(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029586
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】施解錠制御装置
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
E05B47/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002774
(22)【出願日】2023-01-12
(62)【分割の表示】P 2019075352の分割
【原出願日】2019-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】519055788
【氏名又は名称】株式会社ビットキー
(74)【代理人】
【識別番号】100167483
【弁理士】
【氏名又は名称】林 裕己
(72)【発明者】
【氏名】白川 徹
(57)【要約】
【課題】手動で開閉する際にモータに負荷を与えない構成を、より簡単に実現する施解錠制御装置を提供する。
【解決手段】 施解錠制御装置は、扉を施錠又は開錠するサムターンを覆ってサムターンを収容する空間を有し、開口の縁に沿って第1ギアが形成された収容部材と、つまみ部を有し、収容部材と回転軸を共有するように連接され、つまみ部を回転させることにより収容部材を回転させる回転体と、第1ギアと係合し、第1ギアの回転に応じて回転する第2ギアと、第2ギアと回転軸を共有し、第2ギアに対して所定時間遅れて回転可能な第3ギアと、第3ギアを回転させる駆動部とを備えることにより、上記課題の解決を図る。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を施錠又は開錠するサムターンを覆って前記サムターンを収容する空間を有し、開口の縁に沿って第1ギアが形成された収容部材と、
つまみ部を有し、前記収容部材と回転軸を共有するように連接され、前記つまみ部を回転させることにより前記収容部材を回転させる回転体と、
前記第1ギアと係合し、前記第1ギアの回転に応じて回転する第2ギアと、
前記第2ギアと回転軸を共有し、前記第2ギアに対して所定時間遅れて回転可能な第3ギアと、
前記第3ギアを回転させる駆動部と、
を備えることを特徴とする施解錠制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施解錠制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、玄関等のドアに関して、その解錠および施錠を可能とするために、室内側のドア表面に、サムターンが設置されている。近年、スマートフォンなどの電子機器によりサムターンを駆動させて、開錠や施錠を行う施解錠制御装置(スマートロック)が開発されている。施解錠制御装置として、例えば、次の技術が開示されている。
【0003】
例えば、一例として、遠隔操作により扉を施錠又は開錠する電子錠であって、サムターンを回転させて扉を施錠又は開錠する第1の回転体と、第1の回転体に係合され、第1の回転体の第1の回転部材を回転動作させる駆動部と、把持部を有し、第1の回転体と係合され、第1の回転体の第2の回転部材を回転動作させる第2の回転体とを備え、第2の回転部材は第1の回転部材に対し、所定角度だけ相対的に回転可能な電子錠が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、一例として、モータからの駆動力を受けて回転するモータギアと、サムターンを回転させる駆動力を前記サムターンに伝達する第1ギアと、前記モータギアと前記第1ギアとの間に配置され、前記モータが発生させた駆動力を前記第1ギアに伝達するクラッチギアと、を備え、前記クラッチギアは、前記モータギアと前記第1ギアとの間の駆動力の伝達経路の遮断と形成を切り替える、鍵駆動装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、一例として、遊星ギアセットとクラッチを含むギアアセンブリであって、前記遊星ギアセットは、太陽ギアと、前記太陽ギアと噛み合う少なくとも1つの遊星ギアと、前記少なくとも1つの遊星ギアを支持するキャリアと、前記少なくとも1つの遊星ギアと噛み合う外輪ギアとを含み、前記クラッチは、前記遊星ギアセットが第1のモードと第2のモードの間で切り替わるように前記遊星ギアセットと係合及び離脱するよう操作可能なギアアセンブリが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらに、一例として、遠隔操作によりサムターンを回転動作させて扉を施錠または開錠する錠開閉装置であって、動力の伝達および遮断が可能な動力伝達機構および手動で開錠及び施錠を可能とする錠開閉装置が開示されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-148208号公報
【特許文献2】特開2016-223277号公報
【特許文献3】特開2018-028259号公報
【特許文献4】特許第6309145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
施解錠制御装置はサムターンのつまみを覆って回転させる構造のため、施解錠制御装置を設置後は、サムターンのつまみを直接指でつまむことができない。そのため手動で施錠又は開錠を行うことができなくなる。したがって、施解錠制御装置が電池式の場合には、電池がなくなった際に施錠又は開錠を行うことができず、また、緊急時(例えば、火事や地震)に手動で開錠を行うことができない。
【0009】
そこで、施解錠制御装置は、サムターンのつまみを直接回転させる第1の回転部材を回転させる部材であって手動で回転可能なように外部に露出したつまみを有する第2の回転部材を有する場合が多い。
【0010】
ところが、通常時では第1の回転部材はモータを駆動させて回転させるため、手動時に第2の回転部材を回転させることで第1の回転部材が回転し、サムターンのつまみを回転させる場合、その回転がモータに伝わり、モータに負荷がかかる。そこで、特許文献1に記載の電子錠では、第1の回転体及び前記第2の回転体の互いに対向する主面の一方には、突起が形成され、互いに対向する主面の他方には、突起が挿入される孔を形成することで、第2の回転部材は第1の回転部材に対し、所定角度だけ相対的に回転可能な構成になっている。
【0011】
また、特許文献2~4では、クラッチ機構を採用することにより、モータと、手動で回転させるとそれにより回転する回転部材との間の駆動力の伝達経路の遮断と形成を切り替えることで、手動時において、モータの負荷がつまみにかからないので、ユーザは、つまみを回すことができる構成となっている。
【0012】
しかしながら、これらの従来技術では、手動で回転させる際にモータに負荷を与えない構成やその構造に用いる部品の形状が複雑になるので、部品点数が多くなったり、歩留まりが低下したりする恐れがある。
【0013】
そこで、本発明では、手動で開閉する際にモータに負荷を与えない構成を、より簡単に実現する施解錠制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態における施解錠制御装置は、扉を施錠又は開錠するサムターンを覆って前記サムターンを収容する空間を有し、開口の縁に沿って第1ギアが形成された収容部材と、つまみ部を有し、前記収容部材と回転軸を共有するように連接され、前記つまみ部を回転させることにより前記収容部材を回転させる回転体と、前記第1ギアと係合し、前記第1ギアの回転に応じて回転する第2ギアと、前記第2ギアと回転軸を共有し、前記第2ギアに対して所定時間遅れて回転可能な第3ギアと、前記第3ギアを回転させる駆動部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる施解錠制御装置によれば、手動で開閉する際にモータに負荷を与えない構成を、より簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における施解錠制御装置の前方斜視図である。
【
図2】本実施形態における施解錠制御装置の後方斜視図である。
【
図3】本実施形態における施解錠制御装置を扉に設置した場合の断面図である。
【
図4】
図1の施解錠制御装置から筐体を取りはずした状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1の施解錠制御装置から筐体を取りはずした状態を示す前面図であって、
図4から回転体とポテンショメータとモータとを取り外した状態を示す図である。
【
図6】本実施形態におけるサムターン104のつまみ103に収容する収容部材11の斜視図である。
【
図7】本実施形態における収容部材、回転体及びこれらに関する部材を示す図である。
【
図9】第1カップリング部材が収容部材の天井部分に設置されている状態を収容部材の開口の方向から見た様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態における施解錠制御装置の前方斜視図である。
図2は、本実施形態における施解錠制御装置の後方斜視図である。
図3は、本実施形態における施解錠制御装置を扉に設置した場合の断面図である。
【0018】
図3に示すように、施解錠制御装置1は、扉101のサムターン104(サムターン台座102及びつまみ103)を覆い隠すように取り付けられて、サムターン104のつまみ103を回転させることにより、扉101を施錠又は開錠する。なお、施解錠制御装置1は、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の無線通信機能を備え、遠隔操作により扉101を施錠又は開錠することができる。以下、
図1~
図9を参照して施解錠制御装置1の構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、前方斜め方向から見ると、施解錠制御装置1の外観は、筐体2と、つまみ4を有する回転体3とから構成される。筐体2は、正面方向からみると、長方形の両端の短辺部分が半円形状になっている。回転体3は、平面状の円盤であり、直径方向につまみ4が設けられている。つまみ4は、回転体3を施解錠制御装置1の外側から回転させることができる。
【0020】
図2に示すように、後方斜め方向から見ると、施解錠制御装置1の背面は、概して2つの背面部材(背面部材5、背面部材6)から構成される。背面部材5は、背面方向からみると、およそ三日月形状をしている、電池等の電源を収容する電源ボックスの底部である。背面部材5は、筐体2に対して、背面側から着脱可能になっている。
背面部材6は、正面方向からみると、長方形の両端の短辺部分が半円形状になっている。背面部材6には、サムターン104を収容する空間7aが形成されており、その空間の入口に相当する開口7が形成されている。
【0021】
図3に示すように、通常、扉101の屋内側に設けられたノブ100の周辺に、扉101の施錠及び解錠を行うサムターン104が設けられている。サムターン104は、サムターン台座102及びつまみ103から構成される。サムターン台座102は、サムターンを扉101に対して回動可能なように固定する。サムターン104のつまみ103を、例えば、反時計回りに回転させると扉101が施錠され、施錠状態において時計回りに回転させると解錠される。なお、サムターン104のつまみ103を、時計回りに回転させると扉101が施錠され、施錠状態において反時計回りに回転させると解錠されるようにしてもよい。
【0022】
施解錠制御装置1は、扉101のサムターン104を覆い隠すように、取り付けられる。施解錠制御装置1の背面(背面部材5,6)に、両面が粘着テープ状の部材の一方の面を貼付し、他方の面を扉101の表面に貼付することにより、施解錠制御装置1を扉101に取り付ける。なお、マグネット(磁石)を用いて、施解錠制御装置1の背面(背面部材5,6)を扉101の表面に固定してもよい。
【0023】
上述したように、施解錠制御装置1には、背面部材5を底面とする電源ボックス9が内蔵されている。また、施解錠制御装置1には、内部に、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の無線通信機能等を実現する電気基板部8が収容されている。なお、仕様によっては、内部に電源をON/OFFするためのスイッチを電気基板部8に含めてもよい。
【0024】
図4は、
図1の施解錠制御装置から筐体を取りはずした状態を示す斜視図である。
図5は、
図1の施解錠制御装置から筐体を取りはずした状態を示す前面図であって、
図4から回転体3とポテンショメータ16とモータ17とを取り外した状態を示す図である。なお、本実施形態では、主として、構造的特徴に関して説明し、電気基板部8と電源ボックス9等の電気系統については言及しないので、以下では、電気基板部8と電源ボックス9を省略する。
【0025】
背面部材6の上に、収容部材11、回転体3、ポテンショメータ用ギア12、第2ギア13、第3ギア14、モータ用ギア15、ポテンショメータ16、モータ17を有する。モータ17は、不図示の電池より電力が供給されて駆動する。
【0026】
収容部材11は、内部にサムターン104を収容するためにカップ形状をしており、その開口7の縁には第1ギア11aが設けられている。第1ギア11aは、ポテンショメータ用ギア12と、第2ギア13とにそれぞれ係合している。なお、ポテンショメータ用ギア12は第2ギア13とは係合していない。なお、第1ギア11a、ポテンショメータ用ギア12、第2ギア13、第3ギア14、及びモータ用ギア15は、平歯車である。
【0027】
ポテンショメータ用ギア12は、ポテンショメータ16が収容部材11の回転角度を計測するために、ポテンショメータ16に第1ギア11aの回転角度を伝達するためのものである。ポテンショメータ16は、回転角度を検出するロータリーポテンショメータである。
【0028】
第2ギア13は、その円盤面に、点対称な位置に2つの突起13aが設けられている。第3ギア14は、第2ギア13に積層され、第2ギア13と同一の回転軸であって、点対称に円弧状の2つの溝14aが設けられている。突起13aは、溝14aにはめ込まれている。第3ギア14に対して第2ギア13が相対的に回転すると、突起13aが溝14aの形状(円弧状)に沿って相対的に移動する。第3ギア14は、モータ用ギア15と係合している。モータ用ギア15は、電動駆動装置であるモータ17からの動力を第3ギア14に伝達するためのギアである。
【0029】
ここで、第1ギア11a、第2ギア13、第3ギア14の動作について説明する。まずは、モータ17の駆動時について説明する。モータ17が駆動すると、モータ用ギア15が回転し、係合している第3ギア14を回転させる。
【0030】
このとき、第3ギア14が回転しても、溝14aと突起13aとの位置関係によって第2ギア13は所定時間遅れて回転する。すなわち、第3ギア14の回転が開始すると、突起13aは、円弧状の溝14aに沿って、第3ギア14の回転方向とは相対的に逆方向へ進み、溝14aの端部(ストッパー)に当接すると、その端部はその当接した突起13aを押し始める。すると、第2ギア13が回転を開始する。第2ギア13が回転することにより、係合している第1ギア11aも回転を開始する。第1ギア11aの回転に合わせて収容部材11も回転する。すると、収容部材11に収容されたサムターン104のつまみ103が回転して、施錠または解錠される。
【0031】
次に、モータ17の停止時について説明する。例えば、電池が切れたときや電気系統に異常が生じた場合やその他の緊急時には、手動で扉101の施錠または解錠をすることになる。この場合、回転体3のつまみ4を回転させることで、サムターン104のつまみ103も回転させることができ、これにより、手動で扉101の施錠または解錠をすることができる。
【0032】
ところが、回転体3のつまみ4が回転する場合、その回転による動力がそのまま第1ギア11a、第2ギア13、第3ギア14を介して、モータ用ギア15まで伝達されると、停止しているモータ17に負荷をかけてしまう。すると、モータ17が故障するおそれが生じる。または、モータによっては、停止状態のモータを手動で動かそうとしても、重くて動かせない場合がある。そこで、少なくとも、サムターン104のつまみ103を回転させる範囲で、モータ用ギア15までにその動力が伝達しないように、第2ギア13と第3ギア14との間で遊びを設けるようにする。これについて詳述する。
【0033】
手動で回転体3のつまみ4を回転させる。すると、それに連動して収容部材11が回転し、その開口7の縁に設けられた第1ギア11aも同時に回転する。第1ギア11aが回転すると、それに係合している第2ギア13も回転を開始する。
【0034】
このとき、第2ギア13が回転しても、溝14aと突起13aとの位置関係によって第3ギア14は所定時間遅れて回転する。すなわち、第2ギア13の回転が開始すると、突起13aは、円弧状の溝14aに沿って、第2ギア13の回転方向へ進み、溝14aの他方の端部(ストッパー)に当接すると、当接した突起13aはその端部を押し始める。すると、第3ギア14が回転を開始する。
【0035】
ここで、第1ギア11aの歯数をZ1、回転数をn1とし、第2ギア13の歯数をZ2、回転数をn2とすると、速度比=Z2/Z1=n1/n2より、n2= (Z1/Z2)n1で示される。また、溝14aを形成する円弧の半径をr、円弧を形成する扇形の角度をθとすると、円弧の長さLは、
【0036】
L≧2πr×(θ/360)=2πr×n2=2πr×(Z1/Z2)n1
を満たせばよい。これにより、サムターン104のつまみ103が回転し終わる前に、突起13aが溝14aの端部に到達することがなく、モータ17に負荷がかかることがない。
【0037】
以上のように、モータ17が駆動することにより、第3ギア14が回転して突起13aが円弧状の溝14aの一端に当接すると、第3ギア14と第2ギア13は同心軸により回転する。第2ギア13が回転することにより第1ギア11aが回転し、第1ギア11aが回転することにより収容部材11が回転する。収容部材11が回転することによりサムターン104のつまみ103を回転させて、扉101を施錠又は開錠することができる。
【0038】
また、モータ17が停止している場合、回転体3を回転させることにより、収容部材11を回転させる。収容部材11が回転することによりサムターン104のつまみ103を回転させて扉101を施錠又は開錠する。このとき、第3ギア14に対して第2ギア13がn2= (Z1/Z2)n1により算出される回転角度(=n2/360°)以上回転しない限り、第3ギア14は、静止している。
【0039】
図6は、本実施形態におけるサムターン104のつまみ103に収容する収容部材11の斜視図である。上述したように、収容部材11の開口7の縁には第1ギア11aが設けられている。収容部材11の天井部11bの中央部分には、直径方向に、所定の幅の開口11cが設けられている。収容部材11の内部の天井付近には、中間カップリング部22(第1カップリング部材23、第2カップリング部材24)が取り付けられている。
【0040】
図7は、収容部材11、回転体3及びこれらに関する部材を示す図である。以下では、
図5及び
図6を用いながら、
図7を説明する。収容部材11の天井部11bと回転体3との間に、円環状のスペーサ20及びスペーサ21が挟まれるように積層して設置されている。スペーサ20は、回転体3の回転動作の摩擦抵抗を低下させる機能も有している。
【0041】
回転体3は、スペーサ20及びスペーサ21を挟みつつ、収容部材11の天井部11bに対して固定される。これにより、回転体3と収容部材11との回転軸を、同一とすることができる。
【0042】
また、収容部材11の内部には、第1カップリング部材23と第2カップリング部材24とから構成される中間カップリング部22が取り付けられている。中間カップリング部22と収容部材11の内側天井部分との組み合わせより、回転体3の回転軸と収容された状態におけるサムターン104のつまみ103の回転軸とのずれを吸収する継手構造が形成されている。継手構造としては、たとえば、オルダム継手(Oldham’s coupling)状の継手構造であってもよい。
【0043】
なお、
図7において、第1ギア11aは、収容部材11とは別体で形成されているが、これに限定されず、一体的に形成されていてもよい。
【0044】
図8は、
図7の中間カップリング部22の斜視図である。中間カップリング部22は、第1カップリング部材23と第2カップリング部材24とから構成されている。
【0045】
第2カップリング部材24は、円形状の第1カップリング部材23の中央に直径方向に固定されている。第2カップリング部材24には、所定の幅の溝(スリット)24aが直線状(X軸方向)に設けられている。
【0046】
第2カップリング部材24は、溝24aに、サムターンのつまみ103が入り込むように構成されている。溝24aのサイズ(幅、長さ、及び深さ)は、一般的に扉101のサムターン104のつまみ103として流通しているつまみのサイズに基づいて決定される。特に、溝24aの幅と長さを調整することにより、汎用的に用いられているサムターン104またはつまみ103のX軸方向の位置の調整に対応することができる。
【0047】
すなわち、溝24aの長さは、サムターン104のつまみ103の回転面における長さよりも長くなるように構成されている。これにより、サムターン104のつまみ103のX方向へのずれを吸収することができる。
【0048】
また、溝24aの幅は、サムターン104のつまみ103の回転面の直径よりも小さくなるように構成されている。これにより、収容部材11と共に第2カップリング部材24が回転して、溝24aの壁面にサムターン104のつまみ103がひっかかるので、サムターン104のつまみ103を、空転させずに、回転させることができる。
【0049】
第1カップリング部材23は、円形状をしており、中央には直径方向に所定の幅の溝(スリット)23bが形成されている。また、第1カップリング部材23には、その溝23bを取り囲むように、第2カップリング部材24を固定するためのフック状の固定部23cが4つ形成されている。
【0050】
第1カップリング部材23には、その固定された第2カップリング部材24の両脇に、溝24aに対して垂直方向(Y軸方向)で半径方向に溝23aが設けられている。溝23aについては、
図9を用いて詳述する。
【0051】
図9は、第1カップリング部材23が収容部材11の天井部分に設置されている状態を収容部材11の開口7の方向から見た様子を示す図である。第1カップリング部材23には、X軸方向に形成された溝23bに対して垂直方向(Y軸方向)に、所定の長さの2つの溝23aが形成されている。
【0052】
各溝23aには、収容部材11の内側の天井部分に設けられた2つの突起11dそれぞれが挿通されている。これにより、第1カップリング部材23は、収容部材11に対して、Y軸方向のみにスライドすることができる。その結果、溝23aの長さを調整することで、突起11dの相対的なY軸方向への移動距離を調整することができる。したがって、サムターン104またはつまみ103のY軸方向の位置の調整に対応することができる。これにより、サムターン104のつまみ103のY方向へのずれを吸収することができる。
【0053】
上記より、収容部材11をサムターン104に被せた場合に、サムターン104のつまみ103の回転軸と収容部材11(すなわち回転体3の回転軸)とが一致しない場合であっても、カップリング部25により、その回転軸のずれを吸収することができる。その結果、手動で回転体3を回転された場合であっても、常に、サムターン104のつまみ103を容易に回転させることができる。
【0054】
また、上記の実施形態では、第2ギア13に突起13a、第3ギア14に溝14aを設けたが、これに限定されず、例えば、第2ギア13に円弧状の溝を設け、第3ギア14に突起を設けてもよい。
【0055】
また、第2ギア13及び第3ギア14にそれぞれ、2つの突起及び2つの円弧状の溝を設けたが、2つに限定されず、例えば、それぞれのギアに形成する突起及び円弧状の溝の数はそれぞれ、1つでもよいし、3つ以上でもよい。3つ以上の場合には、ギアの円盤のスペースの関係から、同心円状でかつ異なる半径を有する円弧状の溝を設ける必要がある場合もある。
【0056】
また、カップリング部の一例としてオルダム継手状の継手構造を用いたがこれに限定されず、回転体3の回転軸と収容された状態におけるサムターン104のつまみ103の回転軸とのずれを吸収する構成であれば、どのような継手方法を用いてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、収容部材11の内側の天井部分に2つの突起11dを設け、第1カップリング部材23に2つの突起11dをガイドする2つの23aを設けたがこれに限定されず、例えば、第1カップリング部材23側に突起を設け、収容部材11の内側の天井部分にその突起をガイドする溝をもうけてもよい。
【0058】
本実施形態にかかる施解錠制御装置1は、
扉を施錠又は開錠するサムターン104を覆って前記サムターン104を収容する空間を有する収容部材11と、
前記収容部材11の開口7の縁に沿って設けられた第1ギア11aと、
前記第1ギア11aと係合し、前記第1ギア11aの回転に応じて回転する第2ギア13と、
前記第2ギア13に重ねられ、前記第2ギア13と同一の回転軸を有し、前記第2ギア13に対して相対的に所定角度回転可能な第3ギア14と、
前記第3ギア14を回転させる駆動部(モータ17)と、
つまみ部(つまみ4)を有し、前記収容部材11と回転軸が同一になるように連接され、前記つまみ部(つまみ4)を摘まんで回転させることにより前記収容部材11を回転させる回転体3と、
を備えることを特徴とする。
【0059】
このように構成することにより、手動で開閉する際にモータ17に負荷を与えない構成を、より簡単に実現することができる。
【0060】
前記施解錠制御装置1において、
前記第2ギア13及び前記第3ギア14のうち、一方のギアには前記一方のギアの回転方向に円弧状の溝(例えば、溝14a)が形成され、他方のギアには前記溝に挿入される突起(例えば、突起13a)が形成されており、
前記第2ギア13は、前記第3ギア14に対し、前記サムターン104のつまみ103の回転方向に沿って前記円弧状の溝(例えば、溝14a)を前記突起(例えば、突起13a)が相対的に移動する範囲で相対的に前記所定角度回転可能である
ことを特徴とする。
【0061】
このように構成することにより、手動でサムターンのつまみを回す場合に、前記所定角度の遊びを設定した範囲において、その回転による動力をモータ17に伝達させないようにすることができる。
前記施解錠制御装置1において、
前記所定角度は、n2= (Z1/Z2)n1(Z1:第1ギアの歯数、n1:第1ギアの回転数、Z2:第2ギアの歯数、n2:第2ギアの回転数)により算出される回転角度(=n2/360°)以上である
ことを特徴とする。
【0062】
このように構成することにより、第3ギア14に対して第2ギア13がn2= (Z1/Z2)n1により算出される回転角度(=n2/360°)以上回転しない限り、第3ギア14は、静止している。すなわち、施解錠制御装置1をサムターン104に取り付けた状態においては、その角度に到達する前に、サムターン104のつまみ103の回転が完了するので、その回転角度(=n2/360°)以上回転が生じることはない。
【0063】
前記施解錠制御装置1は、さらに、
前記収容部材11の内部に設けられ、前記サムターン104のつまみ103の回転軸と前記回転体3の回転軸との間の軸のずれを吸収するカップリング部25
を備えることを特徴とする。
【0064】
このように構成することにより、収容部材11をサムターン104に被せた場合に、サムターン104のつまみ103の回転軸と収容部材11(すなわち回転体3の回転軸)とが一致しない場合であっても、カップリング部25により、その回転軸のずれを吸収することができる。
【0065】
前記カップリング部25は、
前記収容部材11の内部の天井面に、所定の方向に移動可能に設けられた第1カップリング部材23と、
前記第1カップリング部材23に固定され、収容された前記サムターン104のつまみ103が挿入された場合に前記サムターン104のつまみ103の回転面における長さよりも長い溝24aが形成された第2カップリング部材24と、
を備えることを特徴とする。
【0066】
このように構成することにより、回転体3の回転軸と収容された状態におけるサムターン104のつまみ103の回転軸とのずれを吸収するオルダム継手を簡単に形成することができる。
【0067】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0068】
(付記1)
扉を施錠又は開錠するサムターンを覆って前記サムターンを収容する空間を有する収容部材と、
つまみ部を有し、前記収容部材と回転軸を共有するように連接され、前記つまみ部を摘まんで回転させることにより前記収容部材を回転させる回転体と、
前記収容部材の開口の縁に沿って設けられた第1ギアと、
前記第1ギアと係合し、前記第1ギアの回転に応じて回転する第2ギアと、
前記第2ギアと回転軸を共有し、前記第2ギアに対して相対的に所定角度回転可能な第3ギアと、
前記第3ギアを回転させる駆動部と、
を備えることを特徴とする施解錠制御装置。
(付記2)
前記第2ギア及び前記第3ギアのうち、一方のギアには前記一方のギアの回転方向に円弧状の溝が形成され、他方のギアには前記溝に挿入される突起が形成されており、
前記第2ギアは、前記第3のギアに対し、前記サムターンのつまみの回転方向に沿って前記円弧状の溝を前記突起が相対的に移動する範囲で相対的に前記所定角度回転可能である
ことを特徴とする付記1に記載の施解錠制御装置。
(付記3)
前記所定角度は、
n2= (Z1/Z2)n1
(Z1:第1ギアの歯数、n1:第1ギアの回転数、Z2:第2ギアの歯数、n2:第2ギアの回転数)
により算出される回転角度(=n2/360°)以上である
ことを特徴とする付記1又は2に記載の施解錠制御装置。
(付記4)
前記施解錠制御装置は、さらに、
前記収容部材の内部に設けられ、前記サムターンのつまみの回転軸と前記回転体の回転軸との間の軸のずれを吸収するカップリング部
を備えることを特徴とする付記1~3のうちいずれか1項に記載の施解錠制御装置。
(付記5)
前記カップリング部は、
前記収容部材の内部の天井面に、所定の方向に移動可能に設けられた第1カップリング部材と、
前記第1のカップリング部に固定され、収容された前記サムターンのつまみが挿入された場合に前記サムターンのつまみの回転面における長さよりも長い溝が形成された第2カップリング部材と、
を備えることを特徴とする付記4に記載の施解錠制御装置。
【符号の説明】
【0069】
1 施解錠制御装置
2 筐体
3 回転体
4 つまみ
5 背面部材
6 背面部材
11 収容部材
11a 第1ギア
11b 天井部
12 ポテンショメータ用ギア
13 第2ギア
13a 突起
14 第3ギア
14a 溝
15 モータ用ギア
16 ポテンショメータ
17 モータ
20 スペーサ
21 スペーサ
22 中間カップリング部
23 第1カップリング部材
24 第2カップリング部材