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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002939
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103800
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡部 英知
(72)【発明者】
【氏名】馬場 馨一
(72)【発明者】
【氏名】内田 恵三
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA16
3D344AA19
3D344AA20
3D344AA26
3D344AB03
3D344AD01
3D344AD05
(57)【要約】
【課題】搭載するディーゼルエンジンの排気ガス後処理装置としてディーゼルパティキュレートフィルタを用いる場合に、そのフィルタの再生に関するスイッチやランプを最適な場所に配置し、このスイッチの操作性を確保しながらランプに基づく作業者への報知を確実に行うことができる作業車両を提供する。
【解決手段】メーターパネル42や各種の操作スイッチを取付けるパネルカバー40の前部上方の中央寄りにサブパネルカバー53設け、このサブパネルカバーの後面にディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関するスイッチやランプ51、52を取り付けて運転席に座った作業者の前方視界内に入るようになす。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の前方にステアリングハンドルとメーターパネルや各種の操作スイッチを取付けるパネルカバーを設け、これらの前方にディーゼルエンジンをボンネットによって覆って設ける作業車両にあって、前記ディーゼルエンジンは、その排気ガス中の粒子状物質をディーゼルパティキュレートフィルタで捕集し、この捕集した粒子状物質を燃焼させて除去することによってフィルタの再生を行う排気ガス浄化装置を備える一方、このフィルタの再生に関するスイッチやランプを、前記パネルカバーの前部上方の中央寄りに設けるサブパネルカバーの後面に設け、それによって、パネルカバーのメーターパネルやサブパネルカバーに設けるスイッチやランプが、運転席に座った作業者の前方視界内に入るようになすことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記パネルカバーに設けるメーターパネルにDPF再生ランプとエンジン故障ランプを設けると共に、前記サブパネルカバーの後面に手動再生スイッチと再生禁止スイッチ、及び各スイッチのランプを設けることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記サブパネルカバーの後面の中央寄りにモバイル端末の収容部を形成し、このサブパネルカバーの後面の左右寄りにランプ付きの手動再生スイッチと再生禁止スイッチ、並びにモバイル端末充電用の電源ソケットを振り分けて設けることを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記エンジンの情報やフィルタの再生情報を取得して、パネルカバーのメーターパネルやサブパネルカバーに設けるランプの点灯を制御する電子制御ユニット、或いはキャビンのフロントガラスに設けるワイパーを駆動する電動モータ、又はこれらの電子制御ユニットと電動モータをサブパネルカバーの下方に設けて、これをサブパネルカバーによって覆うことを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや乗用型田植機等の主に農業用の作業車両に関し、詳しくは、搭載するディーゼルエンジンの排気ガス後処理装置としてディーゼルパティキュレートフィルタを用いる作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用の作業車両に搭載して機体の各部を駆動するエンジンは、燃焼効率が優れて燃費が良く低回転から力強さを発揮するディーゼルエンジンが主に採用される。しかし、ディーゼルエンジンは、その排気ガス中に含まれる有害な粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)が問題視され、現在ではコモンレール式燃料噴射システムや排気再循環システム(EGR)等のエンジンの燃焼技術の改良と、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)や尿素SCRといった排気ガス後処理装置の採用によって、この問題に対応している。
【0003】
ところで、前述の排気ガス後処理装置としてのディーゼルパティキュレートフィルタは、排気ガス中の粒子状物質(主に固形炭素の微粒子:煤(SOOT))をそのフィルタに捕集して大気中への排出を無くす。しかし、捕集した粒子状物質はその堆積した量が増えるとフィルタを目詰まりさせるため、ある程度溜まった段階で高温で再燃焼させて除去するといったフィルタの再生を行わなければならない。
【0004】
そして、このフィルタの再生は作業車両の使用条件に応じて自動的に或いは手動指令に基づいて適正に行われていれば、ディーゼルパティキュレートフィルタ自体の性能は劣化しにくいが、堆積量に応じた再生処理が適宜、適量に行われないと、堆積した大量の煤が再生処理時に急速に燃焼し、ディーゼルパティキュレートフィルタ自体が熱破壊されてしまう危険性もあり、高価なフィルタの交換作業も発生することを念頭にいれて適切な対応が求められる。
【0005】
そこで、運転席に座って作業車両を操縦している際に、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関する情報を得て、その要求に応じて確実に再生指令を行うために、例えばトラクタでは、その操舵ハンドル基部のステアリングコラム上面にDPF再生スイッチを設け、直進作業姿勢のときにオペレータの視界にDPF再生スイッチを配置することが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
また、ホイルローダや油圧ショベルにおいては、フィルタを再生する再生手段と、再生手段の作動開始を指示する再生開始指示手段と、再生手段の作動禁止を指示する再生禁止指示手段と、堆積量推定手段が推定する堆積量が所定の第1閾値より多くなると、再生手段を作動させる自動再生制御機能と、堆積量推定手段が推定する堆積量が所定の第2閾値より多くなると、再生開始指示手段の操作を促す警告信号を出力し、再生開始指示手段が操作されると再生手段を作動させる手動再生制御機能と、再生禁止指示手段が操作されると再生手段の作動を禁止する再生禁止制御機能とを有する再生制御装置等を備えることが知られている(特許文献2参照)。
【0007】
なお、前輪および後輪を備えた機体の前部にエンジンを内装したボンネットを配設し、その後部に運転ハンドルと、燃料計等をパネル面に配した計器パネルボックスとからなる運転操作部を備えたキャビンを配設したトラクタにおいて、計器パネルボックスの前高後低状に傾斜させたパネル面と、その前方のフロントガラスとの間に、補助備品の操作ボックスによって覆ったフロントガラスのワイパー駆動機構を、少なくとも計器パネルボックスの左右幅内に納まるように配設すると共に、当該ワイパー駆動機構から前方に向かう回動駆動軸を、前方のフロントガラスを貫通して室外に突出させて、フロントガラスのワイパーを駆動するように構成することが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-78600号公報
【特許文献2】特開2011-37334号公報
【特許文献3】特許第3657249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のようにトラクタ等の作業車両に搭載するディーゼルエンジンに、排気ガス後処理装置としてディーゼルパティキュレートフィルタを設けると、有害な排気ガス中の粒子状物質をフィルタに捕集し、大気中にそのまま排出しないようにすることができる。しかし、長らくエンジンを稼動させると、その間の作業内容や作業環境によってフィルタに粒子状物質が多量に堆積し、そのままではフィルタの目詰まりを誘発する虞がある。
【0010】
そこで、これを防止すべくエンジンの電子制御装置は、例えばフィルタにおける煤の堆積量を推定して、この煤が所定の割合以上堆積する場合、エンジン出力の制限を行うことなく(通常運転を妨げることなく)、煤を燃やして除去する自動再生を行う。また、この自動再生を行っても煤の燃焼が進まず、煤の堆積量の割合が更に増えると、手動再生要求をランプやブザー等によって行う。
【0011】
そして、作業者がこのエンジンの電子制御装置からの手動再生要求の報知を受けて、火災等の危険のない場所に移動させて作業車両を駐車させた後、手動再生スイッチによってその指令を行うと、エンジンの電子制御装置はエンジンの回転制限を行いながら高温で再燃焼させてフィルタに堆積した煤を燃やして除去する。なお、換気の悪い屋内や、可燃物と近接する場所(木陰・ビニールハウスなど)で、前述の自動再生が行われると火災等の虞があるので、そのような場合には、自動再生を禁止する指令を行うスイッチやその状態を示すランプを設ける。
【0012】
従って、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関するエンジンの電子制御装置からの報知は、フィルタの目詰まりや破壊の虞を考慮すれば作業者に速やかに伝わり、また、作業者の手動再生や自動再生禁止の指令等は適切に行われなければならない。しかし、作業者が運転席に座って作業車両を走行させている際に、作業者はエンジンを覆うボンネット越しに前方の路面や圃場面、乃至は畦や路上障害物等を目視しながらステアリングハンドルを用いて操縦しているから、前述の特許文献1のように、そのDPF再生スイッチをステアリングハンドルより下方に位置させると、再生スイッチの操作は行えてもエンジンからの手動再生の要求は見落とす虞がある。
【0013】
また、ステアリングコラムの上面に設けたDPF再生スイッチは運転席に近く、不慣れな作業者が不用意にDPF再生スイッチを操作したり、誤って触れたりすることも考えられ、敢えてステアリングコラムの上面にコストを掛けて設ける有利性は伺えない。なお、操縦ハンドル前方の操作表示盤を設けるダッシュボードの前部上方には空きスペースがある。また、特許文献3には係るスペースに補助備品の操作ボックスを設け、機体の走行中でも前方下方への視線を外すことなく、補助備品の操作を安全かつ容易に行うことができるという示唆がなされている。
【0014】
そこで、本発明は、特許文献1に記載されたDPF再生スイッチの配置上の問題点に鑑み、更には特許文献3に記載された空きスペースの有効活用の示唆のもとに、特に搭載するディーゼルエンジンの排気ガス後処理装置としてディーゼルパティキュレートフィルタを用いる場合に、そのフィルタの再生に関するスイッチやランプを最適な場所に配置し、このスイッチの操作性を確保しながらランプに基づく作業者への報知を確実に行うことができる作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、運転席の前方にステアリングハンドルとメーターパネルや各種の操作スイッチを取付けるパネルカバーを設け、これらの前方にディーゼルエンジンをボンネットによって覆って設ける作業車両にあって、前記ディーゼルエンジンは、その排気ガス中の粒子状物質をディーゼルパティキュレートフィルタで捕集し、この捕集した粒子状物質を燃焼させて除去することによってフィルタの再生を行う排気ガス浄化装置を備える一方、このフィルタの再生に関するスイッチやランプを、前記パネルカバーの前部上方の中央寄りに設けるサブパネルカバーの後面に設け、それによって、パネルカバーのメーターパネルやサブパネルカバーに設けるスイッチやランプが、運転席に座った作業者の前方視界内に入るようになすことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記パネルカバーに設けるメーターパネルにDPF再生ランプとエンジン故障ランプを設けると共に、前記サブパネルカバーの後面に手動再生スイッチと再生禁止スイッチ、及び各スイッチのランプを設けることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明は、前記サブパネルカバーの後面の中央寄りにモバイル端末の収容部を形成し、このサブパネルカバーの後面の左右寄りにランプ付きの手動再生スイッチと再生禁止スイッチ、並びにモバイル端末充電用の電源ソケットを振り分けて設けることを特徴とする。
【0018】
そして、本発明は、前記エンジンの情報やフィルタの再生情報を取得して、パネルカバーのメーターパネルやサブパネルカバーに設けるランプの点灯を制御する電子制御ユニット、或いはキャビンのフロントガラスに設けるワイパーを駆動する電動モータ、又はこれらの電子制御ユニットと電動モータをサブパネルカバーの下方に設けて、これをサブパネルカバーによって覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の作業車両によれば、運転席の前方にステアリングハンドルとメーターパネルや各種の操作スイッチを取付けるパネルカバーを設け、これらの前方にディーゼルエンジンをボンネットによって覆って設ける作業車両にあって、前記ディーゼルエンジンは、その排気ガス中の粒子状物質をディーゼルパティキュレートフィルタで捕集し、この捕集した粒子状物質を燃焼させて除去することによってフィルタの再生を行う排気ガス浄化装置を備える一方、このフィルタの再生に関するスイッチやランプを、前記パネルカバーの前部上方の中央寄りに設けるサブパネルカバーの後面に設け、それによって、パネルカバーのメーターパネルやサブパネルカバーに設けるスイッチやランプが、運転席に座った作業者の前方視界内に入るようになす。
【0020】
そのため、作業者が運転席に座って作業車両を走行させている際に、作業者はエンジンを覆うボンネット越しに前方の路面や圃場面、乃至は畦や路上障害物等を目視しながらステアリングハンドルを用いて操縦しており、この場合にパネルカバーのメーターパネルやサブパネルカバーに設けるスイッチやランプが作業者の前方視界内に入るから、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関する警報を見落とすことなく速やかに取得して適切な対応をとることができる。
【0021】
また、係るフィルタの再生に関するスイッチは、ステアリングハンドルから前方にやや離れたサブパネルカバーの後面に設けるので、ステアリングハンドルを握って操縦している際に誤って触れたり、不慣れな作業者が不用意に操作する虞が少なく、一方、スイッチを操作する際には、運転席から立ち上がって前方に手を延ばせばスイッチに届き、このスイッチの入り操作によってフィルタの手動再生等を確実に指令することができ、その後、降車して再生の完了を待つことができる。
【0022】
しかも、ディーゼルパティキュレートフィルタを備えた新たなエンジンに搭載替えするといった場合、作業車両は再生に関するスイッチを操縦部等に新たに設けることになるが、例えば、ステアリングコラム等にこれらのスイッチを無理やりに取り付けようとすると加工費が嵩んでコストアップとなる虞がある。また、メーターパネルや各種の操作スイッチを取付けるパネルカバー等には、新たなスイッチやランプを取り付ける余分な場所は通常確保されていない。
【0023】
しかし、パネルカバーの上方は元々空いた空間となっていて、また、パネルカバーの後部寄りはメーターパネルのバイザーとなっていてやや高位置となるが、それより前部は下り傾斜して低くなっているので、この前部上方の中央寄りにサブパネルカバーを設けても、サブパネルカバーが前方視界を遮って悪化させる虞はなく、しかも、サブパネルカバーの後面にフィルタの再生に関するスイッチやランプを設けると、これらのスイッチやランプがパネルカバーに設けるスイッチ等と隔絶した存在として認識され、その警報における注意喚起の度合を高めることができる。
【0024】
また、本発明の作業車両によれば、前記パネルカバーに設けるメーターパネルにDPF再生ランプとエンジン故障ランプを設けると共に、前記サブパネルカバーの後面に手動再生スイッチと再生禁止スイッチ、及び各スイッチのランプを設ける。そのため、フィルタの再生に関する詳細な情報を、作業者の前方視界内に入るDPF再生ランプ、エンジン故障ランプ、手動再生スイッチと再生禁止スイッチのランプを用いて正確に報知することができる。
【0025】
より詳細には、例えばフィルタの手動再生の要求が出されると、メーターパネルに設けるDPF再生ランプと、サブパネルカバーの後面に設ける手動再生スイッチのランプを同時に点滅させて、速やかに手動再生の指令を出すように警報することができ、また、自動再生や手動再生が行われるとDPF再生ランプや手動再生スイッチのランプを点灯させて知らせ、或いは、過堆積要求が出されると、DPF再生ランプは点滅させるが手動再生スイッチのランプは消灯させ、また、エンジン故障ランプを点灯させて、手動再生が不可能であることを報知することができる。
【0026】
さらに、本発明の作業車両によれば、前記サブパネルカバーの後面の中央寄りにモバイル端末の収容部を形成し、このサブパネルカバーの後面の左右寄りにランプ付きの手動再生スイッチと再生禁止スイッチ、並びにモバイル端末充電用の電源ソケットを振り分けて設ける。
【0027】
そのため、再生に関するスイッチやランプを設けるサブパネルカバーをスマートフォンや携帯電話の置き場として有効に活用することができるのは勿論のこと、このサブパネルカバーの収容部に置いたモバイル端末は、前述のようにスイッチやランプと共に作業者の前方視界内に入るから、電話やメールの着信に対して見落としを防止することができる。また、電源ソケットに充電器等を介してモバイル端末を接続すると、作業中にモバイル端末を充電することができて利便性を高めることができる。
【0028】
そして、本発明の作業車両によれば、前記エンジンの情報やフィルタの再生情報を取得して、パネルカバーのメーターパネルやサブパネルカバーに設けるランプの点灯を制御する電子制御ユニット、或いはキャビンのフロントガラスに設けるワイパーを駆動する電動モータ、又はこれらの電子制御ユニットと電動モータをサブパネルカバーの下方に設けて、これをサブパネルカバーによって覆う。
【0029】
そのため、新たにディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関するランプを設けて、このランプの点灯を制御する電子制御ユニットが必要となる場合でも、この電子制御ユニットをランプやエンジンに近いサブパネルカバーの下方に設けて、別途カバーを用意することなくサブパネルカバー自体で電子制御ユニットを風雨に晒すことなく覆うことができる。
【0030】
また、操縦部を覆うキャビンを備える作業車両は、キャビンのフロントガラスに設けるワイパーを駆動する電動モータをパネルカバーの下方に設け、この電動モータをパネルカバーで覆うためにパネルカバーの前部寄りを膨出させて、キャビン無し仕様のパネルカバーとは別部品として用意する。しかし、係る電動モータをサブパネルカバーの下方設けて、これをサブパネルカバーによって覆うと、パネルカバーの前部寄りを膨出させる必要がなくなるので、キャビン仕様のパネルカバーを無くすことができ、それにより部品管理上のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】トラクタの側面図である。
図2】原動部や操縦部の側面図である。
図3】操縦部の斜視図である。
図4】運転席側から見た操縦部の正面図である。
図5】サブパネルカバーを主体とする操縦部の側面図である。
図6】同上側断面図である。
図7】サブパネルカバーの取り付けを説明する斜め後方側から見た斜視図である。
図8】サブパネルカバーの取り付けを説明する斜め前方側から見た斜視図である。
図9】サブパネルカバーを示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は側面図である。
図10】フィルタの再生に関するスイッチの斜視図である。
図11】スイッチラベルとコネクタの説明図である。
図12】キャビンに設けるワイパーモータの取付状態を示す側面図である。
図13】メーターパネルに設ける回転計とランプの要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図5に示すように作業車両としての農業用のトラクタ1は、エンジン2とフロント及びリヤトランスミッションケース3、4を一体的に連結して車体(機体)を構成する。また、エンジン2の下部寄り左右に固定して前方に延びるシャシブラケット5の下面側には、図示しないフロントアクスルケースを左右揺動自在に軸支する。そして、このフロントアクスルケースの左右端に前車軸ケースを夫々取り付け、各前車軸ケースは前車軸6を軸支して、この前車軸6に取り付ける左右の前輪7を操舵自在に設ける。
【0033】
一方、リヤトランスミッションケース4の左右に固定するリヤアクスルケースには夫々後車軸8を軸支して、各後車軸8に左右の後輪9を取り付ける。また、車体の後部には、トップリンク10及び左右のロワリンク11からなる周知の三点リンク機構を設ける。この三点リンク機構は、ロータリ耕耘装置等の作業機を連結するものであり、作業機はリヤトランスミッションケース4の上部に取り付けて、その内部に昇降シリンダを設けるシリンダケースの左右リフトアームと、各リフトアームの先端とロワリンク11の中途にそれぞれ一端を連結したリフトロッドを介して昇降自在に設ける。
【0034】
さらに、前述のエンジン2はディーゼルエンジンを採用し、このエンジン2は排気ガス規制の強化に伴って、完全燃焼で発生する窒素酸化物や不完全燃焼で発生する煤などの粒子状物質の発生を低減するコモンレール式燃料噴射システム、過給機、及び排出ガス再循環システム(EGR)等を採用し、また、エンジン本体で浄化し切れなかった窒素酸化物や粒子状物質は、排気ガス後処理装置としてのディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼルパティキュレートフィルタ(ディーゼル微粒子捕集フィルター:DPF)を用いて除去する。
【0035】
そのため、ディーゼルエンジン2はその本体の後部寄り上部にDOCとDPFを内蔵するDPFケース12を取り付けて設ける。従って、エンジン2から排出されるガスはこのDPFケース12内に導入されて、その後、DPFケース12の出口側に設ける図示しないテールパイプから機外に排出される。なお、前述のシャシブラケット5の上面側には底板やステーからなる補器ブラケット13を取り付け、この補器ブラケット13にはエンジン2の冷却水を冷やすラジエータ14、エンジン2に清浄な空気を供給するエアクリーナ15、オイルクーラ16、インタークーラ17、バッテリー18等を設ける。
【0036】
また、係るエンジン2や補器類は、その前面に通気口19aとヘッドランプ20等を備えるボンネット19によって覆っており、このボンネット19はエンジン2の後部に取り付けたカバーブラケット21の上部にヒンジを介して取り付け、その前部寄りを開閉自在に設ける。なお、カバーブラケット21は逆U字状の後部カバー22によって外周を覆い、この後部カバー22の下方には左右のサイドカバー23をノブ付きボルトを用いて補器ブラケット134に着脱自在に設ける。
【0037】
さらに、前記後部カバー22の後方には操縦部を設け、この操縦部はトランスミッションケース3、4に防振支持されて運転席24を後部寄り中央に設けるフロアフレーム25と、後輪9の前方から上方を覆う左右のフェンダ26と、運転席24の後方に設ける安全フレーム27等から構成する。そして、この内、フロアフレーム25の前部にはエンジン側の後部カバー22に対面する逆U字状のハンドルフレーム28を立設し、このハンドルフレーム28の上部寄りに設けるコラム取付ブラケット28aに、左右の前輪7を全油圧式パワーステアリングユニットによって操舵するステアリングハンドル29をチルト調節自在に設ける。
【0038】
また、ステアリングハンドル29の下方には、コンビネーションスイッチ30や作業機を昇降させるクイックアップレバー31、或いはエンジンコントロールレバー32や前後進レバー33を設け、また、ステアリングシャフト34やステアリングコラム35はその全体をカバー36によって覆う。さらに、コラム取付ブラケット28aには運転席24から見て左側に主クラッチペダダル37を、また、右側に左右のブレーキペダル38を各々垂下させて設け、さらに、中央寄りには駐車ブレーキレバー39を設ける。
【0039】
そして、ステアリングハンドル29前方のコラム取付ブラケット28aには自らを覆うカバーを設け、このカバーは上部寄りに設けるパネルカバー40と下部寄りの後面を覆うリヤパネルカバー41によって構成する。また、その内、パネルカバー40の上部中央寄り後面に設ける開口部40aには、ケース42aの前面にガラス42bを設けたメーターパネル42を取り付け、作業者が運転席24に座って前方を見た際に、ステアリングハンドル29のリムとハブとの間からメーターパネル42を視認することができ、その際にメーターパネル42の盤面は作業者の前方視線に対して略直交するようにパネルカバー40に傾けて設ける(図6図7参照)。
【0040】
なお、パネルカバー40のメーターパネル42を取り付ける開口部40aの周縁部は後方に盛り上がるバイザー(日除け)40bに形成しており、全体としてメーターパネル42の中央寄り上面は、前方に向けて下り傾斜させている。また、メーターパネル42を取り付ける開口部40aの後方にはステアリングハンドル29のカバー36が嵌る開口40cの左右に各種の自動制御(倍速、バックアップ、旋回アップ、・・)を入り切りするスイッチとその入り切り状態を表示するLEDを備える左フロントユニット43と、メーターパネル42に備える液晶ディスプレイ44の表示画面を設定する操作スイッチ等を備える右フロントユニット45を設ける。
【0041】
さらに、左フロントユニット43の上方側と下方側となるパネルカバー40にはハザードランプスイッチ46とホーンスイッチ47を設け、右フロントユニット45の下方側となるパネルカバー40にはスタータスイッチ48を設ける。また、トラクタ1は以上説明したスイッチや操作レバー等の他に、運転席24の左右側方に設けるパネルやフロアフレーム25の床面に走行並びにPTOの変速レバーやペダル、並びに作業機の昇降を行うポジションレバーや各種スイッチ及びボリューム等の操作具を適切な場所に分散して配置する。
【0042】
以上、トラクタ1の概要について説明したが、次にディーゼルエンジン2に備えるディーゼルパティキュレートフィルタの再生と、その再生に関するスイッチやランプの取り付けについて説明する。先ず、前述のようにディーゼルパティキュレートフィルタは、ディーゼルエンジン2の排気ガス中に含まれる煤(SOOT)を捕集する。また、ディーゼルエンジン2を制御する電子制御装置(電子制御ユニット:ECU)は、排気温度センサや排気圧の差圧センサ等に基づいてディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した煤の量(堆積量割合)を推定する。
【0043】
そして、係るエンジン2のECUは、煤の堆積量割合(パーセント)が例えば、0~80未満であればエンジン2を通常運転として扱い、80以上であれば自動再生要求を出す。ここで、自動再生要求が出されてエンジン回転数が高回転で冷却水温が高ければ、コモンレール式燃料噴射システムはポスト噴射によってその排気管中に未燃燃料を混入させ、この未燃燃料をディーゼル酸化触媒は酸化燃焼させて、ディーゼルパティキュレートフィルタを通過する排気温度を上昇させ、これによりディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した煤は再燃焼してフィルタから除去することができる。
【0044】
また、エンジン2のECUは、上述の自動再生に関らず煤の堆積量割合が100以上であれば手動再生要求を出し、この場合に100~120未満である前期であれば、エンジン出力の制限制御は行わないが、120~140未満である後期であれば、エンジン出力を50パーセントとして最高回転を1500rpmに制限する。そして、作業者によって手動再生が指令されると、自動再生に比べて主噴射やポスト噴射の噴射量を多くして、排気温度をより高めてディーゼルパティキュレートフィルタの再生速度を加速させる。
【0045】
さらに、エンジン2のECUは、煤の堆積量割合が140以上であれば過堆積要求を出し、この場合に140~160未満である前期であれば、エンジン出力の制限制御として、先ず第1段階はエンジン出力を50パーセントとして回転制限を1500rpmとし、7200秒後の第2段階では回転制限を1200rpmとする。また、160以上である後期で、その第1段階は同じくエンジン出力を50パーセントとして回転制限を1500rpmとし、3600秒後の第2段階では回転制限を1200rpmとする。
【0046】
なお、エンジン2のECUがディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うと、排出ガスやテールパイプ等が高温となり、上述の自動再生が換気の悪い屋内や可燃物と近接する場所(木陰・ビニールハウス等)で行われると火災やガス中毒等の虞があるので、このような場合には作業者が自動再生を禁止する指令を出すことができる。また、手動再生を指令する場合、風通しの良い屋外で回りに燃えやすいものがない安全な広い場所にトラクタ1を移動し、また、駐車ブレーキをかけて停車させた後、エンジン2をアイドリング状態としなければ手動再生を行わせることができない。
【0047】
さらに、ディーゼルパティキュレートフィルタの自動再生や手動再生を適切に行うことが出来ずに上述の過堆積要求が出されると、作業者ではディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理が不可能となるので作業を速やかに中止して、サービスマン等に任せてサービスツール等を用いて再生を試みるか、最悪の場合、ディーゼルパティキュレートフィルタの修理や交換作業を行うことになる。
【0048】
そして、トラクタ1は、以上のようなディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関して、図4に示すようにパネルカバー40のメーターパネル42にDPFの状況(要求/再生/異常)を報知するDPF再生ランプ49とエンジン故障ランプ50を設ける。また、手動再生の指令を行う手動再生スイッチと再生禁止の指令を行う再生禁止スイッチ、並びに手動再生の要求と実行を報知する手動再生ランプと再生禁止の実行を報知する再生禁止ランプを設ける。
【0049】
また、上述の手動再生スイッチと手動再生ランプ、及び再生禁止スイッチと再生禁止ランプは夫々ランプとスイッチを一体的に纏めたLED球付押しボタンスイッチを使用し、この2つの手動再生スイッチ(ランプ付)51と再生禁止スイッチ(ランプ付)52は、合成樹脂製のサブパネルカバー53の後面53aに取り付ける。そして、係るサブパネルカバー53はパネルカバー40の前部上方の中央寄りに取り付けて設け、それによって、パネルカバー40のメーターパネル42やサブパネルカバー53に設けるスイッチやランプが、運転席24に座った作業者の前方視界内に入るようになす。
【0050】
より詳細に説明すると、図6乃至図10に示すようにパネルカバー40の前部上方の中央寄りに開口40dを設け、この開口40dを通してハンドルフレーム28に固着した前取付座28bを上方に立ち上がらせ、また、開口40dの後部寄り縁部に後取付座28cを取り付けて上方に立ち上がらせ、さらに、開口40dの後部寄り縁部にパネルカバー40内への水や塵埃の侵入を防止するクッション材54を貼り付ける。一方、内部をスイッチの収容空間となるように蓋状に形成するサブパネルカバー53は、その内面の前後左右となる4箇所にリブ53bを設け、このリブ53bに4股状の補強金具55の脚部下端をクリップ56で固定し、サブパネルカバー53の側壁53cの左右方向への変形を補強金具55によって防止する。
【0051】
そして、係る補強金具55を取り付けたサブパネルカバー53をパネルカバー40の開口40dを覆うように上方から被せて、サブパネルカバー53と補強金具55をビス57によって前取付座28bと後取付座28cに固定する。従って、サブパネルカバー53はパネルカバー40の前部上方の中央寄り上面に隙間なく被さって、両カバー40、53は合成樹脂によって個別に成形するものではあるが、両者をハンドルフレーム28に取り付けた状態では、恰も一体化した単一のカバーと見做すことができる外観を呈する。
【0052】
なお、サブパネルカバー53はパネルカバー40の開口40dを蓋して覆い、その前部は逆U字状になすハンドルフレーム28の上部を覆うように湾曲形成する。これは、ディーゼルパティキュレートフィルタを備えて大型化したディーゼルエンジン2を車体の前部に設けるため、ボンネット19と後部カバー22の高さが高くなり、ハンドルフレーム28の上部との間に隙間が生じて段差が生まれる。そこで、この隙間をサブパネルカバー53の前方に延長した前部53dによって塞い隠し、それによってボンネット19と操縦部との境界における段差を無くして美観を向上させる。
【0053】
また、手動再生スイッチ51と再生禁止スイッチ52を取り付けるサブパネルカバー53の後面53aは、その上部寄りが下部寄りより前方に位置するように若干傾けて形成し、その傾斜角度は後方に設けるメーターパネル42の盤面が作業者の前方視線に対して略直交させる場合と同様の角度となす。そして、係るサブパネルカバー53の後面53aの中央寄りには、左右の側壁53eと後壁53fを備えるモバイル端末の収容部53gを一体に形成し、サブパネルカバー53の有効活用を図る。
【0054】
即ち、トラクタ1に乗って作業走行等を行う場合、スマートフォンや携帯電話等をポケット等に入れたままだと邪魔になることがある。また、圃場までの移動ルートを表示させたり作業走行軌跡を表示させる際に、これらの置き場があれば便利である。そこで、新設するサブパネルカバー53にこれ等を置くことができる収容部53gを形成し、例えば、スマートフォンをこの収容部53gに横向きに差し込めば、スマートフォンをパネルカバー40の前面(上面)に載置した状態で、サブパネルカバー53の後面53aに設ける3個のパッキングゴム58と収容部53gの後壁53f、並びに左右の側壁53eですきまを詰めて保持することができる。
【0055】
そのため、トラクタ1の機体振動や機体の傾斜に関らずスマートフォンの飛び出しを防止して不測な落下による損傷を無くすことができる。また、収容部53gにスマートフォンを収容するとメーターパネル42と同様に作業者の前方視線に対してその画面が直交して見易く、さらに、収容部53gの後壁53fの中央部53hは画面がよく見えるように窪ませているから、いちいち収容部53gから取り出さなくとも電話やメールの着信等も素早く確認することができる。
【0056】
なお、サブパネルカバー53の収容部53gの右側方となる後面53aには電源ソケット(シガーソケット)59を設け、また、収容部53gの右側壁53eの前部上方寄りにケーブルを通す窪み53iを形成している。そのため、例えば、電源ソケット59にプラグを差し込んでいる充電器のケーブルをスマートフォンの充電端子に差し込んで、そのケーブルを窪み53iに通し、スマートフォンを収容部53gに置くと、スマートフォンはケーブルと収容部53gの右側壁53eとの干渉によって不安定に浮き上がって収容することができないといった虞がなくなり、確実に収容部53eに収容して充電することができる。
【0057】
一方、サブパネルカバー53の右側方に設ける電源ソケット59のさらに右側の後面には、盗難防止スイッチ60を設け、この盗難防止装置はトラクタ1の揺れを感知して、ブザーでその旨を報知する。そして、図11に示すようにサブパネルカバー53の左側の後面53aに並べて設ける手動再生スイッチ51と再生禁止スイッチ52は、何れのスイッチが手動再生スイッチ51で他方が再生禁止スイッチ52であるかひと目で分かるように、サブパネルカバー53に貼付する名前とマークを付したスイッチラベル61の色を例えば、白色は肯定的や始まりを、黒色は否定的や拒絶のイメージを備えるので、白(手動再生)、黒(再生禁止)というように反転色を用いて、その識別を容易にする。
【0058】
また、手動再生スイッチ51と再生禁止スイッチ52の、エンジン2のECUに対する配線のコネクタ色を前述のスイッチラベル61の色と統一し、例えば、手動再生側のコネクタ62を白色、再生禁止側のコネクタ63を黒色とすることによって、誤接続を無くしてトラブルを防止することができる。なお、手動再生スイッチ51と再生禁止スイッチ52のランプは、その警告色として黄色又はオレンジを採用し、これ等の色とすることによって警報時における速やかな対応を求める。
【0059】
そして、以上のようにサブパネルカバー53に設ける手動再生スイッチ51は、前述のディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関するエンジン2のECUの一連の制御内容に対して、そのフィルタの煤の堆積量割合が0~80未満の通常運転、及び80以上の自動再生要求が出されて自動再生中であれば、そのランプは消灯したままとする。なお、メーターパネル42のDPF再生ランプ49は自動再生を行っていない場合は消灯させ、また、自動再生を行っている場合は連続点灯させる。
【0060】
また、堆積量割合が100以上で手動再生要求が出されると、それが前期であれば手動再生スイッチ51のランプとDPF再生ランプ49は、ON:0.5秒、OFF:0.5秒で点滅させる。さらに、それが後期であればON:0.3秒、OFF:0.3秒と周期を短くして点滅させる。なお、機体に別途設けるDPF再生要求ブザーは、この場合に前期であれば1分間に1回だけ単音を2つ発し、後期であればON:0.3秒、OFF:0.3秒の断続した警報音を発する。そして、ここで手動再生スイッチ51が入れられて手動再生が行われると、手動再生スイッチ51のランプとDPF再生ランプ49は共に常時点灯する。
【0061】
そして、堆積量割合が140以上で過堆積要求が出されると、その前期と後期であることには関わらず手動再生スイッチ51のランプを消灯させ、手動再生が最早不可能であることを報知する。但し、この場合にDPF再生要求ブザーとDPF再生ランプ49は、ON:0.3秒、OFF:0.3秒の周期を短くした断続音と点滅で警報を続け、また、メーターパネル42に設けるエンジン故障ランプ50は常時点灯させて、作業を速やかに中止するように促す。
【0062】
なお、再生が行われている際にDPFが異常高温となると、DPF再生ランプ49はON:0.15秒、OFF:0.15秒で高速点滅し、エンジン故障ランプ50も常時点灯させて危急を報知する。一方、サブパネルカバー53に設ける再生禁止スイッチ52は、そのスイッチを切っているとランプは消灯し、また、スイッチを入りにすると常時点灯する。そして、スイッチが入った状態では、エンジン2のECUにディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行わないように指令が出されるから、この場合、自動再生は行われない。
【0063】
そして、このようにサブパネルカバー53に設ける手動再生スイッチ51や再生禁止スイッチ52のランプ、また、パネルカバー40のメーターパネル42に設けるDPF再生ランプ49やエンジン故障ランプ50、或いは、機体に設けるDPF再生要求ブザーの前述のような込み入って緻密な駆動制御は、作業者にその警報内容が分かり易く伝わるように考慮して適切に行われなければならない。
【0064】
しかし、エンジン2のECUから出されるフィルタの再生に関する情報は、往々にして必要最小限の情報でしかなく、そのまま得られる信号に基づいただけではランプ等を適切に駆動することができず、そこで、ランプ等との間にエンジンECUの情報変換用の電子制御ユニット64を介在させる場合がある。そのため、トラクタ1は、ここでコンバイン等の他の作業車両のフィルタ再生警報に倣う統一化した報知パターンでランプ等を駆動制御するフィルタ再生報知用電子制御ユニット64を用意し、この電子制御ユニット64をコラム取付ブラケット28aに取り付けてサブパネルカバー53によってこれを覆って設ける(図6参照)。
【0065】
なお、図12に示すようにトラクタ1の操縦部をキャビンで覆う場合、キャビンのフロントガラス65に設けるワイパー66を駆動する電動モータ(ワイパモータ)67をパネルカバー40の下方に設けることになる。そして、その場合にこの電動モータ67を覆うためにパネルカバー40の前部寄りは膨出させて、キャビン無し仕様の膨出させないパネルカバー40とは別部品を用意して覆っている。
【0066】
しかし、この電動モータ67をコラム取付ブラケット28aに従来のように取り付けた場合でも、電動モータ67はサブパネルカバー53の下方となって電動モータ67をサブパネルカバー53によってそのまま覆うことができるので、キャビン仕様の前部を膨出させたパネルカバー40は不要となり、これにより、この部品を無くすことによって部品管理上のコストダウンを図ることができる。
【0067】
また、前述のようにフィルタの手動再生を行う場合、風通しの良い屋外で回りに燃えやすいものがない安全な広い場所にトラクタ1を移動し、また、駐車ブレーキをかけて停車させた後、エンジン2をアイドリング状態としなければ、エンジン2のECUによって手動再生を行わせることが出来ない。
【0068】
しかし、図13に示すようにエンジン2のECUが手動再生の要求を出した際に、メーターパネル42のDPF再生ランプ49と手動再生スイッチ51のランプを点滅させると同時にメーターパネル42に設けるパーキングランプ68を点滅させると、手動再生の指令を行う場合にパーキングランプ68の点滅によって駐車ブレーキレバー39を操作して駐車ブレーキをかけなければならないことが明確となって、駐車ブレーキレバー39の操作忘れを防止してスムーズに手動再生に移行させることができる。
【0069】
なお、手動再生スイッチ51が入りに操作された際に、トラクタ1が停止して駐車ブレーキが掛けられていない場合であっても、トラクタ1側の電子制御ユニットが図示しない油圧ブレーキシリンダに圧油を供給して、自動的にトラクタ1の車輪6、9に制動を掛けるようになすと、駐車ブレーキの操作を忘れていた場合でも、トラクタ1を実質的に駐車状態に保つことができるので、このようになすと速やかに手動再生に移行させることができる。
【0070】
また、エンジン2のECUがフィルタの手動再生を行っている際に、エンジンム2の回転数を指令するエンジンコントロールレバー32、或いはフートコントロールペダルが操作されてアイドリング回転より高くなるようにエンジンの回転数が指令されると、ECUは作業が開始されるものとしてフィルタの手動再生を中断する。しかし、この回転数の指令が作業者の誤操作やトラクタ1への乗降の際のエンジンコントロールレバー32等への不測な接触によって発生したものであれば、再生の中断によって再生時間が延びることになるので、係る再生の中断は出来るだけ回避させたい。
【0071】
そこで、トラクタ1の電子制御ユニットは、ひとたび手動再生の指令が出されるとエンジンコントロールレバー32、或いはフートコントロールペダルによるエンジン回転数の指令値を監視し、例えば、その指令値がアイドリング回転数より一時的に高くなったが、即座にアイドリング回転数に戻った際には誤操作と判断して、エンジン2のECUにアイドリング回転数をそのまま与え続けることによってフィルタ再生の中断を回避させることができる。また、トラクタ1の電子制御ユニットは、手動再生の指令が出されるとその再生が完了するまで、エンジンの回転数としてアイドリング回転数を与え続けるものとしても、同様にフィルタ再生の中断を回避させることができる。
【0072】
さらに、エンジン2のECUがフィルタの手動再生を開始した場合、何時フィルタの再生が完了するか分からないので、作業再開の計画が立て辛く作業者にストレスを生じさせる。そこで、フィルタの手動再生が開始された場合は、図13に示すようにメーターパネル42に設ける回転計69を利用して再生の残り時間を表示する。そのため、例えば、回転計の1000rpm当たり残り10分というように表示することによって、待ち時間を表示する専用の表示装置を設ける必要性を無くすことができる。
【0073】
また、前述のメーターパネル42に設ける回転計69を、エンジン2のECUがフィルタの手動再生を開始した後、手動再生スイッチ51を長押しすることで、フィルタの再生完了までの待ち時間を表示するモードと、本来のエンジン2の回転数を表示するモードに切り替えることができるようにしてもよく、このようになすとフィルタの手動再生中におけるエンジン回転数の制御状態が明らかになる。なお、以上説明した実施形態では、サブパネルカバー53にモバイル端末の収容部53gを形成したが、この収容部53gにタバコ等の別のものを置いてもよく、本発明は、前記実施形態に必ずしも限定するものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 トラクタ(作業車両)
2 ディーゼルエンジン
7 前輪
9 後輪
12 DPFケース(ディーゼルパティキュレートフィルタ)
19 ボンネット
24 運転席
29 ステアリングハンドル
40 パネルカバー
42 メーターパネル
49 DPF再生ランプ
50 エンジン故障ランプ
51 手動再生スイッチ
52 再生禁止スイッチ
53 サブパネルカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13