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特開2023-29210帯電防止塗料及び高い粘着性、安定性の帯電防止性離型フィルム、ならびにその製造方法
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  • 特開-帯電防止塗料及び高い粘着性、安定性の帯電防止性離型フィルム、ならびにその製造方法 図1
  • 特開-帯電防止塗料及び高い粘着性、安定性の帯電防止性離型フィルム、ならびにその製造方法 図2
  • 特開-帯電防止塗料及び高い粘着性、安定性の帯電防止性離型フィルム、ならびにその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029210
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】帯電防止塗料及び高い粘着性、安定性の帯電防止性離型フィルム、ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230224BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230224BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230224BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230224BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20230224BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20230224BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20230224BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230224BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C09D201/00
B32B27/18 D
C09D7/61
C09D7/65
C09D5/24
C09J7/40
C09D183/07
C09D7/63
C09K3/16 101B
C09K3/16 102H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078933
(22)【出願日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202110957591.1
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】507389842
【氏名又は名称】四川大学
(71)【出願人】
【識別番号】522188266
【氏名又は名称】四川龍華光電薄膜股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 延青
(72)【発明者】
【氏名】▲ちょう▼ 鋭敏
(72)【発明者】
【氏名】張 丁月
(72)【発明者】
【氏名】傅 強
(72)【発明者】
【氏名】劉 向陽
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA37A
4F100AB01A
4F100AB02B
4F100AB15B
4F100AB16B
4F100AB17B
4F100AB24B
4F100AD11A
4F100AH03B
4F100AH06B
4F100AJ06A
4F100AK01A
4F100AK42C
4F100AK52B
4F100AT00C
4F100BA01
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA02B
4F100CA05A
4F100CA22A
4F100CA22B
4F100CC00A
4F100CC00B
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100JG01A
4F100JL14B
4F100YY00A
4J004DB03
4J038HA026
4J038HA036
4J038JC30
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA12
4J038NA20
4J038PB06
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】帯電防止塗料と高い粘着、安定性の帯電防止性離型フィルム及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、帯電防止塗料と高い粘着、安定性の帯電防止性離型フィルム及びその製造方法を開示する。帯電防止塗料は、帯電防止材料を含む水性分散液又は酢酸エチル分散液で、帯電防止塗料を外部添加剤又は内部添加剤として製造された帯電防止性離型フィルムは長期持続的な帯電防止効果を有し、表面抵抗が10Ω/sqに達することができ、付着性が高く、剥離力が安定し、透明性が良く、離型フィルムを結合剤から分離する際の静電気による汚染、剥離不良などの問題を減らすことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止塗料であって、帯電防止材料を含む水性分散液又は酢酸エチル分散液であり、前記帯電防止塗料中の帯電防止材料は0.005重量%~0.05重量%であり、前記帯電防止材料は導電性カーボン系材料、導電性ポリマー樹脂、金属化合物等のうちの1種又は複数種で、前記導電性カーボン系材料は単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラファイト、カーボンブラック材料等のうち1種又は複数種であることを特徴とする、帯電防止塗料。
【請求項2】
前記帯電防止塗料は、分散剤又は/及び安定剤をさらに含み、前記帯電防止塗料中の分散剤は0.005重量%~0.1重量%で、前記帯電防止塗料中の安定剤は0.005重量%~0.1重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の帯電防止塗料。
【請求項3】
帯電防止性離型フィルムであって、2つの構造を有し、第1種は薄膜基材の少なくとも片面を帯電防止層及び離型層で順次コーティングすることであり、第2種は薄膜基材の少なくとも片面を帯電防止性離型層でコーティングすることであり、
第1種の帯電防止性離型フィルムの場合、帯電防止層は請求項1又は2に記載の帯電防止塗料を薄膜基材上に塗布することにより製造され、離型層は離型塗料を帯電防止層上に塗布することにより製造され、前記離型塗料はシラン類の化合物100部、触媒1~2部、ソルベントナフサ10~20部を均一に混合することによって得られ、
第2種の帯電防止性離型フィルムの場合、帯電防止性離型層は、帯電防止離型塗料を薄膜基材上に塗布することにより製造され、前記帯電防止離型塗料は均一に分散された請求項1又は2に記載の帯電防止塗料を、シラン類の化合物、触媒、定着剤、架橋剤、ソルベントナフサと均一に混合することによって得られ、上記各組成の含有量はシラン類の化合物100重量部、帯電防止塗料50~100重量部、ソルベントナフサ100~200重量部、定着剤1.0~1.4重量部、架橋剤1.2~1.6重量部及び触媒1.4~1.8重量部である、
ことを特徴とする、帯電防止性離型フィルム。
【請求項4】
前記シラン類の化合物は、アルケニルポリシロキサン、アミノシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン等のうち1種又は複数種であることを特徴とする、請求項3に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項5】
前記ソルベントナフサは、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノン、イソプロパノール、120#ソルベントナフサ、ヘプタン等のうち1種又は複数種であることを特徴とする、請求項3に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項6】
前記触媒は、白金、ルテニウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀金属錯体等のうち1種であることを特徴とする、請求項3に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項7】
前記定着剤は、メチルビニルMQV型シリコーン樹脂であり、前記架橋剤はトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランのうち1種又は複数種であることを特徴とする、請求項3に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか一項に記載の帯電防止性離型フィルムの製造方法であって、以下の工程:
(1)導電性カーボン系材料を水中に均一に分散させ、帯電防止塗料である導電性カーボン系材料0.005重量%~0.05重量%の分散液を得る帯電防止塗料調製工程、
(2)薄膜基材のコーティング対象となる表面を前処理して、薄膜基材表面の付着力を向上する薄膜基材の前処理工程、
(3)帯電防止塗料を薄膜基材上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて帯電防止層を形成する帯電防止層コーティング工程、
(4)配合量のシラン類の化合物、ソルベントナフサを均一に混合し、次に配合量の触媒を添加し、均一に混合し続けて離型塗料を得る離型塗料調製工程、及び
(5)離型塗料を薄膜の帯電防止層上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて離型層を形成し、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る離型塗料塗布工程
を有することを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
請求項3~7のいずれか一項に記載の帯電防止性離型フィルムの製造方法であって、以下の工程:
(1)配合量により帯電防止材料を酢酸エチル分散液中に均一に分散させ、配合量のシラン類の化合物、ソルベントナフサ、定着剤、架橋剤、触媒を順次添加して均一に混合して、帯電防止離型塗料を得る帯電防止離型塗料調製工程、
(2)薄膜基材のコーティング対象となる表面を前処理して、薄膜基材表面の付着力を向上する薄膜基材の前処理工程、及び
(3)帯電防止離型塗料を薄膜基材上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて帯電防止性離型層を形成して、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る帯電防止性離型層塗布工程
を有することを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜材料の技術分野に属し、離型フィルム材料に関し、特に、離型フィルム材料の帯電防止性能を向上させるための帯電防止塗料及び離型フィルムの分離時の帯電防止効果を果たすと共に硬化層と基材との間の優れた粘着効果を向上させるため、該帯電防止塗料で調製された良好な安定性及び付着性を兼ね備える帯電防止性離型フィルム材料及びその製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、表面に分離性がある薄膜のことで、限られた条件下で特定の材料と接触しても付着性がないか、わずかに付着性があるものをいう。一般的な離型フィルムは通常、ポリエステルフィルムに対してシリコーン離型剤、フッ素離型剤の塗布を含む表面処理又はプラズマ処理を施して製造される。離型フィルム材料は、電子、プリント回路基板、パッケージ、メンブレンスイッチ、防水材料、接着剤製品、ダイカット・パンチング加工などの産業に幅広く応用されている。
【0003】
通常、離型フィルムには、一定の帯電防止性能を持つ必要がある。これは、ポリエステルフィルム自体が電気絶縁性を持ち、静電気を帯びて充電や放電が起きやすく、静電気が蓄積されることで、剥離フィルムと接着剤層の剥離不良又は汚染などの問題が発生するためである。
【0004】
現在、市販の帯電防止性離型フィルムを調製する方法は、主に以下の3種類に分けられる。
【0005】
(1)PETオリジナルフィルム製造の配合に帯電防止剤、フィラー等を添加してPETオリジナルフィルムに帯電防止効果を持たせ、次にPETフィルムの表層を離型層でコーティングして調製して帯電防止性PET離型フィルムを得る。帯電防止剤、フィラーを添加して帯電防止性フィルムを得ることは、工程が簡単で効果が長続きするという利点があるが、帯電防止剤の添加により、PETの重合に影響を与えることで、PETフィルムの力学的性質に影響を及ぼす。
【0006】
(2)PET基材表面の少なくとも片面を帯電防止層及び離型層でコーティングして帯電防止性離型フィルムを製造する。帯電防止性塗膜のコーティングにより、離型フィルムの帯電防止性能を改善でき、かつ調製プロセスは簡単である。ただし、帯電防止塗膜は移行しやすいため、帯電防止性能の安定性が低くなり、同時に離型層と基材との間の付着性も低い。かつ製造工程は2回以上のオフラインコーティング工程を経る必要があり、コーティング期間に異物、引っかき傷等の品質上の問題が発生しやすく、製造コストが比較的高い。特許文献1は、ベース層と、基層の下にある離型層と、ベース層の上にあるナノ粒子層と、ナノ粒子層の上にある帯電防止層とを備えた帯電防止性離型フィルムを開示している。帯電防止層は、表面が負電荷を持つ複合SnO-SiOナノ粒子層で、優れた帯電防止効果がある。ただし、帯電防止塗膜は、移行しやすく、帯電防止性能の安定性が悪いため、製造工程は2回以上のオフラインコーティング工程を経ており、コーティング期間に異物、引っかき傷等の品質上の問題が発生しやすく、製造コストが比較的高い。
【0007】
(3)導電性塗料を調製し、PET基材の表面に1回コーティングすることで帯電防止性離型フィルムを製造する。この方法で製造した離型フィルムの製造工程では、コーティングが1回で済み、製造効率が高く、経済性も良好である。ただし、帯電防止剤とシリコーンオイルの適合性に対する要求は高く、一部の帯電防止剤は大量の水を吸収し、離型層の硬化が不完全であり、製品の品質が低く、工業生産の要件を満たすことが困難である。特許文献2は、基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも片面に設けられた帯電防止性有機シリコーン離型層とを備え、帯電防止層として導電性ポリマー樹脂を使用する帯電防止性有機シリコーン離型フィルムを開示している。該方法で調製された離型フィルムは、高い付着性、優れた表面抵抗性を有するが、離型層の硬化が不完全で、剥離力に劣り、製品品質が低いなどの問題があり、工業生産の要件を満たすことが困難である。
【0008】
上記をまとめると、現在市販の離型フィルム材料は、帯電防止効果が低く、帯電防止の持続性が低く、帯電防止要件を満たすことが困難で、離型層と基材との間の付着性に劣るため、離型効果の安定性を確保できず、電工と電子、光学産業、及びダイカット加工産業の使用要件を満たすことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国実用新案登録出願第201820739434.7号公報
【特許文献2】中国特許出願第202010013793.6号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来の離型フィルムの帯電防止性能の不安定性が、汚染、剥離不良、付着性が低いことにつながるなどの問題に着目して、離型フィルムの帯電防止の安定性を向上することができる新型帯電防止塗料,を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、上記帯電防止塗料を利用して調製され、長期持続の帯電防止効果、高い付着性、安定した離型効果及び優れた透明性を有する帯電防止性離型フィルムを提供することである。
【0012】
本発明の第3の目的は、上記離型フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、次の技術的手段を提示する。
【0014】
本発明により提供される帯電防止塗料は、帯電防止材料を含む水性分散液又は酢酸エチル分散液であり、前記帯電防止塗料中の帯電防止材料は0.005重量%~0.05重量%であり、前記帯電防止材料としては導電性カーボン系材料、導電性ポリマー樹脂、金属化合物等のうちの1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されず、前記導電性カーボン系材料としては単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、グラファイト(GR)、カーボンブラック材料(CB)等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記導電性ポリマー樹脂は、チオフェン類、ピロール類及びアニリン類等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記金属化合物は、銅粒子、銀ナノワイヤ、酸化インジウムスズ及び酸化チタン等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。
【0015】
好ましい実施形態において、前記帯電防止塗料は、分散剤又は/及び安定剤をさらに含み得、前記帯電防止塗料中の分散剤は0.005重量%~0.1重量%で、前記帯電防止塗料中の安定剤は0.005重量%~0.1重量%である。前記分散剤としては、TNRDIS、Disponer 983、FA 196、FX 9086、グリココール酸ナトリウム及びその誘導体、グリコデオキシコール酸ナトリウム及びその誘導体、ケノデオキシコール酸ナトリウム及びその誘導体、タウロコール酸ナトリウム及びその誘導体、デオキシコール酸ナトリウム及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリビニルカプロラクタム及びその誘導体、ポリビニルアセトアミド及びその誘導体(平均分子量が8000~700000)で、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記安定剤としては、高分子型安定剤DNA、RNA、セルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
上記の帯電防止塗料に基づいて調製された帯電防止層には、次の利点がある。(1)帯電防止の安定性が良く、カーボンナノチューブ材料自体が優れた導電性を持ち、成膜後の構造が安定しており、帯電防止塗料が離型層に移行することがなく、離型フィルムが長期持続の帯電防止効果を有することを確保する。(2)付着性が良く、すなわち、帯電防止層とフィルム基材及び離型層との間の粘着力が強く、界面が密に接触しているので、硬化層は摩擦で分離しにくく、離型効果の安定性を確保する。(3)導電性が良く、前記帯電防止層をコーティングしたフィルムの表面抵抗は0~10Ω/sqの範囲で、1012Ω/sq未満で、帯電防止フィルムの使用要件を満たし、良好な帯電防止効果を有する。(4)透明性が良く、導電性カーボンシ系材料は、帯電防止塗料0.05重量%であることが好ましく、良好な帯電防止性能技術を確保する上で、透明PET基材フィルムの光線透過率への影響は少なく、光線透過率は85%以上である。
【0017】
本発明により提供される良好な安定性及び付着性を兼ね備える帯電防止性離型フィルムは、2つの構造を有し、1つは薄膜基材の少なくとも片面を帯電防止層及び離型層で順次コーティングすることであり、もう1つは薄膜基材の少なくとも片面を帯電防止性離型層でコーティングすることである。
【0018】
前記薄膜基材としては、PET、PE、BOPP、CPP等の素材の薄膜が挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
第1種の帯電防止性離型フィルムの場合、帯電防止層は帯電防止塗料を薄膜基材上に塗布することにより製造され、厚さが2~10μmの範囲であり、離型層は離型塗料を帯電防止層上に塗布することにより製造され、厚さが0.4~0.8μm程度である。前記離型塗料は、シラン類の化合物100部、触媒1~2部、ソルベントナフサ10~20部を均一に混合することによって得られる。前記シラン類の化合物としては、アルケニルポリシロキサン、アミノシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記ソルベントナフサとしは、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノン、イソプロパノール、120#ソルベントナフサ、ヘプタン等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記触媒は、白金、ルテニウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀金属錯体等のうち1種である。
【0020】
上記アルケニルポリシロキサンの構造式は次の式で表される。
【0021】
【化1】
ここで、xは、10~500の整数、Rは原子数1~6の直鎖アルキル基、Rのアルキル基上の水素原子は塩素原子で置き換えられることができる。
【0022】
第2種の帯電防止性離型フィルムの場合、帯電防止性離型層は、帯電防止離型塗料を薄膜基材上に塗布することにより製造され、厚さが10~20μm程度である。前記帯電防止離型塗料は、均一に分散された帯電防止塗料を、シラン類の化合物、触媒、定着剤、架橋剤、ソルベントナフサと均一に混合することによって得られる。上記各組成の含有量:シラン類の化合物100重量部、帯電防止塗料50~100重量部、ソルベントナフサ100~200重量部、定着剤1.0~1.4重量部、架橋剤1.2~1.6重量部及び触媒1.4~1.8重量部。前記シラン類の化合物、触媒、ソルベントナフサの選択は、前述の離型剤で与えられたものと同じである。前記定着剤としては、メチルビニルMQV型シリコーン樹脂等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記架橋剤は、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランのうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。
【0023】
本発明は、上記2種の帯電防止性離型フィルムの製造方法をさらに提供する。
【0024】
本発明により提供される第1種の帯電防止性離型フィルムの製造方法は、帯電防止塗料の外部添加タイプに属し、薄膜基材の少なくとも片面に帯電防止層をコーティングし、次に帯電防止層の表面に離型層をコーティングし、帯電防止性離型フィルムを製造し、具体的には以下の工程:
(1)導電性カーボン系材料を水中に均一に分散させ、帯電防止塗料である導電性カーボン系材料0.005重量%~0.05重量%の分散液を得る帯電防止塗料調製工程、
(2)薄膜基材のコーティング対象となる表面を前処理して、薄膜基材表面の付着力を向上する薄膜基材の前処理工程、
(3)帯電防止塗料を薄膜基材上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて帯電防止層を形成する帯電防止層コーティング工程、
(4)配合量のシラン類の化合物、ソルベントナフサを均一に混合し、次に配合量の触媒を添加し、均一に混合し続けて離型塗料を得る離型塗料調製工程、及び
(5)離型塗料を薄膜の帯電防止層上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて離型層を形成し、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る離型塗料塗布工程
を有する、上記方法。
【0025】
上記工程(1)において、超音波処理、3本ロールミル粉砕、ボールミル粉砕、Dyno-mill粉砕、撹拌及び押出等の1つ又は複数の方法により分散液に良好な分散効果を得ることができる。帯電防止塗料の安定した帯電防止性能を改善するため、配合量の分散剤又は/及び安定剤を導電性カーボン系材料と一緒に水中にさらに分散させることができる。
【0026】
上記工程(2)において、薄膜基材の表面への前処理方法は、仕上げ研磨処理、サンドブラスト、強酸又は強アルカリエッチング、コロナ処理、表面改質剤(チタン酸塩カップリング剤、シランカップリング剤又はアルミネートカップリング剤等)の添加、グラフト化による表面改質(放射線、化学処理又はプラズマ処理等)、結合剤(ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等)の添加の少なくとも1つ又はこれらの組み合わせであり得る。例えば薄膜基材の表面にコロナ処理を施すことにより、帯電防止層と薄膜基材との間の接触角を30~50°に保証することができ、帯電防止層の均一なコーティングを助け、薄膜表面の付着性を高めることができる。
【0027】
上記工程(3)において、帯電防止塗料の塗布方法は、バーコート法、リバースロールコート法、グラビアロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法のうち少なくとも1つ又は複数の既知の方法を選択して1回或いは複数回塗布して帯電防止層を形成することができる。好ましい形態において、薄膜基材の一側から他側に塗布する。帯電防止層をコーティングした後の薄膜の好ましい乾燥方法:温度65~75℃のオーブンに入れて乾燥させ、オーブン内の総風量を22000~28000m/時間に制御し、乾燥時間は60~120秒であり、帯電防止層の形成を確保する。帯電防止層をコーティングした薄膜を乾燥させた後、さらに水洗した後濃度30%~50%の酸性溶液中に入れて12~36時間する。使用する酸は、硝酸、塩酸等であり得る。酸処理後の帯電防止フィルムの表面抵抗範囲は、10~10Ω/sqで、より優れた帯電防止効果を奏する。
【0028】
上記工程(4)において、シラン類の化合物及びソルベントナフサは、サンプリングし、従来の撹拌方法で混合し、撹拌時間は10~20分である。触媒を加えた後撹拌時間は、5~10分である。
【0029】
上記工程(5)における離型塗料の塗布方法は、帯電防止塗料の塗布方法を参照することができ、2つの塗布方法は互いに同一でも異なっていてもよい。離型層をコーティングした後の薄膜の好ましい乾燥方法:温度85~95℃のオーブンに入れて乾燥させ、オーブン内の総風量を22000~28000m/時間に制御し、乾燥時間は60~120秒であり、これにより離型層を形成すると同時に、薄膜基材に影響を与えないことを確保できる。
【0030】
構造式(I)によるアルケニルポリシロキサンは、上記の組成によれば、離型層が架橋・硬化されて、離型層を形成し、架橋後の生成物の有効な成分の化学構造式は、次の式で表される。
【0031】
【化2】
ここで、yは、10~500の整数である。
【0032】
この方法に基づいて製造された帯電防止性離型フィルムは、使用する帯電防止塗膜為導電性カーボン系材料がカーボンナノチューブ材料であるため、カーボンナノチューブ材料が優れた導電性を持ち、成膜後の構造が安定しており、帯電防止塗料が離型層に移行することがなく、離型フィルムが長期持続の帯電防止効果を有することを確保する。同時に帯電防止層、離型層と薄膜基材との間に良好な粘着力があり、コーティング過程中の帯電防止塗膜及び離型塗膜の厚さが薄いため、製造された塗膜の厚さが2~10μmの範囲内にあり、薄膜基材の良好な透明性により、製造された離型フィルムはやはり良好な透明性を有する。
【0033】
薄膜基材の両面にコーティングし、上記工程(1)~(5)を繰り返すると、両面帯電防止フィルムを製造できる。
【0034】
本発明により提供される第2種の帯電防止性離型フィルムの製造方法は、帯電防止塗料の内部添加タイプに属し、帯電防止塗料を含む帯電防止離型塗料を調製し、薄膜基材の少なくとも片面にコーティングすることにより、帯電防止性離型フィルムを製造し、具体的には、以下の工程:
(1)配合量により帯電防止材料を酢酸エチル分散液中に均一に分散させ、配合量のシラン類の化合物、ソルベントナフサ、定着剤、架橋剤、触媒を順次添加して均一に混合して、帯電防止離型塗料を得る帯電防止離型塗料調製工程、
(2)薄膜基材のコーティング対象となる表面を前処理して、薄膜基材表面の付着力を向上する薄膜基材の前処理工程、及び
(3)帯電防止離型塗料を薄膜基材上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて帯電防止性離型層を形成して、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る帯電防止性離型層塗布工程
を有する、上記方法。
【0035】
上記工程(1)において、添加された材料を従来の撹拌方法で均一に撹拌するだけでよく、一般的に10~20分間撹拌する。
【0036】
上記工程(2)において、薄膜基材への表面処理方法は、前述と同じであるため、ここでその説明を省略する。
【0037】
上記工程(3)において、帯電防止性離型層をコーティングした後の薄膜の好ましい乾燥方法:温度85~95℃のオーブンに入れて乾燥させ、オーブン内の総風量を22000~28000m/時間に制御し、乾燥時間は120~300秒であり、これにより帯電防止性離型層が完全に硬化して正常に形成されると同時に、薄膜基材に影響を与えないことを確保できる。
【0038】
この方法に基づいて製造された帯電防止性剥離フィルムは、第1種の離型フィルムムから製造された帯電防止性離型フィルムの長期持続的な安定性、高い付着性、安定した剥離力、及び良好な透明性等の特徴を有する以外に、製造工程で塗布1回のみで済み、生産効率が高く、経済性も良好である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、本発明により提供される帯電防止性離型フィルムは、上から下の順に、少なくとも片面の離型層、少なくとも片面の帯電防止層及び薄膜基材層であり、帯電防止塗膜の良好な導電性能に基づいて、現在PET離型フィルムの帯電防止効果が低いという問題を効果的に解決する。この方法により製造された離型フィルムは、長期持続的な帯電防止効果を有し、表面抵抗が10Ω/sqに達することができ、付着性が高く、剥離力が安定し、透明性が良く、離型フィルムを結合剤から分離する際の静電気による汚染、剥離不良などの問題を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1種の帯電防止性離型フィルムの片面の断面図(110:PET薄膜基材、120:帯電防止層、130:離型層)である。
図2】本発明の第1種の帯電防止性離型フィルムの両面の断面図(210:PET薄膜基材、220:帯電防止層、230:離型層)である。
図3】本発明の第2種の帯電防止性離型フィルムの片面の断面図(310:PET薄膜基材、320:帯電防止層)である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(用語の定義)
「長期持続的な帯電防止効果」という用語は、本明細書において用いられる場合、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも5ヶ月、より好ましくは少なくとも10ヶ月、特に好ましくは12ヶ月の期間にわたって本発明により製造された離型フィルムの帯電防止効果は安定し、変化する可能性のある環境の相対湿度の影響を受けないか、環境の変化による影響が少ないことを意味する。
【0042】
本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。衝突を回避するため、本発明の実施形態の実施又は試験で使用され得る類似或いは均等の方法と材料は、本明細書に記載の好ましい方法と材料を基準とする。
【0043】
本明細書において用いられるところ、用語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「含有する」、「を特徴とする」、「有している」、「備える」、又はこれらのいずれかの他の変形は、非排他的な包含をカバーすることが意図されている。例えば要素の一覧を含むプロセス、方法、物品又は装置は、必ずしもこれらの要素にのみ限定されることはなく、明示的に列挙されていないか、或いは、このようなプロセス、方法、物品又は装置に固有である他の要素が包含されていてもよい。また、それとは反対に明白に述べない限り、「又は」は、非排他的な「又は」を指し、排他的論理和を指さない。
【0044】
以下の実施例で使用される水は、脱イオン水である。
【実施例0045】
本実施例で製造される帯電防止性離型フィルムは、図1に示すように、PET薄膜基材層100(厚さが100μm)と、PET薄膜基材層上に設けられた帯電防止層120と、帯電防止層上に設けられた離型層130とを備える。
【0046】
本実施例において、帯電防止塗料の組成は、重量部で、単層カーボンナノチューブ粉末(Tuball)0.05部、脱イオン水100部、DNA0.05部(Sigma社製)、セルロース0.05部(Acros社製、MW=100000)、デオキシコール酸ナトリウム0.05部(Acros Organics社製)、ポリビニルピロリドン0.05部(Damas-beta社製、MW=10000)である。
【0047】
本実施例において、離型塗料の組成は、重量部で、アルケニルポリシロキサン100部(浙江耀陽新材料科技有限公司)、白金触媒2部(浙江耀陽新材料科技有限公司製)、トルエンソルベントナフサ15部(成都長聯化工試剤有限公司製)である。
【0048】
本実施例の帯電防止性離型フィルムを製造する工程は、次の通りである。
(1)配合量の単層カーボンナノチューブ、デオキシコール酸ナトリウム、DNA、セルロース、ポリビニルピロリドンをポットに加え、48時間粉砕して、単層カーボンナノチューブを脱イオン水に均一に分散させて、単層カーボンナノチューブ0.05重量%程度の帯電防止塗料である水分散液を得る帯電防止塗料調製工程、
(2)PET薄膜基材のコーティング対象となる表面に対して205m/分の生産速度、5.1KWのコロナ出力、16.1KJ/m2のコロナ出力密度でコロナ放電処理を施して、薄膜基材の表面付着力を高める薄膜基材前処理工程、
(3)バーコート法を使用して帯電防止塗料を上から下へ薄膜基材に塗布し、塗布完了後温度70℃のオーブン内に入れて乾燥させ、オーブン内の総風量を25000m/時間に制御し、90秒乾燥させて、帯電防止層をコーティングした薄膜を乾燥させた後、さらに水洗した後濃度40%の硝酸溶液中に入れて24時間処理し、酸処理後、さらに水洗、乾燥すると帯電防止層を形成する帯電防止層コーティング工程、
(4)配合量のシランポリシロキサンをトルエンソルベントナフサに加え、15分間撹拌してから配合量の白金触媒を加え、5分間撹拌し続けて離型塗料を得る離型塗料調製工程、
(5)バーコート法を使用して離型塗料を上から下へ薄膜基材に塗布し、塗布完了後温度95℃のオーブン内に入れて乾燥させ、オーブン内の総風量を25000m/時間に制御し、90秒乾燥させて、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る離型塗料塗布工程。
【0049】
工程(1)及び工程(4)が1回調製することを除き、上記工程(2)、工程(3)、工程(5)を3回繰り返して、3つの帯電防止性離型フィルムサンプルを得、厚さを表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
PET薄膜基材の両面にコーティングし、上記の工程(2)、工程(3)、工程(5)を繰り返すと、両面帯電防止性離型フィルムを製造でき、図2に示すように、PET薄膜基材210、PET薄膜基材210両側にある帯電防止層220及び帯電防止層外にある離型層230を含む。
【0052】
(比較例1)
実施例1と同じ製造方法で離型フィルムを製造し、相違点は離型層のみをコーティングし、帯電防止層をコーティングしないことであり、離型層の厚さは0.6μmであった。
【0053】
(比較例2)
実施例1と同じ製造方法で帯電防止フィルムを製造し、相違点は帯電防止層のみをコーティングし、離型層をコーティングしないことであり、帯電防止層の厚さは3μmであった。
【0054】
実施例1で製造された3つのサンプル及び比較例1と比較例2で製造された比較サンプルは、以下のように試験された。
【0055】
1.帯電防止性能試験
表面抵抗計(MCP-T700で、Loresta-GX社製)でサンプル表面の表面抵抗を測定した。
【0056】
2.薄膜の透明性の測定
紫外線可視分光光度計(UV-1 800PCで、MAPADA社製)で薄膜の透明性を試験した。
【0057】
3.薄膜の帯電防止層、離型層と基材層との間の付着性の測定
クロスカット法、すなわちカッターナイフを用いて、無傷の薄膜表面に互いに30°~45°の角度で交わり素地に達するそれぞれ長さ40mmの直線の切込みを入れる。切り込み位置にセロハン粘着テープを貼り付け、引きはがした後交差カット部のはがれの状態を観察して分類した。結果評価状況を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
4.薄膜剥離時の電圧の測定
静電気試験器(FMX-003で、simcoION社製)で薄膜剥離後の表面静電気を測定した。
【0060】
5.帯電防止能力の長期持続性
表面抵抗計(MCP-T700で、Loresta-GX社製)で硬化層の表面抵抗を測定した。離型フィルムを製造した後、相対湿度を変化させた環境に置き、3ヶ月、5ヶ月、12ヶ月間保管し、表面抵抗値を測定した。
【0061】
相対変化の環境中にある離型フィルム材料が異なる保管時間下で測定された表面抵抗値は、最初の測定データとほぼ同じで、本発明における離型フィルム材料は、長期持続的な帯電防止効果を有することを証明している。
【0062】
表3は、実施例1で製造された3つのサンプル及び比較例1、比較例2で製造された比較サンプルの関連試験結果を示している。
【0063】
【表3】
【0064】
表3のデータ分析から、この方法で製造された帯電防止性離型フィルムは、優れた帯電防止性能、表面抵抗10~10Ω/sq、剥離力の安定性を有し、優れた残留接着率、良好な透明性、優れた表面付着力及び長期持続的な帯電防止作用を有し、生産ニーズを満たす。
【実施例0065】
本実施例において、帯電防止塗料の組成は、重量部で、多層カーボンナノチューブ粉末(Nanocyl NC7000)0.05部、脱イオン水100部、DNA0.05部(Sigma社製)、セルロース0.05部(Acros社製、MW=100000)、デオキシコール酸ナトリウム0.05部(Acros Organics社製)、ポリビニルピロリドン0.05部(Damas-beta社製、MW=10000)である。
【0066】
本実施例の帯電防止性離型フィルムを製造する工程は、次の通りである。すなわち、配合量の多層カーボンナノチューブ、デオキシコール酸ナトリウム、DNA、セルロース、ポリビニルピロリドンをポットに加え、48時間粉砕して、多層カーボンナノチューブを脱イオン水に均一に分散させて、多層カーボンナノチューブ0.05重量%程度の帯電防止塗料である水分散液を得る。
【0067】
本実施例の工程は、実施例1で与えられる工程(2)~(5)を参照する。
【0068】
本実施例で製造された帯電防止性離型フィルムの帯電防止層の厚さは、3μm、離型層の厚さは0.6μmである。
【0069】
(比較例3)
実施例2と同じ製造方法で帯電防止フィルムを製造し、相違点は帯電防止層のみをコーティングし、離型層をコーティングしないことであり、帯電防止層の厚さは3μmであった。
【0070】
実施例2のサンプル及び比較例3の比較サンプルは、以下のように試験された。
【0071】
1.帯電防止性能試験
表面抵抗計(MCP-T700で、Loresta-GX社製)でサンプル表面の表面抵抗を測定した。
【0072】
2.薄膜の透明性の測定
紫外線可視分光光度計(UV-1 800PCで、MAPADA社製)で薄膜の透明性を試験した。
【0073】
【表4】
【0074】
表4のデータ分析から、この方法で製造された帯電防止性離型フィルムは、優れた帯電防止性能、表面抵抗10~10Ω/sq、かつ良好な透明性を有し、生産ニーズを満たす。
【実施例0075】
本実施例で製造される帯電防止性離型フィルムは、図3に示すように、PET薄膜基材層310(厚さが100μm)と、PET薄膜基材層上に設けられた帯電防止性離型層130とを備える。
【0076】
本実施例において、帯電防止塗料の組成は、重量部で、多層カーボンナノチューブ粉末(Nanocyl NC7000)0.05部、酢酸エチル100部(成都市科隆化学品有限公司製)、分散剤0.05部(YIME社製、ブランドTNRDIS)、DNA0.05部(Sigma社製)、セルロース0.05部(Acros社製、MW=100000)、デオキシコール酸ナトリウム0.05部(Acros Organics社製)、ポリビニルピロリドン0.05部(Damas-beta社製、MW=10000)である。
【0077】
本実施例において、帯電防止塗料の組成は、重量部で帯電防止塗料50部、アルケニルポリシロキサン(浙江耀陽新材料科技有限公司製)100部、白金触媒(浙江耀陽新材料科技有限公司製)1.6部、酢酸エチルソルベントナフサ200部、メチルビニルMQV型シリコーン樹脂1.2部(浙江耀陽新材料科技有限公司製)、ジメチルジエトキシシラン1.4部(浙江耀陽新材料科技有限公司)である。
【0078】
本実施例の帯電防止性離型フィルムを製造する工程は、次の通りである。
(1)配合量の多層カーボンナノチューブ、分散剤を酢酸エチルに加え、ボールミルで48時間分散させ、分散した単層カーボンナノチューブの酢酸エチル分散液中に、配合量に従ってアルケニルポリシロキサン、酢酸エチル、定着剤、架橋剤及び白金触媒を順次添加し、その後20分間撹拌して、帯電防止離型塗料を得る帯電防止離型塗料調製工程、
(2)PET薄膜基材のコーティング対象となる表面に対して205m/分の生産速度、5.1KWのコロナ出力、16.1KJ/m2のコロナ出力密度でコロナ放電処理を施して、薄膜基材の表面付着力を高める薄膜基材前処理工程、及び
(3)バーコート法を使用して帯電防止塗料を上から下へ薄膜基材に塗布し、塗布完了後温度70℃のオーブン内に入れて乾燥させ、オーブン内の総風量を25000m/時間に制御し、210秒乾燥させて、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る帯電防止離型層コーティング工程。
【0079】
上記方法により、最終的な帯電防止性離型フィルムの厚さは、110~120μmで、帯電防止性離型層の厚さは10~20μmである。
【0080】
本明細書に記載の実施例が本発明の原理を読者が理解するのを助けるためであることは、当業者によって理解されよう。本発明の保護範囲は、このような特定の記述及び実施例に限定されないことを理解されたい。当業者であれば、本発明に開示されたこれらの技術的教示に従って、本発明の本質から逸脱することなく、多種多様な他の具体的な変形及び組み合わせを行うことができ、かかる変形及び組み合わせは、やはり本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0081】
110 PET薄膜基材
120 帯電防止層
130 離型層





図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止性離型フィルムであって、2つの構造を有し、第1種は薄膜基材の少なくとも片面を帯電防止層及び離型層で順次コーティングすることであり、第2種は薄膜基材の少なくとも片面を帯電防止性離型層でコーティングすることであり、
第1種の帯電防止性離型フィルムの場合、帯電防止層は膜基材上の帯電防止塗料であり、離型層は離型塗料を帯電防止層上に塗布することにより製造され、前記離型塗料はシラン類の化合物100部、触媒1~2部、ソルベントナフサ10~20部を均一に混合することによって得られ、
帯電防止塗料は、帯電防止材料を含む水性分散液又は酢酸エチル分散液であり、前記帯電防止塗料中の帯電防止材料は0.005重量%~0.05重量%であり、前記帯電防止材料は導電性カーボン系材料、導電性ポリマー樹脂、金属化合物のうちの1種又は複数種で、前記導電性カーボン系材料は単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラファイト、カーボンブラック材料のうち1種又は複数種であり、
前記帯電防止塗料は、分散剤又は/及び安定剤をさらに含み、前記帯電防止塗料中の分散剤は0.005重量%~0.1重量%で、前記帯電防止塗料中の安定剤は0.005重量%~0.1重量%であり、 第2種の帯電防止性離型フィルムの場合、帯電防止性離型層は、膜基材上の帯電防止離型塗料であり、前記帯電防止離型塗料は均一に分散された前記帯電防止塗料を、シラン類の化合物、触媒、定着剤、架橋剤、ソルベントナフサと均一に混合することによって得られ、上記各組成の含有量はシラン類の化合物100重量部、帯電防止塗料50~100重量部、ソルベントナフサ100~200重量部、定着剤1.0~1.4重量部、架橋剤1.2~1.6重量部及び触媒1.4~1.8重量部である、ことを特徴とする、帯電防止性離型フィルム。
【請求項2】
前記シラン類の化合物は、アルケニルポリシロキサン、アミノシラン、ビニルシラン、イソシアネートシランうち1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項3】
前記ソルベントナフサは、ベンゼン、トルエン、120#ソルベントナフサ、ヘプタンうち1種又は複数種であることを特徴とする、請求項に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項4】
前記触媒は、白金、ルテニウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀金属錯体うち1種であることを特徴とする、請求項に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項5】
前記定着剤は、メチルビニルMQV型シリコーン樹脂であり、前記架橋剤はトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランのうち1種又は複数種であることを特徴とする、請求項に記載の帯電防止性離型フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の帯電防止性離型フィルムの製造方法であって、以下の工程:
(1)導電性カーボン系材料を水中に均一に分散させ、帯電防止塗料である導電性カーボン系材料0.005重量%~0.05重量%の分散液を得る帯電防止塗料調製工程、
(2)薄膜基材のコーティング対象となる表面を前処理して、薄膜基材表面の付着力を向上する薄膜基材の前処理工程、
(3)帯電防止塗料を薄膜基材上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて帯電防止層を形成する帯電防止層コーティング工程、
(4)配合量のシラン類の化合物、ソルベントナフサを均一に混合し、次に配合量の触媒を添加し、均一に混合し続けて離型塗料を得る離型塗料調製工程、及び
(5)離型塗料を薄膜の帯電防止層上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて離型層を形成し、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る離型塗料塗布工程
を有することを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の帯電防止性離型フィルムの製造方法であって、以下の工程:
(1)配合量により帯電防止材料を酢酸エチル分散液中に均一に分散させ、配合量のシラン類の化合物、ソルベントナフサ、定着剤、架橋剤、触媒を順次添加して均一に混合して、帯電防止離型塗料を得る帯電防止離型塗料調製工程、
(2)薄膜基材のコーティング対象となる表面を前処理して、薄膜基材表面の付着力を向上する薄膜基材の前処理工程、及び
(3)帯電防止離型塗料を薄膜基材上に塗布し、塗布完了後で乾燥させて帯電防止性離型層を形成して、最終的な帯電防止性離型フィルムを得る帯電防止性離型層塗布工程
を有することを特徴とする、製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
第1種の帯電防止性離型フィルムの場合、帯電防止層は帯電防止塗料を薄膜基材上に塗布することにより製造され、厚さが2~10μmの範囲であり、離型層は離型塗料を帯電防止層上に塗布することにより製造され、厚さが0.4~0.8μm程度である。前記離型塗料は、シラン類の化合物100部、触媒1~2部、ソルベントナフサ10~20部を均一に混合することによって得られる。前記シラン類の化合物としては、アルケニルポリシロキサン、アミノシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記ソルベントナフサとしは、ベンゼン、トルエン、120#ソルベントナフサ、ヘプタン等のうち1種又は複数種が挙げられるがこれらに限定されない。前記触媒は、白金、ルテニウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀金属錯体等のうち1種である。