(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029242
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ロータリコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 39/28 20060101AFI20230224BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20230224BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
H01R39/28
F16C33/78 Z
F16C33/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117230
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2021134093
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511040388
【氏名又は名称】株式会社ヒサワ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】高田 寛
(72)【発明者】
【氏名】沢田 博史
【テーマコード(参考)】
3J216
【Fターム(参考)】
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB22
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB13
3J216CC01
3J216CC33
3J216CC45
3J216CC67
(57)【要約】
【課題】長期間に亘って安定して機能することが可能なロータリコネクタを提供する。
【解決手段】 外周電極30と、外周電極30に挿通され回動可能に配置された内周電極20と、外周電極30と内周電極20の間を遊星運動可能に配置された複数のローラ集電子40と、内周電極20を回動可能に軸支する軸受33と、軸受33を保持する軸受ホルダ31とを備え、内周電極20とローラ集電子40との接触部から軸受33まで延びる通路5に曲げ部50~54がある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周電極と、前記外周電極に挿通され回動可能に配置された内周電極と、前記外周電極と前記内周電極の間を遊星運動可能に配置された複数のローラ集電子と、前記内周電極を回動可能に軸支する軸受と、前記軸受を保持する軸受ホルダとを備えたロータリコネクタであって、
前記内周電極と前記ローラ集電子との接触部から前記軸受まで延びる通路に曲げ部があるロータリコネクタ。
【請求項2】
前記ロータリコネクタは縦置きであり、前記ローラ集電子の鉛直方向下側において前記曲げ部が設けられている請求項1に記載のロータリコネクタ。
【請求項3】
前記軸受は、少なくとも鉛直方向上方にシールド要素が設けられたシールド付軸受である請求項2に記載のロータリコネクタ。
【請求項4】
前記曲げ部は、径方向に延びる突起により形成されている請求項2に記載のロータリコネクタ。
【請求項5】
前記突起は、内径方向突起と外径方向突起を有しており、
前記内径方向突起と前記外径方向突起は、鉛直方向に重畳している請求項4に記載のロータリコネクタ。
【請求項6】
前記曲げ部は、鉛直方向上方に開放された凹みを備えている請求項4または5に記載のロータリコネクタ。
【請求項7】
前記凹みは、環状である請求項6に記載のロータリコネクタ。
【請求項8】
前記凹みは、前記軸受ホルダに形成されている請求項7に記載のロータリコネクタ。
【請求項9】
前記凹みに向けて延びる突部をさらに備えている請求項8に記載のロータリコネクタ。
【請求項10】
前記突部は、前記凹みに一部が入りこんでいる請求項9に記載のロータリコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動機構における回動側要素と静止側要素とを電気的に接続するためのロータリコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で、回動機構における回動側要素と静止側要素とを電気的に接続するために利用されているロータリコネクタは、回動側要素に連結される導電性を有する内周電極と、静止側要素に電気的に接続される導電性を有する外周電極との間に配置されている集電要素を通じて、これら内周電極および外周電極を電気的に接続することが可能となっている。
【0003】
このようなロータリコネクタは、集電要素として、水銀、ガリウム合金等の液体金属が充填されているものと、通電性を有する複数のローラ集電子が配置されているものと、が知られている。近年では、液漏れによる環境負荷、漏電リスク等の観点から、ローラ集電子が適用されているロータリコネクタが注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるロータリコネクタは、円筒状の外周電極に内周電極が挿通されており、外周電極と内周電極との間には、円筒状のローラ集電子が等配されている。また、外周電極の軸方向両端には、軸受を保持する軸受ホルダがそれぞれ固定されている。内周電極は、これら軸受によって回動可能に軸支されている。これにより、回動機構における回動側要素が回動すると、内周電極はこれに従動して回動する。そして、内周電極の外周面に接している各ローラ集電子も、内周電極に対して相対的に転動する。このとき、各ローラ集電子は、外周電極の内周面にも接しているため、外周電極に対して相対的に転動する。すなわち、各ローラ集電子は、自転しながら内周電極を軸に公転する遊星運動を行いつつ、内周電極と外周電極とを電気的に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-222463号公報(第6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなロータリコネクタにあっては、ローラ集電子が弾性変形可能であり、ローラ集電子の外径が、内周電極における外周面と外周電極における内周面との間の径方向寸法よりもわずかに大径であるため、ローラ集電子の外周面が内周電極における外周面および外周電極における内周面それぞれに面接触することにより通電効率が向上されている。
【0007】
ところで、内径側に位置する内周電極における外周面の周方向寸法よりも、その外径側に位置する外周電極における内周面の周方向寸法の方が長尺であるため、ローラ集電子は内周電極における外周面に追従して転動する一方で、外周電極に対しては滑りやすくなっている。
【0008】
これらのように、使用時には、ローラ集電子は弾性変形するとともに外周電極に対して滑りやすいことから、内周電極、外周電極、ローラ集電子との接触箇所において摩耗粉や剥離粉等の夾雑物の発生を招きやすかった。特に接触箇所にメッキが被膜されていると夾雑物が生じやすかった。このことから、その軸方向が上下方向(鉛直方向)に沿って配置されている特許文献1のようなローラ集電子は、夾雑物が下方側の軸受に入り込みやすく、内周電極の円滑な回動を妨げる要因となるため、ロータリコネクタの寿命が短くなることがあった。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、長期間に亘って安定して機能することが可能なロータリコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明のロータリコネクタは、
外周電極と、前記外周電極に挿通され回動可能に配置された内周電極と、前記外周電極と前記内周電極の間を遊星運動可能に配置された複数のローラ集電子と、前記内周電極を回動可能に軸支する軸受と、前記軸受を保持する軸受ホルダとを備えたロータリコネクタであって、
前記内周電極と前記ローラ集電子との接触部から前記軸受まで延びる通路に曲げ部がある。
これによれば、夾雑物は、曲げ部によりトラップされることによってローラ集電子から軸受に進入することが抑止される。これにより、軸受は夾雑物を噛み込みにくくなる。そのため、ロータリコネクタは、長期間に亘って安定して機能することができる。
【0011】
前記ロータリコネクタは縦置きであり、前記ローラ集電子の鉛直方向下側において前記曲げ部が設けられていてもよい。
これによれば、重力に従って降下した夾雑物が曲げ部によりトラップされることによって軸受に向かって直線状に移動することを防ぐことができる。
【0012】
前記軸受は、少なくとも上方にシールド要素が設けられたシールド付軸受であってもよい。
これによれば、シールド付き軸受は、通路をすり抜けた夾雑物を噛み込みにくい。そのため、ロータリコネクタは、より長期間に亘って安定して機能することができる。
【0013】
前記曲げ部は、径方向に延びる突起により形成されていてもよい。
これによれば、夾雑物が径方向に延びる突起にトラップされることによって軸受に向かって直線状に移動することを防ぐことができる。
【0014】
前記突起は、内径方向突起と外径方向突起を有しており、
前記内径方向突起と前記外径方向突起は、鉛直方向に重畳していてもよい。
これによれば、内径方向突起と外径方向突起が鉛直方向に重畳して複数の曲げ部を形成することにより通路がジグザグに延びて形成されるため、夾雑物が軸受に到達しにくい。好ましくは、通路のジグザグの一部はその延在方向に直交する長さが軸受の径方向の半分以下であることにより、夾雑物が軸受により到達しにくい。
【0015】
前記曲げ部は、鉛直方向上方に開放された凹みを備えていてもよい。
これによれば、曲げ部に設けられる凹みは、トラップした夾雑物を保持する能力が高い。
【0016】
前記凹みは、環状であってもよい。
これによれば、環状である凹部は、夾雑物をトラップする効率が高い。
【0017】
前記凹みは、前記軸受ホルダに形成されていてもよい。
これによれば、軸受ホルダは回転しない静止部品であるため、凹みにトラップされた夾雑物に回動力が作用しない。そのため、凹みは、夾雑物を確実に保持できる。
【0018】
前記凹みに向けて延びる突部をさらに備えていてもよい。
これによれば、突部は、夾雑物が軸受に向かって直線状に移動することを防ぐばかりでなく、凹みに夾雑物を誘導しやすい。
【0019】
前記突部は、前記凹みに一部が入りこんでいてもよい。
これによれば、突部は、凹みと共にラビリンス構造を構成することができる。これにより、突部および凹みは、軸受側への夾雑物の移動をより効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1におけるロータリコネクタの段面図である。
【
図2】実施例1におけるロータリコネクタの軸方向断面図である。
【
図3】実施例1におけるロータリコネクタの要部拡大図である。
【
図4】本発明の実施例2におけるロータリコネクタの要部拡大図である。
【
図5】本発明の実施例3におけるロータリコネクタの要部拡大図である。
【
図6】本発明の実施例4におけるロータリコネクタの要部拡大図である。
【
図7】本発明の実施例5におけるロータリコネクタの要部拡大図である。
【
図8】本発明の実施例6におけるロータリコネクタの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るロータリコネクタを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0022】
実施例1に係るロータリコネクタにつき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図1の正面から見て上下をロータリコネクタの上下として説明する。詳しくは、ソケットが配置される紙面上側をロータリコネクタの上側、カバーが配置される紙面下側をロータリコネクタの下側として説明する。
【0023】
本実施例のロータリコネクタ1は縦置きであり、例えば回動機構としての半導体製造機における回動箇所に用いられる。ロータリコネクタ1は、半導体製造機における静止側要素としての外部電源から供給される高周波の電気を、半導体製造機における回動側要素としての回動軸に通電するものである。
【0024】
図1に示されるように、ロータリコネクタ1は、回動側要素2と、静止側要素3と、集電要素4と、から主に構成されている。半導体製造機における回動軸に連結されている回動側要素2は、回動軸に従動することで静止側要素3に対して相対回動可能に設けられている。回動側要素2の回動に伴って集電要素4におけるローラ集電子40は、回動側要素2および静止側要素3と電気的に接触しながら、回動側要素2の周りを遊星運動可能に設けられている。また、静止側要素3は、外部電源に連結可能なコネクタ39を備えている。
【0025】
まず、回動側要素2について説明する。回動側要素2は、内周電極20と、ソケット21と、キー22から構成されている。
【0026】
内周電極20は、金属等から形成されており導電性を有している。
図1,
図3に示されるように、内周電極20は、軸方向上方側から順に、上軸20aと、大径胴20bと、中径胴20c(
図3参照)と、小径胴20d(
図3参照)と、下軸20eを備えている。これらは、それぞれの軸心が同一直線状に配置されている。
【0027】
上軸20aにはソケット21が螺合により固定されている。また、上軸20aの外周面にはキー22が外嵌されて固定されている。
【0028】
大径胴20bは、上軸20aよりも大径に形成されている。また、大径胴20bは、その外周面に軸方向中心に向かって縮径している環状溝20fが形成されている。また、大径胴20bの外周面には、導電性の高い例えば銀等によるメッキが施されている。
【0029】
なお、メッキは薄く図面が煩雑となるため、図示は省略している。以下の説明のメッキについても同様である。
【0030】
中径胴20c(
図3参照)は大径胴20bよりも小径に形成されている。小径胴20d(
図3参照)は中径胴20cよりも小径に形成されている。下軸20eは、上軸20aと略同径、詳しくは軸受34が内嵌される部分と略同径に形成されている。
【0031】
ソケット21は、導電性の高い材料から形成されている。ソケット21には、半導体製造機における回動軸が回止された状態で連結される。この状態において回動軸は、キー22とキー結合されることによっても回止がなされる。
【0032】
次に、静止側要素3について説明する。静止側要素3は、外周電極30と、下方側軸受ホルダ31と、上方側軸受ホルダ32と、2つの軸受33,34と、ハウジング35と、カバー36と、から主に構成されている。説明の便宜上、軸受33,34は静止側要素3とした。
【0033】
外周電極30は、導電性の高い材料からフランジ付き円筒状に形成されている。外周電極30は、筒状部30aと、外フランジ部30bと、突起および内径方向突起としての内フランジ部30kを備えている。
【0034】
筒状部30aは、下方が内径方向に延びる段付き円筒状に形成されている。外周電極30における内径側には、軸方向上方側から順に、大径孔部30cと、小径孔部30dと、中径孔部30eが形成されている。
【0035】
大径孔部30cにおける軸方向中央には、軸方向中心に向かって拡径している環状溝30fが形成されている。この環状溝30fは、内周電極20における環状溝20fに対向配置されている。さらに、大径孔部30cの内周面には、導電性の高い例えば銀等によるメッキが施されている。
【0036】
小径孔部30dは、内フランジ部30kの内径側の部位であり、大径孔部30cに連通しており、大径孔部30cよりも小径である。中径孔部30eは、小径孔部30dに連通し、かつ大径孔部30cよりも小径かつ小径孔部30dよりも大径である。
【0037】
外フランジ部30bは、筒状部30aの上端縁よりも下方で外径方向に延びる円環状かつ平板状に形成されている。内フランジ部30kは、筒状部30aの軸方向やや下方で内径方向に延びる円環状かつ平板状に形成されている。
【0038】
下方側軸受ホルダ31は、樹脂成型品等により形成され絶縁性が高く、フランジ付き円筒状に形成されている。下方側軸受ホルダ31は、軸方向上方側から順に、筒状部31aと、外フランジ部31bと、突起および内径方向突起としての環状突起37を備えている。
【0039】
筒状部31aは、上方が内径方向に延びる段付き円筒状に形成されている。下方側軸受ホルダ31における内径側には、軸方向上方側から順に、中径孔部31cと、小径孔部31dと、大径孔部31eが形成されている。
【0040】
中径孔部31cは、軸方向上方に開放されている。小径孔部31dは、環状突起37の内径側の部位であり、中径孔部31cに連通しており、中径孔部31cよりも小径である。大径孔部31eは、小径孔部31dに連通し、かつ下方に開放されており、中径孔部31cよりも大径である。
【0041】
外フランジ部31bは、筒状部31aの下端に略直交して外径方向に延びる円環状かつ平板状に形成されている。
【0042】
図3に示されるように、環状突起37は、底部37aと、内径側筒状部37bと、を備えている。環状突起37には、軸方向上方側、すなわち鉛直方向上方に開放された環状の凹みとしての環状凹み38が形成されている。
【0043】
底部37aは、中径孔部31cの内周面に略直交して内径方向に延びる円環状かつ平板状に形成されている。内径側筒状部37bは、底部37aの内径端に略直交して軸方向上方側に延びる円筒状に形成されている。
【0044】
大径孔部31eには、軸受33が内嵌されている。また、後述するように軸受33の外輪33cは大径孔部31eの上端面に当接している。
【0045】
下方側軸受ホルダ31は、その筒状部31aが、外周電極30における中径孔部30eに内嵌されて固定されている。また、下方側軸受ホルダ31は、その外フランジ部31bが外周電極30の下端縁に当接し、位置規制がなされている。これにより、軸受33の外輪33cは位置決めがなされている。
【0046】
上方側軸受ホルダ32は、樹脂成型品等により形成され絶縁性が高く、上方が内径方向に延びる段付き円筒状に形成されている。
【0047】
上方側軸受ホルダ32における中径孔部32aには、軸受34が内嵌されている。なお、軸受33,34は、同一形状であるため、以降の説明において特に断らない限り、軸受33について説明し、軸受34の説明は省略する。
【0048】
上方側軸受ホルダ32における大径孔部32cには、外周電極30が内嵌されている。また、上方側軸受ホルダ32における環状凹部32dには、外周電極30における筒状部30aの上端が嵌入されている。これらにより、外周電極30は、上方側軸受ホルダ32に対する径方向および軸方向の位置決めがなされている。
【0049】
また、上方側軸受ホルダ32における上端部には、軸方向上方側に開放され、軸方向下方側に凹設されている環状の溝32eが形成されている。この溝32eによって、上方側軸受ホルダ32の沿面距離が長くなっている。
【0050】
図3に示されるように、軸受33は、内輪33aと、複数のボール33bと、外輪33cと、シールド要素としてのリップシール33d,33eと、から構成されているシールド付軸受である。すなわち、軸受33は、鉛直方向上方および鉛直方向下方にシールド要素としてのリップシール33d,33eが設けられたシールド付軸受である。
【0051】
リップシール33d,33eは、環状に構成されており、その一端が内輪33aに固定され、外輪33cにリップ部が摺接するものである。これにより、内輪33a、ボール33b、外輪33cの転動箇所に夾雑物が侵入しにくくなっている。
【0052】
軸受33詳しくはその内輪33aには、内周電極20における下軸20eが挿嵌されている。また、内輪33aの上端は、小径胴20dにおける下端面に当接している。
【0053】
軸受34には、内周電極20における上軸20aが挿入されている。
【0054】
これら軸受33,34により、内周電極20は、静止側要素3に回動可能に軸支されている。
【0055】
図1に戻って、ハウジング35は、絶縁性であって、段付き円筒状に形成されている。また、カバー36は、絶縁性であって、薄板状に形成されている。
【0056】
ハウジング35には上方側軸受ホルダ32が内嵌されている。ハウジング35の連通孔に挿入されたボルトが、上方側軸受ホルダ32における上端部の雌ネジに螺合されることで、外周電極30および上方側軸受ホルダ32は一体に組付けられている。
【0057】
また、ハウジング35おける筒状部の下端には、カバー36がボルトにより固定されている。
【0058】
コネクタ39は、ハウジング35の側壁に固定されている。外周電極30とコネクタ39は電線により通電可能に接続されている。コネクタ39には図示しない外部電源から電力が供給可能となっている。
【0059】
次に、集電要素4について説明する。
図1,
図2に示されるように、集電要素4は、6つのローラ集電子40(
図2参照)と、集電子ホルダ41と、によって構成されている。なお、
図2では、環状溝20f,30fにハッチングを付加している。
【0060】
ローラ集電子40は、金属等により形成され、導電性が高く、弾性変形可能であり、軸方向両端から軸方向中心に向かって拡径している外観が樽状の筒状に形成されている。また、その外周面には、導電性の高い例えば銀等によるメッキが施されている。
【0061】
集電子ホルダ41は、上方側板材41aと、6つのピン41bと、下方側板材41cから構成されている。上方側板材41aおよび下方側板材41cは、環状かつ薄板状に形成されている。
【0062】
ピン41bは、導電性が高く、弾性変形可能である。6つのピン41bは6等配されて(
図2参照)、それぞれの上端が上方側板材41aに固定されている。
【0063】
集電要素4は、内周電極20における環状溝20fに6つのローラ集電子40を配置し、軸方向上方側より6つのピン41bが対応するローラ集電子40に挿通され、ピン41bの下端が対応する下方側板材41cの連通孔に圧入されることで組立てられている。
【0064】
また、集電要素4は、内周電極20が外周電極30の内径側に挿入されるにあたって、集電子ホルダ41およびピン41bが弾性変形されながら、外周電極30における環状溝30fに圧入される。なお、組み立て方法は適宜変更可能であり、例えば、外周電極30に各ローラ集電子40に位置合わせされた軸方向に延びる導入溝が形成されており、この導入溝に沿ってローラ集電子40を挿通させることで、環状溝30fにローラ集電子40を挿入するようにしてもよい。
【0065】
また、内周電極20における環状溝20fと外周電極30における環状溝30fとの間の隙間において、軸方向各位置における径方向寸法は、ローラ集電子40の同位置における径方向寸法よりもわずかに短寸となっている。
【0066】
これにより、内周電極20における環状溝20fと外周電極30における環状溝30fとによって挟圧されて弾性変形しているローラ集電子40は、内周電極20における環状溝20fと外周電極30における環状溝30fとは線接触ではなく面接触するようになっている。このことから、使用時に、内周電極20、ローラ集電子40、外周電極30が確実に電気的接触する。
【0067】
図3に示されるように、回動側要素2と静止側要素3との間には、ローラ集電子40から下方の軸受33まで連通する通路5が形成されている。
【0068】
通路5は、ローラ集電子40側から順に、上側軸方向部50、上側径方向部51、中側軸方向部52、下側径方向部53、下側軸方向部54から構成されている。また、通路5は、上側軸方向部50および上側径方向部51、上側径方向部51および中側軸方向部52、中側軸方向部52および下側径方向部53、下側径方向部53および下側軸方向部54がそれぞれ略直交することにより複数の曲げ部が形成されている。すなわち、通路5は、複数の曲げ部によってジグザグ形状に形成されている。
【0069】
詳しくは、上側軸方向部50は、内周電極20における大径胴20bの外周面と、この外周面に対して略平行かつ径方向に離間して配置されている集電子ホルダ41における下方側板材41cの内周面によって主に画成されている。これにより、上側軸方向部50は、軸方向上方側に位置するローラ集電子40側に開放されており、軸方向下方側に延びている。
【0070】
上側径方向部51は、内周電極20における大径胴20bの下端面と、この下端面に対して略平行かつ軸方向に離間して配置されている外周電極30における内フランジ部30kの上端面によって画成されている。これにより、上側径方向部51は、上側軸方向部50の下端に連通しており、当該下端に略直交して径方向内径側に延びている。
【0071】
すなわち、上側軸方向部50および上側径方向部51が直交することにより形成される通路5の曲げ部は、外周電極30における筒状部30aから内径方向に延びる突起である内フランジ部30kにより形成されている。
【0072】
中側軸方向部52は、内周電極20における中径胴20cの外周面と、この外周面に対して略平行かつ径方向に離間して配置されている外周電極30における小径孔部30dの内周面、および下方側軸受ホルダ31における中径孔部31cの内周面によって主に画成されている。これら小径孔部30dの内周面、および中径孔部31cの内周面は、同一直線状に配置されている。これにより、中側軸方向部52は、上側径方向部51の内径端に連通しており、当該内径端に略直交して軸方向下方側に延びている。
【0073】
また、中側軸方向部52は、その延伸方向に配置されている環状凹み38に連通している。
【0074】
下側径方向部53は、内周電極20における中径胴20cの下端面と、この下端面に対して略平行かつ軸方向に離間して配置されている環状突起37における内径側筒状部37bの上端面によって画成されている。これにより、上側径方向部51は、中側軸方向部52の下端に連通しており、当該下端に略直交して径方向内径側に延びている。
【0075】
すなわち、中側軸方向部52および下側径方向部53が直交することにより形成される通路5の曲げ部は、下方側軸受ホルダ31における筒状部31aから内径方向に延びる突起である環状突起37により形成されている。
【0076】
下側軸方向部54は、内周電極20における小径胴20dの外周面と、この外周面に対して略平行かつ径方向に離間して配置されている環状突起37における内径側筒状部37bの内周面によって主に画成されている。これにより、下側径方向部53の内径端に連通しており、当該内径端に略直交して軸方向下方側に延びて、軸方向下方側に位置する軸受33側に開放されている。
【0077】
以上説明してきたように構成されている本実施例のロータリコネクタ1は、半導体製造機における回動軸に従動することで内周電極20が外周電極30に対して相対回動する。
【0078】
また、この回動において、各ローラ集電子40は、内周電極20における大径胴20bの外周面に対して相対的に転動しながら、内周電極20を軸に、集電子ホルダ41と共に公転する。
【0079】
このとき、各ローラ集電子40は、外周電極30における大径孔部30cの内周面に対しても相対的に転動する。
【0080】
これにより、内周電極20が外周電極30に対して相対回動している状態において、各ローラ集電子40は通電可能な領域を確保している。そのため、ロータリコネクタ1は、外部電源から供給された電気を半導体製造機における回動軸に導電させることができる。
【0081】
また、各ローラ集電子40は、外観が樽状である。そして、環状溝20f,30fは、ローラ集電子40の外周面に沿うように形成されている。これらにより、ローラ集電子40が軸方向上方側に移動しようとしても、環状溝20f,30fを画成している周面にその移動が規制される。
【0082】
さらに、内周電極20が外周電極30の軸心に対して相対的に傾動しようとした場合に、ローラ集電子40は、環状溝20f,30fを画成している周面に追従しやすくなっている。
【0083】
そのため、ロータリコネクタ1では、ローラ集電子40と環状溝20f,30fを画成している周面との接触領域が変化しにくい。これにより、ロータリコネクタ1では、外部電源から供給された半導体製造機における回動軸に導電される電気の量を略一定に保ちやすくなっている。
【0084】
また、各ローラ集電子40は、導電性の高いピン41bによって回動可能に軸支されている。これにより、ローラ集電子40による許容電流値に、ピン41bによる許容電流値が加わるため、導電可能な電気の最大量は高められている。
【0085】
また、集電子ホルダ41によって保持されている各ローラ集電子40は、相対的に周方向に近接することが規制されている。すなわち、集電子ホルダ41は、ローラ集電子40同士の接触により破損が生じることを防止している。
【0086】
また、軸受33は、金属製であって導電性である、一方、軸受ホルダ31,32は、絶縁性である。そのため、軸受ホルダ31,32は、内周電極20より軸受33に導電された電気が漏電することを防止することができる。
【0087】
また、ロータリコネクタ1は、絶縁性の高いハウジング35およびカバー36によってケーシングされている。そのため、ロータリコネクタ1は、意図しない漏電、接触による感電等が防止されている。
【0088】
各ローラ集電子40が遊星運動するにあたって、摩擦、経年劣化等により、摩耗粉、メッキの剥離粉等の夾雑物が発生する。夾雑物は、重力に従って降下し、通路5に入り込む場合がある。
【0089】
通路5は、上述したように、上側軸方向部50および上側径方向部51、上側径方向部51および中側軸方向部52、中側軸方向部52および下側径方向部53、下側径方向部53および下側軸方向部54がそれぞれ略直交することにより複数の曲げ部が形成されることによってジグザグ形状に形成されている。
【0090】
より詳しくは、上側軸方向部50および上側径方向部51が略直交することにより形成される曲げ部は、ローラ集電子40の鉛直方向下側に設けられており、夾雑物が重力に従って降下し鉛直方向下方に向かって直線状に移動することを防止している。また、中側軸方向部52および下側径方向部53が略直交することにより形成される曲げ部も、ローラ集電子40の鉛直方向下側に設けられており、夾雑物が重力に従って降下し鉛直方向下方に向かって直線状に移動することを防止している。ここで、明細書において、ローラ集電子40の鉛直方向下側は、下方であればよく直下に限らない。これにより、通路が直線状に形成されている構成と比較して、夾雑物は軸受33に到達しにくくなっている。このように、通路5は、複数の曲げ部によってジグザグ形状に形成されることにより、夾雑物の移動を抑制している。
【0091】
また、通路5は、幅狭であるから夾雑物は軸受33に向けて移動しにくくなっている。なお、移動を阻止する観点から、幅狭の程度は、通路5の延在方向(すなわち夾雑物が軸受33に向かう方向)に直交する長さが軸受の径方向の半分以下、好ましくはボール33bの直径以下であるとよい。また、本実施例では、通路5を構成する上側軸方向部50、上側径方向部51、中側軸方向部52、下側径方向部53、下側軸方向部54は全て幅狭であるが、一部が幅狭であってもよい。
【0092】
また、上側軸方向部50に導かれながら降下してきた夾雑物は、外周電極30における内フランジ部30kに落下する。すなわち、上側軸方向部50および上側径方向部51が略直交することにより形成される曲げ部において、内径方向に延びている内フランジ部30kの上端面に夾雑物が落下してトラップされるため、通路5における夾雑物の移動を規制することができる。
【0093】
また、上側径方向部51を通過し、中側軸方向部52に導かれながら降下してきた夾雑物は、下方側軸受ホルダ31における環状突起37に形成される環状凹み38に落下する。すなわち、中側軸方向部52および下側径方向部53が略直交することにより形成される曲げ部において、内径方向に延びている環状突起37に形成される環状凹み38に夾雑物が落下してトラップされるため、通路5における夾雑物の移動を規制することができる。さらに、環状突起37は軸受33の上方に庇状に配置されているため、夾雑物が軸受33に向かって直線状に移動することを防止している。なお、環状突起37には、環状凹み38が形成されていなくてもよく、この場合、曲げ部において、内径方向に延びている環状突起37の平坦な上端面に夾雑物が落下してトラップされる。
【0094】
これらのように、夾雑物は、通路5に形成される各曲げ部によりトラップされることによってローラ集電子40から軸受33側に進入することが抑止される。これにより、軸受33は、夾雑物を噛み込みにくくなる。そのため、ロータリコネクタ1は、長期間に亘って安定して機能することができる。
【0095】
また、本実施例のロータリコネクタ1は縦置きであり、ローラ集電子40の鉛直方向下側において曲げ部が設けられているため、重力に従って降下した夾雑物が曲げ部によりトラップされることによって軸受に向かって直線状に移動することを防ぐことができる。
【0096】
また、通路5に形成される曲げ部は、内径方向に延びる内フランジ部30kおよび環状突起37により形成されているため、夾雑物が軸受33に向かって直線状に移動することを防ぐことができる。また、通路5は、複数の曲げ部が形成されることにより、通路5がジグザグに延びて形成されるため、夾雑物が軸受33に到達しにくい。
【0097】
また、通路5に形成される曲げ部において、環状突起37に形成される環状凹み38は、軸方向上方に開放されている溝状に形成されている。そのため、環状凹み38は、トラップした夾雑物を保持する能力が高い。
【0098】
また、環状に形成されている環状凹み38は、周方向のいずれの位置であっても落下する夾雑物をトラップすることができる。そのため、環状凹み38は、夾雑物をトラップする効率が高い。
【0099】
また、静止部材である下方側軸受ホルダ31に形成されている環状凹み38は、内周電極20の回動力が作用しない。これにより、環状凹み38によってトラップされた夾雑物には、内周電極20の回動力が作用しない。そのため、環状凹み38は、夾雑物を確実に保持できる。
【0100】
また、シールド付軸受である軸受33は、通路5をすり抜けた夾雑物を噛み込みにくい。そのため、ロータリコネクタ1は、より長期間に亘って安定して機能することができる。
【0101】
なお、内周電極20において、大径胴20bと小径胴20dとが連続している、言い換えれば、中径胴20cが小径胴20dと同径に形成される場合であっても、通路5には環状突起37によって曲げ部が形成されることにより、夾雑物が重力に従って降下し鉛直方向下方に向かって直線状に移動することを防止できる。
突起部材23は、フランジ付き円筒状に形成され、環状凹み38に向けて延びる突部としての筒状部23aと、突起および外径方向突起としての内フランジ部23bと、を備えている。筒状部23aは、軸方向に延びる円筒状に形成されている。内フランジ部23bは、筒状部23aの上端に略直交して内径方向に延びる円環状かつ平板状に形成されている。
突起部材23は、内周電極120における小径胴120dの外周面に外嵌されている。また、突起部材23は、内フランジ部23bの上端面が内周電極120における中径胴120cの下端面に当接している。さらに、内フランジ部23bの下端面は、小径胴120dの下端面と略同一平面状に配置されている。すなわち、突起部材23における内フランジ部23bは、内周電極120における小径胴120dから外径方向に延びており、内フランジ部23bの外径端部が中径胴120cの外周面よりも外径方向に突出している。すなわち、内フランジ部23bの外径端部が内周電極120から外径方向に延びる突起を構成している。
押し部材24は、フランジ付き円筒状に形成され、筒状部24aと、外フランジ部24bと、を備えている。筒状部24aは、軸方向に延びる円筒状に形成されている。外フランジ部24bは、筒状部24aの上端に略直交して外径方向に延びる円環状かつ平板状に形成されている。
押し部材24は、内周電極120における下軸120eの外周面に外嵌されている。また、押し部材24は、外フランジ部24bの上端面が内周電極120における小径胴120dの下端面、および突起部材23における内フランジ部23bの下端面に跨って当接している。
これにより、突起部材23は、環状凹み38の軸方向上方に庇状に配置されている。そのため、突起部材23は、夾雑物が軸受33に向かって直線状に移動することを防ぐばかりでなく、環状凹み38に夾雑物を誘導しやすい。
さらに詳しくは、筒状部23aにおける内周面は、環状突起37における内径側筒状部37bの内周面と略平行かつ径方向に離間して配置されている。筒状部23aにおける下端面は、環状突起37における底部37aの上端面に対して離間して配置されている。筒状部23aにおける外周面は、下方側軸受ホルダ31における中径孔部31cの内周面と略平行かつ径方向に離間して配置されている。すなわち、突起部材23における筒状部23aと環状突起37に形成される環状凹み38により、ラビリンス構造を構成している。
これにより、通路5に形成される曲げ部において、外径方向に延びている突起部材23における内フランジ部23bと、内径方向に延びている環状突起37に形成される環状凹み38に夾雑物が落下してトラップされるため、通路5における夾雑物の移動を規制することができる。また、外径方向に延びている内フランジ部23bと、内径方向に延びている環状突起37が鉛直方向に重畳して複数の曲げ部を形成することにより通路5がジグザグに延びて形成されるため、夾雑物が軸受に到達しにくい。
さらに、内フランジ部23bから下方に延びる筒状部23aの下端部が環状突起37に形成される環状凹み38に入り込むことによってラビリンス構造を構成することにより、軸受33側への夾雑物の移動をより効果的に防ぐことができる。