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  • 特開-雪庇発生防止装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002925
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】雪庇発生防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20221228BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
E04D13/00 A
E04H9/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103778
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000133319
【氏名又は名称】株式会社ダイケン
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴博
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA03
2E139AC19
2E139DA61
2E139DB03
2E139DB12
(57)【要約】
【課題】笠木の上面に雪が溜まらないようにすることで、笠木の変形などを防ぐことができる雪庇発生防止装置を提供する。
【解決手段】建造物のパラペット11上に設けられる笠木10の上部に設置される雪庇発生防止装置である。笠木10上面における建造物の外側部分を覆うように、かつ笠木10上面における建造物の内側部分は露出するように設けられ、建造物の内側に向けて下向きの傾斜面2bを備えた、雪庇発生軽減用部材2を有する。さらに、露出した笠木10上面部分を覆うように、雪庇発生軽減用部材2から笠木10にかけて設けられる、建造物の内側に向けて下向きの傾斜面4bを備えた雪溜まり防止材4を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物のパラペット上に設けられる笠木の上部に設置される雪庇発生防止装置であって、
笠木上面における建造物の外側部分を覆うように、かつ笠木上面における建造物の内側
部分は露出するように設けられる建造物の内側に向けて下向きの傾斜面を備えた雪庇発生軽減用部材と、
前記露出した笠木上面部分を覆うように、雪庇発生軽減用部材から笠木にかけて設けられる建造物の内側に向けて下向きの傾斜面を備えた雪溜まり防止材とを有することを特徴とする雪庇発生防止装置。
【請求項2】
雪庇発生軽減用部材よりも上方へと伸びた突起部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の雪庇発生防止装置。
【請求項3】
建造物のパラペット上に設けられる笠木の上部に設置される雪庇発生防止装置であって

笠木上面における建造物の外側部分を覆うように、かつ笠木上面における建造物の内側部分は露出するように設けられる建造物の内側に向けて下向きの傾斜面を備えた雪庇発生軽減用部材と、
前記露出した笠木上面部分を覆うように、雪庇発生軽減用部材から笠木にかけて設けられる建造物の内側に向けて下向きの傾斜面を備えた雪溜まり防止材と、
雪庇発生軽減用部材に取り付けられることと取り付けられないこととを選択することができる板状の突起部材とを有し、
突起部材は、雪庇発生軽減用部材に取り付けられたときに雪庇発生軽減用部材よりも上方へと伸びるものであり、
雪庇発生軽減用部材は、建造物の外側となる部分に他部材との連結部を有し、
突起部材は、雪庇発生軽減用部材に取り付けられるときに前記連結部に連結される第1の被連結部を有し、
雪溜まり防止材は、突起部材が雪庇発生軽減用部材に取り付けられないときに設けられる第1仕様品と、突起部材が雪庇発生軽減用部材に取り付けられるときに設けられる第2仕様品との2種類の仕様品が選択的に設けられるものであり、
第1仕様品は前記連結部に連結される第2の被連結部を備え、
第2仕様品は、前記第2の被連結部を備えない構成とされたうえで突起部材を避けた位置で雪庇発生軽減用部材に取り付けられるものであることを特徴とする雪庇発生防止装置。
【請求項4】
連結部は溝であり、第1および第2の被連結部はいずれも前記溝にはめ込まれるはめ込み部材であることを特徴とする請求項3記載の雪庇発生防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の屋上に設けられているパラペットの上面に笠木を介して設置される雪庇発生防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建造物の屋上の周囲に設けられるパラペットに設置される雪庇発生防止装置が知られている。この雪庇発生防止装置は、パラペット上を覆うように設けられる笠木を介して設置され、建造物内側に向けて下向きの傾斜面が備えられている。この傾斜面によって建造物内側から建造物外側にかけて吹く風の向きを上方へと誘導することができる。また、実験により確認されたところによると、傾斜面によって下方から上方へと誘導される風は、風速が増加する。風の向きを上方へ誘導し、その風速を増加させることで、風下側である建造物の外壁面で発生し雪庇発生の原因となる風の渦の位置を、建造物の外壁面から遠ざけることができる。こうすることで、屋上に溜まった雪によって雪庇が発生することを防ぐことができる。
【0003】
特許文献1には、傾斜面を風上に向けて設置される雪庇発生防止装置において、傾斜面が、水平面より45°~60°程度傾斜した下部傾斜板と、その上方に連続し水平面より75°~80°程度傾斜した上部傾斜板とからなる雪庇発生防止装置が記載されている。特許文献1の図2などを見ると、雪庇発生防止装置が笠木の上面全体を覆って設置されていることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3731124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、雪庇発生防止装置を設置する現場によっては、パラペットの幅が大きく、雪庇発生防止装置によって笠木の上面の建造物外側部分しか覆うことができない場合がある。このとき、雪庇発生防止装置によって覆われなかった笠木上面の建造物内側部分は、露出したままの状態となる。笠木の上面が露出していると、降雪時には笠木の上面に雪が溜まり、笠木の上面に溜まった雪の重量による負荷がかかることになる。笠木に負荷がかかることで、笠木自体が変形してしまうなどの恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、笠木の上面に雪が溜まらないようにし、笠木の変形などを防ぐことができる雪庇発生防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建造物のパラペット上に設けられる笠木の上部に設置される雪庇発生防止装置であって、笠木上面における建造物の外側部分を覆うように、かつ笠木上面における建造物の内側部分は露出するように設けられる建造物の内側に向けて下向きの傾斜面を備えた雪庇発生軽減用部材と、前記露出した笠木上面部分を覆うように、雪庇発生軽減用部材から笠木にかけて設けられる建造物の内側に向けて下向きの傾斜面を備えた雪溜まり防止材とを有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記手段によると、露出した笠木上面を覆うように雪溜まり防止材を設けることで、笠木上面に雪が溜まることを防ぐことができる。雪溜まり防止材は傾斜面を有することから、この傾斜面に沿って雪が滑り落ちることで、雪溜まり防止材自体にも雪は溜まらない。こうすることで、笠木上面に溜まった雪の重量分の負荷が笠木にかかることにより笠木が変形してしまうことを、防止することができる。
【0009】
また、雪溜まり防止材は建造物内側に向けて下向きの傾斜面を有していることから、建造物内側から建造物外側にかけて風が吹いた際、雪溜まり防止材の傾斜面によって風の向きを上方へと誘導するとともに、風速を増加させることができる。こうすることで、風下側である建造物の外壁面で発生し雪庇発生の原因となる風の渦の位置を、建造物の外壁面から遠ざけることができ、雪庇の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の雪庇発生防止装置を示す側面図
図2】実施例1の雪庇発生防止装置を示す斜視図
図3】実施例1の雪溜まり防止材の取付け方法を示す側面図
図4】実施例2の雪庇発生防止装置を示す側面図
図5】実施例2の雪庇発生防止装置を示す斜視図
図6】実施例2の突起部材の取付け方法を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
以下、図面に基づき、本発明を説明する。図1は雪庇発生防止装置の側面図であり、図2は、雪庇発生防止装置の斜視図である。
【0012】
雪庇発生防止装置1は、雪庇発生軽減用部材2と、雪溜まり防止材4とを有している。
【0013】
雪庇発生防止装置1は、建造物の屋上の周囲に設けられるパラペット11上を覆うようにして設けられている笠木10の上に設けられている。パラパット11と笠木10の間には、パラペット11に取り付けられるベース部材12が設けられており、このベース部材12によって笠木10をその下面の一部において支持している。笠木10上には、雪庇発生軽減用部材2を固定するためのブラケット14が設けられる。ブラケット14は、建造物外側にあり横方向に開口するように形成された嵌め合い溝14aと雪庇発生軽減用部材2の建造物外側下部にある嵌め合い部2cとが、横方向に嵌め合わされている。ブラケット14の建造物内側部分は、例えば雪庇発生軽減用部材2における建物内側部分の傾斜面2bの下部に形成された球状突起(図示しない)とブラケット14の建造物内側部分に形成された球状溝(図示しない)とがきつく嵌合し、ねじ15によって固定される。パラペット11とベース部材12と笠木10とブラケット14とは、例えばアンカーボルト13によって、固定される。
【0014】
雪庇発生軽減用部材2は、鉛直方向の外壁面2aと、上述の傾斜面2bとを備えて横断面三角形状に形成され、笠木10の上面における建造物の外側部分を覆うように、傾斜面2bを建造物内側に向けて設けられる。笠木10の上面における建造物の内側部分は、雪庇発生軽減用部材2によっては覆われない構造である。
【0015】
雪庇発生軽減用部材2における傾斜面2bの下部から笠木10の上面にかけて、雪庇発生軽減用部材2やブラケット14などに雨や溶けた雪などが入り込まないようにするための見切材16が設けられている。
【0016】
雪庇発生軽減用部材2における外壁面2aの上部には、外壁面2aに沿って横方向に溝17が形成されている。
【0017】
溝17は、雪庇発生軽減用部材2と雪溜まり防止材4とを連結させるために設けられるものであり、雪庇発生軽減用部材2の外壁面2aに、建造物内側に向けて横方向に溝空間を形成した部分と、この横方向に形成された溝空間に続いて下方向に溝空間を形成した部分とを有し、溝底としての下端部17aを備えたものである。
【0018】
以下、この実施例1における雪溜まり防止材4は、「第1仕様品」と称することがある。この第1仕様品である雪溜まり防止材4は、雪庇発生軽減用部材2の頂上部2dから笠木10における建造物内側部分にかけて設けられる板材によって構成されている。そして、この雪溜まり防止材4は、雪庇発生軽減用部材2の頂上部2dを超えた状態で溝17に嵌め込んで連結させるためのS字形に折れ曲がった被連結部4aと、建造物内側に向けて下向きとなる傾斜面4bとを備えており、笠木10の上面において雪庇発生軽減用部材2によって覆われていない部分を覆うように設けられる。詳細には、雪溜まり防止材4は、側面で見た際、雪庇発生軽減用部材2の頂上部2dで折り曲がっており、建造物外側に下方向に伸びた先に被連結部4aを備え、雪庇発生軽減用部材2の頂上部2dから笠木10の建造物内側の側面10aにかけて、傾斜面4bを備えている。被連結部4aと傾斜面4bとは分割されて形成されており、リベット18aによって被連結部4aと傾斜面4bとが結合される。
【0019】
雪溜まり防止材4を取付けた際の補強材として、笠木10の上面には、雪溜まり防止材4の長さ方向に沿い互いに間隔をあけて、複数の板状の雪溜まり防止材支持体3が設けられている。雪溜まり防止材支持体3は、折り曲げ部3a、3bを備えている。雪溜まり防止材支持体3の折り曲げ部3aは、笠木10の上面に沿って設けられており、図1に示すように折り曲げ部3aに形成されたねじ挿通穴19にねじ18を挿通させることで、雪溜まり防止材支持体3と笠木10とを固定する。また、雪溜まり防止材支持体3の折り曲げ部3bは、側面で見た際、雪溜まり防止材4と同じ角度で傾斜しており、雪溜まり防止材4の傾斜面4bに沿うように構成されている。折り曲げ部3bに形成されたねじ挿通孔19にねじ18を挿通させることで、雪溜まり防止材支持体3と雪溜まり防止材4とを固定する。これによって、笠木10と雪溜まり防止材支持体3と雪溜まり防止材4との三者が相互に固定されることになって、雪溜まり防止材4を補強することができる。図示の例では、雪溜まり防止材支持体3の位置縁の端面が雪庇発生軽減用部材2の傾斜面2bに接しており、このため雪溜まり防止材4は雪庇発生軽減用部材2によっても支持されて補強されている。
【0020】
雪溜まり防止材用小口蓋5は、板材にて構成されて笠木10の両端に設けられ、雪庇発生軽減用部材2の両端及び雪溜まり防止材支持体3に、ねじによって固定される。また、雪溜まり防止材用小口蓋5は、側面で見た際、雪溜まり防止材4の傾斜面4bと同じ傾斜角度になっている。
【0021】
このような構成において、雪溜まり防止材4が設けられていない場合、降雪時には、雪庇発生軽減用部材2に覆われていない笠木10における上面の領域に、雪21が溜まってしまう。この領域に雪21が溜まると、溜まった雪の重量分だけ笠木10に負荷がかかることになる。笠木10に負荷がかかることにより、笠木10の変形などが起こる恐れがある。
【0022】
その対策として、雪溜まり防止材4を設けて笠木10の上面平坦部の領域を覆うことにより、笠木10に雪21が溜まることを防ぎ、笠木10に負荷がかかることを防止する。その結果、笠木10が変形することなどを防止することができる。
【0023】
また、雪溜まり防止材4は建造物内側に向けて下向きの傾斜面4bを有しているため、建造物内側から建造物外側にかけて風が吹いた際、雪溜まり防止材4の傾斜面4bによって、風の向き22を上方へと誘導するとともに風速を増加させることができる。こうすることで、風下側の建造物外壁面で発生し雪庇の発生原因となる風の渦の位置を、建造物の外壁面から遠ざけることができ、雪庇の発生を防ぐことができる。以上のようにして、雪庇発生軽減用部材2に覆われていない笠木10の上面の領域を覆うことができるとともに、雪庇の発生を防止することができる。
【0024】
図3は、図1及び図2で示した雪庇発生防止装置において、雪溜まり防止材4を雪庇発生軽減用部材2に取付ける際の工程を示す側面図である。仮想線で示された雪溜まり防止材4は、雪庇発生軽減用部材2の外壁面2aに形成された溝17に、雪溜まり防止材4を取付ける前の位置であり、雪溜まり防止材4の頂上部を雪庇発生軽減用部材2の頂上部2dに被せる途中において雪溜まり防止材4を建造物外側へ傾けた状態である。矢印20aのように溝17に向かって雪溜まり防止材4の被連結部4aを移動させ、溝17の連結部である下端部17aに雪溜まり防止材4の被連結部4aを嵌め込んで連結させる。詳細には、雪溜まり防止材4の被連結部4aを溝17の下端部17aに軽く挿入した後、矢印20bのように下方向に向けて円弧を描くように雪溜まり防止材4を回転させていくことで、雪溜まり防止材4は矢印20cのように雪溜まり防止材支持体3へと近づく。雪溜まり防止材4の傾斜面4bを、雪溜まり防止材支持体3の折り曲げ部3bに接する位置まで移動させた後、ねじ18を用いて雪溜まり防止材4と雪溜まり防止材支持体3とを固定する。これにより、風や振動などの影響で、雪溜まり防止材4が外れてしまうことを防止することができる。また、以上のような取付け方法であるため、雪溜まり防止材4を設置する施行者は、建造物外側でのねじ締め作業が不要であり、建造物の内側(屋上側)から雪溜まり防止材4を取り付けることができるため、施工が容易である。
【0025】
本実施例では、雪溜まり防止材4は、被連結部4aと傾斜面4bとが分割されており、これらをリベット18aによって結合する構成としたが、被連結部4aと傾斜面4bとが一体に形成されていてもよい。また、雪溜まり防止材4は、溝17で連結したが、溝17ではなく、雪庇発生軽減用部材2と笠木10との両方に直接ねじにより固定するなど、任意の固定方法で固定してもよい。
【実施例0026】
図4は、板状の突起部材6が雪庇発生軽減用部材2に取付けられた雪庇発生防止装置の側面図であり、図5図4で示した雪庇発生防止装置の斜視図である。
【0027】
雪庇発生防止装置1の基本的な構成については、実施例1で示した雪庇発生防止装置と同じであるため、主として実施例1と異なる部分を以下に記載する。
【0028】
雪庇発生防止装置1は、実施例1のものとは構成が相違する雪溜まり防止材4(以下、「第2仕様品」と称することがある)と、突起部材6とを有している。第2仕様品である雪溜まり防止材4は、前述の第1仕様品である雪溜まり防止材4に代えて用いられる。すなわち、両雪溜まり防止材4は、いずれか一方が選択的に設置される。
【0029】
突起部材6は、雪庇発生軽減用部材2の頂上部2dから、この頂上部2dよりもさらに上方へ突出するように設けられるものである。この突起部材6は、板状体により構成されるとともに、その下部が側面視にて二股状となるように形成されている。そして突起部材6は、この二股状の部分に、溝17と連結させるための被連結部6aと、雪庇発生軽減用部材2の傾斜面2bと固定するための傾斜部6bとを備える。突起部材6を取付けることにより、雪庇発生防止装置1の高さを稼ぐことができる。
【0030】
第2仕様品である雪溜まり防止材4は、突起部材6が雪庇発生軽減用部材2に取付けられる際に設けられるものであり、実施例1で示した第1仕様品の雪溜まり防止材4とは形状、構造が異なるものである。すなわち、雪溜まり防止材4は、その上端部4dが、雪庇発生軽減用部材2の傾斜面2bに沿うように折れ曲がった形状とされたうえで、突起部材6を避けた位置で、傾斜面2bにねじにて固定されている。そうすることで、雪庇発生軽減用部材2の傾斜面2bと突起部材6の建造物内側の面とが連続的な面を形成するように構成されている。第2仕様品である雪溜まり防止材4は、第1仕様品である雪溜まり防止材4と同様に、笠木10に雪が溜まることを防ぎ、笠木10に負荷がかかることを防止して、笠木10が変形することなどを防止することができる。
【0031】
図4に示すように突起部材6の高さまで雪22aが溜まった場合、建造物内側から建造物外側にかけて弱い風が吹くと、突起部材6を超えて建造物外側に小さな雪庇23が発生する。しかし、突起部材6の傾斜部6bの方向20f及び雪溜まり防止材4の傾斜面4bの方向20gに沿って、溜まった雪の(圧密)沈下現象が矢印20hの方向へ起こる。そうすると、溜まった雪の体積が減少して図示した雪22bの位置まで雪の高さが減少するため、小さな雪庇23は切れて建造物外側へ落下する。このため、予め想定した降雪量や積雪量を超えてしまった場合でも、大きな雪庇の発生を防ぐことができる。
【0032】
図6は、図4及び図5で示した雪庇発生防止装置の側面断面図であり、突起部材6を雪庇発生軽減用部材2に取付ける際の工程を示している。雪庇発生軽減用部材2の上部において、突起部材6の被連結部6aは建造物外側部分に、傾斜部6bは建造物内側になるように位置させる。図6(a)に示す矢印20dのように下方向へ突起部材6を移動させる。そして、突起部材6の被連結部6aを、雪庇発生軽減用部材2に沿って、図6(b)に示す矢印20eのように溝17へと移動させる。さらに、図6(c)に示すように突起部材6の被連結部6aを、雪庇発生軽減用部材2の溝17にはめ込み、突起部材6の傾斜部6bに設けられたねじ挿通穴19にねじ18を挿通させることにより、突起部材6と雪庇発生軽減用部材2とを固定する。つまり、突起部材6は、建造物外側の被連結部6aは溝17に嵌め込まれて連結され、建造物内側は雪庇発生軽減用部材2の傾斜面2bにねじ19によって固定される。これにより、風や振動などの影響で、突起部材6が外れてしまうことを防止することができる。また、以上のような取付け方法であるため、突起部材6を取り付ける施行者は、建造物の内側(屋上側)から突起部材6を取り付けることができ、建造物外側に足場などを組んで取付ける必要が無いため、取付けが容易である。
【0033】
実施例1及び実施例2で示した発明は、雪庇発生軽減用部材2に設けられた溝17を共通として、雪庇発生防止装置1の使用者又は施行者が、突起部材6は設けずに第1仕様品である雪溜まり防止材4だけを設けるか、突起部材6と第2仕様品である雪溜まり防止材4とを設けるか、を選択することができるものである。具体的には、実施例1で示した第1仕様品の雪溜まり防止材4を雪庇発生軽減用部材2の溝17に設けるときは、突起部材6は設けられない。突起部材6を雪庇発生軽減用部材2の溝17に設けるときは、被連結部4aの代わりに折り曲げ構造の上端部4dを備えた第2仕様品の雪溜まり防止材4を用い、雪庇発生軽減用部材2の傾斜面2bに、第2仕様品の雪溜まり防止材4の上端部4dを固定する。以上のように、雪庇発生軽減用部材2に設けられた溝17を共通の部材として、2通りの装置を選択することができるため、大がかりな工事などを要することなく、容易にどちらかの雪庇発生防止装置を選択し、設置することができる。
【0034】
雪溜まり防止材4は、ねじ18などによって、笠木10の側面や上面に任意の固定手段によって取付けてもよい。すなわち、雪溜まり防止材4を取り付けるための手段は、任意とすることができる。他の部材の取り付け構造についても同様である。
【0035】
実施例1及び実施例2の図1図4などで示した雪庇発生軽減用部材2は、一体的な三角形構造すなわち一段で形成されるものを示したが、雪庇発生軽減用部材2は、上下に分割した二段や三段、それ以上の段を組み合せて形成されたものでもよい。
【0036】
実施例1や実施例2で示した雪庇発生軽減用部材2、雪溜まり防止材支持体3、雪溜まり防止材4、雪溜まり防止材用小口蓋5、突起部材6などは、アルミ材にて形成されることが好適であるが、他の金属や非金属にて形成されてもよい。これらの部材は、アルミ押出形材であることが好適であるが、これに限定されず、任意の加工方法によって形成されてもよい。また、これらの部材にはアルマイトクリアやフッ素塗装などの表面処理がされていてもよい。
【0037】
実施例1及び実施例2では、雪庇発生軽減用部材2に設けられた溝17を共通として、突起部材6は設けずに第1仕様品である雪溜まり防止材4と溝17とを連結させるか、突起部材6を溝17と連結させて第2仕様品である雪溜まり防止材4を設けるかを選択できることを記載した。しかし、これらの連結構造は、図示したものに限られるものではなく、その他の任意の連結構造を採用することができる。そのときに、上記したように第1仕様品の雪溜まり防止材4と突起部材6とについて共通の連結構造を用いることができれば、施工性が良好になるなどの点で好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 雪庇発生防止装置
2 雪庇発生軽減用部材
3 雪溜まり防止材支持体
4 雪溜まり防止材
5 雪溜まり防止材用小口蓋
6 突起部材
10 笠木
11 パラペット
12 ベース部材
13 アンカーボルト
14 ブラケット
15 ねじ
16 見切り材
17 溝
18 ねじ
19 ねじ挿通穴
21 領域
23 雪庇
図1
図2
図3
図4
図5
図6