IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 物産フードサイエンス株式会社の特許一覧

特開2023-29248起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤
<>
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図1
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図2
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図3
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図4
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図5
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図6
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図7
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図8
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図9
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図10
  • 特開-起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029248
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】起泡性製剤の泡改良用組成物、起泡性製剤の製造方法および起泡性製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230224BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230224BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230224BHJP
   C09K 23/56 20220101ALI20230224BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61Q5/00
A61Q19/10
C09K23/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120383
(22)【出願日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021135068
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】澤 桃子
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄輝
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB332
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD112
4C083AD202
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC21
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD08
4C083EE01
4C083EE07
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】 起泡性製剤の泡について、きめ細かさや均一性といった泡質や泡の経時的安定性を向上できる技術を提供する。
【解決手段】 下記(ア)~(カ)のいずれか1以上を有効成分とする、起泡性製剤の泡改良用組成物;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(オ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(カ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(ア)~(カ)のいずれか1以上を有効成分とする、起泡性製剤の泡改良用組成物;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(オ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(カ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴。
【請求項2】
下記(ア)、(イ)、(キ)および(ク)から選択される1以上を有効成分とし、起泡性製剤において0.5質量%超40質量%以下の固形分濃度で用いられることを特徴とする、起泡性製剤の泡改良用組成物;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(キ)デキストロース当量が32以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(ク)デキストロース当量が32以上40未満の水飴。
【請求項3】
下記(ウ)、(エ)、(ケ)および(コ)から選択される1以上を有効成分とし、起泡性製剤において0.2質量%超20質量%以下の固形分濃度で用いられることを特徴とする、起泡性製剤の泡改良用組成物;
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(ケ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(コ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴。
【請求項4】
起泡性製剤の泡のきめ細かさ、泡の大きさの均一性および/または泡の経時的安定性を向上するために用いられる、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の組成物を原料として配合する工程を有する、起泡性製剤の製造方法。
【請求項6】
下記(ア)、(イ)、(キ)および(ク)から選択される1以上を0.5質量%超40質量%以下の固形分濃度で含有する、起泡性製剤;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(キ)デキストロース当量が32以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(ク)デキストロース当量が32以上40未満の水飴。
【請求項7】
下記(ウ)、(エ)、(ケ)および(コ)から選択される1以上を0.2質量%超20質量%以下の固形分濃度で含有する、起泡性製剤;
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(ケ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(コ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の還元水飴または水飴を有効成分とする起泡性製剤の泡改良用組成物、およびそれを用いる起泡性製剤の製造方法、ならびに、所定の還元水飴または水飴を所定の割合で含有する起泡性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水を適量加えて泡立てることにより気泡を生成し、泡立つ性質を有する製品(起泡性製剤)には、衣類用、食器用などの家庭用洗剤や洗顔料、ボディソープ、ハンドソープなどの身体用洗浄料をはじめとして、起泡性入浴剤(バブルバス、フォームバス)やシェービングクリーム、起泡性整髪料(ヘアフォーム)など、多種類の製品が存在する。
【0003】
これら起泡性製剤には、近年、きめ細かく濃密な泡質や、泡が潰れず持続する安定性など、泡に関する使用感の高さも求められている。肌や毛髪などの身体に接触する起泡性製剤では特にその傾向が顕著であり、最終消費者においては当該使用感が製品選択の重要なポイントとされている。しかしながら、例えば、ポンプフォーマー容器に充填された起泡性製剤においては、含有成分の種類や配合量によっては、きめが粗く不均一な泡質になる、泡が持続せず安定性がない等、泡の使用感に不足があり、問題となっている。
【0004】
そこで、泡の使用感を解決するための技術開発がなされており、例えば、特許文献1には、特定の界面活性剤ならびに多価アルコールを特定の配合量で使用することで、泡質がクリーミィで弾力性を有する、フォーマー容器入り液体洗浄組成物が開示されている。また、特許文献2には、高級脂肪酸を中和処理することにより得られる石鹸と、高分子量の塩化ジメチルジアリルアンモニウムを含有することで、泡の持続性に優れる洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-59247号公報
【特許文献2】国際公開第2019/059111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液体洗浄組成物は、泡質のクリーミィさや弾力性が向上することは開示されているものの、泡の経時的安定性についての効果は不明である。特許文献2に記載の洗浄剤組成物もまた、泡の持続性が優れることは開示されているが、泡のきめ細かさや均一性についての効果は不明である。すなわち、これら特許文献を鑑みても、泡質や泡の経時的安定性を向上できる技術は十分に供給されている状況ではない。
【0007】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、起泡性製剤の泡について、きめ細かさや均一性といった泡質や泡の経時的安定性を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、起泡性製剤に中糖化還元水飴、低糖化還元水飴およびそれらと同等の糖組成の水飴を配合することにより、泡の細かさ、泡の大きさ(泡サイズ)の均一性または泡の経時的安定性を向上できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0009】
(1)本発明に係る起泡性製剤の泡改良用組成物の第1の態様は、下記(ア)~(カ)のいずれか1以上を有効成分とする;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(オ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(カ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴。
【0010】
(2)本発明に係る起泡性製剤の泡改良用組成物の第2の態様は、下記(ア)、(イ)、(キ)および(ク)から選択される1以上を有効成分とし、起泡性製剤において0.75質量%以上40質量%以下の固形分濃度で用いられることを特徴とする;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(キ)デキストロース当量が32以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(ク)デキストロース当量が32以上40未満の水飴。
【0011】
(3)本発明に係る起泡性製剤の泡改良用組成物の第3の態様は、下記(ウ)、(エ)、(ケ)および(コ)から選択される1以上を有効成分とし、起泡性製剤において0.5質量%以上20質量%以下の固形分濃度で用いられることを特徴とする;
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(ケ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(コ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴。
【0012】
(4)本発明に係る起泡性製剤の泡改良用組成物は、起泡性製剤の泡のきめ細かさ、泡の大きさの均一性および/または泡の経時的安定性を向上するために用いられるものであってもよい。
【0013】
(5)本発明に係る起泡性製剤の泡改良用組成物の製造方法は、本発明に係る起泡性製剤の泡改良用組成物を原料として配合する工程を有する。
【0014】
(6)本発明に係る起泡性製剤の第1の態様は、下記(ア)、(イ)、(キ)および(ク)から選択される1以上を0.5質量%超40質量%以下の固形分濃度で含有する;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(キ)デキストロース当量が32以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(ク)デキストロース当量が32以上40未満の水飴。
【0015】
(7)本発明に係る起泡性製剤の第2の態様は、下記(ウ)、(エ)、(ケ)および(コ)から選択される1以上を0.2質量%超20質量%以下の固形分濃度で含有する;
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(ケ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(コ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、起泡性製剤の泡のきめ細かさを向上することができる。また、本発明によれば、起泡性製剤の泡の大きさの均一性を向上することができる。また、本発明によれば、起泡性製剤の泡の液化や泡サイズの経時的変化を抑制し、泡の経時的安定性を向上することができる。本発明によれば、所定の還元水飴あるいは水飴を原料として配合するという簡便な方法により、きめ細かい泡あるいは均一な泡を立てることができる起泡性製剤や、泡持ちがよい起泡性製剤を得ることができる。泡がきめ細かいこと、泡の大きさが均一なこと、あるいは立てた泡の持続性が高いことは、起泡性製剤の使用者に満足感を与えることから、その商品価値を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】各種の被験物質(ソルビトール、還元麦芽糖水飴、中糖化還元水飴)を10質量%含有する起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出直後(0分後)および5分後の泡の拡大観察画像である。
図2】各種の被験物質(低糖化還元水飴、低糖化水飴、GM混合物、グリセリン)を10質量%含有する起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出直後(0分後)および5分後の泡の拡大観察画像である。
図3】各種の被験物質を1質量%含有する起泡性製剤について、(I)は、ポンプフォーマーから吐出直後(0分後)~30分後の排液量を示す折れ線グラフである。(II)は、当該排液量の数値を示す表である。
図4】表の上段は、中糖化還元水飴を0~40質量%含有する起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出直後(0分後)の泡の拡大観察画像である。表の下段は、当該起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出して15分後の排液量を示す百分率である。
図5】表の上段は、低糖化還元水飴を0~20質量%含有する起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出直後(0分後)の泡の拡大観察画像である。表の下段は、当該起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出して15分後の排液量を示す百分率である。
図6】表の上段は、低糖化水飴を0~15質量%含有する起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出直後(0分後)の泡の拡大観察画像である。表の下段は、当該起泡性製剤について、ポンプフォーマーから吐出して15分後の排液量を示す百分率である。
図7】中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を配合した市販の起泡性製剤(市販品A)について、(I)はポンプフォーマーから吐出直後(0分後)および3分後の泡の拡大観察画像である。(II)は当該観察画像に基づき泡を三段階評価した結果である。
図8】中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を配合した市販の起泡性製剤(市販品B)について、(I)はポンプフォーマーから吐出直後(0分後)および3分後の泡の拡大観察画像である。(II)は当該観察画像に基づき泡を三段階評価した結果である。
図9】中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を配合した市販の起泡性製剤(市販品C)について、(I)はポンプフォーマーから吐出直後(0分後)および3分後の泡の拡大観察画像である。(II)は当該観察画像に基づき泡を三段階評価した結果である。
図10】中糖化還元水飴、低糖化還元水飴または低糖化水飴を配合した市販の起泡性製剤(市販品D)について、(I)はポンプフォーマーから吐出直後(0分後)および3分後の泡の拡大観察画像である。(II)は当該観察画像に基づき泡を三段階評価した結果である。
図11】中糖化還元水飴、低糖化還元水飴または低糖化水飴を配合した市販の起泡性製剤(市販品E)について、(I)はポンプフォーマーから吐出直後(0分後)および2分後の泡の拡大観察画像である。(II)は当該観察画像に基づき泡を三段階評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
「起泡性製剤」とは、上述のとおり、水を適量加えて泡立てることにより気泡を生成し、泡立つ性質を有する製品をいう。本発明においては、気泡を単に「泡」という場合がある。また、泡は、泡の集合体と同義に用いられる場合がある。
【0020】
起泡性製剤は、通常、界面活性剤を含み、その作用により泡立つ。本発明の有効成分は、後述する実施例で示すように、一般に、起泡性や泡の安定性に乏しいことで知られるアミノ酸系アニオン界面活性剤を含む場合においても、良好な泡の改良効果を発揮する。また、アミノ酸系以外のアニオン界面活性剤や両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤を含む場合においても、良好な泡の改良効果を発揮する。したがって、本発明において、起泡性製剤における界面活性剤の種類は問わず、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤のいずれも用いることができる。
【0021】
起泡性製剤の具体例としては、例えば、化粧品に分類されるもの(ヘアスプレー、ヘアフォーム、シャンプー、洗髪粉、洗顔料、クレンジング、洗粉、ボディソープ、ハンドソープ、全身シャンプー、ひげ剃り、むだ毛剃り、バブルバスやフォームバスなどの入浴料など)、その他の家庭用品に分類されるもの(石けん、洗濯用洗剤、台所用洗剤、住居・家具用洗剤など)、玩具に分類されるもの(シャボン玉液など)、工業用洗剤などを例示することができる。
【0022】
「起泡性製剤の泡を改良する」とは、起泡性製剤の泡の不十分な点や悪い点を改めて、よくすることをいう。泡を改良するという場合の具体例としては、例えば、泡のきめを細かくすることや、泡の大きさの均一性を向上すること、泡の経時的安定性を向上することを例示することができる。
【0023】
ここで、「泡の大きさ(泡サイズ)の均一性を向上する」とは、ある泡の集合体において、同等(全く同じのほか、同じではないが大きな差がない場合も含む)の大きさを有する泡の数を多くすること、同等の大きさを有する泡の数が大多数を占めるようにすること、あるいは、極端に大きいまたは極端に小さい泡の数を少なくすることをいう。
【0024】
「泡のきめ(肌理、キメ)を細かくする」とは、ある泡の集合体において、一つ一つの泡の大きさを小さくすること、あるいは一つ一つの泡の大きさを均一に小さく整えることをいう。
【0025】
泡の大きさおよび泡のきめは、後述する実施例で示すように、作製直後の泡の集合体を、顕微鏡で拡大観察することにより評価することができる。よって、本発明を用いた場合と本発明を用いない場合とで拡大観察して泡の大きさまたは泡のきめを比較し、前者の方が同等の大きさを有する泡の数が多ければ、あるいは、泡の集合体における一つ一つの泡の大きさが小さければ、本発明により「泡の大きさの均一性が向上した」あるいは「泡のきめの細かさが向上した」と評価することができる。
【0026】
泡は一般に、時間の経過に伴い、泡サイズが大きくあるいは小さくなる等の形状変化をし、泡が合一し、あるいは壊れて液体となる。「泡の経時的安定性を向上する」とは、係る時間経過に伴う泡の形状変化や合一、液体への変化を抑制することをいう。本発明において、泡の経時的安定性を向上することは、「泡持ちをよくする」ことと同義に用いられる。
【0027】
泡の経時的安定性は、後述する実施例で示すように、作製から一定時間経過した泡の集合体を、顕微鏡で拡大観察することにより評価することができる。本発明を用いた場合と本発明を用いない場合とで拡大観察して、前者の方が作製直後の泡の形状と比較して形状変化の程度が小さければ、本発明により「泡の経時的安定性が向上した」と評価することができる。あるいは、経時的安定性は、作製から一定時間経過することにより泡から生成した液滴(排液)の量を計測することにより評価することもできる。本発明を用いた場合と本発明を用いない場合とで排液量を比較して、前者の方が排液量が少なければ、本発明により「泡の経時的安定性が向上した」と評価することができる。
【0028】
「水飴」は、デンプンを酸や酵素などで糖化して得られる物質であり、単糖(ブドウ糖)および多糖(オリゴ糖やデキストリンなど)の混合物である。「還元水飴」は、水飴を還元して得られる糖アルコールの一種である。よって、還元水飴もまた、単糖の糖アルコールおよび多糖(二糖、三糖、四糖または五糖以上)の糖アルコールのうち、2種以上の糖アルコールを含む混合物である。還元水飴は、糖化の程度により高糖化還元水飴、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴に分けられる場合がある。
【0029】
水飴および還元水飴は、糖化の程度により高糖化のもの(高糖化水飴、高糖化還元水飴)、中糖化のもの(中糖化水飴、中糖化還元水飴)および低糖化のもの(低糖化水飴、低糖化還元水飴)に分けられる場合がある。本発明においては、これらのうち、中糖化のもの(中糖化水飴、中糖化還元水飴)および低糖化のもの(低糖化水飴、低糖化還元水飴)が泡の改良効果を発揮する有効成分として用いられる。
【0030】
中糖化水飴や中糖化還元水飴の糖組成として、具体的には、(ア)(イ)単糖を30質量%未満および五糖以上を50質量%未満含有する糖組成、あるいは、(サ)単糖を2~10質量%、二糖を15~55質量%、三糖を15~65質量%、四糖を1~15質量%および五糖以上を1~38質量%含有する糖組成を例示することができる。
【0031】
低糖化水飴や低糖化還元水飴の糖組成として、具体的には、(ウ)(エ)五糖以上を50質量%以上含有する糖組成、あるいは、(シ)単糖を1~10質量%、二糖を6~21質量%、三糖を7~23質量%、四糖を5~13質量%および五糖以上を50~82質量%含有する糖組成を例示することができる。
【0032】
なお、本発明において、糖組成とは、糖の総質量に占める各糖の質量割合を百分率で示すものをいう。すなわち、糖の総質量を100とした場合の、各糖の質量百分率である。
【0033】
糖組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。すなわち、還元水飴を試料としてHPLCに供してクロマトグラムを得る。当該クロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」に相当する。よって、試料における各糖の質量百分率は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定することができるが、下記条件を例示することができる。
《HPLCの条件》
カラム;MCI GEL CK04S(10mm ID x 200mm)
溶離液;高純水
流速;0.4mL/分
注入量;20μL
カラム温度;65℃
検出;示差屈折率検出器RI-10A(島津製作所)
【0034】
水飴の糖化の程度の指標は、一般に、デキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が用いられる。DEは、試料中の還元糖をブドウ糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。
【0035】
すなわち、中糖化水飴(中糖化還元水飴の原料水飴)のDEとしては、(キ)(ク)32以上、36以下、37以下、39以下、40未満を例示することができる。
【0036】
また、低糖化水飴(低糖化還元水飴の原料水飴)のDEとしては、(ケ)(コ)10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、30以下、32未満を例示することができる。
【0037】
また、低糖化~中糖化水飴(低糖化~中糖化還元水飴の原料水飴)のDEとしては、(オ)(カ)10以上40未満を例示することができる。
【0038】
なお、水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
《DEの測定方法》
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、1/25mol/L ヨウ素溶液(注1)10mLと1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液(注2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(注3)を5mL加えて混和した後、1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(注4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(注5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式1によりDEを求める。
(注1)1/25mol/L ヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注2)1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注3)2mol/L 塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加える。
(注4)1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解する。
【0039】
本発明において、水飴および還元水飴は、市販されているものをそのまま用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。市販の中糖化還元水飴としては、例えば、「アクアオール♯1」(物産フードサイエンス)などを、市販の低糖化還元水飴としては、例えば、「アクアオール♯2」(物産フードサイエンス)、「PO-10」、「PO-20」(以上、三菱商事ライフサイエンス)などを例示することができる。
【0040】
水飴の公知の製造方法としては、デンプンを酸あるいは酵素によって分解する方法を挙げることができる。また、還元水飴の公知の製造方法としては、水飴(原料糖)に水素を添加する還元反応を挙げることができる。水素添加による還元反応は、例えば、40~75質量%の原料糖水溶液を、還元触媒と併せて高圧反応器中に仕込み、反応器中の水素圧を4.9~19.6MPa、反応液温を70~180℃として、混合攪拌しながら、水素の吸収が認められなくなるまで反応を行なえばよい。その後、還元触媒を分離し、イオン交換樹脂処理、必要であれば活性炭処理等で脱色脱塩した後、所定の濃度まで濃縮すれば、高濃度の還元水飴を作ることができる。
【0041】
水飴および還元水飴は、起泡性製剤を製造する通常の工程において、原料として配合して用いることができる。すなわち、本発明は、本発明に係る泡改良用組成物を原料として配合する工程を有する、起泡性製剤の製造方法も提供する。
【0042】
起泡性製剤を製造するにあたっての水飴または還元水飴の配合方法は、製品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて、適宜、当業者に公知の手法により行うことができる。還元水飴は多価アルコールであることから、グリセリンや1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の従来配合される他の多価アルコールと同様に扱って、起泡性製剤を製造することができる。
【0043】
起泡性製剤には、水飴または還元水飴を配合するほか、本発明の特徴を損なわない限り他の成分(例えば、界面活性剤、溶媒、分散媒、他の多価アルコール、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、ソルビトール等の他の糖類、着色剤、動植物エキス、ビタミン類、無機塩類、有機塩類、可溶化剤、殺菌剤、保湿剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、増粘剤、香料、カチオンポリマー、清涼剤、冷感剤、油剤など)が配合されてよい。
【0044】
起泡性製剤における水飴または還元水飴の配合量もまた、製品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて適宜設定することができる。
【0045】
例えば、中糖化水飴または中糖化還元水飴を有効成分とする場合、起泡性製剤の総質量を100質量%として、泡のきめ細かさや泡サイズの均一性をより向上する観点から、下限は、固形分濃度で0.5質量%超、0.75質量%以上、1質量%以上、5質量%超、10質量%以上を例示することができる。一方、上限は多量であるほど泡のきめ細かさや泡サイズの均一性が増すと考えられるが、40質量%以下を例示することができる。また、泡の経時的安定性をより向上する観点からは、下限は、固形分濃度で5質量%超、10質量%以上、15質量%超、20質量%以上、上限は、固形分濃度で40質量%以下、40質量%未満、35質量%以下を例示することができる。
【0046】
また、低糖化還元水飴を有効成分とする場合、起泡性製剤の総質量を100質量%として、泡のきめ細かさや泡サイズの均一性をより向上する観点から、下限は、固形分濃度で0.2質量%超、0.5質量%以上、0.75質量%以上、1質量%以上、上限は、20質量%以下、15質量%以下を例示することができる。また、泡の経時的安定性をより向上する観点からは、下限は、固形分濃度で0.2質量%超、0.5質量%以上、0.75質量%以上、1質量%超、5質量%以上、上限は、固形分濃度で15質量%未満、10質量%以下を例示することができる。
【0047】
また、低糖化水飴を有効成分とする場合、起泡性製剤の総質量を100質量%として、泡のきめ細かさや泡サイズの均一性をより向上する観点から、下限は、固形分濃度で0.2質量%超、0.5質量%以上、0.75質量%以上、1質量%以上、上限は、20質量%以下、20質量%未満、15質量%以下を例示することができる。また、泡の経時的安定性をより向上する観点からは、下限は、固形分濃度で0.2質量%超、0.5質量%以上、0.75質量%以上、1質量%以上、上限は、固形分濃度で20質量%未満、15質量%以下を例示することができる。
【0048】
すなわち、本発明の第1の態様に係る起泡性製剤は、下記(ア)の中糖化還元水飴、(イ)の中糖化水飴、(キ)の中糖化還元水飴および(ク)の中糖化水飴から選択される1以上を0.5質量%超40質量%以下の固形分濃度で含有するから、泡のきめ細かさや泡サイズの均一性、泡の経時的安定性が高い;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の水飴、
(キ)デキストロース当量が32以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(ク)デキストロース当量が32以上40未満の水飴。
【0049】
すなわち、本発明の第2の態様に係る起泡性製剤は、下記(ウ)の低糖化還元水飴、(エ)の低糖化水飴、(ケ)の低糖化還元水飴および(コ)の低糖化水飴から選択される1以上を0.2質量%超20質量%以下の固形分濃度で含有するから、泡のきめ細かさや泡サイズの均一性、泡の経時的安定性が高い;
(ウ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の水飴、
(ケ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴を還元してなる還元水飴、
(コ)デキストロース当量が10以上32未満の水飴。
【0050】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0051】
<試験方法>試験は、特段の記載のない限り下記の方法により行った。
(1)被験物質
被験物質として、表1に示すもの(全て市販品)を用いた。糖アルコール、還元水飴および水飴については、その糖組成および原料糖のDE値も表1に示す。
【表1】
【0052】
(2)界面活性剤
界面活性剤は、別段の記載のない限りアミノ酸系アニオン界面活性剤(製品名:アミソフトECS-22W、成分:水 70質量%、ココイルグルタミン酸2Na 30質量%、性状:液体、製造者:味の素ヘルシーサプライ)を用いた。
【0053】
(3)起泡性製剤の製造
被験物質を秤量し、界面活性剤を加えた後に水を加えて混合することにより起泡性製剤を製造した。製造した起泡性製剤は、ポンプフォーマーに充填した。ポンプフォーマーは、特段の記載のない限り「F2 ポンプフォーマー 100mLボトル」(容量:100mL、吐出量:1プッシュ= 約0.8g程度、製造者:大和製罐)を用いた。
【0054】
(4)泡の拡大観察
ポンプフォーマーに起泡性製剤を充填し、ノズルを押して作製した泡を1/2オンスカップに入れた。このカップにスライドガラスを被せ、顕微鏡を用いて、スライドガラス越しに泡を倍率100倍で拡大観察した。観察は、泡作製直後(0分後)および5分後に行った。また、当該観察画像に基づき、下記の基準により、0分後の泡については「泡の細かさ、泡の大きさ(泡サイズ)の均一さ」を、5分後の泡については「0分後の泡と比較して泡サイズが維持されているか否か」を、△、○または◎の三段階で評価した。
《0分後の泡「泡の細かさ、泡の均一さ」》
△:泡が粗く、均一性がない(泡の直径が250μmより大きい)
○:泡がやや細かい(泡の直径が200μm程度)
◎:泡がかなり細かい(泡の直径が200μmより小さい)
《5分後の泡「0分後の泡と比較して泡サイズが維持されているか否か」》
△:泡サイズが維持されていない
○:泡サイズがやや維持されている
◎:泡サイズがかなり維持されている
【0055】
(5)排液量の測定
ポンプフォーマーに起泡性製剤を充填し、ノズルを押して作成した泡7gを、容量50mLの目盛付きガラス容器に入れた。泡作製時から5、10、15、20、25および30分後に、液体上面に該当する目盛を読むことにより、泡から生成した液体の量(mL)を測定した。各試料につき3検体の測定を行い、平均値を算出して、これを排液量とした。すなわち排液量が少ないほど、泡の経時的安定性が高いといえる。
【0056】
<実施例1>有効成分の検討
(1)泡の拡大観察
表2に示す配合(被験物質を固形分濃度10質量%となるよう配合)で試料1~8の起泡性製剤を作製し、試験方法(4)により泡の拡大観察を行った。観察画像を図1および図2に、三段階評価の結果を表3に、それぞれ示す。
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
図1図2および表3に示すように、0分後(泡作製直後)では、試料2(ソルビトールを配合)、試料3(還元麦芽糖水飴を配合)、試料4(中糖化還元水飴を配合)、試料5(低糖化還元水飴を配合)、試料6(低糖化水飴を配合)、試料7(GM混合物を配合)および試料8(グリセリンを配合)のいずれにおいても、試料1(被験物質の配合無し)と比較して泡が細かく、泡サイズの均一性が高かった。
【0059】
一方、5分後では、試料1(被験物質の配合無し)、試料2(ソルビトールを配合)、試料3(還元麦芽糖水飴を配合)、試料7(GM混合物を配合)および試料8(グリセリンを配合)においては、当該試料の0分後と比較して泡サイズが維持されず、径の大きい泡の数が顕著に増加した。これに対して、試料4(中糖化還元水飴を配合)、試料5(低糖化還元水飴を配合)および試料6(低糖化水飴を配合)においては、当該試料の0分後と比較して泡サイズが比較的維持されており、径の大きい泡の数ないしは泡径の増大の程度が小さかった。
【0060】
すなわち、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴または低糖化水飴を配合した起泡性製剤では、泡が細かくなり、泡サイズの均一性が増すとともに、泡サイズの経時的変化が小さかった。この結果から、起泡性製剤に中糖化還元水飴、低糖化還元水飴および/またはそれらと同等の糖組成の水飴を配合することにより、泡の細かさ、均一性または経時的安定性を向上できることが明らかになった。
【0061】
(2)排液量
表4に示す配合(被験物質を固形分濃度1質量%で配合)で試料1~8の起泡性製剤を作成し、試験方法(5)により排液量(3検体の平均値)を測定した。その結果を図3に示す。
【表4】
【0062】
図3に示すように、5分後、10分後、15分後、20分後、25分後および30分後のいずれの時点においても、試料4(中糖化還元水飴を配合)、試料5(低糖化還元水飴および試料6(低糖化水飴を配合)の排液量が小さく、特に試料5の排液量が顕著に小さかった。すなわち、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴または低糖化水飴を配合した起泡性製剤では、泡作製時から30分間において、泡から生成した液体の量が少なかった。この結果から、起泡性製剤に中糖化還元水飴、低糖化還元水飴および/またはそれらと同等の糖組成の水飴を配合することにより、泡から液体への経時的変化を抑制し、泡の経時的安定性を向上できることが明らかになった。
【0063】
(3)粘度
表5に示す配合(被験物質を固形分濃度5質量%で配合)で試料1~8の起泡性製剤を作成し、粘度(ミリパスカル秒)を測定した。粘度は各試料につき3検体の測定を行い、平均値を算出した。測定条件は、測定装置:BROOKFIELD DV2T Viscometers(英弘精機)、25℃、測定時間:5分間、スピンドル:ULA、回転数:200回転/分とした。その結果を表5の最下段に示す。
【表5】
【0064】
表5の最下段に示すように、試料1~8は、ほぼ同等の粘度であることが明らかになった。
【0065】
<実施例2>中糖化還元水飴の濃度の検討
表6に示す配合(中糖化還元水飴を固形分濃度0~40質量%で配合)で試料1~7の起泡性製剤を作成した。これらの試料について、試験方法(4)により泡作製直後(0分後)の拡大観察を行うことにより泡質を評価した。また、試験方法(5)により泡作製から15分後の排液量(3検体の平均値)を測定することにより泡の経時的安定性を評価した。試料2~7の排液量は、試料1(中糖化還元水飴の濃度0%)の排液量を100%とした百分率を算出した。その結果を図4に示す。
【表6】
【0066】
図4に示すように、作製直後(0分後)の泡は、試料2~試料7(中糖化還元水飴を0.75質量%~40質量%配合)のいずれにおいても、試料1(中糖化還元水飴の濃度0%)と比較して泡が細かく、ないしは泡サイズの均一性が高かった。また、排液量は、試料2~試料7のいずれにおいても、試料1と比較して顕著に少なかった。この結果から、中糖化還元水飴およびそれと同等の糖組成の水飴は、その配合量にかかわらず、泡を改良する効果を奏することが明らかになった。
【0067】
<実施例3>低糖化還元水飴の濃度の検討
表7に示す配合(低糖化還元水飴を固形分濃度0~20質量%で配合)で試料1~7の起泡性製剤を作成した。この試料について、試験方法(4)により泡作製直後(0分後)の拡大観察を行うことにより泡質を評価した。また、試験方法(5)により泡作製から15分後の排液量(3検体の平均値)を測定することにより泡の経時的安定性を評価した。試料2~7の排液量は、試料1(低糖化還元水飴の濃度0%)の排液量を100%とした百分率を算出した。その結果を図5に示す。
【表7】
【0068】
図5に示すように、作製直後の泡(0分後)は、試料2~試料7(低糖化還元水飴を0.75質量%~20質量%配合)のいずれにおいても、試料1(低糖化還元水飴の濃度0%)と比較して泡が細かく、ないしは泡サイズの均一性が高かった。また、排液量は、試料2~試料7のいずれにおいても、試料1と比較して顕著に少なかった。この結果から、低糖化還元水飴は、その配合量にかかわらず、泡を改良する効果を奏することが明らかになった。
【0069】
<実施例4>低糖化水飴の濃度の検討
表8に示す配合(低糖化水飴を固形分濃度0~15質量%で配合)で試料1~6の起泡性製剤を作成した。この試料について、試験方法(4)により泡作製直後(0分後)の拡大観察を行うことにより泡質を評価した。また、試験方法(5)により泡作製から15分後の排液量(3検体の平均値)を測定することにより泡の経時的安定性を評価した。試料2~6の排液量は、試料1(低糖化水飴の濃度0%)の排液量を100%とした百分率を算出した。その結果を図6に示す。
【表8】
【0070】
図6に示すように、作製直後の泡は、試料2~試料6(低糖化水飴を0.75質量%~15質量%配合)のいずれにおいても、試料1(低糖化水飴の濃度0%)と比較して泡が細かく、ないしは泡サイズの均一性が高かった。また、排液量は、試料2~試料6(低糖化水飴を0.75質量%~15質量%配合)のいずれにおいても、試料1と比較して顕著に少なかった。この結果から、低糖化水飴はその配合量にかかわらず、泡を改良する効果を奏することが明らかになった。
【0071】
<実施例5>界面活性剤の検討
アミノ酸系アニオン界面活性剤以外の界面活性剤を含有する場合について、泡質の改善効果や泡の経時的安定性向上効果を確認した。まず、表9に示す市販の起泡性製剤(以下市販品A~Cという。)を用意した。市販品Aは、界面活性剤としてココイルグルタミン酸TEA(アミノ酸系アニオン界面活性剤)、コカミドプロピルベタイン(両性界面活性剤)、ヤシ脂肪酸アルギニン(アミノ酸系アニオン界面活性剤)、コカミドDEA(ノニオン界面活性剤)、水添レシチン(両性界面活性剤)およびラウリン酸ポリグリセリル-10(ノニオン界面活性剤)を含有する。市販品Bは、界面活性剤としてラウリン酸塩(アニオン界面活性剤)、ミリスチン酸塩(アニオン界面活性剤)およびラウリン酸アミドプロピルベタイン(両性界面活性剤)を含有する。市販品Cは、界面活性剤としてラウレス硫酸アンモニウム(ラウレス硫酸系アニオン界面活性剤)、ラウレス硫酸Na(ラウレス硫酸系アニオン界面活性剤)、ステアレス-6(ノニオン界面活性剤)およびラウリルヒドロキシスルタイン(両性界面活性剤)を含有する。
【表9】
【0072】
市販品Aに、外割で固形分濃度が10質量%の量の中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を添加して混合し、試料1~3を作製した。また、市販品Bおよび市販品Cに、外割で固形分濃度が15質量%の量の中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を添加して混合し、試料4~9を作製した。それらの配合を表10に示す。試料1~9について、試験方法(4)により泡の拡大観察を行った。ただし観察は、泡作製直後(0分後)および3分後に行った。市販品Aの結果を図7に、市販品Bの結果を図8に、市販品Cの結果を図9に、それぞれ示す。
【表10】
【0073】
図7に示すように、市販品Aの場合、0分後(泡作製直後)では、試料2(中糖化還元水飴を配合)および試料3(低糖化還元水飴を配合)のいずれも、試料1(被験物質の配合無し)と比較して泡が細かく、泡サイズの均一性が高かった。また、3分後では、試料1においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡が顕著に多くなったのに対して、試料2および試料3においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡の増加の程度が比較的小さかった。
【0074】
また、図8に示すように、市販品Bの場合も、0分後(泡作製直後)では、試料5(中糖化還元水飴を配合)および試料6(低糖化還元水飴を配合)のいずれも、試料4(被験物質の配合無し)と比較して泡が細かく、泡サイズの均一性が高かった。また、3分後では、試料4においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡が顕著に多くなったのに対して、試料5および試料6においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡の増加の程度が比較的小さかった。
【0075】
また、図9に示すように、市販品Cの場合、0分後(泡作製直後)では、試料8(中糖化還元水飴を配合)および試料9(低糖化還元水飴を配合)のいずれも、試料7(被験物質の配合無し)と比較して泡が細かく、泡サイズの均一性が高かった。また、3分後では、試料7においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡が大半を占めたのに対して、試料8および試料9においては、当該試料の0分後と比較して、径の大きい泡が出現しているものの、細かい泡が比較的維持されていた。
【0076】
すなわち、中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を配合した市販品A~Cでは、泡が細かくなり、泡サイズの均一性が増すとともに、泡サイズの経時的変化が小さかった。この結果から、起泡性製剤に中糖化還元水飴、低糖化還元水飴および/またはそれらと同等の糖組成の水飴を配合することにより、当該起泡性製剤に含まれる界面活性剤の種類にかかわらず、泡の細かさ、泡サイズの均一性または泡の経時的安定性を向上できることが明らかになった。
【0077】
<実施例6>製品種別の検討
洗顔料、ハンドソープおよび洗髪料以外の起泡性製剤において、泡質の改善効果や泡の経時的安定性向上効果を確認した。具体的には、表11に示す市販の起泡性製剤(以下市販品D、Eという。)を用意した。市販品Dは、洗顔料とひげそりとを兼ねる製品であり、界面活性剤としてミリスチン酸塩(石けん系アニオン界面活性剤)およびラウリン酸塩(石けん系アニオン界面活性剤)を含有する。市販品Eは、クレンジング(メーク落とし)であり、界面活性剤としてココイルグリシン塩(アミノ酸系アニオン界面活性剤)、ヤシ脂肪酸塩(石けん系アニオン界面活性剤)、ラウリルベタイン(両性界面活性剤)、コカミドプロピルベタイン(両性界面活性剤)およびトリイソステアリン酸PEG-20グリセリル(ノニオン界面活性剤)を含有する。
【表11】
【0078】
市販品DおよびEのそれぞれに、外割で固形分濃度が10質量%の量の中糖化還元水飴、低糖化還元水飴または低糖化水飴を添加して混合し、試料1~4を作製した。それらの配合を表12に示す。試料1~4について、試験方法(4)により泡の拡大観察を行った。ただし観察は、泡作製直後(0分後)および2分後または3分後に行った。市販品Dの結果を図10に、市販品Eの結果を図11に、それぞれ示す。
【表12】
【0079】
図10に示すように、市販品Dの場合、0分後(泡作製直後)では、試料2(中糖化還元水飴を配合)、試料3(低糖化還元水飴を配合)および試料4(低糖化水飴を配合)のいずれも、試料1(被験物質の配合無し)と比較して泡が細かく、泡サイズの均一性が高かった。また、3分後では、試料1においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡が大半を占めたのに対して、試料2、試料3および試料4においては、当該試料の0分後と比較して、径の大きい泡が出現しているものの、細かい泡が比較的維持されていた。
【0080】
また、図11に示すように、市販品Eの場合も、0分後(泡作製直後)では、試料2(中糖化還元水飴を配合)、試料3(低糖化還元水飴を配合)および試料4(低糖化水飴を配合)のいずれも、試料1(被験物質の配合無し)と比較して泡が細かく、泡サイズの均一性が高かった。また、2分後では、試料1においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡が顕著に多くなったのに対して、試料2、試料3および試料4においては、当該試料の0分後と比較して、径が大きい泡の増加の程度が比較的小さかった。
【0081】
すなわち、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴または低糖化水飴を配合した市販品DおよびEでは、泡が細かくなり、泡サイズの均一性が増すとともに、泡サイズの経時的変化が小さかった。この結果から、起泡性製剤の製品種別にかかわらず、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴および/またはそれらと同等の糖組成の水飴を配合することにより、泡の細かさ、泡サイズの均一性または泡の経時的安定性を向上できることが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11