(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002926
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】籾殻を用いるシリカ製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20221228BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20221228BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C01B33/18 B
C10B53/02
F23G5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103779
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】308030570
【氏名又は名称】株式会社エム・アイ・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
【テーマコード(参考)】
4G072
4H012
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072GG04
4G072HH39
4G072HH40
4G072JJ03
4G072MM28
4G072MM36
4G072UU08
4G072UU30
4H012JA08
4H012JA12
(57)【要約】
【課題】炭化籾殻を原料としてシリカを製造する籾殻を利用するシリカ製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の籾殻を利用するシリカ製造装置は、炭化した籾殻である炭化籾殻を供給する籾殻供給部と、前記籾殻供給部から供給された前記炭化籾殻を搬送する搬送部と、前記搬送部内部に設けられ、前記炭化籾殻と接触して、前記炭化籾殻を燃焼させる燃焼部と、前記燃焼部と近接しつつ離隔した特定部位に空気を吹き付ける空気供給部と、前記搬送部で炭化籾殻が燃焼することにより生じる燃焼灰をシリカとして回収する回収部を、備え、前記特定部位に空気が吹き付けられることで、前記燃焼部からの熱と相まって、前記炭化籾殻を赤化燃焼させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化した籾殻である炭化籾殻を供給する籾殻供給部と、
前記籾殻供給部から供給された前記炭化籾殻を搬送する搬送部と、
前記搬送部内部に設けられ、前記炭化籾殻と接触して、前記炭化籾殻を燃焼させる燃焼部と、
前記燃焼部と近接しつつ離隔した特定部位に空気を吹き付ける空気供給部と、
前記搬送部で炭化籾殻が燃焼することにより生じる燃焼灰をシリカとして回収する回収部を、備え、
前記特定部位に空気が吹き付けられることで、前記燃焼部からの熱と相まって、前記炭化籾殻を赤化燃焼させる、籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項2】
前記燃焼部は、前記搬送部内部の略全体に渡って備わり、搬送される前記炭化籾殻に熱を付与する、請求項1記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項3】
前記燃焼部は、前記搬送部内部で搬送される前記炭化籾殻と、直接的に接触して熱を付与する、請求項1または2記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項4】
前記燃焼部は、800℃以下の熱を付与する、請求項1から3のいずれか記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項5】
前記燃焼部は、700℃以上750℃以下の熱を付与する、請求項4記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項6】
前記燃焼部は、単数又は複数の筒状の燃焼ヒーターを有し、
前記燃焼ヒーターは、前記搬送部内部の搬送方向に沿って設置される、請求項1から5のいずれか記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項7】
前記空気供給部は、前記特定部位に空気を供給することで、前記燃焼部からの燃焼熱を受けた前記炭化籾殻へ必要な熱および酸素が供給されて、前記炭化籾殻が赤化燃焼できる、請求項1から6のいずれか記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項8】
前記搬送部は、略垂直方向の第1搬送部と、前記第1搬送部に接続する略水平方向の第2搬送部とを含む、請求項1から7のいずれか記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項9】
前記搬送部は、前記炭化籾殻を回転させながら搬送する、請求項1から8のいずれか記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項10】
前記回収部において、前記燃焼灰をふるうフィルターを更に備える、請求項1から9のいずれか記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【請求項11】
前記空気供給部は、過酸化空気を供給する、請求項1から10のいずれか記載の籾殻を利用するシリカ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は籾殻を用いて、籾殻からシリカを得る籾殻を用いるシリカ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国を始めとしてアジアや中南米など、様々な国で稲作が行われている。稲作においては、稲穂が実って収穫されると、米を得る工程で大量の籾殻が発生する。いわゆる脱穀作業において、大量の籾殻が発生する。過去においては、田んぼにおいてこの籾殻を集めて焚火をしていた。この焚火は、弱い火でゆっくりと燃やすものである。
【0003】
このように集められた籾殻のゆっくりとした燃焼による焚火により、籾殻は炭化してやがて灰化する。この灰は、燃焼成分を失った状態であり、シリカが主成分となっている。シリカは、土壌改質に適しており、稲作を始めとした農業において、よりよい土壌を得るための土壌改質剤として使用される。田んぼで集められた籾殻のゆっくりとした燃焼によって得られる灰を、田んぼや畑にまくことで、そのままシリカによる土壌改質が行われていた。
【0004】
過去においては、このように田んぼから得られる籾殻を、そのまま田んぼで燃焼させてシリカを得ていた。更に、得られたシリカをそのまま田んぼや畑に使用するという循環が出来上がっていた。
【0005】
シリカを含んだ土壌で育成される稲は、稲穂が実っても茎が折れない強さを発揮でき、強い稲と収穫効率の向上を実現できる。また、シリカを含む土壌で育成された稲や農産物は、食することで人体によい影響を与える。ミネラル分を摂取することができるからである。
【0006】
しかしながら、近年では、田んぼ内において集めた籾殻をゆっくりと燃やす作業を行うことが難しくなっている。一つには、脱穀により生じる籾殻を集めて、田んぼのいずれかの場所に集積させる作業の負担が大きいことである。特に、近年の農業従事者の減少や高齢化に伴い、このような作業は難しくなっている。
【0007】
また、集めた籾殻を数日にわたって燃焼させる作業管理なども、負担が大きい。
【0008】
更に、近年では消防法などの厳格化により、田んぼにおいて大量の籾殻を燃やすことも難しい側面もある。特に田んぼの周辺に住宅や商業施設、交通施設などがあることも多く、これらへの安全対策から籾殻の燃焼が規制されることもある。勿論、規制とまでいかなくても、これらの施設からのクレームにより、田んぼで燃焼をさせることが難しいこともある。
【0009】
一方で、わが国では米の消費量は落ちているが、国の政策もあって米の生産量は一定の量を維持している。このため、籾殻の発生は続いている。このため、稲作で発生する籾殻の処理が必要である状態には変わりない。
【0010】
このような状況で、籾殻を燃焼させる技術についての提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2020-184981号公報
【特許文献2】国際公開WO2019/171466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1は、もみ殻を酸化燃焼してもみ殻灰を生成させる焼却炉において、該焼却炉に温度検出装置を設け供給する酸化用空気量を制御することにより、もみ殻灰を所定の温度以下で生成させることにより大きい比表面積を有するもみ殻灰を製造し、製造した該もみ殻灰を既存の食品ならびに、ペット、家畜、養殖魚の飼料に添加し利用する籾殻灰の製造方法を、開示する。
【0013】
特許文献2は、籾殻を燃焼させる燃焼室と、燃焼室内に設けられ、燃焼させる籾殻を表面に載置可能であり表面と裏面の間を貫通する複数の孔を有する燃焼板と、燃焼板の裏面から燃焼板の孔を通過させて燃焼室の内部に空気を供給する空気供給部と、籾殻を燃焼板の上に導入する籾殻導入部と、燃焼板の上に設けられるレーキと、燃焼板またはレーキの少なくともいずれか一方を回転駆動する駆動部と、燃焼板の外方に設けられ、籾殻を排出する排出部と、を備え、レーキは、燃焼板の表面から垂直に伸びる軸部と、軸部に支持され燃焼板の表面に沿って延びる支持部と、それぞれ支持部に支持され、燃焼板の上で燃焼させた籾殻の灰を燃焼板の外方に移動させる第1レーキ部、第1レーキ部が灰を移動させた箇所に籾殻導入部から導入された籾殻を移動する第2レーキ部、第2レーキ部が移動させた籾殻を燃焼板の上で接触する第3レーキ部、及び第1レーキ部により燃焼板の外方に排出された灰を排出部に移動する第4レーキ部を備える籾殻燃焼装置を開示する。
【0014】
特許文献1,2のいずれも、籾殻をそのまま燃焼させて燃焼灰を得る技術を開示する。
【0015】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、籾殻を直接燃焼させて燃焼灰を得る構成となっている。籾殻には、燃焼成分、油分、炭素成分などの種々の成分が含まれた状態である。これを直接燃やして灰まで至らせることは、非常に負荷が大きい処理となる問題がある。
【0016】
また、油分や燃焼成分が多く残った状態をスタートとすることで、タールや煙などが多く発生して、装置自体の不具合につながったり、周囲への環境負荷に繋がったりする問題もある。また、装置の不具合や処理負荷の大きさから、燃焼成分や炭素成分がきちんと抜けた灰を得ることが難しい問題がある。
【0017】
単純に灰だけをえるだけならば対応は可能であるかも知れないが、土壌改質剤やその他の用途に適したシリカを得るのには、不十分である。
【0018】
また、特許文献1,2は、燃焼装置と酸素供給を行うことについての開示はあるが、これらの具体的な構成は開示がない。燃焼装置と酸素供給があれば、もちろん籾殻を燃焼させることは可能であるが、灰を得るのに十分な燃焼ができるとは限らない。燃焼不足となって、得られる燃焼灰には、未だ燃焼成分や炭素成分が残ったままになる問題もある。あるいは、油分が残ったままの状態となる問題もある。
【0019】
このように、従来技術での燃焼では、籾殻の燃焼が不十分となって、シリカとしての利用が可能な燃焼灰が得られない問題があった。また、この問題に並列して、装置の複雑化や装置の不具合発生などもありえる。すなわち、装置のメンテンナンス負荷の増大という問題も生じうる。
【0020】
本発明は、上記の課題に鑑み、炭化籾殻を原料としてシリカを製造する籾殻を利用するシリカ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の籾殻を利用するシリカ製造装置は、炭化した籾殻である炭化籾殻を供給する籾殻供給部と、
前記籾殻供給部から供給された前記炭化籾殻を搬送する搬送部と、
前記搬送部内部に設けられ、前記炭化籾殻と接触して、前記炭化籾殻を燃焼させる燃焼部と、
前記燃焼部と近接しつつ離隔した特定部位に空気を吹き付ける空気供給部と、
前記搬送部で炭化籾殻が燃焼することにより生じる燃焼灰をシリカとして回収する回収部を、備え、
前記特定部位に空気が吹き付けられることで、前記燃焼部からの熱と相まって、前記炭化籾殻を赤化燃焼させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の籾殻を利用するシリカ製造装置は、炭化された籾殻を適切に燃焼させることで、油分、燃焼成分、炭素成分などを十分に除去した燃焼灰を得ることができる。この燃焼灰は、純度や精度の高いシリカとして利用できる。
【0023】
炭化された籾殻が、十分に赤化する燃焼を受けることで、いわゆる炭が燃焼する状態となる。この燃焼を通じて、炭化籾殻の燃焼成分や炭素成分が十分に除去される。除去によって、純度の高いシリカが得られる。
【0024】
この籾殻を利用するシリカ製造装置で得られるシリカは、その純度や精度が高いことで、土壌改質剤やその他の工業用途に好適に利用できる。結果として、稲作の工程で生じる籾殻の有効活用ができ、稲作に係る環境負荷をトータルで低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態1における籾殻を利用するシリカ製造装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態1におけるシリカ製造装置での特定部位を説明する説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態1におけるシリカ製造装置での特定部位を説明する説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における燃焼部の模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態2における籾殻を利用するシリカ製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置は、炭化した籾殻である炭化籾殻を供給する籾殻供給部と、
前記籾殻供給部から供給された前記炭化籾殻を搬送する搬送部と、
前記搬送部内部に設けられ、前記炭化籾殻と接触して、前記炭化籾殻を燃焼させる燃焼部と、
前記燃焼部と近接しつつ離隔した特定部位に空気を吹き付ける空気供給部と、
前記搬送部で炭化籾殻が燃焼することにより生じる燃焼灰をシリカとして回収する回収部を、備え、
前記特定部位に空気が吹き付けられることで、前記燃焼部からの熱と相まって、前記炭化籾殻を赤化燃焼させる。
【0027】
この構成により、炭化籾殻を確実に燃焼させて、燃焼成分などが除去された燃焼灰を得ることができる。結果として、精度の高いシリカを製造できる。
【0028】
本発明の第2の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1の発明に加えて、前記燃焼部は、前記搬送部内部の略全体に渡って備わり、搬送される前記炭化籾殻に熱を付与する。
【0029】
この構成により、十分な時間をもって燃焼させられる。これにより、投入された炭化籾殻の全量がが、確実に燃焼する。
【0030】
本発明の第3の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1または第2の発明に加えて、前記燃焼部は、前記搬送部内部で搬送される前記炭化籾殻と、直接的に接触して熱を付与する。
【0031】
この構成により、空気の吹き付けと相まって、燃焼部は、確実に炭化籾殻を燃焼させることができる。
【0032】
本発明の第4の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記燃焼部は、800℃以下の熱を付与する。
【0033】
この構成により、燃焼には十分でありつつ、タールなどの発生を抑える燃焼を行える。
【0034】
本発明の第5の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第4の発明に加えて、前記燃焼部は、700℃以上750℃以下の熱を付与する。
【0035】
この構成により、燃焼には十分でありつつ、タールなどの発生を抑える燃焼を行える。
【0036】
本発明の第6の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、前記燃焼部は、単数又は複数の筒状の燃焼ヒーターを有し、
前記燃焼ヒーターは、前記搬送部内部の搬送方向に沿って設置される。
【0037】
この構成により、搬送方向に搬送される炭化籾殻には、ずっと燃が加えられる。結果として、搬送全体で燃焼が進む。
【0038】
本発明の第7の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記空気供給部は、前記特定部位に空気を供給することで、前記燃焼部からの燃焼熱を受けた前記炭化籾殻へ必要な熱および酸素が供給されて、前記炭化籾殻が赤化燃焼できる。
【0039】
この構成により、炭化籾殻は、燃焼して燃焼灰となる。結果として、精度の高いシリカが製造される。
【0040】
本発明の第8の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記搬送部は、略垂直方向の第1搬送部と、前記第1搬送部に接続する略水平方向の第2搬送部とを含む。
【0041】
この構成により、装置の小型化や炭化籾殻の確実な燃焼を実現できる。
【0042】
本発明の第9の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、前記搬送部は、前記炭化籾殻を回転させながら搬送する。
【0043】
この構成により、炭化籾殻の燃焼効率を高めることができる。
【0044】
本発明の第10の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、前記回収部において、前記燃焼灰をふるうフィルターを更に備える。
【0045】
この構成により、純度の高いシリカを得ることができる。
【0046】
本発明の第11の発明に係る籾殻を利用するシリカ製造装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、前記空気供給部は、過酸化空気を供給する。
【0047】
この構成により、燃焼能力を更に高めることができる。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0049】
(実施の形態1)
【0050】
(全体概要)
まず、本発明の実施の形態1における籾殻を利用するシリカ製造装置(以下、必要に応じて「シリカ製造装置」と略す)の全体概要について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における籾殻を利用するシリカ製造装置の模式図である。
図2、
図3は、本発明の実施の形態1におけるシリカ製造装置での特定部位を説明する説明図である。
【0051】
籾殻を利用するシリカ製造装置1は、籾殻供給部2、搬送部3,燃焼部4、空気供給部5、回収部6と、を備える。さらに、空気供給部5に実際の空気を送り出す空気タンク7、回収部6で回収されたシリカを収容するシリカ回収容器8を備える。なお、空気タンク7は、空気を送り込むブロワーの機能を含んでいることも好適である。
【0052】
籾殻供給部2は、炭化した籾殻である炭化籾殻100を搬送部3内部に供給する。例えば、ホッパーやサイロのような機構を持つことで、炭化籾殻100を、供給できればよい。また、供給量や供給時間などを適宜コントロールできることも好適である。単位時間当たりの供給量を制御できることもよい。
【0053】
炭化籾殻100は、田んぼなどから生じた籾殻を、別途の燃焼装置などで炭化させて得られる。籾殻供給部2の前段に、籾殻の炭化装置が備わっていてもよい。その炭化装置から出力される炭化籾殻100が、籾殻供給部2に入ってくればよい。
【0054】
こうすることで、籾殻の炭化からシリカの製造までが一連に実行できる。
【0055】
搬送部3は、籾殻供給部2から供給された炭化籾殻100を搬送する。搬送は、燃焼部4による燃焼を行う方向への搬送である。搬送部3で搬送されながら、炭化籾殻100は燃焼部4と接触する。この燃焼部4との接触により、炭化籾殻100は燃焼する。搬送部3での搬送に並行して燃焼部4と接触し続ける。この接触し続けることで、供給された炭化籾殻100は、最後まで燃焼される。
【0056】
このため、搬送部3は、燃焼部4による炭化籾殻100の灰化までの確実な燃焼に必要な長さを持っていることが好ましい。これは、供給される炭化籾殻100の量(単位時間に供給される炭化籾殻100の量)や燃焼部4の能力や大きさなどとの関係からも、定められる。
【0057】
搬送部3は、炭化籾殻100を回収部6に向けて搬送する。この搬送の過程で、燃焼部4によって、炭化籾殻100は燃焼する。燃焼によって炭化籾殻100は灰化する。
【0058】
燃焼部4は、搬送部3内部に設けられる。燃焼部4は、熱を発生する機能を有する。この燃焼部4は、搬送部3内部を搬送される炭化籾殻100と直接的に接触可能である。すなわち、炭化籾殻100と接触しながら、炭化籾殻100に熱を加えることができる。
【0059】
空気供給部5は、搬送部3の内部であって、燃焼部4と近接しつつ離隔した特定部位51に空気を吹き付ける。
図2,
図3に示されるように、特定部位51は、燃焼部4と近接しつつ離隔した位置である。また、燃焼部4に接触する炭化籾殻100と燃焼部4との近接する間の位置でもある。
【0060】
このような特定部位51に空気が吹き付けられることで、燃焼物4からの熱と相まって、炭化籾殻100は、赤化燃焼する。燃焼部4からの熱および空気の吹き付けが合わさることで、炭化籾殻100が炎を上げるように赤化して燃焼する。すなわち、炭が赤くなって燃えるように、炭化籾殻100が燃焼する。
【0061】
ここで、燃焼部4に直接空気が吹き付けられるよりも、そこから近接して離隔した特定部位51に空気が吹き付けられる方が、燃焼部4に接触する炭化籾殻100を赤化燃焼させやすい。燃焼部4から炭化籾殻100に伝わる熱が、燃焼部4と離隔した位置である特定部位51に空気付与されることで、より高い熱となって、燃焼を促すからである。
【0062】
いわゆる、炭を燃やす場合のふいごと同じような状態である。
【0063】
このような赤化燃焼が行われることで、炭化籾殻100は、確実に燃焼させられる。この燃焼が、搬送部3の内部で続くことで、供給された炭化籾殻100は、完全燃焼されて灰化する。
【0064】
この灰化した燃焼灰が、回収部6で回収される。この燃焼灰は、炭素成分、油分、燃焼成分が燃焼で除去された状態であり、高精度なシリカとなっている。
【0065】
回収部6は、このシリカを回収することになる。このようにして、炭化籾殻100から、確実かつ品質の良いシリカを製造することができる。
【0066】
次に、各部の詳細について説明する。
【0067】
(搬送部)
搬送部3は、内部空間を有する部材である。入口においては、炭化籾殻100が供給される籾殻供給部2が接続する。また、出口においては、シリカとなる燃焼灰を回収する回収部6が繋がっている。
【0068】
搬送部3の内部空間には、籾殻供給部2から炭化籾殻100が供給される。内部空間においては、この炭化籾殻100が搬送される。例えば、内部空間には、コンベアベルトが備わり、これにより、搬送部3は、炭化籾殻100を搬送する。
【0069】
また、搬送部3に供給される炭化籾殻100は、内部空間を充填するくらいの量が供給されることでもよい。充填するくらいの量が供給されることで、炭化籾殻100は、内部空間に備わる燃焼部4との接触を生じさせやすくなる。接触が生じると、上述した空気供給と併せて、燃焼部4は、効果的に炭化籾殻100を燃焼させることができるからである。
【0070】
燃焼部4は、搬送部3内部に備わる。このとき、搬送部3の内部空間の内面の多くの場所に備わっていてもよい。また、搬送部3は、内部で炭化籾殻100の燃焼が行われるので、耐熱性や耐久性に優れた素材で構成されることもよい。
【0071】
(燃焼部)
燃焼部4は、搬送部3の内部に備わる。熱を発生させる機能を有し、この発生させる熱により、内部空間にある炭化籾殻100を燃焼させる。燃焼部4は、熱源であって、電気、火炎、その他の手段により熱を生じさせる。この生じさせた熱を、炭化籾殻100に付与する。
【0072】
この熱の付与によって、炭化籾殻100を燃焼させる。上述したように空気供給部5での空気吹付と相まって、燃焼部4からの熱は、炭化籾殻100を燃焼させる。
【0073】
ここで、燃焼部4は、搬送部3内部の略全体に渡って備わることも好適である。
図1では、燃焼部4は、搬送部3の内部空間の略全体に渡って備わっている。このように、略全体に渡って備わることで、搬送部3内部を搬送される炭化籾殻100に、その時間に渡って熱を付与することができる。すなわち、搬送部3の内部空間を移動する時間において、炭化籾殻100は、燃焼する。
【0074】
燃焼部4は、搬送部3内部で炭化籾殻100と直接的に接触して熱を付与する。
図2,
図3には、この状態が示されている。燃焼部4と、炭化籾殻100とが直接的に接触することおよび特定部位51に空気が吹き付けられることで、炭化籾殻100は、いわゆる炎を上げるような燃焼である赤化燃焼を行える。
【0075】
この赤化燃焼が燃焼部4の全体で行われ、また搬送部3を移動する過程の全体で行われる。これにより、供給された炭化籾殻100は、搬送の過程で確実に燃焼させられる。この燃焼の結果、燃焼成分、油分、炭素成分などが除去された燃焼灰が生成される。
【0076】
燃焼部3は、800℃以下の熱を、燃焼熱として付与することも好適である。この温度の燃焼熱であることで、炭化籾殻100を確実に赤化燃焼できる。併せて、高熱過ぎないことで、タールなどの発生を防止でき、適切な量の燃焼灰を生成することができる。
【0077】
また、燃焼部4は、700℃以上750℃以下の熱を付与することも好適である。この温度範囲であることで、炭化籾殻100の確実な赤化燃焼を実現することができる。併せて燃焼灰を確実に生成できる。この温度範囲であることで、燃焼効率の確実性を更に高めることができる。
【0078】
また、上述したように、この燃焼部4と近接しつつ離隔した特定部位51に空気が吹き付けられる。この吹き付けにより、燃焼部4からの熱を受けた炭化籾殻100は、赤化燃焼する。この赤化燃焼が搬送部3の全体で行われることで、炭化籾殻100は、確実に灰化する。
【0079】
また、
図4に示されるように、燃焼部4は、単数又は複数の筒状の燃焼ヒーター41を有することも好適である。
図4は、本発明の実施の形態1における燃焼部の模式図である。
図1のように、この燃焼ヒーター―41は、搬送部3内部の搬送方向に沿って設置されればよい。搬送方向に沿って設置されることで、搬送部3を搬送される炭化籾殻100が、常態的に燃焼部4(燃焼ヒーター41)に接触できるようになる。
【0080】
搬送方向に沿って、燃焼部4(燃焼ヒーター41)が、存在する状態となるからである。
【0081】
また、複数の燃焼ヒーター41が搬送部3内部に備わることで、炭化籾殻100の多くの部位に接触しやすくなる。これにより、炭化籾殻100の確実な燃焼が実現できる。例えば、搬送部3内部に沿って2本あるいは3本などの燃焼ヒーター41が備わる場合には、搬送される炭化籾殻100は、常にこれらのいずれかに接触する。
【0082】
このいずれかの接触がより多く生じることで、燃焼部4によって炭化籾殻100は、燃焼を促進される。また、供給された炭化籾殻100は、そのほとんどにおいて燃焼部4との接触を行えるので、供給された炭化籾殻100は、満遍なく燃焼される。
【0083】
また、複数の燃焼ヒーター41が備わることで、搬送部3内部全体の熱を満遍なく上昇させることができる。また、空気供給部5による空気供給も、燃焼ヒーター41のそれぞれにおいて行われる。これも相まって、供給された炭化籾殻100は、搬送過程において、十分に燃焼させられる。
【0084】
この燃焼によって、品質や精度の高いシリカを最終的に得ることができる。
【0085】
(空気供給部)
空気供給部5は、
図2,
図3などで説明するように、特定部位51に空気を供給する。特定部位51は、燃焼部4に直接空気が吹き付けられる場所ではなく、これから離隔しつつ近接している場所である。このように少し離れた場所である特定部位51に空気が吹き付けられることで、燃焼部4と接触する炭化籾殻100が赤化燃焼する。
【0086】
燃焼部4に直接的ではなく、その熱が伝わって燃えようとしている炭化籾殻100との間に空気が吹き付けられる。この吹き付けにより、炭化籾殻100の赤化燃焼が実現される。実際に燃焼しようとしている部分でありかつ燃焼部4からの熱が伝わる部分に空気が吹き付けられることが、燃焼をより促すことができる。
【0087】
空気供給部5は、
図1のように、搬送部3において複数の個所に設けられてもよい。複数の個所に設けられることで、搬送部3内部での燃焼効率を、全体において実現できる。また、搬送部3に沿って複数設けられることに加えて、燃焼部4の周囲に複数設けられることもよい。
【0088】
このような形態で空気供給部5が備わることで、搬送部3内部で燃焼部4での様々な場所での燃焼が広く生じる。広く生じることで、搬送されながら、炭化籾殻100は、次々と赤化燃焼する。これにより、搬送部3を搬送されながら、炭化籾殻100は、燃焼灰となっていく。
【0089】
結果として、精度の高いシリカが製造される。
【0090】
図1に示されるように、空気供給部5には、空気タンク7が接続されていることも好適である。空気タンク7が、空気供給部5からの空気の吹き付けを制御することもよい。また、空気の吹き付け圧力を制御することで、空気供給部5からの空気吹付の圧力や量を高めることもよい。高めることで、炭化籾殻100の赤化燃焼を高めることができる。
【0091】
また、空気タンク7にポンプが備わっており、外部空気をポンプで出力して、空気供給部5から空気を特定部位51に供給することもよい。ポンプによる空気供給が繰り返されることで、燃焼効率が促進される。
【0092】
もちろん、空気タンク7はなく、空気供給部5が外部と連通しているだけでもよい。空気供給部5は、特定部位51に向けて空気を吹き付け可能な貫通筒(搬送部3を貫通する)であってもよい。このような貫通筒であれば、外部からの空気を搬送部3内部に供給させることができる。
【0093】
空気供給部5による空気供給が相まって、燃焼部4による炭化籾殻100の赤化燃焼が確実に行われる。これにより、炭化籾殻100が完全燃焼され、油分、燃焼成分、炭素成分などが十分に除去された燃焼灰が得られる。
【0094】
回収部6は、この燃焼灰をシリカとして回収する。この回収を通じて、シリカを製造することができる。
【0095】
(実施の形態2)
【0096】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2は、バリエーションなどについて説明する。
【0097】
(第1搬送部と第2搬送部)
図5は、本発明の実施の形態2における籾殻を利用するシリカ製造装置の模式図である。搬送部3は、第1搬送部31と第2搬送部32とを備えることも好適である。第1搬送部31は、略垂直方向に沿っており、第2搬送部32は、略水平方向に沿っている。
【0098】
搬送部3が、方向の異なる第1搬送部31と第2搬送部32とに分かれていることで、シリカ製造装置1の全体を小型化することができる。また、略垂直方向の搬送部31での搬送とこれに伴う炭化籾殻100の燃焼、略水平方向の搬送部32での搬送とこれにともなう炭化籾殻100の燃焼、とが、混在する。これにより、搬送される炭化籾殻100の攪拌効果も生じて、より確実な燃焼がなされる。
【0099】
また、搬送部3は、炭化籾殻100を回転させながら搬送させることも好適である。例えば、内部に回転羽根を備え、この回転羽根が回転することで、攪拌・回転させながら搬送する。このような搬送によって、炭化籾殻100へ、燃焼部4からの熱が確実かつ満遍なく伝わる。また、赤化燃焼した一部が他の部分へ攪拌によって移動するので、炭化籾殻100全体が赤化燃焼しやすい。
【0100】
この赤化燃焼が拡がることで、炭化籾殻100の燃焼が進み、精度の高いシリカを得ることができる。
【0101】
(フィルター)
回収部6において、燃焼灰をふるうフィルターを更に備えることも好適である。
【0102】
燃焼灰をふるうことで、形状の大きな灰や、仮に生じる残渣などを除去して、純度の高いシリカを、最終的に回収することができる。このような純度の高いシリカは、既述したように様々な分野に利用できる。
【0103】
このシリカは、シリカ回収容器8に回収されてたまる。これが製造されたシリカとして利用される。
【0104】
土壌改質剤、工業製品、化粧品、塗料、ゴム製品、医療用材料などの様々な分野に利用可能となる。この利用されるシリカが、籾殻を原料として製造されることは、環境負荷の低減や持続可能な社会構築にとっても好適である。
【0105】
(過酸化空気の供給)
空気供給部5は、通常の空気だけでなく、過酸化空気を供給することも好適である。例えば、空気タンク7に、過酸化空気が入っている。この過酸化空気が空気供給部5を通じて、供給される。
【0106】
過酸化空気は、通常の空気よりも酸素濃度が高い。この高い酸素濃度の過酸化空気の供給により、搬送部3内部での燃焼レベルが高まる。特に、空気供給部5により、特定部位51に過酸化空気が吹き付けられる。この吹き付けの圧力と相まって、燃焼部4による熱を受ける部分において、炭化籾殻100が赤化燃焼しやすくなる。
【0107】
このような赤化燃焼が、搬送部3の全体において生じる。この全体での燃焼によって、炭化籾殻100は、確実に燃焼して、燃焼成分などの除去された燃焼灰となる。すなわち、精度の高いシリカが得られる。
【0108】
以上のように、実施の形態2におけるシリカ製造装置1は、その効率や精度を更に向上させることができる。
【0109】
搬送部3の内部空間の内面に、セラミック層9が設けられることもよい。
図5などでは、セラミック層9が備わっている状態が示されている。セラミック層9は、セラミック板などでもよい。このセラミック層9を介することで燃焼部4と籾殻が直接接触しないようにすることも好適である。また、セラミック層9を介することとで、搬送部3の内部表面の金属面と籾殻が直接的に接触しないようにすることも好適である。
【0110】
このような直接接触が防止されることで、燃焼工程において搬送部3の内部表面の金属面から六価クロムなどが酸化溶出される可能性を防止できる。セラミック層9は、燃焼部3の表面および搬送部3内部表面と燃焼部3との間の少なくとも一部に設けられれば良い。
【0111】
ここで、第1搬送部31と第2搬送部32のそれぞれにおいて、同様の構成が取られればよい。
【0112】
以上、実施の形態1~2で説明された籾殻を利用するシリカ製造装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0113】
1 籾殻を利用するシリカ製造装置
2 籾殻供給部
3 搬送部
31 第1搬送部
32 第2搬送部
4 燃焼部
41 燃焼ヒーター
5 空気供給部
51 特定部位
6 回収部
7 空気タンク
8 シリカ回収容器
9 セラミック板