(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002966
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】道床整理機
(51)【国際特許分類】
E01B 27/04 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
E01B27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103843
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】591153145
【氏名又は名称】ユニオン建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】下村 満
(72)【発明者】
【氏名】藤田 竹志
(72)【発明者】
【氏名】石川 銀次郎
(72)【発明者】
【氏名】本 吉浩
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057CB02
(57)【要約】
【課題】レールの締結部やまくらぎの上からのバラスト除去が容易で、各種軌陸車両や軌陸建設機械の付属装置やアタッチメントとして用いることができる汎用性の高い道床整理機の提供を目的とする。
【解決手段】バラスト軌道における道床整理機であって、レール締結部又は/及びまくらぎ部のバラストを除去するためのブラシ装置と、前記ブラシ装置を保持するための保持装置とを備え、前記ブラシ装置は回転制御された複数のブラシを有し、前記保持装置は前記ブラシの前記レール締結部に対する位置決め手段を有していることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト軌道における道床整理機であって、
レール締結部又は/及びまくらぎ部のバラストを除去するためのブラシ装置と、
前記ブラシ装置を保持するための保持装置とを備え、
前記ブラシ装置は回転制御された複数のブラシを有し、
前記保持装置は前記ブラシの前記レール締結部に対する位置決め手段を有していることを特徴とする道床整理機。
【請求項2】
前記ブラシの位置決め手段は前記レール締結部に対するブラシの先端部の角度調整手段,高さ調整手段及び左右方向調整手段のいずれか1つ以上を有することを特徴とする請求項1記載の道床整理機。
【請求項3】
前記複数のブラシは回転制御された回転軸廻りに配置されているとともに、前記ブラシの取付基部から先端部の方向が回転方向の後方側に向けて所定の傾斜角を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の道床整理機。
【請求項4】
前記ブラシは弾性材からなり、前記回転軸に対して着脱可能で且つ前記ブラシの先端部の突出長さが調整可能になっていることを特徴とする請求項3記載の道床整理機。
【請求項5】
前記ブラシ装置はさらに道床肩部の形状を整正するための道床肩部用ブラシ装置を有し、
前記道床肩部用ブラシ装置の外側に位置する飛散防止カバーを有していることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の道床整理機。
【請求項6】
軌陸車両又は軌陸建設機械の、付属装置又はアタッチメントであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の道床整理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌陸車両や軌陸建設機械の付属装置やアタッチメントとして使用できる汎用性の高い道床整理機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道に広く採用されている道床にバラスト軌道がある。
バラスト軌道は、砕石や砂利等のバラストを敷き、バラストの上部にまくらぎを並べてレールを敷設する構造である。
このようなバラスト軌道においては、レールの上を列車が繰り返し走行することで、レールに徐々に歪みが発生することから、このレールを矯正する保線作業が必要となる。
例えば、マルチプルタイタンパーと称されている大型車両を用いて、レールを吊り上げ、まくらぎを交換したり、バラストを補充し、地固めする作業が行われている。
このような保線作業においては、レールの締結部やまくらぎの上に一部バラストが散乱するために後処理として、この散乱したバラストを除去する必要があるが、これまでは人手にて行われていたため、その作業が大変であった。
【0003】
特許文献1には、第1ブラシと第2ブラシとを回転軸から下方に向けて広がるように取り付け、第2ブラシの方が第1ブラシよりも広がるように、この第1ブラシに取り付けたバラスト整理装置を開示する。
しかし、このようにブラシを回転軸から下方に向けて広がるように配置した構造では、ブラシの先端部がレールの締結部にまで入り込みにくい技術的課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レールの締結部やまくらぎの上からのバラスト除去が容易で、各種軌陸車両や軌陸建設機械の付属装置やアタッチメントとして用いることができる汎用性の高い道床整理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る道床整理機は、バラスト軌道における道床整理機であって、レール締結部又は/及びまくらぎ部のバラストを除去するためのブラシ装置と、前記ブラシ装置を保持するための保持装置とを備え、前記ブラシ装置は回転制御された複数のブラシを有し、前記保持装置は前記ブラシの前記レール締結部に対する位置決め手段を有していることを特徴とする。
ここで、ブラシの位置決め手段は前記レール締結部に対するブラシの先端部の角度調整手段,高さ調整手段及び左右方向調整手段のいずれか1つ以上を有しているのが好ましい。
【0007】
本発明において、ブラシ装置は複数のブラシが油圧モータ等により回転制御されている。
また、保持装置は、ブラシの先端部がレールの締結部やまくらぎの位置に届くように、位置決め可能にブラシ装置を保持する。
【0008】
鉄道においては、2本のレールが平行に設けられている。
ブラシ装置は、1本のレールに対して、そのレールのまくらぎとの締結部に向けて両側から一対、対向して配置されているのが好ましい。
したがって、2本のレールに対しては、レール間の内側に2つのブラシ装置と、左右のレールの外側にそれぞれ配置したブラシ装置とで合計4つのブラシ装置を有すると、1回の走行で左右2本のレールの締結部と、まくらぎの上に散乱したバラストを除去することができる。
また、バラスト軌道においては、まくらぎの外側に向けて少し斜めに高くした肩部が形成されている場合が多い。
そこで、この道床肩部の形状を整正するための道床肩部用ブラシ装置を両側に一対設けてもよい。
この場合には、この道床肩部用ブラシ装置の外側に位置する飛散防止カバーを有するようにすると、道床肩部の外側にバラストが飛散するのを防ぐ。
【0009】
これらのブラシ装置は、バラストの除去が適正に行われるように、ブラシの先端部の突出方向の角度を調整する角度調整手段を有するのが好ましい。
また、レールの締結部の高さやまくらぎの高さに合せて、ブラシの先端部の高さを調整するための高さ調整手段を有するのが好ましい。
さらには、左右一対のレールに対して、ブラシ先端部との距離を調整するための左右方向調整手段を有するのが好ましい。
【0010】
本発明において、複数のブラシは回転制御された回転軸廻りに配置されているとともに、前記ブラシの取付基部から先端部の方向が回転方向の後方側に向けて所定の傾斜角を有しているのが好ましく、さらには、ブラシは弾性材からなり、前記回転軸に対して着脱可能で且つ前記ブラシの先端部の突出長さが調整可能になっているのが好ましい。
このようにすると、ブラシの先端部がレールの締結部やまくらぎに当たる際に、弾性力にて適度に曲がりながら回転し、バラストの除去能力が向上する。
【0011】
本発明において、複数のブラシを回転制御するモータに油圧モータを使用すると、油圧ショベル等の軌陸建設機械やトラック等の軌陸車両に備えられている油圧装置からホース配管等にて油圧供給を受けて作動させることができる。
よって、本発明に係る道床整理機は、上記軌陸建設機械や軌陸車両の付属装置あるいはアタッチメントとして用いることができ、汎用性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る道床整理機は、回転し、バラスト除去するブラシ装置とこのブラシ装置の位置決め手段を有しているので、レール上を走行させることで、効率よくバラストの除去が可能である。
また、複数のブラシを回転軸廻りに後方に向けて所定の角度で傾斜させて配置したことにより、バラストの除去能力が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る道床整理機を軌陸建設機械の油圧ショベルに取り付けた例を示す。
【
図4】ブラシ装置及び保持装置の位置決め手段の拡大図を示す。
【
図5】レールの両側に位置するブラシ装置の例を示す。
【
図7】道床整理機を油圧ショベルのアタッチメントとして取り付けた例を示す。
【
図8】軌陸トラックに道床整理機をアタッチメントとして搭載した例を示す。
【
図9】道床整理機をアタッチメントとして用いた場合の片側車輪構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る鉄道のバラスト軌道用の道床整理機10の構造例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
図1は、道床整理機10を軌陸型油圧ショベル等の建設機械1に取り付けた例を示す。
建設機械1に設けられている連結部1aに、道床整理機10の取付部材11を介して連結する例になっている。
道床整理機10は、建設機械1の本体に設けられている主シリンダー1bにて上下動制御される。
【0016】
道床整理機10は、取付部材11に左右一対の補助リンク11cを用いて、リンク連節した保持アーム12を有し、この保持アーム12は補助シリンダー11aにより上下動制御されている。
保持アーム12は、ブラシ装置の保持装置としての機能を有している。
保持アーム12の本体部には、一対のレール2,3の内側に2つのブラシ装置と、この一対のレールの外側に2つのブラシ装置を有し、これらは後述するようにそれぞれ位置決め手段を介して取り付けられている。
これらのブラシ装置は共通した構造を有し、便宜上、
図1において左側から第1ブラシ装置21,第2ブラシ装置22,第3ブラシ装置23,第4ブラシ装置24とする。
【0017】
本実施例では、
図2に正面図,
図3に平面図を示すように、道床肩部の形状を整正するための第1道床肩部用ブラシ装置25と、第2道床肩部用ブラシ装置26とを補助アーム12a,12bを介して取り付けた例になっている。
この補助アーム12a,12bは、保持アーム12の本体部に対して上方に向けて折り畳み可能に連結されていて、左右の第1道床肩部用ブラシ装置25及び第2道床肩部用ブラシ装置26とが上方に向けて90°旋回し、収納状態にすることができる。
【0018】
本実施例では、左右の道床肩部用ブラシ装置の外側に飛散防止カバー27,28を着脱自在に設けた例になっている。
飛散防止カバー27,28は、シャフト部27a,28aにて保持アーム12から左右方向に突出する長さがスライド調整可能で、且つ取り外しも可能になっている。
【0019】
ブラシ装置は、油圧モータ(21a,22a,23a,24a)の回転軸に連結した取付盤(21b,22b,23b,24b)を有し、この取付盤にはさらに複数のシャフト状の取付部材(21c,22c,23c,24c)を有し、この取付部材に挿通固定可能なゴムパイプ等の弾性材からなる複数のブラシ(21d,22d,23d,24d)が交換可能に取り付けられている。
図4に示すように複数のブラシ21dは、取付盤21bの回転後方側略接線方向(α)に向けて延在するように取り付けられている。
回転軸の回転方向の後側であって、所定の傾斜角を設けて延在するように取り付けてあれば、必ずしも接線方向である必要はない。
本実施例では、6本のブラシを回転軸とは概ね直交する方向に取り付けてある。
ブラシの本数には制限はない。
このように複数のブラシを回転方向の後方側に所定の傾斜角を設けて、回転軸とは直交(直角)方向に配設したので、
図5に示すようにブラシの先端部がレールの締結部に当たる際に適度に折れ曲がりながら回転する。
なお、
図5にはまくらぎの図示を省略したが、まくらぎの上に散乱しているバラストも除去できる。
【0020】
次に、ブラシ装置の位置決め手段について説明する。
保持アーム12,補助アーム12a,12bに対して、左右方向位置決め部材14が取り付けられている。
左右方向位置決め部材14には、例えば
図4に示すように、左右方向の長孔14aとボルト等の固定部材14bとの組み合せにて、左右方向にスライド調整可能になっている。
この左右方向位置決め部材又は補助アームに対しては、高さ方向位置決め部材15が取り付けられている。
例えば、
図6にて説明すると、取付部に上下方向に設けた長孔15aとボルト等の固定部材の組み合せにて、上下方向にスライド調整可能になっている。
高さ方向位置決め部材に対しては、角度調整部材13が取り付けられている。
例えば、
図2にて説明すると、回転中心孔13cと、その外側に設けた円弧状の長孔13aと、ボルト等の固定部材13bとの組み合せで構成されている。
本実施例において、長孔と固定部材との組み合せの例で説明したが、これに限定されない。
【0021】
道床整理機1に設けた複数のブラシ装置は、建設機械等に有する油圧装置の油圧供給により作動するようになっている。
図3にて説明すると、主中継バルブ31を建設機械本体部に設けた油圧装置と油圧ホースにて接続し、この主中継バルブ31からは補助シリンダー11aの作動油として供給されるとともに、補助中継バルブ32を介して各ブラシ装置の油圧モータと油圧ホースにて接続される。
各ブラシ装置の油圧モータと補助中継バルブ32及び主中継バルブ31を介して、油圧ホースにて接続する構成を採用したことにより、所定のブラシ装置の油圧モータと中継バルブとの間の油圧ホースによる接続方法を選択することで、油圧系統を直列接続、あるいは並列接続に切り換えることも可能になる。
【0022】
本発明に係る道床整理機を軌陸走行車の油圧供給を受けて作動するようにすると、
図1に示した建設機械1の付属装置としての使用の他に、
図7に示したように油圧ショベル等の建設機械1のアタッチメントとして使用したり、
図8(a),(b)に示したように軌陸車両に搭載可能なアタッチメントとしても使用できるので、汎用性が高い。
なお、アタッチメントとして使用する場合に、
図9に示すようにレール走行用の車輪を片側に一対のみ設けてもよい。
図9(a)は、アタッチメントとして車両等に取り付けた状態であり、
図9(b)はアタッチメントが車両から外れた場合を示し、このように片側車輪構造にすると車両からアタッチメントが外れると、このアタッチメントが傾き、レール上を自立走行するのが防止される。
【符号の説明】
【0023】
1 建設機械
1a 連結部
1b 主シリンダー
2 レール
3 レール
10 道床整理機
11 取付部材
11a 補助シリンダー
11c 補助リンク
12 保持アーム(保持装置)
21 第1ブラシ装置
22 第2ブラシ装置
23 第3ブラシ装置
24 第4ブラシ装置
25 道床肩部用ブラシ装置