(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002965
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】蛇腹エアダンパー
(51)【国際特許分類】
F16L 55/04 20060101AFI20221228BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F16L55/04
F02M37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103842
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】桝野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】東家 慎二
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一斉
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025CA02
3H025CB25
3H025CB26
(57)【要約】
【課題】燃料に対する耐液性、ガスバリア性、および屈曲耐久性の全てを備える蛇腹エアダンパーを提供すること。
【解決手段】蛇腹エアダンパー(100)は、軸方向に連続する山谷部を有する蛇腹エアダンパーであって、内側から外側へ向かって、内層(9)、第1接着層(10)、中間層(11)、第2接着層(12)、および外層(13)を備える。内層(9)、および中間層(11)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)で構成され、外層(13)は、フッ素樹脂で構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に連続する山谷部を有する蛇腹エアダンパーであって、
内側から外側へ向かって、内層、第1接着層、中間層、第2接着層、および外層を備え、
前記内層、および前記中間層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体で構成され、
前記外層は、フッ素樹脂で構成されている、
蛇腹エアダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載の蛇腹エアダンパーにおいて、
前記フッ素樹脂は、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、およびテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体のうちから選択された材料であり、
前記第2接着層は、接着性ポリアミド樹脂で構成されている、
蛇腹エアダンパー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛇腹エアダンパーにおいて、
前記第1接着層は、接着性ポリアミド樹脂で構成されている、
蛇腹エアダンパー。
【請求項4】
請求項2または3に記載の蛇腹エアダンパーにおいて、
前記山谷部のうちの谷部の厚さは、0.20mm以上、且つ0.30mm以下であり、
前記山谷部のうちの山部の厚さは、0.15mm以上、且つ0.25mm以下である、
蛇腹エアダンパー。
【請求項5】
請求項4に記載の蛇腹エアダンパーにおいて、
前記谷部における前記中間層の厚さは、0.02mm以上、且つ0.05mm以下であり、前記山部における前記中間層の厚さは、0.01mm以上、且つ0.05mm以下である、
蛇腹エアダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の燃料供給系などに用いられる蛇腹エアダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、自動車の燃料供給系に用いられるベローズが記載されている。このベローズは、燃料の脈動を抑制するために用いられる。特許文献1によると、ベローズの材料は、例えば、ポリアミド12樹脂とのことである(特許文献1の段落0017)。また、同段落0017に、ポリアミド12樹脂以外に、熱可塑性ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリオレフィン樹脂、熱可塑性フッ素樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリスルフィド樹脂、熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム、ニトリルゴム、およびアクリルゴムから成る群より選ばれた材料を、ベローズの材料として用いることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、自動車の燃料供給系に用いられるベローズの材料として、様々な樹脂材料、およびゴム材料が提案されている。しかしながら、本件出願人が検討したところ、燃料の脈動を抑制するために、燃料供給系に用いられるベローズにおいて必要とされる、(1)ガソリンなどの燃料に対する耐液性、(2)ガスバリア性、および(3)屈曲耐久性、の全ての性能を満足する材料は存在しなかった。なお、ガスバリア性とは、ベローズ内に封入されたガスがベローズ内から抜けてしまうことに対する耐性のことである。
【0005】
例えば、ポリエチレン(PE)単層、ポリアミド12(PA12)単層、およびフッ素樹脂単層のベローズは、燃料に対する耐液性を備えているが、ガスバリア性において劣っている。一方、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)単層のベローズは、ガスバリア性に優れているが、硬くて脆いため、屈曲耐久性において劣っている。このように、単層構造のベローズ、すなわち1つの材料からなるベローズは、自動車の燃料供給系に用いられるベローズとして適していない。
【0006】
そこで、本件出願人は、単層構造ではなく、次のような複数の異なる材料の層から構成される3層構造のベローズを検討した。ベローズ内のガスに接する内層の材料として、ガスバリア性に優れるエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用い、燃料に接する外層の材料として、耐液性に優れるフッ素樹脂を用いた。そして、内層と外層とを接着層(接着性を有する樹脂材料)にて接着することで、層間で剥離が生じないようにした。しかしながら、この3層構造のベローズは、耐液性、およびガスバリア性については満足できるものであったが、屈曲耐久性については満足できるものではなかった(詳しくは後述する)。
【0007】
本発明の目的は、燃料に対する耐液性、ガスバリア性、および屈曲耐久性の全てを備える蛇腹エアダンパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願で開示する蛇腹エアダンパーは、軸方向に連続する山谷部を有する蛇腹エアダンパーであって、内側から外側へ向かって、内層、第1接着層、中間層、第2接着層、および外層を備え、前記内層、および前記中間層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体で構成され、前記外層は、フッ素樹脂で構成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、燃料に対する耐液性、ガスバリア性、および屈曲耐久性の全てを備える蛇腹エアダンパーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蛇腹エアダンパーの側断面図である。
【
図2】
図1に示す蛇腹エアダンパーのA部詳細図である。
【
図3】
図1に示す蛇腹エアダンパーのB部詳細図である。
【
図4】
図1に示す蛇腹エアダンパーのC部詳細図である。
【
図5】3層構造の蛇腹エアダンパーと、5層構造の蛇腹エアダンパーとの評価比較データを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1に示すように、蛇腹エアダンパー100は、ダンパー本体部1と、首部2と、固定部3とを備えている。ダンパー本体部1は、軸方向に連続する山谷部を有する略円筒形状の側面部4(蛇腹部分)と、側面部4の軸方向の端部に位置する底部5と、側面部4の軸方向の首部2側の端部に位置する天井部6とで構成される。ダンパー本体部1は、空気などのガスが内部に封入され、且つ軸方向に連続する山谷部を有することで、弾性変形(伸縮)可能とされている。
【0013】
ダンパー本体部1を備える上記蛇腹エアダンパー100は、例えば、燃料ポンプから吐出される燃料の脈動を抑制することを目的に、自動車の燃料供給系に用いられる。蛇腹エアダンパー100は、具体的には、例えば、次のような設置方法で、自動車の燃料供給系に用いられる。燃料ポンプと、インジェクタと呼ばれる燃料噴射装置とは、燃料供給配管で接続されている。燃料供給配管の経路中には、配管接続に用いられるコネクタが要所に設けられる。このコネクタの内部に蛇腹エアダンパー100が配置されて、燃料の圧力変動に対してダンパー本体部1が伸縮することで、燃料の脈動は抑制される。また、燃料供給配管には、パルセーションダンパーと呼ばれる、燃料の脈動を抑制するためのダンパーが接続される。コネクタの内部への配置とは別の使われ方として、上記パルセーションダンパーのような外付けタイプのダンパーの代わりに、蛇腹エアダンパー100を外部に配置することが挙げられる。なお、蛇腹エアダンパー100の設置方法は、これらの方法に限定されない。
【0014】
なお、蛇腹エアダンパー100の先端部に形成された上記固定部3は、上記コネクタの内部など、蛇腹エアダンパー100を配置しようとする燃料供給系のいずれかの部分に、蛇腹エアダンパー100を固定するためのものである。固定部3が無くてもダンパー本体部1を固定することができる場合には、首部2部分で固定部3を切断除去してもよい。この場合、ダンパー本体部1が蛇腹エアダンパーということになる。
【0015】
蛇腹エアダンパー100は、ブロー成形と呼ばれる公知の成形方法で製造される。ブロー成形とは、熱で柔らかくした樹脂をパイプ状に押し出し(パイプ状の樹脂をパリソンという)、樹脂が柔らかい状態でパリソン内に圧縮エアーを吹き込み、パリソンを金型に押し当てて冷却・固化させることで、樹脂を成形することをいう。
【0016】
ここで、ブロー成形品である蛇腹エアダンパー100(ダンパー本体部1)は、
図2に示すように、内側から外側へ向かって、内層9、第1接着層10、中間層11、第2接着層12、および外層13からなる5層構造とされている。内層9は、ダンパー本体部1内のガスと接する層であり、外層13は、ガソリンなどの燃料と接する層である。内層9、第1接着層10、中間層11、第2接着層12、および外層13の各厚さは、特に限定されない。
【0017】
上記内層9、および中間層11は、蛇腹エアダンパー100に対してガスバリア性を付与するという観点から、それぞれ、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)で構成される。また、上記外層13は、蛇腹エアダンパー100に対して、燃料に対する耐液性を付与するという観点から、フッ素樹脂で構成される。
【0018】
上記フッ素樹脂として、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)-テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)-テトラフルオロエチレン(TFE)-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、のうちから選択される材料が挙げられる。なお、これらの各フッ素樹脂の2種以上がブレンドされた材料を用いて外層13が構成されてもよい。
【0019】
上記第1接着層10、および第2接着層12は、それぞれ、例えば、接着性ポリアミド樹脂で構成される。接着性ポリアミド樹脂とは、接着成分を含有するポリアミド樹脂のことである。内層9と中間層11との間で剥離が生じないように、内層9と中間層11との間に第1接着層10が設けられる。同様に、中間層11と外層13との間で剥離が生じないように、中間層11と外層13との間に第2接着層12が設けられる。接着性ポリアミド樹脂として、例えば、接着性ポリアミド6樹脂(PA6)、接着性ポリアミド11樹脂(PA11)、接着性ポリアミド12樹脂(PA12)、接着性ポリアミド610樹脂(PA610)、および接着性ポリアミド612樹脂(PA612)のうちから選択される材料が挙げられる。なお、各接着層10、12を構成する材料として、接着性ポリアミド樹脂以外に、接着性ポリエチレン樹脂、および接着性ポリプロピレン樹脂が選択されてもよい。
【0020】
図3は、蛇腹エアダンパー100のB部詳細図である。また、
図4は、蛇腹エアダンパー100のC部詳細図である。
【0021】
蛇腹エアダンパー100は、前記のとおり、ブロー成形にて製造される。
図4に詳細断面を示す、蛇腹エアダンパー100のC部は、エアー吹き込み部であった部分である。ブロー成形の工程において、パイプ状のパリソンが形成されるところ、このパリソンの形態のときに、パリソンの図示は省略するが、パリソンの内方側から外方側へ向かって、内層9、第1接着層10、中間層11、第2接着層12、および外層13がパリソンに形成される。すなわち、パリソンは、5層構造となる。
【0022】
5層構造のパリソンの径方向の両側から1組の金型によってパリソンは型締めされ(挟み込まれ)、パリソン内に圧縮エアーが吹き込こまれる。圧縮エアーの吹き込みによって、パリソンは、膨らみ、そして金型に押し当たる。
【0023】
上記の型締め、および圧縮エアーの吹き込みによって、ダンパー本体部1の底部5の中心部の断面は、
図3に示すような層形状となる。ダンパー本体部1の底部5の中心部も、最内層がEVOHとなるので、底部5のガスバリア性が確保される。なお、底部5の中心部は、特に屈曲運動をしないため、割れに対する懸念はない。
【0024】
最終工程において、樹脂が柔らかい状態で、金型内で、エアー吹き込み部をその両側から治具などで挟み込むことで、エアー吹き込み部は封止される。エアー吹き込み部であった部分は、詳細断面を
図4に示すように封止される。その結果、ダンパー本体部1の天井部6の中心部も、最内層がEVOHとなるので、天井部6においてもガスバリア性が確保される。なお、首部2は、特に屈曲運動をしないため、割れに対する懸念はない。
【0025】
図5は、3層構造の蛇腹エアダンパー(比較例)と、5層構造の蛇腹エアダンパー100との評価比較データを示す表である。
【0026】
本件出願人は、以下に示す3層構造の蛇腹エアダンパー(比較例)、および5層構造の蛇腹エアダンパー100を製造し、製造した蛇腹エアダンパーの(1)ガソリンに対する耐液性、(2)ガスバリア性、および(3)屈曲耐久性について評価した。
【0027】
(3層構造の蛇腹エアダンパー(比較例)の仕様)
1.各層の材料
内層:エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
接着層:接着性ポリアミド樹脂(PA12)
外層:フッ素樹脂(エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE))
2.厚さ
側面部の山谷部のうちの谷部の総厚さ:0.10mm以上、且つ0.20mm以下
上記谷部における内層の厚さ:0.03mm以上、且つ0.06mm以下
側面部の山谷部のうちの山部の総厚さ:0.05mm以上、且つ0.15mm以下
上記山部における内層の厚さ:0.01mm以上、且つ0.05mm以下
【0028】
(5層構造の蛇腹エアダンパー100の仕様)
1.各層の材料
内層9:エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
第1接着層10:接着性ポリアミド樹脂(PA12)
中間層11:エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
第2接着層12:接着性ポリアミド樹脂(PA12)
外層13:フッ素樹脂(エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE))
2.厚さ
側面部4の山谷部のうちの谷部8の総厚さ:0.20mm以上、且つ0.30mm以下
上記谷部8における内層9の厚さ:0.03mm以上、且つ0.06mm以下
上記谷部8における中間層11の厚さ:0.02mm以上、且つ0.05mm以下
側面部4の山谷部のうちの山部7の総厚さ:0.15mm以上、且つ0.25mm以下
上記山部7における内層9の厚さ:0.01mm以上、且つ0.05mm以下
上記山部7における中間層11の厚さ:0.01mm以上、且つ0.05mm以下
【0029】
なお、谷部8の総厚さなど、各部、各層の厚さは、デジタルマイクロスコープの測定機能を用いて(によって)蛇腹エアダンパーの中央断面(
図1)を測定した結果である。すなわち、谷部8の総厚さなど、各部、各層の厚さは、デジタルマイクロスコープの測定機能によって特定することができる。
【0030】
図5からわかるように、3層構造の蛇腹エアダンパーは、耐液性、およびガスバリア性については満足できるものであったが、屈曲耐久性が不足していた。一方、5層構造の蛇腹エアダンパー100は、耐液性、ガスバリア性、および屈曲耐久性のいずれも満足できるものであった。5層構造の蛇腹エアダンパー100では、3層構造の蛇腹エアダンパーと同じく、内層9(最内層)を構成するEVOHに割れが発生した。しかしながら、中間層11を構成するEVOHには割れが発生しなかった。そのため、3層構造の蛇腹エアダンパーによると、伸縮を繰り返すことで内層に割れが発生し、これが原因でダンパー内部のガスが抜け、実使用時には燃料の圧力によって萎んでしまう。一方、5層構造の蛇腹エアダンパー100によると、伸縮を繰り返すことで内層9に割れが発生することはあるが、中間層11には割れが発生しないでダンパー内部のガスが抜けないので、実使用時には燃料の圧力によって萎んでしまうことはない。以上より、蛇腹エアダンパー100は、ガソリンに対する耐液性、ガスバリア性、および屈曲耐久性の全てを備える。
【0031】
中間層11に割れが発生しない理由は、次のとおりである。中間層11の内外に接着層(第1接着層10、第2接着層12)が設けられていることで、中間層11への応力集中を緩和することができる。これにより、中間層11における割れの発生を防止することができる。
【0032】
ここで、外層13を構成するフッ素樹脂は、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、およびテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)のうちから選択された材料とされ、且つ、第2接着層12は、接着性ポリアミド樹脂で構成されることが好ましい。
【0033】
エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、およびテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)の各融点と、第2接着層12を構成する接着性ポリアミド樹脂の融点と、中間層11を構成するエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の融点とは、同程度である。そのため、中間層11を構成する樹脂が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の場合に、外層13を構成するフッ素樹脂が、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、およびテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)のうちから選択された材料とされ、且つ第2接着層12が、接着性ポリアミド樹脂で構成されると、融点が近い材料を同時に押し出して積層体を成形することができ、中間層11と第2接着層12と外層13との親和性が高くなり、接着性、および成形加工性が向上する。その結果、各層間における剥離発生を、より防止することができる。
【0034】
また、第2接着層12が、接着性ポリアミド樹脂で構成される場合には、第1接着層10も同じく接着性ポリアミド樹脂で構成されることが好ましい。各接着層10、12を同じ種類の樹脂材料で構成することで、蛇腹エアダンパー100の製造にあたって、樹脂材料の準備を行いやすい。
【0035】
また、ダンパー本体部1の側面部4(蛇腹部分)に関し、山谷部のうちの谷部8の総厚さ(厚さ)は、0.20mm以上、且つ0.30mm以下とされ、山谷部のうちの山部7の総厚さ(厚さ)は、0.15mm以上、且つ0.25mm以下とされることが好ましい。
【0036】
蛇腹エアダンパー100の屈曲耐久性において、特に問題となる部分は、側面部4(蛇腹部分)である。また、側面部4を形成する山谷部のうちの谷部8は、山部7よりも内側に位置するため、ブロー成形において、通常、山部7よりも厚さが大きくなる部分である。山谷部の厚さが大きすぎると、屈曲耐久性が悪くなって、山谷部に割れが発生し易くなる。そのため、山谷部のうちの谷部8の総厚さ(厚さ)は、0.20mm以上、且つ0.30mm以下とされ、山谷部のうちの山部7の総厚さ(厚さ)は、0.15mm以上、且つ0.25mm以下とされることが好ましい。これにより、側面部4(蛇腹部分)に割れが発生することを、より抑制することができる。
【0037】
また、上記谷部8における中間層11の厚さは、0.02mm以上、且つ0.05mm以下とされ、上記山部7における中間層11の厚さは、0.01mm以上、且つ0.05mm以下とされることが好ましい。中間層11を構成するエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、硬くて脆い樹脂であり、山谷部の厚さが大きすぎると、屈曲耐久性が悪くなって、山谷部に割れが発生し易くなる。そのため、上記の通り、山谷部における中間層11の厚さを規定しておくことで、中間層11に割れが発生することを、より抑制することができる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態は、次のように変更可能である。
【0040】
蛇腹エアダンパー100(ダンパー本体部1)は、軸方向に連続する山谷部(蛇腹部)を有する略円筒形状とされている。これに代えて、軸方向に連続する山谷部(蛇腹部)を有する略四角筒形状の蛇腹エアダンパーなど、略多角筒形状の蛇腹エアダンパーとしてもよい。また、軸方向に連続する山谷部(蛇腹部)を有する略長円筒形状の蛇腹エアダンパーとしてもよい。
【0041】
蛇腹エアダンパー100(ダンパー本体部1)は、5層構造とされている。さらに層を加えて、6層以上の層を備える蛇腹エアダンパーとしてもよい。
【0042】
蛇腹エアダンパー100を構成する固定部3は、環状の鍔部3aを有する形状とされているが、固定部3の形状は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0043】
7:山部
8:谷部
9: 内層
10:第1接着層
11:中間層
12:第2接着層
13:外層
100:蛇腹エアダンパー