(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029653
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】治療上の器官冷却
(51)【国際特許分類】
A61B 18/02 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A61B18/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004413
(22)【出願日】2023-01-16
(62)【分割の表示】P 2020504282の分割
【原出願日】2018-04-06
(31)【優先権主張番号】62/483,294
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519359882
【氏名又は名称】パルメラ メディカル、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベレツ、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】イエ、ティン、ティナ
(72)【発明者】
【氏名】リム、イレイン
(57)【要約】
【課題】患者の局所身体冷却に用いる組織冷却デバイス。
【解決手段】組織冷却デバイスであって、長尺部材であって、長尺部材を通って遠位ポートまで延伸する流体送達内腔を有し、血管内に延伸するようにサイズ設定及び構成された長尺部材と、熱部材であって、長尺部材の少なくとも一部分に沿って延伸し、流体チャンバであって、使用時に循環する第1の流体が通って流れ、これにより、流体送達内腔を通って流れて遠位ポートに出る第2の流体を冷却する流体チャンバを有する、熱部材と、冷却ユニットであって、(i)第1の流体を冷却する冷蔵要素と、(ii)第1の流体を流体チャンバに循環させるポンプとを有する冷却ユニットとを備える組織冷却デバイス。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織冷却デバイスであって、
長尺部材であって、前記長尺部材を通って遠位ポートまで延伸する流体送達内腔を有し、血管内に延伸するようにサイズ設定及び構成された長尺部材と、
熱部材であって、前記長尺部材の少なくとも一部分に沿って延伸し、流体チャンバであって、使用時に循環する第1の流体が通って流れ、これにより、前記流体送達内腔を通って流れて前記遠位ポートに出る第2の流体を冷却する流体チャンバを有する、熱部材と、
冷却ユニットであって、(i)前記第1の流体を冷却する冷蔵要素と、(ii)前記第1の流体を前記流体チャンバに循環させるポンプとを有する冷却ユニットと
を備える組織冷却デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
低体温法は、例えば低下した血流に起因して、器官への酸素供給不足を患う患者に対する有望な治療の選択肢である。急性血栓塞栓性脳卒中時の脳虚血は一例である。
【発明の概要】
【0002】
本開示の特定の実施形態は、組織冷却デバイスであって、長尺部材であって、長尺部材を通って遠位ポートまで延伸する流体送達内腔を有し、血管内に延伸するようにサイズ設定及び構成された長尺部材と、熱部材であって、長尺部材の少なくとも一部分に沿って延伸し、流体チャンバであって、使用時に、循環する第1の流体が通って流れ、これにより、流体送達内腔を通って流れて遠位ポートに出る第2の流体を冷却する流体チャンバを有する、熱部材と、(i)第1の流体を冷却する冷蔵要素と、(ii)第1の流体を流体チャンバに循環させるポンプとを備える冷却ユニットとを備える組織冷却デバイスを提供する。
【0003】
本開示の特定の実施形態は、組織を保護する方法であって、動脈の内腔内の位置に流体を導入することであって、位置は動脈内の閉塞よりも下流にあり、流体は動脈内の血液よりも低温である、導入することを含む方法を提供する。
図1A乃至
図1Dは、本開示において開示される方法の実施形態を示し、最初にガイドワイヤ105の遠位端を閉塞103の周辺で通過させ、その後に続けて、カテーテル106の遠位端を閉塞103を通して通過させて、閉塞103の下流107にある動脈101の内腔内の位置に冷却流体を導入することによって、動脈101内の閉塞103の下流107にある、動脈101の内腔内の位置に冷却流体を導入する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】ガイドワイヤ105の遠位端が、閉塞103の上流104の、閉塞103が動脈101の内側の血管壁102に接触する場所に近接する位置において、閉塞103に接近することを示す。
【
図1B】ガイドワイヤの遠位端が、閉塞103と動脈101の内側の血管壁102との間において閉塞103の周辺を通過し、動脈101内の、閉塞103の下流107にある位置に到達することを示す。
【
図1C】カテーテル106が、ガイドワイヤ105の近位端からガイドワイヤ105の遠位端近傍までに亘り、閉塞103と動脈101の内側の血管壁102との間において閉塞103の周辺を通過し、動脈101内の、閉塞103の下流107の位置に到達することを示す。
【
図1D】ガイドワイヤ105がカテーテル106の内腔から引き抜かれ、冷却液が、カテーテル106を通して、動脈101内の、閉塞103の下流107の位置に導入されることを示す。
【
図2】1つ以上の内腔を有する様々な構成を有するカテーテルの例を示す。
【
図3】内側内腔311内に注入され、外側内腔310を介して帰還する熱伝達媒体を有する冷却カテーテル300の実施形態を示す。
【
図4】外側内腔310内に注入され、内側内腔311を介して帰還する熱伝達媒体を有する冷却カテーテルの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
低体温を達成するために、全身冷却を用いることが多い。しかしながら、このことによって、ほとんど全ての器官系に悪い副作用が生じ、場合によっては、心血管機能障害、免疫抑制、凝固障害、電解質不均衡、及び酸/塩基異常をもたらす。その上、全身冷却は、より局所化された身体冷却の場合よりも、目標部位において目標温度に到達するために、より長い時間及びより多くの熱エネルギーを必要とする。
【0006】
体温を局所的に低下させるために、低温摩擦、アイスパッド、冷却ヘルメット、及び冷却コイルなどの皮膚表面冷却方法が使用されてきたが、例えば脳深部の血虚組織における体温の低下を要することなく皮膚の表面の直下において目標の体温に達するのに、少なくとも2時間を必要とし得る。
【0007】
局所身体冷却方法を発展させて、中核体温への影響が低減された、かつ一般化された低体温の全身性副作用を回避するための、例えば血管閉塞の影響を受ける虚血組織における高速で選択性のある低体温を獲得する必要がある。
【0008】
低体温の神経保護的効果の中には、酸素の必要性が低減されることに起因し得るものがある。脳温度の1℃の低下は、脳の酸素消費量を5%程度低下させ、したがって、虚血状態に対する耐性を増加させる。その上、脳を冷却することは、虚血によって起こる炎症性変化及び他の変化のいくつかを停止又は減少させ得る。同様に、低体温は、血管閉塞の影響を受ける他の虚血組織に対して、例えば組織障害の抑制及び患者の回復増進など、有益であり得る。本明細書で提供される方法及び装置を、局所身体冷却に使用して、虚血組織を保護し、及び/又は虚血組織の回復を増進するために、目標の虚血組織における高速で選択性のある低体温を獲得し得る。
【0009】
本明細書で提供されるのは、被検者(例えば、ヒト、哺乳動物)の動脈の内腔内の位置に流体を導入することであって、位置は、動脈内の閉塞(例えば、血栓又は凝血塊)の下流にあり、流体は動脈内の血液温度よりも低温である、導入することを含む方法である。特定の実施形態において、方法は、さらに、導入することの前に、閉塞の上流の位置から閉塞の下流の位置まで、長尺部材の遠位端を動脈の内腔内に通すことを含む。特定の実施形態において、閉塞の下流の虚血組織に対する障害は、動脈内の血液温度よりも低温である流体の導入から結果として生じる低体温に起因して、低減され、又は鈍化する。
【0010】
本明細書で提供されるのは、また、被検者(例えば、ヒト、哺乳動物)の静脈の内腔内の位置に流体を導入することであって、位置は、静脈内の閉塞の上流にあり、流体は静脈内の血液温度よりも低温である、導入することを含む方法である。特定の実施形態において、方法は、さらに、導入することの前に、静脈の内腔内の閉塞の下流の位置から閉塞の上流の位置まで、長尺部材の遠位端を静脈の内腔内に通すことを含む。特定の実施形態において、閉塞の下流の虚血組織に対する障害は、静脈内の血液温度よりも低温である流体の導入から結果として生じる低体温に起因して、低減され、又は鈍化する。
【0011】
本明細書でいう「閉塞」は、例えば、動脈又は静脈などの血管の、部分的又は全体的な障害物である。
【0012】
本明細書でいう「低体温」は、被検者の(例えば、虚血組織の)組織温度又は器官温度が、被検者の中核温度よりも、又は被検者静脈又は動脈の血液温度よりも少なくとも1℃低いことを意味する。局所低体温は、組織を保護するのに有益であり得る。例えば、女性が氷の下に1時間を超えて閉じ込められた後に脳障害を伴うことなく生存したときに、この女性の中核温度は約13.7℃まで低下したことが報告されている。
【0013】
医療の専門家などの当業者であれば、様々な要因のうちの1つ以上に基づいて、被検者の血管内に導入される低温流体の温度を調整又は選択することによって、被検者に有益な局所的な低体温を達成することができ、この要因は、例えば、導入される低温流体の流速、導入される低温流体の成分、低体温から恩恵を受け得る任意の虚血組織のサイズと位置と新陳代謝率、閉塞された血管の位置及び構造、低体温の誘起の迅速さ、患者の身体状態、及び他の併存疾患である。
【0014】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、導入される流体は、約2℃~約35℃、約2℃~約30℃、約4℃~約17℃、約5℃~約30℃、約5℃~約25℃、約10℃~約33.9℃、約10℃~約20℃、約10℃~約15℃、約32℃~約34℃、約33℃~約35℃、又は約14℃の温度を有する。特定の実施形態において、流体温度は、動脈又は静脈の血液温度に基づいて、約1℃~約2℃、約1℃~約10℃、約1℃~約15℃、約1℃~約28℃である。特定の実施形態において、流体は、血栓切除の完了、又は閉塞の除去に対する他の適切な処置の完了まで導入される。いくつかの実施形態において、流体は、余分に、30~60分、1~3時間、6~12時間、12~24時間、1~3日、又は患者の応答又は他の要因に応じた他の期間だけ導入される。特定の実施形態において、流体は、閉塞の症状又は徴候が現れた後、例えば、閉塞の症状又は徴候が現れた後の、約1、2、又は4時間以内、約6~12時間以内、約12~24時間以内、約1~3日以内、又は7日以内に、可能な限り速やかに導入される。
【0015】
本明細書でいう「カテーテル」は、その通常の意味を有し、カテーテルの長さの少なくとも一部分に沿って延伸する導管を通して流体又は物体を送るように構成された、管状部材などの任意の長尺構造物を含むことができる。カテーテルは、円形又は多角形などの多くの断面形状のうちの任意のものを有してもよく、管、リボンなどに類似してもよい。本明細書でいう「誘導ワイヤ」(又は「ガイドワイヤ」)は、その通常の意味を有し、身体の内臓又は血管内に延伸してカテーテル又は他のデバイスによって身体内の位置へのアクセスを容易にするように構成された、金属及び/又は高分子部材などの任意の長尺構造物を含むことができる。誘導ワイヤは、円形又は多角形などの多くの断面形状のうちの任意のものを有してもよく、ワイヤ、リボン、ロープ、又は他の物体に類似してもよい。
【0016】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、流体を導入することはカテーテルを通し、長尺部材が閉塞を通過する。特定の実施形態において、流体を導入することは、閉塞を通過する第1の長尺部材(誘導ワイヤ)とは異なる第2の長尺部材(カテーテル)を通す。特定の実施形態において、カテーテルは、異なる流体を導入するための、及び/又は所望により他のアクセサリを導入するための、複数の内腔を備えてもよく(例えば、
図2に示す例を参照)、他のアクセサリは、例えば、本開示に記載されるように、ガイドワイヤ、膨張可能な要素(例えば、本明細書では膨張可能な部材とも称するバルーン)、ステント、穿孔要素(例えば、超音波による)、撮像要素、取出し要素、冷却要素(本明細書では熱部材とも称する)、熱絶縁要素、センサ要素。及びそれらの任意の組合せである。
【0017】
開示の冷却カテーテルは、いくつかの実施形態において、冷却カテーテルの遠位先端を内頸動脈(internal carotid artery,JCA)内として、経動脈的に配置される。このことにより、ICAに、熱絶縁された導管が設けられる。冷却カテーテルは、処置中に、低温フラッシュ溶液で洗い流され得る。
【0018】
図1A乃至
図1Dは、本明細書で開示される方法の実施形態を示す。
図1Aは、血管壁102を有する動脈101の内腔内の閉塞103を示し、ガイドワイヤ105の遠位端が、閉塞103が内側の血管壁102に接触する場所において、閉塞103の上流104から動脈101の内腔104内の閉塞103に接近する。
図1Bは、ガイドワイヤ105の遠位端が、閉塞103と内側の血管壁102との間を通過することによって、閉塞103の周辺を通過し、閉塞103の下流107にある位置に至ることを示す。ガイドワイヤ105の近位端に近接する位置からガイドワイヤ105にカテーテル106が被装され(
図1B)、そして、カテーテル106は、閉塞103と内側の血管壁102との間において閉塞103の周辺を通過して、動脈101の内腔104内の閉塞103の下流107にある位置に到達する(
図1C)。ガイドワイヤ105がカテーテル106から引き抜かれ、動脈の血液温度よりも低い温度を有する冷却液が、閉塞103の下流107にある位置に導入される(
図1D)。
【0019】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、通過することは、閉塞の一部分を通って通過する、又は一部分の周辺を通過することを含む。特定の実施形態において、長尺部材は、貫通要素(例えば、鈍い又は鋭い遠位端を有する、及び/又は遠位端に穿孔要素を有する要素)が、閉塞の一部分を通って通過する、又は一部分の周辺を通過することを含む。貫通要素は、長尺部材を通して流体が導入され得るような通過ステップの後に、カテーテルから引き抜かれてもよい。複数の内腔を有するカテーテルの場合、貫通要素は、流体が異なる内腔を通して導入されてもよいことから、流体を導入する前に引き抜かれる必要がなくてもよい。
【0020】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、方法は、さらに、カテーテルの1つ以上の内腔、及び/又は1つ以上のアクセサリを、これらの内腔及び/又はアクセサリが使用され得る1つ以上のタスクに利用することを含む。例えば、方法は、さらに、取出し要素によって閉塞を取り出すステップと、動脈の閉塞の下流又は静脈の閉塞の上流にある位置の画像を提供するステップと、1つ以上のセンサ要素によって、動脈の閉塞の下流又は静脈の閉塞の上流にある位置の1つ以上のパラメータを検出するステップと、流体が所望の位置に導入されるまで流体を冷却するステップとのうちの1つ以上のステップを含んでもよい。
【0021】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、通過することは、閉塞の周辺、例えば、動脈又は静脈の閉塞と血管壁との間を通過することを含む。特定の実施形態において、長尺部材は、動脈又は静脈の閉塞と血管壁との間を通過するガイドワイヤを備える。長尺部材は、1つ以上の内腔を備えるカテーテルであってもよい。ガイドワイヤは、カテーテルを通して流体が導入できるように、カテーテルから引き抜かれてもよい。複数の内腔を有するカテーテルの場合、ガイドワイヤは、流体が異なる内腔を通して導入されてもよいことから、流体を導入する前に引き抜かれる必要がなくてもよい。
【0022】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、カテーテルは、カテーテルの遠位端に近接する膨張可能な要素(例えば、バルーン)を備えるように構成されてもよく、方法は、さらに、長尺部材の遠位端及び膨張可能な要素が所望の位置に配置された後に、膨張可能な要素を膨張させることを含む。膨張可能な要素は、冷却流体を導入する間、流れを停止させるために血管を閉塞することができる。
【0023】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、閉塞は、直ちに、又は最初に虚血組織を所望の治療低体温温度まで冷却した後のいずれかに、カテーテルを構成する取出し要素によって除去できる。例えば、取出し要素は、閉塞血栓に隣接して配置されて血栓を除去してもよい。取り出し要素の例として、限定されないが、血栓切除デバイス(例えば、Solitaire(登録商標)血管再生デバイス)、バスケット、ワイヤ、又はアテローム切除デバイスが挙げられる。
【0024】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、流体は、体外で冷却される。特定の実施形態において、流体を導入するカテ-テルが冷却機構及び/又は熱絶縁体を備える場合に、流体は、治療される被検者の血液温度よりも低い温度に冷却又は維持される。
【0025】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、流体は、静脈注射用の溶液を含む。静脈注射用の溶液の例として、限定されないが、コロイド溶液、晶質、及び、血清又は血漿などの血液製剤が挙げられる。さらに、コロイド溶液の例として、限定されないが、アルブミン(例えば、5%又は25%)、ヘタスターチ(ヘスパン)、デキストランが挙げられる。晶質液の例として、限定されないが、生理食塩水、2分の1生理食塩水、乳酸リンゲル、及びデキストロース5%、D5 2分の1生理食塩水が挙げられる。特定の実施形態において、流体は、さらに、流体に溶解した添加酸素を含んでもよい。
【0026】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、流体は、さらに、治療目的及び/又は診断目的で、1つ以上の活性成分(active ingredient,AI)を含む。AIの例として、組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogen activator,tPA)、ストレプトキナーゼ、又はウロキナーゼなどの、血栓溶解剤が挙げられ得る。AIは、動脈内の閉塞の下流、又は静脈内の閉塞の上流のいずれかで、虚血組織のアポトーシス及び/又は代謝を弱め得る。例えば、キナーゼ阻害剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、GSK-3阻害剤、PI3キナーゼガンマ阻害剤)、モノカルボン酸輸送体(monocarboxylate tranporter,MCT)阻害剤が使用され得る。AIは、また、頭蓋内圧を低減する、マンニトール(例えば、20%マンニトール)などの浸透圧性薬剤、及び、薬剤又は薬剤のクラスの任意の組合せを含んでもよい。
【0027】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態において、動脈又は静脈内の閉塞は、血栓、切開、粥状斑、塞栓症(空気、脂肪、異物、血栓による)、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。動脈又は静脈内の閉塞が影響を与え得る器官として、限定されないが、脳(例えば、血栓性脳卒中又は血栓塞栓性脳卒中、脳出血の特定の場合、外傷性脳損傷、及び、インターベンショナル処置中の医原性損傷)、心臓、肺、手足、肝臓、膵臓、脾臓、及び腎臓が挙げられる。
【0028】
損傷部位への低温流体の送達には制限が存在する。温かい血流中に配置された通常のカテーテルのハブ内に注入された低温流体は、この流体がカテーテルの先端に到達する時点までに温められる。本明細書で提供されるのは、本明細書で方法について記載したような所望の位置への冷却流体の導入に供される内腔を備えたカテーテルである。
【0029】
特定の実施形態において、カテーテルは、冷却媒体が、本明細書で記載したような所望の位置に導入されるまで通って移動する送達内腔を備える。特定の実施形態において、送達内腔は熱絶縁されており(熱絶縁内腔)、このことにより、通って移動する流体の温度変化が低減される。これによって、送達内腔の遠位端から出る冷却流体は、冷却流体が接触する組織の少なくとも一部分を冷却することができる。特定の実施形態において、組織は、脳、心臓、肺、手足、又は腎臓内にあり、本明細書で開示されるような冷却流体の送達は、器官の温度を低下させ、閉塞を伴う動脈の影響を受ける虚血組織に治療的低体温を誘起し得る。
【0030】
特定の実施形態において、カテーテルは、通って移動する冷却流体の温度利得を低減するのみならず、流体の温度をさらに低下させる冷却要素を備える。冷却要素は、熱伝達媒体循環系を備えてもよく、流体が通って移動するカテーテルの内側の壁部を介した熱交換を生じるように、熱伝達媒体を循環させる。冷却要素は、圧縮空気冷却系、又は、流体を用いて所望の熱交換を実施することができる任意の他の冷却系を備えてもよい。
【0031】
例えば、冷却要素は、カテーテルの遠位端に近接するとともにカテーテルが通って移動する血管内の血液と接触する、カテーテルの送達内腔のかなりの部分を取り囲むことができる。冷却要素は、冷却熱伝達媒体を供給する冷却器ユニットと循環のために所望に流体連通した、複数の内腔に対する複数のポートを備え、熱伝達に好適な冷却媒体が、ポートのうちの1つ以上から冷却要素内に導入でき、次いで、ポートのうちの1つ以上から冷却要素を出るまで、対応する内腔を通って移動する。送達内腔を通って移動する流体は、冷却要素の複数の内腔内で循環させた冷却熱伝達媒体との熱伝達時に、冷却され、又は低温に維持される。
【0032】
特定の実施形態において、カテーテルは、さらに、カテーテルの遠位端に近接する膨張可能な要素を備え、膨張可能な要素が本明細書で記載したように閉塞を通過すると、膨張可能な要素は、カテーテルの近位端からの大部分よりも大きい径を有するようになっている。膨張可能な要素の増大した径によって、カテーテルを通して導入された流体の逆流が防止される。例えば、膨張可能な要素の最大径は、膨張可能な要素の後ろにすぐに続くカテーテル部分の径の約2~約10倍大きい、約2~約15倍大きい、又は約2~約20倍大きくてもよい。
【0033】
特定の実施形態において、膨張可能な要素は、本明細書で記載したような閉塞を通る通過後に膨張する。膨張可能な要素の例として、限定されないが、バルーンが挙げられる。
【0034】
図3及び
図4は、送達シャフト302によって画定された送達内腔301を備える長尺部材の実施形態(冷却カテーテル300)を示し、冷却要素303は、さらに、バルーン304などの膨張可能な要素と、送達内腔301への冷却流体の導入に供される流体送達ポート305と、冷却要素303の近位端に近接して冷却要素303に熱伝達媒体を出入りさせる、2つの熱伝達媒体ポート306及び307とを備える。冷却要素303は、遠位端に近接するかなりの部分を占める、送達シャフト302を取り囲む外側シャフト308と、外側シャフト308と送達シャフト302との間の空間を占める内側シャフト309であって、外側シャフト308と送達シャフト302との間の流体チャンバを流体連通した2つの内腔、すなわち、外側シャフト308と内側シャフト309との間の外側内腔310と、内側シャフト309と送達シャフト302との間の内側内腔311とに分割する内側シャフト309とを備える。内側シャフト309は、冷却要素303の遠位端に至るところまでは外側シャフト308と送達シャフト302との間に延伸せず、したがって、外側内腔310と内側内腔311とが流体連通することを可能にする。熱伝達媒体は、
図3に示すように、ポート306を通って外側内腔310に入り、その後、内側内腔111及びポート307を通って出てもよい。これに代えて、熱伝達媒体は、
図4に示すように、ポート307を通って内側内腔311に入り、その後、外側内腔310及びポート306を通って出てもよい。ポート306及び307は、冷却熱伝達媒体を供給及び循環させ得る冷却/冷却器ユニット313に接続されてもよい。冷却/冷却器ユニット313は、流体チャンバと熱伝達媒体を冷却する冷蔵要素316とを通して熱伝達媒体を循環させるポンプ315を含んでもよい。外側シャフト308は、冷却要素303の遠位端に近接する、バルーン304を画定する大きいほうの径の部分(バルーンシャフト312)と、冷却要素303の近位端に近接する小さいほうの径(複数可)を有する部分との、異なる径を有する少なくとも2つの部分を備える。大きいほうの径の部分(バルーンシャフト312)は、外側シャフト308の最大径を有する。バルーンは、膨張可能であってもよく、(例えば、バルーン304の近位端が、本明細書で記載する方法の実施形態における閉塞の周辺を通過した、又は閉塞を通って通過した後に)所望の位置で膨張する。熱部材303は、任意選択的に、さらに、送達内腔301の遠位端をマーキングする1つ以上の放射線不透過性マーカ314を備えてもよく、バルーン304の遠位端及び近位端は、医師が送達内腔301及びバルーン304を配置及び追跡することを支援する。
【0035】
バルーン304は、コンプライアント材料、セミコンプライアント材料、又はノンコンプライアント材料で作製されていてもよい。低プロファイルシャフト設計の場合、コンプライアントバルーンが好ましいことがある。
【0036】
送達シャフト302、内側シャフト309、及び外側シャフト308に好適な材料として、限定されないが、複合強化シャフト、多重剛性高分子シャフト、高分子材料を用いた金属(レーザ切断)ハイポチューブシャフトジャケットが挙げられる。
【0037】
特定の実施形態において、
図3及び
図4に示す冷却カテーテル300は、さらに、送達内腔301の遠位先端に、バルーンを膨張及び収縮させるさらなる注入ポートを用いて血管を閉塞する(流れの停止)ように膨張させる(例えば、ガス膨張させる)ことができる、(さらなる膨張可能な要素としての)より小さいバルーンを備えてもよい。
【0038】
特定の実施形態において、送達内腔を通して遠位アクセスカテーテルが配置されてもよく、例えば、遠位アクセスカテーテルは、遠位アクセスカテーテルの先端がより遠位に及ぶように、本質的に大きい内径(例えば、約0.045インチ~0.07インチIDの5F又は6Fカテーテル)であってもよい。遠位アクセスカテーテルの先端が閉塞(例えば、血栓)に到達することができる場合に、遠位アクセスカテーテルは、場合によっては、閉塞を除去する吸引カテーテルとして使用できる。遠位アクセスカテーテルは、冷却流体で洗い流せる。
【0039】
遠位アクセスカテーテルの送達内腔を通して、マイクロカテーテル(例えば、0.021又は0.027インチID)を、ガイドワイヤを介して通過させることができ、マイクロカテーテルの先端を、閉塞を慎重に通過させて進行させることができる。遠位アクセスの遠位端又は送達内腔が血管内の所望の位置に配置されると、閉塞の影響を受ける組織(例えば、虚血実質)の冷却は、閉塞の除去と流れの回復との試行前であっても、本明細書で開示されるような冷却流体を導入することによって、直ちに開始できる。酸素化された血液の流れの回復前に虚血組織を冷却することによって、再かん流傷害が減少し得る。虚血組織は、本明細書で開示されるような冷却流体の注入によって冷却されることとなり、酸素運搬能(例えば、血液又は人工ヘムによる)を増加させ、及び/又は梗塞のサイズを減少させる、本明細書で開示されるようなAIを含んでもよい。
【0040】
これに加えて、本明細書で開示されるような取出しデバイスは、マイクロカテーテルの内腔を通して通過させることによって、閉塞の近傍に運ばれ、次いで取出しデバイスを抜き出し、又は他の方法で展開して、閉塞を取り出してもよい。
(実施例)
【0041】
方法1
組織を保護する方法であって、動脈の内腔内の位置に流体を導入することであって、位置は動脈内の閉塞よりも下流にあり、流体は動脈内の血液よりも低温である、導入することを含む方法。
【0042】
方法2
導入することの前に、閉塞よりも上流の位置から閉塞よりも下流の位置まで、長尺部材の一端を内腔内に通すことを含む、方法1に記載の方法。
【0043】
方法3
長尺部材は誘導ワイヤを備える、方法2に記載の方法。
【0044】
方法4
流体を導入することは、閉塞よりも下流の位置に配置された遠位端を有するカテーテルを通す、方法2又は3に記載の方法。
【0045】
方法5
長尺部材の一端を、閉塞の周辺を通過させることによって、閉塞よりも下流の位置まで通す、方法2、3、又は4に記載の方法。
【0046】
方法6
さらに、下流の位置に導入された流体が閉塞よりも上流に流れることを制限する膨張可能な要素を膨張させることを含む、方法2乃至5のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
方法7
カテーテルは、流体が下流の位置に導入されるまで、流体を低温に維持する熱絶縁要素を備える、方法4乃至5のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
方法8
閉塞は血栓を含み、さらに、動脈から血栓の少なくとも一部分を取り出すことを含む、方法1乃至7のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
方法9
流体は、約2℃~約35℃の温度を有する、方法1乃至8のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
方法10
流体は、約5℃~約30℃の温度を有する、方法1乃至9のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
方法11
流体は、約10℃~約25℃の温度を有する、方法1乃至10のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
方法12
流体は、約10℃~約20℃の温度を有する、方法1乃至11のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
方法13
流体は、約15℃の温度を有する、方法1乃至12のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
方法14
流体が導入される位置は、内頸動脈(ICA)内、又は内頸動脈の分岐(例えば、MCA、ACA、及びそれらの分岐)内にある、方法1乃至13のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
方法15
さらに、血栓が除去された後に、動脈内に冷却流体を導入することを含む、方法1乃至14のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
装置1
組織冷却デバイスであって、長尺部材であって、長尺部材を通って遠位ポートまで延伸する流体送達内腔を有し、血管内に延伸するようにサイズ設定及び構成された長尺部材と、熱部材であって、長尺部材の少なくとも一部分に沿って延伸し、流体チャンバであって、使用時に循環する第1の流体が通って流れ、これにより、流体送達内腔を通って流れて遠位ポートに出る第2の流体を冷却する流体チャンバを有する、熱部材と、(i)第1の流体を冷却する冷蔵要素と、(ii)第1の流体を流体チャンバに循環させるポンプとを備える冷却ユニットとを備える組織冷却デバイス。
【0057】
装置2
さらに、長尺部材の遠位部分に結合された膨張可能な部材であって、血管内で膨張して血管を少なくとも部分的に閉塞するように構成された膨張可能な部材を備える、装置1に記載の組織冷却デバイス。
【0058】
装置3
熱部材は膨張可能な部材を備え、循環する第1の流体は膨張可能な部材を膨張させる、装置2に記載の組織冷却デバイス。
【0059】
複数の実施形態を図示及び記載した。本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な変更及び置換が当然になされてもよい。本発明は、したがって、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によることを除いては、限定されないものである。