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特開2023-29558水中油型乳化組成物及びその製造方法並びに製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029558
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物及びその製造方法並びに製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230224BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230224BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/34
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002184
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2020517833の分割
【原出願日】2018-09-28
(31)【優先権主張番号】201710912334.X
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】宮原 令二
(72)【発明者】
【氏名】ワン イン
(57)【要約】
【課題】貯蔵、輸送および使用におけるせん断力耐性に優れるとともに、使用時に快適な質感を示し、広がりやすい水中油型乳化組成物を提供すること。
【解決手段】a)疎水基を有するセルロースと、b)界面活性剤と、c)高級アルコールと、d)油分と、e)水と、任意にf)保湿剤及び/又はg)高級脂肪酸とを含み、粘度が10,000mPa・s以下である水中油型乳化組成物及びその製造方法並びに製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)疎水基を有するセルロースと、
b)界面活性剤と、
c)高級アルコールと、
d)油分と、
e)水と、
任意にf)保湿剤及び/又はg)高級脂肪酸と
を含み、
粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記組成物の総質量に対して、前記a)成分の含有量が0.02~0.1質量%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記a)成分とは、長鎖アルキル基を有することにより疎水変性されたセルロースを意味し、好ましくは長鎖アルキル基が12~22の炭素数を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
45回転数/分、4時間の条件下でのローリング試験後の前記組成物の粘度が初期粘度より低下した分は10%未満であることと、
45回転数/分、4時間の条件下で行うローリング試験と、270回/分の頻度で20分間行う振動試験とを連続して実施した後の前記組成物の粘度が初期粘度より低下した分は20%未満であることと
のいずれかを満足することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデイリーケミカル分野、特に化粧料分野に関し、具体的には、水中油型乳化組成物及びその製造方法並びに製品に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型組成物は、化粧料業界で乳液、化粧水、美容液、オーデコロンなどの製品を調製するために一般的に使用されるものである。その中に、油相成分は界面活性剤の作用により、水系に均一かつ安定に存在する。このような系は、分散系に分散した油相液滴の大きさによって、透明、半透明、または不透明な状態となる。さらに、外部から施すせん断力や超音波などの手段を補助的に使用することにより、分散系内の連続相と油相とを安定させて平衡状態にすることができる。
【0003】
通常の水中油型エマルジョンやマイクロエマルジョンは、貯蔵、輸送および使用においてせん断力による影響を長期に受けるため、系の安定性が大幅に低下し、化粧料の外観と使用感に影響を与える可能性がある。そのようなせん断力は特定の条件下ではそれほど強くないかもしれないが、そのせん断力による影響が頻繁になる場合、例えば、上記水中油エマルジョンを含む化粧料の使用において、未使用のエマルジョンが容器内でせん断力による影響を頻繁に受けることで、容器内のエマルジョンの安定性が大幅に低下し、未使用部分のエマルジョンの外観と使用時の感触に影響を与える可能性がある。
【0004】
特許文献1には、高級脂肪アルコールとアニオン性界面活性剤と水とでα-ゲルを形成し、さらにカチオン界面活性剤を添加することでα-ゲルの経時安定性を改善することは開示されているが、せん断力を受けるときの乳化組成物の粘度の変化については着目されていない。
【0005】
特許文献2には、0.1~1%の会合性ポリマー、カチオン界面活性剤、0.5~5%の高級アルコールを含み、さらにアニオン界面活性剤、PEG-60水添ヒマシ油及び水を含んでもよいヘアケア組成物が開示されている。そのヘアケア組成物は、貯蔵時や分散時に十分な安定性を示すことができながら、髪への適用中に形成されるせん断力により破壊されるほど十分に弱い相互作用を有することで、髪全体に作用しやすい製品を提供する。
【0006】
したがって、現在、化粧料、特にスキンケア乳液系の化粧料では、より優れたせん断力耐性及び安定性を達成するためのさらなる改善や改良は依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第102791247号明細書(CN 102791247A)
【特許文献2】中国特許出願公開第1377250号明細書(CN 1377250A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術の欠点について、本発明は、貯蔵、輸送および使用におけるせん断力耐性に優れるとともに、使用時に快適な質感を示し、広がりやすい水中油型乳化組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明の別の目的は、せん断力耐性に優れる水中油型乳化物組成物の製造方法、及び当該組成物を含むスキンケア系又はヘアケア系化粧料といった化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はまず、
a)疎水基を有するセルロースと、
b)界面活性剤と、
c)高級アルコールと、
d)油分と、
e)水と、
任意にf)保湿剤及び/又はg)高級脂肪酸と、
を含み、
粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする水中油型乳化組成物を提供する。
【0011】
前記組成物の総質量に対して、前記a)成分の含有量が0.02~0.1質量%である上述に記載の組成物。
【0012】
粘度が2,000mPa・s(30℃)以上である上述に記載の組成物。
【0013】
前記a)成分とは、長鎖アルキル基を有することにより疎水変性されたセルロースを意味し、好ましくは長鎖アルキル基が12~22の炭素数を有する上述したいずれか1項に記載の組成物。
i) 45回転数/分、4時間の条件下でのローリング試験後の前記組成物の粘度が初期粘度より低下した分は10%未満であることと、
ii) 45回転数/分、4時間の条件下で行うローリング試験と、270回/分の頻度で20分間行う振動試験とを連続して実施した後の前記組成物の粘度が初期粘度より低下した分は20%未満であることと、
のいずれかを満足する上述したいずれか1項に記載の組成物。
【0014】
前記界面活性剤がノニオン界面活性剤である上述したいずれか1項に記載の組成物。
【0015】
また、本発明はさらに、上述したいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による水中油型乳化組成物は化粧料類の製品として、下記のように優れる効果を有する。
(1)貯蔵、輸送および使用におけるせん断力耐性に優れ、エマルジョンが実質的に安定し、系の流動状態の変化が大きくない。
(2)前記水中油型乳化組成物の粘度が10,000mPa・s(30℃)以下に維持され、皮膚に適用する際にべたつき感がない。
(3)本発明の水中油型乳化組成物は、化粧料の原料又は成分として使用される際に調製しやすいという特徴を有し、すなわち、上述した優れるせん断力耐性及び身体の感触を有するとともに、良好な経済性も有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による水中油型乳化組成物は、a)疎水基を有するセルロースと、b)界面活性剤と、c)高級アルコールと、d)油分と、e)水との5つの成分を必須成分として含むとともに、f)保湿剤及び/又はg)高級脂肪酸を任意成分として含む。
【0018】
通常、界面活性剤及び高級アルコールをそれぞれ油相に溶かし、二相を混合して乳化した後、高級アルコールが水相中に分散した(b)+(c)+(d)+(e)の混合物は、十分に安定したものではなく、せん断力を受けると、粘度が低くなるため、混合物の長期貯蔵、輸送および使用の観点から好適ではない。
【0019】
本発明において、水中油型乳化組成物にa)疎水基を有するセルロースを低い含有量で使用し、例えば含有量を0.02~0.1質量%とする。このように、a)疎水基を有するセルロースを含むことで、水中油型乳化組成物はせん断力耐性に優れ、水中油型乳化組成物の貯蔵及び使用において、せん断力を長期に受けても、系の安定性が大きく変わらず、エマルジョンの均一性が良好に維持される。また、前記水中油型乳化組成物は粘度を10,000mPa・s以下に抑えることができ、本発明の水中油型乳化組成物を含む化粧料を身体に適用する際の使用感に影響を与えず、広がりやすい。
【0020】
以下、本発明において使用する各成分について詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、以下の単位はすべて国際標準単位である。また、本願における粘度データはすべて、室温での粘度データであり、より具体的には、例えば30℃の条件下で測定したデータである。また、以下の「百分率」又は「%」はいずれも質量百分率又は「質量%」を意味する。
【0021】
<a)疎水基を有するセルロース>
前記a)成分とは、長鎖アルキル基を有することにより疎水変性されたセルロースを意味し、好ましくは長鎖アルキル基が12~22の炭素数を有する。
【0022】
従来の技術では、セルロース系ポリマーは一般的に増粘剤として使用され、化粧料の粘度を高めることができる。増粘剤として使用できるセルロース系ポリマーとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ジアルキルジモニウム硫酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。しかし、従来の技術において使用される高分子量のセルロース系増粘剤はいずれも本発明の要件を満足するわけではない。
【0023】
本発明のa)成分に代えて、疎水基による変性なしのセルロースを使用すると、得られた乳化組成物は所望のせん断力耐性を有せず、使用、保管又は輸送において特定のせん断力を受けると、粘度が大きく低下してしまうことで、乳化組成物の安定性が維持できなくなる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、12~22の炭素数を有する長鎖アルキル基により疎水変性されたセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル(商品名「Sangelose」)である。ステアロキシがヒドロキシプロポキシを介してセルロースモノマー単位につながる(-OCHCH(OH)CHOC1837)。本発明のいくつかの実施形態において、好ましくは120mm/sよりも大きい動粘度を有する疎水基変性セルロースである。
【0025】
本発明において使用できる適切な市販品としては、Sangelose 90L、Sangelose 60L、Sangelose 90M、Sangelose 60M、Sangelose 90H、Sangelose 60Hが挙げられ、これらはステアロキシをそれぞれ異なる含有量で含有する。本発明において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルの総質量に対して、0.3~0.6質量%のステアロキシヒドロキシプロポキシを含むSangelose 90Lが好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、水中油型乳化組成物の総質量に対して、前記a)疎水基を有するセルロースの含有量は0.02~0.1質量%であり、好ましくは0.02~0.09質量%であり、より好ましくは0.03~0.08質量%であり、さらに好ましくは0.04~0.06質量%であり、最も好ましくは0.02~0.04質量%である。
【0027】
本発明において、a)疎水基を有するセルロースの重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。疎水基を有するセルロースの重量平均分子量(Mw)は、前記組成物のせん断力耐性に対して特に影響がないので、数万の分子量であってもよく、数十万の分子量や数百万の分子量などであってもよい。
【0028】
さらに、前記組成物のせん断力耐性を確認するため、ローリング試験、振動試験を模擬した。好ましい実施形態において、組成物は下記条件のいずれか一つを満足する。
i)45回転数/分、4時間の条件下でのローリング試験後の前記組成物の粘度が初期粘度より低下した分は10%未満であり、好ましくは8%未満であり、より好ましくは5%未満であり、さらに好ましくは2%未満であり、さらに好ましくは1%未満であること。
ii)45回転数/分、4時間の条件下で行うローリング試験と、270回/分の頻度で20分間行う振動試験とを連続して実施した後の前記組成物の粘度が初期粘度より低下した分は20%未満であり、好ましくは20%未満であり、より好ましくは10%未満であり、さらに好ましくは5%未満であり、さらに好ましくは3%未満であり、さらに好ましくは1%未満であること。
ここで、初期粘度とは、前記組成物の調製後1日間保管した後に測定した粘度を意味する。
【0029】
<b)界面活性剤>
本発明に用いられる界面活性剤は、化粧料分野において使用できるものであれば、特に限定されず、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、N-アシルサルコシン、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステル硫酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、POE-アルキルエーテルカルボン酸、POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-アルケニルスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸塩、高級脂肪酸アルキルアミド硫酸塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジ(トリエタノール)アミン、カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル第四アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、POE-アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、ペンタノール脂肪酸誘導体等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられる両性イオン界面活性剤としては、例えば、アミノ酸系(例えば、ドデシルアミノプロピオン酸)、カルボン酸ベタイン(例えば、アルキルジメチルベタイン)、スルホベタイン(例えば、アルキルジメチルスルホエチルベタイン、アルキルジメチルスルホプロピルベタイン)、ホスホベタイン(例えば、アルキルジメチルヒドロキシプロピルホスホベタイン)、イミダゾリン系等が挙げられる。
【0033】
本発明において、ノニオン界面活性剤が好ましい。本発明に用いられるノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、ポリオキシエチレン・ポリメチルシロキサン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、マルチトールヒドロキシ脂肪族アルキルエーテル、アルキル化多糖類、アルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0034】
本発明において、上記界面活性剤のうちの1種又は2種以上の混合物をb)成分として使用することができる。
【0035】
安定性維持の観点及び使用感の観点から、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、界面活性剤として、他のタイプの界面活性剤よりも優れる系安定化効果を意外にも示したノニオン界面活性剤を好適に使用する。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態において、2種又はそれ以上の界面活性剤を使用する場合、ノニオン界面活性剤の配合量は、界面活性剤の合計配合量に対して50質量%以上であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上である。
【0037】
<c)高級アルコール>
本発明に用いられる高級アルコールは、化粧料分野において使用できるものであれば、特に限定されない。本発明に用いられる高級アルコールとしては、例えば、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0038】
本発明において、上記高級アルコールのうちの1種又は2種以上の混合物をc)成分として使用することができる。
【0039】
<d)油分>
本発明において、乳化組成物の内相となる油分は特に限定されず、c)高級アルコールを溶解できるものであればよい。
【0040】
油分は、安定性を損なわない範囲で化粧料に一般的に使用される物質から選択できる。好ましい油分としては、炭化水素油、液状グリース、エステル油、シリコーン油等が挙げられる。
【0041】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクアラン、スクアレン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、ワセリン、水添ポリデセンなどを使用することができる。
【0042】
シリコーン油としては、例えば:メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの鎖状シリコーン、三次元ネットワーク構造を持つシリコーン樹脂、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0043】
液状グリースとしては、パーム油、パーム核油、亜麻仁油、ツバキ油、マカダミア油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、ツバキ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、菜種油、ゴマ油、大豆油、落花生油、トリグリセリン、トリカプリル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等が挙げられる。
【0044】
エステル油としては、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル等が挙げられる。
【0045】
これらの油分は、本発明の効果を損なわない範囲で配合することは言うまでもない。
【0046】
<e)水>
本発明において、水中油系における連続相は水相であることは言うまでもなく、本発明の水は、蒸留水であっても、イオン交換水であっても、他の様々な精製水であってもよい。水は、水中油型乳化組成物の全体量に対して、全体を100%とするのに十分な量で配合される。
【0047】
<水中油型乳化物組成物の製造方法>
本発明の水中油型乳化組成物は、乳化物の製造に一般的に使用されている方法に準じて製造することができる。例えば、油相成分および水相成分を別途調製し、水相及び油相を混合してディスパーまたはホモジナイザー等で乳化することにより製造することができる。
【0048】
本発明の上記必須成分が存在することを前提に、本発明における水中油乳化系の形成方法は特に限定されず、機械的な撹拌により必要な混合せん断力を与えるか、又は超音波を用いる処理により、油相成分と水相成分を混合して安定なエマルジョンとする。
【0049】
同様に、本発明の水中油型乳化組成物を調製するための装置も特に限定されず、上述した要求を満足できればよい。
【0050】
本発明の水中油型乳化組成物はエマルジョン形態とし、半透明又は不透明な形態とすることができる。
【0051】
製造上及び使用上の観点から、本発明で得られた水中油型乳化物組成物は10,000mPa・s(30℃)以下、2,000mPa・s又は3,000mPa・s(30℃)以上の粘度を有することにより、良好な使用感を維持し、べたつき感がなく、利用者にさわやかな感触を与える。さらに好ましくは4,000~9,000mPa・s(30℃)の粘度を有する。粘度が低すぎると、製品使用時の効果を損なう可能性がある。一方、粘度が高すぎると、広がりにくくなり、使用感を損なうおそれがある。
【0052】
<その他の添加物>
本発明の水中油型乳化組成物の非必須成分として、当業界の一般的な各種の他成分や機能的成分を添加することができ、本発明の上記効果を損なわなければ、特に制限はない。
【0053】
本発明において、水中油型乳化組成物に含まれる任意成分はf)保湿剤及び/又はg)高級脂肪酸である。
【0054】
上記f)保湿剤としては、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール系保湿剤、ヒアルロン酸(HA)、ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA-NA)、セラミド、コラーゲン、尿素、乳酸、キチン誘導体、アロエ、海藻エキス等が挙げられる。これらの保湿剤は1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0055】
上記g)高級脂肪酸としては、ベヘン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。これらの高級脂肪酸は1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0056】
本発明におけるf)保湿剤及び/又はg)高級脂肪酸の配合量は、乳化系化粧料における通常の配合量とすればよい。
【0057】
また、本発明の効果(安定性及び使用感)を損なわないことを前提に、本発明の水中油型乳化組成物はさらにその他の水溶性増粘剤系成分を含むことができる。かかる水溶性増粘剤としては、例えば、アラビアガム、トラガガントガム、ガラクタン、グアガム、カラキーナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ)抽出物、褐藻粉末等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、プルラン、サクシノグリカン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシデンプン等のデンプン類、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリアクリルイミド、ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNaクロスポリマー等のアクリル系高分子、その他グリチルリチン酸やアルギン酸およびその塩等が挙げられる。ただし、当業界の上記従来の増粘剤を使用する場合、系を安定化する効果はあるが、実際には使用感の低下に伴い、特に化粧料等の製品ではベタつきが生じるため、好ましくない。したがって、本願の好ましい実施形態において、本願のa)成分以外のその他の上記増粘剤を使用する場合、上記増粘剤の配合量は、a)成分の重量の30質量%以下とし、好ましくは20質量%以下とし、より好ましくは10質量%以下とする。本発明の最も好ましい実施形態において、a)成分以外のその他の増粘剤を使用しない。
【0058】
さらに、化粧料や医薬分野で通常配合されている各種成分、例えば、皮膚コンディショニング剤、安定剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、色素、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、防腐剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0059】
各種添加剤としては、さらに、美白系添加剤、老化防止系添加剤、にきび抑制系添加剤、紫外線防止系添加剤、および適用可能な各種植物エキス又は植物抽出物等が挙げられる。
【0060】
さらに、化粧料の必要に応じて、例えばシリカ、マイカ等の無機系機能的添加剤を配合してもよい。
【0061】
<化粧料>
特に、本発明は、上記水中油型乳化組成物を含む化粧料をさらに提供する。本発明では、化粧料の種類は特に限定されず、主としてスキンケア系化粧料及びヘアケア系化粧料等が挙げられる。その製品としては、乳液、美容液、オーデコロン等又はその類似品等が挙げられる。
【実施例0062】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の実施形態はこれらに限るわけではなく、以下の具体的な実施例は本発明の形態を限定するものではない。
【0063】
(I)実施例1~2及び比較例1~9
下記に示す処方にて水中油型乳化物組成物を調製し、実施例1~2を得た。詳細な処方を表1に示す。ここで、疎水基を有するセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルであり、動粘度が120(mm/s)より大きい。
【0064】
実施例1又は実施例2をベースに、a)成分のみを変更して比較例1~9を得た。詳細な処方を表1~3に示す。これらを用いて、本発明におけるa)成分の種類及び含有量による乳化物組成物への影響を調査した。
【0065】
比較例1は実施例1又は実施例2をベースにa)成分の含有量を調整したものである。
【0066】
比較例2~7及び比較例9は実施例2をベースにa)成分の種類を調整したものである。
【0067】
比較例8は実施例1をベースにa)成分の種類を調整したものである。
【0068】
さらに、上述した実施例1~2及び比較例1~9の各指標の試験を行い、試験結果も併せて表1~3に示す。
【0069】
(ローリング試験条件)
エマルジョンをガラス瓶に入れ、ガラス瓶を水平に置き、45回転数/分で4時間転がした。
【0070】
(振動試験条件)
エマルジョンをガラス瓶に入れ、ガラス瓶を直立に置き、270回/分で20分間振動した。
【0071】
ここで、「粘度/1日後」とは、実施例、比較例で得られた試料を調製してから1日間保管した後に測定した粘度データ(B型粘度計、30℃)を意味する。
【0072】
(粘度低下率)
ローリング試験+振動試験後の試料の粘度から、調製後1日間保管した試料の粘度を引いた数値を、調製後1日間保管した試料の粘度で除算した結果である。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
上記の試験結果から以下のことが明らかになった。
【0077】
比較例1は、a)成分の含有量を0としたブランクコントロールであり、得られた乳化組成物の初期粘度は許容可能な状態であったが、ローリング及び振動試験後の粘度低下率は本発明に規定する20%より高く、所望の効果が得られず、本発明の範囲外であった。
【0078】
一方、a)成分として疎水基なしのセルロースを用いたもの(比較例4、5)は、疎水基による変性が欠如した結果、水中油系の初期粘度が大幅に低くなり、粘度低下率も大きく上昇したので、本発明の範囲外であった。
【0079】
比較例2~3及び比較例6~8は、a)成分としてセルロース系以外の物質を用いたものである。その結果、疎水基の有無を問わず、入れ替えた後の各比較例はいずれも、所望の系安定性を達成できなかった。ここで、比較例6は、優れるせん断力耐性を有するものの、粘度が高すぎて、本発明に規定する10,000mPa・sを超えた結果、使用感に問題が生じたり、ベタつきが生じる可能性がある。
【0080】
(II)実施例3~4及び比較例9
(I)と同様に水中油型乳化物組成物を調製したが、実施例1、2とは異なり、実施例3、4では動粘度が110(mm/s)未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルを使用した。また、比較例9では疎水基を有するセルロースを使用しなかった。
【0081】
組成物の組成及び試験結果を表4に示す。
【0082】
表4から明らかなように、比較例9は疎水基を有するセルロースがなかったことで、系の安定性が試験において顕著に劣化した。
【0083】
【表4】
【0084】
(III)実施例5及び比較例10
(I)と同様に水中油型乳化物組成物を調製したが、実施例5では、実施例1、2におけるノニオン界面活性剤の代わりにカチオン界面活性剤を使用した。
【0085】
また、比較例10では、疎水基を有するセルロースを使用しなかった。
組成物の組成及び試験結果を表5に示す。
【0086】
表5から明らかなように、比較例10は疎水基を有するセルロースがなかったことで、系の安定性が試験において顕著に劣化した。
【0087】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、工業生産で製造可能であり、化粧料類の製品の製造に利用可能である。