(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029161
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】フォトニック結晶面発光レーザ構造
(51)【国際特許分類】
H01S 5/11 20210101AFI20230224BHJP
【FI】
H01S5/11
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165412
(22)【出願日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202110948096.4
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518382946
【氏名又は名称】業成科技(成都)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】518426930
【氏名又は名称】業成光電(深セン)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521443483
【氏名又は名称】業成光電(無錫)有限公司
【氏名又は名称原語表記】INTERFACE OPTOELECTRONICS (WUXI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.75 Xinmei Road, Xinwu District, Wuxi, Jiangsu, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】518382968
【氏名又は名称】英特盛科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】盧 廷昌
(72)【発明者】
【氏名】洪 國彬
(72)【発明者】
【氏名】陳 立人
(72)【発明者】
【氏名】趙 天行
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB53
5F173AB90
5F173AF85
(57)【要約】
【課題】本発明は、フォトニック結晶面発光レーザ構造を提供する。
【解決手段】フォトニック結晶面発光レーザ構造は、基板と、基板に設けられるN型クラッド層と、N型クラッド層に設けられる活性層と、活性層に設けられるフォトニック結晶構造と、フォトニック結晶構造に設けられるP型クラッド層と、P型クラッド層に設けられるN型半導体層と、N型半導体層のP型クラッド層から離れた表面に位置するメタサーフェス構造と、を備える。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられるN型クラッド層と、
前記N型クラッド層に設けられる活性層と、
前記活性層に設けられるフォトニック結晶構造と、
前記フォトニック結晶構造に設けられるP型クラッド層と、
前記P型クラッド層に設けられる第1のN型半導体層と、
前記第1のN型半導体層の前記P型クラッド層から離れた表面に位置するメタサーフェス構造と、
を備えるフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項2】
前記基板、前記N型クラッド層及び前記活性層は、1つの方向に沿って配列され、前記メタサーフェス構造は、レーザビームが前記方向に対して傾斜して出射するように配置される請求項1に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項3】
前記レーザビームと前記方向との間の最大夾角は90度である請求項2に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項4】
前記メタサーフェス構造は、レーザビームが同時に複数の異なる方向へ出射するように配置される請求項1に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項5】
前記メタサーフェス構造は、前記第1のN型半導体層と一体的に成形される微細構造を含む請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項6】
前記メタサーフェス構造は、前記第1のN型半導体層の前記表面を局所的に覆うとともに、前記第1のN型半導体層に接触する請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項7】
前記第1のN型半導体層の前記表面に設けられるとともに、前記メタサーフェス構造を取り囲む金属電極を更に備える請求項1~6のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項8】
前記第1のN型半導体層内に設けられるトンネル接合を更に備える請求項1~7のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項9】
前記トンネル接合の断面積は、前記メタサーフェス構造の面積よりも小さい請求項8に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項10】
前記トンネル接合の前記基板への垂直投影領域は、前記メタサーフェス構造の前記基板への垂直投影領域内にある請求項8又は9に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項11】
前記基板、前記N型クラッド層及び前記活性層は、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向に垂直である第2の方向において、前記トンネル接合の幅は、前記メタサーフェス構造の幅よりも小さい請求項8、9又は10に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項12】
前記トンネル接合の断面積は、前記フォトニック結晶構造の断面積よりも小さい請求項8に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項13】
前記トンネル接合の前記基板への垂直投影領域は、前記フォトニック結晶構造の前記基板への垂直投影領域内にある請求項8又は12に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項14】
前記基板、前記N型クラッド層及び前記活性層は、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向に垂直である第2の方向において、前記トンネル接合の幅は、前記フォトニック結晶構造の幅よりも小さい請求項8、12又は13に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項15】
前記P型クラッド層に設けられるとともに、前記第1のN型半導体層により取り囲まれる第1のP型半導体層を更に備え、前記トンネル接合は、前記第1のP型半導体層と前記第1のN型半導体層との間に位置する請求項8~14のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項16】
前記トンネル接合は、第2のP型半導体層及び第2のN型半導体層を含み、前記第2のP型半導体層は、前記第1のP型半導体層と前記第2のN型半導体層との間に位置し、前記第2のP型半導体層のドーピング濃度は、前記第1のP型半導体層よりも大きく、前記第2のN型半導体層のドーピング濃度は、前記第1のN型半導体層よりも大きい請求項15に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項17】
前記トンネル接合の厚みは、5ナノメートルから100ナノメートルまでの範囲内にある請求項8~16のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項18】
前記活性層と前記フォトニック結晶構造との間に位置する電子閉じ込め層を更に備える請求項1~17のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項19】
前記フォトニック結晶構造は、複数の周期的なホールを含む請求項1~18のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項20】
前記周期的なホールの断面形状は、円形、四角形又は六角形である請求項19に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォトニック結晶面発光レーザ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザは、医療、光通信及び生産加工などの分野で広く適用されている。従来のレーザ構造では、発光効率及び出射方向の制御にまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【0003】
これを鑑み、本開示の目的の一つは、より高い発光効率及びより大きな出射角度に達することができるレーザ構造を提案することである。
【0004】
上記の目的を達成するために、本開示のいくつかの実施形態によれば、フォトニック結晶面発光レーザ構造は、基板と、基板に設けられるN型クラッド層と、N型クラッド層に設けられる活性層と、活性層に設けられるフォトニック結晶構造と、フォトニック結晶構造に設けられるP型クラッド層と、P型クラッド層に設けられる第1のN型半導体層と、第1のN型半導体層のP型クラッド層から離れた表面に位置するメタサーフェス構造と、を備える。
【0005】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、メタサーフェス構造は、レーザビームが基板、N型クラッド層及び活性層の配列方向に対して傾斜して出射するように配置される。
【0006】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、レーザビームと基板、N型クラッド層及び活性層の配列方向との間の最大夾角は90度である。
【0007】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、メタサーフェス構造は、レーザビームが同時に複数の異なる方向へ出射するように配置される。
【0008】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、メタサーフェス構造は、第1のN型半導体層と一体的に成形される微細構造を含む。
【0009】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、メタサーフェス構造は、第1のN型半導体層のP型クラッド層から離れた表面を局所的に覆うとともに、第1のN型半導体層に接触する。
【0010】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造は、第1のN型半導体層のP型クラッド層から離れた表面に設けられるとともに、メタサーフェス構造を取り囲む金属電極を更に備える。
【0011】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造は、第1のN型半導体層内に設けられるトンネル接合を更に備える。
【0012】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、トンネル接合の断面積は、メタサーフェス構造の面積よりも小さい。
【0013】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、トンネル接合の基板への垂直投影領域は、メタサーフェス構造の基板への垂直投影領域内にある。
【0014】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、基板、N型クラッド層及び活性層は、第1の方向に沿って配列され、第1の方向に垂直である第2の方向において、トンネル接合の幅は、メタサーフェス構造の幅よりも小さい。
【0015】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、トンネル接合の断面積は、フォトニック結晶構造の断面積よりも小さい。
【0016】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、トンネル接合の基板への垂直投影領域は、フォトニック結晶構造の基板への垂直投影領域内にある。
【0017】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、基板、N型クラッド層及び活性層は、第1の方向に沿って配列され、第1の方向に垂直である第2の方向において、トンネル接合の幅は、フォトニック結晶構造の幅よりも小さい。
【0018】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造は、P型クラッド層に設けられるとともに、第1のN型半導体層により取り囲まれる第1のP型半導体層を更に備え、トンネル接合は、第1のP型半導体層と第1のN型半導体層との間に位置する。
【0019】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、トンネル接合は、第2のP型半導体層及び第2のN型半導体層を含み、第2のP型半導体層は、第1のP型半導体層と第2のN型半導体層との間に位置し、第2のP型半導体層のドーピング濃度は、第1のP型半導体層よりも大きく、第2のN型半導体層のドーピング濃度は、第1のN型半導体層よりも大きい。
【0020】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、トンネル接合の厚みは、5ナノメートルから100ナノメートルまでの範囲内にある。
【0021】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造は、活性層とフォトニック結晶構造との間に位置する電子閉じ込め層を更に備える。
【0022】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、フォトニック結晶構造は、複数の周期的なホールを含む。
【0023】
本開示の1つ又は複数の実施形態において、周期的なホールの断面形状は、円形、四角形又は六角形である。
【0024】
以上を纏めると、本開示のフォトニック結晶面発光レーザ構造は、N型半導体層のP型クラッド層から離れた表面に位置するメタサーフェス構造を備え、メタサーフェス構造によりレーザビームの出射角度を制御することができる。フォトニック結晶面発光レーザ構造は、N型半導体層内に設けられるトンネル接合を更に備え、トンネル接合を配置することで、レーザ構造を通る電流の均一化、発光効率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の上記及びその他の目的、特徴、メリット並びに実施形態をより明らかで分かりやすくするために添付される図面について、以下の通りに説明する。
【
図1A】本開示の一実施形態によるフォトニック結晶面発光レーザ構造を示す上面図である。
【
図1B】
図1Aに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の領域M内における拡大透視図である。
【
図1C】
図1Aに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の線分1-1’に沿う断面図である。
【
図2】
図1Cに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の各製造段階における断面図である。
【
図3】
図1Cに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の各製造段階における断面図である。
【
図4】
図1Cに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の各製造段階における断面図である。
【
図5】
図1Cに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の各製造段階における断面図である。
【
図6】
図1Cに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の各製造段階における断面図である。
【
図7】
図1Cに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造の各製造段階における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面及び下記に示す各種の実施形態を参照することにより、本開示の説明をより詳しく完備にすることができる。図面における各素子は、縮尺通りに描いておらず、本開示を説明するために提供されるものに過ぎない。以下に説明される多くの実際的な細部は、本開示を全面的に理解するためのものであり、当業者であれば、1つ又は複数の実際的な細部がなくても本開示を実施できることを理解できるはずである。従って、これらの細部は、本開示を限定するものとすべきではない。
【0027】
図1A~
図1Cを参照されたい。
図1Aは、本開示の一実施形態によるフォトニック結晶面発光レーザ構造100を示す上面図であり、
図1Bは、
図1Aに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造100の領域M内における拡大透視図であり、
図1Cは、
図1Aに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造100の線分1-1’に沿う断面図である。フォトニック結晶面発光レーザ構造100は、第1の方向Yに沿って積み重ねて設けられた基板110、N型クラッド層120、活性層130、フォトニック結晶構造150、P型クラッド層160、第1のN型半導体層170及びメタサーフェス構造140を備える。基板110は、例えば半導体基板であり、ヒ化ガリウム(GaAs)又はその他の適切な半導体材料を含んでよい。N型クラッド層120は、基板110に設けられ、活性層130は、N型クラッド層120に設けられている。いくつかの実施形態において、活性層130は、量子井戸を含み、フォトニック結晶面発光レーザ構造100が通電する時に発光するように配置される。
【0028】
いくつかの実施形態において、N型クラッド層120は、ヒ化ガリウム(GaAs)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、リン化ヒ化インジウムガリウム(InGaAsP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、ヒ化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInAs)、リン化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInP)、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)、ヒ化窒化インジウムガリウム(InGaNAs)、ヒ化ガリウムアンチモン(GaAsSb)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、リン化ガリウム(GaP)、リン化アルミニウム(AlP)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)、その他の適切な半導体材料又は上記材料の任意の組み合わせを含む。
【0029】
図1A~
図1Cに示すように、フォトニック結晶構造150は、活性層130に設けられている。活性層130から発した光は、フォトニック結晶構造150において共振してレーザビームLBを生じ、レーザビームLBをフォトニック結晶面発光レーザ構造100の頂部から出射させる。
【0030】
図1A~
図1Cに示すように、いくつかの実施形態において、フォトニック結晶構造150は、ベース151及び複数の周期的なホール152を含む。ベース151は、ヒ化ガリウム(GaAs)又はその他の適切な半導体材料を含んでよく、周期的なホール152は、ベース151の活性層130から離れた側に形成され、且つ、第1の方向Yに実質的に垂直である第2の方向Xに沿って配列される。いくつかの実施形態において、周期的なホール152は、第1の方向Yに垂直である平面に沿って配列される。いくつかの実施形態において、周期的なホール152の断面形状は、円形、四角形又は六角形であってよい。
【0031】
図1A~
図1Cに示すように、P型クラッド層160は、フォトニック結晶構造150に設けられ、第1のN型半導体層170は、P型クラッド層160に設けられている。いくつかの実施形態において、第1のN型半導体層170は、N-GaAsを含む。いくつかの実施形態において、P型クラッド層160は、ヒ化ガリウム(GaAs)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、リン化ヒ化インジウムガリウム(InGaAsP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、ヒ化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInAs)、リン化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInP)、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)、ヒ化窒化インジウムガリウム(InGaNAs)、ヒ化ガリウムアンチモン(GaAsSb)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、リン化ガリウム(GaP)、リン化アルミニウム(AlP)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)、その他の適切な半導体材料又は上記材料の任意の組み合わせを含む。
【0032】
図1A~
図1Cに示すように、メタサーフェス構造140(metasurface)は、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面に位置する。メタサーフェス構造140は、サブ波長(sub-wavelength)スケールの微細構造を含み、レーザビームLBが通る時にその波面、相位などの特性を変えることができる。メタサーフェス構造140により、フォトニック結晶面発光レーザ構造100の頂部から出射するレーザビームLBの角度を制御することができ、例えばレーザビームLBが第1の方向Yに対して傾斜して出射するようにする。いくつかの実施形態において、レーザビームLBと第1の方向Yとの間の最大夾角は90度である。
【0033】
メタサーフェス構造140の設計によるが、出射するレーザビームLBと第1の方向Yとの間の夾角θは、-90度~+90度の範囲内の任意の角度であってよい。いくつかの実施形態において、メタサーフェス構造140は、フォトニック結晶構造150に生じたレーザビームLBを、同時に複数の異なる方向へフォトニック結晶面発光レーザ構造100の頂部から出射させるように調整してよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、メタサーフェス構造140は、第1のN型半導体層170と一体的に成形される微細構造を含む。いくつかの実施形態において、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面をエッチングすることによってメタサーフェス構造140を形成してよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、メタサーフェス構造140は、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面に追加された構造である。メタサーフェス構造140は、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面を局所的に覆うとともに、第1のN型半導体層170に接触する。いくつかの実施形態において、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面に誘電材料又は半導体材料(例えば、アモルファスシリコン)を1層メッキすることによってメタサーフェス構造140を形成してもよい。
【0036】
図1A~
図1Cに示すように、いくつかの実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造100は、第1のN型半導体層170内に設けられるトンネル接合190(tunnel junction)を更に備える。トンネル接合190を配置することで、フォトニック結晶面発光レーザ構造100を通る電流の均一化、発光効率の向上に寄与する。
【0037】
図1A~
図1Cに示すように、いくつかの実施形態において、トンネル接合190の横断面(即ち、トンネル接合190の第1の方向Yに垂直である断面)の面積は、メタサーフェス構造140の面積よりも小さい。いくつかの実施形態において、トンネル接合190の横断面の面積は、フォトニック結晶構造150の横断面(即ち、フォトニック結晶構造150の第1の方向Yに垂直である断面)の面積よりも小さい。いくつかの実施形態において、トンネル接合190の基板110への垂直投影領域は、メタサーフェス構造140の基板110への垂直投影領域内にあり、垂直投影領域は、第1の方向Yの逆方向に沿って投影した領域を示す。いくつかの実施形態において、トンネル接合190の基板110への垂直投影領域は、フォトニック結晶構造150の基板110への垂直投影領域内にある。いくつかの実施形態において、第2の方向Xでは、トンネル接合190の幅W3は、メタサーフェス構造140の幅W1よりも小さい。いくつかの実施形態において、トンネル接合190の幅W3は、フォトニック結晶構造150の幅W2よりも小さい。いくつかの実施形態において、第1の方向Yでは、トンネル接合190の厚みは、5ナノメートルから100ナノメートルまでの範囲内にある。
【0038】
図1A~
図1Cに示すように、フォトニック結晶面発光レーザ構造100の実際の発光領域は、フォトニック結晶構造150のトンネル接合190の下方に位置する箇所に集中する。メタサーフェス構造140の範囲がトンネル接合190をカバーする(即ち、トンネル接合190の基板110への垂直投影領域は、メタサーフェス構造140の基板110への垂直投影領域内にある)ため、メタサーフェス構造140の範囲は、同時にフォトニック結晶構造150のトンネル接合190に対応する部分もカバーしており、それによってフォトニック結晶面発光レーザ構造100の頂部から出射するレーザビームLBの角度を制御する。
【0039】
図1A~
図1Cに示すように、いくつかの実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造100は、第1のP型半導体層103(例えば、P-GaAs)を更に備える。第1のP型半導体層103は、P型クラッド層160に設けられるとともに、第1のN型半導体層170により取り囲まれる。トンネル接合190は、第1のP型半導体層103と第1のN型半導体層170との間に位置する。
【0040】
図1に示すように、いくつかの実施形態において、トンネル接合190は、積み重ねて設けられた第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192を含み、第2のP型半導体層は、第2のN型半導体層192と第1のP型半導体層103との間に位置する。第2のP型半導体層191のドーピング濃度は、第1のP型半導体層103のドーピング濃度よりも大きく、第2のN型半導体層192のドーピング濃度は、第1のN型半導体層170のドーピング濃度よりも大きい。いくつかの実施形態において、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192は、ヒ化ガリウム(GaAs)又はヒ化インジウムガリウム(InGaAs)を含む。
【0041】
図1A~
図1Cに示すように、いくつかの実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造100は、活性層130を覆うとともに、フォトニック結晶構造150と活性層130との間に位置する電子閉じ込め層180を更に備える。
【0042】
図1A~
図1Cに示すように、いくつかの実施形態において、フォトニック結晶面発光レーザ構造100は、第1の電極101及び第2の電極102を更に備える。第1の電極101は、基板110のN型クラッド層120から離れた側に設けられるとともに、基板110のN型クラッド層120から離れた表面に接触する。第2の電極102は、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた側に設けられるとともに、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面に接触する。いくつかの実施形態において、第1の電極101及び第2の電極102は、金属電極である。いくつかの実施形態において、第2の電極102は、メタサーフェス構造140を取り囲んで設けられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の電極101及び第2の電極102は、インジウム(In)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、銀(Ag)、鉛(Pb)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ベリリウム金(AuBe)、ベリリウムゲルマニウム(BeGe)、ニッケル(Ni)、鉛スズ(PbSn)、クロム(Cr)、金亜鉛(AuZn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、その他の適切な導電材料又は上記材料の任意の組み合わせを含む。
【0044】
以下、フォトニック結晶面発光レーザ構造100の製造方法について説明する。
【0045】
図1Cに示されるフォトニック結晶面発光レーザ構造100の各製造段階における断面図である
図2~
図7を参照されたい。フォトニック結晶面発光レーザ構造100の製造方法は、ステップS1~ステップS13を含む。
【0046】
図2に示すように、まず、ステップS1において、積み重ねて設けられる基板110、N型クラッド層120、活性層130、電子閉じ込め層180及び半導体層150A(例えば、ヒ化ガリウム)を形成する。基板110、N型クラッド層120、活性層130、電子閉じ込め層180及び半導体層150Aは、第1の方向Yに沿って配列される。いくつかの実施形態において、ステップS1は、エピタキシャル成長により、積み重ねて設けられる基板110、N型クラッド層120、活性層130、電子閉じ込め層180及び半導体層150Aを形成することを含む。
【0047】
図3に示すように、続いて、ステップS3において、半導体層150A内にフォトニック結晶構造150を形成する。いくつかの実施形態において、ステップS3は、一部の半導体層150Aを除去してフォトニック結晶構造150の周期的なホール152を形成することを含む。残りの半導体層150Aは、フォトニック結晶構造150のベース151とされる。いくつかの実施形態において、ステップS3は、エッチング又はフォトリソグラフィにより、一部の半導体層150Aを除去してフォトニック結晶構造150の周期的なホール152を形成することを含む。
【0048】
図4に示すように、続いて、ステップS5において、フォトニック結晶構造150に、積み重ねて設けられるP型クラッド層160、第1のP型半導体層103(例えば、P-GaAs)、第2のP型半導体層191(例えば、P+-GaAs又はP+-InGaAs)及び第2のN型半導体層192(N+-GaAs又はN+-InGaAs)を形成する。P型クラッド層160、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192は、第1の方向Yに沿って配列される。第1のP型半導体層103は、P型クラッド層160の上面を覆い、第2のP型半導体層191は、第1のP型半導体層103の上面を覆い、第2のN型半導体層192は、第2のP型半導体層191の上面を覆う。
【0049】
いくつかの実施形態において、ステップS5は、エピタキシャル成長により、フォトニック結晶構造150に、積み重ねて設けられるP型クラッド層160、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192を形成することを含む。
【0050】
図5に示すように、続いて、ステップS7において、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192が第2の方向XにおいてP型クラッド層160に比べて縮小するように、即ち、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192の第2の方向Xにおける幅がP型クラッド層160よりも小さくなるように、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192の外縁を除去する。残りの第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192は、トンネル接合190を構成し、フォトニック結晶面発光レーザ構造100の発光領域を画定する。
【0051】
いくつかの実施形態において、ステップS7は、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192が第2の方向XにおいてP型クラッド層160に比べて縮小するように、エッチングにより、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192の外縁を除去することを含む。
【0052】
図6に示すように、続いて、ステップS9において、第1のN型半導体層170(例えば、N-GaAs)を形成し、第1のN型半導体層170は、P型クラッド層160に設けられ、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192を被覆する。
【0053】
いくつかの実施形態において、ステップS9は、エピタキシャル成長により、P型クラッド層160、第1のP型半導体層103、第2のP型半導体層191及び第2のN型半導体層192に第1のN型半導体層170を形成することを含む。
【0054】
図7に示すように、続いて、ステップS11において、第1の電極101及び第2の電極102を形成し、第1の電極101は、基板110のN型クラッド層120から離れた側に設けられるとともに、第1の基板110のN型クラッド層120から離れた表面に接触する。第2の電極102は、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた側に設けられるとともに、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面に接触する。
【0055】
再び
図1Cを参照されたく、最後に、ステップS13において、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面にメタサーフェス構造140を形成する。いくつかの実施形態において、ステップS13は、メタサーフェス構造140を形成するように、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面をエッチングすることを含む。いくつかの実施形態において、ステップS13は、メタサーフェス構造140を形成するように、第1のN型半導体層170のP型クラッド層160から離れた表面に誘電材料又は半導体材料(例えば、アモルファスシリコン)を1層メッキすることを含む。
【0056】
以上を纏めると、本開示のフォトニック結晶面発光レーザ構造は、N型半導体層のP型クラッド層から離れた表面に位置するメタサーフェス構造を備え、メタサーフェス構造によりレーザビームの出射角度を制御することができる。フォトニック結晶面発光レーザ構造は、N型半導体層内に設けられるトンネル接合を更に備え、トンネル接合を配置することで、レーザ構造を通る電流の均一化、発光効率の向上に寄与する。
【0057】
本開示は実施形態を前述の通りに開示したが、これは本開示を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本開示の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0058】
100 フォトニック結晶面発光レーザ構造
101 第1の電極
102 第2の電極
103 第1のP型半導体層
110 基板
120 N型クラッド層
130 活性層
140 メタサーフェス構造
150 フォトニック結晶構造
150A 半導体層
151 ベース
152 周期的なホール
160 P型クラッド層
170 第1のN型半導体層
180 電子閉じ込め層
190 トンネル接合
191 第2のP型半導体層
192 第2のN型半導体層
LB レーザビーム
M 領域
W1、W2、W3 幅
X 第2の方向
Y 第1の方向
θ 夾角
【手続補正書】
【提出日】2023-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に設けられるN型クラッド層と、
前記N型クラッド層の上に設けられる活性層と、
前記活性層の上に設けられるフォトニック結晶構造と、
前記フォトニック結晶構造の上に設けられるP型クラッド層と、
前記P型クラッド層の上に設けられる第1のN型半導体層と、
前記第1のN型半導体層内に設けられるトンネル接合と、
前記第1のN型半導体層の前記P型クラッド層と反対側の表面に位置するメタサーフェス構造と、
を備え、
前記メタサーフェス構造は、前記第1のN型半導体層と一体的に成形される微細構造を含む、フォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項2】
前記基板、前記N型クラッド層及び前記活性層は、1つの方向に沿って配列され、前記メタサーフェス構造は、レーザビームが前記方向に対して傾斜して出射するように配置される請求項1に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項3】
前記レーザビームと前記方向との間の最大夾角は90度である請求項2に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項4】
前記メタサーフェス構造は、レーザビームが同時に複数の異なる方向へ出射するように配置される請求項1に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項5】
前記メタサーフェス構造は、前記第1のN型半導体層の前記P型クラッド層と反対側の前記表面を局所的に覆うとともに、前記第1のN型半導体層に接触する請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項6】
前記第1のN型半導体層の前記P型クラッド層と反対側の前記表面の上に設けられるとともに、前記メタサーフェス構造を取り囲む金属電極を更に備える請求項1~5のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項7】
前記トンネル接合の断面積は、前記メタサーフェス構造の面積よりも小さい請求項1~6のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項8】
前記トンネル接合の前記基板への垂直投影領域は、前記メタサーフェス構造の前記基板への垂直投影領域内にある請求項1~7のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項9】
前記基板、前記N型クラッド層及び前記活性層は、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向に垂直である第2の方向において、前記トンネル接合の幅は、前記メタサーフェス構造の幅よりも小さい請求項1~8のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項10】
前記トンネル接合の断面積は、前記フォトニック結晶構造の断面積よりも小さい請求項1~9のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項11】
前記トンネル接合の前記基板への垂直投影領域は、前記フォトニック結晶構造の前記基板への垂直投影領域内にある請求項1~10のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項12】
前記基板、前記N型クラッド層及び前記活性層は、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向に垂直である第2の方向において、前記トンネル接合の幅は、前記フォトニック結晶構造の幅よりも小さい請求項1~11のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項13】
前記P型クラッド層の上に設けられるとともに、前記第1のN型半導体層により取り囲まれる第1のP型半導体層を更に備え、前記トンネル接合は、前記第1のP型半導体層と前記第1のN型半導体層との間に位置する請求項1~12のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項14】
前記トンネル接合は、第2のP型半導体層及び第2のN型半導体層を含み、前記第2のP型半導体層は、前記第1のP型半導体層と前記第2のN型半導体層との間に位置し、前記第2のP型半導体層のドーピング濃度は、前記第1のP型半導体層よりも大きく、前記第2のN型半導体層のドーピング濃度は、前記第1のN型半導体層よりも大きい請求項13に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項15】
前記トンネル接合の厚みは、5ナノメートルから100ナノメートルまでの範囲内にある請求項1~14のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項16】
前記活性層と前記フォトニック結晶構造との間に位置する電子閉じ込め層を更に備える請求項1~15のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項17】
前記フォトニック結晶構造は、複数の周期的なホールを含む請求項1~16のいずれか一項に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。
【請求項18】
前記周期的なホールの断面形状は、円形、四角形又は六角形である請求項17に記載のフォトニック結晶面発光レーザ構造。