳時に形成されたものである。真空吸引孔5の直径は、シェル型2の表面側で0.1~0.3mmであり、裏面に向かうにつれて拡径し、シェル型2の裏面側で3~5mmである。なお、真空吸引孔は、後加工(機械加工、高エネルギビーム加工)で形成されたものでもよい。
【0029】
シェル本体部3の表面(型面)には、
図1に示すように、凹凸模様8が電鋳時に形成されている。図示例の凹凸模様8は革シボ模様である。
【0030】
シェル型2の裏面には、
図2に示すように、送りピッチ0.5~5.0mm・加工深さ0.01~0.4mmの複数の筋目6と該筋目間の突条7とが形成されている。この筋目6と突条7は、
図3(a)(b)に示すように、シェル型2の裏面を、先端が非平坦なエンドミル20で切削加工することにより、切削加工跡として形成されたものである。その方法については、バックアップ型10を説明した後に詳述する。
【0031】
バックアップ型10は、
図4及び
図5に示すように、アルミニウム合金で厚さ10~30mmに鋳造されたバックアップ本体部11と、バックアップ本体部の背面側を空間をおいて覆う箱状のケース部17とからなるものである。
【0032】
バックアップ本体部11の表面は、シェル本体部3の裏面の凸形状と同一の凹形状をなしている。バックアップ本体部11の裏面側には温度調節用配管12が鋳込まれており、温度調節用配管12には温度調節用流体が流せるようになっている。温度調節用配管12には、例えばフレキシブルSUS配管が用いられている。
【0033】
バックアップ本体部11の表面には、シェル本体部3の裏面を受ける受け面14を残して、例えば四角格子状に繋がる通気溝13が機械加工で凹設されている。この通気溝13は、筋目6の方向に対して平行に延びる通気溝(
図7(b))と、筋目6の方向に対して交差する方向に延びる通気溝(
図7(c))とを含む。例えば、通気溝13は深さ0.2~3mm・幅1~7mmであり、受け面14は5mm平方~20mm平方の四角形群である。
【0034】
バックアップ本体部11には、通気溝13から裏面側の空間に連通する複数の通気穴15が形成されている。通気穴15の直径は例えば5~10mmである。
ケース部17には、該空間を型外部に連通させる通気プラグ18が設けられ、型外部の真空吸引装置(図示略)が接続できるようになっている。
【0035】
図6に示すように、シェル本体部3がバックアップ本体部11に嵌合して当接し、フランジ部4がバックアップ本体部11の座繰部に嵌合してネジで螺着されることにより、シェル型2はバックアップ型10に対して取り替え可能に取り付けられている。この取り付け状態で、
図7(b)(c)に示すように、すべての真空吸引孔5が筋目6を介して通気溝13に連通している。
【0036】
以上のように構成された成形用金型1は、次の方法で製造される。
シェル本体部3の裏面とバックアップ本体部11の表面とは、嵌合のために同一形状である必要があり、一方または両方を切削加工することで嵌合精度を確保する。
【0037】
そのために、通常は、
図3(a)に示す荒加工、(b)に示す中仕上げ加工、(c)に示す仕上げ加工、という3ステップを経て、最終的に平滑面に近づけて嵌合精度を高める。具体的には、例えば刃径16mmのボールエンドミルを使用し、荒加工では送りピッチP1を5.0mm超として加工深さH1を0.4mm超とし、次の中仕上げ加工では送りピッチP2を0.5~5.0mmとして加工深さH1を0.01~0.4mmとし、次の仕上げ加工では送りピッチP3を0.5mm未満として加工深さH1を0.01mm未満とする。
しかし、シェル本体部3の裏面とバックアップ本体部11の表面の両方を、(c)の仕上げ加工まで行って平滑面に近づけると、
図7(a)に比較例として示すように、受け面14で完全に塞がれてしまう真空吸引孔5が存在する(同図の中央)。
【0038】
そこで、本実施例では、次のように切削加工する。
バックアップ本体部11の表面は、
図3(c)の仕上げ加工まで行って平滑面に近づける。
シェル本体部3の裏面は、(a)の荒加工と(b)の中仕上げ加工とを行った状態で加工を止め、(c)の仕上げ加工を行わないことにより、切削加工跡として送りピッチP2が0.5~5.0mm・加工深さH1が0.01~0.4mmの複数の筋目6と該筋目間の突条7とを残す。この切削加工跡を残しても、必要な嵌合精度は確保される。
これにより、
図7(b)(c)に示すように、すべての真空吸引孔5が筋目6を介して通気溝13に連通し、受け面14で完全に塞がれる真空吸引孔が無くなるため、真空成形における吸引効率を高めることができる。特に、
図7(c)に示すように、筋目6の方向に対して交差する方向に延びる通気溝13には多くの筋目6が連通する。
【0039】
以上のように構成された成形用金型1を用いて、次の方法で樹脂シートを真空成形することができる。
図8に示すように、加熱により軟化させた熱可塑性の樹脂シート21を、成形用金型1に当てがうとともに、オス型22でシェル本体部3の表面に押し込む。続いて、前述した真空吸引装置(図示略)によりバックアップ型10内の空間を減圧し、通気穴15、通気溝13及び筋目6を介して真空吸引孔5により、樹脂シート21をシェル本体部3の表面に真空吸引して成形する。このとき、前述した高い吸引効率により、樹脂シート21にはシェル本体部3の凹凸模様8が忠実に転写され、リアリティのある凹凸模様が賦形される。
【0040】
[実施例2]
次に、
図9に示す実施例2の成形用金型は、バックアップ本体部11の通気溝13を、筋目の方向(
図2参照)に対して交差する方向に延びる3本の線状の通気溝13とした点においてのみ実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。各通気溝13は各通気穴15に連通している。
この通気溝13も、
図7(c)と同様に、筋目6を介してすべての真空吸引孔5に連通する。よって、実施例2によっても実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0041】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)通気溝13と受け面14はシェル本体部3の裏面に形成してもよい。この場合、バックアップ本体部11の表面には通気溝と受け面を形成しないことが好ましい。
(2)筋目6と突条7は、バックアップ本体部11の受け面14に形成してもよい。この場合、シェル本体部3の裏面には筋目と突条を形成しないことが好ましい。