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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002980
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】観光望遠鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/00 20060101AFI20221228BHJP
   G02B 23/02 20060101ALI20221228BHJP
   G02B 23/16 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G02B23/00
G02B23/02
G02B23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103869
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】富永 修一
【テーマコード(参考)】
2H039
【Fターム(参考)】
2H039AA03
2H039AA05
2H039AA06
2H039AB16
2H039AB42
2H039AB55
2H039AC04
(57)【要約】
【課題】 課金操作する前のシャッター40が閉じた状態において、利用者が所有するカメラ50との光軸Oa合わせができるようにする。
【解決手段】 光路を閉じた状態で光学系30の光軸Oaを通る光を通過させる細孔41を、シャッター40に形成する。対物レンズ31から入射した光軸Oa上の光は、シャッター40に形成した細孔41を通過して接眼レンズ32に至る。利用者は、当該光軸Oa上の光の像を目印にして、カメラ50との光軸合わせを行うことができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズから入射した像を拡大して接眼レンズの対向位置で視認させる構成の光学系と、前記光学系を通過する光の光路を開閉するシャッターと、課金操作に基づき前記シャッターを駆動して前記光路を開くとともに、あらかじめ設定された時間の経過をもって当該シャッターを駆動して前記光路を閉じるシャッター駆動ユニットと、を備えた観光用望遠鏡であって、
前記光路を閉じた状態で前記光学系の光軸を通る光を通過させる細孔を、前記シャッターに形成したことを特徴とする観光用望遠鏡。
【請求項2】
前記細孔は、前記対物レンズから入射して前記光学系の光軸とその周囲を通る一部の光のみを通過させる大きさであって、かつ当該通過させた光では前記対物レンズから入射した像が前記接眼レンズの対向位置で認識できない大きさに形成してあることを特徴とする請求項1に記載の観光用望遠鏡。
【請求項3】
前記細孔は円形状に形成してあり、前記シャッターが前記光路を閉じた状態で前記光学系の光軸と交差する位置に、当該細孔の中心が配置される構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の観光用望遠鏡。
【請求項4】
前記対物レンズに光を入射させる光源を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の観光用望遠鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、観光地や景観の良い場所などに設置される観光用望遠鏡/双眼鏡(以下まとめて「観光用望遠鏡」と表記する)に関する。
【背景技術】
【0002】
観光地や景観の良い場所などに設置される観光用望遠鏡は、コイン(現金)の投入により、内部のシャッターを開いて利用可能な状態(すなわち、接眼レンズを通して遠景を拡大して見える状態)とし、その後、タイマーに設定してある時間が経過したとき、シャッターを閉じて利用停止の状態(すなわち、対物レンズに入射した像が接眼レンズ側で見ることができない状態)とする構造となっている。
【0003】
さて近年、観光用望遠鏡を通して見える景色を、コンパクトカメラや携帯端末に内蔵されたカメラ等を用いて撮影したいと希望する利用者が増えている。そのような撮影をする際には、特許文献1にも記載されているように、カメラレンズの光軸と双眼鏡(観光用望遠鏡)の光軸とを合わせる作業が必要となる。
【0004】
しかし、従来の観光用望遠鏡は、コインを投入するまでシャッターが閉じて対物レンズからの光を遮断しているので、観光用望遠鏡の接眼レンズに利用者の所持するカメラの対物レンズを対向配置しても、カメラには何も写らない。よって、利用停止の状態では、カメラの光軸を観光用望遠鏡の光軸に合わせることができない。
そのため、利用者は、コインを投入して観光用望遠鏡を利用可能な状態としてから、カメラの光軸を観光用望遠鏡の光軸に合わせなければならなかった。その作業を行っている間もタイマーは作動し続けるので、実際に景色を撮影したり、見たりして楽しむ時間が短くなってしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5627058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、課金操作する前のシャッターが閉じた状態において、利用者の所持するカメラ(以下、単に「カメラ」と省略することもある)との光軸合わせができるようにした観光用望遠鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る観光用望遠鏡は、対物レンズから入射した像を拡大して接眼レンズの対向位置で視認させる構成の光学系と、光学系を通過する光の光路を開閉するシャッターと、課金操作に基づきシャッターを駆動して光路を開くとともに、あらかじめ設定された時間の経過をもって当該シャッターを駆動して光路を閉じるシャッター駆動ユニットと、を備えた観光用望遠鏡であって、
光路を閉じた状態で光学系の光軸を通る光を通過させる細孔を、シャッターに形成したことを特徴とする。
【0008】
課金操作する前のシャッターが閉じた状態においても、対物レンズから入射した光軸上の光を、シャッターに形成した細孔が接眼レンズ側に通過させるので、利用者は当該光軸上の光を目印にしてカメラとの光軸合わせを行うことができる。
【0009】
ここで、細孔は、対物レンズから入射して光学系の光軸とその周囲を通る一部の光のみを通過させる大きさであって、かつ当該通過させた光では対物レンズから入射した像が接眼レンズの対向位置で認識できない大きさに形成することが好ましい。
これにより、課金操作をもって利用可能な状態となる観光用望遠鏡の前提機能を保持することができる。
【0010】
また、細孔は、円形状に形成して、シャッターが光路を閉じた状態で光学系の光軸と交差する位置に、当該細孔の中心が配置される構成とすることができる。
このように構成すれば、接眼レンズを通して小さな円形をした光の像を確認することができる。この小さな円形をした光の像の中心が観光用望遠鏡の光軸となるので、当該像の中心を目印にして容易にカメラの光軸を合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る観光用望遠鏡によれば、課金操作する前のシャッターが閉じた状態においても、カメラとの光軸合わせを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る観光用望遠鏡の外観を示す正面図である。
図2】(a)は望遠鏡本体に内蔵された光学系とシャッターの構成例を模式的に示す平面構成図、(b)はシャッターの構成例を模式的に示す右側面構成図である。
図3】光軸合わせの方法を説明するための平面構成図である。
図4】(a)(b)(c)は光軸合わせの具体例を説明するためのカメラの表示画面を示す正面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る観光用望遠鏡の構成を模式的に示す平面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る観光用望遠鏡の外観を示す正面図である。同図に示すように、観光用望遠鏡は、望遠鏡本体10と支柱20とを備えている。
【0014】
支柱20は、下側支柱21と上側支柱22を組み合わせて構成してあり、下側支柱21が観光地の地面などに直立した状態で固定される。上側支柱22は、下側支柱21に同軸上に連結されており、下側支柱21に対して中心軸(鉛直軸)周りに左右に旋回できる構成となっている。
【0015】
望遠鏡本体10は、上側支柱22の上端部に支持されており、上側支柱22とともに左右に旋回自在となっている。また、上側支柱22の上端部には、軸受構造(図示せず)が設けてあり、望遠鏡本体10はこの軸受構造を介して、水平軸を中心に上下に揺動自在となっている。
【0016】
利用者は、望遠鏡本体10を左右に旋回させたり、上下に揺動させたりすることで、周囲の景色を自由に望遠鏡本体10の光学系30に取り込み、その拡大された景色を見て楽しむことができる。
【0017】
観光用望遠鏡は、支柱20に設けたコイン投入口(図示せず)にコイン(現金)が投入されたときに、内部のシャッターが開いて利用可能な状態となる。その後、あらかじめ設定してある時間が経過したとき、シャッターが閉じて利用停止の状態となる。
【0018】
図2(a)は望遠鏡本体に内蔵された光学系とシャッターの構成例を模式的に示す平面構成図、同図(b)はシャッターの構成例を模式的に示す右側面構成図である。
双眼鏡の構成をした本実施形態に係る観光用望遠鏡は、望遠鏡本体10の内部に、平面から見て左右一対の光学系30が組み込まれている。各光学系30は左右対称であり、複数のレンズやプリズムの組み合わせで構成されている。各光学系30は、それぞれ対物レンズ31から入射した像を拡大して接眼レンズ32の対向位置で視認できるように構成してある。
【0019】
さらに、望遠鏡本体10の内部には、各光学系30に対してそれぞれシャッター40が設けてある。シャッター40は、光学系30を通過する光の光路を開閉するための構成要素であり、例えば、光を遮蔽できる金属板等で製作される。各シャッター40は、シャッター駆動ユニット42により同時に開閉駆動される。
【0020】
シャッター駆動ユニット42は、利用者によってコイン投入などの課金操作が行われたとき、これに基づきシャッター40を駆動して光学系30の光路を開くとともに、あらかじめ設定された時間の経過をもって再びシャッター40を駆動して当該光路を閉じる機能を有している。
【0021】
本実施形態のシャッター駆動ユニット42は、コイン投入などの課金操作が行われたとき、モータ43を作動して、その駆動力をシャッター40に伝達する構成としてある。シャッター40は、モータ43から伝えられた駆動力をもって光学系30の光路を開放する。また、シャッター駆動ユニット42は、シャッター40が開いてからの時間をタイマー(図示せず)で計測し、あらかじめ設定した時間が経過したときに、シャッター40を駆動して光学系30の光路を閉じる。シャッター40を閉じるための動作は、モータ43の逆回転の駆動力や、ばね等の付勢部材による逆向きの駆動力を利用して実行することができる。またモータ43はソレノイドであってもよい。
【0022】
シャッター40には、細孔41が形成してある。この細孔41は、光学系30を通過する光の光路が閉じられた状態(すなわち、観光用望遠鏡が利用停止の状態)のときであっても、光学系30の光軸Oaを通る光を通過させる機能を有している。
この細孔41を通過した光を利用して、観光用望遠鏡の光学系30の光軸Oaに対して、利用者が所持するカメラの光軸を合わせることが可能となる。
【0023】
ここで、細孔41は次の2つの条件を満たす大きさに設定してある。すなわち、細孔41は、対物レンズ31から入射して光学系30の光軸Oaとその周囲を通る一部の光のみを通過させる大きさであって、通過する光がカメラの光軸合わせに必要十分なものであり(条件1)、一方、通過した光だけでは対物レンズ31から入射した像が接眼レンズ32の対向位置で認識できない大きさ(条件2)、に設定してある。
細孔41の大きさを、条件1のみならず条件2も満たすように設定することで、課金操作してシャッター40を開くまでは、接眼レンズ32を覗いても景色を見ることができず、課金操作をもって利用可能な状態となる観光用望遠鏡の前提機能が保持される。
【0024】
本実施形態では、細孔41は円形状に形成してあり、光学系30の光路を閉じた状態のシャッター40に対して、光学系30の光軸Oaと交差する位置に細孔41の中心を配置してある。接眼レンズ32を通して小さな円形をした光の像を確認することができる。この小さな円形をした光の像の中心が観光用望遠鏡の光軸Oaとなるので、その円形像の中心を目印にして容易にカメラの光軸を合わせることができる。
【0025】
図3に示すように、利用者は、課金操作を行う前に、所持しているカメラ50の対物レンズ51を、観光用望遠鏡の接眼レンズ32の対向位置に配置する。そして、細孔41を通過してきた光軸Oa上の光を目印にして、カメラ50の光軸Obを合わせる。これにより、観光用望遠鏡の光学系30の光軸Oaにカメラ50の光軸Obを合わせることができる。
【0026】
図4(a)(b)は、カメラの表示画面を見ながら光軸合わせを行う具体例を示している。
カメラ50を起動させると、対物レンズ51に入射する像が表示画面52に映し出される。そこで、カメラ50の対物レンズ51を、観光用望遠鏡の接眼レンズ32の対向位置に配置すると、シャッター40に形成した細孔41を通過してきた光が、観光用望遠鏡の接眼レンズ32からカメラ50の対物レンズ51に入射して、表示画面52に光の像(以下、これを「光の像」という)53が映し出される。
【0027】
観光用望遠鏡の光学系30の光軸Oaとカメラ50の光軸Obとが一致していると、図4(a)に示されるように、光の像53が明瞭な円形状の輪郭を描いて表示画面52に映し出される。一方、観光用望遠鏡の光学系30の光軸Oaとカメラ50の光軸Obとの間に、位置ずれが生じているときは、図4(b)に示されるように、表示画面52に映し出される光の像53は、周囲の一部が欠落する(ケラレと称する)など、円形状の輪郭を描かない。
そこで、利用者は、カメラ50の表示画面52に映し出される光の像53を観察しながら、カメラ50の位置を調整し、円形状の輪郭をした光の像53が映し出されるようにする(図4(a)参照)。これにより、観光用望遠鏡の光学系30の光軸Oaにカメラ50の光軸Obを合わせることができる。
【0028】
また、図4(c)に示すように、市販されているカメラの中には、表示画面52に光軸Obの位置(例えば、十字線の交点)を表示する機能を備えたものがある。その場合は、表示画面52に映し出された光の像53の中心を、表示画面52に表示された光軸Obの位置に合わせるように、カメラ50の位置を調整すればよい。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
例えば、上述した実施形態では、左右一対の光学系30が組み込まれた観光望遠鏡に本発明を適用した構成例を示したが、単一の光学系を内蔵する単眼鏡の構成をした観光望遠鏡に本発明を適用することもできる。その場合も、光学系の光路を開閉するシャッターに細孔を形成して、光軸を通る光を通過させるように構成すればよい。
【0030】
また、図2図3に示した光学系30は単に一例を示したに過ぎず、他の各種の光学系を採用する観光用望遠鏡に対して、本発明は適用することができる。
さらに、シャッターやシャッター駆動ユニットについても、上述した実施形態の構成に限定されず、各種のシャッターやシャッター駆動ユニットを採用する観光用望遠鏡に対して、本発明は適用することができる。
シャッターを駆動して光学系の光路を開くための課金操作は、公知のコイン投入による操作に限定されるものではなく、例えば、QRコード(登録商標)等の二次元コードを利用した電子決済システムによる課金操作など、観光用望遠鏡に採用される各種の課金操作を含むものである。
【0031】
また、上述した実施形態では、観光望遠鏡の光学系30の光軸Oaに対してカメラ50の光軸Obを合わせる例を示したが、利用者の所持する携帯端末のカメラについても、同様の手順で光軸合わせを行うことができる。
すなわち、携帯端末のカメラアプリを起動させると、対物レンズに入射する像が携帯端末の表示画面に映し出される。そこで、対物レンズを観光用望遠鏡の接眼レンズの対向位置に配置して、表示画面に光の像を映し出す。このようにして表示画面に映し出された光の像を観察しながら、光軸合わせを行う。
【0032】
図5は、本発明の他の実施形態を示す構成図である。
同図に示す観光用望遠鏡は、望遠鏡本体10にLED等を用いた光源60が鏡筒内壁の任意の個所に設けてある。光源60は、スイッチ61の操作をもって点灯する構成となっている。光源60からの光は鏡筒内壁を照らし、その光の一部が対物レンズ31に入射して、シャッター40の細孔41(図2参照)を通過して接眼レンズ32の対向位置で確認することができる。光源60は、シャッター40が開いたら自動的に消灯させるか、またはスイッチ61の操作をもって消灯させる構成とすることができる。光源60からの光は、万が一直接見ることがあっても目に悪影響を与えない程度の明るさであることはいうまでもない。
【0033】
夜景を見るときなど、観光用望遠鏡の周囲が暗い時刻においては、光軸合わせに必要な光量が、シャッター40の細孔41(図2参照)を通して得られないことがある。そのような環境下においては、光源60を点灯させることで、光源60からの光を光学系に取り込んで、光軸合わせに必要な光量を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
10:望遠鏡本体10、
20:支柱、21:下側支柱、22:上側支柱、
30:光学系、31:対物レンズ、32:接眼レンズ、Oa:光軸、
40:シャッター、41:細孔、42:シャッター駆動ユニット、43:モータ、
50:カメラ、51:対物レンズ、Ob:光軸、52:表示画面、53:光の像、
60:光源、61:スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5