(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002957
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオール、その製造方法、硬質ポリウレタンフォーム用組成物、硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 12/42 20060101AFI20221228BHJP
C08G 18/54 20060101ALI20221228BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20221228BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20221228BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
C08G12/42
C08G18/54
C08G18/48 079
C08G65/28
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103828
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】中村 政行
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑樹
【テーマコード(参考)】
4J005
4J033
4J034
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られるポリエーテルポリオールを提供する。
【解決手段】レゾール型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物であり、前記レゾール型フェノール樹脂中のフェノール骨格1個当たりのメチロール基の数が0.25個以下である、ポリエーテルポリオール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾール型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物であり、
前記レゾール型フェノール樹脂中のフェノール骨格1個当たりのメチロール基の数が0.25個以下である、ポリエーテルポリオール。
【請求項2】
前記レゾール型フェノール樹脂が、前記レゾール型フェノール樹脂の総質量に対して5~50質量%の遊離フェノール類を含む、請求項1記載のポリエーテルポリオール。
【請求項3】
前記レゾール型フェノール樹脂が、前記レゾール型フェノール樹脂の総質量に対して0~0.3質量%の水分を含む、請求項1又は2に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項4】
25℃における粘度が100~35000mPa・sである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項5】
水酸基価が200~400mgKOH/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項6】
前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はそれらの混合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールの製造方法であって、
前記レゾール型フェノール樹脂と前記アルキレンオキサイドとを反応させる工程を含む、ポリエーテルポリオールの製造方法。
【請求項8】
前記レゾール型フェノール樹脂と前記アルキレンオキサイドとを反応させる工程の前に、前記レゾール型フェノール樹脂を製造する工程を含み、
前記レゾール型フェノール樹脂を製造する工程において、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒の存在下で反応させ、得られた反応物に対し、中和を行ってpHを7.0~9.0とし、得られた中和物に対し、メチロール基低減処理を行う、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
ポリオール成分と、触媒と、発泡剤とを含み、
前記ポリオール成分が、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールを含む、硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項10】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応物を含み、
前記ポリオール成分が、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールを含む、硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる工程を含み、
前記ポリオール成分が、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールを含む、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルポリオール、その製造方法、硬質ポリウレタンフォーム用組成物、硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱性能、低温での寸法安定性及び施工性等に優れることから、建材や冷蔵庫、冷凍庫等の断熱材、構造材、現場建築施工用スプレー等、幅広い範囲で使用される。
従来、難燃剤の使用による硬質ポリウレタンフォームの難燃化が図られている(非特許文献1)。しかし、難燃剤を多量に使用すると、硬質ポリウレタンフォームの圧縮強さ等の機械物性が悪化するという問題があり、難燃化に限度があった。
一方、硬質ポリウレタンフォームの原料の観点からも硬質ポリウレタンフォームの難燃化が図られている。特許文献1には、原料のポリオールとして、フタル酸等をエステル化させたポリエステルポリオールを用いてポリウレタンフォームの難燃性を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「2016 ポリウレタン原料・製品の世界市場」、株式会社富士経済、2016年1月7日発行、221-223ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のポリエーテルポリオールを用いた硬質ポリウレタンフォームの難燃性は、充分なものではない。
本発明は、難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られるポリエーテルポリオール及び硬質ポリウレタンフォーム用組成物、難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られるポリエーテルポリオールを製造できる製造方法、並びに難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]レゾール型フェノール樹脂のアルキレンオキサイド付加物であり、
前記レゾール型フェノール樹脂中のフェノール骨格1個当たりのメチロール基の数が0.25個以下である、ポリエーテルポリオール。
[2]前記レゾール型フェノール樹脂が、前記レゾール型フェノール樹脂の総質量に対して5~50質量%の遊離フェノール類を含む、前記[1]のポリエーテルポリオール。
[3]前記レゾール型フェノール樹脂が、前記レゾール型フェノール樹脂の総質量に対して0~0.3質量%の水分を含む、前記[1]又は[2]のポリエーテルポリオール。
[4]25℃における粘度が100~35000mPa・sである、前記[1]~[3]のいずれかのポリエーテルポリオール。
[5]水酸基価が200~400mgKOH/gである、前記[1]~[4]のいずれかのポリエーテルポリオール。
[6]前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はそれらの混合物である、前記[1]~[5]のいずれかのポリエーテルポリオール。
[7]前記[1]~[6]のいずれかのポリエーテルポリオールの製造方法であって、
前記レゾール型フェノール樹脂と前記アルキレンオキサイドとを反応させる工程を含む、ポリエーテルポリオールの製造方法。
[8]前記レゾール型フェノール樹脂と前記アルキレンオキサイドとを反応させる工程の前に、前記レゾール型フェノール樹脂を製造する工程を含み、
前記レゾール型フェノール樹脂を製造する工程において、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒の存在下で反応させ、得られた反応物に対し、中和を行ってpHを7.0~9.0とし、得られた中和物に対し、メチロール基低減処理を行う、前記[7]の製造方法。
[9]ポリオール成分と、触媒と、発泡剤とを含み、
前記ポリオール成分が、前記[1]~[6]のいずれかのポリエーテルポリオールを含む、硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
[10]ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応物を含み、
前記ポリオール成分が、前記[1]~[6]のいずれかのポリエーテルポリオールを含む、硬質ポリウレタンフォーム。
[11]ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる工程を含み、
前記ポリオール成分が、前記[1]~[6]のいずれかのポリエーテルポリオールを含む、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られるポリエーテルポリオール及び硬質ポリウレタンフォーム用組成物、難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られるポリエーテルポリオールを製造できる製造方法、並びに難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔ポリエーテルポリオール〕
本発明の一態様に係るポリエーテルポリオール(以下、「ポリオール(A)」とも記す。)は、レゾール型フェノール樹脂(以下、「レゾール樹脂」とも記す。)のアルキレンオキサイド(以下、「AO」とも記す。)付加物である。
レゾール樹脂及びAOについては後で詳しく説明する。
【0009】
ポリオール(A)の水酸基価は、200~400mgKOH/gが好ましく、250~390mgKOH/gがより好ましい。水酸基価が上記下限値以上であれば、硬質ポリウレタンフォームとして充分な硬さが得られやすく、上記上限値以下であれば、粘度を低くできる。
水酸基価は、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数である。水酸基価は、JIS K 1557-1に記載のB法により求められる。
ポリオール(A)の水酸基価は、AOの付加量により調整できる。
【0010】
AOの付加量は、目的の水酸基価に応じて適宜設定できるが、レゾール樹脂の活性水素原子1個当たり、1~4モルが好ましく、1~3モルがより好ましい。AOの付加量が上記範囲内であれば、ポリオール(A)の水酸基価を上記好ましい範囲内としやすい。
【0011】
ポリオール(A)の25℃における粘度は、100~35000mPa・sが好ましく、500~10000mPa・sがより好ましく、1000~6000mPa・sがさらに好ましい。粘度が上記下限値以上であれば、硬質ポリウレタンフォームとして充分な硬さが得られやすく、上記上限値以下であれば、他材(ポリイソシアネート成分等)と混合しやすい。
ポリオール(A)の粘度は、B型粘度計により測定される。
【0012】
ポリオール(A)の芳香環濃度は、30~60質量%が好ましく、35~55質量%がより好ましい。芳香環濃度が上記下限値以上であれば、ポリオール(A)の質量残存率がより優れ、上記上限値以下であれば、ポリオール(A)の粘度を上記好ましい範囲内としやすい。
芳香環濃度は、ポリオール(A)の質量に対するポリオール(A)中のベンゼン環の質量割合である。ポリオール(A)中のベンゼン環の質量は、後述の計算式により求められる。
【0013】
ポリオール(A)は、ポリオール(A)を熱質量分析において500℃に加熱したときの質量残存率が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。質量残存率が上記下限値以上であれば、ポリオール(A)の耐熱性が高く、得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性がより優れる。
質量残存率の詳しい測定方法は後述する実施例に記載のとおりである。
【0014】
<レゾール樹脂>
レゾール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下で反応させる工程を経て得られる樹脂であり、フェノール類とアルデヒド類との反応物を含む。
フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下で反応させると、フェノール類の芳香環にアルデヒド類が付加する付加反応が起き、メチロール基を有するメチロール体が生成する。その後、メチロール体同士の縮合反応を経て高分子化する。
【0015】
ポリオール(A)の出発原料であるレゾール樹脂としては、レゾール樹脂中のフェノール骨格1個当たりのメチロール基の数(以下、「メチロール基量」とも記す。)が0.25個以下であるものが用いられる。メチロール基量は、0.2個以下が好ましく、0.1個以下がより好ましく、0個であってもよい。
一般的なレゾール樹脂のメチロール基量は0.25個よりも多い。メチロール基量が0.25個よりも多いと、レゾール樹脂とAOとを反応させる際に、AOの付加反応とともにレゾール樹脂の縮合反応が進行しやすい。縮合反応が進行すると、水分が発生し、水とAOとが反応して副生物が生じる等、目的の反応が進みにくい。
メチロール基量は0.25個以下であれば、レゾール樹脂へのAOの付加反応が進みやすい。
メチロール基量を0.25個以下とするには、例えば、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下で反応させた後、メチロール基低減処理を行う。メチロール基低減処理については後で詳しく説明する。
【0016】
レゾール樹脂は、典型的には、液状である。
レゾール樹脂の25℃における粘度は、10~20000mPa・sが好ましく、100~10000mPa・sがより好ましい。レゾール樹脂の粘度が上記範囲内であれば、ポリオール(A)の粘度が上述の好ましい範囲内となりやすい。
レゾール樹脂の粘度は、E型粘度計により測定される。
【0017】
レゾール樹脂は、遊離フェノール類を含むことが好ましい。
遊離のフェノール類とは、JIS K 6910の5.16の規定に準じて測定される未反応のフェノール類である。
遊離フェノール類の含有量は、レゾール樹脂の総質量に対して5~50質量%が好ましく、25~45質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。遊離フェノール類の含有量が上記下限値以上であれば、レゾール樹脂の粘度、ひいてはポリオール(A)の粘度が充分に低くなり、硬質ポリウレタンフォームの製造時に発泡させやすい。遊離フェノール類の含有量が上記上限値以下であれば、硬質ポリウレタンフォームとして充分な硬さが得られやすい。
【0018】
レゾール樹脂は、水分を含んでいてもよい。
水分の含有量は、レゾール樹脂の総質量に対して0~0.3質量%が好ましく、0~0.15質量%がより好ましく、0~0.05質量%がさらに好ましい。水分の含有量が上記上限値以下であれば、レゾール樹脂へのAOの付加反応が進みやすい。
水分を0質量%含むとは、水分を含まないことを示す。
水分の含有量は、カールフィッシャー法により(例えば、(株)HIRANUMA製のAQV-2200」、測定試薬「Honeywell製 Hydranal Composite 5」を用いて)測定される。
【0019】
(レゾール樹脂の製造方法)
レゾール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒の存在下で反応させ、得られた反応物に対し、中和を行ってpHを7.0~9.0とし、得られた中和物に対し、メチロール基低減処理を行う方法により製造できる。
【0020】
フェノール類は、芳香環及び芳香環に結合した水酸基を有する化合物であり、例えば、フェノール、アルキルフェノール(o,m,pの各クレゾール、o,m,pの各エチルフェノール、キシレノールの各異性体等)、多芳香環フェノール類(α,βの各ナフトール等)、多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ピロガロール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン等)等が挙げられる。これらのフェノール類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、実用的な物質は、フェノール、o,m,pの各クレゾール、キシレノールの各異性体、レゾルシン、カテコールである。
【0021】
アルデヒド類は、ホルミル基を有する化合物及びその多量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、グリオキザール等が挙げられる。これらのアルデヒド類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、実用的な物質は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドである。
【0022】
フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)(以下、「F/P」とも記す。)は、0.1~0.8が好ましく、0.2~0.5がより好ましい。ただし、アルデヒド類がパラホルムアルデヒドのような多量体である場合、F/Pは、単量体換算での値である。F/Pが上記下限値以上であれば、遊離フェノール類の揮散による臭気発生、歩留低下等を抑制できる。F/Pが上記上限値以下であれば、遊離アルデヒド類が多量に残留することなく、製造工程中の作業環境雰囲気下にホルムアルデヒドが揮発せず、作業員の健康を害さない。
遊離アルデヒド類とは、JIS K 6910の5.17の規定に準じて測定される未反応のアルデヒド類である。
【0023】
アルカリ触媒としては、フェノール類とアルデヒド類との反応を進行させ得るものであれば特に制限はなく、種々のアルカリ性物質を用いることができる。具体例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等)、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ性物質;トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)(DBN)等の環式アミン等の有機アルカリ性物質;等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ触媒の使用量は、例えばフェノール類100質量部に対して0.1~5質量部とすることができる。
【0024】
フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下で反応させる方法は、公知の方法であってよい。例えば、攪拌装置を備えた反応容器にフェノール類、アルデヒド類、アルカリ触媒、水等を仕込み、任意の反応温度を任意の反応時間保持する方法が挙げられる。反応の開始後、必要に応じて、追加のアルカリ触媒及び任意の添加剤等を添加してもよい。
【0025】
反応温度は、50~110℃が好ましく、60~90℃がより好ましい。反応温度が前記範囲の下限値以上であれば、充分な反応速度が得られる。反応温度が前記範囲の上限値以下であれば、反応をコントロールしやすい。
反応時間は、例えば1~8時間、さらには2~6時間とすることができる。反応時間が上記範囲内であれば、メチロール量および分子量を制御しやすい。
【0026】
フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下で反応させた後の中和に用いる酸としては、アルカリ触媒を中和可能であればよく、例えばホウ酸、硫酸、塩酸、リン酸、乳酸、ギ酸等が挙げられる。
中和物のpHは7.0~9.0であり、7.0~8.0が好ましい。
【0027】
メチロール基低減処理としては、例えば、中和物を120~150℃で1~4時間加熱する処理が挙げられる。これにより、メチロール基とフェノール類との縮合反応によりメチロール基が低減される。
必要に応じて、メチロール基低減処理の後、又はメチロール基低減処理と同時に、希釈、濃縮(脱水)、脱フェノール等の処理を行ってもよい。
【0028】
<アルキレンオキサイド(AO)>
AOの炭素数は、例えば2~12であり、好ましくは2~8である。
AOの具体例としては、エチレンオキサイド(以下、「EO」とも記す。)、プロピレンオキサイド(以下、「PO」とも記す。)、1,2-、2,3-又は1,3-ブチレンオキサイド(以下、「BO」とも記す。)、テトラヒドロフラン、3-メチル-テトラヒドロフラン、1,3-プロピレンオキサイド、イソBO、炭素数5~12のα-オレフィンオキサイド、置換AO(例えばエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン、スチレンオキシド等)及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。混合物の場合、2種以上のAOはランダム付加されてもブロック付加されてもよい。
AOとしては、硬質ポリウレタンフォームの機械物性の観点から、EO、PO又はそれらの混合物が好ましく、硬質ポリウレタンフォームの難燃性の観点から、EOがより好ましい。
【0029】
<ポリオール(A)の製造方法>
ポリオール(A)は、前記したレゾール樹脂とAOとを反応させる工程(AO付加工程)を含む製造方法により製造できる。レゾール樹脂とAOとを反応させると、レゾール樹脂の持つ活性水素(フェノール性水酸基の水素原子等)の部分にAOが付加され、ポリオール(A)が生成する。
AO付加工程の前に、レゾール樹脂を製造する工程を含んでいてもよい。レゾール樹脂の製造方法は前記したとおりである。
【0030】
(AO付加工程)
AO付加工程は、公知の方法により行うことができる。例えば、攪拌装置を備えた耐圧反応容器にレゾール樹脂、アルカリ触媒等を仕込み、加圧条件下、任意の反応温度とし、AOを導入する方法が挙げられる。
【0031】
AO付加工程に用いられるアルカリ触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、炭酸カリウム、トリエチレンジアミン等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ触媒の使用量は、例えばレゾール樹脂100質量部に対して0.01~1質量部とすることができる。
【0032】
反応時の圧力は、0~0.4MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.1~0.3MPaがより好ましい。
反応温度は、80~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましい。
反応時間は、例えば0.5~12時間、さらには1~8時間とすることができる。
レゾール樹脂とAOとを反応させた後、必要に応じて、中和、触媒の吸着、ろ過、脱水等の処理を行ってもよい。
【0033】
以上説明したポリオール(A)にあっては、出発原料としてフェノール骨格1個当たりのメチロール基の数が0.25個以下のレゾール樹脂を用いているので、他のポリオール(例えば、ノボラック型フェノール樹脂を出発原料とするポリエーテルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール)に比べて、得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性に優れる。例えば硬質ポリウレタンフォームの燃焼試験を行ったときの質量残存率が高い傾向がある。
したがって、ポリオール(A)は硬質ポリウレタンフォームの製造に好適に用いられる。
【0034】
〔硬質ポリウレタンフォーム用組成物〕
本発明の一態様に係る硬質ポリウレタンフォーム用組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、ポリオール成分と、触媒と、発泡剤とを含む。
本組成物は、必要に応じて、整泡剤をさらに含んでいてもよい。
本組成物は、必要に応じて、難燃剤をさらに含んでいてもよい。
本組成物は、必要に応じて、上記以外の他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
なお、本組成物は、後述するポリイソシアネート成分は含まないものとする。
【0035】
<ポリオール成分>
ポリオール成分は、1種以上のポリオールからなり、少なくとも、ポリオール(A)を含む。ポリオール成分に含まれるポリオール(A)は1種でも2種以上でもよい。
ポリオール成分は、必要に応じて、ポリオール(A)以外の他のポリオールをさらに含んでいてもよい。
【0036】
ポリオール成分の総質量に対するポリオール(A)の割合は、20~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましく、50~100質量%がさらに好ましい。ポリオール(A)の割合が上記下限値以上であれば、硬質ポリウレタンフォームの難燃性がより優れる。
【0037】
他のポリオールとしては、例えば多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば炭素数2~20の2価アルコール[脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等)、脂環含有ジオール(シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等];炭素数3~20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール等)等];炭素数5~20の4価~8価又はそれ以上の多価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等)、脂肪族ポリオールの分子内脱水物(ソルビタン等)、脂肪族ポリオールの分子間脱水物(ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等);並びに、糖類及びその誘導体(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド等)等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素含有化合物(上記多価アルコール、多価フェノール、アンモニア、アミン、カルボン酸、リン酸等)のAO付加物及びその混合物が挙げられる。AOとしては前記と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
ポリエステルポリオールとしては、例えば上記多価アルコール及び/又は上記ポリエーテルポリオールとポリカルボン酸との縮合反応物、上記多価アルコール及び/又は上記ポリエーテルポリオールとカルボン酸無水物との反応物、並びにこれらのAO付加物が挙げられる。
これらのポリオールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ポリオール成分の含有量は、本組成物100質量%に対し、10~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
【0039】
<触媒>
触媒としては、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知の触媒を使用でき、例えばイソシアヌレート化触媒(以下、単に「ヌレート化触媒」とも記す。)、ウレタン化触媒が挙げられる。
ヌレート化触媒としては、オクチル酸カリウム、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
ウレタン化触媒としては、トリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N、N、N’、N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジアミノビシクロオクタン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、ビス(ジメチルアミノエチル)エ-テル及び1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-ウンデセン-7等の3級アミン触媒;オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛等の金属触媒等が挙げられる。
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ヌレート化触媒の含有量は、ポリオール成分100質量%に対し、0~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
ウレタン化触媒の含有量は、ポリオール成分100質量%に対し、0.05~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0041】
<発泡剤>
発泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知の発泡剤を使用でき、例えば水、液化炭酸ガス、水素原子含有ハロゲン化炭素水素、低沸点炭化水素等が挙げられる。
水素原子含有ハロゲン化炭化水素の具体例としては、HFC-245fa、HFC-365mfc等のハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC);HFO-1336mzz(Z)、HFO-1233zd等のハイドロフルオロオレフィン(HFO)が挙げられる。
低沸点炭化水素としては、沸点が-5~70℃の炭化水素が挙げられ、その具体例としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタンが挙げられる。
発泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率や成形性の点から、水、HFOが好ましい。
これらの発泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、硬質ポリウレタンフォームの密度を考慮して適宜設定できる。
例えば、発泡剤として水とHFOとを併用する場合、ポリオール成分100質量%に対し、水の含有量が0.1~10質量%、HFOの含有量が10~100質量%であることが好ましく、水の含有量が0.5~5質量%、HFOの含有量が20~80質量%であることがより好ましい。
【0043】
<整泡剤>
整泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知の整泡剤を使用でき、例えばジメチルシロキサン系整泡剤、ポリエーテルシロキサン重合物系整泡剤等が挙げられる。
【0044】
整泡剤の含有量は、ポリオール成分100質量%に対し、1~10質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。
【0045】
<難燃剤>
難燃剤としては、公知の難燃剤を使用でき、例えば、リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、ホウ素化合物、臭素化合物、塩素化パラフィン、環状脂肪酸等が挙げられる。これらの中でも、硬質ポリウレタンフォームの難燃性の観点から、リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルが好ましい。
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェートが挙げられる。
ハロゲン化リン酸エステルとしては、例えばトリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートが挙げられる。
これらの難燃剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
難燃剤の含有量は、ポリオール成分100質量%に対し、100質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。難燃剤の含有量が上記上限値以下であれば、硬質ポリウレタンフォームの圧縮強さ等の機械物性がより優れる。
難燃剤の含有量は、ポリオール成分100質量%に対し、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。難燃剤の含有量が上記下限値以上であれば、硬質ポリウレタンフォームの難燃性がより優れる。
【0047】
<他の添加剤>
他の添加剤としては、着色剤(染料、顔料等)、可塑剤(フタル酸エステル、アジピン酸エステル等)、有機充填剤(合成短繊維、熱可塑性又は熱硬化性樹脂からなる中空微小球等)、抗酸化剤(ヒンダードフェーノール系、ヒンダードアミン系等)、老化防止剤(トリアゾール系、ベンゾフェノン系等)、離型剤(ワックス系、金属石鹸系、又はこれらの混合系)等が挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本組成物は、ポリオール成分、触媒、発泡剤、必要に応じて他の成分(整泡剤、難燃剤、他の添加剤)を混合することにより製造できる。
【0049】
〔硬質ポリウレタンフォーム〕
本発明の一態様に係る硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応物を含む。
ポリオール成分は、前記した本組成物におけるポリオール成分と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0050】
<ポリイソシアネート成分>
ポリイソシアネート成分は、1種以上のポリイソシアネートからなる。
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を分子内に2個以上有する化合物であればよく、硬質ポリウレタンフォームの製造に使用される公知のものを使用でき、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、又はオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0051】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のイソシアネートも同様)6~16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6~20の芳香族トリイソシアネート及びこれらのイソシアネートの粗製物等が挙げられる。具体例としては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6~16の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数8~12の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDI、ひまし油変性MDI等が挙げられる。
【0052】
ポリイソシアネートとしては、硬質ポリウレタンフォームの機械物性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート並びにそれらの変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
硬質ポリウレタンフォームの機械物性の観点から、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート並びにそれらの変性物の合計の含有量は、ポリイソシアネート成分の総質量に対し、40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0053】
本態様の硬質ポリウレタンフォームは、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる工程(フォーム形成工程)を含む製造方法により製造できる。
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させる際に、触媒及び発泡剤の他に、整泡剤、難燃剤、他の添加剤のいずれか1以上を併存させてもよい。
触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤、他の添加剤はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられ、それらの好ましい含有量も前記と同様である。
【0054】
フォーム形成工程は、ポリオール成分としてポリオール(A)を含むものを用いる以外は、公知の方法により実施できる。
以下に、フォーム形成工程の具体的な一例を示す。
まず、ポリオール成分、触媒、発泡剤、必要に応じて他の成分(整泡剤、難燃剤、他の添加剤)を混合して本組成物を調製する。次いで、ポリウレタン発泡機又は攪拌機を用いて、本組成物とポリイソシアネート成分とを急速混合し、得られた混合液(発泡原液)をモールドに流し入れ、所定時間硬化させる。その後、脱型して硬質ポリウレタンフォームを得る。
モールドは開放モールド(フリー発泡)、密閉モールド(モールド発泡)のどちらでもよい。また、硬化は常温でも加熱下(例えば30~80℃)でもよい。また、スプレー発泡、連続発泡のどちらでもよい。ウレタン化反応は、プレポリマー法では各成分を混合した原液の粘度が高くなるためワンショット法が好ましい。
なお、本製造方法は、スラブフォームにもRIM(反応射出成形)法による成形にも適用でき、またメカニカルフロス法で硬質ポリウレタンフォームを得るのに用いることもできる。
【0055】
フォーム形成工程において、イソシアネート指数(NCO INDEX)[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]は、硬質ポリウレタンフォームの機械物性及び難燃性能の観点から、70以上が好ましく、100~800がより好ましく、200~700がさらに好ましく、300~600が特に好ましい。
【0056】
本態様の硬質ポリウレタンフォームの密度は、10~500kg/m3が好ましく、15~100kg/m3がより好ましく、25~70kg/m3がさらに好ましい。
密度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0057】
本態様の硬質ポリウレタンフォームの圧縮強さは、8N/cm2以上が好ましく、10N/cm2以上がより好ましく、12N/cm2以上がさらに好ましい。
圧縮強さは、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0058】
本態様の硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率は、30mW/m・K以下が好ましく、27mW/m・K以下がより好ましく、24mW/m・K以下がさらに好ましい。
熱伝導率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0059】
本態様の硬質ポリウレタンフォームは、後述する実施例に記載の燃焼試験を行ったときの最大発熱速度が、200kW/m2以下であることが好ましく、150kW/m2以下であることがより好ましく、120kW/m2以下であることがさらに好ましい。最大発熱速度が上記上限値以下であれば、難燃性がより優れる。
最大発熱速度は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
【0060】
本態様の硬質ポリウレタンフォームは、後述する実施例に記載の燃焼試験を行ったときの燃焼残渣が、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
燃焼残渣は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
【実施例0061】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下において「%」は、特に記載のない場合は「質量%」を示す。
【0062】
(製造例1~3)
表1に従って、撹拌装置を備えた反応容器内に、フェノール、50%ホルムアルデヒド水溶液、アルカリ触媒として48%水酸化カリウム水溶液を仕込んだ後、撹拌混合しながら65℃で2時間反応させた。次いで、76%ギ酸水溶液を用いて中和を行いpHを7.2に調整した後、110℃と150℃でそれぞれ1時間反応させた。その後、減圧下で水分とフェノールを留去した。これにより、レゾール樹脂(レゾール(1)~(3))を得た。
表1中、製造例1~3における触媒量は、48%水酸化カリウム水溶液の質量である。
【0063】
(製造例4、5)
48%水酸化カリウム水溶液の代わりにトリエチルアミンを用いた以外は製造例1~3と同様にしてレゾール樹脂(レゾール(4)、(5))を得た。
【0064】
(比較製造例1)
pHを7.2に調整後、110℃と150℃で反応させず、減圧下で水分とフェノールを留去した以外は製造例1~3と同様にしてレゾール樹脂(レゾール(6))を得た。
【0065】
各例のレゾール樹脂の物性(遊離フェノール量、粘度、メチロール基量、水分量)を表1に示す。各物性の測定方法を以下に示す。
遊離フェノール量:JIS K6910:2007の5.16の規定に準じて測定した。
粘度:E型粘度計を用い、25℃における値を測定した。ただし、製造例4、5については、25℃で測定不可能であったため、70℃における値を測定した。
メチロール基量(レゾール樹脂中のフェノール骨格1個当たりのメチロール基の数):NMR測定装置(JEOL RESONANCE製ECZ500R 13C測定モード)を用い、ピーク面積からメチロール基量を測定。
水分量:HIRANUMA AQUACOUNTER AQV-2200(カールフィッシャー液:Honeywell HYDRANALTM Composite5)を用いて測定した。
【0066】
【0067】
(実施例1~5、比較例1)
表2に従って、撹拌装置を備えた耐圧反応容器内に、出発原料としてのレゾール樹脂と、アルカリ触媒としての水酸化カリウムとを仕込んだ後、撹拌混合しながら、0.1~0.3MPa(ゲージ圧)の加圧条件下、150℃の温度でエチレンオキサイド(EO)を耐圧反応容器内に導入し、レゾール樹脂に付加させた。その後、水酸化カリウムを酢酸で中和し、100℃、約-0.1MPa(ゲージ圧)で1時間脱水して、フェノール樹脂系ポリエーテルポリオール(ポリオール(1)~(6))を得た。
【0068】
(比較例2)
以下の芳香族ポリエステルポリオールを比較例2のポリオールとした。
芳香族ポリエステルポリオール:無水フタル酸系ポリエステルポリオール、数平均活性水素含有官能基数2、水酸基価315mgKOH/g。
【0069】
(評価)
<ポリオールの物性>
各例のポリオールの物性(水酸基価、粘度、芳香環濃度、耐熱性、質量残存率)を表2に示す。各物性の測定方法を以下に示す。
水酸基価:JIS K 1557-1のB法にしたがって測定した。
粘度:B型粘度計を用い、25℃における値を測定した。
芳香環濃度:ポリオール(1)~(6)については、以下の計算式により算出した。
ポリオール(A)の芳香環濃度(%)=[(78÷106)×(100-A)÷100+(78÷94)×A÷100]×(B÷1000)×100
なお、式中の各項は以下を表す。
78=ベンゼンの分子量、
94=フェノールの分子量、
106=フェノール樹脂の分子量、
A=表1記載の遊離フェノール量(%)、
B=表2記載の出発原料仕込み量(g)。
例えば、実施例1の場合、次のようになる。
芳香環濃度(%)=[(78÷106)×(100―40)÷100+(78÷94)×40÷100]×(681÷1000)×100≒52.6
上記芳香族ポリエステルポリオールの芳香族濃度については、公称値を用いた。
【0070】
耐熱性:セイコーインスツル(株)製TG/DTA6200を用いて熱質量分析(温度範囲:40~500℃、昇温速度:10℃/分、空気雰囲気下)を行い、以下の基準で評価した。
◎:質量残存率が20%以上。
○:質量残存率が10%以上20%未満。
×:質量残存率が10%未満。
質量残存率:熱質量分析開始前のサンプル質量に対する500℃到達時点でのサンプル質量の割合。
【0071】
【0072】
実施例1~5のポリオールは、比較例2のポリオール(芳香族ポリエステルポリオール)に比べ、耐熱性に優れ質量量残存率が高かった。このことから、実施例1~5のポリオールを用いた硬質ポリウレタンフォームは、比較例2のポリオールを用いた硬質ポリウレタンフォームに比べ、燃焼時の耐熱性が高く、難燃性に優れると判断できる。
【0073】
<硬質ポリウレタンフォームの作製及び評価>
表3に従って、ポリオールと各添加剤とを混合してポリオール組成物を得た。得られたポリオール組成物と有機ポリイソシアネート(粗製MDI、東ソー(株)製「MR-200」、NCO%=31.5)とを、それぞれ20℃に温度調節した後混合し、ハンドミキサーを用いて8000回転/分で7秒間撹拌した。得られた混合物を、60℃に温度調節したモールド(アルミ製、縦×横×高さ=300mm×300mm×50mm)に注入し、5分後に脱型して硬質ポリウレタンフォームを得た。
【0074】
【0075】
表3中、添加剤は以下のものを使用した。
難燃剤:トリス(クロロプロピル)ホスフェート(大八化学(株)製TMCPP)。
触媒a:ウレタン化触媒(エボニックジャパン(株)製Dabco33LV)。
触媒b:ヌレート化触媒(エボニックジャパン(株)製DabcoK-15)。
触媒c:ヌレート化触媒(エボニックジャパン(株)製DabcoTMR-7)。
整泡剤:ポリエーテルシロキサン重合体(ダウ・東レ(株)製SH-193)。
発泡剤a:水。
発泡剤b:HFO-1233zd(ハネウェル製ソルスティスLBA)。
【0076】
得られた硬質ポリウレタンフォームの機械物性(密度、圧縮強さ、熱伝導率)を表4に示す。ただし、比較例1については、フォームのふくらみが悪く、物性測定可能なサンプルが得られなかったため、「発泡不可」とし、機械物性の測定を行わなかった。各物性の測定方法を以下に示す。
密度:得られた硬質ポリウレタンフォームから、200×200×40mmのサンプル片を切り出し、サンプル片の質量を体積で除して密度を算出した。
圧縮強さ:JIS K7220にしたがい、得られた硬質ポリウレタンフォームから、50×50×35mmのサンプル片を切り出した。サンプル片を厚みに対して10%圧縮し圧縮応力を測定した。その後、圧縮応力を断面積で除した値を圧縮強さとした。
熱伝導率:JIS A1412-2にしたがい、得られた硬質ポリウレタンフォームから、200×200×40mmのサンプル片を切り出した。その後、熱伝導率測定機「AUTO-Λ HC-074」英弘精機(株)製を使用して熱伝導率を測定した。
【0077】
また、得られた硬質ポリウレタンフォームの中央部から99×99×40mmのサンプル片を切り出した。ISO5660にしたがって「コーンカロリーメーター C3」(株)東洋精機製作所製を用いて燃焼試験を行い、最大発熱速度、燃焼残渣を求めた。結果を表4に示す。
【0078】
【0079】
実施例1~5のポリオールによれば、問題なく硬質ポリウレタンフォームを製造できた。得られた硬質ポリウレタンフォームは、比較例2のポリオールを用いた硬質ポリウレタンフォームに比べ、燃焼試験での最大発熱速度が遅く、かつ燃焼残渣が多く、難燃性に優れていた。また、機械物性も良好であった。