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特開2023-29624strepタグ特異的キメラ受容体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029624
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】strepタグ特異的キメラ受容体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230224BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230224BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230224BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230224BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230224BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20230224BHJP
   C07K 14/115 20060101ALN20230224BHJP
   C07K 14/245 20060101ALN20230224BHJP
   C07K 14/11 20060101ALN20230224BHJP
   C12N 15/44 20060101ALN20230224BHJP
   C12N 15/45 20060101ALN20230224BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230224BHJP
   C12N 15/42 20060101ALN20230224BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230224BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K16/12
C12N15/13
C12N15/867 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/02
A61K35/17
A61K47/68
C07K14/47
C07K14/115
C07K14/245
C07K14/11
C12N15/44
C12N15/45
C12N15/12
C12N15/42
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003704
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2020513309の分割
【原出願日】2018-09-06
(31)【優先権主張番号】62/555,012
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522176001
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】510334686
【氏名又は名称】テクニッシュ ウニヴェルジテート ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リンフェン リウ
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー アール. リデル
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジモーン フレースル
(57)【要約】
【課題】Strepタグを含有する分子または細胞を選択的に検出するためのタグ特異的融合タンパク質を提供する。
【解決手段】本開示は、Strepタグを含有する分子または細胞を選択的に検出するためのタグ特異的融合タンパク質を提供する。タグ特異的融合タンパク質は、Strepタグを含有するCARまたはマーカーなどの、タグ付き細胞表面分子を発現する免疫治療用細胞の活性のモニタリングおよび/またはモジュレーションに使用することができる。タグ付き分子または細胞を検出するための本開示の例示的な融合タンパク質(またはそのような融合タンパク質をその細胞表面に発現する細胞)は、(a)strepタグペプチドと特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外成分と、(b)エフェクタードメインまたはその機能的部分を含む細胞内成分と、(c)前記細胞外成分と前記細胞内成分を接続する膜貫通ドメインを含むことができる。
【選択図】図15A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、本明細書に完全に明記されたものとしてあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる2017年9月6日に出願した米国特許出願第62/555,012号の優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表に関する記述
本願に関連する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、これによって参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、360056_450WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。このテキストファイルは28.9KBであり、2018年9月3日に作成されたものであり、EFS-Web経由で電子的に提出されている。
【背景技術】
【0003】
背景
遺伝子改変されたT細胞の養子移入は、様々な悪性疾患に対する強力な治療法として出現した。最も広く利用されている戦略は、腫瘍関連抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現する患者由来T細胞の注入である。このアプローチには、T細胞を任意の細胞表面抗原に標的化できること、腫瘍エスケープ機構としての主要組織適合性遺伝子複合体の喪失を回避できること、および、いずれの患者の処置にもヒト白血球抗原ハプロタイプに関係なく単一のベクター構築物を利用できることを含む、非常に多くの理論的利点がある。例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)についてのCAR臨床試験では、悪性リンパ系細胞上はもちろん正常B細胞上にも発現するCD19、CD20またはCD22抗原が、これまでに標的とされたことがある(Brentjens et al., Sci Transl Med 2013;5(177):177ra38; Haso et al.,Blood 2013;121(7):1165-74; James et al., J Immunol 2008;180(10):7028-38; Kalos et al., Sci Transl Med 2011;3(95):95ra73; Kochenderfer et al., J Clin Oncol 2015;33(6):540-9; Lee et al., Lancet 2015;385(9967):517-28; Porter et al., Sci Transl 25 Med 2015;7(303):303ra139; Savoldo et al., J Clin Invest 2011;121(5):1822-6; Till et al., Blood 2008;112(6):2261-71; Till et al., Blood 2012;119(17):3940-50; Coiffier et al., N Engl J Med 2002;346(4):235-42)。
しかし、養子細胞治療は、まだ開発途上である。例えば、B細胞悪性疾患におけるCD19を標的とするCAR T細胞治療は、がん性B細胞のみならず正常B細胞も破壊する。B細胞無形成症として公知の状態である、健常B細胞数の低減または非存在は、感染症と闘う抗体を産生する患者の能力を損なわせ得る。CAR T免疫応答の特異度および強度のモジュレーションは、別の課題を提起する。「オンターゲット・オフ腫瘍」毒性の例示的な悲劇的症例では、転移性結腸がんを有した患者が、ERBB2(結腸がんにおいて高度に発現される)に特異的なキメラ抗原受容体を発現するT細胞を施された後、投与された細胞が肺に局在し、健常肺組織中の低レベルのERBB2に対してCRS(サイトカイン放出症候群)事象を誘発して、死亡した。例えば、Morgan et al., Mol.Ther.18(4):843-851 (2010)を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Brentjens et al., Sci Transl Med 2013;5(177):177ra38
【非特許文献2】Haso et al.,Blood 2013;121(7):1165-74
【非特許文献3】James et al., J Immunol 2008;180(10):7028-38
【非特許文献4】Kalos et al., Sci Transl Med 2011;3(95):95ra73
【非特許文献5】Kochenderfer et al., J Clin Oncol 2015;33(6):540-9
【非特許文献6】Lee et al., Lancet 2015;385(9967):517-28
【非特許文献7】Porter et al., Sci Transl 25 Med 2015;7(303):303ra139
【非特許文献8】Savoldo et al., J Clin Invest 2011;121(5):1822-6
【非特許文献9】Till et al., Blood 2008;112(6):2261-71
【非特許文献10】Till et al., Blood 2012;119(17):3940-50
【非特許文献11】Coiffier et al., N Engl J Med 2002;346(4):235-42
【非特許文献12】Morgan et al., Mol.Ther.18(4):843-851 (2010)
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、(左上)Strep(登録商標)タグII(配列番号19)(「STII」)ペプチドヒンジ領域を有する抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)をコードし、短縮型EGFR形質導入マーカーをさらにコードする、例示的な発現構築物;(右上)コードされた抗CD19-STII CARを発現する宿主細胞のモデル;(左下)抗STII CARと短縮型EGFR形質導入マーカーとをコードする例示的な発現構築物;および(右下)コードされた抗STII CARを発現する宿主細胞のモデルの概略図を示す。
【0006】
図2図2は、例示的な抗STII CAR設計の概略図を示す。左:中等度の長さのスペーサー(IgG4 CH3)を有する抗STII CAR。中央:長いスペーサー(IgG4/2NQ CH2-CH3)を有する抗STII CAR。右:中等度または長いスペーサーおよびscFv結合ドメイン(「5G2」または「3E8」)を有する、VH-VLまたはVL-VH配向で生成された例示的な抗STII CARの記述。
【0007】
図3図3は、図2に描示した構築物の初代PBMCにおける発現を示す。(A、上方左側の角)非形質導入PBMC。(B、下方左側の角)抗CD19-STII CAR発現構築物で形質導入されたPBMC。(C、下方右側の角)抗STII CAR発現構築物で形質導入されたPBMC。形質導入細胞は、細胞へのγ-レトロウイルス形質導入後4日目にビオチン化抗EGFRモノクローナル抗体およびストレプトアビジン-PEを使用するフローサイトメトリー実験で検出された。細胞は、生存リンパ球にプレゲートされた。数字は、検出された細胞の百分率を示す。
【0008】
図4A-4B】図4Aおよび4Bは、本開示の高親和性抗STII CARを発現するように(A)形質導入されていない初代PBMCおよび(B)形質導入された初代PBMCからの発現データを示すフローサイトメトリー実験からのデータを提供する。形質導入細胞は、γ-レトロウイルス形質導入後4日目にビオチン化抗EGFRモノクローナル抗体およびストレプトアビジン-PEを使用するフローサイトメトリー実験で検出された。細胞は、生存リンパ球にプレゲートされた。数字は、検出された細胞の百分率を示す。
【0009】
図5A図5Aおよび5Bは、本開示による例示的な抗STII CAR T細胞の特異性および反応性を示す。(A)図の説明文に示されるとおりの抗STII CARで形質導入されたヒトT細胞によるIFN-γ産生(ng/mL)。X軸、左から右へ:陰性対照(抗CD19-Hi CAR T細胞);1、2または3 STIIを発現する抗CD19 CAR T細胞;PMA/IONOで活性化されたT細胞(陽性対照)。(B)抗CD19-Hi CAR T細胞もしくは培地のどちらか(上の横列)または抗CD19-1STII CAR T細胞もしくは培地のどちらか(下の横列)での刺激後のカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識抗STII CAR T細胞の増殖を示すFACSデータ。
図5B図5Aおよび5Bは、本開示による例示的な抗STII CAR T細胞の特異性および反応性を示す。(A)図の説明文に示されるとおりの抗STII CARで形質導入されたヒトT細胞によるIFN-γ産生(ng/mL)。X軸、左から右へ:陰性対照(抗CD19-Hi CAR T細胞);1、2または3 STIIを発現する抗CD19 CAR T細胞;PMA/IONOで活性化されたT細胞(陽性対照)。(B)抗CD19-Hi CAR T細胞もしくは培地のどちらか(上の横列)または抗CD19-1STII CAR T細胞もしくは培地のどちらか(下の横列)での刺激後のカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識抗STII CAR T細胞の増殖を示すFACSデータ。
【0010】
図6A-6C】図6A~6Cは、示されている抗STII CAR構築物を発現するエフェクターT細胞が、(A)抗CD19-Hi CAR T細胞、(B)抗CD19-1STII CAR T細胞、または(C)抗CD19-3STII CAR T細胞を発現する1×10のCr51標識標的T細胞とともに、4時間、示されているエフェクター:標的比(x軸)で、三重反復実験でインキュベートされた、細胞傷害性アッセイからのデータを提供する。特異的溶解は、クロム放出検出に基づいて標準式を使用して計算された。データは、三重反復実験の平均±SDを意味する。
【0011】
図7図7は、抗CD19-STII CAR T細胞および抗STII CAR T細胞の殺滅活性が判定された細胞傷害性アッセイからのデータを示す。丸:標的CD19K562細胞とのエフェクター抗CD19-STII CAR T細胞の共培養;正方形:標的CD19-1STII CAR T細胞と共培養での抗Strep Tag II CAR T細胞;三角形:非形質導入T細胞とのエフェクター抗STII CAR T細胞の共培養;菱形:標的非改変K562細胞とのエフェクター抗CD19-STII CAR T細胞の共培養。Y軸:標的細胞の%特異的溶解。X軸:エフェクター:標的比。
【0012】
図8図8は、エフェクター抗STII CAR T細胞が、抗CD19-STII CARを発現する標的HEK293細胞とともにインキュベートされた、細胞傷害性アッセイからのデータを示す。上の3つの曲線(丸、正方形、および上向き三角形は、データ点を表す)は、示されているエフェクター:標的比での抗STII CARの殺滅能力を示す。一番下の曲線(下向き三角形)は、非形質導入細胞を使用する陰性対照からのものである。
【0013】
図9図9は、マウス膜貫通およびシグナル伝達ドメインを有し、かつマウスIgG1 CH3スペーサー(左)またはMycタグスペーサー(右)のどちらかを有する、抗STII CAR構築物の概略図を示す。
【0014】
図10A図10Aおよび10Bは、標的細胞への曝露後の、図9に図示されている抗STII CAR構築物を発現するマウスT細胞によるサイトカイン産生を示す。(A)Y軸:図の説明文に示されるとおりの抗STII CARで形質導入されたマウスT細胞によるIFN-γ産生(ng/mL)。X軸、左から右へ:陰性対照(マウス抗CD19-Hi CAR T細胞);短縮型EGFR形質導入マーカーを有するまたは有さないマウス抗CD19-STII CAR T細胞;PMA/IONOで活性化されたマウスT細胞(陽性対照);培地。(B)Y軸:抗STII CAR T細胞によるIL-2産生(ng/mL)。X軸、左から右へ:陰性対照(マウス抗CD19-Hi CAR T細胞);短縮型EGFR形質導入マーカーを有するまたは有さないマウス抗CD19-STII CAR T細胞;PMA/IONOで活性化されたマウスT細胞(陽性対照);培地。
図10B図10Aおよび10Bは、標的細胞への曝露後の、図9に図示されている抗STII CAR構築物を発現するマウスT細胞によるサイトカイン産生を示す。(A)Y軸:図の説明文に示されるとおりの抗STII CARで形質導入されたマウスT細胞によるIFN-γ産生(ng/mL)。X軸、左から右へ:陰性対照(マウス抗CD19-Hi CAR T細胞);短縮型EGFR形質導入マーカーを有するまたは有さないマウス抗CD19-STII CAR T細胞;PMA/IONOで活性化されたマウスT細胞(陽性対照);培地。(B)Y軸:抗STII CAR T細胞によるIL-2産生(ng/mL)。X軸、左から右へ:陰性対照(マウス抗CD19-Hi CAR T細胞);短縮型EGFR形質導入マーカーを有するまたは有さないマウス抗CD19-STII CAR T細胞;PMA/IONOで活性化されたマウスT細胞(陽性対照);培地。
【0015】
図11A図11A~11Gは、マウス抗STII CAR T細胞のCAR発現およびin vivo細胞溶解活性を示す。(A)マウスT細胞における抗STII CAR(左に示される)の表面発現を示すフローサイトメトリーデータ。(B)B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-1STII CAR T細胞(1 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図。(C)(B)に示される処置スキームに従っての第1群の抗STII CAR T細胞の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T;黒丸)およびエフェクター(抗STII CAR T;白丸)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(D)抗STII CAR T細胞の注入後+3日目および+42日目における対照または第1群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFRMyc)の頻度を示すフローサイトメトリーデータ。(E)第2群の抗STII CAR T細胞((B)を参照されたい)の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T)およびエフェクター(抗STII CAR T)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(F)抗CD19-STII CAR T細胞の注入後+3日目(上の6パネル)および+42日目(下の6パネル)における対照および第2群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFR)Myc)の頻度を示す、フローサイトメトリー実験からのデータ。(G)健常マウスに対する処置マウスにおけるPBMC中のB細胞頻度を示すフローサイトメトリーデータの要約。
図11B図11A~11Gは、マウス抗STII CAR T細胞のCAR発現およびin vivo細胞溶解活性を示す。(A)マウスT細胞における抗STII CAR(左に示される)の表面発現を示すフローサイトメトリーデータ。(B)B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-1STII CAR T細胞(1 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図。(C)(B)に示される処置スキームに従っての第1群の抗STII CAR T細胞の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T;黒丸)およびエフェクター(抗STII CAR T;白丸)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(D)抗STII CAR T細胞の注入後+3日目および+42日目における対照または第1群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFRMyc)の頻度を示すフローサイトメトリーデータ。(E)第2群の抗STII CAR T細胞((B)を参照されたい)の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T)およびエフェクター(抗STII CAR T)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(F)抗CD19-STII CAR T細胞の注入後+3日目(上の6パネル)および+42日目(下の6パネル)における対照および第2群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFR)Myc)の頻度を示す、フローサイトメトリー実験からのデータ。(G)健常マウスに対する処置マウスにおけるPBMC中のB細胞頻度を示すフローサイトメトリーデータの要約。
図11C図11A~11Gは、マウス抗STII CAR T細胞のCAR発現およびin vivo細胞溶解活性を示す。(A)マウスT細胞における抗STII CAR(左に示される)の表面発現を示すフローサイトメトリーデータ。(B)B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-1STII CAR T細胞(1 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図。(C)(B)に示される処置スキームに従っての第1群の抗STII CAR T細胞の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T;黒丸)およびエフェクター(抗STII CAR T;白丸)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(D)抗STII CAR T細胞の注入後+3日目および+42日目における対照または第1群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFRMyc)の頻度を示すフローサイトメトリーデータ。(E)第2群の抗STII CAR T細胞((B)を参照されたい)の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T)およびエフェクター(抗STII CAR T)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(F)抗CD19-STII CAR T細胞の注入後+3日目(上の6パネル)および+42日目(下の6パネル)における対照および第2群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFR)Myc)の頻度を示す、フローサイトメトリー実験からのデータ。(G)健常マウスに対する処置マウスにおけるPBMC中のB細胞頻度を示すフローサイトメトリーデータの要約。
図11D図11A~11Gは、マウス抗STII CAR T細胞のCAR発現およびin vivo細胞溶解活性を示す。(A)マウスT細胞における抗STII CAR(左に示される)の表面発現を示すフローサイトメトリーデータ。(B)B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-1STII CAR T細胞(1 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図。(C)(B)に示される処置スキームに従っての第1群の抗STII CAR T細胞の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T;黒丸)およびエフェクター(抗STII CAR T;白丸)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(D)抗STII CAR T細胞の注入後+3日目および+42日目における対照または第1群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFRMyc)の頻度を示すフローサイトメトリーデータ。(E)第2群の抗STII CAR T細胞((B)を参照されたい)の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T)およびエフェクター(抗STII CAR T)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(F)抗CD19-STII CAR T細胞の注入後+3日目(上の6パネル)および+42日目(下の6パネル)における対照および第2群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFR)Myc)の頻度を示す、フローサイトメトリー実験からのデータ。(G)健常マウスに対する処置マウスにおけるPBMC中のB細胞頻度を示すフローサイトメトリーデータの要約。
図11E図11A~11Gは、マウス抗STII CAR T細胞のCAR発現およびin vivo細胞溶解活性を示す。(A)マウスT細胞における抗STII CAR(左に示される)の表面発現を示すフローサイトメトリーデータ。(B)B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-1STII CAR T細胞(1 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図。(C)(B)に示される処置スキームに従っての第1群の抗STII CAR T細胞の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T;黒丸)およびエフェクター(抗STII CAR T;白丸)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(D)抗STII CAR T細胞の注入後+3日目および+42日目における対照または第1群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFRMyc)の頻度を示すフローサイトメトリーデータ。(E)第2群の抗STII CAR T細胞((B)を参照されたい)の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T)およびエフェクター(抗STII CAR T)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(F)抗CD19-STII CAR T細胞の注入後+3日目(上の6パネル)および+42日目(下の6パネル)における対照および第2群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFR)Myc)の頻度を示す、フローサイトメトリー実験からのデータ。(G)健常マウスに対する処置マウスにおけるPBMC中のB細胞頻度を示すフローサイトメトリーデータの要約。
図11F図11A~11Gは、マウス抗STII CAR T細胞のCAR発現およびin vivo細胞溶解活性を示す。(A)マウスT細胞における抗STII CAR(左に示される)の表面発現を示すフローサイトメトリーデータ。(B)B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-1STII CAR T細胞(1 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図。(C)(B)に示される処置スキームに従っての第1群の抗STII CAR T細胞の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T;黒丸)およびエフェクター(抗STII CAR T;白丸)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(D)抗STII CAR T細胞の注入後+3日目および+42日目における対照または第1群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFRMyc)の頻度を示すフローサイトメトリーデータ。(E)第2群の抗STII CAR T細胞((B)を参照されたい)の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T)およびエフェクター(抗STII CAR T)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(F)抗CD19-STII CAR T細胞の注入後+3日目(上の6パネル)および+42日目(下の6パネル)における対照および第2群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFR)Myc)の頻度を示す、フローサイトメトリー実験からのデータ。(G)健常マウスに対する処置マウスにおけるPBMC中のB細胞頻度を示すフローサイトメトリーデータの要約。
図11G図11A~11Gは、マウス抗STII CAR T細胞のCAR発現およびin vivo細胞溶解活性を示す。(A)マウスT細胞における抗STII CAR(左に示される)の表面発現を示すフローサイトメトリーデータ。(B)B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-1STII CAR T細胞(1 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図。(C)(B)に示される処置スキームに従っての第1群の抗STII CAR T細胞の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T;黒丸)およびエフェクター(抗STII CAR T;白丸)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(D)抗STII CAR T細胞の注入後+3日目および+42日目における対照または第1群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFRMyc)の頻度を示すフローサイトメトリーデータ。(E)第2群の抗STII CAR T細胞((B)を参照されたい)の輸注後の標的(抗CD19-1STII CAR T)およびエフェクター(抗STII CAR T)細胞の細胞計数値(PBMC中の%)を示すフローサイトメトリーデータ。(F)抗CD19-STII CAR T細胞の注入後+3日目(上の6パネル)および+42日目(下の6パネル)における対照および第2群のマウスのPBMC中のB細胞(CD19CD45.1)、抗CD19-1STII CAR T細胞(CD45.1EGFRSTII)および抗STII CAR T細胞(CD45.1EGFR)Myc)の頻度を示す、フローサイトメトリー実験からのデータ。(G)健常マウスに対する処置マウスにおけるPBMC中のB細胞頻度を示すフローサイトメトリーデータの要約。
【0016】
図12A図12Aは、B細胞無形成症を有するマウスにおける抗CD19-3STII CAR T細胞(3 STIIタグ)の投与および照射後の抗STII CAR T細胞治療の効果を検査する実験的処置スキームの略図を示す。
図12B図12Bは、処置に使用された抗CD19-3STII CAR T細胞(左)およびソートされた抗STII CAR T細胞(右)の計数値を示す、フローサイトメトリー実験からのデータを示す。
【0017】
図13A-13D】図13A~13Iは、抗STII CAR T細胞の輸注前に測定された、図12(A)に示されるスケジュールに従って処置が施されたマウスにおけるB細胞枯渇を示す。(A~H)フローサイトメトリー実験からのデータ:(A)生存リンパ球にゲートする、系列標識PBMCについての前方散乱(FS)log対側方散乱(SS)logプロット;(B)生存細胞にゲートする、TX Red(Y軸)についてのフィコエリトリンコンジュゲート抗CD19抗体(CD19-PE)(X軸)に対する散布図;(C)SS log対CD19PE;(D)図13(C)に示される実験からの細胞計数値を要約するヒストグラム;散布図(E)およびヒストグラム(F)で示されたCD19画分と、CD19枯渇画分(G、H)。(I)CD19PEで染色後に抗PE磁気ビーズを使用して判定された、PBMC中のB細胞枯渇。
図13E-13H】図13A~13Iは、抗STII CAR T細胞の輸注前に測定された、図12(A)に示されるスケジュールに従って処置が施されたマウスにおけるB細胞枯渇を示す。(A~H)フローサイトメトリー実験からのデータ:(A)生存リンパ球にゲートする、系列標識PBMCについての前方散乱(FS)log対側方散乱(SS)logプロット;(B)生存細胞にゲートする、TX Red(Y軸)についてのフィコエリトリンコンジュゲート抗CD19抗体(CD19-PE)(X軸)に対する散布図;(C)SS log対CD19PE;(D)図13(C)に示される実験からの細胞計数値を要約するヒストグラム;散布図(E)およびヒストグラム(F)で示されたCD19画分と、CD19枯渇画分(G、H)。(I)CD19PEで染色後に抗PE磁気ビーズを使用して判定された、PBMC中のB細胞枯渇。
図13I図13A~13Iは、抗STII CAR T細胞の輸注前に測定された、図12(A)に示されるスケジュールに従って処置が施されたマウスにおけるB細胞枯渇を示す。(A~H)フローサイトメトリー実験からのデータ:(A)生存リンパ球にゲートする、系列標識PBMCについての前方散乱(FS)log対側方散乱(SS)logプロット;(B)生存細胞にゲートする、TX Red(Y軸)についてのフィコエリトリンコンジュゲート抗CD19抗体(CD19-PE)(X軸)に対する散布図;(C)SS log対CD19PE;(D)図13(C)に示される実験からの細胞計数値を要約するヒストグラム;散布図(E)およびヒストグラム(F)で示されたCD19画分と、CD19枯渇画分(G、H)。(I)CD19PEで染色後に抗PE磁気ビーズを使用して判定された、PBMC中のB細胞枯渇。
【0018】
図14図14は、図12(A)に示される処置を施されているマウスからのPBMC中のB細胞計数値を測定するフローサイトメトリー実験からのデータを提供する。上の横列(「pos」):照射も抗CD19-3STII CAR T細胞も施されなかったマウスからの細胞。中央の横列(「試料」):照射および抗CD19-3STII CAR T細胞が施され、その後、抗STII CAR T細胞が施されたマウスからの細胞。下の横列(「neg」):照射および抗CD19-3STII CAR T細胞は施されたが、抗STII CAR T細胞は施されなかったマウスからの細胞。Y軸:ナチュラルキラー細胞表面抗原1.1(NK1.1)に対する抗体。X軸:CD19細胞(抗CD19抗体で染色)。
【0019】
図15A図15Aは、図12Aに示される処置スケジュールにわたっての抗CD19-3STII CAR T(三角形)、OT-1 CD45.1/2抗STII CAR T(正方形)およびCD90.1CAR T細胞(三角形)の細胞計数値(血液中の%)を示す、フローサイトメトリー実験からのデータを提供する。
図15B図15Bは、図12Aに示される処置スキームにわたっての内在性B細胞計数値(血液中の%)を示すフローサイトメトリー実験からのデータを示す。「pos」:照射も抗CD19-3STII CAR T細胞も施されなかったマウスからの細胞。「試料」:照射および抗CD19-3STII CAR T細胞が施され、その後、抗STII CAR T細胞が施されたマウスからの細胞。「neg」:照射および抗CD19-3STII CAR T細胞は施されたが、抗STII CAR T細胞は施されなかったマウスからの細胞。灰色陰影:B細胞無形成の範囲。
【0020】
図16A図16A~16Dは、図15Aに示される処置スケジュールの完了時のB細胞(抗CD19抗体で染色された)、抗CD19-3STII CAR T細胞、および抗STII CAR T細胞(抗EGFRt抗体で染色された)の細胞計数値を測定する、フローサイトメトリー実験からのデータを示す。試料は、(A)血液、(B)骨髄、(C)リンパ節、および(D)脾臓から採取された。
図16B図16A~16Dは、図15Aに示される処置スケジュールの完了時のB細胞(抗CD19抗体で染色された)、抗CD19-3STII CAR T細胞、および抗STII CAR T細胞(抗EGFRt抗体で染色された)の細胞計数値を測定する、フローサイトメトリー実験からのデータを示す。試料は、(A)血液、(B)骨髄、(C)リンパ節、および(D)脾臓から採取された。
図16C図16A~16Dは、図15Aに示される処置スケジュールの完了時のB細胞(抗CD19抗体で染色された)、抗CD19-3STII CAR T細胞、および抗STII CAR T細胞(抗EGFRt抗体で染色された)の細胞計数値を測定する、フローサイトメトリー実験からのデータを示す。試料は、(A)血液、(B)骨髄、(C)リンパ節、および(D)脾臓から採取された。
図16D図16A~16Dは、図15Aに示される処置スケジュールの完了時のB細胞(抗CD19抗体で染色された)、抗CD19-3STII CAR T細胞、および抗STII CAR T細胞(抗EGFRt抗体で染色された)の細胞計数値を測定する、フローサイトメトリー実験からのデータを示す。試料は、(A)血液、(B)骨髄、(C)リンパ節、および(D)脾臓から採取された。
【0021】
図17A-17C】図17A~17Cは、本開示の例示的な発現構築物の概略図を示す。(A)3STIIヒンジ領域を有する抗CD19 CARをコードし、短縮型EGFR形質導入マーカーをさらにコードする、発現構築物であって、EGFRtをコードする部分がCARをコードする部分から自己切断P2Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによって分離されている、発現構築物(「m19-3STII-28z_E」)。(B)CD8ヒンジとCD8膜貫通部分とCD28-4-1BB-zシグナル伝達ドメインとを有する抗CD19 CARをコードし、3STIIペプチドに融合されたEGFRt形質導入マーカーをさらにコードする、発現構築物であって、EGFRt-3STIIをコードする部分がCARをコードする部分から自己切断P2Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによって分離されている、発現構築物。(「m19-28z-E-3STII」)。(C)抗STII CARと短縮型EGFR形質導入マーカーとをコードし、CARをコードする部分とマーカーをコードする部分が自己切断P2Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによって分離されている、発現構築物。
図17D-17F】図17D~17Fは、形質導入細胞による示されている構築物の発現を示すフローサイトメトリー実験からの代表データを(左に)提供するとともに、右に前記細胞の概略図を提供する。
【0022】
図18A図18Aは、亜致死線量(6Gy)照射C57/BL6マウスに、(1)m19-3STII-28z_Eまたは(2)m19-28z_E-3STIIのどちらかを発現する2×10のマウスCD90.1+/-T細胞が40日目に投与された、実験的処置スキームの略図を示す。
図18B図18Bは、(1)m19-3STII-28z_Eまたは(2)m19-28z_E-3STIIの細胞表面発現を示す、フローサイトメトリー実験からのデータを提供する。細胞は、抗ST-アロフィコシアニン(Y軸)および抗EGFRt(X軸)を使用して染色された。
【0023】
図19図19は、m19-3STII-28z_E CAR T細胞(左パネル)(n=2)、STIIペプチドを有さない抗CD19 CARを発現するT細胞(中央パネル)またはm19-28z_E-3STII(右パネル)(n=2)が施されたCD90.1+/-C57/BL6マウスにおけるB細胞枯渇を示す、フローサイトメトリー実験からのデータを提供する。B細胞は、抗CD19抗体を使用して染色された。
【0024】
図20A図20Aは、亜致死線量(6Gy)照射C57/BL6マウスに、(1)m19-3STII-28z_Eまたは(2)m19-28z_E-3STIIのどちらかを発現する2×10のマウスCD90.1+/-T細胞が0日目に投与され、その後、+40日目に2.5×10のCD45.1+/-抗STII CAR T細胞が輸注された、実験的処置スキームの略図を示す。
図20B図20Bは、(1)m19-3STII-28z-Eおよび(2)m19-28z-E-3STIIの細胞表面発現を示す、フローサイトメトリー実験からのデータを提供する。(3)形質導入T細胞における抗STII CAR構築物の発現を示すヒストグラム。
【0025】
図21A-i】図21A(i)~(ii)および21B(i)~(ii)は、図20(A)に示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の6日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における示されている構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
図21A-ii】図21A(i)~(ii)および21B(i)~(ii)は、図20(A)に示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の6日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における示されている構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
図21B-i】図21A(i)~(ii)および21B(i)~(ii)は、図20(A)に示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の6日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における示されている構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
図21B-ii】図21A(i)~(ii)および21B(i)~(ii)は、図20(A)に示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の6日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における示されている構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
【0026】
図22A-i】図22A(i)~(ii)および22B(i)~(ii)は、図20Aに示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の30日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
図22A-ii】図22A(i)~(ii)および22B(i)~(ii)は、図20Aに示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の30日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
図22B-i】図22A(i)~(ii)および22B(i)~(ii)は、図20Aに示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の30日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
図22B-ii】図22A(i)~(ii)および22B(i)~(ii)は、図20Aに示される処置スキームに従っての抗STII CAR T細胞の注射の30日後に行われたフローサイトメトリー実験からのデータを示す。(A)m19-3STII-28z_Eを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。右側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。(B)m19-28z_E3STIIを発現するT細胞が注射されたマウスからの散布図。N=2(i、ii)。B細胞にゲーティング。左側の(a)および(b)は、形質導入されたT細胞における構築物の発現を示す。
【0027】
図23A図23Aおよび23Bは、図20(A)に示される処置スキームの完了時のB細胞(大パネル;抗CD19抗体で染色)、抗CD19-3STII CAR T細胞、および抗STII CAR T細胞(小パネル;抗EGFRt抗体で染色)の計数値を測定する、フローサイトメトリー実験からのデータを示す。試料は、(A)(上)血液、(下)骨髄、(B)(上)リンパ節および(下)脾臓から採取された。形質導入および移入されたT細胞によるCAR構築物の発現は、図22A(i)(a~b)、(ii)(a~b)、および22B(i)(a~b)、(ii)(a~b)に示されるように分析された。
図23B図23Aおよび23Bは、図20(A)に示される処置スキームの完了時のB細胞(大パネル;抗CD19抗体で染色)、抗CD19-3STII CAR T細胞、および抗STII CAR T細胞(小パネル;抗EGFRt抗体で染色)の計数値を測定する、フローサイトメトリー実験からのデータを示す。試料は、(A)(上)血液、(下)骨髄、(B)(上)リンパ節および(下)脾臓から採取された。形質導入および移入されたT細胞によるCAR構築物の発現は、図22A(i)(a~b)、(ii)(a~b)、および22B(i)(a~b)、(ii)(a~b)に示されるように分析された。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本開示は、Strepタグを含有する分子またはStrepタグを含有する細胞を選択的に検出するためのタグ特異的融合タンパク質を提供する。タグ特異的融合タンパク質は、Strepタグを含有するCARまたはマーカーなどの、タグ付き細胞表面分子を発現する免疫治療用細胞の活性のモニタリングおよび/またはモジュレーションに使用することができる。タグ付き分子またはタグ付き細胞を検出するための本開示の例示的な融合タンパク質(またはそのような融合タンパク質をその細胞表面に発現する細胞)は、(a)strepタグペプチド(本明細書で定義されるとおり;例えば、アミノ酸配列WSHPQFEK(配列番号19)を含むかまたはアミノ酸配列WSHPQFEK(配列番号19)からなるペプチド)と特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外成分と、(b)エフェクタードメインまたはその機能的部分を含む細胞内成分と、(c)前記細胞外成分と前記細胞内成分を接続する膜貫通ドメインとを含むことができる。
【0029】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)標的抗原に特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外成分、(b)エフェクタードメインまたはその機能的部分を含む細胞内成分、および(c)前記細胞外成分と前記細胞内成分を接続する膜貫通成分を含む、細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドと;タグ付きマーカーをコードし、タグペプチドを含有するマーカーをコードするポリヌクレオチドを含む、第2のポリヌクレオチドであって、コードされたタグペプチドが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を必要に応じて含むかまたは配列番号19に示されるアミノ酸配列から必要に応じてなるstrepタグペプチドを含む、第2のポリヌクレオチドと;前記細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドと前記タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチドの間に配置された、自己切断ポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチドとを含有する、標的細胞を検出またはアブレーションすることができる、融合タンパク質(またはそのような融合タンパク質をその細胞表面に発現する細胞)を提供する。一部の実施形態では、今般開示される融合タンパク質(またはこの融合タンパク質をその細胞表面に発現する細胞)は、strepタグペプチド(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる)を含む融合タンパク質を発現する標的細胞を検出またはアブレーションすることができる。ある特定の実施形態では、strepタグペプチドを含む融合タンパク質は、本明細書中でさらに論じられるように、マーカー、細胞表面受容体、または両方を含む。
【0030】
本開示の組成物は、例えば、細胞免疫治療、グラフトおよび移植に使用されるタグ付き細胞などのタグ付き細胞を含む細胞治療をモジュレートする方法において、有用である。例えば、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)などの異種分子を発現する免疫治療用細胞は、投与されたとき、ほとんど効果がないこともあり、または1つもしくは複数の有害事象をもたらすこともある。本開示は、免疫治療用細胞をモジュレートする(例えば、中和する、殺滅する、活性化する、刺激する、または別様にモジュレートする)ための試薬を提供する。本明細書に記載される組成物および方法は、ある特定の実施形態では、タグ付きCAR T細胞、またはタグ付きマーカーを含むCAR T細胞などの、タグ付き免疫治療用細胞を選択的にモジュレートする(例えば、所望に応じて、殺滅するまたは活性化する)のに有用である。
【0031】
本開示をより詳細に示す前に、本明細書で使用されるある特定の用語の定義を提供することは、本開示の理解の助けになり得る。さらなる定義は、本開示を通して示される。
【0032】
本説明では、任意の濃度範囲、百分率範囲、比の範囲、または整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙されている範囲内の任意の整数の値、および適宜、それらの分数(例えば、整数の十分の一および百分の一)を含むと理解するべきである。また、任意の物理的特徴、例えば、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さに関して本明細書で列挙される任意の数値範囲は、別段の指示がない限り、列挙されている範囲内の任意の整数を含むと理解すべきである。本明細書で使用される用語「約」は、別段の指示がない限り、示されている範囲、値または構造の±20%を意味する。用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書で使用される場合、列挙されている構成要素のうちの「1または複数」を指すと理解すべきである。選択肢(例えば、「または」)の使用は、それらの選択肢のうち1つ、両方、または任意の組合せを意味すると理解すべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む(include)」、「有する」および「含む(comprise)」は、同義で使用され、これらの用語およびそれらの異表記は、非限定的と解釈されることを意図したものである。
【0033】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記載される要素、成分、事象または状況が、起こることもあり、または起こらないこともあること、およびその記載が、要素、成分、事象または状況が起こる事例とそれらが起こらない事例とを含むことを意味する。
【0034】
さらに、本明細書に記載される構造および置換基の様々な組合せから得られる個々の構築物または構築物の群は、あたかも各構築物または構築物の群が個々に示されたのと同程度に、本願により開示されると理解すべきである。したがって、特定の構造または特定のサブユニットの選択は、本開示の範囲内である。
【0035】
用語「から本質的になる」は、「含む」と同等ではなく、請求項の明記された材料もしくはステップ、または特許請求された主題の基本的特徴に実質的に影響を与えない材料もしくはステップを指す。例えば、タンパク質のドメイン、領域もしくはモジュール(例えば、結合ドメイン、ヒンジ領域、またはリンカー)またはタンパク質(これは、1もしくは複数のドメイン、領域もしくはモジュールを有し得る)は、ドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わせて、ドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質の長さの多くても20%(例えば、多くても15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%)に寄与し、ドメイン(複数可)、領域(複数可)、モジュール(複数可)またはタンパク質の活性(例えば、結合性タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響を与えない(すなわち、活性の低減が、50%を超えない、例えば、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下である)、伸長、欠失、変異またはそれらの組合せ(例えば、アミノ末端もしくはカルボキシ末端にある、またはドメイン間にあるアミノ酸)を含む場合、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸はもちろん、天然に存在するアミノ酸と同じように機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物も指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされたもの、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメートおよびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合しているα-炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持するが、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じように機能する、化合物を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「変異」は、参照または野生型核酸分子またはポリペプチド分子とそれぞれ比較したときの核酸分子またはポリペプチド分子の配列の変化を指す。変異は、ヌクレオチド(複数可)またはアミノ酸(複数可)の置換、挿入または欠失を含む、配列のいくつかの異なるタイプの変化をもたらすことができる。
【0038】
「保存的置換」は、特定のタンパク質の結合特性に有意な影響を与えない、または特定のタンパク質の結合特性を有意に変化させない、アミノ酸置換を指す。一般に、保存的置換は、置換されるアミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられることである。保存的置換は、次の群のうちの1つの中で見いだされる置換を含む:第1群:アラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT);第2群:アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはZ);第3群:アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ);第4群:アルギニン(ArgまたはR)、リジン(LysまたはK)、ヒスチジン(HisまたはH);第5群:イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、バリン(ValまたはV);および第6群:フェニルアラニン(PheまたはF)、チロシン(TyrまたはY)、トリプトファン(TrpまたはW)。加えてまたは代替的に、アミノ酸は、類似した機能、化学構造または組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、もしくは硫黄含有)により、保存的置換群に分類することができる。例えば、脂肪族分類は、置換を目的として、Gly、Ala、Val、Leu、およびIleを含み得る。他の保存的置換群は、硫黄含有:Metおよびシステイン(CysまたはC);酸性:Asp、Glu、Asn、およびGln;小さい脂肪族、非極性または微極性残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;極性、負荷電残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;極性、正荷電残基:His、Arg、およびLys;大きい脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに大きい芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrpを含む。追加情報は、Creighton (1984) Proteins, W.H.Freeman and Companyにおいて見つけることができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマーを指す。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸ポリマーにはもちろん、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的模倣物である、アミノ酸ポリマー、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーにも当てはまる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」は、単一鎖内に少なくとも2つの明確に異なるドメインを有するタンパク質であって、自然には前記ドメインが一緒にタンパク質内に見られないタンパク質を指す。融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、PCRを使用して構築されること、組換え操作されることなどがあり、またはそのような融合タンパク質を合成することができる。融合タンパク質は、タグ、リンカーまたは形質導入マーカーなどの、他の成分をさらに含有することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞(例えば、T細胞)により発現または産生される融合タンパク質は、細胞表面に位置し、前記融合タンパク質は、細胞膜に(例えば、膜貫通ドメインによって)繋留されており、細胞外部分(例えば、結合ドメインを含有する)および細胞内部分(例えば、シグナル伝達ドメイン、エフェクタードメイン、共刺激ドメインまたはそれらの組合せを含有する)を含む。
【0041】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、天然サブユニット(例えば、プリンもしくはピリミジン塩基)または非天然サブユニット(例えば、モルホリン環)で構成され得る、共有結合的に連結されているヌクレオチドを含むポリマー化合物を指す。プリン塩基は、アデニン、グアニン、ヒポキサンチンおよびキサンチンを含み、ピリミジン塩基は、ウラシル、チミンおよびシトシンを含む。核酸分子は、ポリリボ核酸(RNA)、ポリデオキシリボ核酸(DNA)(これは、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含む)を含み、これらはいずれも、一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよい。一本鎖の場合、核酸分子は、コード鎖または非コード鎖(アンチセンス鎖)であり得る。アミノ酸配列をコードする核酸分子は、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列の一部のバージョンは、イントロンが同時転写機構または転写後機構によって除去されることになる場合には、イントロンも含むことができる。言い換えると、異なるヌクレオチド配列が、遺伝コードの重複性もしくは縮重の結果として、またはスプライシングにより、同じアミノ酸配列をコードすることもある。
【0042】
本開示の核酸分子のバリアントも企図される。バリアント核酸分子は、本明細書に記載の被定義もしくは参照ポリヌクレオチドの核酸分子と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%同一、好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99.9%同一であるか、または約65~68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、もしくは約42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドというストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でポリヌクレオチドとハイブリダイズするものである。核酸分子バリアントは、標的分子に特異的に結合することなどの本明細書に記載される機能性を有する融合タンパク質またはその結合ドメインをコードする能力を保持する。
【0043】
「配列同一性パーセント」は、配列を比較することにより決定されるような、2つまたはそれより多くの配列の間の関係を指す。配列同一性を決定する好ましい方法は、比較されることになる配列間のベストマッチをもたらすように設計される。例えば、配列は、最適な比較のためにアラインメントされる(例えば、最適なアラインメントのためにギャップを第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入することができる)。さらに、非相同配列は、比較のために無視されることもある。本明細書で言及される配列同一性パーセントは、別段の指示がない限り、参照配列の長さにわたって計算される。配列同一性および類似性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムの中で見つけることができる。配列アラインメントおよび同一性パーセント計算は、BLASTプログラム(例えば、BLAST 2.0、BLASTP、BLASTN、またはBLASTX)を使用して行うことができる。BLASTプログラムで使用される数学的アルゴリズムは、Altschul et al., Nucleic Acids Res.25:3389-3402, 1997において見つけることができる。本開示に関して、配列分析ソフトウェアが分析に使用される場合、分析結果が、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことは、理解されるであろう。「デフォルト値」は、初回開始時にソフトウェアに元々ロードされている値またはパラメーターの任意のセットを意味する。
【0044】
用語「単離された」は、材料がその元の環境(例えば、その材料が天然に存在する場合には天然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生存動物に天然に存在する核酸またはポリペプチドは、単離されていないが、天然の系内に共存する材料の一部または全てから分離された同じ核酸またはポリペプチドは、単離されている。そのような核酸は、ベクターの一部であることもあり、および/またはそのような核酸もしくはポリペプチドは、組成物(例えば、細胞溶解物)の一部であることもあるが、それでもやはり、そのようなベクターもしくは組成物が核酸もしくはポリペプチドの天然環境の一部でないという点で単離されていることであり得る。用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味し、このセグメントには、コード領域の前および後の領域(「リーダーおよびトレーラー」)ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる。
【0045】
「機能的バリアント」は、本開示の親または参照化合物と構造的に同様であるまたは実質的に構造的に同様であるが、わずかに組成が異なる(例えば、1つの塩基、原子または官能基が異なる、付加されている、または除去されている)、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドであって、したがって、ポリペプチドまたはコードされたポリペプチドが、コードされた親ポリペプチドの少なくとも1つの機能を、その親ポリペプチドの活性の少なくとも50%の効率、好ましくは、少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%の活性レベルで行うことができる、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。言い換えると、本開示のポリペプチドまたはコードされたポリペプチドの機能的バリアントは、結合親和性を測定するためのアッセイ(例えば、会合(K)または解離(K)定数を測定する、Biacore(登録商標)またはテトラマー染色)などの、選択されたアッセイにおいて、親または参照ポリペプチドと比較して性能の50%を超える低下を示さない場合、「同様の結合」、「同様の親和性」または「同様の活性」を有する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「機能的部分」または「機能的断片」は、親または参照化合物のドメイン、部分または断片のみを含む、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指し、このポリペプチドまたはコードされたポリペプチドは、親もしくは参照化合物のドメイン、部分もしくは断片に関連する少なくとも50%の活性、好ましくは、親ポリペプチドの少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、もしくは100%の活性レベルを保持するか、または生物学的利益(例えば、エフェクター機能)を提供する。本開示のポリペプチドまたはコードされたポリペプチドの「機能的部分」または「機能的断片」は、その機能的部分または断片が、結合親和性を測定するためのアッセイまたはエフェクター機能(例えば、サイトカイン放出)を測定するためのアッセイなどの、選択されたアッセイにおいて、親または参照ペプチドと比較して50%を超える性能の低下を示さない場合(好ましくは、親和性に関して親または参照物と比較して20%もしくは10%以下または対数差分以下)、「同様の結合」または「同様の活性」を有する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「異種」または「非内在性」または「外因性」は、宿主細胞もしくは対象にとってネイティブでない任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子もしくは活性、または変更された宿主細胞もしくは対象にとってネイティブの任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子もしくは活性を指す。異種、非内在性、または外因性は、構造、活性、または両方が、ネイティブ遺伝子、タンパク質、化合物または核酸分子と変更された遺伝子、タンパク質、化合物または核酸分子との間で異なるように変異または別様に変更された、遺伝子、タンパク質、化合物または核酸分子を含む。ある特定の実施形態では、異種、非内在性または外因性遺伝子、タンパク質、または核酸分子(例えば、受容体、リガンドなど)は、宿主細胞にとっても対象にとっても内在性でないことがあり、その代わり、そのような遺伝子、タンパク質または核酸分子をコードする核酸をコンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションなどにより宿主細胞に付加することができ、付加された核酸分子は、宿主細胞ゲノムに組み込まれることがあり、または染色体外遺伝物質として(例えば、プラスミドもしくは他の自己複製ベクターとして)存在することができる。用語「相同(の)」または「相同体」は、宿主細胞、種もしくは株に見られる、または宿主細胞、種もしくは株から得られる、遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子または活性を指す。例えば、ポリペプチドをコードする異種または外因性ポリヌクレオチドまたは遺伝子は、ネイティブポリヌクレオチドまたは遺伝子と相同であることがあり、相同ポリペプチドまたは相同の活性をコードすることがあるが、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、変更された構造、配列、発現レベル、またはそれらの任意の組合せを有することもある。非内在性ポリヌクレオチドまたは遺伝子はもちろん、コードされたポリペプチドまたは活性も、同じ種からのものであることがあり、異なる種からのものであることがあり、またはそれらの組合せからのものであることがある。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「内在性」または「ネイティブ」は、宿主細胞中または対象体内に通常存在するポリヌクレオチド、遺伝子、タンパク質、化合物、分子、または活性を指す。
【0049】
用語「発現」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドが、遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいて産生されるプロセスを指す。このプロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはそれらの任意の組合せを含み得る。発現された核酸分子は、通常は、発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されている。
【0050】
用語「作動可能に連結された」は、1つの核酸分子の機能が他の核酸分子による影響を受けるような、単一核酸断片上の2つまたはそれより多くの核酸分子の会合を指す。例えば、プロモーターとコード配列は、プロモーターが、そのコード配列の発現に影響を与えることができる(すなわち、コード配列が、プロモーターの転写制御下にある)場合、作動可能に連結されている。「連結されていない」は、会合している遺伝子エレメントが、互いに密接に会合しておらず、1つの遺伝子エレメントの機能が他の遺伝子エレメントに影響を与えないことを意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、好適な宿主において核酸分子の発現を生じさせることができる好適な制御配列に作動可能に連結されている核酸分子を含有するDNA構築物を指す。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、そのような転写を制御するための必要に応じたオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列が含まれる。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ウイルス、または単に潜在的ゲノム挿入物であり得る。好適な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムから独立して複製および機能することができ、または一部の場合には、自体を宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。本明細書では、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」および「ベクター」は、同義で使用されることが多い。
【0052】
核酸分子を細胞に挿入する文脈での用語「導入される/された」は、「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」を意味し、核酸分子を細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドまたはミトコンドリアDNA)に組み込むことができる、自律レプリコンに変換することができる、または(例えば、トランスフェクトされたmRNAを)一過性に発現することができる、真核または原核細胞への核酸分子の組込みへの言及を含む。本明細書で使用される場合、用語「操作された」、「組換え(の)」または「非天然(の)」は、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により改変された生物、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により改変された微生物、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により改変された細胞、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により修飾された核酸分子、または少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により修飾されたベクターであって、そのような変更または改変/修飾が、遺伝子操作(すなわち、人間の介入)により導入される、生物、微生物、細胞、核酸分子またはベクターを指す。遺伝子変更は、例えば、タンパク質、融合タンパク質もしくは酵素をコードする発現可能な核酸分子を導入する修飾、または他の核酸分子付加、欠失、置換、または細胞の遺伝物質の他の機能破壊を含む。追加の修飾は、例えば、修飾がポリヌクレオチド、遺伝子またはオペロンの発現を変更する、非コード調節領域を含む。
【0053】
本明細書に記載されるように、1つより多くの異種核酸分子を、別々の核酸分子として、複数の個々に制御された遺伝子として、ポリシストロニック核酸分子として、融合タンパク質をコードする単一の核酸分子として、またはそれらの任意の組合せとして、宿主細胞に導入することができる。2つまたはそれより多くの異種核酸分子が宿主細胞に導入される場合、これら2つまたはそれより多くの異種核酸分子が、単一の核酸分子として(例えば、単一のベクターで)導入されることもあり、別々のベクターで宿主染色体の単一の部位もしくは複数の部位に組み込まれることもあり、またはそれらの任意の組合せであることもあることは理解される。言及された異種核酸分子またはタンパク質活性の数は、コードする核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指し、宿主細胞に導入される別々の核酸分子の数を指さない。
【0054】
用語「構築物」は、組換え核酸分子を含有する任意のポリヌクレオチドを指す。構築物は、ベクター(例えば、細菌ベクター、ウイルスベクター)中に存在することもあり、またはゲノムに組み込まれていることもある。「ベクター」は、別の核酸分子を輸送することができる核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクターであることもあり、または染色体の、非染色体の、半合成のもしくは合成の核酸分子を含み得る線状もしくは環状DNAもしくはRNA分子であることもある。本開示のベクターは、トランスポゾン系(例えば、スリーピング・ビューティー、例えば、Geurts et al., Mol.Ther.8:108, 2003: Mates et al., Nat. Genet. 41:753, 2009を参照されたい)も含み得る。例示的なベクターは、自律複製することができるもの(エピソームベクター)、ポリヌクレオチドを細胞ゲノムに送達することができるもの(例えば、ウイルスベクター)、または自体が連結されている核酸分子を発現させることができるもの(発現ベクター)である。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「宿主」は、目的のポリペプチド(例えば、本開示の融合タンパク質)を産生するために異種核酸分子での遺伝子修飾の標的とされる細胞(例えば、T細胞)または微生物を指す。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、例えば異種タンパク質の生合成に関係するまたは関係しない所望の特性を付与する他の遺伝子修飾(例えば、検出可能なマーカーの組み入れ;内在性TCRの欠失、変更もしくは短縮化;または共刺激因子発現の増加)を、必要に応じて、既に有することもあり、または含むように修飾されることもある。
【0056】
本明細書で使用される場合、混合物中の細胞型の量に関して「濃縮された/される」または「枯渇された/される」は、1つまたは複数の濃縮または枯渇プロセスまたはステップの結果として生じる、細胞の混合物中の「濃縮」型の数の増加、「枯渇」細胞の数の減少、または両方を指す。したがって、濃縮プロセスに供された細胞の元となる集団の供給源に依存して、混合物または組成物は、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のもしくはそれを超える(数または計数値の点で)、「濃縮された」細胞を含有し得る。枯渇プロセスに供された細胞は、結果として、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%パーセントもしくはそれ未満(数または計数値の点で)の「枯渇された」細胞を含有する混合物または組成物になる。ある特定の実施形態では、混合物中のある特定の細胞型の量が濃縮されることになり、異なる細胞型の量が枯渇されることになる;例えば、CD4細胞の濃縮と同時にCD8細胞を枯渇させること、またはCD62L細胞の濃縮と同時にCD62L細胞を枯渇させること、またはそれらの組合せ。
【0057】
「T細胞受容体」(TCR)とは、MHC受容体に結合した抗原ペプチドと特異的に結合することができる免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー(可変結合ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域および短い細胞質側テールを有する;例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3rd Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照されたい)を指す。TCRは、細胞の表面にまたは可溶性形態で見られることがあり、一般に、α鎖およびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても公知)、またはγ鎖およびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても公知)を有するヘテロダイマーから構成される。免疫グロブリンと同様に、TCR鎖(例えば、α鎖、β鎖)の細胞外部分は、次の2つの免疫グロブリンドメインを含む:N末端における可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメインまたはVα、β鎖可変ドメインまたはVβ;通常は、Kabat番号付け(Kabat et al., "Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed.)に基づいてアミノ酸1~116)、および細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインまたはCα、通常はKabatに基づいてアミノ酸117~259、β鎖定常ドメインまたはCβ、通常はKabatに基づいてアミノ酸117~295)。また、免疫グロブリンと同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって隔てられた相補性決定領域(CDR)を含む(例えば、Jores et al., Proc. Nat'l Acad. Sci.U.S.A.87:9138, 1990; Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照されたく、Lefranc et al., Dev.Comp.Immunol.27:55, 2003も参照されたい)。ある特定の実施形態では、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見られ、CD3複合体と会合している。本開示で使用される場合のTCRの供給源は、様々な動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物からのものであり得る。
【0058】
「CD3」は、6つの鎖の多タンパク質複合体として当技術分野において公知である(Abbas and Lichtman, 2003; Janeway et al., p. 172 and 178, 1999を参照されたい)。哺乳動物では、この複合体は、1つのCD3γ鎖と、1つのCD3δ鎖と、2つのCD3ε鎖と、CD3ζ鎖の1つのホモダイマーとを含む。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含有する、免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連する細胞表面タンパク質である。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖の膜貫通領域は負に荷電しており、これは、これらの鎖の正荷電T細胞受容体鎖との会合を可能にする特性である。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖の細胞内テールは、各々、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知の単一の保存モチーフを含むが、各CD3ζ鎖は、3つのITAMを有する。理論により拘束されることを望まないが、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能にとって重要であると考えられる。本開示で使用される場合のCD3は、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物を含む様々な動物種からのものであり得る。
【0059】
「主要組織適合遺伝子複合体分子」(MHC分子)は、ペプチド抗原を細胞表面に送達する糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜通過α鎖(3つのαドメインを有する)と非共有結合的に会合しているβ2ミクログロブリンとからなるヘテロダイマーである。MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、αおよびβ、で構成されており、これらの両方が膜にまたがっている。各鎖は、2つのドメインを有する。MHCクラスI分子は、サイトゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこでペプチド:MHC複合体は、CD8T細胞により認識される。MHCクラスII分子は、小胞系に由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこで、それらは、CD4T細胞によって認識される。MHC分子は、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヤギ、ウマまたは他の哺乳動物を含む、様々な動物種からのものであり得る。
【0060】
「CD4」は、TCRの抗原提示細胞との通信を補助する免疫グロブリン共受容体糖タンパク質を指す(Campbell & Reece, Biology 909 (Benjamin Cummings, Sixth Ed., 2002);UniProtKB P01730を参照されたい)。CD4は、免疫細胞、例えば、Tヘルパー細胞、単球、マクロファージおよび樹状細胞の表面に見られ、前記細胞表面で発現される4つの免疫グロブリンドメイン(D1~D4)を含む。抗原提示中に、CD4は、TCR複合体とともに動員されて、MHCII分子の異なる領域と結合する(CD4はMHCII β2に結合し、その一方でTCR複合体はMHCII α1/β1に結合する)。理論により拘束されることを望まないが、TCR複合体への近接は、CD4会合キナーゼ分子によるCD3の細胞質ドメインに存在する免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化を可能にすると考えられる。この活性は、活性化されたTCRにより生成されるシグナルを増幅して様々なタイプのTヘルパー細胞を産生すると考えられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「CD8共受容体」または「CD8」は、アルファ・アルファホモダイマーまたはアルファ・ベータヘテロダイマーのどちらかとしての、細胞表面糖タンパク質CD8を意味する。CD8共受容体は、細胞傷害性T細胞(CD8)の機能を補助し、その細胞質チロシンリン酸化経路経由でのシグナル伝達によって機能する(Gao and Jakobsen, Immunol.Today 21:630-636, 2000; Cole and Gao, Cell. Mol.Immunol.1:81-88, 2004)。ヒトの場合、五(5)つの異なるCD8ベータ鎖(UniProtKB識別子P10966を参照されたい)および単一のCD8アルファ鎖(UniProtKB識別子P01732を参照されたい)がある。
【0062】
「キメラ抗原受容体」(CAR)は、天然に存在しないまたは宿主細胞に天然に存在しない方法で互いに連結された2つまたはそれより多くの天然に存在するアミノ酸配列を含有するように操作された、本開示の融合タンパク質であって、細胞の表面に存在するときに受容体として機能することができる融合タンパク質を指す。本開示のCARは、膜貫通ドメインおよび1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている、抗原結合ドメイン(すなわち、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン様分子から得られるもしくは誘導される抗原結合ドメイン、例えば、がん抗原に特異的な抗体もしくはTCRから誘導されるscFvもしくはscTCR、またはNK細胞からのキラー免疫受容体から誘導されるもしくは得られる抗原結合ドメイン)を含む(必要に応じて共刺激ドメインを含有する)細胞外部分を含む(例えば、Sadelain et al., Cancer Discov., 3(4):388 (2013)を参照されたく、Harris and Kranz, Trends Pharmacol.Sci., 37(3):220 (2016); Stone et al., Cancer Immunol.Immunother., 63(11):1163(2014)も参照されたい)。ある特定の実施形態では、結合タンパク質は、抗原特異的TCR結合ドメインを含むCARを含む(例えば、Walseng et al., Scientific Reports 7:10713, 2017を参照されたい;この参考文献のTCR CAR構築物および方法は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0063】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗原への結合に関与する、TCRα鎖もしくはβ鎖(もしくはγδTCRについてはγ鎖およびδ鎖)の、または抗体重鎖もしくは軽鎖の、ドメインを指す。ネイティブTCRのα鎖およびβ鎖の可変ドメイン(それぞれ、VαおよびVβ)は、類似の構造を一般に有し、一般に、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む。抗体重(V)および軽(V)鎖の可変ドメイン各々は、4つの一般に保存されるフレームワーク領域(FR)および3つのCDRも、一般に含む。
【0064】
用語「相補性決定領域」および「CDR」は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、抗原特異性および/または結合親和性を付与するTCRまたは抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことは当技術分野において公知である。一般に、各可変領域に3つのCDR(すなわち、TCRα鎖およびβ鎖可変領域の各々に3つのCDR;抗体重鎖および軽鎖可変領域の各々に3つのCDR)がある。TCRの場合、CDR3は、プロセシングされた抗原の認識を担う主要CDRであると考えられる。CDR1およびCDR2は、主としてMHCと相互作用する。可変ドメイン配列を番号付けスキーム(例えば、Kabat, EU, International Immunogenetics Information System (IMGT) and Aho)に合わせてアラインメントすることができ、これにより、Antigen receptor Numbering And Receptor Classification(ANARCI)ソフトウェアツール(2016, Bioinformatics 15:298-300)を使用する、等価残基位置へのアノテーションの付与および異なる分子の比較が可能になり得る。
【0065】
本明細書で使用される場合の「抗原」または「Ag」は、免疫応答を誘発する免疫原性分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、特定の免疫適格細胞(例えば、T細胞)の活性化、または両方に関与し得る。抗原(免疫原性分子)は、例えば、ペプチド、糖ペプチド、ポリペプチド、糖ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質などであり得る。抗原を合成、組換えにより産生、または生体試料から得ることができることは、容易に分かる。1つまたは複数の抗原を含有することができる例示的な生体試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞、生体液、またはそれらの組合せが挙げられる。抗原は、抗原を発現するように改変されたまたは遺伝子操作された細胞によって産生され得る。
【0066】
用語「エピトープ」または「抗原エピトープ」は、免疫グロブリン、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体または他の結合分子、ドメインもしくはタンパク質などの、同族結合分子により認識され、特異的に結合される、任意の分子、構造、アミノ酸配列またはタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面集団を含有し、特異的三次元構造特性および特異的電荷特性を有することができる。
【0067】
「処置する」または「処置」または「改善する」は、対象(例えば、ヒト、または非ヒト動物、例えば、霊長類、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、マウスもしくはラット)の疾患、障害または状態の医学的管理を指す。一般に、本開示の融合タンパク質を発現する宿主細胞と、必要に応じてアジュバントとを含む、適切な用量および処置レジメンは、治療的または予防的恩恵を生じさせるのに十分な量で投与される。治療的または予防的/防止的恩恵は、臨床成績の向上;疾患(例えば、B細胞無形成症)に関連する症状の緩和もしくは軽減;症状の発生率低下;生活の質向上;より長い無病状態;疾患の程度の低下;病状の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;生存期間延長;またはそれらの任意の組合せを含む。
【0068】
本開示の融合タンパク質または融合タンパク質を発現する宿主細胞の「治療有効量」または「有効量」は、統計的に有意な形での、臨床成績の向上;疾患に関連する症状の緩和もしくは軽減;症状の発生率低下;生活の質向上;より長い無病状態;疾患の程度の低下;病状の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;または生存期間延長を含む、治療効果をもたらすのに十分な、融合タンパク質または宿主細胞の量を指す。単独で投与される個々の活性成分または単一活性成分を発現する細胞に言及する場合、治療有効量は、単独でのその成分のまたはその成分を発現する細胞の効果を指す。組合せに言及する場合、治療有効量は、活性成分の合計量、または活性成分を発現する細胞と合わせた補助活性成分の合計量であって、順次投与されるのか並行して投与されるのかを問わず、治療効果を生じさせる結果となる合計量を指す。組合せはまた、strepタグペプチド(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、もしくは配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる)に特異的に結合する2つの異なる融合タンパク質(例えば、CAR)などの、1つより多くの活性成分を発現する細胞であることもあり、または本開示の1つの融合タンパク質であることもある。
【0069】
用語「薬学的に許容される賦形剤または担体」または「生理的に許容される賦形剤または担体」は、ヒトまたは他の非ヒト哺乳動物対象への投与に好適であり、一般に、安全であるまたは重篤な有害事象を引き起こさないと認識されている、本明細書中でより詳細に説明される生体適合性ビヒクル、例えば、生理食塩水を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「統計的に有意な」は、スチューデントt検定を使用して計算されたときの0.050またはそれ未満のp値を指し、測定される特定の事象または結果が偶然に生じた可能性が低いことを示す。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「養子免疫療法」または「養子免疫治療」は、天然に存在する、または遺伝子操作された、疾患抗原特異的免疫細胞(例えば、T細胞)の投与を指す。養子細胞免疫治療は、自己(免疫細胞がレシピエントからのものである)、同種異系(免疫細胞が、同じ種のドナーからのものである)、または同系(免疫細胞が、レシピエントと遺伝的に同一のドナーからのものである)であり得る。
【0072】
「標的アブレーション」は、本明細書で使用される場合、標的細胞(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するタグペプチドを発現する細胞)を(例えば、アポトーシスの誘導、溶解、貪食、補体依存性細胞傷害(CDC)もしくは抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)により、または別の機構により)選択的に殺滅することを指す。本明細書に記載されるとおり、本開示の融合タンパク質を発現する宿主細胞は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するタグペプチドを発現する標的細胞を他の細胞より選択的に(すなわち、特異的にまたは優先的に)標的とし、標的細胞への結合が、標的(すなわち、タグ付き)細胞をアブレーションする標的化免疫応答を誘導する。
【0073】
今般開示される実施形態のいずれにおいても、融合タンパク質またはその結合ドメインは、strepタグペプチドと特異的に結合することができる。本明細書で使用される場合、用語「strepタグペプチド」は、ストレプトアビジン(これは、Streptomyces avidiniiから精製されたテトラマータンパク質であり、ビオチンに対するその高度な親和性のため分子生物学プロトコールにおいて広く使用されている)と、またはストレプトアビジンの操作された変異タンパク質であるストレプタクチンと、特異的に結合することができるペプチドを指す。本開示の例示的なstrepタグペプチドは、ストレプトアビジンまたはストレプタクチンへの結合についてビオチンと競合し、例えば、オリジナルStrep(登録商標)タグ(WRHPQFGG、配列番号48)、Strep(登録商標)タグII(本明細書では「STII」とも呼ばれ、これは、オリジナルStrep-Tag(登録商標)の最適化バージョンであり、アミノ酸配列WSHPQFEK(配列番号19)からなる)およびそれらのバリアントを含み、前記バリアントには、例えば、Schmidt and Skerra, Nature Protocols, 2:1528-1535 (2007)、米国特許第7,981,632号およびPCT公開番号WO2015/067768において開示されているものが含まれ、これらのstrepタグペプチド、strepタグペプチド含有ポリペプチド、およびそれらの配列は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
融合タンパク質
ある特定の態様では、本開示は、(a)strepタグペプチドと特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外成分;(b)エフェクタードメインまたはその機能的部分を含む細胞内成分;および(c)前記細胞外成分と前記細胞内成分を接続する膜貫通ドメインを含む、融合タンパク質を提供する。
【0075】
ある特定の実施形態では、strepタグペプチドは、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる。
【0076】
「結合ドメイン」(「結合領域」または「結合部分構造」とも呼ばれる)は、本明細書で使用される場合、標的(例えば、配列番号19で示されるアミノ酸配列を含むペプチド)と特異的かつ非共有結合的に会合、一体化または化合する能力を有する分子またはその一部分(例えば、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質(例えば、融合タンパク質))を指す。結合ドメインは、生体分子、分子複合体(すなわち、2つもしくはそれより多くの生体分子を含む複合体)または目的の他の標的に対する、任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換えにより産生された結合パートナーを含む。例示的な結合ドメインとしては、単鎖免疫グロブリン可変領域(例えば、scTCR、scFv、Fab、TCR可変領域)、受容体細胞外ドメイン、リガンド(例えば、サイトカイン、ケモカイン)、または合成ポリペプチドであって、生体分子、分子複合体もしくは目的の他の標的と結合するそれらの特異的能力のために選択される合成ポリペプチドが挙げられる。ある特定の実施形態では、結合ドメインは、scFv、scTCR、またはリガンドである。ある特定の実施形態では、結合ドメインは、キメラ、ヒトであるか、またはヒト化されている。
【0077】
一部の実施形態では、結合ドメインは、(a)配列番号22、28もしくは34、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号22、28もしくは34のバリアントのいずれか1つで示される重鎖CDR1アミノ酸配列と、(b)配列番号23、29もしくは35、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号23、29もしくは35のバリアントのいずれか1つで示される重鎖CDR2アミノ酸配列と、(c)配列番号24、30もしくは36、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号24、30もしくは36のバリアントのいずれか1つで示される重鎖CDR3アミノ酸配列とを含む。
【0078】
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、(a)配列番号25、31もしくは37、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号25、31もしくは37のバリアントのいずれか1つで示される軽鎖CDR1アミノ酸配列と、(b)配列番号26、32もしくは38、または1~2つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号26、32もしくは38のバリアントのいずれか1つで示される軽鎖CDR2アミノ酸配列と、(c)配列番号27、33もしくは39、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号27、33もしくは39のバリアントのいずれか1つで示される軽鎖CDR3アミノ酸配列とを含む。
【0079】
今般開示される実施形態のいずれにおいても、結合ドメインは、5G2抗体、3E8抗体、4E2抗体、3C9抗体、または4C4抗体からのCDR配列を含み得る。
【0080】
一部の実施形態では、結合ドメインは、(a)配列番号28に示される重鎖CDR1アミノ酸配列、(b)配列番号29に示される重鎖CDR2アミノ酸配列、(c)配列番号30に示される重鎖CDR3酸配列、(d)配列番号31に示される軽鎖CDR1アミノ酸配列、(e)配列番号32に示される軽鎖CDR2アミノ酸配列、および(e)配列番号33に示される軽鎖CDR3酸配列を含む。
【0081】
他の実施形態では、結合ドメインは、(a)配列番号22に示される重鎖CDR1アミノ酸配列、(b)配列番号23に示される重鎖CDR2アミノ酸配列、(c)配列番号24に示される重鎖CDR3酸配列、(d)配列番号25に示される軽鎖CDR1アミノ酸配列、(e)配列番号26に示される軽鎖CDR2アミノ酸配列、および(e)配列番号27に示される軽鎖CDR3酸配列を含む。さらに他の実施形態では、結合ドメインは、(a)配列番号34に示される重鎖CDR1アミノ酸配列、(b)配列番号35に示される重鎖CDR2アミノ酸配列、(c)配列番号36に示される重鎖CDR3酸配列、(d)配列番号37に示される軽鎖CDR1アミノ酸配列、(e)配列番号38に示される軽鎖CDR2アミノ酸配列、および(e)配列番号39に示される軽鎖CDR3酸配列を含む。
【0082】
さらに他の実施形態では、本開示の結合ドメインは、PCT公開番号WO2015/067768において開示されているような「C23.21」抗体のCDRおよび、必要に応じて、VおよびV配列を含み、このCDR、VおよびV配列は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
本開示の結合ドメインを得ることまたは誘導することができる追加の抗体は、Abcam(登録商標)から市販されている「Anti-Strep-tag II抗体」(ab76949);「StrepMAB-Immo」および「StrepMAB-Classic」、両方とも、例えば、Schmidt and Skerra, Nature Protocols, 2:1528-1535 (2007)において開示されており、Iba Life Sciencesから市販されているもの;ならびにStrep-tag Antibody(Qiagen、カタログ番号34850)を含む。これらの抗体のCDR、VおよびV配列もまた、参照により組み込まれる。
【0084】
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、VドメインとVドメインとペプチドリンカーとを含むscFvである。特定の実施形態では、scFvは、ペプチドリンカーによりVドメインに連結されたVドメインを含み、これは、V-リンカー-V配向であることもあり、またはV-リンカー-V配向であることもある。一部の実施形態では、scFvは、VおよびVドメインが3E8抗体、5G2抗体、4E2抗体、3C9抗体または4C4抗体のVおよびVドメインに基づく、Vドメイン、Vドメインおよびペプチドリンカーを含む。
【0085】
他の実施形態では、scFvは、VおよびVドメインがC23.21抗体のVおよびVドメインに基づく、Vドメイン、Vドメインおよびペプチドリンカーを含む。
【0086】
さらに他の実施形態では、scFvは、VおよびVドメインがAnti-Strep-tag II抗体、StrepMAB-Immo、StrepMAB-ClassicもしくはStrep-tag Antibodyまたはそれらの任意の組合せのVおよびVドメインに基づく、Vドメイン、Vドメインおよびペプチドリンカーを含む。
【0087】
さらなる実施形態では、scFvは、配列番号3、10または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域(V)、および配列番号2、8または14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である重鎖可変領域(V)を含む。さらなる実施形態では、scFvは、配列番号3、10もしくは16に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号3、10もしくは16に示されるアミノ酸配列からなるV、および配列番号2、8もしくは14に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号2、8もしくは14に示されるアミノ酸配列からなるVを含む。追加の実施形態では、scFvは、(a)配列番号3のVおよび配列番号2のV、(b)配列番号10のVおよび配列番号8のV、または(c)配列番号16のVおよび配列番号14のVを含む。本開示の任意のscFvを、VドメインのC末端が短いペプチド配列によってVドメインのN末端に連結される、または逆に、VドメインのC末端が、短いペプチド配列によってVドメインのN末端に連結される(すなわち、(N)V(C)-リンカー-(N)V(C)、または(N)V(C)-リンカー-(N)V(C))ように、操作することができる。特定の実施形態では、scFvは、配列番号5、6、11、12、17もしくは18のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、または配列番号5、6、11、12、17もしくは18のいずれか1つのアミノ酸配列からなる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」または「に特異的な」は、試料中のいずれの他の分子または成分とも有意に会合も一体化もしない、10-1に等しいかまたはそれより高い(これは、この会合反応についてのオンレート[Kon]のオフレート[Koff]に対する比に相当する)親和性またはK(すなわち、単位が1/Mである、特定の結合相互作用の平衡会合定数)での、結合タンパク質(例えば、T細胞受容体もしくはキメラ抗原受容体)または結合ドメイン(もしくはその融合タンパク質)と標的分子(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むstrepタグペプチド)の会合または一体化を指す。結合タンパク質または結合ドメイン(またはそれらの融合タンパク質)は、「高親和性」結合タンパク質もしくは結合ドメイン(もしくはそれらの融合タンパク質)として分類されることもあり、または「低親和性」結合タンパク質もしくは結合ドメイン(もしくはそれらの融合タンパク質)として分類されることもある。「高親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1、または少なくとも1013-1のKを有する、結合タンパク質または結合ドメインを指す。「低親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、最大で10-1、最大で10-1、または最大で10-1のKを有する、結合タンパク質または結合ドメインを指す。あるいは、単位がMである(例えば、10-5M~10-13M)、特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として、親和性を定義することができる。
【0089】
ある特定の実施形態では、受容体または結合ドメインは、「増強された親和性」を有することができ、この「増強された親和性」は、野生型(または親)結合ドメインよりも標的抗原と強く結合する、選択もしくは操作された受容体または結合ドメインを指す。例えば、増強された親和性は、野生型結合ドメインよりも高い標的抗原に対するK(平衡会合定数)に起因することもあり、野生型結合ドメインのものより低い標的抗原に対するK(解離定数)に起因することもあり、野生型結合ドメインのものよりも低い標的抗原に対するオフレート(koff)に起因することもあり、またはそれらの組合せであることもある。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、T細胞などの特定の宿主細胞における発現を増強するためにコドン最適化され得る(Scholten et al., Clin.Immunol.119:135, 2006)。
【0090】
特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定するための、および結合ドメインまたは融合タンパク質親和性を決定するための、様々なアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、分析用超遠心分離、分光法および表面プラズモン共鳴(Biacore(登録商標))分析が、公知である(例えば、Scatchard et al., Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660, 1949; Wilson, Science 295:2103, 2002; Wolff et al., Cancer Res.53:2560, 1993;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号または対応特許を参照されたい)。親和性または見かけの親和性または相対親和性を評価するアッセイも公知である。ある特定の例では、融合タンパク質の見かけの親和性は、様々な濃度のテトラマーとの結合を評定することにより、例えば、標識されたテトラマーを使用してフローサイトメトリーにより測定される。一部の例では、融合タンパク質の見かけのKは、ある濃度範囲の標識されたテトラマーの2倍希釈物を使用して測定され、続いて非線形回帰により結合曲線が決定され、半最大結合を生じさせたリガンドの濃度として見かけのKが決定される。
【0091】
本明細書で使用される場合、「エフェクタードメイン」は、適切なシグナルを受け取ったときの細胞における生物学的または生理的応答を直接または間接的に促進することができる、融合タンパク質または受容体の細胞内部分またはドメインである。ある特定の実施形態では、エフェクタードメインは、結合されたときに、あるいはタンパク質もしくはその一部分またはタンパク質複合体が、標的分子と直接結合し、エフェクタードメインからのシグナルを誘発したときにシグナルを受け取る、タンパク質もしくはその一部分またはタンパク質複合体からのものである。
【0092】
エフェクタードメインは、それが、1つまたは複数のシグナル伝達ドメインまたはモチーフ、例えば、共刺激分子に見られるような細胞内チロシンベース活性化モチーフ(Intracellular Tyrosine-based Activation Motif:ITAM)を含有する場合、細胞応答を直接促進することができる。理論により拘束されることを望まないが、ITAMは、T細胞受容体によるまたはT細胞エフェクタードメインを含む融合タンパク質によるリガンド結合後のT細胞活性化に重要であると考えられる。ある特定の実施形態では、細胞内成分またはその機能的部分は、ITAMを含む。例示的なエフェクタードメインは、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD79A、CD79B、CARD11、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、HVEM、ICOS、Lck、LAG3、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、Wnt、ROR2、Ryk、SLAMF1、Slp76、pTα、TCRα、TCRβ、TRIM、Zap70、PTCH2、またはそれらの任意の組合せからのものを含む。ある特定の実施形態では、エフェクタードメインは、リンパ球受容体シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζまたはその機能的部分)を含む。
【0093】
さらなる実施形態では、融合タンパク質の細胞内成分は、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)またはそれらの組合せから選択される、共刺激ドメインまたはその機能的部分を含む。ある特定の実施形態では、細胞内成分は、CD28共刺激ドメインもしくはその機能的部分(これは、ネイティブCD28タンパク質の186~187位にLL→GG変異を必要に応じて含み得る(Nguyen et al., Blood 102:4320, 2003を参照されたい))、4-1BB共刺激ドメインもしくはその機能的部分、または両方を含む。
【0094】
ある特定の実施形態では、エフェクタードメインは、CD3ζまたはその機能的部分を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD27からの部分またはドメインを含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD28からの部分またはドメインを含む。なおさらなる実施形態では、エフェクタードメインは、4-1BBからの部分またはドメインを含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、OX40からの部分またはドメインを含む。
【0095】
本開示の細胞外成分および細胞内成分は、膜貫通ドメインによって接続されている。「膜貫通ドメイン」は、本明細書で使用される場合、細胞膜に挿入することまたは細胞膜を通過することができる、膜貫通タンパク質の一部分である。膜貫通ドメインは、細胞膜内で熱力学的に安定している三次元構造を有し、一般に、長さが約15アミノ酸~約30アミノ酸の範囲である。膜貫通ドメインの構造は、アルファヘリックス、ベータバレル、ベータシート、ベータヘリックス、またはそれらの任意の組合せを含み得る。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、公知の膜貫通タンパク質を含むまたは公知の膜貫通タンパク質に由来するもの(例えば、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD27膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、またはそれらの任意の組合せ)である。
【0096】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質の細胞外成分は、結合ドメインと膜貫通ドメインの間に配置されたリンカーをさらに含む。結合ドメインと膜貫通ドメインを接続する融合タンパク質の成分に言及するときに本明細書で使用される場合、「リンカー」は、リンカーによって接続された2つの領域、ドメイン、モチーフ、断片またはモジュール間に柔軟性および立体構造移動の余地を与えることができる、約2アミノ酸~約500アミノ酸を有するアミノ酸配列であり得る。例えば、本開示のリンカーは、融合タンパク質を発現する宿主細胞の表面から離れた位置に結合ドメインを置いて、宿主細胞と標的細胞間の適切な接触、抗原結合、および活性化を可能にすることができる(Patel et al., Gene Therapy 6: 412-419, 1999)。選択される標的分子、選択される結合エピトープ、または抗原結合ドメインのサイズおよび親和性に基づいて、抗原認識を最大にするようにリンカー長を変えることができる(例えば、Guest et al., J. Immunother.28:203-11, 2005;PCT公開番号WO2014/031687を参照されたい)。例示的なリンカーとしては、GlySer(ここで、xおよびyは、各々独立して0~10の整数であり、ただし、xおよびyが両方ともに0ではない)の1~約10の反復を有するグリシン-セリンアミノ酸鎖を有するもの(例えば、(GlySer)(配列番号20);(GlySer)(配列番号21);GlySer;またはそれらの組合せ、例えば、(GlySer)GlySer(配列番号49))が挙げられる。
【0097】
本開示のリンカーは、免疫グロブリン定常領域(すなわち、任意のアイソタイプのCH1、CH2、CH3またはCL)およびそれらの部分も含む。ある特定の実施形態では、リンカーは、CH3ドメイン、CH2ドメイン、または両方を含む。ある特定の実施形態では、リンカーは、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。さらなる実施形態では、CH2ドメインおよびCH3ドメインは、各々、同じアイソタイプである。特定の実施形態では、CH2ドメインおよびCH3ドメインは、IgG4またはIgG1アイソタイプである。他の実施形態では、CH2ドメインおよびCH3ドメインは、各々、異なるアイソタイプである。特定の実施形態では、CH2は、N297Q変異を含む。理論により拘束されることを望まないが、N297Q変異を有するCH2ドメインは、FcγRに結合しないと考えられる(例えば、Sazinsky et al., PNAS 105(51):20167 (2008)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、リンカーは、ヒト免疫グロブリン定常領域またはその一部分を含む。
【0098】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、リンカーは、ヒンジ領域またはその一部分を含み得る。ヒンジ領域は、可変長および配列(通常はプロリンおよびシステインアミノ酸を多く含む)の柔軟なアミノ酸ポリマーであり、免疫グロブリンタンパク質の柔軟性がより高い領域とより低い領域を接続する。例えば、ヒンジ領域は、抗体のFc領域とFab領域を接続し、TCRの定常領域と膜貫通領域を接続する。ある特定の実施形態では、リンカーは、免疫グロブリン定常領域またはその一部分、およびヒンジ領域またはその一部分を含む。ある特定の実施形態では、リンカーは、配列番号20もしくは21もしくは49に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号20もしくは21もしくは49に示されるアミノ酸配列からなる、グリシン-セリンリンカーを含む。
【0099】
ある特定の実施形態では、細胞外成分、結合ドメイン、リンカー、膜貫通ドメイン、細胞内成分または共刺激ドメインのうちの1つまたは複数は、接合部アミノ酸を含む。「接合部アミノ酸」または「接合部アミノ酸残基」は、タンパク質の2つの隣接するドメイン、モチーフ、領域、モジュールまたは断片間の、例えば、結合ドメインと隣接リンカーの間、膜貫通ドメインと隣接細胞外もしくは細胞内ドメインの間、または2つのドメイン、モチーフ、領域、モジュールもしくは断片を連結するリンカーの一方もしくは両方の末端上(例えば、リンカーと隣接結合ドメインの間、またはリンカーと隣接ヒンジの間)の、1つまたは複数(例えば、約2~20)のアミノ酸残基を指す。接合部アミノ酸は、融合タンパク質の構築物設計の結果として生じ得る(例えば、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの構築中の制限酵素部位または自己切断ペプチド配列の使用の結果として生じるアミノ酸残基)。例えば、融合タンパク質の膜貫通ドメインは、アミノ末端、カルボキシ末端、または両方に、1つまたは複数の接合部アミノ酸を有し得る。
【0100】
タンパク質タグは、目的のタンパク質に付けられている、または遺伝子融合されている、または目的のタンパク質の一部である、特有のペプチド配列であって、例えば、異種もしくは非内在性同族結合分子もしくは基質(例えば、受容体、リガンド、抗体、炭水化物、もしくは金属マトリックス)または本開示の融合タンパク質によって、認識または結合され得るペプチド配列である。タンパク質タグは、目的のタグ付きタンパク質の検出、同定、単離、追跡、精製、濃縮、標的化または生物学的もしくは化学的修飾に、特に、タグ付きタンパク質が、細胞タンパク質または細胞の異種集団(例えば、末梢血のような生体試料)の一部である場合、有用であり得る。タグ付き細胞表面タンパク質において、同族結合分子または本開示の融合タンパク質がタグと特異的に結合(すなわち、配列番号19のアミノ酸配列を有するタグペプチドと結合)できることは、細胞表面タンパク質(例えば、CAR、TCR)に含有される結合ドメインが標的分子に特異的に結合できることとは明確に異なり、または細胞表面タンパク質(例えば、CAR、TCR)に含有される結合ドメインが標的分子に特異的に結合できることに加えてである。ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質のタンパク質タグは、Mycタグ、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、HAタグ、Nusタグ、Sタグ、Xタグ、SBPタグ、Softag、V5タグ、CBP、GST、MBP、GFP、チオレドキシンタグ、またはそれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、本開示の融合タンパク質は、タンパク質タグ(本明細書では「ペプチドタグ」または「タグペプチド」とも呼ばれる)をさらに含み得、ただし、前記タンパク質タグは、strepタグではない(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含まない)。
【0101】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、融合タンパク質は、CARもしくはTCRであることができ、またはCARもしくはTCRを含むことができる。CARを含む、融合タンパク質を作製する方法は、例えば、米国特許第6,410,319号、米国特許第7,446,191号、米国特許出願公開第2010/065818号、米国特許第8,822,647号、PCT公開番号WO2014/031687、米国特許第7,514,537号、およびBrentjens et al., 2007、Clin.Cancer Res. 13:5426、およびWalseng et al., Scientific Reports 7:10713, 2017に記載されており、これらの参考文献の手法は、参照により本明細書に組み込まれる。操作されたTCRを産生する方法は、例えば、Bowerman et al., Mol.Immunol., 46(15):3000 (2009)に記載されており、この参考文献の手法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
ある特定の実施形態では、TCRの抗原結合断片は、TCR VαおよびVβドメインのTCR両方を含むが単一のTCR定常ドメイン(CαまたはCβ)しか含まない、単鎖TCR(scTCR)を含む。ある特定の実施形態では、TCRの抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体は、キメラ(例えば、1つより多くのドナーもしくは複数の種からのアミノ酸残基もしくはモチーフを含む)、ヒト化(例えば、ヒトにおける免疫原性のリスクを低下させるように変更もしくは置換されている非ヒト生物からの残基を含む)、またはヒトである。
【0103】
組換えにより産生された可溶性融合タンパク質を単離および精製するのに有用な方法は、例として、組換え可溶性融合タンパク質を培養培地に分泌する好適な宿主細胞/ベクター系から上清を得るステップ、および次いで市販のフィルターを使用して培地を濃縮するステップを含み得る。濃縮後、濃縮物を単一の好適な精製マトリックスに、または一連の好適なマトリックス、例えば、アフィニティーマトリックスもしくはイオン交換樹脂に、適用することができる。1つまたは複数の逆相HPLCステップを利用して、組換えポリペプチドをさらに精製することができる。これらの精製方法は、免疫原をその天然環境から単離するときに利用することもできる。本明細書に記載される単離された/組換え可溶性融合タンパク質の1つまたは複数についての大規模産生方法は、好適な培養条件を維持するためにモニタリングおよび制御される、バッチ細胞培養を含む。本明細書に記載される、当技術分野で公知である、ならびに自国および外国の規制機関の法律およびガイドラインと適合する方法に従って、可溶性融合タンパク質の精製を行うことができる。
【0104】
本明細書に記載の融合タンパク質は、T細胞結合、活性化または誘導の決定を含み、抗原特異的であるT細胞応答の決定も含む、宿主細胞(例えば、T細胞)活性をアッセイするための当技術分野において一般に認められている多数の方法論のいずれかに従って機能的に特徴付けることができる。例は、T細胞増殖、T細胞サイトカイン放出、抗原特異的T細胞刺激、MHC拘束T細胞刺激、CTL活性(例えば、前もって負荷された標的細胞からの51Crまたはユーロピウムの放出を検出することによる)、T細胞表現型マーカー発現の変化、およびT細胞機能の他の尺度の決定を含む。これらおよび類似のアッセイを行うための手順は、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques, 1998)において見つけることができる。Current Protocols in Immunology; Weir, Handbook of Experimental Immunology, Blackwell Scientific, Boston, MA (1986); Mishell and Shigii (eds.)Selected Methods in Cellular Immunology, Freeman Publishing, San Francisco, CA (1979); Green and Reed, Science 281:1309 (1998)およびこれらに引用されている参考文献も参照されたい。
【0105】
サイトカインレベルは、例えば、ELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン染色およびフローサイトメトリー、ならびにそれらの組合せ(例えば、細胞内サイトカイン染色とフローサイトメトリー)を含む、本明細書に記載されるおよび当技術分野において実施されている方法に従って、決定することができる。免疫応答の抗原特異的惹起または刺激の結果として生じる免疫細胞増殖およびクローン拡大は、末梢血液細胞またはリンパ節からの細胞の試料中の循環リンパ球などのリンパ球を単離し、前記細胞を抗原で刺激し、サイトカイン産生、細胞増殖および/または細胞生存率を、例えば、トリチウム化チミジンの取り込みまたは非放射性アッセイ、例えばMTTアッセイなどにより、測定することによって、決定することができる。Th1免疫応答とTh2免疫応答の間のバランスに対する本明細書に記載される免疫原の効果は、例えば、Th1サイトカイン、例えば、IFN-γ、IL-12、IL-2およびTNF-β、ならびに2型サイトカイン、例えば、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10およびIL-13、のレベルを決定することによって、検査することができる。
【0106】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
ある特定の態様では、本明細書に記載の融合タンパク質のいずれか1つまたは複数をコードする核酸分子が提供され、これらのポリヌクレオチドは、本明細書では「抗タグをコードするポリヌクレオチド」と呼ばれることもあり、コードされた融合タンパク質は、本明細書では、「抗タグ融合タンパク質」と呼ばれることもある。本開示の所望の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、目的の宿主細胞(例えば、T細胞などの免疫細胞)への導入のために適切なベクター(例えば、ウイルスベクターまたは非ウイルスプラスミドベクター)に挿入することができる。
【0107】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるような融合タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドで形質導入された宿主細胞を同定、モニタリングまたは単離するために、マーカーを使用することができる。ある特定の実施形態では、抗タグをコードするポリヌクレオチドは、マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。さらなる実施形態では、マーカーをコードするポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’側に位置するか、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’側に位置する。
【0108】
例示的なマーカーとしては、緑色蛍光タンパク質、ヒトCD2の細胞外ドメイン、短縮型ヒトEGFR(huEGFRt(Wang et al., Blood 118:1255, 2011を参照されたい)、短縮型ヒトCD19(huCD19t)、短縮型ヒトCD34(huCD34t)、または短縮型ヒトNGFR(huNGFRt)が挙げられる。ある特定の実施形態では、コードされたマーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む。上述の実施形態のいずれにおいても、マーカーは、ペプチドタグを含有し得るが、抗タグ融合タンパク質が、その融合タンパク質が結合するタグと同じアミノ酸配列を有するペプチドタグを一般に含まないことは理解されるであろう。例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むタグと結合する抗タグ融合タンパク質(または抗タグ融合タンパク質を発現する宿主細胞)自体は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを含まない(または、宿主細胞の場合には、発現しない)ことが、好ましい。
【0109】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、抗タグ融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、マーカーをコードするポリヌクレオチド、および自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができ、前記自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドと前記マーカーをコードするポリヌクレオチドの間に位置する。抗タグをコードするポリヌクレオチド、マーカーをコードするポリヌクレオチド、および自己切断ポリペプチドが、宿主細胞により発現されたとき、融合タンパク質およびマーカーは、別々の分子として宿主細胞表面上に存在することになる。ある特定の実施形態では、自己切断ポリペプチドは、ブタテッショウイルス-1(P2A;配列番号40もしくは41)、ゾセア・アシグナ(Thoseaasigna)ウイルス(T2A;配列番号42もしくは43)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A;配列番号44もしくは45)、または口蹄疫ウイルス(F2A)からの2Aペプチドを含む。2Aペプチドのさらなる例示的な核酸およびアミノ酸配列は、例えば、Kim et al.(PLOS One 6:e18556, 2011、この2A核酸およびアミノ酸配列は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0110】
ある特定の実施形態では、本開示の抗タグをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1、7もしくは13のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含むかまたは配列番号1、7もしくは13のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列からなる、Vをコードするポリヌクレオチドを含み、配列番号4、9もしくは15のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含むかまたは配列番号4、9もしくは15のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列からなる、Vをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0111】
1つまたは複数のタグペプチドを含有するCARなどの、代表的なタグ付きキメラエフェクター分子は、PCT公開番号WO2015/095895に記載されており、この参考文献のタグおよびタグ付きエフェクター分子は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
別の態様では、本開示は、タグ付き細胞表面タンパク質、例えば、タグ付きキメラ抗原受容体(CAR)、タグ付きT細胞受容体(TCR)、またはタグ付きマーカー、を発現する宿主細胞の検出またはモニタリングに使用するための、抗タグ融合タンパク質、またはその細胞表面で抗タグ融合タンパク質を発現する細胞を提供する。例えば、検出またはモニタリングされる宿主細胞は、異種のタグなしCARまたはタグなしTCRを発現することができ、タグ付きマーカーをさらに発現する。ある特定の実施形態では、タグ付きマーカーをコードするポリヌクレオチドは、strepタグペプチドを含有するマーカーをコードするポリヌクレオチドを含み、前記strepタグペプチドは、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むこともあり、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなることもある。ある特定の実施形態では、検出またはモニタリングされる免疫細胞は、キメラポリヌクレオチドを含有することもあり、このキメラポリヌクレオチドは、異種細胞表面受容体(例えば、CARまたはTCR)をコードする第1のポリヌクレオチドと;タグペプチドを含有するマーカーをコードするポリヌクレオチドを含む、タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチドであって、コードされたタグペプチドが、strepタグペプチド(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)を含む、第2のポリヌクレオチドと;前記細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドと前記タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチドの間に配置された、自己切断ポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチドとを含む。
【0113】
例示的な抗タグ融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの概略図が、図17Cに提供される。
【0114】
標的抗原(CD19)に特異的なタグ付き(strepタグ)細胞表面受容体(CAR)をコードする例示的なポリヌクレオチドの概略図が、図17Aに提供される。
【0115】
標的抗原(CD19)に特異的な細胞表面受容体(CAR)をコードする例示的なポリヌクレオチドおよびタグ付き(strepタグ)マーカー(tEGFR)をコードするポリヌクレオチドの概略図が、図17Bに提供される。
【0116】
ある特定の実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、(a)標的抗原に特異的に結合する結合ドメインを含む第1の細胞外成分、(b)エフェクタードメインまたはその機能的部分を含む細胞内成分、および(c)前記細胞外成分と前記細胞内成分を接続する膜貫通成分を含む、細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドと;タグ付きマーカーをコードし、タグペプチドを含有するマーカーをコードするポリヌクレオチドを含む、第2のポリヌクレオチドであって、コードされたタグペプチドが、ある特定の実施形態では配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号19に示されるアミノ酸配列からなり得る、strepタグペプチドを含む、第2のポリヌクレオチドとを含む。さらなる実施形態では、キメラポリヌクレオチドによりコードされた細胞表面受容体は、標的抗原(例えば、がん抗原、例えば、CD19、CD20、CD22、ROR1、EGFR、EGFRvIII、EGP-2、EGP-40、GD2、GD3、HPV E6、HPV E7、Her2、L1-CAM、Lewis A、Lewis Y、MUC1、MUC16、PSCA、PSMA、CD56、CD23、CD24、CD30、CD33、CD37、CD44v7/8、CD38、CD56、CD123、CA125、c-MET、FcRH5、WT1、葉酸受容体α、VEGF-α、VEGFR1、VEGFR2、IL-13Rα2、IL-11Rα、MAGE-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、SSX-2、PRAME、HA-1、PSA、エフリンA2、エフリンB2、NKG2D、NY-ESO-1、TAG-72、メソテリン、NY-ESO、5T4、BCMA、FAP、炭酸脱水酵素9、ERBB2、BRAFV600E、もしくはCEA抗原など)と特異的に結合するCARもしくはTCRであるか、または標的抗原と特異的に結合するCARもしくはTCRを含む。
【0117】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、本開示のキメラポリヌクレオチドによりコードされる自己切断ポリペプチドは、P2A、T2A、E2AまたはF2Aをコードする。
【0118】
ある特定の実施形態では、コードされたタグ付きマーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む。コードされたタグ付きマーカーは、タグ付きマーカーが宿主細胞の表面に発現されたときに構築物のタグペプチド部分に本開示の融合タンパク質が特異的に結合できることを条件に、マーカー内のいずれの位置にタグを含有してもよい。特定の実施形態では、タグをコードするポリヌクレオチドは、マーカーをコードするポリヌクレオチドの3’側に位置するか、またはタグをコードするポリヌクレオチドは、マーカーをコードするポリヌクレオチドの5’側に位置する。他の実施形態では、タグをコードするポリヌクレオチドは、マーカーをコードするポリヌクレオチド内に位置する。
【0119】
特定の実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、5’末端から3’末端へ、(a)(細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチド)-(自己切断ポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド)-(タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチド)、または(b)(タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチド)-(自己切断ポリペプチドをコードする前記第3のポリヌクレオチド)-(前記細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチド)の構造を含む。
【0120】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、抗タグ融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または細胞表面タンパク質およびタグ付きマーカーをコードするポリヌクレオチド)を、そのポリヌクレオチドを含有する宿主細胞のためにコドン最適化することができる(例えば、Scholten et al., Clin.Immunol.119:135-145 (2006)を参照されたい)。
【0121】
さらなる態様では、発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結された本開示のポリヌクレオチド(例えば、抗タグ融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または細胞表面タンパク質およびタグ付きマーカーをコードするポリヌクレオチド)を含む発現構築物が、提供される。ある特定の実施形態では、発現構築物は、ベクター内に含まれる。例示的なベクターは、そのポリヌクレオチドが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチド、または宿主生物において複製することができるポリヌクレオチドを含むことができる。ベクターの一部の例としては、プラスミド、ウイルスベクター、コスミドなどが挙げられる。導入される宿主細胞において自律複製が可能であり得るベクター(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)もあるが、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る、または宿主細胞への導入の際にポリヌクレオチド挿入物の組込みを促進し、それによって宿主ゲノムとともに複製し得るベクター(例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター)もある。加えて、一部のベクターは、それらが作用的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる(これらのベクターは、「発現ベクター」と呼ばれることもある)。関連実施形態に従って、1つまたは複数の薬剤(例えば、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)が対象に共投与される場合には、各薬剤が、別々のベクターまたは同じベクターの中に存在することができ、複数のベクター(各々が異なる薬剤または同じ薬剤を含有する)を細胞もしくは細胞集団に導入することができ、または対象に投与することができることは、さらに理解される。
【0122】
ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドを、ベクターのある特定のエレメントに作用的に連結させることができる。例えば、ポリヌクレオチド配列であって、ポリヌクレオチド配列がライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングを生じさせる必要があるポリヌクレオチド配列を、作用的に連結させることができる。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;ならびにことによると、タンパク質分泌を増進する配列を挙げることができる。発現制御配列は、発現制御配列が、目的の遺伝子と、および目的の遺伝子を制御するようにトランスでまたは少し離れて作用する発現制御配列と近接している場合、作用的に連結されていてよい。
【0123】
ある特定の実施形態では、ベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターまたはγ-レトロウイルスベクターから選択されるベクター)を含む。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびに二本鎖DNAウイルスが挙げられ、二本鎖DNAウイルスには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリアポックス)が含まれる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血症-肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0124】
「レトロウイルス」は、RNAゲノムを有するウイルスであって、このRNAゲノムが、逆転写酵素を使用してDNAに逆転写され、次いで、逆転写されたDNAが宿主細胞ゲノムに組み込まれる、ウイルスである。「ガンマレトロウイルス」は、レトロウイルス科の属を指す。例示的なガンマレトロウイルスとしては、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、およびトリ細網内皮症ウイルスが挙げられる。
【0125】
「レンチウイルスベクター」は、本明細書で使用される場合、遺伝子送達のためのHIVベースのレンチウイルスベクターであって、組込み型であることもあり、または非組込み型であることもあり、比較的大きいパッケージング容量を有し、様々な異なる細胞型に形質導入することができる、レンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは、産生細胞内への3つ(パッケージング、エンベロープおよび移入)またはそれより多くのプラスミドの一過性トランスフェクション後に通常は生成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面の受容体との相互作用によって標的細胞に侵入する。侵入すると、ウイルスRNAは、ウイルス逆転写酵素複合体により媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は、二本鎖線状ウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNA中へのウイルス組込みの基質である。
【0126】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、ガンマレトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクターであり得る。他の実施形態では、ウイルスベクターは、より複雑なレトロウイルス由来ベクター、例えば、レンチウイルス由来ベクターであり得る。HIV-1由来ベクターは、このカテゴリーに属する。他の例としては、HIV-2、FIV、ウマ伝染性貧血ウイルス、SIV、およびマエディ・ビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)に由来する、レンチウイルスベクターが挙げられる。レトロウイルスおよびレンチウイルスウイルスベクターの使用方法、およびCAR導入遺伝子を含有するウイルス粒子で哺乳動物宿主細胞に形質導入するための細胞のパッケージング細胞は、当技術分野において公知であり、以前に、例えば、米国特許第8,119,772号;Walchli et al., PLoS One 6:327930, 2011; Zhao et al., J. Immunol.174:4415, 2005; Engels et al., Hum.Gene Ther.14:1155, 2003; Frecha et al., Mol.Ther.18:1748, 2010;およびVerhoeyen et al., Methods Mol.Biol.506:97, 2009に記載されている。レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター構築物および発現系は、市販もされている。他のウイルスベクターも、ポリヌクレオチド送達に使用することができ、それらには、例えばアデノウイルスベースのベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターを含む、DNAウイルスベクター;アンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVを含む、単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来するベクターが含まれる(Krisky et al., Gene Ther.5:1517, 1998)。
【0127】
遺伝子治療用に最近開発された他のベクターも、本開示の組成物および方法とともに使用することができる。そのようなベクターとしては、バキュロウイルスおよびαウイルスに由来するもの(Jolly, D J. 1999. Emerging Viral Vectors. pp 209-40 in Friedmann T. ed. The Development of Human Gene Therapy. New York: Cold Spring Harbor Lab)、またはプラスミドベクター(例えば、スリーピング・ビューティーもしくは他のトランスポゾンベクター)が挙げられる。
【0128】
ウイルスベクターゲノムが、別々の転写物として宿主細胞において発現される多数のポリヌクレオチドを含む場合、そのウイルスベクターは、2つ(またはそれより多くの)転写物間に追加の配列を含むこともでき、それによってバイシストロン性またはマルチシストロン性発現が可能になる。ウイルスベクターに使用されるそのような配列の例としては、配列内リボソーム進入部位(IRES)、フューリン切断部位、ウイルス2Aペプチド、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0129】
目的の融合タンパク質の遺伝子操作および産生に使用される発現ベクターの構築は、当技術分野において公知の任意の好適な分子生物学操作手法を使用することにより遂行することができる。効率的な転写および翻訳を達成するために、各組換え発現構築物中のポリヌクレオチドは、免疫原をコードするヌクレオチド配列に作動可能に(すなわち、作用的に(operatively))連結された少なくとも1つの適切な発現制御配列(調節配列とも呼ばれる)、例えば、リーダー配列および特にプロモーターを含む。
【0130】
ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、養子移入治療(例えば、がん抗原を標的とする、またはタグペプチドを発現する養子移入された細胞を標的とする)において使用するための宿主細胞(例えば、T細胞)へのトランスフェクション/形質導入に使用される。T細胞に所望の核酸をトランスフェクトする/T細胞に所望の核酸で形質導入する方法は、記載されており(例えば、米国特許出願公開第2004/0087025号)、所望の標的特異性のT細胞を使用する養子移入手順も記載されており(例えば、Schmitt et al., Hum. Gen. 20:1240, 2009; Dossett et al., Mol. Ther. 17:742, 2009; Till et al., Blood 112:2261, 2008; Wang et al., Hum. Gene Ther.18:712, 2007; Kuball et al., Blood 109:2331, 2007;米国特許出願公開第2011/0243972号;米国特許出願公開第2011/0189141号;Leen et al., Ann. Rev. Immunol. 25:243, 2007)、したがって、今般開示される実施形態へのこれらの方法論の適用が、本開示の融合タンパク質に関するものを含む本明細書における教示に基づいて企図される。したがって、別の態様では、本開示のポリヌクレオチドを含む宿主細胞であって、コードされた融合タンパク質を発現する、またはコードされた細胞表面受容体およびタグ付きマーカーを発現する、宿主細胞が提供される。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、(a)融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または本開示の融合タンパク質をコードする発現構築物を含み、コードされた融合タンパク質を発現するか;または(b)本開示のキメラポリヌクレオチドまたはキメラポリヌクレオチド発現構築物を含み、コードされた細胞表面受容体およびコードされたタグ付きマーカーを発現する。
【0131】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫系細胞である。本明細書で言及される場合、「造血前駆細胞」は、造血幹細胞または胎児組織に由来し得る細胞であって、成熟細胞型(例えば、免疫系細胞)へとさらに分化することができる細胞である。例示的な造血前駆細胞としては、CD24LoLinCD117表現型を有するもの、または胸腺に見られるもの(前駆胸腺細胞と呼ばれる)が挙げられる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「免疫系細胞」は、2つの主要な系列、骨髄系前駆細胞(これは、骨髄系細胞、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球および顆粒球を生じさせる)およびリンパ系前駆細胞(これは、リンパ系細胞、例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびNK-T細胞を生じさせる)、を生じさせる、骨髄中の造血幹細胞に由来する免疫系の任意の細胞を意味する。例示的な免疫系細胞としては、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8二重陰性T細胞、γδT細胞、調節性T細胞、幹細胞メモリーT細胞、ナチュラルキラー細胞(例えば、NK細胞またはNK-T細胞)、B細胞、および樹状細胞が挙げられる。マクロファージおよび樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」と呼ばれることもあり、「抗原提示細胞」または「APC」は、ペプチドと複合体化したAPCの表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)受容体がT細胞の表面のTCRと相互作用したときT細胞を活性化することができる特殊化した細胞である。
【0133】
「T細胞」または「Tリンパ球」は、胸腺において成熟し、T細胞受容体(TCR)を産生する、免疫系細胞である。T細胞は、ナイーブ(抗原に曝露されていない;TCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127およびCD45RAの発現増加、ならびにCD45ROの発現減少)、メモリーT細胞(T)(抗原を経験した、長寿命)およびエフェクター細胞(抗原を経験した、細胞傷害性)であり得る。Tは、さらに、セントラルメモリーT細胞(TCM;ナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45ROおよびCD95の発現増加、ならびにCD54RAの発現減少)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM;ナイーブT細胞またはTCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現減少、およびCD127の発現増加)のサブセットに分けることができる。
【0134】
エフェクターT細胞(T)は、抗原を経験したCD8細胞傷害性Tリンパ球であって、TCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28の発現減少を有し、グランザイムおよびパーフォリンに対して陽性である、CD8細胞傷害性Tリンパ球を指す。ヘルパーT細胞(T)は、サイトカインを放出することにより他の免疫細胞の活性に影響を与えるCD4細胞である。CD4T細胞は、適応免疫応答を活性化することおよび抑制することができ、これら2つの機能のどちらが誘導されるのかは、他の細胞およびシグナルの存在に依存する。公知の技法を使用してT細胞を収集することができ、公知の技法により、例えば、抗体への親和性結合、フローサイトメトリーまたは免疫磁気選択により、様々な部分集団またはそれらの組合せを富化することまたは枯渇させることができる。他の例示的なT細胞としては、調節性T細胞、例えば、CD4CD25(Foxp3)調節性T細胞およびTreg17細胞、ならびにTr1、Th3、CD8CD28、およびQa-1拘束T細胞が挙げられる。
【0135】
「T細胞系列の細胞」は、それらの細胞を他のリンパ系細胞、および赤血球または骨髄細胞系列と区別する、T細胞またはその先駆体もしくは前駆体の少なくとも1つの表現型特性を示す細胞を指す。そのような表現型特性としては、T細胞に特異的な1つもしくは複数のタンパク質(例えば、CD3、CD4、CD8)の発現、またはT細胞に特異的な生理的、形態的、機能的もしくは免疫学的特徴を挙げることができる。例えば、T細胞系列の細胞は、T細胞系列に運命決定された前駆細胞または先駆細胞;CD25未熟および不活性化T細胞;CD4もしくはCD8系列に運命決定された細胞;CD4CD8二重陽性である胸腺細胞前駆細胞;単一陽性CD4もしくはCD8;TCRαβもしくはTCRγδ;または成熟および機能的または活性化T細胞であり得る。
【0136】
ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4-CD8-二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞(例えば、NK細胞またはNK-T細胞)、樹状細胞、B細胞、またはそれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、CD4+T細胞である。ある特定の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである。
【0137】
宿主細胞は、ベクターをもしくは核酸の組み入れを受け入れることができる、またはタンパク質を発現することができる、任意の個々の細胞または細胞培養物を含むことができる。この用語は、遺伝的にまたは表現型的に同じであるのか異なるのかを問わず、宿主細胞の子孫も包含する。好適な宿主細胞は、ベクターに依存し得、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞および細菌細胞を含み得る。ウイルスベクターの使用、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションによる形質転換、または他の方法によって、ベクターまたは他の材料を組み入れるように、これらの細胞を誘導することができる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照されたい。
【0138】
上述の実施形態のいずれにおいても、抗タグ結合タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、PD-1、LAG-3、CTLA4、TIM3、TIGIT、HLA分子、TCR分子またはそれらの任意の成分もしくは組合せから選択されるポリペプチド産物をコードする1つまたは複数の内在性遺伝子の発現を低減または排除するように改変される免疫細胞である。
【0139】
理論により拘束されることを望まないが、ある特定の内在性発現された免疫細胞タンパク質は、改変された免疫宿主細胞の免疫活性を下方調節することができる(例えば、PD-1、LAG-3、CTLA4、TIGIT);または本開示の異種抗タグ融合タンパク質と宿主細胞による発現について競合することができる;または本開示の異種発現された結合タンパク質の結合活性に干渉すること、およびタグ(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むタグペプチド)を発現する標的細胞もしくは融合タンパク質への免疫宿主細胞の結合に干渉することができる;またはそれらの任意の組合せ。さらに、細胞移入治療に使用されることになるドナー免疫細胞上に発現される内在性タンパク質(例えば、免疫宿主細胞タンパク質、例えばHLA)は、同種異系レシピエントにより外来性と見なされることがあり、その結果、同種異系レシピエントによりドナー免疫細胞が排除または抑制されることになり得る。
【0140】
したがって、そのような内在性遺伝子またはタンパク質の発現または活性を減少または排除することで、自己または同種異系宿主環境での宿主細胞の活性、寛容および持続性を向上させることができ、細胞の(例えば、HLA型に関係なく任意のレシピエントへの)普遍的投与が可能になる。ある特定の実施形態では、改変宿主免疫細胞は、ドナー細胞(例えば、同種異系)または自己細胞である。ある特定の実施形態では、本開示の改変免疫宿主細胞は、PD-1、LAG-3、CTLA4、TIM3、TIGIT、HLA成分(例えば、α1マクログロブリン、α2マクログロブリン、α3マクログロブリン、β1ミクログロブリンもしくはβ2ミクログロブリンをコードする遺伝子)、またはTCR成分(例えば、TCR可変領域もしくはTCR定常領域をコードする遺伝子)をコードする遺伝子のうちの1つまたは複数についての染色体遺伝子ノックアウトを含む(例えば、Torikai et al., Nature Sci.Rep.6:21757 (2016); Torikai et al., Blood 119(24):5697 (2012);およびTorikai et al., Blood 122(8):1341 (2013)を参照されたく、これらの参考文献の遺伝子編集技法、組成物および養子細胞治療は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書で使用される場合、用語「染色体遺伝子ノックアウト」は、機能的に活性な内在性ポリペプチド産物の宿主細胞による産生を妨げる、宿主細胞の遺伝子変化を指す。染色体遺伝子ノックアウトの結果として生じる変化は、例えば、導入ナンセンス変異(未成熟終止コドンの形成を含む)、ミスセンス変異、遺伝子欠失および鎖切断、ならびに宿主細胞における内在性遺伝子発現を阻害する阻害性核酸分子の異種発現を含み得る。
【0141】
ある特定の実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトまたは遺伝子ノックインは、宿主細胞の染色体編集によってなされる。染色体編集は、例えばエンドヌクレアーゼを使用して、行うことができる。本明細書で使用される場合、「エンドヌクレアーゼ」は、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合の切断を触媒することができる酵素を指す。ある特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、標的遺伝子を切断することによって標的遺伝子を不活性化または「ノックアウト」することができる。エンドヌクレアーゼは、天然に存在するエンドヌクレアーゼ、組換えエンドヌクレアーゼ、遺伝子修飾エンドヌクレアーゼまたは融合エンドヌクレアーゼであり得る。エンドヌクレアーゼにより引き起こされる核酸鎖切断は、一般に、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)の明確に異なる機序によって修復される。相同組換え中に、ドナー核酸分子は、ドナー遺伝子「ノックイン」に、標的遺伝子「ノックアウト」に、および必要に応じて、ドナー遺伝子ノックインまたは標的遺伝子ノックアウト事象によって標的遺伝子を不活性化するために、使用され得る。NHEJは、DNA配列の切断部位での変化、例えば、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失または付加をもたらすことが多い、エラープローン修復プロセスである。NHEJは、標的遺伝子を「ノックアウトする」ために使用されることもある。エンドヌクレアーゼの例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、CRISPR-Casヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、およびメガTALが挙げられる。
【0142】
本明細書で使用される場合、「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」(ZFN)は、Foklエンドヌクレアーゼなどの、非特異的DNA切断ドメインに融合されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を指す。約30アミノ酸の各ジンクフィンガーモチーフがDNAの約3塩基対と結合し、ある特定の残基におけるアミノ酸を変化させてトリプレット配列特異性を変更することができる(例えば、Desjarlais et al., Proc.Natl.Acad.Sci.90:2256-2260, 1993; Wolfe et al., J. Mol.Biol.285:1917-1934, 1999を参照されたい)。複数のジンクフィンガーモチーフをタンデムに連結させて、所望のDNA配列、例えば約9~約18塩基対の範囲の長さを有する領域、に対する結合特異性を生じさせることができる。背景として、ZFNは、ゲノム内での部位特異的DNA二本鎖切断(DSB)の形成を触媒することによりゲノム編集を媒介し、DSBの部位にゲノムに相同な隣接配列を含む導入遺伝子の標的組込みが相同組換え修復により容易になる。あるいは、ZFNにより生じたDSBは、切断部位のヌクレオチドの挿入または欠失を生じさせる結果となるエラープローン細胞修復経路である非相同末端結合(NHEJ)による修復を介して、標的遺伝子のノックアウトをもたらし得る。ある特定の実施形態では、遺伝子ノックアウトは、ZFN分子を使用してなされる挿入、欠失、変異またはそれらの組合せを含む。
【0143】
本明細書で使用される場合、「転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ」(TALEN)は、FokIエンドヌクレアーゼなどの、TALE DNA結合ドメインとDNA切断ドメインとを含む融合タンパク質を指す。「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、12番目および13番目のアミノ酸が異なる高度に保存された33~35アミノ酸配列を各々が一般に有する、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/ユニットで構成されている。TALE反復ドメインは、TALEの標的DNA配列への結合に関与する。反復可変二残基(RVD)と呼ばれる、異なるアミノ酸残基は、特異的ヌクレオチド認識と相関する。これらのTALEのDNA認識についての天然(標準)コードは、TALEの12および13位のHD(ヒスチジン-アスパラギン酸)配列が、シトシン(C)へのTALE結合をもたらし、NG(アスパラギン-グリシン)がTヌクレオチドと、NI(アスパラギン-イソロイシン)がAと結合し、NN(アスパラギン-アスパラギン)がGまたはAヌクレオチドと結合し、NG(アスパラギン-グリシン)がTヌクレオチドと結合するように、決定された。非標準(非定型)RVDもまた公知である(例えば、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたく、この非定型RVDは、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)。TALENを使用して、T細胞のゲノム内での部位特異的二本鎖切断(DSB)を指示することができる。非相同末端結合(NHEJ)は、アニーリングのための配列重複がほとんどまたは全くない、二本鎖切断の両側からのDNAをライゲーションし、それによって、遺伝子発現をノックアウトする誤りを導入する。あるいは、相同組換え修復は、相同隣接配列が導入遺伝子に存在することを条件に、その導入遺伝子をDSBの部位に導入することができる。ある特定の実施形態では、遺伝子ノックアウトは、TALEN分子を使用してなされる挿入、欠失、変異、またはそれらの組合せを含む。
【0144】
本明細書で使用される場合、「クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/Cas」(CRISPR/Cas)ヌクレアーゼシステムは、塩基対合相補性によってゲノム内の標的部位(プロトスペーサーとして公知)を認識するために、そしてその後、短い保存プロトスペーサー関連モチーフ(PAM)が相補標的配列の3’の直後に続く場合にはDNAを切断するために、CRISPR RNA(crRNA)誘導型Casヌクレアーゼを利用するシステムを指す。CRISPR/Casシステムは、Casヌクレアーゼの配列および構造に基づいて3つの型(すなわち、I型、II型およびIII型)に分類される。I型およびIII型のcrRNA誘導型監視複合体は、複数のCasサブユニットを必要とする。最もよく研究されているII型システムは、少なくとも次の3つの成分を含む:RNA誘導型Cas9ヌクレアーゼ、crRNA、およびトランス作用性crRNA(tracrRNA)。tracrRNAは、二重鎖形成領域を含む。crRNAおよびtracrRNAは、Cas9ヌクレアーゼと相互作用することおよびcrRNA上のスペーサーとPAMから上流の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン・クリック塩基対合によって標的DNA上の特定の部位にCas9/crRNA:tracrRNA複合体を誘導することができる、二重鎖を形成する。Cas9ヌクレアーゼは、crRNAスペーサーにより規定される領域内で二本鎖切断を行う。NHEJによる修復は、標的遺伝子座の発現を破壊する挿入および/または欠失をもたらす。あるいは、相同隣接配列を伴う導入遺伝子を相同組換え修復によってDSBの部位に導入することができる。crRNAおよびtracrRNAを操作して一本鎖ガイドRNA(sgRNAまたはgRNA)にすることができる(例えば、Jinek et al., Science 337:816-21, 2012を参照されたい)。さらに、標的部位に相補的なガイドRNAの領域を、所望の配列を標的とするように変更またはプログラムすることができる(Xie et al., PLOS One 9:e100448, 2014;米国特許出願公開第2014/0068797号、米国特許出願公開第2014/0186843号:米国特許第8,697,359号、およびPCT公開番号WO2015/071474;これらの各々は、参照により組み込まれる)。ある特定の実施形態では、遺伝子ノックアウトは挿入、欠失、変異、またはそれらの組合せを含み、それは、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムを使用してなされる。
【0145】
例示的なgRNA配列、およびそれらを使用して、免疫細胞タンパク質をコードする内在性遺伝子をノックアウトする方法は、Ren et al., Clin.Cancer Res.23(9):2255-2266 (2017)に記載されるものを含み、この文献のgRNA、CAS9 DNA、ベクターおよび遺伝子ノックアウト技法は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
本明細書で使用される場合、「ホーミングエンドヌクレアーゼ」とも呼ばれる「メガヌクレアーゼ」は、大きい認識部位(約12~約40塩基対の二本鎖DNA配列)を特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼを指す。メガヌクレアーゼは、配列および構造モチーフに基づいて次の5つのファミリーに分類することができる:LAGLIDADG、GIY-YIG、HNH、His-CysボックスおよびPD-(D/E)XK。例示的なメガヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが挙げられ、これらの認識配列は公知である(例えば、米国特許第5,420,032号および同第6,833,252号;Belfort et al., Nucleic Acids Res.25:3379-3388, 1997; Dujon et al., Gene 82:115-118, 1989; Perler et al., Nucleic Acids Res.22:1125-1127, 1994; Jasin, Trends Genet.12:224-228, 1996; Gimble et al., J. Mol.Biol.263:163-180, 1996; Argast et al., J. Mol.Biol.280:345-353, 1998を参照されたい)。
【0147】
ある特定の実施形態では、天然に存在するメガヌクレアーゼを使用して、PD-1、LAG3、TIM3、CTLA4、TIGIT、HLAをコードする遺伝子、またはTCR成分をコードする遺伝子から選択される標的の部位特異的ゲノム修飾を促進することができる。他の実施形態では、標的遺伝子に対する新規結合特異性を有する操作されたメガヌクレアーゼが、部位特異的ゲノム修飾に使用される(例えば、Porteus et al., Nat. Biotechnol.23:967-73, 2005; Sussman et al., J. Mol.Biol.342:31-41, 2004; Epinat et al., Nucleic Acids Res.31:2952-62, 2003; Chevalier et al., Molec.Cell 10:895-905, 2002; Ashworth et al., Nature 441:656-659, 2006; Paques et al., Curr.Gene Ther.7:49-66, 2007;米国特許出願公開第2007/0117128号、同第2006/0206949号、同第2006/0153826号、同第2006/0078552号、および同第2004/0002092号を参照されたい)。さらなる実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトは、メガTALとして公知の融合タンパク質を作製するためにTALENのモジュラーDNA結合ドメインで修飾されたホーミングエンドヌクレアーゼを使用して生成される。メガTALを利用して、1つまたは複数の標的遺伝子をノックアウトすることができるばかりでなく、目的のポリペプチドをコードする外因性ドナーテンプレートと組み合わせて使用すると異種または外因性ポリヌクレオチドを導入(ノックイン)することもできる。
【0148】
ある特定の実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトは、腫瘍関連抗原と特異的に結合する抗原特異的受容体をコードする異種ポリヌクレオチドを含む、宿主細胞(例えば、免疫細胞)に導入される阻害性核酸分子を含み、前記阻害性核酸分子は、標的特異的インヒビターをコードし、コードされた標的特異的インヒビターは、宿主免疫細胞における内在性遺伝子発現(すなわち、PD-1、TIM3、LAG3、CTLA4、TIGIT、HLA成分もしくはTCR成分、またはそれらの任意の組合せの発現)を阻害する。
【0149】
染色体遺伝子ノックアウトを、ノックアウト手順またはノックアウト剤の使用後の宿主免疫細胞のDNAシークエンシングによって直接確認することができる。染色体遺伝子ノックアウトを、ノックアウト後の遺伝子発現の非存在(例えば、遺伝子によりコードされたmRNAまたはポリペプチド産物の非存在)から推測することもできる。
【0150】
他の態様では、(a)本明細書に記載のベクターまたは発現構築物と、(b)宿主細胞に前記ベクターまたは発現構築物で形質導入するための試薬とを含むキットが提供される。
【0151】
使用
本開示は、本明細書に記載の改変された細胞(例えば、タグペプチドを標的とするCAR T細胞、またはタグペプチドでタグが付けられているCAR T細胞)をモジュレート(例えば、アブレーション、刺激または活性化)する方法も提供する。ある特定の実施形態では、タグ付き細胞の標的アブレーションのための方法であって、strepタグペプチド(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)であるタグペプチドを含む細胞表面タンパク質を発現する細胞(この細胞は、本明細書では「タグ付き細胞」と呼ばれることもある)を事前に投与しておいた対象に、本開示の抗タグ融合タンパク質をその細胞表面に発現するように改変された免疫細胞を投与することによって、前記タグ付き細胞をアブレーションする標的化免疫応答を誘導することを含む方法が、提供される。
【0152】
そのようなアブレーション方法は、事前に投与された(例えば、がん(例えば、B細胞がんを含む)などの疾患の免疫治療処置のために投与された)タグ付き細胞が、望ましくない活性(例えば、対象におけるオフターゲット細胞または組織に対する免疫応答を惹起する)または活性レベル(例えば、不適切に高い強度、継続期間、または両方の免疫応答、例えば、サイトカイン放出症候群(CRS)事象を惹起する)を有する場合、有用であり得る。ある特定の実施形態では、抗タグ融合タンパク質を発現する改変された免疫細胞は、タグ付き細胞の存在に関連する少なくとも1つの有害事象を有する対象に投与される。
【0153】
ある特定の実施形態では、タグ付き細胞表面タンパク質は、CAR、TCR、またはマーカーを含む。ある特定の実施形態では、マーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む。ある特定の実施形態では、タグペプチドは、マーカーに含有される。
【0154】
上述の実施形態のいずれにおいても、抗タグ融合タンパク質を発現する改変された免疫細胞は、T細胞、NK細胞、またはNK-T細胞から選択される。特定の実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。
【0155】
ある特定の実施形態では、タグ付き細胞は、免疫治療、グラフトまたは移植として対象に事前に投与された。特定の実施形態では、タグ付き細胞、または抗タグ融合タンパク質を発現する改変された免疫細胞は、対象にとって同種異系、自己または同系である。さらなる実施形態では、対象は、タグ付き細胞を含む免疫治療、グラフトまたは移植後に、移植片対宿主病(GvHD)または宿主対移植片病(HvGD)を有するか、有する疑いがある。ある特定の実施形態では、タグ付き細胞は、過剰増殖性障害を処置するために投与された。本明細書で使用される場合、「過剰増殖性障害」は、正常または非罹患細胞と比較して過剰な成長または増殖を指す。例示的な過剰増殖性障害としては、腫瘍、がん、新生物組織、癌、肉腫、悪性細胞、前悪性細胞、および非新生物性または非悪性過剰増殖性障害(例えば、腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、血管腫、線維症、再狭窄、ならびに自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、炎症性腸疾患など)が挙げられる。
【0156】
さらに、「がん」は、固形腫瘍、腹水腫瘍、血液もしくはリンパもしくは他の悪性疾患;結合組織悪性疾患;転移性疾患;器官または幹細胞の移植後の微小残存疾患;多剤耐性がん、原発性または二次性悪性疾患、悪性疾患に関係する血管新生、または他の形態のがんを含む、任意の加速された細胞増殖を指すことができる。
【0157】
対象が、タグ付き細胞に関連する1つまたは複数の有害事象を明示したときに必要なタグ付き細胞の(すなわち、タグ付き免疫治療用細胞またはタグ付き非免疫治療用細胞の)アブレーションを決定することができる。例えば、炎症、発熱、肺水腫または脳浮腫、血圧または心拍数の変化、健常細胞(例えば、白血球)の望ましくなく低い計数値、タグ付き細胞の望ましくなく高い計数値、サイトカインレベル上昇、発疹、疱疹、黄疸、下痢、嘔吐、腹部疝痛、疲労、疼痛、硬直、息切れ、体重減少、ドライアイまたは視力変化、口内乾燥、膣乾燥、および筋力低下は、タグ付き細胞のアブレーションが必要とされる指標であり得る。
【0158】
抗タグ融合タンパク質を発現する改変された免疫細胞がタグ付き細胞のアブレーションを引き起こす能力を、改変された免疫細胞での処置後に、直接または間接的に、どちらかで、判定することができる。ある特定の実施形態では、方法は、改変された免疫細胞を対象に投与した後、(i)対象体内に、または対象から採取された試料中に残存する前記タグ付き細胞、(ii)対象体内に、または対象から採取された試料中に存在する前記改変された免疫細胞、(iii)対象体内の1つもしくは複数のサイトカイン、または(iv)それらの任意の組合せの存在を検出することおよび/またはその量を測定することをさらに含む。特定の実施形態では、方法は、タグ付き細胞の投与後に低減された細胞(例えば、タグ付き抗CD19 CAR T細胞の投与後に低減された健常なCD19発現B細胞)の存在を検出することおよび/またはその量をモニタリングすることをさらに含む。
【0159】
本発明により処置され得る対象は、一般に、ヒトおよび他の霊長類対象、例えば、獣医学目的でサルおよび類人猿である。上述の実施形態のいずれにおいても、対象は、ヒト対象であり得る。対象は、男性であってもよく、または女性であってもよく、乳幼児、若年、青年、成人および老年対象を含む、いずれの好適な年齢であってもよい。本開示による細胞は、医学技術分野の当業者により決定されるような、処置される疾患、状態または障害に適切な方法で、投与することができる。上記実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載の融合タンパク質を含む細胞は、アブレーションすべきタグ付き細胞に遭遇するために、静脈内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、骨髄に投与、リンパ節に投与、または脳脊髄液に投与される。組成物の適切な用量、好適な投与期間および頻度は、患者の状態;疾患、状態または障害のサイズ、タイプおよび重症度;タグ付き細胞の望ましくないタイプまたはレベルまたは活性;活性成分の特定の形態;ならびに投与方法などの因子によって決定されることになる。
【0160】
上記実施形態のいずれにおいても、本開示の方法は、本開示の融合タンパク質を発現する宿主細胞を投与することを含む。組成物中の細胞の量は、少なくとも1細胞(例えば、1つの融合タンパク質修飾CD8T細胞部分集団、1つの融合タンパク質修飾CD4T細胞部分集団)であるか、またはより典型的には、10より多くの細胞、例えば、最大で10、最大で10、最大で10細胞、最大で10細胞、または1010より多くの細胞である。ある特定の実施形態では、細胞は、約10~約1010細胞/m2の範囲で、好ましくは約10~約10細胞/mの範囲で投与される。細胞の数は、組成物の意図される最終使用に加えて、それに含まれる細胞のタイプにも依存することになる。例えば、特定の抗原に特異的な融合タンパク質を含有するように改変された細胞は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれより多くのそのような細胞を含有する細胞集団を含むことになる。本明細書で提供される使用について、細胞は、一般に、1リットルもしくはそれ未満、500mlもしくはそれ未満、250mlもしくはそれ未満、または100mlもしくはそれ未満の体積である。実施形態では、所望の細胞の密度は、通常は、10細胞/mlより高く、一般に、10細胞/mlより高く、一般に、10細胞/mlであるかまたはそれより高い。細胞を、単回注入として投与してもよく、またはある時間範囲にわたって複数回の注入で投与してもよい。臨床的に意義のある数の免疫細胞を、累積的に10、10、10、10、1010もしくは1011細胞であるかまたはそれを超える複数の注入物に分配することができる。
【0161】
本開示の宿主細胞(例えば、本開示のポリヌクレオチドを含む改変された免疫細胞)または宿主細胞組成物を含む、単位用量も、本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の改変されたCD4T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の改変されたCD8T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない(すなわち、単位用量に存在するナイーブT細胞の集団を、匹敵する数のPBMCを有する患者試料と比較して約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満または約1%未満有する)。
【0162】
一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約50%の改変されたCD4T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約50%の改変されたCD8T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。さらなる実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約60%の改変されたCD4T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約60%の改変されたCD8T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。なおさらなる実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約70%の改変されたCD4T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約70%の改変されたCD8T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約80%の改変されたCD4T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約80%の改変されたCD8T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約85%の改変されたCD4T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約85%の改変されたCD8T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約90%の改変されたCD4T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約90%の改変されたCD8T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。
【0163】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、単位用量は、操作されたCD45RACD3CD8および操作されたCD45RACD3CD4細胞の等しいまたはほぼ等しい数を含む。
【0164】
本明細書において開示されるとおりの融合タンパク質または融合タンパク質を発現する細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む、医薬組成物も企図される。好適な賦形剤は、水、食塩水、デキストロース、グリセロールなど、およびそれらの組合せを含む。実施形態では、本明細書において開示されるとおりの融合タンパク質または宿主細胞を含む組成物は、好適な注入媒体をさらに含む。好適な注入媒体は、任意の等張媒体処方物、通常は生理食塩水であり得、Normosol R(Abbott)またはPlasma-Lyte A(Baxter)、水中の5%デキストロース、乳酸リンゲル液を利用することができる。注入媒体にヒト血清アルブミンまたは他のヒト血清成分が補充されることもある。
【0165】
医薬組成物は、医学技術分野の当業者により決定されるような、処置(または予防)される疾患または状態に適切な方法で、投与することができる。組成物の適切な用量ならびに好適な投与期間および頻度は、患者の健康状態、患者のサイズ(すなわち、体重、量(mass)または体面積)、患者の状態のタイプおよび重症度、タグ化された細胞の望ましくないタイプもしくはレベルもしくは活性、活性成分の特定の形態、ならびに投与方法などの因子によって決定される。一般に、適切な用量および処置レジメンは、治療的および/または予防的恩恵(例えば、臨床成績向上、例えば、より高頻度の完全もしくは部分的寛解、またはより長い無病および/もしくは全生存期間、または症状重症度の低下を含む、本明細書に記載されるもの)をもたらすのに十分な量で、組成物(複数可)を提供する。予防的使用のための用量は、疾患もしくは障害を予防する、疾患もしくは障害の発症を遅延させる、または疾患もしくは障害に関連する疾患重症度を低下させるのに、十分なものであるべきである。本明細書に記載される方法に従って投与される免疫原性組成物の予防的恩恵は、前臨床研究(in vitroおよびin vivoでの動物研究を含む)および臨床研究の実施、ならびにそこから得られるデータの適切な統計的、生物学的および臨床的方法および技法による分析によって決定することができ、前記方法および技法の全てが当業者によって容易に実施され得る。
【0166】
本明細書において企図される処置または予防のある特定の方法は、本明細書に記載の所望のポリヌクレオチドを含む宿主細胞(これは、自己、同種異系または同系であり得る)であって、前記ポリヌクレオチドが細胞の染色体に安定的に組み込まれている宿主細胞を投与するステップを含む。例えば、そのような細胞組成物を、自己、同種異系または同系免疫系細胞(例えば、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー細胞)を使用してex vivoで生成して、融合タンパク質を発現する所望のT細胞組成物を養子免疫治療として対象に投与することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫細胞である。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである。特定の実施形態では、細胞は、CD4T細胞である。特定の実施形態では、細胞は、CD8T細胞である。
【0167】
本明細書で使用される場合、組成物の投与は、送達経路または方法に関係なく、対象への組成物または治療の送達を指す。投与を持続的にまたは間欠的に、および非経口的に果たすことができる。投与は、認識された状態、疾患または病状を有すると既に確認された対象を処置するためであることもあり、あるいはそのような状態、疾患もしくは病状に罹りやすいまたはそのような状態、疾患もしくは病状を発症するリスクがある対象を処置するためであることもある。補助的治療との共投与は、任意の順序および任意の投薬スケジュールでの、複数の薬剤(例えば、融合タンパク質を発現する組換え(すなわち、操作された)宿主細胞と、1または複数のサイトカイン;免疫抑制治療、例えば、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ、またはそれらの任意の組合せ)の同時のおよび/または逐次的な送達を含み得る。
【0168】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組換え宿主細胞の多数の用量が対象に投与され、前記用量は、約2週間~約4週間の投与間隔で投与され得る。
【0169】
なおさらなる実施形態では、処置されている対象は、免疫抑制治療、例えば、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ、またはそれらの任意の組合せをさらに受けている。なおさらなる実施形態では、処置されている対象は、非骨髄破壊的または骨髄破壊的造血細胞移植を受けたことがあり、この処置は、非骨髄破壊的造血細胞移植の少なくとも2カ月~少なくとも3カ月後に投与することができ、移植された細胞に、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するペプチドで、必要に応じてタグを付けることができる。
【0170】
医薬組成物の有効量は、本明細書に記載されるような所望の臨床結果または有益な処置を達成するために、必要な投薬量でかつ必要な期間にわたって、十分な量を指す。有効量を1または複数回の投与で送達することができる。投与が、疾患または病状を有することが既に分かっているまたは確認された対象への投与である場合、用語「治療量」を、処置に関して使用することができ、これに対して「予防有効量」を、疾患もしくは病状(例えば、再発)に罹りやすいまたは疾患もしくは病状を発症するリスクがある対象に有効量を予防的コースとして投与することを記述するために、使用することができる。
【0171】
CTL免疫応答のレベルは、本明細書に記載されるおよび当技術分野において日常的に実施されている非常に多くの免疫学的方法のいずれか1つによって決定することができる。CTL免疫応答のレベルは、例えばT細胞により発現される本明細書に記載される融合タンパク質のいずれか1つの投与の前および後に、決定することができる。CTL活性を決定するための細胞傷害性アッセイは、当技術分野において日常的に実施されているいくつかの技法および方法のいずれか1つを使用して行うことができる(例えば、Henkart et al., "Cytotoxic T-Lymphocytes" in Fundamental Immunology, Paul (ed.) (2003 Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA), pages 1127-50およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0172】
抗原特異的T細胞応答は、観察されるT細胞応答を本明細書に記載されるT細胞の機能的パラメーター(例えば、増殖、サイトカイン放出、CTL活性、変更された細胞表面マーカー表現型など)のいずれかに従って比較することによって、通常は決定され、この比較は、適切な状況で同族抗原(例えば、免疫適合性抗原提示細胞により提示されたときにT細胞をプライミングまたは活性化するために使用される抗原)に曝露されるT細胞と、構造的に異なるまたは無関係の対照抗原の代わりに曝露される同じ供給源の集団からのT細胞との間で行われ得る。統計的有意性をもって、対照抗原に対する応答より大きい、同族抗原に対する応答は、抗原特異性を示す。
【0173】
本明細書に記載のタグ化タンパク質または細胞に対する免疫応答の存在およびレベルを決定するために、生体試料を対象から得ることができる。「生体試料」は、本明細書で使用される場合、血液試料(ここから、血清または血漿を調製することができる)、生検材料、体液(例えば、肺洗浄液、腹水、粘膜洗液、滑液)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養物、または対象もしくは生物学的供給源からの任意の他の組織もしくは細胞調製物であり得る。生体試料をいずれの免疫原性組成物を受ける前の対象から得ることもでき、この生体試料は、ベースライン(すなわち、免疫処置前)データを確立するための対照として有用である。
【0174】
本明細書に記載される医薬組成物は、単位用量または複数用量用容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに入っている状態で提供することができる。そのような容器を凍結して、製剤の安定性を保つことができる。ある特定の実施形態では、単位用量は、本明細書に記載される組換え宿主細胞を約10細胞/m~約1011細胞/mの用量で含む。例えば、非経口もしくは静脈内の投与または製剤を含む、様々の処置レジメンにおける、本明細書に記載される特定の組成物の使用に好適な投薬レジメンおよび処置レジメンの開発。
【0175】
対象組成物が非経口投与される場合、その組成物は、滅菌水性または油性溶液または懸濁液も含み得る。好適な非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒としては、水、リンゲル液、等張塩類溶液、水との混合物での1,3-ブタンジオール、エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール(polythethylene glycol)が挙げられる。水溶液または水性懸濁液は、1つまたは複数の緩衝剤、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたは酒石酸ナトリウムをさらに含むことができる。もちろん、いずれの投薬単位製剤の調製に使用されるいずれの材料も、薬学的に純粋でなければならず、利用される量で実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性化合物を、徐放性調製物および製剤中に組み込むことができる。投薬単位形態は、本明細書で使用される場合、処置される対象にとって単位投薬量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な医薬担体と共同で所望の効果を生じさせるように計算された所定量の組換え細胞または活性化合物を含有し得る。
【0176】
一般に、適切な投薬量および処置レジメンは、治療的または予防的恩恵をもたらすのに十分な量で、活性分子または細胞を提供する。そのような応答は、処置されていない対象と比較して処置された対象において臨床成績向上(例えば、より高頻度の寛解、完全もしくは部分的、またはより長い無病生存期間)を確立することによって、モニタリングすることができる。腫瘍タンパク質に対する既存の免疫応答の増加は、一般に、臨床成績向上と相関する。そのような免疫応答は、標準的な増殖、細胞傷害性またはサイトカインアッセイを使用して、一般に評価することができ、前記アッセイは、当技術分野において日常的であり、処置前および後に対象から得た試料を使用して行うことができる。
【0177】
さらなる態様では、本明細書に記載の(a)宿主細胞、(b)組成物または(c)単位用量を含む、キットが提供される。ある特定の実施形態では、キットは、(1)タグ付き細胞の単位用量と、(2)strepタグペプチドに特異的な融合タンパク質を発現する改変された免疫細胞とを含み、前記strepタグペプチドは、ある特定の実施形態では、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなり得る。言い換えると、キットは、免疫治療、グラフトまたは移植における使用のためのタグ付き細胞、およびモジュレーション(例えば、アブレーション)のためのタグ付き細胞を標的とし得る改変された免疫細胞、両方を、必要に応じて提供することができる。
【0178】
本開示による方法は、併用療法で疾患または障害を処置するために1つまたは複数の追加の薬剤を投与することをさらに含むことができる。例えば、ある特定の実施形態では、併用療法は、融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を免疫チェックポイント阻害剤とともに(併せて、同時に、または逐次的に)投与することを含む。一部の実施形態では、併用療法は、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を刺激性免疫チェックポイント剤のアゴニストとともに投与することを含む。さらなる実施形態では、併用療法は、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を第2の治療、例えば、化学療法剤、放射線治療、外科手術、抗体またはそれらの任意の組合せとともに投与することを含む。
【0179】
本明細書で使用される場合、用語「免疫抑制(immune suppression)剤」または「免疫抑制(immunosuppression)剤」は、免疫応答の制御または抑制を補助するための阻害性シグナルをもたらす1つまたは複数の細胞、タンパク質、分子、化合物または複合体を指す。例えば、免疫抑制剤は、免疫刺激を部分的にもしくは完全に遮断する、免疫活性化を減少、予防もしくは遅延させる、または免疫抑制を増加、活性化もしくは上方調節する分子を含む。標的化する(例えば、免疫チェックポイント阻害剤で)ための例示的な免疫抑制剤としては、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、CTLA4、B7-H3、B7-H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制性サイトカイン(例えば、IL-10、IL-4、IL-1RA、IL-35)、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、Treg細胞、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0180】
免疫抑制剤阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤とも呼ばれる)は、化合物、抗体、抗体断片もしくは融合ポリペプチド(例えば、Fc融合体、例えば、CTLA4-FcもしくはLAG3-Fc)、アンチセンス分子、リボザイムもしくはRNAi分子、または低分子量有機分子であり得る。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、方法は、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を、単独でのまたは任意の組合せでの下記の免疫抑制成分のいずれか1つに対する1つまたは複数の阻害剤とともに、投与することを含み得る。
【0181】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、PD-1阻害剤、例えば、PD-1特異的抗体またはその結合断片、例えば、ピディリズマブ、ニボルマブ(キートルダ、旧名MDX-1106)、ペムブロリズマブ(オプジーボ、旧名MK-3475)、MEDI0680(旧名AMP-514)、AMP-224、BMS-936558、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、PD-L1特異的抗体またはその結合断片、例えば、BMS-936559、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ(RG7446)、アベルマブ(MSB0010718C)、MPDL3280A、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0182】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、LAG3阻害剤、例えば、LAG525、IMP321、IMP701、9H12、BMS-986016、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0183】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、CTLA4の阻害剤と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、CTLA4特異的抗体またはその結合断片、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、CTLA4-Ig融合タンパク質(例えば、アバタセプト、ベラタセプト)、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0184】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、B7-H3特異的抗体またはその結合断片、例えば、エノブリツズマブ(MGA271)、376.96、または両方と組み合わせて使用される。B7-H4抗体結合断片は、例えば、Dangaj et al., Cancer Res.73:4820, 2013に記載されているscFvまたはその融合タンパク質、ならびに米国特許第9,574,000号、PCT特許公開番号WO/201640724A1およびWO2013/025779A1に記載されているものであり得る。
【0185】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、CD244の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0186】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、BLTA、HVEM、CD160の阻害剤、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。抗CD160抗体は、例えばPCT公開番号WO2010/084158に記載されている。
【0187】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、TIM3の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0188】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、Gal9の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0189】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、アデノシンシグナル伝達の阻害剤、例えば、デコイアデノシン受容体と組み合わせて使用される。
【0190】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、A2aRの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0191】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、KIRの阻害剤、例えばリリルマブ(BMS-986015)と組み合わせて使用される。
【0192】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、阻害性サイトカイン(通常は、TGFβ以外のサイトカイン)またはTreg発生もしくは活性の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0193】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、IDO阻害剤、例えば、レボ-1-メチルトリプトファン、エパカドスタット(INCB024360;Liu et al., Blood 115:3520-30, 2010)、エブセレン(Terentis et al., Biochem.49:591-600, 2010)、インドキシモド、NLG919(Mautino et al., American Association for Cancer Research 104th Annual Meeting 2013; Apr 6-10, 2013)、1-メチル-トリプトファン(1-MT)-チラ-パザミン、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0194】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、アルギナーゼ阻害剤、例えば、N(オメガ)-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(L-NAME)、N-オメガ-ヒドロキシ-ノル-l-アルギニン(ノル-NOHA)、L-NOHA、2(S)-アミノ-6-ボロノヘキサン酸(ABH)、S-(2-ボロノエチル)-L-システイン(BEC)、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0195】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、VISTAの阻害剤、例えばCA-170(Curis、Lexington、Mass.)と組み合わせて使用される。
【0196】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、TIGITの阻害剤、例えばCOM902(Compugen、Toronto、Ontario、Canada)など、CD155の阻害剤、例えばCOM701(Compugen)など、または両方と組み合わせて使用される。
【0197】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、PVRIGの阻害剤、PVRL2の阻害剤、または両方と組み合わせて使用される。抗PVRIG抗体は、例えばPCT公開番号WO2016/134333に記載されている。抗PVRL2抗体は、例えばPCT公開番号WO2017/021526に記載されている。
【0198】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)はLAIR1阻害剤と組み合わせて使用される。
【0199】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、CEACAM-1の阻害剤、CEACAM-3の阻害剤、CEACAM-5の阻害剤、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0200】
ある特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、刺激性免疫チェックポイント分子の活性を増加させる(すなわち、アゴニストである)薬剤と組み合わせて使用される。例えば、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を、CD137(4-1BB)アゴニスト(例えば、ウレルマブなど)、CD134(OX-40)アゴニスト(例えば、MEDI6469、MEDI6383、またはMEDI0562など)、レナリドミド、ポマリドミド、CD27アゴニスト(例えば、CDX-1127など)、CD28アゴニスト(例えば、TGN1412、CD80、またはCD86など)、CD40アゴニスト(例えば、CP-870,893、rhuCD40L、またはSGN-40など)、CD122アゴニスト(例えば、IL-2など)、GITRのアゴニスト(例えば、PCT特許公開番号WO2016/054638に記載されているヒト化モノクローナル抗体など)、ICOS(CD278)のアゴニスト(例えば、GSK3359609、mAb 88.2、JTX-2011、Icos 145-1、Icos 314-8など、またはそれらの任意の組合せ)と組み合わせて使用することができる。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、方法は、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を、単独でのまたは任意の組合せでの上述のいずれかを含む、刺激性免疫チェックポイント分子についての1つまたは複数のアゴニストとともに投与することを含み得る。
【0201】
ある特定の実施形態では、併用療法は、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)と、非炎症型固形腫瘍により発現されるがん抗原に特異的である抗体もしくはその抗原結合断片、放射線処置、外科手術、化学療法剤、サイトカイン、RNAiのうちの1つもしくは複数、またはそれらの任意の組合せを含む、第2の治療とを含む。
【0202】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、融合タンパク質を投与すること、および放射線処置または外科手術をさらに施すことを含む。放射線治療は、当技術分野において周知であり、X線治療、例えばガンマ線照射、および放射性医薬品治療を含む。対象における所与のがんまたは非炎症型固形腫瘍の処置に適切な外科手術および外科的技法は、当業者には周知である。
【0203】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を投与すること、および化学療法剤をさらに投与することを含む。化学療法剤は、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA傷害剤、代謝拮抗薬(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、および糖修飾類似体)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例えば、挿入剤)、およびDNA修復阻害剤を含むが、これらに限定されない。実例となる化学療法剤は、これらに限定されないが、以下の群を含む:代謝拮抗薬/抗がん剤、例えば、ピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストおよび関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));抗増殖性/抗有糸分裂剤、これには、天然産物、例えば、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、微小管破壊剤、例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミン、オキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テモゾロミド(temozolamide)、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびエトポシド(VP16))が含まれる;抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン;酵素(L-アスパラギンを全身代謝させ、独自のアスパラギンを合成する能力がない細胞を欠乏させる、L-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トリアゼン(trazene)-ダカルバジン(dacarbazinine)(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗薬、例えば、葉酸類似体(メトトレキサート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;分泌抑制剤(ブレフェルジン(breveldin));免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP470、ゲニステイン)および成長因子阻害剤(血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、テニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT-11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾン、およびプレニゾロン(prenisolone));成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤、毒素、例えば、コレラ毒素、リシン、Pseudomonas外毒素、Bordetella pertussisアデニル酸シクラーゼ毒素、またはジフテリア毒素、およびカスパーゼ活性化因子;ならびにクロマチン破壊剤。
【0204】
サイトカインは、抗がん活性に対する宿主免疫応答を操作するために使用されることが増えている。例えば、Floros & Tarhini, Semin.Oncol.42(4):539-548, 2015を参照されたい。免疫抗がんまたは抗腫瘍応答の促進に有用なサイトカインとしては、例えば、単独での、または本開示の結合タンパク質もしくは結合タンパク質を発現する細胞との任意の組合せでの、IFN-α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-24、およびGM-CSFが挙げられる。
【0205】
なおさらなる態様では、本開示の融合タンパク質をその細胞表面に発現するように改変された免疫細胞(すなわち、宿主細胞)を活性化または刺激するための方法であって、前記改変された免疫細胞を、前記改変された免疫細胞を活性化するのに十分な条件下で、前記改変された免疫細胞を活性化するのに十分な時間、strepタグペプチド(これは、一部の実施形態では、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる)と接触させることを含む方法が、提供される。ある特定の実施形態では、strepタグペプチドは、細胞の表面に位置する。ある特定の実施形態では、strepタグペプチドは、細胞表面タンパク質、例えば、細胞表面受容体またはマーカーに含有される。さらなる実施形態では、細胞表面受容体は、CARまたはTCRを含む。特定の実施形態では、細胞表面タンパク質は、1~約5つのstrepタグペプチド(例えば、1、2、3、4、5または6つのstrepタグペプチド)を含む。
【0206】
追加の態様では、改変された免疫細胞を活性化または刺激するための方法であって、前記改変された免疫細胞を、前記改変された免疫細胞の細胞表面のstrepタグペプチドと特異的に結合する結合タンパク質と接触させることによって、前記改変された免疫細胞を活性化または刺激することを含む方法が提供され、前記改変された免疫細胞は、(a)strepタグペプチドを含有する細胞表面受容体を必要に応じてコードする、細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドであって、前記細胞表面受容体が標的抗原と特異的に結合する、第1のポリヌクレオチドと、(b)タグペプチドを含有する細胞表面マーカーを必要に応じてコードする、細胞表面マーカーをコードする第2のポリヌクレオチドであって、コードされたstrepタグペプチドが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を必要に応じて含むかまたは配列番号19に示されるアミノ酸配列から必要に応じてなる、第2のポリヌクレオチドとを含み、ただし、前記細胞表面受容体および前記細胞表面マーカーの少なくとも一方は、前記strepタグペプチドを含有する。実例として、改変された免疫細胞を活性化または刺激する例は、(a)配列番号19のstrepタグペプチド(例えば、CARとの融合体として、またはEGFRtなどの形質導入マーカーとの融合体として発現される)をその細胞表面に発現する抗CD19 CAR T細胞を、(b)前記strepタグペプチドと特異的に結合する結合タンパク質(例えば、必要に応じて融合タンパク質に含まれている、抗体またはその抗原結合断片)と接触させることを含む。
【0207】
ある特定の実施形態では、細胞表面受容体は、タグペプチドを含む。さらなる実施形態では、細胞表面受容体は、CARまたはTCRを含む。他の実施形態では、細胞表面マーカーは、タグペプチドを含む。ある特定の実施形態では、細胞表面受容体と細胞表面マーカーの両方が、strepタグペプチドを含む。
【0208】
ある特定の実施形態では、活性化または刺激される改変された宿主細胞は、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、またはNK-T細胞)を含む。ある特定の実施形態では、細胞表面受容体は、CARもしくはTCRである、またはCARもしくはTCRを含む。さらなる実施形態では、マーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む。特定の実施形態では、改変された免疫細胞は、複数回、活性化または刺激され、in vitro、ex vivoまたはin vivoで、活性化または刺激され得る。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
(a)strepタグペプチドと特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外成分;
(b)エフェクタードメインまたはその機能的部分を含む細胞内成分;および
(c)前記細胞外成分と前記細胞内成分を接続する膜貫通ドメイン
を含む、融合タンパク質。
(項目2)
前記結合ドメインが、scFv、scTCR、またはリガンドである、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目3)
前記結合ドメインが、キメラ、ヒトであるか、またはヒト化されている、項目1または2に記載の融合タンパク質。
(項目4)
前記strepタグペプチドが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記結合ドメインが、5G2抗体、3E8抗体または4E2抗体からのCDRを含むscFvである、項目1~4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目6)
前記scFvが、5G2抗体、3E8抗体または4E2抗体に基づく重鎖および軽鎖可変領域を含む、項目5に記載の融合タンパク質。
(項目7)
前記scFvが、配列番号10、3または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域(V)、および配列番号8、2または14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である重鎖可変領域(V)を含む、項目6に記載の融合タンパク質。
(項目8)
前記scFvが、配列番号10、3もしくは16に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号10、3もしくは16に示されるアミノ酸配列からなるV、および配列番号8、2もしくは14に示されるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8、2もしくは14に示されるアミノ酸配列からなるVを含む、項目6に記載の融合タンパク質。
(項目9)
前記scFvが、
(a)配列番号10のVおよび配列番号8のV
(b)配列番号3のVおよび配列番号2のV、または
(c)配列番号16のVおよび配列番号14のV
を含む、項目7または8に記載の融合タンパク質。
(項目10)
前記scFvが、配列番号11もしくは12に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号11もしくは12に示されるアミノ酸配列からなる、項目9に記載の融合タンパク質。
(項目11)
前記scFvが、配列番号5もしくは6に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号5もしくは6に示されるアミノ酸配列からなる、項目9に記載の融合タンパク質。
(項目12)
前記scFvが、配列番号17もしくは18に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号17もしくは18に示されるアミノ酸配列からなる、項目9に記載の融合タンパク質。
(項目13)
前記細胞内成分またはその機能的部分が、細胞内チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目14)
前記エフェクタードメインが、CD3ζまたはその機能的部分を含む、項目1~13に記載の融合タンパク質。
(項目15)
前記細胞内成分またはその前記機能的部分が、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)またはそれらの組合せから選択される、共刺激ドメインまたはその機能的部分をさらに含む、項目1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目16)
前記細胞内成分が、CD28共刺激ドメインもしくはその機能的部分、4-1BB共刺激ドメインもしくはその機能的部分、またはCD28共刺激ドメインもしくはその機能的部分と4-1BB共刺激ドメインもしくはその機能的部分の両方をさらに含む、項目15に記載の融合タンパク質。
(項目17)
前記膜貫通ドメインが、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD27膜貫通ドメイン、またはCD28膜貫通ドメインを含む、項目1~16のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目18)
前記細胞外成分が、前記結合ドメインと前記膜貫通ドメインの間に配置されたリンカーをさらに含む、項目1~17のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目19)
前記リンカーが、免疫グロブリン定常領域またはその一部分を含む、項目18に記載の融合タンパク質。
(項目20)
前記免疫グロブリン定常領域またはその一部分が、CH3ドメイン、CH2ドメイン、または両方を含む、項目19に記載の融合タンパク質。
(項目21)
前記リンカーが、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目18~20のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目22)
前記CH2ドメインおよび前記CH3ドメインが、各々、同じアイソタイプである、項目21に記載の融合タンパク質。
(項目23)
前記CH2ドメインおよび前記CH3ドメインが、各々、異なるアイソタイプである、項目21に記載の融合タンパク質。
(項目24)
前記CH2ドメインおよび前記CH3ドメインが、IgG4またはIgG1アイソタイプである、項目20~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目25)
前記CH2ドメインが、N297Q変異を含む、項目20~24のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目26)
前記免疫グロブリン定常領域またはその一部分が、ヒト免疫グロブリン定常領域またはその一部分を含む、項目19~25のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目27)
前記リンカーが、ヒンジ領域およびその一部分を含む、項目18~26のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目28)
前記リンカーが、免疫グロブリン定常領域またはその一部分、およびヒンジ領域またはその一部分を含む、項目18~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目29)
前記リンカーが、配列番号20、21もしくは49に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号20、21もしくは49に示されるアミノ酸配列からなるグリシン-セリンリンカーを含む、項目28に記載の融合タンパク質。
(項目30)
前記細胞外成分が、タンパク質タグをさらに含み、ただし、前記タンパク質タグが、strepタグペプチドを含まない、項目1~29のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目31)
前記タンパク質タグが、Mycタグ、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、HAタグ、Nusタグ、Sタグ、Xタグ、SBPタグ、Softag、V5タグ、CBP、GST、MBP、GFP、チオレドキシンタグ、またはそれらの任意の組合せである、項目30に記載の融合タンパク質。
(項目32)
前記細胞外成分、前記結合ドメイン、前記リンカー、前記膜貫通ドメイン、前記細胞内成分、および前記共刺激ドメインのうちの1つまたは複数が、接合部アミノ酸を含む、項目1~31のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目33)
項目1~32のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
(項目34)
マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、項目33に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目35)
前記マーカーをコードするポリヌクレオチドが、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’側に位置するか、または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’側に位置する、項目34に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目36)
前記コードされたマーカーが、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む、項目34または35に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目37)
自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、前記細胞内成分をコードするポリヌクレオチドと前記マーカーをコードするポリヌクレオチドの間に位置する、項目34~36のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目38)
前記コードされた自己切断ポリペプチドが、ブタテッショウイルス-1 2Aペプチド(P2A)、ゾセア・アシグナウイルス2Aペプチド(T2A)、ウマ鼻炎Aウイルス2Aペプチド(E2A)、または口蹄疫ウイルス2Aペプチド(F2A)である、項目37に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目39)
前記ポリヌクレオチドが、前記ポリヌクレオチドを含有する宿主細胞のためにコドン最適化される、項目33~38のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目40)
細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチド、タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチド、および前記細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドと前記タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチドの間に配置された自己切断ポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチドを含む、キメラポリヌクレオチドであって、
(1)前記細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドが、
(a)標的抗原に特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外成分、
(b)エフェクタードメインまたはその機能的部分を含む細胞内成分、および
(c)前記細胞外成分と前記細胞内成分を接続する膜貫通成分
を含み、
(2)前記タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチドが、タグペプチドを含有するマーカーをコードするポリヌクレオチドを含み、前記コードされたタグペプチドが、strepタグペプチドを含む、
キメラポリヌクレオチド。
(項目41)
コードされたstrepタグペプチドが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる、項目40に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目42)
前記コードされたマーカーが、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む、項目40または41に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目43)
前記細胞外成分のコードされた結合ドメインが、過剰増殖性疾患に関連する標的抗原と特異的に結合する、項目40~42のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目44)
前記過剰増殖性疾患が、がんである、項目43に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目45)
前記標的抗原が、CD19抗原、CD20抗原、CD22抗原、ROR1抗原、EGFR抗原、EGFRvIII抗原、EGP-2抗原、EGP-40抗原、GD2抗原、GD3抗原、HPV E6抗原、HPV E7抗原、Her2抗原、L1-CAM抗原、Lewis A抗原、Lewis Y抗原、MUC1抗原、MUC16抗原、PSCA抗原、PSMA抗原、CD56抗原、CD23抗原、CD24抗原、CD30抗原、CD33抗原、CD37抗原、CD44v7/8抗原、CD38抗原、CD56抗原、CD123抗原、CA125抗原、c-MET抗原、FcRH5抗原、WT1抗原、葉酸受容体α抗原、VEGF-α抗原、VEGFR1抗原、VEGFR2抗原、IL-13Rα2抗原、IL-11Rα抗原、MAGE-A1抗原、MAGE-A3抗原、MAGE-A4抗原、SSX-2抗原、PRAME抗原、HA-1抗原、PSA抗原、エフリンA2抗原、エフリンB2抗原、NKG2D抗原、NY-ESO-1抗原、TAG-72抗原、メソテリン抗原、5T4抗原、BCMA抗原、FAP抗原、炭酸脱水酵素9抗原、ERBB2抗原、BRAFV600E抗原、またはCEA抗原から選択される、項目43または44に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目46)
前記コードされた細胞表面受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む、項目40~45のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目47)
前記コードされた自己切断ポリペプチドが、P2A、T2A、E2AまたはF2Aである、項目40~46のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目48)
5’末端から3’末端へ、
(a)(前記細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチド)-(自己切断ポリペプチドをコードする前記第3のポリヌクレオチド)-(前記タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチド)、または
(b)(前記タグ付きマーカーをコードする第2のポリヌクレオチド)-(自己切断ポリペプチドをコードする前記第3のポリヌクレオチド)-(前記細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチド)
の構造を含む、項目40~47のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
(項目49)
発現制御配列に作動可能に連結された、項目33~39のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または項目40~48のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチドを含む、発現構築物。
(項目50)
項目49に記載の発現構築物を含むベクター。
(項目51)
プラスミドベクターまたはウイルスベクターを含む、項目50に記載のベクター。
(項目52)
ウイルスベクターであり、前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはγ-レトロウイルスベクターから選択される、項目51に記載のベクター。
(項目53)
(a)項目33~39のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または項目49に記載の融合タンパク質をコードする発現構築物を含み、前記コードされた融合タンパク質を発現する宿主細胞、または
(b)項目40~48のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド、または項目49に記載のキメラポリヌクレオチド発現構築物を含み、前記コードされた細胞表面受容体およびコードされたタグ付きマーカーを発現する宿主細胞。
(項目54)
免疫細胞である、項目53に記載の宿主細胞。
(項目55)
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、またはNK-T細胞である、項目54に記載の宿主細胞。
(項目56)
免疫系細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである、項目54または55に記載の宿主。
(項目57)
PD-1遺伝子、LAG3遺伝子、TIM3遺伝子、CTLA4遺伝子、HLA成分遺伝子、TCR成分遺伝子またはそれらの任意の組合せの染色体遺伝子ノックアウトを含む、項目53~55のいずれか一項に記載の宿主細胞。
(項目58)
項目1~32のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とを含む、組成物。
(項目59)
項目53~57のいずれか一項に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とを含む、組成物。
(項目60)
項目53~57のいずれか一項に記載の宿主細胞の治療有効量または項目58に記載の宿主細胞組成物の治療有効量を含む、単位用量。
(項目61)
項目1~32のいずれか一項に記載の融合タンパク質をその表面に発現するように改変された免疫細胞を活性化または刺激する方法であって、前記改変された免疫細胞を、前記改変された免疫細胞を活性化するのに十分な条件下で、前記改変された免疫細胞を活性化するのに十分な時間、strepタグペプチドと接触させることを含む方法。
(項目62)
前記strepタグペプチドが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記strepタグペプチドが、細胞表面タンパク質に含有される、項目61または62に記載の方法。
(項目64)
前記細胞表面タンパク質が、1~約5つのstrepタグペプチドを含む、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記細胞表面タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、またはマーカーを含む、項目61~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記改変された免疫細胞が、複数回、活性化または刺激される、項目61~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
改変された免疫細胞を活性化または刺激する方法であって、前記改変された免疫細胞を、前記改変された免疫細胞の細胞表面のstrepタグペプチドと特異的に結合する結合タンパク質と接触させることによって、前記改変された免疫細胞を活性化または刺激することを含み、前記改変された免疫細胞が、
(a)前記strepタグペプチドを含有する細胞表面受容体を必要に応じてコードする、細胞表面受容体をコードする第1のポリヌクレオチドであって、前記細胞表面受容体が、標的抗原と特異的に結合する、第1のポリヌクレオチドと、
(b)前記strepタグペプチドを含有する細胞表面マーカーを必要に応じてコードする、細胞表面マーカーをコードする第2のポリヌクレオチドと
を含み、ただし、前記細胞表面受容体および前記細胞表面マーカーの少なくとも一方が、前記タグペプチドを含有する、方法。
(項目68)
前記strepタグペプチドが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記細胞表面受容体が、前記strepタグペプチドを含む、項目67または68に記載の方法。
(項目70)
前記細胞表面受容体が、CARまたはTCRを含む、項目67~69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記細胞表面マーカーが、前記strepタグペプチドを含む、項目67~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記細胞表面マーカーが、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む、項目67~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、またはNK-T細胞である、項目67~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記細胞表面受容体および/または前記細胞表面マーカーが、1~約5つのタグペプチドを含む、項目67~73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記改変された免疫細胞が、複数回、活性化または刺激される、項目67~74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
タグ付き細胞の標的アブレーションのための方法であって、strepタグペプチドを含む細胞表面タンパク質を発現するタグ付き細胞を事前に投与しておいた対象に、項目1~32のいずれか一項に記載の融合タンパク質をその細胞表面に発現するように改変された免疫細胞を投与することによって、前記タグ付き細胞をアブレーションする標的化免疫応答を誘導することを含む方法。
(項目77)
前記strepタグペプチドが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記細胞表面タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、および/またはマーカーを含む、項目76または77に記載の方法。
(項目79)
前記マーカーが、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む、項目76~78のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、またはNK-T細胞から選択される、項目76~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目81)
前記免疫細胞が、T細胞である、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記免疫系細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記タグ付き細胞が、前記対象に細胞免疫治療、グラフトまたは移植として事前に投与された、項目76~82のいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
前記改変された免疫細胞を前記対象に投与した後、
(i)前記対象体内に、または前記対象から採取された試料中に残存する前記タグ付き細胞、
(ii)前記対象体内に、または前記対象から採取された試料中に存在する前記改変された免疫細胞、
(iii)前記対象体内の1つもしくは複数のサイトカイン、または
(iv)それらの任意の組合せ
の存在を検出することおよび/またはその量を測定することをさらに含む、項目76~83のいずれか一項に記載の方法。
(項目85)
前記融合タンパク質を発現する前記改変された免疫細胞が、前記タグ付き細胞の存在に関連する少なくとも1つの有害事象を有する前記対象に投与される、項目76~84のいずれか一項に記載の方法。
(項目86)
前記タグ付き細胞、および/または前記融合タンパク質を発現する前記改変された免疫細胞が、前記対象にとって同種異系、自己または同系である、項目76~85のいずれか一項に記載の方法。
(項目87)
前記対象が、移植片対宿主病(GvHD)もしくは宿主対移植片病(HvGD)を有するかまたは有する疑いがある、項目76~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目88)
前記対象がヒトである、項目76~87のいずれか一項に記載の方法。
(項目89)
(a)項目50~52のいずれか一項に記載のベクター、または項目49に記載の発現構築物と、
(b)宿主細胞に(a)の前記ベクターまたは前記発現構築物で形質導入するための試薬と
を含む、キット。
(項目90)
(a)項目53~57のいずれか一項に記載の宿主細胞、および/または
(b)項目58もしくは59に記載の組成物、および/または
(c)項目59に記載の単位用量
を含む、キット。
(項目91)
前記結合ドメインが、
(a)配列番号22、28もしくは34、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号22、28もしくは34のバリアントのいずれか1つで示される重鎖CDR1アミノ酸配列と、
(b)配列番号23、29もしくは35、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号23、29もしくは35のバリアントのいずれか1つで示される重鎖CDR2アミノ酸配列と、
(c)配列番号24、30もしくは36、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号24、30もしくは36のバリアントのいずれか1つで示される重鎖CDR3アミノ酸配列と
を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(項目92)
前記結合ドメインが、
(a)配列番号25、31もしくは37、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号25、31もしくは37のバリアントのいずれか1つで示される軽鎖CDR1アミノ酸配列と、
(b)配列番号26、32もしくは38、または1~2つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号26、32もしくは38のバリアントのいずれか1つで示される軽鎖CDR2アミノ酸配列と、
(c)配列番号27、33もしくは39、または1~3つのアミノ酸置換および/または欠失を有する配列番号27、33もしくは39のバリアントのいずれか1つで示される軽鎖CDR3アミノ酸配列と
を含む、項目1~5または91のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【実施例0209】
(実施例1)
抗STIICARおよびSTIIタグ付きCARの設計および発現
養子免疫治療において使用するためのタグ付きCARは、PCT公開公報WO2015/095895に記載されている。そのようなCARを発現する細胞が選択的にアブレーションの標的にされ得るかどうかを調査するために、抗CD19-STII CAR(配列番号19)(タグ付きCAR)をコードする発現構築物および抗STII CARをコードする発現構築物を生成した。例示的構築物を図1(左上および左下)に示し、コードされたCARを発現する細胞の概略図を右に示す。
【0210】
マウス抗STIIモノクローナル抗体5G2および3E8に由来するscFv(VH-VLおよびVL-VH配向;配列番号5、6、11および12)を使用して、追加の抗STII CARを産生した。scFv配列を、中等度の長さの(IgG4 CH3のみ)または長い(IgG4CH2N297QCH3)免疫グロブリンスペーサードメインを有する4-1BB-CD3ζ CARベクターにサブクローニングして、図2に示すCAR設計を生じさせた。
【0211】
次に、初代PBMCに、図1に示すCAR構築物で形質導入し、発現アッセイを行った。手短に述べると、細胞をフローサイトメトリーにより分析し、ビオチン化抗EGFR抗体およびストレプトアビジンPEを使用してEGFRt形質導入マーカーを検出した。抗CD19-STII CARと抗STII CARの両方が、確固たる発現を示した(図3;「B」および「C」)。追加の高親和性抗STII CARも、初代PBMCにおいて発現された(図4B)。
【0212】
(実施例2)
抗STII CAR T細胞の機能的特徴付け
次に、図2に示す抗STII CAR構築物を、STIIタグ付きCAR T細胞の認識について試験した。手短に述べると、ヒトT細胞に抗STII CAR構築物で形質導入し、抗CD19-STII CAR T細胞(抗CD19 CARに含有されている1、2もしくは3つのSTIIペプチドタグ)とともに、または対照抗CD19 CAR T細胞(STIIなし)とともに、インキュベートした。PMA/イオノマイシンで刺激したT細胞を陽性対照として使用した。24時間の時点で、培養上清をELISAによりIFN-γについて検査した。図5Aに示すように、抗STII CAR T細胞の全てが、標的CAR T細胞に応答してサイトカインを産生した。5G2 scFv結合ドメインを有する抗STII CAR T細胞は、サイトカインの最大量を産生したが、3E8に基づくCAR T細胞は、より少ない量を産生した。反応性は、標的中に存在するSTIIペプチドの数に伴って増加するように見えた。
【0213】
増殖アッセイを行って、タグ付き標的細胞に応答しての抗STII CAR T細胞の拡大を調査した。抗STII CAR T細胞にカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルで標識し、対照抗CD19 CAR T細胞(STIIなし)または抗CD19-STII CAR T細胞で刺激した。刺激の3日後に細胞をフローサイトメトリーにより分析した。結果を図5Bに示す。試験した全ての抗STII CAR T細胞は、刺激に応答して増殖し、5G2に基づく抗STII CAR T細胞のほうが3E8に基づく抗STII CAR T細胞よりも拡大した。
【0214】
(実施例3)
抗STII CAR T細胞のin vitro細胞溶解活性
in vitro細胞傷害性アッセイを行って、抗STII CAR T細胞の特異的殺滅活性を測定した。1つの実験では、Cr51標識標的細胞(対照抗CD19 CAR T;抗CD19-1STII;抗CD19-3STII)を、抗STII CAR T細胞と、様々なエフェクター:標的比(30:1、10:1、3:1、1:1)で共培養(4時間)した。その後、標準式を使用してクロム放出により特異的溶解を決定した。データを図6A~6Cに示す。試験した抗STII CAR T細胞の全てに、標的細胞に対する細胞溶解活性があり、5G2に基づく細胞に最も強い活性があった。注目すべきことに、5G2に基づく抗STII CAR T細胞は、1:1のE:Tで、抗CD19-3STII細胞のおおよそ40%を溶解した。
【0215】
別の実験では、抗STII CAR T細胞(抗CD19-STII CAR T細胞に対する)および抗CD19-STII CAR T細胞(CD19K562細胞に対する)の殺滅活性を試験した。手短に述べると、PBMCを抗CD3/抗CD28刺激試薬で2日間刺激し、その後、CAR構築物でのγ-レトロウイルス形質導入を行った。ELISAによるユーロピウムTDA放出アッセイ(Perkin Elmer)を製造業者の説明書に従って使用して、特異的溶解(Y軸)を測定した。図7に示すように、CAR T細胞の両方の群が、用量依存的な形でそれらのそれぞれの標的に対する殺滅活性を示した。第3の実験では、抗STII(エフェクター)および抗CD19-STII CAR発現細胞(標的)のより長い共インキュベーション後に殺滅活性を測定した。PBMCを抗CD3/抗CD28で2日間刺激し、初代細胞に抗STII CAR構築物で形質導入した。抗CD19-STII CARを発現するHEK293細胞を標的として使用した。細胞を20時間、共インキュベートし、xCELLIGENCE RTCAアッセイ(ACEA Biosciences,Inc.、San Diego、CA)を使用してインピーダンスによって標的細胞の溶解を測定した。抗STII CAR T細胞の殺滅能力は、時間依存的なおよび用量依存的な形で増加した(図8)。
【0216】
(実施例4)
in vivo動物研究のための抗STII CARの構築および試験
実施例3に記載したin vitroでの結果が、ヒトへの応用のための治療の情報をもたらすものであるかどうかを判定するには、in vivo動物研究が必要である。このために、マウスモデルに投与したときの免疫原性のリスクを低下させるためにマウス成分を使用して抗STII CARを生成した。手短に述べると、マウス膜貫通および細胞内成分と(1)マウスIgG1 CH3ドメイン(中等度のスペーサー)または(2)単一Mycタグ+GSリンカー(短いスペーサー)のどちらかからなるスペーサーとを有するCAR構築物に、5G2 scFv(V-V立体配置)をサブクローニングした。例示的CAR設計を図9に示す。
【0217】
次に、マウスT細胞に、図9に示す抗STII CARを発現するように形質導入した。構築物によりコードされたものでもある2Myc-EGFRt形質導入マーカーについての染色により、CAR発現を判定した。抗STIIマウスCAR T細胞を、mCD19-STII CAR T細胞(CARスペーサー領域に含有されている、もしくは共発現される短縮型EGFRに融合されている、どちらかの、STIIの1つのコピーを有する)とともに、または陰性対照細胞(抗CD19 CAR T、STIIなし)とともに、インキュベートした。非処置およびPMA/イオノマイシン処置T細胞を陽性対照として使用した。サイトカイン産生(IFN-γ、図10A;IL-2、図10B)を24時間の時点で測定した。これらのデータは、抗STII CARが、細胞表面STIIを(CARの一部として、またはEGFRt/STII融合体で、どちらかで)発現する細胞に、マウスT細胞の特異性を向け直したことを示す。
【0218】
(実施例5)
抗STII CAR T細胞を使用するタグ付きCAR T副作用の低減
次に、STIIタグ付きCAR T細胞をin vivoで排除し、それによってタグ付きCAR T細胞からの副作用を低減させる、抗STII CAR T細胞の能力(この場合は、照射およびタグ付き抗CD19 CAR T細胞での処置後にB細胞無形成症からの回復を可能にすること)を、マウスモデルを使用して調査した。先ず、CARの細胞表面発現を検査した。手短に述べると、CAR発現構築物で形質導入したCD45.1マウスT細胞を、マウス抗CD19、抗CD45.1、抗EGFR、抗STIIおよび抗Mycモノクローナル抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。細胞表面発現が全てのCARについて確認された(図11A)。次いで、図11Bに示す処置スケジュールに従って、細胞をCD45.2C57/Bl6マウスに注射した。手短に述べると、全てのマウスに、6Gy全身照射(TBI)を0日目に、2Gy(TBI)を+27日目に施して、B細胞計数値を低下させた。非処置マウスには、照射のみを施し、CAR T細胞を施さなかった。対照マウスには、抗CD19-1STII CAR T細胞を施したが(+0日目)、抗STII CAR T細胞を施さなかった。試験マウスに、0日目に、5×10のCD45.1マウス抗CD19-STII-CD28ζEGFRt脾細胞を投与した。+28日目に、試験マウスに、短い(1つのMycタグ)スペーサーを有する抗STII CAR(処置「第1群」)または中等度の長さの(CH3)スペーサーを有する抗STII CAR(処置「第2群」)を発現する1×10のCD45.1マウスT細胞を輸注した。処置スケジュール全体を通してフローサイトメトリーによりPBMC中のTおよびB細胞計数値をモニタリングした。
【0219】
第1群からのデータを、図11Cおよび11Dに示す。手短に述べると、抗CD19-1STII CAR T細胞の頻度、および抗STII CAR T細胞の頻度を、抗STII CAR T細胞の注入後28、31、42、56および70日目にモニタリングした。図11Cに示すように、Mycタグスペーサーを有する抗STII細胞は、in vivoで有効に移入され、抗CD19-STII細胞をある程度排除した。B細胞計数値もフローサイトメトリーにより(抗STII CAR T細胞の注入後+31および+42日目に)測定した。図11Dは、短い(Mycタグ)スペーサーを有する抗STII CARを発現するT細胞での処置がマウスにおけるB細胞無形成症を好転させなかったことを示す。
【0220】
第2群からのデータを、図11Eおよび11Fに示す。PBMC中の抗CD19-1STII CAR T細胞および抗STII CAR T細胞の頻度を、抗STII CAR T細胞の注入後28、31、42、56および70日目にモニタリングした。図11Eに示すように、Mycタグスペーサーを有する抗STII細胞は、in vivoで有効に移入され、抗CD19-STII細胞を排除した。B細胞計数値もフローサイトメトリーにより(抗STII CAR T細胞の注入後+31および+42日目に)測定した。図11Fは、中等度のスペーサーを有する抗STII CARを発現するT細胞での処置が、マウスにおけるB細胞無形成症を有効に好転させたことを示す(下方左側パネル)。実験的処置スケジュールからのB細胞回復データを図11Gに要約する。
【0221】
図12Aに示される第2の実験的処置では、C57/Bl6マウスに上で説明したように亜致死線量の照射を施し、その後、+0日目に、1×10のマウスCD45.1抗CD19-3STII-28z CAR T細胞を輸注して、B細胞無形成症を誘導した。35日目に、マウスに、1.5×10のOT-1 CD45.1/2抗STII CAR T細胞を施し、その後、113日目に2.5×10のOT-1 CD90.1抗STII CAR T細胞を施した。全体を通して、フローサイトメトリーによりB細胞計数値をモニタリングした。図12Bは、注入前の、抗CD19-3STII-28z CAR T細胞の発現(左)および精製抗STII CAR T細胞のソーティング(右)を示す。初回抗STII CAR T細胞移入後にCAR T細胞計数値をモニタリングし、これは、抗CD19 CAR T細胞計数値の持続的減少を示した(図15A)。内在性B細胞計数値もモニタリングし、未処置(「neg」)マウスに対して処置(「試料」)マウスにおける顕著な回復を示した(図15B)。
【0222】
内在性B細胞の枯渇を、マウスへの照射および抗CD19-3STII CAR T細胞注入後、しかし抗STII CAR T細胞の移入前に確認した。手短に述べると、PBMCを生存リンパ球にゲートしてフローサイトメトリーにより分析した(図13A)。次いで、ゲートした細胞を、CD19PEを使用してフローサイトメトリーにより(13B~13H)、または抗PE磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して(図13I)、CD19発現について分析した。図14~16Dに示されるように、抗STII CAR T細胞の注入は、内在性B細胞の回復を可能にした(「試料」データを参照されたい)。注目すべきことに、一次組織からのエンドポイント分析は、CAR T細胞および回復したB細胞の大部分が、脾臓に存在し、それより低い程度ではあるがリンパ節に存在することを示した(図16A~16D)。
【0223】
(実施例6)
抗原特異的T細胞におけるSTIIおよびCARの発現の脱共役
前の実施例で使用したタグ付きCAR T細胞は、CAR分子の一部としてSTIIを発現した。しかし、抗タグCAR T細胞による認識のために有効に提示されるタグペプチドの能力は、タグの発現部位による影響を受ける可能性がある。このことを試験するために、抗CD19 CARの発現をSTIIタグの発現から脱共役するように発現構築物を設計した。具体的には、STIIをコードする配列を、EGFRtをコードする配列の3’末端に融合させた。CARおよびEGFRt:STIIコード領域は、自己切断ペプチド配列により分離されており、したがって、コードされたCARおよびEGFRt:STIIタンパク質は、別々の分子として細胞膜に局在する。図17Bおよび17E。
【0224】
2つの発現構築物(抗CD19-3STII-28z_EGFRtおよび抗CD19-28z_E-3STII)を、図18Aに図示する実験でマウスにおける発現および活性について試験した。手短に述べると、マウスに亜致死線量の照射を施し、その後、どちらかの構築物で形質導入した2×10のC57/Bl6 CD90.1+/-T細胞を施した。フローサイトメトリー分析は、CARおよびSTII発現が脱共役された細胞(抗CD19-28z_E-3STII)のほうが、CARの一部としてSTIIを発現する細胞よりも効率的に拡大することを示した。図18B。どちらかの構築物を発現するCAR T細胞での処置は、内在性B細胞計数値を低減させた。図19
【0225】
STIIおよびCAR発現の、脱共役の抗STII CAR T細胞による認識に対する効果を検査した。マウスに亜致死線量の照射を施し、その後、0日目に、どちらかのCAR-STII構築物で形質導入した2×10のC57/Bl6 CD90.1+/-T細胞を注射した。+40日目に、マウスに2.5×10のCD45.1+/-抗STII細胞を注入した。図20A。3つのCAR T細胞型の発現が確認された(図20B)。B細胞計数値を、抗STII CAR T細胞の注射後+6および+35日目にフローサイトメトリーにより分析した(それぞれ、図21A~21Bおよび22A~22B)。驚くべきことに、内在性B細胞の回復は、抗CD19-28z_E-3STII CAR T細胞を施したマウスにおいて、より高度であった。これは、STIIの抗CD19 CARからの脱共役が、抗STII CAR T細胞による認識および殺滅を改善することを示唆する。
【0226】
エンドポイント分析は、回復したB細胞が、分析した全ての一次組織に存在したことを示し、抗STII CAR T細胞計数値が、タグ付き抗CD19 CAR T細胞のものより高いことも示した。図23Aおよび23B。理論により拘束されることを望まないが、これらのデータは、タグおよび抗原特異的受容体が細胞表面に別々の分子として発現されたとき、タグ付き抗原特異的T細胞が、より有効に抗タグCAR T細胞による標的にされ得ることを示唆する。
【0227】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を得ることができる。本明細書において言及する、および/または米国特許仮出願第62/555,012号に収載されている、および/または出願データシートに収載する、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公表文献の全ては、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。様々な特許、出願および公表文献の概念を利用するために必要に応じて実施形態の態様を修飾して、なおさらなる実施形態を得ることができる。
【0228】
上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、下記の特許請求の範囲において使用する用語は、本明細書および本特許請求の範囲において開示する特定の実施形態に、本特許請求の範囲を限定すると解釈すべきでなく、そのような特許請求の範囲に権利がある均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、本特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1
図2
図3
図4A-4B】
図5A
図5B
図6A-6C】
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12A
図12B
図13A-13D】
図13E-13H】
図13I
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A-17C】
図17D-17F】
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21A-i】
図21A-ii】
図21B-i】
図21B-ii】
図22A-i】
図22A-ii】
図22B-i】
図22B-ii】
図23A
図23B
【配列表】
2023029624000001.app
【外国語明細書】