(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029116
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】粒状物の散布用タンク及びそれを装着した農業用ドローン
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20230224BHJP
A01C 21/00 20060101ALI20230224BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20230224BHJP
A01M 9/00 20060101ALI20230224BHJP
B64D 1/16 20060101ALI20230224BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230224BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A01C15/00 E
A01C15/00 D
A01C21/00 Z
A01M7/00 H
A01M9/00 J
B64D1/16
B64C27/08
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135227
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】521370086
【氏名又は名称】株式会社田牧ファームスジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】田牧 一郎
【テーマコード(参考)】
2B052
2B121
【Fターム(参考)】
2B052BC02
2B052BC08
2B052DB02
2B052EA03
2B052EA12
2B052EA15
2B052EA16
2B052EB09
2B052EC12
2B052EC17
2B121CB09
2B121CB25
2B121CB37
2B121CB46
2B121CB61
2B121CB66
2B121EA21
(57)【要約】
【課題】散布用タンク内の粒状物のブリッジ現象を防止し、水を吸収した状態の粒状物であっても均一に散布することが可能で、かつ、比較的簡単な構造でコストも低く抑えることが可能な粒状物の散布用タンク及びそれを装着した農業用ドローンを提供する。
【解決手段】農業用ドローン1に装着される粒状物の散布用タンク20は、底部に粒状物の排出口200を有する樹脂製のタンク本体20MBと、排出口200の周囲におけるタンク本体20MB内側の空間を平面視方向に仕切るように設けられ、粒状物の排出口200への流入を分散させる金属製の仕切板28と、タンク本体20MBの内壁の少なくとも一部に排出口200に向かって下降傾斜するように設けられ、粒状物の排出口200への流動を円滑にする金属製の滑落板29と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ドローンに装着される粒状物の散布用タンクであって、
底部に前記粒状物の排出口を有する樹脂製のタンク本体と、
前記排出口の周囲における前記タンク本体内側の空間を平面視方向に仕切るように設けられ、前記粒状物の前記排出口への流入を分散させる金属製の仕切板と、
前記タンク本体の内壁の少なくとも一部に前記排出口に向かって下降傾斜するように設けられ、前記粒状物の前記排出口への流動を円滑にする金属製の滑落板と、を備える、
ことを特徴とする散布用タンク。
【請求項2】
前記仕切板は、前記排出口に対して垂直に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の散布用タンク。
【請求項3】
前記仕切板は、前記排出口を挟んで平面視方向に一文字状又は十文字状に設けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の散布用タンク。
【請求項4】
前記仕切板は、ステンレス製である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の散布用タンク。
【請求項5】
前記滑落板は、前記タンク本体が平面視において矩形であるとき、前記タンク本体の長手方向に沿って設けられる、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の散布用タンク。
【請求項6】
前記滑落板は、ステンレス製である、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の散布用タンク。
【請求項7】
前記粒状物は、粒状の種子、肥料、農薬及び飼料のいずれか一つである、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の散布用タンク。
【請求項8】
前記粒状物は、非乾燥状態である、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の散布用タンク。
【請求項9】
農業用ドローンであって、
飛行装置と、
前記飛行装置に装着された請求項1から8のいずれか1項に記載の散布用タンクと、
前記散布用タンクの排出口に取り付けられた散布機と、を備える、
ことを特徴とする農業用ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物の散布用タンク及びそれを装着した農業用ドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンを農業に利用する試みがなされている。農業におけるドローンの主な用途は、農薬や肥料をタンクに充填し、ドローンを用いて圃場に散布するものである。例えば、特開2017-24488号公報(特許文献1)には、薬剤タンクを固定した状態において、この薬剤タンク内に容量の1/2の薬剤量を充填し、この時のドローンの重心位置を各プロペラ間を結ぶ中心線に対して各プロペラの回転中心点から下向きに10度~20度の仮想線の範囲内となるように設定したドローンが開示されている。
【0003】
しかしながら、農薬や肥料には、液体だけではなく、粒状の農薬や肥料もある。また、農薬や肥料だけではなく、種子をタンクに充填しドローンで散布する試みもなされている。例えば、特開2020-80853号公報(特許文献2)には、貯蔵タンクの一側端に作動可能に備えられており、作動の要否に応じて前記貯蔵空間内の下側の肥料や農薬を上側に搬送させて外部に排出する排出装置と、前記貯蔵タンクの上側に備えられており、前記ドローン本体の下部の一側に着脱可能に取り付けられ、前記貯蔵タンクを前記ドローン本体に位置固定するブラケットと、を含む、コンベア式排出装置を有する農業用ドローンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-24488号公報
【特許文献2】特開2020-80853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている発明は、液体を散布する場合には適しているが、種子などの粒状物を散布する場合には、タンク出口に粒状物同士が集まってアーチ状の構造が形成されて目詰まりが発生しやすい(ブリッジ現象)。また、種子を温湯消毒したり、水に一定期間浸漬しあらかじめ人為的に発芽させる催芽処理を行ったりしてから散布する場合、種子が水を吸収しているため、タンク内に種子がタンク内壁に付着して種子の散布が十分に行えないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されている発明は、コンベアベルト式の排出装置によって下側から上側に順次搬送され、搬送された肥料や農薬を外部に定量排出することができるという利点があるが、現在の法律では、ドローンに積載できる重量は10kg以下と定められているため、コンベア式排出装置自体の重量により、充填できる粒状物の重量が制限されること、大型のドローンでしか実施することができないこと、コンベア式排出装置のコストが高価であること等の問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものであり、散布用タンク内の粒状物のブリッジ現象を防止し、水を吸収した状態の粒状物であっても均一に散布することが可能で、かつ、比較的簡単な構造でコストも低く抑えることが可能な粒状物の散布用タンク及びそれを装着した農業用ドローンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。すなわち、本発明の第1の観点は、農業用ドローンに装着される粒状物の散布用タンクであって、底部に前記粒状物の排出口を有する樹脂製のタンク本体と、前記排出口の周囲における前記タンク本体内側の空間を平面視方向に仕切るように設けられ、前記粒状物の前記排出口への流入を分散させる金属製の仕切板と、前記タンク本体の内壁の少なくとも一部に前記排出口に向かって下降傾斜するように設けられ、前記粒状物の前記排出口への流動を円滑にする金属製の滑落板と、を備える。
【0009】
第1の観点に係る散布用タンクにおいて、前記仕切板は、前記排出口に対して垂直に設けられてもよい。また、前記仕切板は、前記排出口を挟んで平面視方向に一文字状又は十文字状に設けられてもよい。また、前記仕切板は、ステンレス製であってもよい。
【0010】
第1の観点に係る散布用タンクにおいて、前記滑落板は、前記タンク本体が平面視において矩形であるとき、前記タンク本体の長手方向に沿って設けられてもよい。また、前記滑落板は、ステンレス製であってもよい。
【0011】
第1の観点に係る散布用タンクにおいて、前記粒状物は、粒状の種子、肥料、農薬及び飼料のいずれか一つであってもよい。また、前記粒状物は、非乾燥状態であってもよい。
【0012】
本発明の第2の観点は、農業用ドローンであって、飛行装置と、前記飛行装置に装着された第1の観点に係る散布用タンクと、前記散布用タンクの排出口に取り付けられた散布機と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、散布用タンク内の粒状物のブリッジ現象を防止し、水を吸収した状態の粒状物であっても均一に散布することが可能で、かつ、比較的簡単な構造でコストも低く抑えることが可能な粒状物の散布用タンク及びそれを装着した農業用ドローンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る農業用ドローンの一例による粒状物の散布状況を説明する図である。
【
図2】本発明に係る散布用タンク(散布機取付け後の状態)の一例であって、外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る散布用タンク(散布機取付け後の状態)の一例であって、
図4及び
図5におけるA-A線で上部を切り欠いた状態で内観を示す一部分解斜視図である。
【
図4】本発明に係る散布用タンク(散布機取付け前の状態)の一例であって、
図3におけるX-X方向の中央線上断面を示す縦断面図である。
【
図5】本発明に係る散布用タンク(散布機取付け前の状態)の一例であって、
図3におけるY-Y方向の中央線上断面を示す横断面図である。
【
図6】本発明に係る散布用タンク(散布機取付け前の状態)の一例であって、
図4及び
図5におけるA-A線で上部を切り欠いた状態を示す平面図である。
【
図7】本発明に係る散布用タンク(散布機取付け後の状態)の一例であって、
図4及び
図5におけるB-B線で上部を切り欠いた状態で仕切板及び滑落板の取付状況を説明する図である。
【
図9】同じく、仕切板を散布用タンクの排出口側から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号が付されている。
【0016】
(農業用ドローン1の全体概要)
まず、
図1は、本実施形態に係る農業用ドローン1の一例による粒状物の散布状況を示している。農業用ドローン1は、飛行装置10と、飛行装置10に装着された散布用タンク20と、散布用タンク20の排出口200(後述)に取り付けられた散布機30と、を備える。散布用タンク20の上部には農業用ドローン1の動力源としてバッテリ40が載置されている。なお、散布用タンク20については、その内部に設けられる要素との関係において、タンク本体20MBと述べることがある。
【0017】
飛行装置10は、特にその構造が限定されるものではなく、後述する散布用タンク20を装着することができるものであればよい。
図1に示す一例では、飛行装置10は、機体11と、機体11から側方に延在するアーム12と、アーム12の先端に設けられたモータ13と、モータ13によって駆動される回転軸14と、回転軸14に取り付けられたプロペラ15とを備える。
図1ではプロペラ15が6つ(1つは機体11のブラインドになっている)の態様を示しているが、その数や配置の態様は特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。
【0018】
機体11には、下方に延在するランディング用の一対のスキッド16が設けられており、スキッド16同士の間には散布用タンク20が支持されている。散布用タンク20の排出口200(後述)に取り付けられた散布機30からは、後述する散布用タンク20の構成により、非乾燥状態の水分を含有している粒状物(催芽籾などの種子のほか、肥料、農薬及び飼料など)であっても
図1に示すように円滑に散布される。
【0019】
本実施形態において、飛行装置10、散布機30、バッテリ40は、公知のものを採用することができるので、以下では、本発明者らが鋭意検討した散布用タンク20について説明する。
【0020】
(散布用タンク20)
散布用タンク20は、
図2から
図9を参照して後述するように、底部に粒状物の排出口200を有する樹脂製のタンク本体20MBと、排出口200の周囲におけるタンク本体20MB内側の空間を平面視方向に仕切るように設けられ、粒状物の排出口200への流入を分散させる金属製の仕切板28と、タンク本体20MBの内壁の少なくとも一部に排出口200に向かって下降傾斜するように設けられ、粒状物の排出口200への流動を円滑にする金属製の滑落板29と、を備える。以下、説明する。
【0021】
まず、
図2及び
図3を参照して、散布用タンク20の概要を説明する。
図2は、散布用タンク20の一例について、散布機30が取付けられた状態で、その外観を示す。散布用タンク20は、特にその形状が限定されるものではなく、粒状物の散布用のタンクとして有用なものであればよい。
【0022】
図2に示す一例では、散布用タンク20は、樹脂製であって平面視において矩形となっており、その上部の天板21と、天板21の長手方向(
図3のX-X方向)の両端に設けられた粒状物の投入口を覆う蓋部22,22と、長手方向(
図3のX-X方向)の両端に設けられた第1側面23,23と、短手方向(
図3のY-Y方向)の両端に設けられた第2側面24,24と、長手方向(
図3のX-X方向)の両端から中央に向かって下降傾斜する第1底面25,25と、短手方向(
図3のY-Y方向)の両端から中央に向かって下降傾斜する第2底面26,26とを備える。第2側面24,24には、飛行装置10のスキッド16を支持するスキッド支持部27が2つずつ設けられている。
【0023】
図3は、散布用タンク20の一例について、散布機30が取付けられた状態で、
図4及び
図5におけるA-A線で上部を切り欠いて、その内観を分解して示す。ここで、散布用タンク20の長手方向をX-X方向、短手方向をY-Y方向としており、X-X方向の右方向が農業用ドローン1の飛行方向となる。
【0024】
図3に示す一例では、散布用タンク20のタンク本体20MBの中央には、後述する排出口200を囲うように金属製の仕切板28が設けられる。仕切板28は、排出口200の周囲におけるタンク本体20MB内側の空間を平面視方向に仕切ることとなる。仕切板28は粒状物の排出口200への流入を分散させることにより、排出口200に集中した粒状物がブリッジ現象を起こすことを防止又は抑制する。
【0025】
同じく
図3に示すように、散布用タンク20のタンク本体20MBの第1底面25,25の内壁には、金属製の滑落板29(滑落板29a、滑落板29b)が設けられる。滑落板29は、後述する排出口200に向かって下降傾斜するように設けられており、非乾燥状態の粒状物であっても、粒状物の自重によって滑落板29上を滑落して排出口200への流動が円滑となる。
【0026】
次に、
図4から
図6を参照して、タンク本体20MB、仕切板28、滑落板29の詳細を説明する。
【0027】
図4から
図6に示すように、本実施形態に係る散布用タンク20の一例では、タンク本体20MBの底部の中央に、粒状物を散布機30に排出するための排出口200が設けられている。前述したように、散布用タンク20は図示された態様に限られるものではなく、排出口200は、底部の中央ではなく、X-X方向及び/又はY-Y方向に偏位した位置に設けられていてもよい。仕切板28及び滑落板29は、排出口200の位置に合わせて、適宜、設ける位置や態様を変形させることが可能である。
【0028】
図4から
図6では、説明の便宜のため、散布機30を散布用タンク20から離間した状態で図示している。散布機30は、モータ等が内蔵された駆動部31と、粒状物を一時的に収容する収容部32と、粒状物を散布するためのインペラ等が内蔵された散布部33を備える。実際の散布にあたっては、収容部32がタンク本体20MBの排出口200に嵌合され、排出口200から排出された粒状物は、収容部32に落下し、収容部32を経て、散布部33からインペラ等の動作により、圃場に散布される。
【0029】
仕切板28は、
図4から
図6に示すように、その中心が排出口200の中心と重なるように位置合わせした上で、排出口200の周囲におけるタンク本体20MB内側の空間を平面視方向に仕切るように設けられる。仕切板28は、粒状物の排出口200への流入を分散させることになるが、排出口200に対して垂直に設けられることが好ましい。これは、仕切板28によって仕切られた排出口200の周囲におけるタンク本体20MB内側の空間を均等となるようにするとともに、排出口200から排出された粒状物が散布機30の収容部32に落下し易いようにするものである。
【0030】
仕切板28の形状は、タンク本体20MBの形状に合わせて設定することができるが、ここでは、仕切板28として、2枚の門構え状の仕切板28aと仕切板28bを組み合わせ、排出口200を挟んで平面視方向に十文字状に設けた例を示している。これは、散布用タンク排出口200が底部の中央に位置していることから、排出口200の周囲におけるタンク本体20MB内側の空間をX-X/Y-Y方向に4区画に分けることを企図したものである。排出口200の位置、タンク本体20MBの形状(特に、第1底面25及び第2底面26の傾斜度、幅の広狭、延長の長短など)、粒状物の特性などを考慮して、十文字状ではなく、仕切板28a又は仕切板28bの1枚のみを用いて、排出口200を挟んで平面視方向に一文字状に設けるようにしてもよい。十文字状にした場合には、タンク本体20MBの強度を高めるという効果を得ることもできる。なお、排出口200を挟んで両側ではなく片方側のみに設けるような態様、例えば、平面視方向において、L字状、T字状のように仕切板28を構成してもよい。
【0031】
仕切板28の材質は、粒状物の特性や非乾燥状態の程度(水分の含有率)に応じて選択することができるが、イネの種子を例として、播種準備(温湯消毒、浸種、発芽処理、表面脱水処理)を終了した催芽籾を散布した場合、仕切板28をステンレス製とすることが好ましいとの結果が得られている。
【0032】
滑落板29は、
図4から
図6に示すように、第1底面25,25の内壁に、排出口200に向かって下降傾斜するように設けられる。滑落板29は、粒状物の排出口200への流動を円滑にするものであり、これらの図では、第1底面25,25それぞれの一部に滑落板29a及び滑落板29bを設けた例を示しているが、排出口200の位置、タンク本体20MBの形状(特に、第1底面25の傾斜度、幅の広狭、延長の長短など)、粒状物の特性などを考慮して、次のように変形してもよい。
【0033】
例えば、第1底面25,25それぞれの全部に滑落板29a及び滑落板29bを設ける、第1底面25,25のいずれか一方のみに滑落板29を設ける、第2底面26,26それぞれの一部又は全部にも滑落板29を設ける、第2底面26,26のいずれか一方のみに滑落板29を設けるなど、散布の実情に適合するようにしてもよい。
【0034】
滑落板29の材質は、仕切板28と同様に、粒状物の特性や非乾燥状態の程度(水分の含有率)に応じて選択することができるが、イネの種子を例として、播種準備(温湯消毒、浸種、発芽処理、表面脱水処理)を終了した催芽籾を散布した場合、滑落板29をステンレス製とすることが好ましいとの結果が得られている。
【0035】
図7から
図9を参照して、タンク本体20MB、仕切板28、滑落板29の準備や取付態様の具体例を説明する。
図7は、
図4及び
図5におけるB-B線で上部を切り欠いた状態で仕切板28及び滑落板29の取付態様を示している。
【0036】
本実施形態は、比較的簡単な構造でコストも低く抑えることにより、農家の農業用ドローン1の活用に寄与することを念頭においており、仕切板28や滑落板29の準備や取付けも簡易に行えるよう考慮している。具体的には、
図7に示すように、滑落板29は、所望の形状に金属板(好ましくは、ステンレス板)を切り出すことにより準備し、タンク本体20MBの第1底面25,25にネジ止めすることで固定している。仕切板28は、タンク本体20MBに対して垂直となることから、先端部分においてL字金具を介在させて、仕切板28aについては滑落板29a又は滑落板29bに、仕切板28bについてはタンク本体20MBの第2底面26,26にネジ止めすることで固定している。
【0037】
仕切板28は、
図8に示すように、タンク本体20MDの形状に合わせて門構え状に金属板(好ましくは、ステンレス板)を切り出すことにより準備する。仕切板28は、散布機30(駆動部31)と干渉しないように下側の中央が凹辺28cによって切り欠かれている。凹辺28cから続く下辺28d、斜め辺28e、側辺28fは、それぞれ、タンク本体20MDの排出口200の径、第1底面25又は第2底面26の傾き、第2側面24との距離などを考慮して設定される。側辺28fの高さ(すなわち、仕切板28の高さ)は、タンク本体20MBの排出口200の周囲で粒状物のブリッジ現象が生じないように設定される。
【0038】
2枚の仕切板28aと仕切板28bを準備して十文字状の仕切板28とする場合は、一方において上辺28gの中央の位置で高さ方向上半分にスリットを、他方において凹辺28cの中央の位置で高さ方向下半分にスリットをそれぞれ設け、両者を嵌合するようにすればよい。そして、
図9に示すように、交差部分の対角線上の2か所においてL字金具を介在させて、仕切板28aと仕切板28bを互いにネジ止めすることで固定する。
【0039】
以上、散布用タンク20について説明したが、この散布用タンク20を装着した農業用ドローン1を使用して粒状物として播種準備(温湯消毒、浸種、発芽処理、表面脱水処理)を終了した催芽籾を散布したところ、散布用タンク20内に問題視されるほどの催芽籾が残存することなく、効率よく催芽籾を散布することができた。
【0040】
実証にあたっては、現在、ドローンで運搬できる重量は10kgまでに制限されているため、散布用タンク20、散布機30、バッテリ40に散布する催芽籾(5kg~7.5kg)を加えて10kgを超えないように設定して催芽籾を散布した。仕切板28及び滑落板29を設けていない従来の散布用タンクを用いた場合には、一握り程度の催芽籾が残存していたが、本実施形態に係る散布用タンク20を用いた場合には、そのようなことは生じなかった。また、催芽籾の散布量が飛行時間を通じてほぼ均一であり、10アール当たり約60秒で散布することができた。
【0041】
(実施形態の効果)
以上、説明したような実施形態に係る散布用タンク20は、排出口200の周囲におけるタンク本体20MB内側の空間を平面視方向に仕切るように設けられ、粒状物の排出口200への流入を分散させる金属製の仕切板28と、タンク本体20MBの内壁の少なくとも一部に排出口200に向かって下降傾斜するように設けられ、粒状物の排出口200への流動を円滑にする金属製の滑落板29とを備えることにより、タンク本体20MBの排出口200の周囲における粒状物のブリッジ現象を防止又は抑制し、かつ、タンク本体20MBの内壁の粒状物の付着を防止することができる。これにより、非乾燥状態の水を吸収した状態の粒状物であっても均一に散布することが可能で、かつ、比較的簡単な構造でコストも低く抑えることが可能な粒状物の散布用タンク20及びそれを装着した農業用ドローン1を提供することができる。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1…農業用ドローン
10…飛行装置
11…機体
12…アーム
13…モータ
14…回転軸
15…プロペラ
16…スキッド
20…散布用タンク
20MB…タンク本体
21…天板
22…蓋部(投入口)
23…第1側面
24…第2側面
25…第1底面
26…第2底面
27…スキッド支持部
28…仕切板
29…滑落板
200…排出口
30…散布機
31…駆動部
32…収容部
33…散布部
40…バッテリ