(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029401
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】バイオマス(メタ)アクリル共重合体、それを含むコーティング剤及びインク組成物、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/28 20060101AFI20230224BHJP
C09D 11/107 20140101ALI20230224BHJP
【FI】
C08F220/28
C09D11/107
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203329
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2020059554の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】504389485
【氏名又は名称】大成ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝田 泰広
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昴樹
(57)【要約】
【課題】天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを含む(メタ)アクリレート系モノマー組成物から得られる新規バイオマス(メタ)アクリル共重合体を提供する。
【解決手段】(A)天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルと、B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミドと、(C)(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステルとを重合して得られる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルと、
(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミドと、
(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステルと
を重合して得られる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項2】
(A)成分として、炭素数12~18の直鎖飽和脂肪族アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、又は炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを含み、(C)成分として、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステルを含む、請求項1に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体;
【請求項3】
バイオマス度が5~50%である、請求項1又は2に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項4】
(C)成分を、全モノマー中20~80質量%含む、請求項3に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項5】
バイオマス度が30~55%であり、(A)成分として、炭素数16以上の直鎖飽和脂肪族天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを全モノマー中30~65質量%含み、(C)成分として、(メタ)アクリル酸C1-2アルキルエステルモノマーを、全モノマー中25~55質量%である、請求項1に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項6】
(B)成分として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-3アルキルエステルを含む、請求項1~5の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項7】
(A)成分として、融点が30℃以下である前記(メタ)アクリル酸エステルを含む、[1]~[6]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項8】
(B)成分を、全モノマー中5~15質量%含む、請求項1~7の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項9】
ガラス転移温度が40℃以上である、請求項1~8の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項10】
重量平均分子量(GPC法による)が、1万以上である、請求項1~9の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項11】
アルコール可溶性である、請求項1~10の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体を、アルコールを主成分とする溶媒中に含む、コーティング剤。
【請求項13】
請求項1~11の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体と、顔料とを、アルコールを主成分とする溶媒中に含む、インク組成物。
【請求項14】
(A) 天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、
(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミド、
(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステル、
(D) 任意に、重合開始剤、及び
(E) 溶媒
を含む混合物を加熱して重合反応させる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1~11の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、又は請求項14に記載の方法で得られたバイオマス(メタ)アクリル共重合体を、アルコールを主成分とする溶媒中に溶解する、コーティング剤の製造方法。
【請求項16】
請求項1~11の何れか1項に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、又は[14]に記載の方法で得られたバイオマス(メタ)アクリル共重合体と、顔料とを、アルコールを主成分とする溶媒中に溶解する、インク組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ブロッキング性及びアルコール溶解性に優れるバイオマス(メタ)アクリル共重合体、それを含むコーティング剤及びインク組成物等の製品、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、溶剤や樹脂などを含む多くの工業製品で、CO2の放出など環境への影響を考慮して、化石資源からの原料に代え、生物資源からの原料を用いて生産することが進められている。
例えば、印刷インクに用いられる溶媒としては、良好な印刷適性の観点から、現在でも芳香族系溶剤やケトン系溶剤が主流であるが、例えば、特許文献1では、アクリル樹脂およびニトロセルロースと、顔料とを、炭素数1~4の低級アルコールを50~70質量%含む溶剤中に含む、シュリンク包装用印刷インク組成物が提案されている。
【0003】
また、バイオマスを利用して合成した樹脂を含有するインク組成物も提案されており、例えば、特許文献2では、バイオマスから得られる水添ひまし油ポリオールと、ジイソシアネート及び鎖延長剤とを反応させてポリウレタンウレア樹脂を得、これと、着色剤とを、アルコールを主成分とする媒体中に含むアルコール系印刷インク組成物が提案されている。
【0004】
また、各種工業製品の製造に用いる中間化合物を、バイオマスから合成する試みも行われており、例えば、特許文献3では、発酵法によりバイオマスから得られる1,3-プロパンジオールを用いてアクリル酸を製造する方法が提案されている。また、特許文献4では、バイオマスから得られる乳酸から、(メタ)アクリル型乳酸マクロモノマーを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-175858号公報
【特許文献2】特開2014-005414号公報
【特許文献3】特開2017-100952号公報
【特許文献4】特開2016-160359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような先行技術に対して、本発明は、耐ブロッキング性に優れる(好ましい実施形態では更にアルコール溶解性に優れる)新規バイオマス(メタ)アクリル共重合体、それを含むコーティング剤及びインク組成物、並びにこれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを用いて、バイオマス度を高めた(メタ)アクリル共重合体の製造を試みたところ、耐ブロッキング性及びアルコール溶解性の点で従来の(メタ)アクリル共重合体より劣るという問題に直面し、この問題を解決すべく検討を重ねたところ、特定の(メタ)アクリレート系モノマーを組み合わせることで、天然アルコールの利用を通じてバイオマス度を高めることを可能としながらも、耐ブロッキング性に優れ、好ましい実施形態では更にアルコール溶解性に優れるバイオマス(メタ)アクリル共重合体が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、コーティング剤、インク組成物、及びこれらの製造方法を提供する。
[1]
(A) 天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルと、
(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミドと、
(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステルと
を重合して得られる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[2] (A)成分として、炭素数12以上、好ましくは12~18の直鎖飽和脂肪族アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、又は炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを含み、(C)成分として、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6シクロアルキルエステルを含む、[1]に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[3] バイオマス度が5~50%である、[1]又は[2]に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[4] (C)成分を、全モノマー中20~80質量%含む、[3]に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[5] バイオマス度が30~55%であり、(A)成分として、炭素数16以上、好ましくは16~18の直鎖飽和脂肪族天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを全モノマー中30~65質量%含み、(C)成分として、(メタ)アクリル酸C1-2アルキルエステルモノマーを、全モノマー中25~60質量%含む、[1]に記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[6] (B)成分として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-3アルキルエステルを含む、[1]~[5]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[7] (A)成分として、融点が30℃以下である前記(メタ)アクリル酸エステルを含む、[1]~[6]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[8] (B)成分を、全モノマー中5~15質量%含む、[1]~[7]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[9] ガラス転移温度が40℃以上である、[1]~[8]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[10] 重量平均分子量(GPC法による)が、1万以上である、[1]~[9]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[11] アルコール可溶性である、[1]~[10]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体。
[12] [1]~[11]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体を、アルコールを主成分とする溶媒中に含む、コーティング剤。
[13] [1]~[11]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体と、顔料とを、アルコールを主成分とする溶媒中に含む、インク組成物。
[14]
(A) 天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、
(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル、
(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステル、
(D) 任意に、重合開始剤、及び
(E) 溶媒
を含む混合物を加熱して重合反応させる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体の製造方法。
[15] [1]~[11]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、又は[14]に記載の方法で得られたバイオマス(メタ)アクリル共重合体を、アルコールを主成分とする溶媒中に溶解する、コーティング剤の製造方法。
[16] [1]~[11]の何れかに記載のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、又は[14]に記載の方法で得られたバイオマス(メタ)アクリル共重合体と、顔料とを、アルコールを主成分とする溶媒中に溶解する、インク組成物の製造方法。
【0009】
上記の通り、本発明のバイオマス(メタ)アクリル共重合体は、上記(A)乃至(C)の特定のモノマーを重合して得られるものである。「(A) 天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル」をモノマーの1つとすることで、耐ブロッキング性への悪影響を抑制しながら、共重合体のバイオマス度を高め、「(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステル」をモノマー組成に含めることで、耐ブロッキング性を高め、更に「(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミド」もモノマー組成に含めることで、耐ブロッキング性への悪影響を抑制しながら、アルコール溶解性を高めている。
【0010】
ここで、本願明細書中で記載する幾つかの用語の定義を示す。
「バイオマス」とは、本願明細書では、生物由来の資源の意味で用い、「バイオマス(メタ)アクリル共重合体」とは、生物由来の資源から得られたモノマーを含む成分を重合して得られる(メタ)アクリル共重合体を意味する。
また、本願明細書で用いる場合、「バイオマス度」とは、ASTM D 6866 「Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis(放射性炭素と同位体比率重量分析を用いた自然領域の材料のバイオベース率の決定試験法)」によって求められる、「バイオマス(メタ)アクリル共重合体」全体の総炭素質量に対する天然高級アルコールに由来する炭素質量の比率を意味する。
また、本願明細書で用いる場合、「天然高級アルコール」とは、天然に存在する又は天然に存在する脂肪酸エステルから得られる炭素数6以上のアルコールを意味する。具体的には、炭素数6以上の偶数で直鎖の脂肪族アルコール、又は炭素数10の脂環式アルコールが該当する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含する意味で用いる。よって、例えば、「(メタ)アクリル酸」との語は、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を包含する。同様に、「(メタ)アクリレート」との語は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含する。
また、特記しない限り、本明細書において「分子量」は、重量平均分子量(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)を意味する。
なお、特記しない限り、各種操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~60%の条件で行っている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0012】
上記の通り、本発明は、
(A) 天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルと、
(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミドと、
(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステルと
を重合して得られる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体、これを含むコーティング剤及びインク組成物等の製品、並びにこれらの製造方法に関する。
【0013】
本発明によるバイオマス(メタ)アクリル共重合体は、バイオマス度を高めるために、モノマー成分(A)として、天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを含む。天然高級アルコールは、天然の脂肪酸エステル(例えば、油脂)を還元して得ることができ、製造工程も含め環境への影響が小さな原料である。天然高級アルコールとしては、炭素数が6~36の直鎖の脂肪族アルコールが挙げられ、炭素数が12~20の直鎖の飽和脂肪族アルコールが好ましく、炭素数が16~18の直鎖の飽和脂肪族アルコールがより好ましい。このような直鎖の脂肪族アルコールの好ましい例として、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。
【0014】
また、天然高級アルコールとしては、炭素数10の脂環式アルコールも知られており、例えば、樹木から採出されるイソボルニルアルコールなどが挙げられる。
【0015】
天然高級アルコールで(メタ)アクリル酸のカルボキシル基をエステル化する方法は、従来の方法でよく、例えば、脱水縮合法、エステル交換法によるエステル化が挙げられる。
【0016】
バイオマス(メタ)アクリレートとしては、炭素数が6~36の直鎖の脂肪族アルコールで(メタ)アクリル酸をエステル化した(メタ)アクリレートが挙げられ、耐ブロッキング性への悪影響の低減とともに、アルコール溶解性の点から、炭素数が12~20の直鎖の飽和脂肪族アルコールで(メタ)アクリル酸をエステル化した(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が16~18の直鎖の飽和脂肪族アルコールで(メタ)アクリル酸をエステル化した(メタ)アクリレートがより好ましい。同様の点から、40℃以下の融点を有するバイオマス(メタ)アクリレートが好ましく、30℃以下の融点を有するバイオマス(メタ)アクリレートがより好ましい。
具体例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セテアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。もっとも、耐ブロッキング性への影響が少ない点で、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びセテアリル(メタ)アクリレートが好ましく、結晶化度を高く耐ブロッキング性への影響が小さく、且つアルコール溶解性の点からも影響が小さい点でステアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0017】
また、バイオマス(メタ)アクリレートとしては、炭素数10の脂環式アルコールで(メタ)アクリル酸をエステル化した(メタ)アクリレートが挙げられ、耐ブロッキング性への影響が少ないイソボルニルメタクリレートが好ましい。
【0018】
市販のバイオマスメタクリレートとしては、ライトエステルL(ラウリルメタクリレート、共栄社化学株式会社製)、アクリエステルL(ラウリルメタクリレート、三菱ケミカル株式会社製)、エヌジェルブCM-18(ステアリルメタクリレート、新日本理化株式会社製)、ライトエステルS(ステアリルメタクリレート、共栄社化学株式会社製)、アクリエステルIBX(メタクリル酸イソボルニル、三菱ケミカル株式会社製)がある。これらメタアクリレートの全炭素に対する天然アルコールに由来する炭素の割合(質量%)は、ラウリルメタクリレートは約75%、ステアリルメタクリレートは約82%、メタクリル酸イソボルニルは約71%であり、上述した「バイオマス度」と同様にして求めることができる。
【0019】
同様に、市販のバイオマスアクリレートとしては、ライトアクリレートL-A(ラウリルアクリレート、共栄社化学株式会社製)、ブレンマーCA(セチルアクリレート、日油株式会社)、ライトアクリレートS-A(ステアリルアクリレート、共栄社化学株式会社製)、ブレンマーVA(ベヘニルアクリレート、日油株式会社製)、ライトアクリレートIB-XA(イソボルニルアクリレート、共栄社化学株式会社製)ライトアクリレートSA(ステアリルアクリレート、共栄社化学株式会社製)、等がある。同様に天然アルコールに由来する炭素の割合(質量%)はラウリルアクリレートは約80%、セチルアクリレートは約84%、ステアリルアクリレートは約86%、ベヘニルアクリレートは約88%、イソボルニルアクリレートは約77%である。なお、これらバイオマスアクリレートは、バイオマスメタアクリレートに比べ、共重合体のガラス転移温度を低くする傾向がある。従って、この点を考慮して、他のモノマーを選択し、その含有量を調整することが好ましい。
【0020】
本発明では、モノマー(A)によって、得られる(メタ)アクリル共重合体のバイオマス度を高めている。従って、温室効果ガス削減の観点からは、モノマー組成中のモノマー成分(A)の含有量が高いほど好ましいが、この含有量が高くなるにつれ、得られる共重合体のアルコール溶解性及び耐ブロッキング性が低下する傾向になる。従って、バイオマス度を高めながらも、アルコール溶解性及び耐ブロッキング性の低下が少ない含有量とすることが望まれる。この点、アルコール溶解性及び耐ブロッキング性は、上述したモノマー(A)の種類、並びに後述するモノマー(B)及び(C)の種類及び含有量によっても変動するため、モノマー(A)の含有量は、これらの事項に応じて、通常、全モノマーの合計質量に対して5~70質量%とすることができ、好ましくは10~60質量%であり、より好ましくは30~60質量%である。また、バイオマス度が20%以上、好ましくは30~55%とする場合には、(A)成分として、炭素数16以上、好ましくは炭素数16~20、より好ましくは炭素数16~18の直鎖脂肪族アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを全モノマー中30~65質量%含むことが好ましい。
【0021】
本発明では、得られるバイオマス(メタ)アクリル共重合体をアルコール溶解性にして、アルコールを主成分とする溶媒を使用可能とし、その一方で、耐ブロッキング性への影響を小さくするため、モノマー成分(B)として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミドを含む。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、ヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。耐ブロッキング性への影響を小さいという点で、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-3アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-2アルキルエステルがより好ましい。
【0022】
モノマー成分(B)の含有量も、得られる共重合体がアルコール溶解性と共に、耐ブロッキング性を有するように、他のモノマー成分の種類及び含有量に応じて調整することが好ましいが、通常1~40質量%であり、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは5~25質量%であり、特に好ましくは5~15質量%である。
【0023】
本発明によるバイオマス(メタ)アクリル共重合体は、上述した、バイオマス度を高めるモノマー成分(A)を含みながら、優れた耐ブロッキング性を有する共重合体とするために、モノマー成分(C)として、(メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステルを含む。
(メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせてもよい。
含有量を少なく(従って、モノマー成分(A)の含有量を多くしてバイオマス度を高めることができる)しながら、優れた耐ブロッキング性を付与するためには、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸C1-3アルキルがより好ましく、(メタ)アクリル酸C1-2アルキルがさらに好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0024】
モノマー成分(C)の含有量は、他のモノマー成分、特にモノマー成分(A)の種類及び他のモノマー成分の含有量に応じて、バイオマス度を考慮しながらも優れた耐ブロッキング性を付与し得るように調整することが好ましいが、全モノマー中、通常は20~80質量%であり、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは25~60質量%であり、特に好ましくは30~55質量%である。
【0025】
耐ブロッキング性の観点からモノマー成分の種類及び含有量を決める際に、共重合体のガラス転移温度を指標とすることができ、ガラス転移温度が40℃以上の共重合体が得られるモノマーの組み合わせ及び含有量とすることが好ましい。
共重合体である(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は、下記(1)に示すFoxの式より算出できる。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+・・・Wn/Tgn (1)
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wn:モノマーNの重量
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0026】
また、主要なホモポリマーのガラス転移温度(Tg)(K)は、例えば、表1に記載の通りである。
【表1】
モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)は200~320Kが好ましく、モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)は200~371Kが好ましく、モノマーCのホモポリマーのガラス転移温度(K)は283~378Kが好ましい。
なお、重合体のガラス転移温度は、公知の示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。
【0027】
本発明のバイオマス(メタ)アクリル共重合体は、要求されるバイオマス度によって、成分(A)乃至(C)のモノマーの種類及び含有量が変わり得るが、好ましい例として、以下の組成を挙げることができる。
【表2】
【表3】
【0028】
[バイオマス(メタ)アクリル共重合体の性状]
本発明のバイオマス(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、有機溶媒や他樹脂との親和性および塗膜の硬度を向上させる観点から、好ましくは10,000~150,000であり、より好ましくは30,000~120,000である。なお、分子量は、例えば、モノマー濃度、モノマーの量に対する触媒及び/又は重合開始剤の量を調整したり、連鎖移動剤を使用することで、変えることができる。
【0029】
本発明のバイオマス(メタ)アクリル共重合体の粘度は、バインダー樹脂や有機溶媒との相溶性や作業性の観点から、0.1~20.0Pa・s(温度25℃)であることが好ましい。
【0030】
本発明に係るバイオ(メタ)アクリル共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。ただし、上記の通り、耐ブロッキング性の観点から、ガラス転移温度が40℃以上の共重合体であることが好ましい。
【0031】
<バイオマス(メタ)アクリル共重合体の製造方法>
本発明のバイオマス(メタ)アクリル共重合体は、特に限定されず、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いて製造することができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。中でも、分子量の調節が容易であり、また不純物の量も少ないことから、重合開始剤(好ましくは、熱重合開始剤)を用いた溶液重合法が好ましい。
【0032】
重合開始剤の添加量は、共重合させる単量体の合計重量に対して、好ましくは0.2~10.0質量%であり、より好ましくは0.3~5.0質量%であり、さらにより好ましくは0.3~2.0質量%である。なお、重合開始剤は、一括で添加してもよいし、何回かに分けて添加してもよい。
【0033】
熱重合開始剤の例としては、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0034】
また、重合体前駆体を合成して分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の添加量は、共重合させる単量体の合計重量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.5~3質量%であり、さらにより好ましくは1~2質量%である。
【0035】
連鎖移動剤の例としては、メチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびそのエステル、2-エチルヘキシルチオグリコール、チオグリコール酸オクチルなどのメルカプタン類;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;クロロエタン、フルオロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒドなどのカルボニル類;メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0036】
重合条件は、特に制限されず、用いる重合開始剤の種類等によって適宜調節できるが、例えば、不活性ガス(好ましくは窒素)雰囲気下、は60~90℃の重合温度で、3~10時間反応させて行うことができる。
【0037】
重合溶媒としては、重合させる各単量体、生成する重合体前駆体、および必要に応じて重合開始剤その他の添加剤を溶解できるものであれば特に制限されず、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸メチル、ジメチルスルホキシド、水等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0038】
例えば、全単量体の合計仕込み量の5質量%以上40質量%未満となる重合溶媒を配合することができる。
【0039】
得られたバイオマス(メタ)アクリル共重合体は、溶媒に溶解して、インク、塗料、コーティング剤等として利用することができる。また、フィルム、繊維、不織布、包装、トナー、シート、フォーム、接着剤等の原料として用いることができる。特に、シュリンクフィルム用インク及びオーバープリントニス、食品トレー用インク及びオーバープリントニスなどのグラビヤインクでの利用が期待される。
【0040】
インク、塗料、コーティング剤等を調製する場合、アルコール溶解性という特性を生かして、アルコールを主成分とする溶媒にバイオマス(メタ)アクリル樹脂を溶解することが好ましい。これにより、芳香族系溶剤やケトン系溶剤といった有機溶剤の使用を大幅に低減できる。「アルコールを主成分とする溶媒」は、上記重合溶媒で列挙した化合物を含み得るが、50質量%以上のアルコールを含む。好ましい溶媒としては、イソプロパノール又はイソプロパノールを含む溶媒を挙げることができる。
【0041】
インク、塗料、コーティング剤等を調製する場合には、塗膜の物性を悪化させない範囲で、他のバイオマス樹脂を添加してもよい。このようなバイオマス樹脂としては、例えば、ロジンエステル、セルロースアセテートブチレート等の繊維分、ダンマル、マスチック、コーパル、琥珀、バルサム、天然ゴム/ラテックス、エレミ、乳香、アラビアガム、バイオ由来原料で合成された、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。このような他のバイオマス樹脂は、通常、全樹脂中、30質量%以下である。
【0042】
インク、塗料を調製する場合、印刷インクや塗料で一般的に用いられる各種無機顔料、有機顔料、或いは体質顔料が使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、黄鉛、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物が挙げられる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化珪素、クレー、有機ベントナイト、硅石粉等が挙げられる。これらは、単独で、又は組み合わせて使用できる。,N’-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン系触媒が上げられこれらの単独、もしくは複合系で使用できる。有機溶剤としては例えば、トルエン、キシレン等の芳香族類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられこれらの単独、もしくは複合系で使用できる。
【0043】
インク、塗料、コーティング剤等を塗布する際には、組成物を溶剤で希釈して、塗工し易い粘度に調整してもよい。
基材への塗布は、例えば、膜厚が3μ~10μとなる量の組成物を塗布する。
塗布方法は、特に制限されず、例えば、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングなどの公知の手法を採用することができる。また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置で塗布してもよい。
インク等の顔料を含む組成物では、グラビア版を用いてグラビア印刷方式にて印刷してもよい。基材は特に制限はされないが、典型例としてプラスチックフィルムを挙げることができる。プラスチックフィルムは、処理または未処理のポリエチレン、処理または未処理のポリプロピレンなどの延伸及び無延伸ポリオレフィンフィルム、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン、セロファン、ビニロン等のフィルムが例示される。これらのプラスチックフィルムは、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込み等により、加工されてもよい。
【0044】
ポリスチレンフィルムは、PVCフィルムやPETフィルムと比較して耐溶剤性が低いために、通常のプラスチックフィルム用印刷インクの溶剤組成では、溶剤によりフィルムの劣化を起こし、経時収縮、フィルムの強度低下(伸び・引張強度)、クラック等を生じる。これに対して、本発明によれば、アルコールリッチのインクを設計することができ、ポリスチレンフィルムを基材とする場合でも、フィルムを劣化させずに印刷又はコーティングすることができる。
【0045】
グラビア印刷などで印刷されたフィルムがロールで出荷される際に、印刷されたインクがフィルムの裏面とくっ付いて剥がれなかったり、インクが反対面に転写移行することがある。この点、本発明の共重合体を用いて製造されたインクやコーティング剤では、耐ブロッキング性に優れる被膜を形成することができ、バイオマスから得られる製品にあっても、このような問題を生じない。
【実施例0046】
[実施例1]バイオマス度33%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:69.7℃
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル192gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、40℃で、24時間かけて液状化させたステアリルメタクリレート(製品名:エヌジェルブCM-18、新日本理化株式会社製、融点29.4℃)192gと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)240gとを混合し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0047】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分40.0%、粘度300mPa・S、重量平均分子量55000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0048】
[実施例2]バイオマス度33%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:69.7℃
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル150gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0049】
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、40℃で、24時間かけて液状化させたステアリルメタクリレート(製品名エヌジェルブCM-18、新日本理化株式会社製、融点29.4℃)192gと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)240gとを混合し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN,大塚化学株式会社製)2.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0050】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル138g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分40.0%、粘度1250mPa・S、重量平均分子量100000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0051】
[実施例3]バイオマス度49%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:56.6℃
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル192gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0052】
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、40℃で、24時間かけて液状化させたステアリルメタクリレート(製品名エヌジェルブCM-18(新日本理化株式会社製、融点29.4℃)288gと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)144gとを混合し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0053】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分40.0%、粘度100mPa・S、重量平均分子量57000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0054】
[実施例4]バイオマス度40.2%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:46.5℃
【0055】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル192gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0056】
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、40℃で、24時間かけて液状化させたステアリルメタクリレート(製品名:エヌジェルブCM-18、新日本理化株式会社製、融点29.4℃)192g、及びラウリルメタクリレート(製品名ライトエステルL(共栄社化学株式会社製、融点-20℃)48gと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)192gとを混合し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0057】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分40.0%、粘度235mPa・S、重量平均分子量68000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0058】
[実施例5]バイオマス度32.0%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:44.5℃
【0059】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル192gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0060】
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、40℃で、24時間かけて液状化させたステアリルメタクリレート(製品名:エヌジェルブCM-18、新日本理化株式会社製、融点29.4℃)144g、及びラウリルメタクリレート(製品名:ライトエステルL、共栄社化学株式会社製、融点-20℃)48gと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)192g及びブチルメタクリレート(製品名:ライトエステルNB、共栄社化学工業株式会社製)48gとを混合し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0061】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分40.0%、粘度200mPa・S、重量平均分子量50000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0062】
[比較例1]バイオマス度0%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:42.5℃
【0063】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル192gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0064】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)129.6g、及びブチルメタクリレート(製品名:ライトエステルNB、共栄社化学工業株式会社製)302.4gとを混合し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0065】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分40.0%、粘度500mPa・S、重量平均分子量50000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0066】
[比較例2]バイオマス度22.5%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:20℃
【0067】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル192gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0068】
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、ラウリルメタクリレート(製品名ライトエステルL(共栄社化学株式会社製、融点-20℃)144gと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製 )48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)240g、及びブチルメタクリレート(製品名:ライトエステルNB、共栄社化学工業株式会社製)48gとを混合し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0069】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分40.0%、粘度540mPa・S、重量平均分子量50000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0070】
[比較例3]バイオマス度40.9%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:68.2℃
【0071】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル138gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0072】
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、40℃で、24時間かけて液状化させたステアリルメタクリレート(製品名エヌジェルブCM-18(新日本理化株式会社製、融点29.4℃)240gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)240gとを、酢酸エチル54gに溶解し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0073】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した。
得られた無色透明のポリマー溶液は、固形分38.8%、粘度190mPa・S、重量平均分子量64000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0074】
[比較例4]バイオマス度81.8%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:38.0℃
【0075】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル107gとイソプロピルアルコール48gを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0076】
天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、40℃で、24時間かけて液状化させたステアリルメタクリレート(製品名:エヌジェルブCM-18、新日本理化株式会社製、融点29.4℃)480gを、酢酸エチル157gに溶解し、得られた混合液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0077】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル96g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈したところ、白色沈殿が生じアルコールとの溶解性が悪く粘度測定等の物性測定には至らなかった。
【0078】
[比較例5] バイオマス度35.2%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:75.9℃
【0079】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル107g及びイソプロピルアルコール48gと、天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、50℃で、24時間かけて液状化させたベヘニルアクリレート(製品名:ブレンマーVA、日油株式会社、融点46℃)192gとを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0080】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)240gとを、酢酸エチル24g及びイソプロピルアルコール24gの混合溶媒に溶解し、得られた溶液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0081】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈したところ、白色沈殿が生じアルコールとの溶解性が悪く粘度測定等の物性測定には至らなかった。
【0082】
[比較例6] バイオマス度34.0%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:72.8℃
【0083】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル168g及びイソプロピルアルコール24gと、天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、50℃で、24時間かけて液状化させたベヘニルアクリレート(製品名:ブレンマーVA、日油株式会社、融点46℃)96gとを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0084】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)240gとを、酢酸エチル24g及びイソプロピルアルコール24gの混合溶媒に溶解し、得られた溶液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0085】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈したところ、白色沈殿が生じアルコールとの溶解性が悪く粘度測定等の物性測定には至らなかった。
【0086】
[比較例7] バイオマス度8.8%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体、ガラス転移温度:93.2℃
【0087】
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、溶媒として、酢酸エチル168g及びイソプロピルアルコール24gと、天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル(A)として、50℃で、24時間かけて液状化させたベヘニルアクリレート(製品名:ブレンマーVA、日油株式会社、融点46℃)48gとを仕込み、沸点(約78℃)になるまで加温し保持した。
【0088】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル(B)として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名:ライトエステルHOM、共栄社化学工業株式会社製)48gと、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステル(C)として、メチルメタクリレート(製品名:アクリエステルM、三菱ケミカル株式会社製)384gとを、酢酸エチル24g及びイソプロピルアルコール24gの混合溶媒に溶解し、得られた溶液中に、重合開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学株式会社製)5.4gを入れ溶解した。得られたモノマーと開始剤の混合液を沸点(78~85℃)にて均一の速度で2時間かけて滴下し、滴下後1時間温度を維持した。
【0089】
2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65,富士フィルム和光純薬株式会社製)3.84gを、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール72gの溶媒に溶解して、開始剤溶液を調製し、これを上記モノマーと開始剤の混合液に、沸点(80℃~84℃)にて2時間かけて均一の速度で滴下し、滴下後1時間温度を維持した後、70℃まで冷却し、酢酸エチル72g及びイソプロピルアルコール240gの溶媒で希釈した得られた白濁ポリマー溶液は、固形分40.8%、粘度9120mPa・S、重量平均分子量64000(昭和電工製SHODEX KF-806Mを用いてGPC法で測定)であった。
【0090】
以下に、各実施例及び比較例で用いたモノマーの概要と得られた重合体の特性を纏めて示す。
【表4】
【0091】
【0092】
SMA:ステアリルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
VA :ベヘニルアクリレート
2HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
PA溶解性:以下の基準で目視で評価した。
◎:任意の希釈ができる
〇:IPAを50質量%入れると白濁する
×:IPAを50質量%入れるとポリマー分が沈殿する。
【0093】
<耐ブロッキング性評価試験及びIPA溶解性試験>
1.試験試料の調製
各実施例及び比較例で調製したバイオマス(メタ)アクリル共重合体(固形分40%)10部をイソプロピルアルコール10部で希釈して固形分20%に調整した。そのコーティング剤をポリスチレンフィルム(収縮性ポリスチレンフィルム、シーアイ化成株式会社製)にワイヤーバーNo16でドライ膜厚5μになるように塗膜を形成した。
【0094】
2.耐ブロッキング性評価試験の手順及び評価基準
塗膜を形成した2枚のポリスチレンフィルムを、塗膜面同士で張り合わせて300gの荷重を加え、50℃、80%の相対湿度の雰囲気下で24時間保持し、その後2枚のポリスチレンフィルムを剥がし、以下の基準で評価した。
◎:まったく変化がない
〇:点剥離がある。
×:剥がしたときに全面的に剥離がある
【0095】
3.IPA溶解性試験の手順及び評価基準
上述した固形分20%に調整した際のバイオマス(メタ)アクリル共重合体溶液の外観を目視で観察して、以下の基準で評価した。
◎:無色透明で外観に変化なし
〇:白濁したが、沈殿物はない
×:沈殿した
【0096】
以下に、各実施例及び比較例で得られた共重合体についての耐ブロッキング性及びIPA溶解性の試験結果を、バイオマス度及びガラス転移温度と共に纏めて示す。
【0097】
【0098】
実施例1~5で得られた共重合体は、(A) 天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルと、(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステルと、(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステルとを重合して得られた、バイオマス度が32~49%のバイオマス(メタ)アクリル共重合体であり、ガラス転移温度(計算値)が、44.5~69.7℃となるようにモノマーの種類及び含有量を設計している。これらのバイオマス(メタ)アクリル共重合体では、耐ブロッキング性及びIPAの溶解性が何れも良好な結果になった。
比較例1で得られた共重合体は、実施例1~5で得られた共重合体と同様に、耐ブロッキング性及びIPAの溶解性の物性は良好ではあるが、天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルをモノマー組成に含まず、バイオマス度は0%である。従って、環境に配慮した設計ではない。
比較例2で得られた共重合体は、モノマー成分(A)として、ラウリルメタクリレート(ホモポリマーTg:208℃)のみを用いてバイオマス度を22.5%としたバイオマス(メタ)アクリル共重合体であるが、共重合体のガラス転移温度が20℃になり被膜の耐ブロッキング性が著しく悪化した。実施例1乃至5及び比較例1との比較から、バイオマス度の低い共重合体であれば、モノマー成分(A)を、ラウリルメタクリレートのみとすることも可能と推測されるが、バイオマス度の高い共重合体とする場合には、モノマー成分(A)に、より炭素数の多い天然高級アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを含ませる必要があることが理解される。
比較例3及び4で得られた共重合体は、2ヒドロキシエチルメタクリレートを含まないモノマー組成で調製された重合体であり、比較例3では、重合溶液は得られたものの、IPAの溶解性が著しく低く、比較例4で得られた共重合体にいたっては、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した時点で、白色沈殿を生じた。従って、いずれの共重合体も、インク、コーティング剤としての利用は困難であった。
比較例5~6で得られた共重合体は、は、モノマー成分(A)にベヘニルアクリレートを含ませてバイオマス度を35.2%及び34.0%としたバイオマス(メタ)アクリル共重合体であるが、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した時点で、白色沈殿を生じた。比較例7で得られた共重合体は、モノマー成分(A)として、ベヘニルアクリレートをより少ない量(10重量%、バイオマス度を8.8%)含有させて得たバイオマス(メタ)アクリル共重合体であり、重合溶液は得られたが、IPAの溶解性が著しく低く、インク、コーティング剤としての利用は困難であった。比較例5乃至7の結果は、ベヘニルアクリレートをモノマーに含ませた結果、共重合体の結晶性(ベヘニルアクリレートの融点:46℃)が高くなり、アルコールの溶解性が低下したものと推察される。従って、溶媒としてアルコールを用いる組成では、より融点の低いモノマー成分(A)を選択することが望ましいことが理解される。なお、比較例1との比較から、比較例7より更にバイオマス度の低い共重合体としたり、より融点の低いモノマー成分(A)の重量比をより多くしたり、モノマー成分(B)の含有量を調整すれば、モノマー成分(A)に、ベヘニルアクリレートを含ませることは可能と推察される。
本発明によれば、アルコール溶解性及び耐ブロッキング性に優れるバイオマス(メタ)アクリル共重合体が提供される。本発明に係るバイオマス(メタ)アクリル共重合体は、環境に配慮した再生可能な原料として、従来の化石燃料のみから製造された(メタ)アクリル共重合体に代わって、インク、塗料、コーティング剤、フィルム、繊維、不織布、包装、トナー、シート、フォーム、接着剤等の様々な工業製品の原料として利用されることが期待される。
(A) 炭素数12~20の直鎖飽和脂肪族天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、又は炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルと、
(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミドと、
(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステルと
を重合して得られる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体であって、
(A)成分は、少なくとも炭素数16から20の直鎖飽和脂肪族天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、又は前記炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを含み、前記炭素数16から20の直鎖飽和脂肪族天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、又は前記炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルは、全モノマー中10~70質量%含み、
(B)成分は、全モノマー中5~30質量%含み、
(C)成分は、(メタ)アクリル酸C1-2アルキルエステルモノマーを含み、前記(メタ)アクリル酸C1-2アルキルエステルモノマーは、全モノマー中25~60質量%含み、
重量平均分子量(GPC法による)が10,000~120,000である、バイオマス(メタ)アクリル共重合体。
(A) 炭素数12~20の直鎖飽和脂肪族天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、又は炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、
(B) (メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルエステル又はヒドロキシC1-5アルキル(メタ)アクリルアミド、
(C) (メタ)アクリル酸C1-8アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸C6-8シクロアルキルエステル、
(D) 任意に、重合開始剤、及び
(E) 溶媒
を含む混合物を加熱して重合反応させる、バイオマス(メタ)アクリル共重合体の製造方法であって、
(A)成分は、少なくとも炭素数16から20の直鎖飽和脂肪族天然アルコール、又は前記炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルを含み、前記炭素数16から20の直鎖飽和脂肪族天然アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステル、又は前記炭素数10の脂環式アルコールでエステル化した(メタ)アクリル酸エステルは、全モノマー中10~70質量%含み、
(B)成分を、全モノマー中5~30質量%含み、
(C)成分は、(メタ)アクリル酸C1-2アルキルエステルモノマーを含み、前記(メタ)アクリル酸C1-2アルキルエステルモノマーは、全モノマー中25~60質量%含み、
前記バイオマス(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(GPC法による)が10,000~120,000である、製造方法。