(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029231
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】制御装置、熱交換システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/56 20180101AFI20230224BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20230224BHJP
【FI】
F24F11/56
F24F11/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104190
(22)【出願日】2022-06-29
(62)【分割の表示】P 2021133886の分割
【原出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】酒井 恭平
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 睦
(72)【発明者】
【氏名】木下 文
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA32
3L260BA64
3L260FA01
3L260JA18
(57)【要約】
【課題】 室外制御基板以外からの設定情報の変更を可能にする装置、システムおよびプログラムを提供すること。
【解決手段】 制御装置は、運転の制御に使用する設定情報を記憶する記憶媒体41を含み、設定情報を使用して運転制御を実行する室外制御基板40と、運転の制御に使用する設定情報を記憶する記憶媒体51を含み、外部機器と通信を行うNFC基板50とを含む。室外制御基板40とNFC基板50とは、記憶媒体41に記憶した設定情報と記憶媒体51に記憶した設定情報の同期処理を実行し、NFC基板50は、外部機器からの要求により記憶媒体51に記憶した設定情報を変更した場合、同期処理において室外制御基板40へ変更後の設定情報を送信する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を熱媒体と熱交換させる熱交換システムの運転を制御する制御装置であって、
前記運転の制御に使用する設定情報を記憶する第1の記憶媒体と、
前記運転の制御に使用する設定情報を記憶する第2の記憶媒体と、
前記設定情報を使用して前記運転の制御を実行する制御手段と、
外部機器と通信を行う通信手段と
を含み、前記第1の記憶媒体、前記第2の記憶媒体、前記制御手段および前記通信手段は、同一の室外機、同一の室内機または同一の中央制御盤に実装され、
前記制御手段と前記通信手段とは、前記第1の記憶媒体に記憶した設定情報と前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報の同期処理を実行し、
前記通信手段は、前記外部機器からの要求により前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報を変更した場合、前記同期処理において前記制御手段へ変更後の設定情報を送信する、制御装置。
【請求項2】
流体を熱媒体と熱交換させる熱交換システムの運転を制御する制御装置であって、
前記運転の制御に使用する設定情報を記憶する第1の記憶媒体と、
前記運転の制御に使用する設定情報を記憶する第2の記憶媒体と、
前記設定情報を使用して前記運転の制御を実行する制御手段と、
外部機器と通信を行う通信手段と
を含み、
前記制御手段と前記通信手段とは、前記第1の記憶媒体に記憶した設定情報と前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報の同期処理を実行し、少なくとも前記第1の記憶媒体から前記第2の記憶媒体へ設定情報が送信されて同期が行われており、
前記通信手段は、前記外部機器からの要求により前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報を変更した場合、前記同期処理において前記制御手段へ変更後の設定情報を送信する、制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置を含み、流体を熱媒体と熱交換させ、前記制御装置により運転が制御される熱交換システム。
【請求項4】
流体を熱媒体と熱交換させる熱交換システムの運転制御をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記コンピュータは、前記熱交換システムの運転制御に使用する設定情報を記憶する第1の記憶媒体および第2の記憶媒体と、前記設定情報を使用して前記運転の制御を実行する制御手段と、外部機器と通信を行う通信手段とを含み、前記第1の記憶媒体、前記第2の記憶媒体、前記制御手段および前記通信手段は、同一の室外機、同一の室内機または同一の中央制御盤に実装され、前記コンピュータは、
前記第1の記憶媒体および前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報の同期処理を実行するステップと、
前記外部機器からの要求により前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報を変更するステップと
を実行させ、
前記同期処理を実行するステップは、前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報が変更された後に、前記第1の記憶媒体へ変更後の設定情報を送信するステップを含む、プログラム。
【請求項5】
流体を熱媒体と熱交換させる熱交換システムの運転の制御をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記コンピュータは、前記熱交換システムの運転の制御に使用する設定情報を記憶する第1の記憶媒体および第2の記憶媒体と、前記設定情報を使用して前記運転の制御を実行する制御手段と、外部機器と通信を行う通信手段とを含み、
前記第1の記憶媒体および前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報の同期処理を実行するステップと、
前記外部機器からの要求により前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報を変更するステップと
を実行させ、
前記同期処理を実行するステップは、前記第2の記憶媒体に記憶した設定情報が変更された後に、前記第1の記憶媒体へ変更後の設定情報を送信するステップを含み、前記コンピュータは、さらに、少なくとも前記第1の記憶媒体から前記第2の記憶媒体へ設定情報が送信されて同期が行われるステップを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換システムの運転を制御する制御装置、熱交換システムおよびその制御をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置は、馬力等の能力、使用する冷媒の種類、空気調和装置内の冷媒量等の設定情報を室外機が備える室外制御基板に記憶し、各種センサから取得した情報とともに設定情報を使用して運転制御を行う。運転制御は、室外機が備える圧縮機の回転数や膨張弁の開度等の制御である。
【0003】
室外制御基板の故障等により基板交換が発生した場合、交換後の新しい室外制御基板に設定情報等を入力し直す必要があり、手間がかかる。また、故障前の設定状態が分からないことも多い。さらに、手動で設定するため、誤設定する場合もある。
【0004】
そこで、基板に異常が発生する前に、着脱可能な記憶媒体に設定情報を保存しておき、基板に異常が発生した場合、新しい基板に記憶媒体を装着し、記憶媒体から新しい基板に設定情報を送り、基板交換前の状態に復元する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の上記技術では、設定が初期値でない限り、記憶媒体から基板へ設定情報を送信することができないため、基板(制御手段)交換後に設定を変更したい場合があっても、制御手段以外から設定変更することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、流体を熱媒体と熱交換させる熱交換システムの運転を制御する制御装置であって、
運転の制御に使用する設定情報を記憶する第1の記憶媒体を含み、設定情報を使用して運転制御を実行する制御手段と、
運転の制御に使用する設定情報を記憶する第2の記憶媒体を含み、外部機器と通信を行う通信手段と
を含み、
制御手段と通信手段とは、第1の記憶媒体に記憶した設定情報と第2の記憶媒体に記憶した設定情報の同期処理を実行し、
通信手段は、外部機器からの要求により第2の記憶媒体に記憶した設定情報を変更した場合、同期処理において制御手段へ変更後の設定情報を送信する、制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御手段以外からも設定情報の変更が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】熱交換システムの一例である空気調和装置の構成例を示した図。
【
図2】空気調和装置の冷媒回路について説明する図。
【
図3】室外機が備える運転を制御する制御装置の構成例を示した図。
【
図4】通電中の同期処理の流れを示したフローチャート。
【
図5】電源投入時の設定処理の流れを示したフローチャート。
【
図6】室外制御基板の交換時の処理について説明する図。
【
図7】NFC基板の交換時の処理について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る熱交換システムは、流体を熱媒体と熱交換させるシステムであり、密閉された系内に熱媒体を循環させ、取り込んだ流体を、循環する熱媒体と熱交換させることにより加熱または冷却して排出するシステムである。流体は、空気等の気体であってもよいし、水や溶液等の液体であってもよい。熱交換システムは、系内の熱媒体を加熱し、冷却するべく、圧縮機、熱交換器、膨張弁を備える。このような圧縮機、熱交換器、膨張弁を備える熱交換システムとしては、例えば空気調和装置、チラー(冷却水循環装置)、冷凍機等を挙げることができる。
【0011】
図1は、空気調和装置の構成例を示した図である。ここでは、熱交換システムを空気調和装置として説明する。空気調和装置10は、空気調和を行う空間内(室内)に設置される室内機11と、室外に設置される室外機12と、利用者によって操作されるリモコン13とを含み、室内機11と室外機12との間で、熱媒体としての冷媒を循環させ、室内の空気と熱交換させることにより空気調和を行う。このため、室内機11と室外機12は、冷媒を循環させるための2本の冷媒配管14、15により接続されている。
【0012】
室内機11および室外機12は、それぞれ2台以上で構成されていてもよく、室内機11は、1台の室外機12に対し、2台以上接続されていてもよい。冷媒としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を使用することができ、HFCの種類としては、R-410A、R-32等を挙げることができる。
【0013】
室内機11は、リモコン13との間で赤外線等を使用した無線通信を行い、運転指令、停止指令、設定温度の変更指令、運転モードの変更指令等の種々の信号を受信する。室内機11は、室外機12と通信線を介して接続され、室外機12と協働して室内の空気調和を行う。
【0014】
室内機11は、リモコン13からの運転指令を受信して起動し、室外機12に対し、起動を指示する。室外機12は、起動後、室内の温度が設定温度になるように、圧縮機の回転数や膨張弁の開度等を調整し、冷媒の循環量等を制御する。
【0015】
図2を参照して、空気調和装置10の冷媒回路について簡単に説明する。
図2に示す矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示し、冷房運転時の動作を中心に説明する。なお、暖房運転時は、冷媒の流れの向きが逆向きになる。
【0016】
室内機11は、室内熱交換器20と、室内ファン21と、室内ファン用駆動モータ22とを備える。室内ファン21は、室内ファン用駆動モータ22により駆動し、室内の空気を取り込み、室内熱交換器20へ送り込む。室内熱交換器20は、内部に冷媒が流通する伝熱管を有し、送り込まれた空気が伝熱管の表面に接触して熱交換を行うように構成されている。室内熱交換器20により熱交換された空気は、室内へ排出される。
【0017】
室内機11は、そのほか、室内温度等を計測するための各種センサや膨張弁等を備えることができる。
【0018】
室外機12は、圧縮機30と、アキュームレータ31と、四方弁32と、膨張弁33と、室外熱交換器34と、室外ファン35と、室外ファン用駆動モータ36とを備える。圧縮機30は、圧縮機用駆動モータにより駆動し、低圧のガス冷媒を圧縮し、高圧のガス冷媒として吐出する。アキュームレータ31は、過渡時の液戻りを貯留するための容器で、冷媒を適度な乾き度に調整する。乾き度は、蒸気と微小液滴との混合状態を示す湿り蒸気中における蒸気の占める割合である。
【0019】
四方弁32は、空気調和装置10の運転状態(運転モード)に応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。運転モードは、冷房モード、暖房モード、送風モード等である。膨張弁33は、高圧の冷媒を減圧し、膨張させる弁である。室外ファン35は、室外ファン用駆動モータ36により駆動し、室外の空気を取り込み、室外熱交換器34へ送り込む。室外熱交換器34は、室内熱交換器20と同様、内部に冷媒が流通する伝熱管を有し、送り込まれた空気が伝熱管の表面に接触して熱交換を行うように構成されている。室外熱交換器34により熱交換された空気は、室外へ排出される。
【0020】
室外機12は、さらに、制御装置37を備えている。制御装置37は、圧縮機30、四方弁32、膨張弁33、室内ファン用駆動モータ22、室外ファン用駆動モータ36と接続され、これらの制御を行う。具体的には、圧縮機30の回転数、膨張弁33の開度、室内ファン用駆動モータ22および室外ファン用駆動モータ36の回転数等の制御である。これらを制御するため、室外機12にも、各種センサが取り付けられる。制御装置37は、各種センサにより検出された情報に基づき、これらの制御を行う。
【0021】
冷房運転時は、室内熱交換器20を蒸発器とし、室外熱交換器34を凝縮器として利用する。このため、制御装置37は、矢印に示すように、圧縮機30、室外熱交換器34、膨張弁33、室内熱交換器20、四方弁32、アキュームレータ31、圧縮機30の順で系内に封入された冷媒を循環させる。
【0022】
圧縮機30は、低温低圧のガス状態の冷媒(冷媒ガス)を圧縮し、高温高圧の冷媒ガスとして吐出する。室外熱交換器34は、室外の空気と熱交換を行い、冷媒ガスを冷却して凝縮させる。膨張弁33は、冷媒を減圧して一部を気化させる。このため、冷媒は、気液が混合した状態で室内機11へ供給される。膨張弁33は、適度な液体の量になるように制御装置37により開度が調整される。
【0023】
室内熱交換器20は、室内の空気と熱交換を行い、凝縮した液体の冷媒が全て気化し、冷媒ガスとして室外機12へ戻す。室内熱交換器20から戻された冷媒ガスは、四方弁32を通してアキュームレータ31へ送られ、圧縮機30へ戻される。
【0024】
制御装置37は、室外機12に実装されるが、これに限られるものではなく、室内機11に実装されてもよいし、その他の中央制御盤等に実装されていてもよい。
【0025】
ところで、制御装置37が実行する空気調和装置10の運転制御は、空気調和装置10の馬力、冷媒の種類、系内に封入される冷媒量等によって変わってくる。馬力は、空調能力に影響し、冷媒の種類や封入量は、熱交換効率に影響するからである。これらの情報は、制御装置37が備える記憶媒体に、機種設定等の設定情報として記憶され、制御装置37が運転制御を行う際、記憶媒体から読み出し、室内機11から受信した受信データや室外機12のセンサから取得したセンサデータとともに内部データとして設定し、運転制御に使用される。
【0026】
室内機11から受信した受信データおよびセンサデータとしては、室内の設定温度、室内温度、室内熱交換器20や室外熱交換器34の伝熱管表面温度(冷媒温度)、圧縮機30の冷媒ガス吸入温度、吸入圧力、吐出温度、吐出圧力等が挙げられる。
【0027】
従来においては、制御装置37が、室外制御基板として構成され、室外制御基板が備える記憶媒体に設定情報を記憶している。設定情報は、内部データに反映させ、空気調和装置10の運転制御に使用される。室外制御基板が故障等すると、記憶媒体から設定情報を読み出すことはできないため、新しい室外制御基板に交換した後に、故障等が発生する前の設定情報を入力し直す必要がある。これは、手間がかかる作業である。また、故障等が発生する前の設定情報を覚えていないと、その設定情報を入力することはできない。これでは、容易に設定情報を復旧することはできない。
【0028】
そこで、制御装置37を、
図3に示すような構成にする。
図3は、本実施形態に係る制御装置の構成例を示した図である。制御装置37は、室外制御基板40と、室外サブ基板としてのNFC(Near Field Communication)基板50とから構成する。室外制御基板40は、制御手段として機能し、設定情報を記憶する記憶媒体41と、CPU(Central Processing Unit)42と、通信部43と、ディップスイッチ44と、ロータリースイッチ45とを含む。
【0029】
CPU42は、記憶媒体41に記憶されたプログラムを実行することで、空気調和装置10の室内ファン用駆動モータ22、圧縮機30、四方弁32、膨張弁33、室外ファン用駆動モータ36等の運転を制御し、ディップスイッチ44やロータリースイッチ45からの情報を取得する。また、CPU42は、通信部43を介してNFC基板50と同期処理を実行する。なお、これらの処理は、プログラムに限らず、専用の回路等により実行するように構成されていてもよい。
【0030】
通信部43は、通信I/Fであり、NFC基板50と伝送線により接続され、NFC基板50とシリアル通信を行う。なお、室外制御基板40と、NFC基板50との通信は、伝送線を介した有線通信に限られるものではなく、WiFi(登録商標)等の無線通信であってもよい。ディップスイッチ44およびロータリースイッチ45は、各種の設定情報を設定するための小型のスイッチである。
【0031】
NFC基板50は、通信手段として機能し、設定情報を記憶する記憶媒体51と、CPU52と、通信部53と、NFCアンテナ54とを含む。
【0032】
CPU52は、記憶媒体51に記憶されたプログラムを実行することで、NFCアンテナ54を介して設定情報の変更を受け付け、記憶媒体51に記憶された設定情報の変更を行い、CPU42と協働して同期処理を実行する。なお、これらの処理は、プログラムに限らず、専用の回路等により実行するように構成されていてもよい。
【0033】
通信部53は、通信I/Fであり、室外制御基板40の通信部43と伝送線により接続され、通信部43とシリアル通信を行う。NFCアンテナ54は、スマートフォンやタブレット端末等の外部機器と近距離無線通信を行い、外部機器から設定情報の変更要求を受信する。このため、外部機器は、設定情報を変更し、変更要求を送信するための専用アプリケーションを実装する。
図3では、外部機器が通信端末60とされ、通信端末60は、NFCアンテナ61を備え、NFC基板50が備えるNFCアンテナ54との間でNFC通信を行うように構成されている。
【0034】
NFC基板50において通信端末60との間でNFC通信により送受信される情報は、NFCアンテナ54で受信した後、記憶媒体51を介してCPU52と送受信される。なお、CPU52と送受信した後、記憶媒体51に記憶されてもよい。
【0035】
NFC基板50は、室外制御基板40と異なり、空気調和装置10の制御は行わない。通信部53は、室外制御基板40の通信部43と接続しているのみであり、空気調和装置10の室内ファン用駆動モータ22、圧縮機30、四方弁32、膨張弁33、室外ファン用駆動モータ36等の運転制御は行わない。
【0036】
記憶媒体51には、通信端末60から送信された設定情報が記憶されるので、ディップスイッチ44やロータリースイッチ45を用いた設定変更の場合を除く、通信端末60から行われた最新の設定情報が記憶される。
【0037】
NFC通信は、数十cm以内の近距離でのみ可能である。そうすると、NFC基板50は、装置の外部に近い位置に配置することで装置の内部を開けずに、外部から設定を変更することができる。一方で、室外制御基板40は、そのようなNFC通信に関する位置の制限はないので、空気調和装置10の各部を制御するために最適な位置に配置することができる。
【0038】
室外制御基板40のCPU42とNFC基板50のCPU52は、通電中、設定情報に変更があった場合、または設定変更がない状態であっても定期的に、室外制御基板40とNFC基板50の設定情報の同期処理を実行する。設定情報の変更は、室外制御基板40については、ディップスイッチ44等により、NFC基板50については、通信端末60を使用して実施することができる。したがって、ディップスイッチ44等のスイッチの切り替え、もしくは通信端末60からの要求を受けて、設定情報に変更があったことを検知する。定期的に同期処理を実行する場合、適切な時間間隔で同期処理を実行することができれば、いかなる時間間隔であってもよい。
【0039】
図4を参照して、通電中の同期処理について説明する。同期処理は、設定情報の変更があったことを受けて、その基板の記憶媒体の情報を変更し、他の基板へ変更した設定情報を送信することにより行われる。
図4(a)は、室外制御基板40のCPU42により実行される同期処理を示し、
図4(b)は、NFC基板50のCPU52により実行される同期処理を示す。
【0040】
はじめに、
図4(a)を参照して、室外制御基板40により実行される同期処理について説明する。CPU42は、ステップ100から処理を開始し、ステップ101において室外制御基板40で設定変更があったか否かを判断する。室外制御基板40での設定変更は、ディップスイッチ44やロータリースイッチ45を切り替え、その切り替えに伴い、記憶媒体41に記憶された設定情報を変更することにより行われる。設定変更がなかったと判断した場合、ステップ103へ進み、処理を終了する。
【0041】
一方、ステップ101で設定変更があったと判断した場合、ステップ102へ進み、同期処理を実行する。同期処理は、CPU42が、通信部43を介して変更した設定情報をNFC基板50へ送信することにより行われる。NFC基板50は、CPU52が通信部53を介して変更された設定情報を受信し、記憶媒体51の設定情報を変更する。これにより、記憶媒体41、51に記憶される設定情報が同じ情報となる。同期処理が終了した後、ステップ103へ進み、処理を終了する。
【0042】
次に、
図4(b)を参照し、NFC基板50により実行される同期処理について説明する。CPU52は、ステップ200から処理を開始し、ステップ201においてNFC基板50で設定変更があったか否かを判断する。NFC基板50での設定情報の変更は、通信端末60の専用アプリケーションを使用して実行され、設定情報の変更要求を、NFCアンテナ61を介してNFC基板50へ送信することにより行われる。NFC基板50は、NFCアンテナ54によりその要求を受信し、CPU52がその要求を解釈し、その解釈した内容に基づき、記憶媒体51に記憶された設定情報を変更する。なお、専用アプリケーションは、空気調和装置10の運転情報等のデータをNFC基板50へ送信することも可能である。
【0043】
ステップ201で設定変更がなかったと判断した場合、ステップ203へ進み、処理を終了する。
【0044】
一方、ステップ201で変更があったと判断した場合、ステップ202へ進み、同期処理を実行する。同期処理は、CPU52が、通信部53を介して変更した設定情報を室外制御基板40へ送信することにより行われる。室外制御基板40は、CPU42が通信部43を介して変更された設定情報を受信し、記憶媒体41の設定情報を変更する。これにより、記憶媒体41、51に記憶される設定情報が同じ情報となる。同期処理が終了した後、ステップ203へ進み、処理を終了する。
【0045】
CPU42またはCPU52は、設定情報の変更を検知し、設定情報があった場合に同期処理を実行してもよいし、定期的に同期処理を実行してもよい。
図3に示した例では、CPU42、52のそれぞれが、設定変更があったか否かを判断し、同期処理を実行しているが、いずれか一方がマスタとなり、他方から設定情報を取得し、取得した設定情報と、マスタの設定情報とを比較し、設定情報が異なる場合、どちらの設定情報を変更すべきか判断した上で同期処理を実行してもよい。
【0046】
設定情報には、属性情報として更新日時等を付することができ、更新日時を参照し、どちらの設定情報を更新すべきかを判断することができる。なお、属性情報は、各設定項目のそれぞれに対して付することができ、各設定項目に付された属性情報のうち最新の更新日時を比較して、どちらの設定情報を更新すべきかを判断することができる。
【0047】
NFC基板50は、通信端末60との接続中、他の処理を実行してもよい。例えば、通信端末60により運転モードや設定温度の変更が可能である場合、NFC基板50は、運転モード等の空気調和装置10の運転情報を、通信端末60から取得することができる。
【0048】
同期処理が実行されている間、室外制御基板40、ディップスイッチ44およびロータリースイッチ45、NFC基板50の記憶された設定情報は、いずれも同じ情報となっている。しかしながら、室外制御基板40等に故障が発生し、新しい室外制御基板40等に交換した場合、交換直後は設定情報が工場出荷状態等であるので、同じ情報とはならない。
【0049】
室外制御基板40に故障が発生した場合、制御エラーとなるので、故障発生を検知することができ、新しい室外制御基板と交換することができる。一方、NFC基板50については、通信端末60により接続を試み、接続できない場合や、設定情報の変更ができない場合等に、故障発生を検知することができる。したがって、通信端末60を接続してみなければ故障を検知することができない。
【0050】
室外制御基板40を交換する場合、ディップスイッチ44やロータリースイッチ45については、故障が発生した室外制御基板40に設定されたスイッチの状態を目で見て確認し、新しい室外制御基板に反映させることができる。しかしながら、記憶媒体41の内容については、新しい室外制御基板の記憶媒体に反映させることができない。また、NFC基板50に記憶された設定情報の内容についても、新しい室外制御基板の記憶媒体に反映させることができない。NFC基板50に記憶された設定情報やディップスイッチ44等に設定された設定情報は、室外制御基板40の故障前の設定情報を反映しており、これらの情報を運転制御用の設定情報(マスタ設定)として設定することができれば、故障前の状態に復旧することが可能となる。
【0051】
そこで、故障した基板を交換し、電源を投入したときの設定処理において、NFC基板50やディップスイッチ44等の設定情報をマスタ設定としてセットできるように構成する。
【0052】
図5を参照して、電源投入時の設定処理について詳細に説明する。空気調和装置10に電源を投入することにより、ステップ300から処理を開始する。電源は、例えばリモコン13の運転開始ボタンを押下することにより投入される。ステップ301では、運転制御を開始するため、室外制御基板40は、運転制御に必要な設定情報を記憶媒体41から読み込む。また、NFC基板50は、電源供給を受けて、記憶媒体51から設定情報を読み出す。
【0053】
ステップ302では、NFC基板50は、室外制御基板40との接続確認を実施し、室外制御基板40を正常に認識したかどうかを判断する。室外制御基板40は、NFC基板50からの正常に認識した旨の応答の有無により、NFC基板50との通信が正常に完了したか否かを判断する。正常に完了したと判断した場合、ステップ303へ進み、NFC基板50は、室外制御基板40へ記憶媒体51から読み出した設定情報を送信する。
【0054】
ステップ304では、室外制御基板40が、NFC基板50の設定情報と、室外制御基板40の設定情報とを比較し、両設定情報が異なるか否かを判断する。両設定情報が異なる場合としては、室外制御基板40の交換があった場合等である。異なると判断した場合、ステップ305へ進み、NFC基板50の設定情報をマスタ設定としてセットし、ステップ309で処理を終了する。マスタ設定は、例えば室外制御基板40の記憶媒体41に、設定対象の設定情報を書き込むことにより行われる。これにより、室外制御基板40は、基板交換前の設定情報で復旧することが可能となる。
【0055】
ステップ302で正常に完了しないと判断した場合、またはステップ304で両設定情報が同一と判断した場合、ステップ306へ進み、室外制御基板40の設定情報と、ディップスイッチ44等の設定情報とを比較し、両設定情報が異なるかどうかを判断する。正常に完了しない場合は、NFC基板50と通信が正常に行われておらず、NFC基板50から設定情報を取得することができないからである。両設定情報が同じ場合は、室外制御基板40の設定情報を使用すれば済むからである。
【0056】
ステップ306で異なると判断した場合、ステップ307へ進み、ディップスイッチ44等の設定情報をマスタ設定としてセットし、ステップ309で処理を終了する。両設定情報が異なる場合としては、室外制御基板40の交換があった場合等である。
【0057】
ステップ306で同じと判断した場合、ステップ308へ進み、室外制御基板40の記憶媒体41から読み出した設定情報をマスタ設定としてセットし、ステップ309で処理を終了する。この場合、既に記憶媒体41に設定情報が記憶されているので、特に設定情報を書き込む必要はない。
【0058】
図5に示したステップ304、306で両設定情報が異なる場合は、室外制御基板40を交換した場合に生じることから、
図6を参照して、室外制御基板40の交換時の処理について詳細に説明する。
【0059】
図6(a)に示すように、通電中は、同期処理が実行される。通電中は、設定変更時または一定の時間間隔で同期処理が実行されるため、室外制御基板40とNFC基板50の設定情報は一致する。室外制御基板40の設定情報がディップスイッチ44等により変更されたとしても、変更された設定情報がNFC基板50へ送信され、NFC基板50の設定情報が変更され、同一の設定情報となる。また、NFC基板50の設定情報が通信端末60により変更された場合は、変更された設定情報が室外制御基板40へ送信され、室外制御基板40の設定情報が変更され、同一の設定情報となる。
【0060】
通電中、何らかの原因で室外制御基板40が故障した場合、
図6(b)に示すように、同期処理が実行されなくなる。故障等が発生すると、制御が不能になり、エラー表示等によりユーザに故障等が発生したことが通知される。このため、ユーザは、室外制御基板40の交換が必要なことを認識する。
【0061】
図6(c)に示すように、室外制御基板40の交換を行うと、NFC基板50の記憶媒体51には、基板交換前の設定情報が記憶されているが、交換後の室外制御基板40の記憶媒体41は、工場出荷状態であるため、両記憶媒体に記憶された設定情報は異なったものとなる。
【0062】
室外制御基板40の交換後、初めて電源を投入すると、
図6(d)に示すように、NFC基板50から交換後の室外制御基板40へ基板交換前の設定情報を送信する。室外制御基板40は、自身の記憶媒体41へNFC基板50の設定情報を記憶して、最優先としてその設定を反映する。これにより、室外制御基板40は、基板交換前の設定で復旧することが可能となる。
【0063】
図6に示す例は、室外制御基板40が故障等した場合の例であるが、NFC基板50が故障等する場合もある。
図7を参照して、NFC基板50が故障し、交換する場合の処理について説明する。
【0064】
通電中は、
図6(a)に示したように、同期処理が実行される。通電中は、設定変更時または一定の時間間隔で同期処理が実行されるため、室外制御基板40とNFC基板50の設定情報は一致する。
【0065】
通電中、何らかの原因で室外制御基板40が故障した場合、
図7(a)に示すように、同期処理が実行されなくなる。ユーザは、通信端末60を使用してNFC基板50と通信を行うことができるが、NFC基板50に故障が発生すると、通信端末60との間で通信を行うことができなくなる。これにより、ユーザは、NFC基板50が故障したことを認識する。
【0066】
図7(b)に示すように、NFC基板50の交換を行うと、室外制御基板40の記憶媒体41には、基板交換前の設定情報が記憶されているが、交換後のNFC基板50の記憶媒体51は、初期設定(初期値0)のままであるため、両記憶媒体に記憶された設定情報は異なったものとなる。
【0067】
NFC基板50の交換後、初めて電源を投入すると、
図7(c)に示すように、室外制御基板40を交換した場合と同様、NFC基板50から室外制御基板40へ設定情報を送信する。この場合、室外制御基板40は、受信した設定情報の中の所定の設定値に値がない(設定値0)か否かを判断し、値がない場合に初期設定であると判断する。所定の設定値としては、例えば機種設定の設定値を挙げることができる。機種設定の設定値が0の場合、アラーム発報となるため、ユーザが意図的に0を設定することはない。このため、この値を参照することで、初期設定か否かを判断することができる。
【0068】
室外制御基板40は、初期設定であると判断した場合、自身の記憶媒体41に受信した設定情報(NFC基板50から送信された設定情報)を書き込まないようにする。そして、
図7(d)に示すように、室外制御基板40は、自身の記憶媒体41に記憶された設定情報をNFC基板50へ送信する。NFC基板50は、自身の記憶媒体51に受信した設定情報を書き込み、基板交換前の設定情報に復旧する。
【0069】
なお、復旧後は、通信端末60によるNFC基板50の設定変更やディップスイッチ44等による室外制御基板40の設定変更が可能であることは言うまでもない。
【0070】
これまでに説明してきたように、基板交換が発生した場合に、自動で交換前の設定情報に復旧することができ、再設定の手間を省き、故障基板の設定読み間違えや誤設定を減少させることができる。また、基板交換後に室外制御基板40の設定変更が必要となる場合においても、外部機器からNFC基板50へ設定変更を行うことで、その後の同期処理により室外制御基板40へ設定変更を反映させることができる。
【0071】
これまで本発明の制御装置、熱交換システムおよびプログラムについて上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0072】
例えば、室外制御基板40とNFC基板50とは分離しておらず、同一の基板に設けられていてもよい。この場合は、記憶媒体41、CPU42、通信部43のいずれか、またはそれらを繋ぐ配線が故障した場合、つまり空気調和装置の制御を行うための構成要素の故障が生じた場合にその故障箇所を新しいものに取り換える行為もここでいう室外制御基板40の交換に含まれる。
【0073】
一方、記憶媒体51、CPU52、通信部53、NFCアンテナ54のいずれか、またはそれらを繋ぐ配線が故障した場合、つまり設定情報の記憶を行うための構成要素の故障が生じた場合にその故障個所を新しいものに取り換える行為もここでいうNFC基板50の交換に含まれる。
【0074】
ディップスイッチ44やロータリースイッチ45は、室外制御基板40の外部に設けられていてもよい。
【0075】
基板を交換する場合は、室外制御基板40とNFC基板50との同期処理が実行できなくなった場合に限られず、室外制御基板40またはNFC基板50を構成する部品の故障や一定期間の経過等の様々な場合が含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10…空気調和装置
11…室内機
12…室外機
13…リモコン
20…室内熱交換器
21…室内ファン
22…室内ファン用駆動モータ
30…圧縮機
31…アキュームレータ
32…四方弁
33…膨張弁
34…室外熱交換器
35…室外ファン
36…室外ファン用駆動モータ
37…制御装置
40…室外制御基板
41…記憶媒体
42…CPU
43…通信部
44…ディップスイッチ
45…ロータリースイッチ
50…NFC基板
51…記憶媒体
52…CPU
53…通信部
54…NFCアンテナ
60…通信端末
61…NFCアンテナ