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特開2023-295製氷用熱交換器および製氷用熱交換器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000295
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】製氷用熱交換器および製氷用熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/08 20060101AFI20221222BHJP
   F25C 1/145 20180101ALI20221222BHJP
   F25C 1/22 20180101ALI20221222BHJP
   F28F 3/12 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
B21D53/08 B
B21D53/08 D
F25C1/145 Z
F25C1/22 301B
F28F3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101034
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
(57)【要約】
【課題】製造が容易な製氷用熱交換器を実現する。
【解決手段】製氷用熱交換器は、第1方向に延びる第1貫通孔が形成され、当該第1方向に沿う底面と、当該第1方向に沿い且つ当該底面から立ち上がる複数の第1仕切壁とを有する第1仕切部材と、前記第1仕切部材に対し前記第1方向の両側に配置され、当該第1仕切部材の前記底面および前記第1仕切壁に交差する第2仕切壁を有し、当該第1方向に貫通する第2貫通孔が形成された複数の第2仕切部材と、前記第1方向に延び、前記第1仕切部材の前記第1貫通孔と前記第2仕切部材の前記第2貫通孔とに連続して通されるパイプとを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる第1貫通孔が形成され、当該第1方向に沿う底面と、当該第1方向に沿い且つ当該底面から立ち上がる複数の第1仕切壁とを有する第1仕切部材と、
前記第1仕切部材に対し前記第1方向の両側に配置され、当該第1仕切部材の前記底面および前記第1仕切壁に交差する第2仕切壁を有し、当該第1方向に貫通する第2貫通孔が形成された複数の第2仕切部材と、
前記第1方向に延び、前記第1仕切部材の前記第1貫通孔と前記第2仕切部材の前記第2貫通孔とに連続して通されるパイプと
を備える製氷用熱交換器。
【請求項2】
前記第1仕切部材および前記第2仕切部材は、前記パイプの外周面と、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の内周面との接触により、前記第1方向への移動が規制されていることを特徴とする請求項1に記載の製氷用熱交換器。
【請求項3】
前記第1仕切部材および/または前記第2仕切部材の表面には、耐食性を有する被膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の製氷用熱交換器。
【請求項4】
前記第2仕切部材は、前記第1仕切部材に隣接する面にろう材が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の製氷用熱交換器。
【請求項5】
前記第1仕切部材を複数有し、
複数の前記第1仕切部材は、前記第1方向に沿って押出加工された1つの部材を当該第1方向に交差する面で複数に切断することにより得られたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製氷用熱交換器。
【請求項6】
前記パイプは、内周面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製氷用熱交換器。
【請求項7】
押出加工により、押出方向に延びる貫通孔と、当該押出方向に沿う延伸面と、当該押出方向に沿い当該延伸面から立ち上がる立ち上がり面とが形成された押出部材を成形し、
前記押出部材を前記押出方向に交差する交差面で切断することで、前記貫通孔が切断され当該押出方向に延びる第1貫通孔と、前記延伸面が切断された底面と、前記立ち上がり面が切断された第1仕切壁とが形成された複数の第1仕切部材を作製し、
前記押出方向に並ぶ複数の前記第1仕切部材の間に、前記交差面に沿う第2仕切壁を有し当該押出方向に貫通する第2貫通孔が形成された板状の第2仕切部材を配置し、
前記押出方向に延びるパイプを、前記第1仕切部材の前記第1貫通孔と前記第2仕切部材の前記第2貫通孔とに挿入する
製氷用熱交換器の製造方法。
【請求項8】
前記第1仕切部材の前記第1貫通孔および前記第2仕切部材の前記第2貫通孔に前記パイプを通した後、当該第1仕切部材および当該第2仕切部材の表面に耐食性塗料を塗布し、またはめっき処理を施すことにより被膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の製氷用熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷用熱交換器および製氷用熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、冷却パイプが設けられた製氷機基盤と、仕切板が格子状に組み付けられた仕切部材とを有する製氷室が開示されている。この製氷室では、製氷機基盤と仕切部材との間に挟み込んだろう材を溶融させることで、製氷機基盤と仕切部材とをろう付けしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-118816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒が流通する冷媒流路を有する基板を備える製氷用熱交換器は、例えば、以下のように製造する。まず、プレス加工により冷媒流路が形成されたプレス板と平板状のベース板とをろう付けすることにより基板を作製し、続いて、この基板に対し仕切部材をろう付けする。この場合、製氷用熱交換器を製造するためにプレス加工工程やろう付け工程が必要となり、製氷用熱交換器の製造工程が複雑になりやすい。
本発明は、製造が容易な製氷用熱交換器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明が適用される製氷用熱交換器は、第1方向に延びる第1貫通孔が形成され、当該第1方向に沿う底面と、当該第1方向に沿い且つ当該底面から立ち上がる複数の第1仕切壁とを有する第1仕切部材と、前記第1仕切部材に対し前記第1方向の両側に配置され、当該第1仕切部材の前記底面および前記第1仕切壁に交差する第2仕切壁を有し、当該第1方向に貫通する第2貫通孔が形成された複数の第2仕切部材と、前記第1方向に延び、前記第1仕切部材の前記第1貫通孔と前記第2仕切部材の前記第2貫通孔とに連続して通されるパイプとを備える製氷用熱交換器である。
ここで、前記第1仕切部材および前記第2仕切部材は、前記パイプの外周面と、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の内周面との接触により、前記第1方向への移動が規制されていることを特徴とすることができる。
また、前記第1仕切部材および/または前記第2仕切部材の表面には、耐食性を有する被膜が形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記第2仕切部材は、前記第1仕切部材に隣接する面にろう材が形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記第1仕切部材を複数有し、複数の前記第1仕切部材は、前記第1方向に沿って押出加工された1つの部材を当該第1方向に交差する面で複数に切断することにより得られたものであることを特徴とすることができる。
また、前記パイプは、内周面に凹凸が形成されていることを特徴とすることができる。
また、他の観点から捉えると、本発明が適用される製氷用熱交換器の製造方法は、押出加工により、押出方向に延びる貫通孔と、当該押出方向に沿う延伸面と、当該押出方向に沿い当該延伸面から立ち上がる立ち上がり面とが形成された押出部材を成形し、前記押出部材を前記押出方向に交差する交差面で切断することで、前記貫通孔が切断され当該押出方向に延びる第1貫通孔と、前記延伸面が切断された底面と、前記立ち上がり面が切断された第1仕切壁とが形成された複数の第1仕切部材を作製し、前記押出方向に並ぶ複数の前記第1仕切部材の間に、前記交差面に沿う第2仕切壁を有し当該押出方向に貫通する第2貫通孔が形成された板状の第2仕切部材を配置し、前記押出方向に延びるパイプを、前記第1仕切部材の前記第1貫通孔と前記第2仕切部材の前記第2貫通孔とに挿入する製氷用熱交換器の製造方法である。
ここで、前記第1仕切部材の前記第1貫通孔および前記第2仕切部材の前記第2貫通孔に前記パイプを通した後、当該第1仕切部材および当該第2仕切部材の表面に耐食性塗料を塗布し、またはめっき処理を施すことにより被膜を形成することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造が容易な製氷用熱交換器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態が適用される製氷用熱交換器の斜視図である。
図2】本実施の形態が適用される製氷用熱交換器の斜視図である。
図3】製氷用熱交換器を構成する部品を分解した図である。
図4図1に示した製氷用熱交換器をIV-IV部から下方向に延びる面で切断した断面図である。
図5図4に示した製氷用熱交換器をV-V部で切断した断面図である。
図6】製氷用熱交換器の製造手順の一例を示したフローチャートである。
図7】(a)~(b)は、製氷用熱交換器の製造において、第1仕切部材を作製する手順を示した図である。
図8】従来の製氷用熱交換器の構成の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1および図2は、本実施の形態が適用される製氷用熱交換器1の斜視図である。図2は、図1の製氷用熱交換器1を、Z方向を軸として180度回転させた図に対応する。図3は、製氷用熱交換器1を構成する部品を分解した図である。図4は、図1に示した製氷用熱交換器1をIV-IV部から下方向に延びる面(YZ面)で切断した断面図である。図5は、図4に示した製氷用熱交換器1をV-V部で切断した断面図である。以下の説明では、各図の上下方向であるZ方向を、製氷用熱交換器1の上下方向または単に上下方向と表記する場合がある。
【0009】
(製氷用熱交換器1)
製氷用熱交換器1は、方眼状に仕切られた複数(この例では16個)の製氷空間Sを有し、製氷空間S内に投入された水と後述する冷媒流路4を流通する冷媒との間で熱交換して、製氷空間S内の水を氷結させる(製氷する)ために用いられる。
製氷用熱交換器1は、製氷空間Sを形成する複数(この例では4個)の第1仕切部材2を備えている。また、製氷用熱交換器1は、第1仕切部材2とともに製氷空間Sを形成する複数(この例では5個)の第2仕切部材3を備えている。さらに、製氷用熱交換器1は、製氷空間Sに投入された水を冷却するための冷媒が流通する冷媒流路4を備えている。
【0010】
図1および図2に示すように、本実施の形態の製氷用熱交換器1では、複数の第1仕切部材2と複数の第2仕切部材3とが交互に並んで配置されている。付言すると、この例では、予め定めた方向に並ぶ第2仕切部材3同士の間に、第1仕切部材2がそれぞれ配置されている。以下の説明では、製氷用熱交換器1において第1仕切部材2と第2仕切部材3とが並ぶ方向を、X方向と表記する場合がある。
そして、製氷用熱交換器1には、第1仕切部材2の後述する第1仕切壁21および底面22と、第2仕切部材3の後述する第2仕切壁31とにより囲まれる複数の製氷空間Sが形成されている。図1に示す製氷用熱交換器1では、それぞれが直方体状の形状を有する製氷空間Sが、X方向およびX方向に直交するY方向に4列ずつ、合計16個形成されている。なお、本実施の形態では、X方向が第1方向に対応し、Y方向が第2方向に対応する。
【0011】
(第1仕切部材2)
第1仕切部材2は、Y方向に長尺のブロック状の形状を有している。第1仕切部材2は、X方向およびY方向に沿う底面22と、それぞれがX方向に沿い且つ底面22からZ方向(上方向)に立ち上がる複数(この例では5個)の第1仕切壁21とを備えている。付言すると、第1仕切壁21は、X方向およびZ方向に沿う板状の形状を有しており、底面22上において、Y方向に等間隔に並んでいる。この例では、隣接する第1仕切壁21同士の間隔は、底面22のX方向の幅と略等しい。
【0012】
また、第1仕切部材2は、底面22の下方に連続する直方体状の形状を有し、冷媒流路4を支持し、冷媒流路4を通過する冷媒によって冷却される第1冷却部23を備えている。さらに、第1仕切部材2には、第1冷却部23をX方向に貫通する複数の第1貫通孔25が形成されている。
複数の第1貫通孔25は、第1冷却部23において、Y方向に等間隔に並んでいる。より具体的には、それぞれの第1貫通孔25は、第1冷却部23において、隣接する第1仕切壁21同士の間に対応する位置に設けられている。付言すると、それぞれの第1貫通孔25は、製氷用熱交換器1のそれぞれの製氷空間Sに対向するように形成されている。
【0013】
第1貫通孔25の内径は、冷媒流路4の後述するヘアピンパイプ41(直管部4a)の外径と略等しく形成されている。そして、第1貫通孔25にヘアピンパイプ41が挿入された状態では、第1貫通孔25の内周面とへアピンパイプ41の直管部4aの外周面とが接触している。これにより、製氷用熱交換器1では、冷媒流路4に対する第1仕切部材2のX方向への移動が規制されている。
【0014】
詳細については後述するが、第1仕切部材2は、X方向を押出方向とした押出加工により得られる。第1仕切部材2の材質としては、押出加工が可能な金属であれば特に限定されないが、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることができる。
【0015】
(第2仕切部材3)
第2仕切部材3は、Y方向およびZ方向に沿う板状の形状を有している。本実施の形態では、第2仕切部材3の厚みは、第1仕切部材2の第1仕切壁21の厚みよりも小さい。
第2仕切部材3は、第1仕切部材2の第1仕切壁21および底面22と交差し、第1仕切壁21および底面22とともに製氷空間Sを囲む第2仕切壁31を備えている。付言すると、本実施の形態の製氷用熱交換器1を上方から見た場合、第1仕切部材2の第1仕切壁21と第2仕切部材3の第2仕切壁31とは、格子状に配置されている。
【0016】
また、第2仕切部材3は、第2仕切壁31から下方へ延び、冷媒流路4を支持し、冷媒流路4を通過する冷媒によって冷却される第2冷却部33を備えている。さらに、第2仕切部材3には、第2冷却部33をX方向に貫通する複数の第2貫通孔35が形成されている。
複数の第2貫通孔35は、第2冷却部33において、Y方向に等間隔に並んでいる。複数の第2貫通孔35同士の間隔は、第1仕切部材2に形成される複数の第1貫通孔25同士の間隔と等しくなっている。付言すると、本実施の形態では、第1仕切部材2の第1貫通孔25と第2仕切部材3の第2貫通孔35とは、製氷用熱交換器1におけるY方向の位置が等しくなっている。これにより、製氷用熱交換器1では、第1仕切部材2のそれぞれの第1貫通孔25と第2仕切部材3のそれぞれの第2貫通孔35とが、X方向に連続している。
【0017】
第2貫通孔35の内径は、第1仕切部材2の第1貫通孔25の内径と略等しく形成されている。また、第2貫通孔35の内径は、冷媒流路4の後述するヘアピンパイプ41(直管部4a)の外径と略等しく形成されている。そして、第2貫通孔35にヘアピンパイプ41が挿入された状態では、第2貫通孔35の内周面とへアピンパイプ41の直管部4aの外周面とが接触している。これにより、製氷用熱交換器1では、冷媒流路4に対する第2仕切部材3のX方向への移動が規制されている。
【0018】
第2仕切部材3は、例えば、プレス加工により成形された板金からなる。第2仕切部材3の材質は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼を用いることができる。
【0019】
(冷媒流路4)
冷媒流路4は、第1仕切部材2の第1貫通孔25と第2仕切部材3の第2貫通孔35とに連続して通され、内部に冷媒が流通する流路を備える。冷媒流路4は、X方向に延びる直管部4aと、隣接する直管部4a同士を接続する曲管部4bとが交互に形成されており、全体として一端4cから他端4dに連続する蛇行形状を有する。製氷用熱交換器1では、冷媒流路4の一端4cから他端4dに冷媒が流通することで、製氷空間Sに投入された水が、第1仕切部材2および第2仕切部材3を介して冷却される。
【0020】
図3に示すように、冷媒流路4は、2つの直管部4aが曲管部4bにより接続された2つのヘアピンパイプ41と、曲管部4bからなる継ぎ手43とを備えている。そして、冷媒流路4は、2つのヘアピンパイプ41が第1仕切部材2の第1貫通孔25および第2仕切部材3の第2貫通孔35に挿入された状態で、2つのヘアピンパイプ41の端部に継ぎ手43が接合されることで構成されている。なお、ヘアピンパイプ41がパイプの一例である。
【0021】
また、図4に示すように、ヘアピンパイプ41の直管部4aの内周面には、X方向に沿って延び冷媒の流路に対向する凹凸4eが形成されている。これにより、冷媒流路4では、凹凸4eが形成されない場合と比べて、冷媒流路4を流通する冷媒に接触する直管部4aの表面積が大きくなっている。この結果、冷媒流路4を流通する冷媒による冷却効率が向上する。
なお、図4に示す例では、凹凸4eは、直管部4aにおける下側に形成されているが、これに限られるものではなく、例えば、直管部4aの内周面の全周に亘って形成されていてもよい。また、図4に示す例では、全ての直管部4aに凹凸4eが形成されているが、これに限られるものではなく、凹凸4eが形成されていない直管部4aが存在してもよい。
【0022】
また、図5に示すように、冷媒流路4は、直管部4aの外径が、第1仕切部材2の第1貫通孔25の内径および第2仕切部材3の第2貫通孔35の内径と略等しい。そして、製氷用熱交換器1では、冷媒流路4の直管部4aの外周面と、第1仕切部材2の第1貫通孔25の内周面とが接触している。同様に、冷媒流路4の直管部4aの外周面と、第2仕切部材3の第2貫通孔35の内周面とが接触している。これにより、製氷用熱交換器1では、冷媒流路4に対する第1仕切部材2および第2仕切部材3のX方向への移動が規制され、第1仕切部材2と第2仕切部材3との間に隙間ができることが抑制される。また、冷媒流路4に対して第1仕切部材2および第2仕切部材3の移動を規制するために、ろう付け等を行うことが不要となり、製氷用熱交換器1の構成を簡易にすることができる。
【0023】
(被膜)
本実施の形態の製氷用熱交換器1は、第1仕切部材2および第2仕切部材3の外表面に、耐食性を有する被膜が形成されている。被膜は、例えば、耐食性塗料の塗布、またはめっき処理により形成することができる。
製氷用熱交換器1では、第1仕切部材2および第2仕切部材3の外表面に被膜が形成されることで、第1仕切部材2および第2仕切部材3の耐食性が向上する。また、第1仕切部材2および第2仕切部材3の外表面に被膜が形成されることで、第1仕切部材2と第2仕切部材3との間に存在する隙間を封止することができる。
【0024】
被膜としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂や、錫、ニッケル、コバルト等の金属からなる被膜を用いることができる。
また、被膜の厚さは、5μm~80μm程度とすることができる。
【0025】
(使用方法)
本実施の形態の製氷用熱交換器1は、例えば、所謂セル方式の製氷機に用いることができる。
具体的には、製氷用熱交換器1は、セル方式の製氷機において、製氷空間Sの開口が水の噴射口に向くように配置される。そして、製氷用熱交換器1において氷を生成する(製氷する)場合には、冷媒流路4に冷媒が供給され、第1仕切部材2および第2仕切部材3が冷却される。また、噴射口から製氷空間Sに水が投入され、この水が第1仕切部材2および第2仕切部材3に接触することで冷却されて徐々に氷結する。これにより、それぞれの製氷空間Sに、直方体状の氷が生成される。その後、冷媒流路4に所定の温度に暖められた冷媒が供給され、製氷空間Sに生成された氷の表面が溶融して、製氷用熱交換器1から氷が取り外される。
【0026】
(製造方法)
図6は、製氷用熱交換器1の製造手順の一例を示したフローチャートである。また、図7(a)~(b)は、製氷用熱交換器1の製造において、第1仕切部材2を作製する手順を示した図である。
続いて、図6図7(a)~(b)および上述した図3等を用いて、本実施の形態の製氷用熱交換器1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、押出加工により、第1仕切部材2の元となる押出部材10を成形する(ステップ101)。具体的には、X方向を押出方向として、材料となる金属を予め定めた形状を有する金型から押し出すことにより、押出部材10を成形する。
押出部材10のX方向の長さは、第1仕切部材2よりも長く成形される。この例では、押出部材10のX方向の長さは、第1仕切部材2のX方向の長さのおよそ4倍となっている。
【0028】
また、図7(a)に示すように、押出部材10は、X方向およびY方向に延び、底面22(図3等参照)の元となる延伸面12と、それぞれがX方向に沿い且つ延伸面12からZ方向(上方向)に立ち上がる第1仕切壁21(図3等参照)の元となる複数(この例では5個)の立ち上がり面11とを備えている。付言すると、立ち上がり面11は、X方向およびZ方向に沿う板状の形状を有しており、延伸面12上において、Y方向に等間隔に並んでいる。
さらに、押出部材10は、延伸面12の下方に連続する直方体状の形状を有し、第1冷却部23(図3等参照)の元となるブロック部13を備えている。さらにまた、押出部材10には、ブロック部13をX方向に貫通し、第1貫通孔25(図3等参照)の元となる複数(この例では4個)の貫通孔15が形成されている。
【0029】
続いて、図7(b)に示すように、得られた押出部材10をX方向に垂直な面で切断することで、複数(この例では4個)の第1仕切部材2を作製する(ステップ102)。
具体的には、押出部材10を切断することで、それぞれが、延伸面12が切断された底面22と、それぞれの立ち上がり面11が切断された複数の第1仕切壁21と、ブロック部13が切断された第1冷却部23とを有する複数の第1仕切部材2を作製する。また、得られた第1仕切部材2の第1冷却部23には、それぞれの貫通孔15が切断された複数の第1貫通孔25が形成される。
【0030】
続いて、ステップ102で得られた複数の第1仕切部材2と、プレス加工等により得られた複数の第2仕切部材3とを、X方向に交互に配置する(ステップ103)。
このとき、隣接する第1仕切部材2の第1仕切壁21と第2仕切部材3の第2仕切壁31とが接触するように、第1仕切部材2および第2仕切部材3を配置する。また、第1仕切部材2に形成されたそれぞれの第1貫通孔25と、第2仕切部材3に形成されたそれぞれの第2貫通孔35とがX方向に連続するように、第1仕切部材2および第2仕切部材3を配置する。
【0031】
続いて、ステップ103で配置した第1仕切部材2の第1貫通孔25および第2仕切部材3の第2貫通孔35に対して、冷媒流路4を構成するヘアピンパイプ41の直管部4aをX方向に沿って挿入する(ステップ104)。第1貫通孔25および第2貫通孔35に対しヘアピンパイプ41を挿入した状態では、ヘアピンパイプ41(直管部4a)の先端は、X方向の下流側に位置する第2仕切部材3から突出した状態となっている。
なお、ステップ104においては、直管部4aの外径が第1貫通孔25および第2貫通孔35の内径よりもわずかに小さいヘアピンパイプ41を用いることが好ましい。これにより、第1貫通孔25および第2貫通孔35に対しヘアピンパイプ41を挿入しやすくなる。
【0032】
続いて、ステップ104において第1貫通孔25および第2貫通孔35に挿入したヘアピンパイプ41の直管部4aを拡管する(ステップ105)。具体的には、ヘアピンパイプ41の直管部4aを内側から外側へ押し拡げることで、直管部4aの外径を大きくする。これにより、第1貫通孔25および第2貫通孔35の内周面に対して、直管部4aの外周面を接触させる。
本実施の形態では、第1貫通孔25および第2貫通孔35に挿入したヘアピンパイプ41(直管部4a)を拡管することで、第1貫通孔25および第2貫通孔35の内周面に対する直管部4aの外周面の密着性を向上させることができる。これにより、冷媒流路4に対する第1仕切部材2および第2仕切部材3のX方向への移動が規制され、第1仕切部材2と第2仕切部材3との間に隙間ができることが抑制される。
【0033】
続いて、X方向の下流側に位置する第2仕切部材3から突出したヘアピンパイプ41の端部に、U字型の継ぎ手43を、アルゴン溶接等の手段を用いて接合する(ステップ106)。これにより、一端4c(図1参照)から他端4d(図1参照)に連続する蛇行形状を有する冷媒流路4が得られる。
【0034】
続いて、第1仕切部材2および第2仕切部材3の外表面に対し、耐食性塗料を塗布し、またはめっき処理を施すことにより、被膜を形成する(ステップ107)。これにより、第1仕切部材2と第2仕切部材3との間に隙間が存在する場合であっても、被膜によってこの隙間が封止される。
以上の工程により、図1図5に示す製氷用熱交換器1が得られる。
【0035】
ところで、上述した例では、第1仕切部材2および第2仕切部材3の外表面に被膜を形成し、この被膜によって第1仕切部材2と第2仕切部材3との隙間を封止する構成とした。第1仕切部材2と第2仕切部材3との隙間を封止する構成としては、例えば、以下のものを採用してもよい。
すなわち、第2仕切部材3を、第1仕切部材2に対向する面にろう材からなる層が形成された所謂ブレージング材とする。そして、上述した製氷用熱交換器1の製造工程において、第1貫通孔25および第2貫通孔35にヘアピンパイプ41を挿入した後(ステップ104)、所定の温度に加熱することで、第2仕切部材3のろう材を溶融させ、第2仕切部材3の表面に第1仕切部材2を付着させる。これにより、第1仕切部材2および第2仕切部材3の間が封止される。
【0036】
このように、第2仕切部材3をブレージング材とすることで、第1仕切部材2と第2仕切部材3との間を封止するために、第1仕切部材2および第2仕切部材3とは別にろう材を用いたり、ろう付け治具を用意したりする必要がない。言い換えると、製氷用熱交換器1の製造工程が複雑になることを抑制しながら、第1仕切部材2と第2仕切部材3とを封止することができる。
【0037】
(従来の製氷用熱交換器との対比)
図8は、従来の製氷用熱交換器9の構成の一例を説明する図であり、従来の製氷用熱交換器9を構成する部品を分解した図である。
図8に示すように、従来の製氷用熱交換器9は、格子状に形成された仕切板91と、平板状のベース板92と、プレス加工により成形され冷媒の流路に対応する溝94が形成されたプレス板93とが、この順に積層されて構成される。この製氷用熱交換器9では、仕切板91とベース板92との間、およびベース板92とプレス板93との間にろう材が挟み込まれてろう付けされている。そして、この製氷用熱交換器9では、仕切板91とベース板92とによって、氷を生成するための直方体状の空間が複数形成されるとともに、ベース板92とプレス板93の溝94とによって冷媒の流路が形成される。
【0038】
このように、従来の製氷用熱交換器9を製造するためには、プレス板93を成形するための金型や、仕切板91,ベース板92およびプレス板93をろう付けするためのろう付け治具等が必要となる。この結果、従来の製氷用熱交換器9は、製造工程が複雑になりやすい。
【0039】
これに対し、本実施の形態の製氷用熱交換器1では、上述したように、第1仕切部材2に設けられた第1貫通孔25と第2仕切部材3に設けられた第2貫通孔35とにヘアピンパイプ41を連続して通すことで、第1仕切部材2と第2仕切部材3と冷媒流路4とを固定している。これにより、製氷用熱交換器1の製造では、製氷用熱交換器1の各部材を固定するためのろう材やろう付け治具が不要となる。この結果、従来の製氷用熱交換器9と比べて製造が容易な製氷用熱交換器1を実現することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は本実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限りにおいては様々な変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0041】
1…製氷用熱交換器、2…第1仕切部材、3…第2仕切部材、4…冷媒流路、21…第1仕切壁、22…底面、23…第1冷却部、25…第1貫通孔、31…第2仕切壁、33…第2冷却部、35…第2貫通孔、41…ヘアピンパイプ、43…継ぎ手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8